説明

プリブロー開始点の状態をフィードバックで調節し、中空容器を成形する方法。

金型内にパリソン(3)を充填し、
あらかじめ設定されたプリブロー開始の合図(tP)によって、電磁バルブ(22)に開弁の指令を出し、パリソン(3)内にあらかじめ設定されたプリブロー圧を持つ空気供給源(20)を接続し、
ペリソン(3)の内圧(P)を測定し、
パリソン(3)の内圧Pが上昇を始める実際のプリブロー開始の瞬間(tA)を検知し、
この瞬間(tA)と、理論から予測されたプリブロー開始の瞬間とを比較し、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、予測したプリブロー開始瞬間に比べて遅れる場合、プリブロー開始の合図(tP)を早め、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、予測したプリブロー開始の瞬間より早く起こる場合は、プリブロー開始の合図(tP)を遅らせる、
プラスティック樹脂製のパリソン(3)から、金型(11)内でブロー成形にて中空容器(2)を作成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸ブロー成形・ブロー成形で、プラスティック樹脂製のパリソンから中空容器を作成することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、パリソンを構成している樹脂をガラス転位点以上の温度で加熱することから始める。(パリソンとは、ブロー成形の技術で中空容器を作成するために、まず所望の中空容器形状をもとに、ブロー成形の第一段階で作成されたプリフォームのことである。)続いて、パリソンを金型に充填する。ここでパリソン内に空気などのガスを高圧(たいてい30バール以上である)で吹き込み、ブロー成形を行う。ブロー成形の中でも延伸ブロー成形の段階では、スライド式の延伸ロッドにて、パリソンを引っ張って延ばす操作をおこない、この延伸ロッドを使うことによって、中空容器の軸のズレを防ぎ、樹脂が均一に引き延ばされるのである。ブロー成形の段階でパリソンが破裂するのを防ぐために、たいていの場合、あらかじめ本ブロー成形の前に、いわゆるプリブローが行われる。このとき、パリソン内には、低圧で空気が吹き込まれる。(通常5バール以上16バール以下)プリブローの段階で、パリソンの引っ張り延伸が行われ、そのあと本ブロー成形の段階となる。
【0003】
工業生産の場合、作成のリズムは一台の成形機で、時には一時間に何十何万個もの中空容器を作りだすことになる。(通常1台の形成機に取り付けられた回転式コンベアに数台の金型が装備されている)中空容器の作成にかかる時間は、金型にパリソンを設置してから、完成した中空容器が金型から排出されるまで数秒で、一方プリブローにかかる時間は、10分の1秒程度である。
【0004】
生産者側は常に、各中空容器に使用する原材料の削減と、全工程の敏速さ、完成品の形状がデリケートであることを求め、また、工場廃棄物の量を大幅に削減したいと希望している。中空容器完成品の形状に関して取り上げられる問題点の中に、樹脂の均等引き延ばしについて挙げられることがある。使用樹脂の節約と作成のリズムアップを図るというバランスの難しさに関して、全工程を通して、いくつかのパラメータのバリエーションを管理することにより、各工程での作業の流れを潤滑にするということに関心を持ったのである。最重要点は、パリソン内に吹き込まれる空気の圧力と、延伸速度の組み合わせを調節するということである。
【0005】
アメリカの特許US4042657を獲得しているDU PONT DE NEMOURSはその発明の中で、パリソン内に吹き込まれる圧力のさまざまな変化と中空容器の完成品の出来上がり具合には、相互関係があると強く主張している。圧力の測定グラフ上、正常の曲線を表すことなく出来上がった中空容器は、排除すべきとした。出来上がりの悪い規格外の容器を排除することで、完成された中空容器全体の質を向上したことにしても、同時に生産性に影響を及ぼしていることになる。そして、廃棄された中空容器がリサイクルされないとすれば、生産者側はできるだけの節約を目指しているにもかかわらず、大きな無駄を出していることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
米国特許第4042657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、無駄を省きつつも生産量はそのまま、あるいはそれ以上の結果をもたらし、かつ完成品としての中空容器の質の向上と、このような無駄の排除を目指している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために本発明が提案することは、まず一つ目の手段として、プラスティック樹脂性のパリソンを金型内に充填し、ブロー成形によって中空容器を作成するという過程で、以下に挙げる作業を行うものとする。
金型内にパリソンを充填する。
あらかじめ設定したプリブロー開始の合図により、電磁バルブの開弁を行い、あらかじめ設定されたプリブロー圧でパリソン内に空気を吹き込むために、パリソン内部と空気の供給源を接続するためである。
パリソン内圧を測定する。
パリソン内部が徐々に昇圧するプリブローの開始時を検知する。
この実際のプリブロー開始の瞬間と理論から予測したプリブロー開始の瞬間を比較する。
実際のプリブロー開始の瞬間が、予測したプリブロー開始の瞬間よりも遅れる場合、プリブロー開始の合図を早める。
実際のプリブロー開始の瞬間が、予測したプリブロー開始よりも早く起こる場合、プリブロー開始の合図を遅らせる。
【0009】
このような方法で作成された中空容器は、従来の方法で得られた容器に比べて、作成品一般についてみた場合、完成品の質において樹脂にムラのない高品質の仕上がりとなるばかりでなく、この質の高さは、時間の経過によっても安定し続けるという結果が得られた。
【0010】
そのほかに補助的な操作として以下のようなことが挙げられる。
プリブロー開始の瞬間に、実際の瞬間と理論的に予測した瞬間の間に起こるズレを測定すること。
実際のプリブロー開始の瞬間が、予測したプリブロー開始の瞬間よりも遅れる場合、このズレの分だけプリブロー開始合図を早めること。
実際のプリブロー開始の瞬間が、予測したプリブロー開始よりも早く起こる場合、先に算出したズレの分だけ、プリブロー開始合図を遅らせること。
【0011】
応用として、以下のような操作を行うことも考えられる。
実際のプリブロー開始の瞬間と、プリブロー開始の合図の差を測定する。
電磁バルブが反応する時間が加わり、実際のプリブロー開始の瞬間が、プリブロー開始の合図よりも遅れる場合、プリブロー開始の合図と実際のプリブロー開始の瞬間とのずれた分と、電磁バルブの反応時間を加えた分だけ、プリブロー開始の合図を早くする。
あらかじめ設定した電磁バルブの反応が早く、実際のプリブロー開始の瞬間が、プリブロー開始合図よりも早まる場合、プリブロー開始の合図と実際のプリブロー開始の瞬間とのずれた分と、それに電磁バルブの反応時間を差し引いた分だけ、プリブロー開始合図を遅くする。
【0012】
本発明は二つ目の手段として、プラスティック樹脂製のパリソンから中空容器を作成するために、以下のような機能を備えた成形機を提案する。
パリソンを充填する空洞部(キャビティ)を持つ金型
あらかじめ設定されたプリブロー圧を持つ空気供給源
空洞部(キャビティ)内に充填されたパリソンと 、空気供給減を接続する清潔な電磁バルブ
電磁バルブの開閉指令を管理するシステム
パリソン内圧を測定する清潔なセンサー
パリソン内の圧力が上昇を始める、実際のプリブロー開始の瞬間を検知するシステム
この実際のプリブロー開始の瞬間と、予測したプリブロー開始の瞬間を比較するシステム
比較結果をもとに電磁バルブ開弁のタイミングを調節するシステム
【0013】
成形機は、作成の工程で同時に作られた複数の中空容器について、検知された実際のプリブロー開始時を複数同時に記憶するシステムを持つ。
【0014】
本発明が提案する三つ目の手段は、先述の中空容器成形機に内蔵されるコンピュータプログラムであり、これが制御するものは以下のようなことである。
電磁バルブ開閉の指令を出す
実際のプリブロー開始の瞬間を検知する
理論から予測したプリブロー開始の瞬間を記録する
実際のプリブロー開始と予測したプリブロー開始の瞬間を比較する
この比較結果から電磁バルブを開弁するタイミングを調節する
【0015】
本発明は、付属の図を参照することによって、上記以外の手段と利点について、わかりやすく説明できると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】中空容器を作成する成形機を表した概略図である。
【図2】図1の成形機内にある、型締部を部分的に見せた概略断面図である。
【図3】中空容器の作成段階におけるパリソン内圧の変化について、曲線で表したグラフである。
【図4】プリブロー段階におけるパリソン内圧の変化について、曲線で表したグラフである。
【図5A】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5B】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5C】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5D】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5E】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5F】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5G】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図5H】金型内に充填されたパリソンを断面で見た様子を描いたものである。プリブローの異なる段階をあらわしている。
【図6】二つの曲線が重なっているのが見て取れるが、これは 二つの異なる条件における、電磁バルブ開弁の瞬間を表したグラフである。
【図7】二つの曲線が重なっているのが見て取れるが、これは二つの異なる条件における、プリブロー圧とプリブロー流量の関係を比較したグラフである。
【図8】二つの曲線が重なっているのが見て取れるが、これは二つの異なる条件における、延伸速度の違いを比較したグラフである。
【図9】二つの曲線が重なっているのが見て取れるが、これは二つの異なる条件における、パリソンの加熱温度の違いを比較したグラフである。
【図10】二つの曲線が重なっているのが見て取れるが、これは二つの異なる条件における、ブロー成形の電磁バルブ開弁の瞬間を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、PET (ポリエチレンテレフタレート)などのプラスティック樹脂製のパリソン3から、中空容器2を作成するための成形機1を表している。パリソン3は、プリフォームである。所望の形状に基づいて、中空容器2の完成品が想定され、一台の成形機内で直接にプリフォーム成形が行われ、プリフォームが作成されるのである。パリソン3は、口顎部4、胴部5、半球形型の底部6からなり、円筒形をしている。(中空容器2作成段階では口顎部4は変形しない)
【0018】
この成形機1は、トンネル型炉7と連結しており、樹脂のガラス転位点以上の温度でパリソン3を加熱する。PETのばあい、ガラス転位点は80度程であるが、加熱は100度以上140度以下で行うのが好ましい。
【0019】
この成形機1には、トンネル型炉7の出口部分に回転式コンベア9が装備されており、その上に設置された複数の型締部8がホイールによって連携され、パリソン3の加熱と型締めがタイミングよくなされるように造られている。
【0020】
各型締部8には、それぞれに金型11が含まれており、この金型は鋼鉄またはアルミニウム合金製の割金型で、半割れの金型12、13である。そして、金型内には空洞部(キャビティ)15があり、トンネル型炉7から送られるパリソン3を充填して閉じ込める底14部からなる。
【0021】
型締部8には、さらに以下のものが含まれる。
延伸ロッド16が金型11に対して軸X方向にスライド式移動できる仕組み。(徐々に下降する)パリソン3が金型に充填されるときの、上部に待機する状態(図2)から、パリソン3の延伸が終わる時には下部にたどり着く。(図5H)延伸ロッド16は、金型の底14に到達し、パリソンの底6が金型の底の内面に押し付けられる。
ダイ17はノズル18と組み合わさっており、ここに延伸ロッド16が挿入され挟まれる。中空容器2作成の際、パリソンがダイに挟まれているこの部分が、容器の口顎部4となるのである。
【0022】
型締部8はダイ17を経由して、金型へ樹脂流路を接続している。
プリブローのためのエア通路19は、中程度の圧力をもつ。(5バール以上16バール以下)このエア通路19は、間にプリブローの電磁バルブである第一電磁バルブ22を挟んで、さらにそこからエア通路21(少なくとも部分的にダイ17の中に入り込む)に抜けることにより、空気供給源20のエアをノズル18へと導くものである。
ブロー成形のためのエア通路23は高圧力である。(30バール以上40バール以下)このエア通路25は間にブロー成形の電磁バルブである第二電磁バルブ26を挟んで、(少なくとも部分的にダイ17の中に入り込む)間にブロー成形の電磁バルブである、第二電磁バルブ26を挟んで、空気供給源24のエアをノズル18へと運ぶ。
ノズル18から出るブロー成形のエアは、排気のための電磁バルブである第三電磁バルブ30を挟んで、排気通路27と排気通路29をつなぐ。そして外気につながる排気口28へと導かれる。
【0023】
電磁バルブ22、26、30は電気回路で連結されており、バルブの開閉を制御しているのはコントロールユニット31である。(コントロールユニットは、電磁バルブの反応時間を確実に把握している)これらの電磁バルブ22、26、30は遠隔操作できるにもかかわらず、コンパクト化を図るために、少なくとも部分的にダイの中に差し込まれることになる。
【0024】
そのしくみについては、フランスの特許FR2872082あるいは国際特許WO2006−008380に詳しく、いずれの特許においても、特許取得者本人として、ぜひ参考にしていただきたい。
【0025】
型締部8には、圧力を検知するセンサー32が内蔵されている。中空容器2作成の際、パリソン3の内圧を測定するためである。実際の圧力測定を記憶するコントロールユニット31に接続されているセンサー32は、ノズル18部分に通る繊細に感知する導線部分33につながっている。(圧力はパリソン内圧に等しい)
【0026】
パリソン3から中空容器2を成形するのは以下の手順で行われる。
【0027】
運搬経路に設置されたパリソン3は、まずトンネル型炉7に搬入される。そこで口顎部4を下向きに加熱されるが、その方法は、先述のとおりである。トンネル型炉7から排出されると、パリソン3は回転盤10のペンチで挟まれ、口顎部4が上向きになるように回転された後、あらかじめ開けられている金型11の中に運搬され、金型内に充填される。この段階で延伸ロッド16は、上方に待機している状態である。
【0028】
回転式コンベア9が徐々に回転するにつれ、金型11は充填されたパリソン3を閉じ込めるように閉まっていく。金型11が完全に閉まる(図5A)、あらかじめ設定された作業開始合図 が出され、延伸ロッド16は、型締めのための空洞部(キャビティ)15に向かって下降を始める(図5B)。作業開始合図は、グラフ3、4、6、10において、時間の線上(横座標)に表されている。この瞬間から、パリソン内圧Pを測定し続ける。これによって得られた各数値はコントロールユニット31に記憶される。「測定し続ける」という表現は、つまり、パリソン3内圧の変化には、時間を要するからである。このためにハイパフォーマンス力のあるセンサー32を選ぶ。このセンサーは、5ミリ秒以内の期間の圧力を測定できる能力があるが、2ミリ秒以下が好ましいのである。さらに、1ミリ秒の測定ができれば理想的である。
【0029】
回転コンベア9の円周上に設置された金型11が、あらかじめ設定された位置の角度に到達し作業を始められる状態になる瞬間と、作業開始合図 は調和している。第一番目の方法として、作成段階における延伸ロッド16の移動指令は、手動で行われる方法がある。最低一つのカムが回転あるいはスライドして、延伸ロッド16を作動させるという仕組みである。この場合、カムとカムを作動させる装置が接触する瞬間と同じであるため、延伸ロッドがまさに下降を始める瞬間と作業開始の合図が混同される。
【0030】
第二番目の方法は、延伸ロッド16の移動が、コントロールユニット31によって自動制御される方法である。この場合、延伸ロッドが下降を始める瞬間は、作業開始合図とずれる。このずれは自動制御システムが反応するまでに起こるオフセット値である。このオフセット値は、金型11が閉じると同時にいち早く延伸ロッドが下降を始めるように、形成機の製造元があらかじめ作業開始合図を設定した数値が起因している。延伸ロッド16の移動速度はV で記した。この速度は延伸速度とも呼ばれる。
【0031】
あらかじめ設定されたプリブロー開始の合図tで、コントロールユニット31は、プリブロー電磁バルブ22の開弁を行う。これはプリブローのための空気供給源20をパリソン3内部に接続するためである。
【0032】
この瞬間、つまり、実際にプリブロー開始の瞬間tは、パリソン3の内圧Pが上昇を開始する点である。この瞬間はプリブロー開始の合図tに対して遅れを取るが、それはまたプリブローの電磁バルブ22が反応するタイミングが遅れることでもある。
【0033】
この遅れは、製造元が設定をした際に起こったものか、あるいは実際に測定されたものに起因しているが、プリブロー成形開始の合図tのタイミングを調節する際に考慮する。延伸ロッド16がパリソン3の底に到達し、そのあとプリブロー成形が開始されるようにという設定を行う。この瞬間は、延伸ロッド16の下降速度(任意)と、パリソン3の長さ(こちらも任意)から、簡単に算出することができる。
【0034】
図4と図6上の横座標に、実際のプリブロー成形開始の瞬間tを記し、プリブロー開始点をAと記した。このA点では、プリブローに関係のある圧力はほとんど起こらない。金型11内に充填される際のパリソン3の内圧は、気圧とほぼ同じである。
【0035】
このA点からパリソンの軸方向への引っ張り延伸が開始される。それは、図4と図6でも読み取ることができるが、プリブローが開始するA点より左は圧力がなく、A点からいきなり昇圧する。
【0036】
A点から、パリソン3の内圧は急激に上昇し、強く引っ張られていることが理解できる。パリソン3の内部にエアが吹き込まれ、吹き込みの圧力が最高に達する点tまで、パリソン3内のボリュームが上昇する。(ここでは、周方向への膨張延伸は起こらない。図5c参照のこと)吹き込みの圧力が最高に達する点tは、パリソン3のプラスティック樹脂が自重で下方に向かって伸び切った段階である。この瞬間tは吹き込みの圧力が最高に達する瞬間であり、グラフ4、7、9においてBで記した。このB点では、ブロー成形のための昇圧はなく、それまで右上がりだった曲線がB点を境にグラフでは右に降圧をはじめる。吹き込みの段階での最高圧力をPで記した。
【0037】
この吹き込みの段階で圧力が最高点に達する瞬間tを境に、パリソンの軸方向の引っ張り延伸と周方向への膨張延伸段階が開始する。この段階の始まり、吹き込みの圧力が最高点に達する直後であるが、グラフでは、パリソン内圧Pがわずかに減少する時期P を迎える(図5D)ことが読み取れる。この気圧減少Pは、パリソン3の周方向の膨張延伸がいきなり開始し、プラスティック樹脂が自重で垂れ下がる現象は終了し、プラスティックの変形が起因しているためである。
【0038】
約1バールの気圧減少P後、圧力Pは安定し、エアが吹き込まれることにより、パリソン3内のボリュームは膨張を始める。(図5E、5F)この軸方向への引っ張り延伸と、周方向への膨張延伸が完了すると、延伸段階が終了する。それは延伸ロッド16が伸び切って最下部に達し、パリソンの底6が金型の底14に強く押し付けられた時である。(図5G)
【0039】
パリソンを軸方向・周方向へ変形させるということは、軸方向と周方向どちらの方向にも引っ張り、プラスティック樹脂を均等に広げるということであり、それは同時に、中空容器2の機能が安定することとなるばかりでなく、さらに中空容器に入れられる各種気体や流動物の透過性を低下させるということである。このことに関するさらに詳しい情報は、Rosato et DiMattia による “Blow Molding Handbook” (Hanser出版、 2004年、第二版)を参考にすることができる。
【0040】
引っ張り延伸終了後、延伸ロッドは下方に降りた状態となり、パリソン3の周方向への膨張段階に入る。このとき、グラフによると圧力を表す曲線に極端な屈折は見られず、安定していることが読み取れる。
【0041】
それゆえにtで記される膨張延伸終了点では、圧力の変化を表すグラフの曲線上で、他の点で起こるような特に目立った特徴が見られない。それにもかかわらずtは前もって予測することができる。延伸速度V(調整可能)と中空容器の長さからあらかじめ算出できるからである。まもなく周方向の膨張延伸が終了するが、膨張延伸終了地点はtで記した。この地点はパリソン3が空洞部(キャビティ)15の内壁全面に引き伸ばされ、金型の上下全体にまでほぼ到達する時である。言い換えると、たとえば中空容器2に、よりすぐれた安全性、あるいは見た目の良さから、突出した帯状部、くびれ、その他補強のための部分が施される場合のように集中的な作業が必要な部分では、パリソン3と空洞部15の接触が完全ではない場合もあるが、パリソン3内のボリュームが、中空容器の完成品とほとんど同じサイズにまで引き伸ばされた時点ということである。(図5H )膨張延伸の終了する点t は、グラフの曲線に明らかな変化が読み取れる。この点を膨張延伸終了点とし、グラフ4と10においてC点と記した。この点では、グラフ上の曲線がカーブを見せ、昇圧の起こることを表している。このC点における圧力は膨張延伸終了の圧力でPと記した。
【0042】
膨張が終了するC点から、パリソン3のボリュームは安定しているものの、パリソンの内圧が上昇する段階に入る。
【0043】
プリブローの空気流量Dと圧力Pは安定している。パリソン3の内圧Pは、ブロー成形開始点tから急激に上昇を始め、ブロー成形の段階が始まる。パリソン3の内部は、ブロー成形の空気供給源24とつながり、パリソン3の内圧Pはいきなり上昇し、ブロー成形の圧力の数値に到達する。ブロー成形の電磁バルブ26が反応する時間がかかるために、ブロー成形開始の瞬間tはブロー成形の開始合図の瞬間tに遅れを取る。コントロールユニット31が、プリブローの電磁バルブ22を閉弁し、同時にブロー成形の電磁バルブ26を開弁する合図である。ブロー成形開始の瞬間tは、圧力を表す曲線上で最も高い位置を示す。この点Dは、これまでで最も急激な圧力の上昇を示す、ブロー成形の開始点である。
【0044】
本発明の発明者たちは、プリブローは中空容器の完成品の質を決定する重要な役割を持つ段階であると考えている。プリブローの管理は、プリブロー圧が示すグラフの曲線を参考にして行われる。理想的なのは、作成されるすべての中空容器が、全く同じように出来上がるということである。現実には、作成の工程の単調化はなされにくい。なぜなら、中空容器2の作成過程で、成形機1の型締部8に影響を及ぼす物理的(圧力、温度)あるいは力学的(電磁バルブの反応時間、気体経路のつまり、プリブロー中の漏れ、そしてブロー成形中の漏れなど)パラメータは条件によっていろいろな変化した状況が考えられるからである。作成される中空容器2に細かい違いが表れるのもそのためである。本発明は、プリブローの段階で中空容器の完成品の質を均等にするために、以下に挙げるパラメータの少なくとも一つを調整しながら、できる限り所望のスタンダードな形状に近づくものを作成することを提案するものである。
パリソンの加熱温度T
プリブロー圧P
プリブローの空気流量D
延伸速度V
プリブロー開始の合図t
ブロー成形開始の合図t
中空容器の質が、たとえば中空容器の底の肉厚、容器壁の厚み、底部や口顎部のムラなど、商品として有効となりうる、あらかじめ設定されたモデルに近いものを作成できる予定の、プリブローの理論で得た曲線が予測できる。(つまり、ブロー形成開始の合図tをすなわちD点をブロー成形の開始点とする)
【0045】
本発明の発明者たちは、作成される中空容器すべてにおいて、プリブローの理論より予測された曲線通りの製品を作ろうとするのは空しいことだと考える。効率的で、かつ、実に簡単な管理の方法を提案するのもそのためである。
【0046】
時間と圧力の関係をもとに理論から予測されたグラフ上に、少なくともある一つの点で変化を示している点を読み取る。プリブローの作業にとって必要な点であり、それぞれの段階で変化を見せるこれらの点の周辺に時間(横軸)の許容範囲、圧力(縦軸)の許容範囲、また、算出した測定のエラーの許容範囲を設けることができる。
【0047】
各調節事項については、理論から予測したものと作成工程で得た実際の結果を比較する。各点における実際の測定結果において、理論から予測された内容をもとに設けられた許容範囲内にあるかを確認するのである。それぞれの瞬間が許容範囲内に起こっているか、また許容範囲内の圧力になっているかということを確認するのである。実際の結果が許容範囲内にある場合、実際と理論は混同されるということになる。
【0048】
反対に、実際の結果が許容範囲外に現れるとしたら、実際の結果と理論の内容は違うことになる。このような場合、フィードバックの方法により、以下に挙げるパラメータの中から、少なくとも一つの事項を調節することにより、これから行われる中空容器作成において、実際の結果を理論から得た予測に近づけることができるのである。
【0049】
A、B、C、Dの中からひとつ、あるいは組み合わせで調整する。これらの各点を段階別に、どのように調節すべきかについて説明する。
【0050】
A点
先述したように、A 点はパリソン3の内圧が昇圧を始める点tをも表している。プリブローの電磁バルブ22の管理をするコントロールユニット31が開弁の指令を出した後(プリブロー開始の合図tによる)、プリブローの空気供給源20をパリソン3内部に接続する。
【0051】
型締部8で成形されるすべての中空容器について、A点が同じ位置に現れることが重要である。A点の起こるところを検知する。つまりパリソン3の内圧Pが昇圧しはじめる瞬間tを検知するのである。(中空容器2作成中か、プリブロー後に得たグラフをもとに測定する)
【0052】
次に、実際のA点を理論から予測したA点と比較する。A点では圧力が起こらないということを考慮しつつ、実際にA点の起こる瞬間tを、理論から得たA点の起こる瞬間、つまり、理論から得たプリブロー開始の瞬間と比較するのである。これは、実際にAの起こる瞬間tが、A点の許容範囲内にあるかどうか確認するためである。
【0053】
実際のプリブロー開始の瞬間tが、(許容範囲を考慮しながらも)理論から予測したプリブロー開始よりも遅れる場合、プリブロー開始の合図tを早める。
【0054】
反対に実際のプリブロー開始の瞬間tが、(許容範囲を考慮しながらも)理論から予測したプリブロー開始よりも早まる場合。プリブロー開始の合図t を遅らせる。
【0055】
グラフ6で描かれたグラフ全体を占めている二つの曲線は、プリブロー開始の合図tを二つの異なる条件で調節したことを表している。左の曲線は、プリブロー開始の合図tを早めた場合であり、右の曲線は反対に、プリブロー開始の合図tを遅らせた場合である。理論から予測される線は、この二つの間に点線で示した。
【0056】
さらに詳しく述べると、実際のプリブロー開始の瞬間t と理論から予測したプリブロー開始の瞬間の差を算出することが望ましいのである。実際のプリブロー開始の瞬間tが、予測したプリブロー開始の瞬間に遅れている場合は、プリブロー開始の合図tを算出したズレの分だけ早め、実際のプリブロー開始の瞬間tが、予測したプリブロー開始の瞬間より早く起こる場合は、プリブロー開始の合図を算出したズレの分だけ遅らせる。
【0057】
以下の表に、例として、数値を提示した。これまで述べた点を明確にするために、この表に表した数値はグラフ4の圧力の曲線に表われている。
【0058】
【表1】

【0059】
A点を調節するために成形機1は以下の操作を行うシステムを持つ。
実際のプリブロー開始の瞬間t を検知するシステム
実際のプリブロー開始の瞬間tを、理論から予測したプリブロー開始の瞬間と比較するシステム
この比較結果をもとにプリブローの開始合図tを調整するシステム
【0060】
成形機1は、場合によっては複数のA点(例えば10個程度)の記録を記憶するシステムを持ち、同時に作成される複数の中空容器2について、細かい統計を出すシステムを持つ。
【0061】
これらの機能は、成形機1のコントロールシステム31の中に、コンピュータプログラムとして内蔵されるものとする。
【0062】
B点
B点は、プラスティック樹脂製のパリソン3が、自重で延伸する段階が終わり、周方向への膨張延伸が始まる瞬間である。
【0063】
吹き込み段階の圧力が最高に達する瞬間tを調節することは(B点の横座標)、パリソン3の周方向の膨張延伸tをコントロールすることにつながる。
【0064】
吹き込み段階で圧力が最高に達する点Bが早すぎる、あるいは遅すぎると、同時に中空容器2の質を不安定にする樹脂の広がりにムラを引き起こす原因となる。
【0065】
B点の遅れを検知することは、つまり、プリブロー開始の合図t が出てから、(しかしブロー成形開始の合図tが出る前に)ペリソン3の内圧が最高点に達する瞬間t の遅れを検知するということである。A点と同様、中空容器2の作成途中か、希望としては、プリブロー後に得たグラフの曲線上で、直接測定されるのが好ましい。
【0066】
続いて実際に得たB点と理論から予測したB点を比較する。実践的に、実際に吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間tと、予測して得た瞬間を比較する。もういっぽうでは、実際に吹き込みの圧力が最高に達する点Pと予測した圧力最高点を比較する。その比較結果が、二つとも許容範囲以内にあるかどうか確認する。実際のB点と予測したB点は、予測したB点の周辺で許容範囲内にある場合一致しする。
【0067】
反対に許容範囲の外にあって、実際のB点と予測のB点が一致しない場合、以下のパラメータから少なくとも一つをフィードバックの方法により変更する。
プリブローの開始合図t
プリブロー圧P
プリブローの空気流量D
延伸速度V
パリソンの加熱温度T
吹き込みの段階で圧力が最高点に達する実際の瞬間tは、理論から予測した瞬間よりも早く起こるか、一致するか(許容範囲内)、あるいは遅れる。また、吹き込みの段階で最高の圧力を示す点Pは、理論から予測した圧力に対して低いか、同じか(許容範囲内)、高いかというように、いくつかの場合があげられる。
【0068】
プリブロー開始の合図tを変更すると、A点がずれることになる。プリブロー開始の合図tが遅れる時、A点は時間の軸を右側へずれる。あるいは、反対にプリブロー開始の合図tが早まる時、A点は時間軸の左側へずれる。この変更は、プリブロー全体のグラフに影響を与え、A点がずれるのと同じほうへずれを起こす。
【0069】
プリブロー開始の合図t変更は、吹き込みの圧力が最高に達する瞬間tにも影響を及ぼす。つまり横軸のB点である。
【0070】
吹き込みの段階で、実際に圧力が最高に達する瞬間tが、理論から予測した瞬間よりも早まるか、あるいは遅れる場合、プリブロー開始の合図tを、遅らせるか早めるかという、実に簡単な方法で問題を解決できるのである。しかしながら、実際のプリブロー開始の瞬間tは(横座標のA点)必要もないのに影響を受けることになる。それゆえに、吹き込みの段階で圧力が最高に達する瞬間tを変更するために、その他のパラメータを変更したにもかかわらず、吹き込みの最高点Bを許容範囲内に移動させられない場合に限って、プリブロー開始の合図tをフィードバックにて調節するという方法を取ることが望ましい。
【0071】
ほかのパラメータを調節することによっておこる影響は、図7、8、9にグラフとして表した。
【0072】
図7は、プリブローの段階で、プリブロー圧P、あるいはプリブローの空気流量Dの影響を表した。プリブロー圧Pはプリブローの空気流量Dと同様の影響があらわれることが読み取れた。この二つのパラメータを調節することで、PとDで得られる点に影響を与えることができる。それはつまり、
【0073】
この点を上昇させることにより、安定した空気流量Dをもつプリブロー圧力Pを上げることができ、安定したプリブロー圧力Pをもつ流量Dを上げることにつながる。D と P がお互いに上昇するということである。
【0074】
反対に、P、Dで得た点が減少するということは、安定した空気流量Dをもつプリブロー圧力Pを下げることとなり、安定したプリブロー圧Pをもつ空気流量Dを下げることにつながる。DとPがお互いに減少するということであり、どちらかを上昇しどちらかを減少させるというような操作は不必要である。
【0075】
図7で、左の曲線は右の曲線に比べて、P、Dで得た点の数値が高いことを示している。
【0076】
、Dで得た点の上昇は、A点からの昇圧の状態に結びついていることが分かる。(A点とは、実際のプリブロー開始の瞬間tである)吹き込みの段階で圧力が最高に達する瞬間t が早く起こること、そのときの最高圧力Pが上昇することである。(グラフ上でB点は、左上方向への移動を見せる)
【0077】
反対に、P、D で得た点の減少は、A点からの昇圧の状態は緩やかになり、それを表すグラフの曲線はなだらかになる。
【0078】
吹き込みの段階で圧力が最高に達する瞬間t が遅くなり、その時の最高圧力Pが減少することである。(グラフ上でB点は、右下方向への移動を見せる)
【0079】
図8は、プリブローの段階で、延伸速度Vの与える影響について表したグラフである。低い方の曲線は、高い方の曲線に比べて、延伸速度V が速いのである。
【0080】
延伸速度V を上げることによって、吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間t を早めることができ、その時の最高圧力P を減少させられることが読み取れる。(グラフ上でB点は、左下方への移動がみられる)いっぽう、延伸速度V を下げることによって、吹き込みの圧力が最高に達する瞬間t を遅れさせることができ、その時の最高圧力P を上昇させることができるのである。(グラフ上でB点は、右上方への移動がみられる)A点とB点の間の、圧力の変化が作り出すグラフの曲線上に、延伸速度V から与えられるは影響についてはあらわれない。
【0081】
図9は、プリブロー成形段階での加熱温度Tの与える影響を表したグラフである。
【0082】
曲線の低い方は加熱温度Tで、加熱温度の高い方がグラフ上でも高い曲線を描く。
【0083】
加熱温度Tの上昇は延伸速度V の上昇に影響を与えていることが読み取れる。つまり、吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間t を早め、その時の最高圧力Pを減少させることになる。そのいっぽうで、加熱温度Tの減少は、延伸速度Vを減少に影響を与えていることが読み取れる。つまり、吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間t を遅らせ、その時の最高圧力Pを上昇させることになる。
【0084】
それぞれの状態に応じてB点を許容範囲内に移動させるために、以下に挙げるパラメータが与える影響を考慮しつつ、パラメータによってはほかのものよりも優先させられるべきものがある可能性なども含めて、推奨する方法を提案する。
【0085】
実践的な方法として、加熱温度Tよりも、圧力P が空気流量D を優先する。すべての曲線上、特に、実際のプリブロー開始点Aに影響を及ぼすことを考慮する。
【0086】
実践的な方法として、圧力P、空気流量Dあるいは加熱温度Tを調節しても、圧力が最高点に達するB点を許容範囲内に移動させることのできない場合に限り、プリブロー開始の合図tを調節する。
【0087】
延伸速度Vに関しては、B点の位置を微調整するときに限り変更する。(また、成形機1が延伸速度V の調整をおこなうシステムを有する時に限る)
【0088】
【表2】

【0089】
吹き込みの圧力が最高に達する瞬間と、その時の最高圧力の結果を表すため、あとに数的な例の表を表す。
【0090】
ここで提示する測定の結果は、グラフ4で示した曲線に表われている。
【0091】
【表3】

*リットル毎秒(平常の気圧で1秒間に1リットルの流量)
【0092】
吹き込みの圧力が最高点に達するB点の移動(とくに横座標、最高点に達する瞬間t)は、このあとの延伸終了の瞬間t(Cの横座標)に影響を及ぼすことに注目する。
【0093】
B点の位置を変えてしまうようなパラメータの調節は、C点ですでにズレを引き起こし、D点の位置までも変えてしまうのである。(つまり、変更の時にそれぞれの段階によって、ブロー成形開始の合図tを早めたり遅らせたりする必要があるということである。)
【0094】
調整の仕方について以下に記す。
【0095】
B点を調節するために、成形機1は以下のシステムを内蔵すること
吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間tを検知するシステム
吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間tと、そのときの最高圧力Pを、理論から予測した瞬間と圧力をもとに比較するシステム
この比較をもとに、プリブロー空気流量Dを調節するシステム
【0096】
これらのシステムは、成形機1のコントロールシステム31に、コンピュータプログラムとして内蔵することができる。
【0097】
そのほか、プリブローの空気流量Dを調節するために、たとえば成形機1内にある、プリブローの電磁バルブに、空気流量のレギュレーター34などを設置されることが可能で、(図2参照)これは、コントロールユニット31によって管理されるものとする。
【0098】
成形機1は、たとえば補助プログラムというような形で、パラメータの方法を選択できるように、コンピュータプログラム内に以下のようなシステムがインプットされるものとする。
吹き込みの圧力が最高に達する実際のB点と、理論から予測されたB点を比較することにより、プリブローの圧力P を調整するシステム
吹き込みの圧力が最高に達する実際のB点と、理論から予測されたB点を比較することにより、加熱温度Tを調節できるシステム
吹き込みの圧力が最高に達する実際のB点と、理論から予測されたB点を比較することにより、ブロー開始の合図tを調節するシステム
吹き込みの圧力が最高に達する実際のB点と、理論から予測されたB点を比較することにより、延伸速度Vを調節するシステム
【0099】
応用として、吹き込みの圧力が最高に達する瞬間tを、最高の圧力点Pをとは関係なしに調節することもできるし、逆に、最高の圧力点Pを、吹き込みの圧力が最高に達する瞬間tを、とは関係なしに調節することができる。
【0100】
前者の場合、吹き込みの圧力が最高に達する点を検出し、吹き込みの圧力が最高点に達する瞬間tを、早める、あるいは遅らせるために、プリブロー圧P、プリブローの空気流量D、プリブロー開始の合図t、延伸速度V、加熱温度Tの中から少なくとも一つのパラメータを調節する。
【0101】
後者の場合、吹き込みの圧力が最高に達する点を検出し、吹き込みの最高圧力Pを上昇あるいは減少させるために、プリブロー圧 P、プリブローの空気流量D、プリブロー開始の合図tP、延伸速度 VE、加熱温度Tの中から、少なくとも一つのパラメータを調節する。
【0102】
場合によっては、成形機1は、同時に作成される複数の中空容器2のために(例えば10例程度)複数のB点を同時に記録・記憶して、詳しい統計を出すシステムも含まれる。
【0103】
C点とD点について
C点はパリソン3の膨張延伸が終了する点である。パリソンが空洞部(キャビティ)15全体に引っ張られ金型の底に到達する時、つまり、中空容器2の完成品のボリュームにほぼ同じになる時である。
【0104】
C点から圧力は急激に上昇し、大きく右上がりとなる。
【0105】
パリソン3の延伸が終了すると、プリブローのための空気を吹き込み続ける必要はなくなる。しかし、プリブローの圧力Pでは、樹脂全体が空洞部(キャビティ)15の内面全体に完全に引き伸ばされるには不十分であり、(樹脂は冷却を続け、型締めがしにくくなる)このような操作は時間の無駄であり、中空容器2の質を向上することなく生産性に負担をもたらす。このような理由から、パリソンの延伸が完了すると、ただちにブロー成形の段階が始まることが理想的である。
【0106】
言い換えれば、C点(パリソン3の膨張延伸が終了)と、D点(ブロー成形開始)、二つのタイミングは間を開けずに、作業を集中させる方法を取ることが望ましい。
【0107】
C点は、つまり、ペリソン3の圧力が一気に上昇する瞬間tである。(膨張延伸が終了する瞬間)そして、ブロー成形の開始合図tが膨張延伸の終了する瞬間よりも遅れる場合、D点をC点に近づけることができるように、ブロー成形の開始合図を早める。
【0108】
さらに詳しく述べるならば、膨張延伸終了の瞬間tとブロー成形開始の合図tにはズレがある。この二つの点のズレの分だけ、ブロー成形開始の合図tを早めるのである。実際には、ブロー成形の電磁バルブ26が反応する時間を考慮しなければならない。実際のブロー成形開始の瞬間(横座標でDと記す)が、ブロー成形開始の合図tにやや遅れを取るのもこのためである。
【0109】
ほかにも、膨張延伸の瞬間tと、ブロー成形開始の瞬間tDの差を測定し、このズレの分だけブロー成形開始の合図tSを早める。あるいは、膨張延伸終了の瞬間tCとブロー成形開始の合図tSをの差を測定し、このズレの分だけ、ブロー成形開始の合図tSを早め、電磁バルブ26の反応のタイミングを早める。
【0110】
A点とB点も同様、C点でもある程度の許容範囲を設ける。
【0111】
このほか、C点とD点は膨張延伸終了の瞬間tCと、ブロー成形開始の瞬間tDとの差が、あらかじめ設定された数値内であると混同されることになる。(膨張延伸長終了の瞬間tCとブロー成形開始の瞬間tDとのズレの分だけ、ブロー成形の電磁バルブ26の反応のタイミングを早める。)
【0112】
図10では、二つの曲線をグラフにあらわしたものである。
【0113】
右に曲線は、膨張延伸終了の瞬間tCとブロー成形開始の瞬間tDとの間に、差があることを表している。
【0114】
左の点線で描いた曲線は、右の曲線をもとに、フィードバックにて調節した結果を表している。右の曲線上にあらわれたtC と tDのズレの分だけ、ブロー形成の開始合図tSを早めた。
【0115】
これまでに述べた事柄について明確にするべく、数的な例を以下の表に示した。ここに示した測定結果の数値は、グラフ4の圧力に関する曲線にあらわされている。
【0116】
【表4】

【0117】
D点を調節するために、成形機1は以下の機能を含む、
膨張延伸が終了する瞬間tCを検知するシステム
膨張延伸が終了する瞬間tCをもとに、ブロー成形開始合図tSのタイミングを調節するシステム
【0118】
さらに詳しく、成形機1には以下のことが含まれる
ブロー成形開始の瞬間tDを検知するシステム
膨張延伸の終了する瞬間tCを、ブロー成形開始の瞬間tDと比較するシステム。この比較結果をもとに、双方の瞬間のズレの分だけ、ブロー成形開始の合図tSを早めるシステム
【0119】
場合によって成形機1は、同時に作成される複数の中空容器2(例えば10例程度)において、複数のC点とD点、C点またはD点を同時に記録・記憶し、そこから詳しい統計を出すシステムを備えている。
【0120】
択一的に(あるいは補助的に)、成形機1は膨張延伸が終了する瞬間tCを、ブロー成形開始の合図tSと比較するシステムを備えている。双方のタイミングのズレの分だけ、ブロー成形始の合図tSを早めるシステムで、ブロー成形の電磁バルブ26の反応のタイミングを早くするシステムである。
【0121】
これらのシステムは、コントロールユニット31にコンピュータプログラムとして内蔵することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型にペリソン3を充填し、
あらかじめ設定されたプリブロー開始の瞬間(tP)によって電磁バルブ(22)が開弁され、パリソン(3)内部に、あらかじめ設定されたプリブロー圧をもつ空気供給源(20)を接続し、
パリソン(3)の内圧P を測定し、
パリソン(3)の内圧Pが上昇を始める実際のプリブロー開始の瞬間(tA)を検知し、
前記プリブロー開始の瞬間(tA)と、理論から予測されたプリブロー開始の瞬間を比較し、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、予測したプリブロー開始の瞬間よりも遅れる場合、プリブロー開始の合図(tP)を早め、および
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、予測したプリブロー開始の瞬間よりも早く起こる場合は、プリブロー開始の合図(tP)を遅らせる、
という工程で進められる、プラスティック樹脂製のパリソン3から金型11の中でブロー成形をおこない中空容器2を作成する方法。
【請求項2】
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)と、理論から予測したプリブロー開始の瞬間との差を測定し、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、理論から予測した開始の瞬間よりも遅れる場合、プリブロー開始の合図(tP)を、二つの瞬間のズレの分だけ早め、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、理論から予測した開始の瞬間よりも早く起こる場合、プリブロー開始の合図(tP)を、二つの瞬間のズレの分だけ遅れさせる、
操作を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)と、プリブロー開始合図(tP)の差を測定し、
あらかじめ設定した電磁バルブ(22)が反応する時間が加わり、実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、プリブロー開始の合図(tP)よりも遅れる場合、プリブロー開始の合図と実際のプリブロー開始の瞬間(tA)とのずれた分と、電磁バルブ(22)の反応時間を加えた分だけ、プリブロー開始の合図(tP)を早くし、
あらかじめ設定した電磁バルブ(22)の反応が早く、実際のプリブロー開始の瞬間(tA)が、プリブロー開始合図(tP)よりも早まる場合、プリブロー開始の合図(tP)と実際のプリブロー開始の瞬間(tA)とのずれた分と、それに電磁バルブ(22)の反応時間を差し引いた分だけ、プリブロー開始合図(tP)を遅くする、
操作を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パリソン(3)を充填するために用意された空洞部(キャビティ)(15)をもつ金型(11)、
あらかじめ設定できるプリブロー圧(PP)もつ空気供給源(20)、
空気供給源(20)と、空洞部(キャビティ)(15)内に充填されたパリソン(3)を接続する清潔な電磁バルブ(22)、
電磁バルブ(22)に開閉の指令を出すコントロールシステム(31)、
パリソン(3)の内圧Pを測定する清潔なセンサー、
パリソン(3)の内圧Pが上昇を始める実際のプリブロー開始の瞬間(tA)を検知するシステム、
前記瞬間(tA)を理論から予測されたプリブロー開始の瞬間と比較するシステム、および
前記比較結果をもとに、電磁バルブ(22)の開弁の瞬間を調節するコントロールシステム(31)、
を含むプラスティック樹脂製のパリソン(3)から中空容器を作成する成形機(1)。
【請求項5】
同時に作成された複数の中空容器(2)から検知された実際のプリブロー開始の瞬間(tA)を、それぞれ記憶するシステムを含む請求項4に記載の成形機(1)。
【請求項6】
電磁バルブ(22)に開弁と閉弁の指令を出し、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)を記録し、
理論から予測したプリブロー開始の瞬間を記録し、
実際のプリブロー開始の瞬間(tA)を、理論から予測したプリブロー開始の瞬間と比較し、
この比較結果をもとに電磁バルブ(22)開弁のタイミングを調節する指令を出すことのできる、
中空容器(2)を作成する形成機(1)に内蔵される、請求項4に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−511540(P2010−511540A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539779(P2009−539779)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001990
【国際公開番号】WO2008/081107
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508356548)シデル パーティシペイションズ (33)
【Fターム(参考)】