説明

プリンタ

【課題】金券等の発行に用いるフォントデータやグラフィックデータが一定時間経過後に自動的にプリンタ内から削除されるようにする。
【解決手段】金券等の印字に使用されるフォントデータやグラフィックデータ等の登録データは、その保存期間(有効期間)を示すデータとともにホストコンピュータ200からインタフェース110を介してダウンロードされ、フラッシュメモリ105に保存される。カレンダ機能部104によって示されるダウンロードされた日時と、有効期間と、登録データ名が登録データテーブルのレコードとしてフラッシュメモリ105に記憶され、ダウンロードされたときから有効期間が経過した登録データはCPU101の制御によってフラッシュメモリ105から削除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに関し、特に、一時的に記憶されたデータに基づいて印字処理を行うプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタには、所定のフォントデータやグラフィックデータが登録され、印字発行の際に、登録されたフォントデータやグラフィックデータが呼び出され、印字処理が実行され、金券等の発行が行われる。印字処理によって金券等を発行する都度、プリンタに接続されたホストコンピュータから金券等の印字処理に用いられるフォントデータやグラフィックデータが送られてくる場合もあるが、フォントデータやグラフィックデータのデータ量が多い場合には発行処理が遅延してしまう。近年、領収書や郵便切手等の金券を発行する場合にプリンタが用いられるようになってきており、領収書や郵便切手等の金券の発行時に用いるフォントデータやグラフィックデータをプリンタのメモリに登録して使用するようにしている。
また、パスワード付きの印刷データがホストコンピュータから送信されてきた場合、印刷データを画像データに変換して記憶し、時間計測を開始して所定時間が経過するまでにパスワードが入力されないときや、入力されたパスワードが正しくないとき、印刷ジョブの画像データを消去するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−282477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術では、領収書や郵便切手等の金券の発行時に用いられるフォントデータやグラフィックデータがプリンタに記憶されているため、プリンタが盗難に遭ったような場合、領収書や郵便切手等の金券が偽造される虞があるという問題があった。このように、それ自体が価値を有する金券等の発行機能を有するプリンタの場合、盗難時のプリンタの価格のみならず、プリンタによって偽造される金券の額も被害額となり、プリンタを用いた金券の偽造による被害額をいかに抑えるかが重要なポイントとなる。
また、特許文献1に記載の発明は、パスワードの入力が適正に行われなかった場合に、印刷ジョブ内の画像データを消去するというものであるが、パスワードが適正に入力された場合でも画像データを印刷した後、画像データを消去しており、画像データを保持しながら、セキュリティを向上させるということはできないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプリンタは、印字処理に用いられる第1のデータと、前記第1のデータを一時的に保持する保持期間を示す第2のデータとを対応付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段によって前記第1のデータが記憶されたときからの経過期間を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測された前記経過期間に基づいて、前記記憶手段によって前記第1のデータが記憶されてから、前記第2のデータによって示される前記保持期間が経過したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に応じて前記第1のデータおよび前記第2のデータを前記記憶手段から消去するデータ消去手段とを備えることを特徴とする。
また、前記保持期間が経過する前に前記保持期間の更新が指示されたか否かを判定する更新指示判定手段と、前記更新指示判定手段によって変更が指示されたと判定された場合、前記保持期間を更新する更新手段とをさらに備えるようにすることができる。
また、前記第1のデータは、フォントデータ、グラフィックデータ、またはプログラムデータであるようにすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプリンタによれば、印字処理に用いられる第1のデータと、第1のデータを一時的に保持する保持期間を示す第2のデータとを対応付けて記憶し、第1のデータが記憶されてからの経過期間を計測して、経過期間に基づき、第1のデータが記憶されてから、第2のデータによって示される保持期間が経過したと判定されたとき、第1のデータおよび第2のデータを消去するようにしたので、プリンタが盗難等にあった場合でも、プリンタ内に記憶されているフォントやグラフィック等を用いた印字処理による金券等の発行を抑制することができ、セキュリティを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明が適用されるプリンタの一実施の形態の構成例を示している。同図に示すように、プリンタ1は、後述する制御部100の制御により、フラッシュメモリ105(図2)に記憶している所定のフォントデータやグラフィックデータ等に基づいて帯状の用紙16に印字を行うサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11に用紙16を押圧し、回転することによって用紙16を所定の方向に搬送するプラテンローラ12と、制御部100の制御下、所定の方向に回転する搬送モータ14と、搬送モータ14の回転駆動力をプラテンローラ12に伝達し、プラテンローラ12を回転させるギア13と、用紙16が巻き回されて形成され、サーマルヘッド11に用紙16を供給する用紙供給部15と、用紙16の有無を検出するペーパーエンドセンサ18と、用紙16の搬送方向を転向させ、サーマルヘッド11に誘導するローラ17と、用紙16の位置を検出するピッチセンサ19と、用紙16を挟持して排出方向(図1の左方向)に送り出すローラ20,21と、制御部100の制御下、印字済みの用紙16を所定のタイミングでカットするカッタ28と、インクリボン27が巻き回されて形成され、サーマルヘッド11と用紙16の間にインクリボン27を供給するインクリボン供給部22と、インクリボン27をサーマルヘッド11に誘導するローラ24と、インクリボン27の有無を検出するリボンエンドセンサ23と、インクリボン27を巻き取るインクリボン巻取部26と、インクリボン27をインクリボン巻取部26に誘導するローラ25と、各部を制御する制御部100等から構成されている。
【0009】
図2は、図1に示した制御部100の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、制御部100は、後述するROM(Read Only Memory)102に記憶されている制御プログラムに従って動作し、各種処理を実行するとともに各部を制御するCPU(Central Processing Unit)101と、制御プログラムを記憶するROM102と、CPU101が処理を実行する上で必要となる各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)103と、現在の年月日および時刻等のカレンダ情報を出力するカレンダ機能部104と、後述する印字処理時に使用されるフォントデータやグラフィックデータ等の各種データを記憶するフラッシュメモリ105と、CPU101の制御下、搬送モータ14の回転方向や回転速度を制御する搬送制御部106と、ピッチセンサ19を駆動し、ピッチセンサ19から出力される用紙16のピッチを検出するためのピッチ検出信号に対応するピッチ検出データをCPU101に供給するピッチ検出部107と、ペーパーエンドセンサ18から出力される用紙16の終わりを示すペーパーエンド検出信号に対応するペーパーエンド検出データをCPU101に供給し、リボンエンドセンサ23から出力されるインクリボン27の終わりを示すリボンエンド検出信号に対応するリボンエンド検出データをCPU101に供給するエラー検出部108と、CPU101の制御下、サーマルヘッド11を制御し、用紙16に対して印字処理を行わせるサーマルヘッド制御部109と、ホストコンピュータ200との間の通信を制御するインタフェース(I/F)110と、プリンタ1の動作環境等を設定するためのDIPスイッチ(Dual In-line Package switch)111と、CPU101よりバス114を介して供給された各種データを表示する表示部112と、各種コマンドやデータを入力するための操作パネル113と、各部を接続し、各種データやコマンドを各部間でやり取りするためのバス114等から構成されている。
【0010】
領収書や郵便切手等の金券を印字発行するときに使用されるフォントデータやグラフィックデータは、ホストコンピュータ200からインタフェース110を介して予めプリンタ1に供給され、CPU101の制御によりフラッシュメモリ105に記憶される。その際、それらのデータ(フォントデータやグラフィックデータ等)を保持する保持期間(有効期間)も同時にプリンタ1に供給され、登録データテーブルのレコードの1項目として記憶される。
【0011】
フラッシュメモリ105には、フォントデータやグラフィックデータ等の登録データが所定のファイル名(登録データ名)で記憶されるとともに、その登録データに関する付属情報が記憶される。付属情報は、後述するように、登録データがフラッシュメモリ105に記憶された日時(年月日時分)と、有効期間と、登録データ名(ファイル名)である。
【0012】
図3は、この付属情報が記憶される登録データテーブルの構成例を示している。登録データテーブルは、登録データがホストコンピュータ200からダウンロードされ、フラッシュメモリ105に記憶された日時(年月日時分)を示す項目「ダウンロード日時」と、その登録データの有効期間(フラッシュメモリ105に保持される期間(保持期間))を示す項目「有効期間」と、登録データのファイル名を示す項目「登録データ名」の各項目から構成され、各項目のデータを含む1または複数のレコードによって構成されている。
【0013】
例えば、2007年7月7日13時15分に有効期間が24時間の登録データ(ファイル名「Graphic.bmp」)がホストコンピュータ200からプリンタ1にダウンロードされ、フラッシュメモリ105に記憶された場合、登録データテーブルには、ダウンロード日時が「200707071315」、有効期間が「1440」(単位は分)(1440分=24×60分)、登録データ名が「Graphic.bmp」のレコードが登録される。
【0014】
ダウンロードされた日時は、カレンダ機能部104から出力されるカレンダ情報(現在の年月日時分)に基づいて取得することができる。同様に、有効期間が経過したか否かは、カレンダ機能部104から出力されるカレンダ情報に基づいて取得できる現在の日時(年月日時分)から、登録データテーブルに記憶されているダウンロードした日時(年月日時分)を差し引くことによって得られる経過期間と有効期間の大小を比較することによって判定することができる。即ち、経過期間が有効期間より大きいとき、有効期間が経過したと判定することができる。
【0015】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態において、登録データが有効期間を過ぎたときにフラッシュメモリ105から消去される手順について説明する。
【0016】
まず、ステップS1において、CPU101により、登録データテーブルに、ダウンロード日時から有効期間が経過した登録データがあるか否かが判定される。その結果、登録データテーブルに、ダウンロード日時から有効期間が経過した登録データがないと判定された場合、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が繰り返し実行される。
【0017】
一方、登録データテーブルに、ダウンロード日時から有効期間が経過した登録データがあると判定された場合、ステップS2に進む。ステップS2においては、CPU101により、有効期間を経過した登録データおよびその付属情報が、フラッシュメモリ105から削除される。
【0018】
次に、ステップS3に進み、CPU101により、登録データの有効期間の変更が指示されたか否かが判定される。例えば、ホストコンピュータ200から、登録データの有効期間の変更を指示するコマンドがインタフェース110を介して供給されたか否かが判定される。このコマンドには、有効期間を変更したい登録データの登録データ名(ファイル名)と、変更したい有効期間を指定するデータが含まれる。
【0019】
その結果、登録データの有効期間の変更が指示されていないと判定された場合、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が繰り返し実行される。一方、登録データの有効期間の変更が指示されたと判定された場合、ステップS4に進む。
【0020】
ステップS4においては、CPU1により、変更が指示された登録データに対応する登録データテーブルのレコードの有効期間が、指示された有効期間に書き換えられ、更新される。その後、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が繰り返し実行される。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態により、プリンタ1のフラッシュメモリ105に記憶されている領収書や郵便切手等の金券を印字するときに使用されるフォントデータやグラフィックデータ等のデータ(登録データ)が、ホストコンピュータ200等からダウンロードされて、フラッシュメモリ105に記憶されたときから、指定された有効期間が経過したとき、フラッシュメモリ105から消去されるとともに、その登録データの登録データ名(ファイル名)に対応するレコードが登録データテーブルからも削除される。即ち、有効期間が経過したとき、登録データそれ自体とその付属情報がフラッシュメモリ105から削除される。
【0022】
これにより、プリンタ1が盗難に遭ったような場合でも、有効期間が過ぎたときには既に領収書や郵便切手等の金券の印字に必要なフォントデータやグラフィックデータ等の登録データがプリンタ1の内部には存在しておらず、領収書や郵便切手等の金券を印字することができないようにすることができる。
【0023】
例えば、早朝の6時にホストコンピュータ200からフォントデータやグラフィックデータ等の登録データと有効期間を示すデータをプリンタ1に送信し、登録データをフラッシュメモリ105に記憶させるとともに、登録データの有効期間を示すデータ等の付属情報を登録データテーブルに登録する。
【0024】
有効期間を例えば11時間に設定しておけば、登録データは午後5時(17時)にプリンタ1のフラッシュメモリ105から削除される。従って、社員が帰宅した後の深夜等にラベプリンタ1が盗難に遭ったとしても、そのプリンタ1を用いて領収書や郵便切手等の金券を偽造するという不正行為を防止することができ、セキュリティを向上させることができる。
【0025】
有効期間を短くすればするほど、偽造できる期間を短くすることができ、不正行為を抑制し、被害を小さくすることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0027】

本発明は、例えば、プリンタだけでなく、その他の印字装置にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のプリンタの構成例を示す図である。
【図2】プリンタの制御部の構成例を示すブロック図である。
【図3】登録データテーブルの構成例を示す図である。
【図4】登録データおよび付属情報の消去手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 プリンタ
11 サーマルヘッド
12 プラテンローラ
13 ギア
14 搬送モータ
15 用紙供給部
16 用紙
17,20,21,24,25 ローラ
18 ペーパーエンドセンサ
19 ピッチセンサ
22 リボン供給部
23 リボンエンドセンサ
26 インクリボン巻取部
27 インクリボン
28 カッタ
100 制御部
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 カレンダ機能部
105 フラッシュメモリ
106 搬送制御部
107 ピッチ検出部
108 エラー検出部
109 サーマルヘッド制御部
110 インタフェース(I/F)
111 DIPスイッチ
112 表示部
113 操作パネル
114 バス
200 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字処理に用いられる第1のデータと、前記第1のデータを一時的に保持する保持期間を示す第2のデータとを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段によって前記第1のデータが記憶されたときからの経過期間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された前記経過期間に基づいて、前記記憶手段によって前記第1のデータが記憶されてから、前記第2のデータによって示される前記保持期間が経過したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に応じて前記第1のデータおよび前記第2のデータを前記記憶手段から消去するデータ消去手段と
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記保持期間が経過する前に前記保持期間の更新が指示されたか否かを判定する更新指示判定手段と、
前記更新指示判定手段によって変更が指示されたと判定された場合、前記保持期間を更新する更新手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1のデータは、フォントデータ、グラフィックデータ、またはプログラムデータである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−34848(P2009−34848A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199179(P2007−199179)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【Fターム(参考)】