説明

プリンタ

【課題】プリンタの長期的な故障の防止や印刷品質の低下を防止する。
【解決手段】内部に高熱と圧力を掛けて用紙上に転写されたトナーを定着するヒートロール方式の印刷装置において、モータ又はソレノイドなどの電動機を使い冷却のための空気経路を切替える構成とし、空気経路を印刷時またはスタンバイ時と電源遮断時とで切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に熱源を有するレーザープリンタに係り、特に高熱と圧力によって用紙にトナーを定着するヒートロール方式のレーザープリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8及び図9に従来のレーザープリンタ内における機内冷却方法の一例を示す。図8はレーザープリンタの機内冷却を説明するための図、図9は定着ロール周辺の電子部品の冷却に関してのエアフロー概略を示す図である。
【0003】
図8において、レーザープリンタは用紙搬送ユニット10とスタッカ14の用紙搬送機構、定着ロール5とバックアップロール12の定着機構、現像機3と感光ドラム2とクリーナ9と帯電器11からなる印写機構、光学ユニット1の光学部から構成される。冷却用のファン7は定着ロール5からの熱が他の部位に掛からないような空気の流れを作り出す位置に設置され、プリンタが印刷中や待機中にプリンタ内部を通ってきた空気が定着器方向へ流れ最後にプリンタ外部に排出されるエアフロー15となるように設計されている。レーザープリンタで使用される感光ドラム2は高熱にさらされると劣化を起こし、現像機3の内部に入っている現像剤やトナーは熱によって流動性が低下し印刷障害を発生させ、光学ユニット1に内蔵されるレーザーは高温になると寿命が短くなることが知られている。また、プリンタ内部のプラスチック部品や電子部品も高温によって強度が低下して制御基板の故障の原因にもなる。
【0004】
レーザープリンタでは定着ローラ5から発生する熱8がプリンタ内部の熱の大部分を占めている。また定着ローラ5の熱による影響は熱のみではなく、定着時に印刷用紙13から発生する水蒸気も装置内部に付着すると結露を発生させ、印刷障害の原因や電子部品に付着すると誤動作や故障の原因になる。これらの熱や湿気の影響を出さないため熱定着を行うレーザープリンタは定着時に発生する熱や湿気がプリンタ内にこもらないように定着ロール5方向にエアフロー15ができるように設計され、定着ロール5で発生した熱や湿気8が速やかに外部に排出される位置にファン7が設置されている。
【0005】
図9は、従来の定着ロールの温度センサに非接触型のセンサを使った場合の実装図である。定着ロール5に対向して温度センサ39は配置される。温度センサ39は半導体等の素子を組み合わせて作られているため定着ロール5の発生する高熱に弱く図9(b)に示すようにファン7から導風路40を経由して冷却風43を送ることによって定着ロール5の熱と湿気が導風路40内部に入らないようにすることで温度センサ39を保護している。
【0006】
図9(a)は、プリンタの給電が遮断された状態でファン7が停止した時のエアフローを示す。ファン7が停止すると定着ロール5から発生した熱風41が自然対流により導風路40内部に入り込み温度センサ39周囲の温度と湿気が上昇する。
【0007】
なお、レーザープリンタ内における機内冷却方法に関するものとしては、例えば特許文献1および特許文献2等が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、印刷時および待機時の冷却を切り替え、発熱量の多い印刷時に多くの熱をファンで排気する方法であり、プリンタが給電中の機内冷却に関しては考慮されているが電源の遮断時、またはエナジースター時の電源が供給されていない状態での冷却は考慮されていない。熱定着を行なうプリンタの定着器は電源が遮断された後もすぐには温度が下がらないためしばらくの間は電源供給時と同じ温度である。一般に定着器は温度の安定化のため熱容量が大きく電源遮断やエナジースター状態になった直後はプリンタ内部の定着器など発熱部品が高温であるのにファンが停止してしまうことにより動作時や待機時以上にプリンタの機内温度や湿度が上昇し、機内の温度や湿度が上昇すると湿度や熱で変性を起こしやすいトナーや現像剤の変質やプラスチック部品の変形や変性が発生する。また半導体やハンダ部を有する電気部品は湿度や温度上昇によって寿命が影響を受けるため機器の故障率が上り信頼性を損なう問題があった。
【0009】
また、特許文献2では、機内に熱電変換素子を実装し内部の温度が高い状態のときは熱電変換素子の起電力でファンを回転させ、電源の供給が遮断された状態でも外部の周辺温度と等しい温度になるまで冷却を続ける。熱電変換素子はゼーベック効果を使った熱電変換素子であるがゼーベック効果は数μV/℃程度の素子が一般的であり数十℃程度の温度差でファンを回転させることは技術的に困難であること、ペルチェ素子のような熱電素子は高価であるため実現できても高価で熱電素子の性能を考えると冷却能力が小さい小型のファンを駆動できる程度である。したがって熱電変換素子を使って電源の給電が遮断された状態でファンを駆動して機器の冷却を行なうことは技術的、コスト的に問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、プリンタの長期的な故障の防止や印刷品質の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、内部に高熱と圧力を掛けて用紙上に転写されたトナーを定着するヒートロール方式の印刷装置において、モータ又はソレノイドなどの電動機を使い冷却のための空気経路を切替える構成とし、空気経路を印刷時またはスタンバイ時と電源遮断時とで切替えることにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機器に電力が供給されている状態ではプリンタ内部を経由して最終的にファンでプリンタ外部に排熱し、電力が遮断された状態では自然対流を利用してプリンタ外に排熱することによって熱によるトナーや現像剤の変質やプラスチック部品の熱変形、電気部品の信頼性低下を防止できる。これによってプリンタの長期的な故障の防止や印刷品質の低下を防止できる。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、プリンタの機内の空気の流れる経路を切り替えることによりプリンタの状態によって異なる冷却が必要な部位を効果的に冷却することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、プリンタの印刷、スタンバイ、パワーオフ時のそれぞれの状態に適した冷却を行なうことができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、パワーオフ時に冷却装置であるファンなどが回転停止した状態でも自然対流によって効果的にプリンタ内部を効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明におけるプリンタの排熱方法の概略図である。
【図2】本発明におけるルーバー駆動機構部の構成図である。
【図3】本発明におけるルーバー駆動回路の構成図である。
【図4】本発明におけるルーバー駆動機構部の他の構成図である。
【図5】本発明におけるルーバー駆動回路の他の構成図である。
【図6】本発明におけるルーバー駆動機構部の他の構成図である。
【図7】本発明におけるプリンタのエアフローの概略図である。
【図8】従来技術におけるプリンタの排熱方法の概略図である。
【図9】従来技術におけるプリンタのエアフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
プリンタのファンが装置内からの吐き出しの場合、ファンが回転している状態では機器内部を経由してファンに向かって冷却風が流れる。ファンが吸い込み式の場合はファンから機器内部を経由して機器開口部に冷却風が流れる。電力の供給が遮断された状態では熱の自然対流によって暖められた空気が上昇することで下から上に流れる。発熱する部品の冷却や発熱する部品による他の部品への影響を防止するため冷却ファンは発熱物の近くに配置される。ファンによる冷却風の流れが下から上でない場合は電源遮断時のファン停止時は機内に熱や湿気がたまりトナーや現像剤の変質やプラスチック部品の熱変形、半導体やハンダ部を有する電気部品の信頼性低下が発生する問題があった。またファン停止時に発熱部品上に熱風を出すための開口を設けると電源が供給されファンが回転しているときに開口部から空気を吸ってしまうためプリンタ内部の各風の経路で風量や風圧が下がってしまうため機内の冷却効率が下がってしまう。
【0018】
この問題を解決するため、電力供給が遮断されファンが停止した状態と電力が供給されファンが回転したときに冷却風の経路が切り替わる機構を設ける。具体的にはソレノイドやステッピングモータを使い電力供給時にはルーバーなどの開口部を塞いでおき、電力が遮断された状態ではソレノイドやステッピングモータの励磁が切れてルーバーが開く機構を設ける。これにより電力が供給された状態ではファンによって冷却されるが電力が遮断された状態では機器内部の熱や湿気を自然対流で機外に排出する経路に切り替えてプリンタ内部に熱や湿気が溜まらないようにする。
【0019】
図1に本発明のプリンタの概略図を示す。レーザープリンタは熱によってトナーを定着するため内部には定着ロール5、バックアップロール12を有し用紙搬送ユニット10で搬送されてくる印刷用紙13に転写されたトナーを定着する。トナーは高温で融解させて紙に定着させるため定着ロール5、バックアップロール12はトナー融点を超える高温の状態でありファン7により定着ロール5、バックアップロール12から発生する熱はプリンタ機外に排出される。一般的に熱により影響を受ける光学ユニット1、感光ドラム2、現像機3、クリーナ9から高温の定着ロール5、バックアップロール12方向からファン7へ風が流れるようにエアフローは設計され最終的にファン7によって機外に熱を排出する。定着ロール5は前述したようにトナーを融解する温度となっており、例えば光学ユニット1内部の半導体やレーザーはチップの半導体温度が高いと寿命が短くなるため定着ロール5やバックアップロール12からの熱が光学ユニットに掛かると著しく信頼性が低下する。他にも感光ドラム2は熱で劣化を起こし寿命が短くなる、現像機3の内部のトナーは融点を超える熱が掛かれば溶融し感光ドラム2に正常に印刷することができなくなるなど性能や信頼性に影響する。このように定着ロール5とバックアップロール12部からの熱がプリンタ内部に影響を及ぼすため冷却は定着ロール5から発生する熱がプリンタ内部の各部品方向に流れないようにエアフロー15を設計する。ただし、プリンタの電源が遮断されファン7が回転を止めると定着ロール5やバックアップロール12の熱風8は自然対流で上に上るだけであり十分な排熱ができないため光学ユニット1、感光ドラム2、現像機3、クリーナ9は高温高湿に曝される。
【0020】
図2を用いて電源遮断時の排熱方法について説明する。電源遮断時はファン7が停止してしまうため定着ロール5およびバックアップロール12の熱が機外に排出されず機内にこもる状態を防止するためルーバー蓋4はプリンタの電源が遮断された時にルーバー6を開放する。ルーバー蓋4は定着ロール5から発生する熱せられた空気をルーバー6方向に流すことで熱をプリンタ外部に排出し機内の温度と湿度の上昇を抑える。
【0021】
図2は、本発明のルーバー駆動機構部一例である。ステッピングモータ16によってカム17を回転させルーバー蓋4を動かしてルーバー6を開閉する。図2(a)と(b)はプリンタの電源が遮断された状態でありステッピングモータ16は励磁されていない。カム17はバネ21の力に押されてしまいルーバー6を閉じた位置を保持できない。したがってバネ21に押されてルーバー蓋4が開放位置になりルーバー6は開放状態になる。図2(c)はプリンタの電源が供給された状態でありステッピングモータ16は励磁されてカム17をバネ21の力に逆らって押し込んだ状態で保持する。したがってバネ21に押されてルーバー蓋4によりルーバー6は閉じた状態になる。
【0022】
図3は図2のルーバー駆動機構の駆動回路図であり、モータ制御回路23でモータドライバ22を制御し、スッテッピングモータ16を駆動する。プリンタの給電が遮断されると電源20も遮断するためステッピングモータ16の励磁も遮断される。
【0023】
図4は、図2と本発明のルーバー駆動機構を図2と異なる機構で実現した一実施例である。ソレノイド24の励磁でレバー25の押下を制御しルーバー蓋4でルーバー6を開閉する機構である。図4(a)、(b)はプリンタの給電が切れている状態でありソレノイド24のアクチュエータシャフト30が励磁されていないのでバネ21によりルーバー蓋4がルーバー6から開いた状態である。
【0024】
図4(c)はプリンタに給電されている状態でありソレノイド24のアクチュエータシャフト30が励磁され、レバー25を押下する事によりルーバー蓋4がルーバー6を閉じた状態である。
【0025】
図5は図4のルーバー駆動機構の駆動回路であり、図5(a)は電源31と直結されていて電源31が出力された状態でソレノイド24が駆動される回路である。図5(b)は電源31でソレノイド24を駆動するのは図5(a)と同じであるがトランジスタ32を追加することで制御回路からの信号により任意のタイミングでルーバーの駆動を可能とした回路である。
【0026】
図6は、ルーバー駆動機構の一例である。図6(b)に示すように、ルーバー蓋4はスライドレールシャフト33、スライドレール軸受34により上下に動かすことが可能である。さらにルーバー蓋4はソレノイド24のアクチュエータ30に接続される。この機構の駆動は図5に示す駆動回路で駆動される。図6(c)は図6(b)の機構において、ルーバーが開いている時の図でありソレノイド24が励磁されていない状態である。この場合バネ35に押されてスライドレールシャフト33かスライドレール軸受34からスライドし、ルーバー蓋4を下方に押下しルーバー6を開放状態とする。図6(d)はルーバー6が閉じている時の図でありソレノイド24が励磁された状態である。この場合はソレノイド24の駆動力がバネ35の力を上回りスライドレールシャフト33がスライドレール軸受34からスライドしてルーバー蓋4を上方に押し上げルーバー6を閉鎖状態とする。
【0027】
図7は、定着ロール5上に非接触式の温度センサ39を設置した実施例である。ルーバー蓋4の駆動機構は前記の図2、図4、図6のいずれかの機構で駆動する。図7(b)は、プリンタに電力が供給された状態でファン7が回転している状態である。ファン7は導風路40に冷却風44を送り込む。冷却風44は導風路40を通って温度センサ39を冷却する。この場合、ルーバー蓋4は閉まっているので冷却風44は定着ロール5に向け吹きつける方向となるため定着ロール5からの熱風で温度センサ39が熱せられてしまうことはない。
【0028】
図7(a)は、プリンタに電力が供給されない状態でファン7が停止している状態である。定着ロール5からの熱風41は自然対流で導風路40に入ってくる。熱風41は導風路に入って来るがルーバー蓋4が開いているため定着ロール5の熱風41は冷却風45を引き込みながら導風路40の中を温風47となって上昇していく。このとき温度センサ39は冷風45が入ってくるため冷却され温度が上がらない。一般にレーザープリンタの電源は遮断された後も定着ローラは高温であるためファンが停止した直後は熱が排出されず電源供給時に比べても機内温度が上昇する。機内の温度は定着ローラの温度が下がるまでは下がらないためトナーや現像剤の変質やプラスチック部品の熱変形、電気部品の信頼性低下が発生するが、図7のように冷却経路を切り替えることでプリンタの電源遮断直後の機内温度の上昇を防止し信頼性や印刷品質低下を防止できる効果がある。
【0029】
以上のように熱定着を行なうレーザープリンタの内部冷却方法に関して電力が供給された状態ではファンによって冷却し、電力が遮断されファンが停止すると機器内部の熱を自然対流で排出できるように冷却風の経路を切り替えることによりプリンタ内部の熱や湿気を抑えて信頼性や印刷品質の低下を防止する効果がある。
【符号の説明】
【0030】
1は光学ユニット、2は感光ドラム、3は現像機、4はルーバー蓋、5は定着ロール、6はルーバー、7はファン、8は熱や湿気、9はクリーナ、10は用紙搬送ユニット、11は帯電器、12はバックアップロール、13は印刷用紙、14はスタッカ、15はエアフロー、16はステッピングモータ、17はカム、20は電源、21はバネ、22はモータドライバ、23はモータ制御回路、24はソレノイド、25はレバー、27は蝶番、30はアクチュエータ、31は電源、32はトランジスタ、33はスライドレールシャフト、34はスライドレール軸受、35はバネ、39は温度センサ、40は導風路、41は熱風、43は冷却風、44は空気、45は冷却風、47は温風である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開平7−295463号公報
【特許文献2】特開2005−122165号公報
【特許文献3】特開2007−94037号公報
【特許文献4】特開2006−58602号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に高熱と圧力を掛けて用紙上に転写されたトナーを定着するヒートロール方式の印刷装置において、モータ又はソレノイドなどの電動機を使い冷却のための空気経路を切替えるようにしたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
印刷時またはスタンバイ時と電源遮断時で冷却を必要とする部品に合わせて冷却のための空気経路を変えることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
プリンタの電源遮断時にはモータやソレノイドなどの電動機の励磁が停止することを利用し冷却効率を向上させることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−188676(P2010−188676A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37425(P2009−37425)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】