説明

プリンタ

【課題】印字ヘッドに所定間隔で対峙したプラテンを、記録紙の切断機構や印字ヘッドに干渉することなく開閉する。
【解決手段】印字ヘッド20が水平ではなく斜め上方を向く姿勢で取り付けられ、これに対応するように、印字ヘッドのヘッド面20aに一定間隔で対峙しているプラテン部21も傾斜状態で開閉フレーム51に取り付けられ、この開閉フレーム51の回転中心43aは印字ヘッドのヘッド面20aよりも下側に位置している。プラテン部21の上端の移動軌跡21Aは、印字ヘッドのヘッド面から上方ではなく後方に遠ざかる円弧になり、印字ヘッド20に干渉することはない。印字ヘッド20とプラテン部21の真上には、プラテン部21の移動軌跡に掛からないスペースができ、ここに設ける第2経路36と第1経路15との間に記録紙の切断機構の部品や、記録紙の搬送機構の部品などを配置することで、プリンタの小型、コンパクト化も実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字ヘッドの印字位置を経由する記録紙搬送路を開放可能なプリンタに関す
るものである。更に詳しくは、記録紙搬送路を開放するための機構を工夫することにより
、記録紙搬送機構や記録紙の切断機構を適切に配置することのできるプリンタに関するも
のである。
【背景技術】
【0002】
POS端末等には一般に記録紙ロールに印字を行うためのプリンタが搭載されている。
記録紙ロールに印字を行うプリンタでは、記録紙ロールの交換あるいは装填作業を簡単に
行うことができるように、プリンタ本体に形成した記録紙ロールの装填部を開閉する開閉
蓋と共に印字ヘッドに対峙しているプラテンも開閉できるように構成されたものが知られ
ている。開閉蓋と共にプラテンを開くと、印字ヘッドとプラテンの間の記録紙搬送路が開
放状態になるので、装填された記録紙ロールから引き出された記録紙を印字ヘッドに沿っ
て配置し、しかる後に開閉蓋を閉じると、ロール紙が印字ヘッドとプラテンの間に挟まさ
れて引き出された状態が自動的に得られる。
【0003】
例えば、特公平6−79855号公報にはこのようなロール紙プリンタが開示されてい
る。この公開公報に開示のプリンタでは、サーマルヘッドに押付けられるプラテンローラ
もロール紙装填部の開閉蓋として機能するカバーの先端に取り付けられている。カバーを
閉じた状態では、プラテンローラは、ロール紙装填部に形成された開口部を介してサーマ
ルヘッドの側に突き出して当該サーマルヘッドに押付けられた状態になる。カバーを開く
と、プラテンローラもサーマルヘッドから離れるので、プラテンローラとサーマルヘッド
の間にロール紙の巻きだし部分を簡単に配置される。さらに、カバーを閉じると、サーマ
ルヘッドとプラテンローラの間にロール紙が挟まれた状態が自動的に形成される。
【0004】
なお、印字ヘッドがドットインパクト方式やインクジェット方式の場合には、印字ヘッ
ドに対してプラテンが所定の間隔となるように平行に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−79855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、記録紙ロールの装填部の開閉蓋と共にプラテンを開閉する機構の場合には、こ
れら開閉蓋およびプラテンの移動軌跡上に他の構成部品が位置しないように部品レイアウ
トを行う必要がある。特に、記録紙ロールの場合には、印字後に記録紙を切断するための
自動切断機構が搭載されている場合が多く、自動切断機構はプリンタの上面に形成された
印字後の記録紙排出口に配置されているのが一般的である。この場合、記録紙排出部の直
下に印字位置があり、当該印字位置を規定しているプラテンの移動軌跡上に切断機構が位
置することになるので、プラテンの移動軌跡、あるいは切断機構の配置位置や構造を工夫
する必要がある。
【0007】
また、サーマルヘッドの場合のようにプラテンローラをサーマルヘッドのヘッド面に押
付ける場合には、開閉蓋を閉じる際にプラテンローラをサーマルヘッドに押付けて、ばね
部材によって支持されている当該サーマルヘッドを後退させればよい。よって、プラテン
の移動軌跡が印字ヘッドに交差しても問題はない。
【0008】
しかるに、ドットインパクト方式やインクジェット方式の非接触型の印字ヘッドの場合
には、プラテンを印字ヘッドのヘッド面に対して一定の間隔で対峙した平行状態に位置決
めする必要がある。この場合には、プラテンの移動軌跡が印字ヘッドに交差しないように
、プラテンの開閉機構を構成する必要がある。
【0009】
さらに、ドットインパクト方式の印字ヘッドの場合には、インクリボンが収納されてい
るリボンカセットを印字ヘッドの部分に装着する必要がある。リボンカセットは一般に印
字ヘッドの真上から印字ヘッドとプラテンの間にインクリボンが差し込まれた状態となる
ように装着される。印字ヘッドの真上に記録紙の自動切断機構が配置されている場合には
、自動切断機構が邪魔になってリボンカセットをワンタッチで装着できず、開閉蓋などと
共に自動切断機構を一旦退避させるなどの操作が必要である。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、印字ヘッドに所定間隔で対峙したプラテンを
、記録紙の切断機構や印字ヘッドに干渉することなく開閉可能なプリンタを提案すること
にある。
【0011】
また、本発明の課題は、記録紙の切断機構の構成部品や搬送機構の構成部品を配置する
ためのスペースを、開閉されるプラテンの移動軌跡に掛からないように、印字ヘッドの真
上に形成することのできるプリンタを提案することにある。
【0012】
さらに、本発明の課題は、記録紙の自動切断機構などを退避させるための操作を行うこ
となく、リボンカセットをワンタッチで着脱可能なドットインクパクト方式の印字ヘッド
を備えたプリンタを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明のプリンタは、記録媒体に印字を行うために互い
に対峙して配置される印字ヘッド及びプラテンと、
前記印字ヘッド若しくは前記プラテンの一方を支持する本体フレームと、
前記印字ヘッド若しくは前記プラテンの他方を支持し、前記印字ヘッドと前記プラテン
とが対向する印字位置と前記印字ヘッドと前記プラテンとが離間する開位置とをとりうる
ように前記本体フレームに回動自在に支持された開閉フレームと、
前記本体フレームに取り付けられた第1の規定部と、前記開閉フレームに備えられ第2
の規定部によって形成される第1経路であって、前記印字位置を経て前記記録媒体の排出
口に続く第1経路と、
前記本体フレームに取り付けられた第3の規定部と、該第3の規定部と対峙する第4の
規定部によって形成される第2経路であって、前記第1経路の前記印字位置下流側から前
記第1経路と分かれる第2経路とを有することを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、開閉フレームを単に回動させるだけで、第2経路に影響を与えるこ
となく第1経路を開放することができる。よって、プリンタを側方から見た場合に、開閉
フレーム及び開閉フレームに支持された部分の回動軌跡の外側に第2経路があり、第1経
路と第2経路とのスペースを利用して、記録媒体の切断機構の部品や、記録媒体の搬送機
構の部品などを配置することができ、プリンタの小型、コンパクト化に有利である。
【0015】
また、プラテンと印字ヘッドは交差しないので、プラテンを所定間隔で印字ヘッドに対
峙させる必要のあるインクパクト方式やインクジェット方式の印字ヘッドを備えたプリン
タに適したプラテンの開閉機構を簡単に実現できる。
【0016】
ここで、前記記録媒体を切断するために、固定刃と、可動刃と、この可動刃を駆動する
駆動機構とを備えた自動切断機構の前記固定刃を前記第1経路と前記第2経路との間に取
り付けることができる。
【0017】
上記構成により、可動刃を開閉フレームに取り付けておけば印字部からの記録媒体を引
き出しておき開閉フレームを単に回動させるだけで固定刃と可動刃の間に記録媒体をセッ
トできる。
【0018】
同様に、前記記録媒体を搬送する搬送機構として送りローラ及びこれに当接させた押え
ローラを用いることができる。この場合、前記送りローラ及び押さえローラのどちらか一
方を前記開閉フレームに取り付け、他方を前記第1経路と前記第2経路との間に取り付け
ると、記録媒体を引き出しておいた状態で開閉フレームを単に回動させるだけで送りロー
ラと押さえローラで記録媒体を挟持することができる。
【0019】
前記送りローラにより送り出される記録媒体を切断するために、固定刃と、可動刃と、
この可動刃を駆動する駆動機構とを備えた自動切断機構を有しているときには、前記固定
刃も前記搬送機構の下流側の位置に配置することが望ましい。
【0020】
次に、本発明を適用可能な典型的なプリンタは記録紙ロールから引き出されるテープ状
の記録紙に印字を行うプリンタであり、当該プリンタは、前記本体フレームの側に形成さ
れた記録紙ロールの装填部と、この装填部を開閉するための開閉蓋とを有している。この
場合、開閉蓋が前記開閉フレームに取り付けられた構成とされる。
【0021】
また、この場合、前記装填部から前記印字ヘッドによる前記印字位置を経由して前記排
出口記録紙を導く記録紙搬送路であって、前記開閉フレームを回動させて開くと、開放状
態になるように、当該開閉フレームと前記本体フレームの間に形成することが望ましい。
【0022】
次に、前記印字ヘッドはドットインパクト方式の場合には、前記第2経路は、前記本体
フレームに装着されるリボンカセットのリボンの移動のための経路とすることができる。
この構成によれば、リボンカセットの着脱は、配置されている切断機構や紙送り機構に干
渉しないので、自動切断機構等を移動させることなく、リボンカセットをワンタッチで着
脱できる。
【0023】
次に、本発明のプリンタでは、印字ヘッドが水平ではなく斜め上方を向く姿勢で取り付
けられており、プラテンが取り付けられている開閉フレームの回転中心が印字ヘッドのヘ
ッド面よりも下側に位置している。この構成によれば、印字ヘッドに対峙した位置からプ
ラテンを移動させると、当該プラテンの移動軌跡は、印字ヘッドのヘッド面から上方では
なく後方に遠ざかる方向に向かう。よって、プリンタ側方から見た場合に、印字ヘッドと
プラテンの真上には、プラテンの移動軌跡に掛からないスペースができる。従って、この
スペースを利用して、記録紙の切断機構の部品や、記録紙の搬送機構の部品などを配置す
ることができるので、プリンタの小型、コンパクト化に有利である。
【0024】
また、プラテンの移動軌跡が印字ヘッドに交差しないので、プラテンを所定間隔で印字
ヘッドに対峙させる必要のあるインクパクト方式やインクジェット方式の印字ヘッドを備
えたプリンタに適したプラテンの開閉機構を簡単に実現できる。
【0025】
ここで、印字ヘッドとプラテンの間の印字位置を経由して記録紙を搬送する搬送機構と
しては、紙送りローラと、これに当接させた紙押えローラを用いることができる。この場
合、前記本体フレームにおける前記印字ヘッドよりも上側の位置、すなわち、プラテンの
移動軌跡に掛からないスペースを利用して紙押さえローラを配置し、前記開閉フレームを
閉じると、この紙押さえローラに当接した状態となるように、当該開閉フレームにおける
前記プラテンよりも上側の位置に紙送りローラを取り付けることができる。
【0026】
前記紙送りローラにより送り出される記録紙を切断するために、固定刃と、可動刃と、
この可動刃を駆動する駆動機構とを備えた自動切断機構を有しているときには、前記固定
刃も前記本体フレームにおける前記紙押さえローラよりも上側の位置に配置し、前記可動
刃および前記駆動機構を、前記開閉フレームにおける前記紙送りローラよりも上側の位置
に取り付けることができる。
【0027】
次に、前記印字ヘッドがドットインパクト方式の場合には、前記本体フレームに、前記
印字ヘッドの傾斜方向に直交する斜め上方から、リボンカセットを傾斜した姿勢で装着可
能なリボンカセット装着部を配置することができる。この構成によれば、リボンカセット
の着脱方向は、印字ヘッドの印字位置の真上に配置されている切断機構に干渉しない方向
になるので、自動切断機構を移動させることなく、リボンカセットをワンタッチで着脱で
きる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明のプリンタは、前記印字ヘッド若しくは前記プラテンの一
方を支持する本体フレームと、前記印字ヘッド若しくは前記プラテンの他方を支持し、前
記印字ヘッドと前記プラテンとが対向する印字位置と前記印字ヘッドと前記プラテンとが
離間する開位置とをとりうるように前記本体フレームに回動自在に支持された開閉フレー
ムと、前記印字位置を経て前記記録媒体の排出口に続く第1経路と、前記第1経路の前記印
字位置下流側から前記第1経路と分かれる第2経路と、前記本体フレームに支持され、前
記第1の搬送経路を形成するための第1の規定部と、前記開閉フレームに支持され、前記
第1の規定部と対峙して前記第1経路を形成する第2の規定部とを有することにより、開
閉フレームを単に回動させるだけで、第2経路に影響を与えることなく第1経路を開放す
ることができる。よって、プリンタを側方から見た場合に、開閉フレーム及び開閉フレー
ムに支持された部分の回動軌跡の外側に第2経路があり、第1経路と第2経路とのスペー
スを利用して、記録媒体の切断機構の部品や、記録紙の搬送機構の部品などを配置するこ
とができ、プリンタの小型、コンパクト化に有利である。
【0029】
さらに、本発明をドットインパクト方式のプリンタに適用した場合には、印字ヘッドの
傾斜に合わせて、インクリボンのリボンカセットの着脱方向も傾斜した方向となる。この
結果、印字ヘッドの真上に配置される記録紙の切断機構などの構成部品に邪魔されること
なく、リボンカセットをワンタッチで着脱できるという効果が得られる。
【0030】
本発明のプリンタにおいては、印字ヘッドを、そのヘッド面が斜め上方を向く姿勢で配
置し、これに一定間隔で対峙するようにプラテンを傾斜状態で開閉フレームの先端部分に
取り付け、当該開閉フレームの後端部分を中心として当該開閉フレームを開閉可能として
ある。また、開閉フレームの回転中心を印字ヘッドのヘッド面よりも低い位置にしてある

【0031】
従って、印字ヘッドに対峙した位置からプラテンを移動させると、当該プラテンの移動
軌跡は、印字ヘッドのヘッド面から遠ざかる方向に向かう円弧になる。
よって、プリンタ側方から見た場合に、印字ヘッドとプラテンの真上には、プラテンの
移動軌跡に掛からないスペースができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したプリンタの一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1のプリンタに内蔵されているプリンタユニットを示す斜視図である。
【図3】図2のプリンタユニットを構成している固定側ユニットから開閉側ユニット を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図4】図2のプリンタユニットを側方から見た場合における各部分の配置関係を示 す説明図である。
【図5】図2のプリンタユニットの開閉側ユニットを半開きにした状態における側方 から見た場合の各部分の配置関係を示す説明図である。
【図6】図2のプリンタユニットの開閉側ユニットを全開にした状態を示す斜視図で ある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したプリンタの実施例を説明する。
【0034】
図1は本例のプリンタの外観斜視図であり、図2は内蔵されているプリンタユニットを
示す斜視図であり、図3はプリンタユニットの分解斜視図であり、図4はプリンタユニッ
トを側方から見た場合の各部分の配置関係を示す説明図である。
【0035】
これらの図を参照して説明すると、プリンタ1は、その周囲を覆う矩形枠状のケース本
体2と、プリンタ上面の前側部分を覆う前側開閉蓋3および後側部分を覆う後側開閉蓋4
とを備え、これらによりプリンタケースが構成されている。これら前後の開閉蓋3、4の
間の位置に記録紙排出口5が形成されている。後側の開閉蓋4はスライドボタン6を操作
することにより、開閉可能となっており、この開閉蓋4を開けると、記録紙ロールの装填
部8が露出し、記録紙ロール7の交換などを行うことができる。また、本体フレーム40
の前側下端に設けられた支持孔40aに回動自在に支持された前側の開閉蓋3を開けると
、インクリボンのリボンカセット9を着脱可能に装着するリボンカセット装着部10が露
出し、リボンカセット9の交換などを行うことができる。
【0036】
ケース本体2および前後の開閉蓋3、4により構成されているプリンタケースには図2
〜図4に示すプリンタユニット11が内蔵されており、このプリンタユニット11は、固
定側ユニット12と、開閉側ユニット13とを備え、開閉側ユニット13はその後端部分
を中心として上下に回動可能な状態で固定側ユニット12によって支持されている。
【0037】
主に図4を参照してプリンタユニット11の全体構成を説明する。プリンタユニット1
1の後側の部分には、側方から見た場合に上方に開口した円弧状断面の記録紙ロールの装
填部8が形成されている。ここに装填された記録紙ロール7から引き出された記録紙7a
は、記録紙ロールの装填部8の前端部分に配置されているガイドローラ14を介して記録
紙搬送路15(第1経路)に導かれる。記録紙搬送路15は、前方に向けて上方に僅かに
傾斜している搬送路部分16と、この搬送路部分16の前端から上方に大きな傾斜角度で
立ち上がっている前方傾斜路部分17と、この前方傾斜路部分17の上端から後方に向け
て傾斜して記録紙排出口5に繋がっている後方傾斜路部分18を備えている。図4におい
ては記録紙7aおよび第1経路であるその搬送路15を二点鎖線で示してある。
【0038】
搬送路部分16は搬送ガイド部16a(第2の規定部)と、これに対峙している搬送面
16b(第1の規定部)とによって規定されている。これに続く前方傾斜路部分17は、
ドットインパクト方式の印字ヘッド20のヘッド面20a(第1の規定部)と、これに対
して一定間隔で対峙しているプラテン部21(プラテン、第2の規定部)とによって規定
されており、印字ヘッド20による印字位置となっている。
【0039】
搬送路15の印字位置を過ぎてその進路を後側に変更されるところには、斜め前方に通
じる第2経路36が形成されている。この第2経路36の一方は、後述するリボンフレー
ム41の傾斜面41a(第4の規定部)と印字ヘッド20のヘッド案内面20bによって
規定されており、他方は、本体フレームに取り付けられたローラ取付板27の対峙面27
a(第3の規定部)及び紙押さえローラ26によって規定されている。図4及び図5にお
いては第2経路36を一点鎖線で示してある。本例のように、第1経路である記録紙搬送
路15と第2経路との交差部は側面から見て略Y字型が望ましく、この構成により第2経
路を通過したものを印字位置に案内し易すいと共に、記録紙搬送路15の中を無理なく搬
送することができる。
【0040】
印字ヘッド20は、そのヘッド面20aが後方に向けて上方に傾斜した方向を向くよう
に配置されている。印字ヘッド20の傾きに対応させて、プラテン部21の表面は前方に
向けて下方に傾斜した状態に配置されている。印字ヘッド20はヘッドキャリッジ22に
搭載されており、ヘッドキャリッジ22は、キャリッジガイド軸23に沿って幅方向に往
復移動可能となっている。
【0041】
これらヘッドキャリッジ22および印字ヘッド20を覆う状態にリボンフレーム41が
取りつけられており、このリボンフレーム41の外周部分にリボンカセット9の装着部1
0が形成されている。(図3においてはリボンフレーム41を省略して示す。)当該リボ
ンカセット装着部10も手前側に向けて上側に向かうように傾斜配置されている。
【0042】
従って、ここに装着したリボンカセット9のインクリボン9aは、第2経路36を移動
して印字ヘッド20とプラテン部21との間に、これらと平行となるようにセット可能で
ある。
【0043】
前方傾斜路部分17に連続している後方傾斜路部分18は、プラテン部21の上端から
後方に向けて折れ曲がった方向に延びている搬送ガイド部28によって規定されており、
この後方傾斜路部分18には、紙送りローラ25と、これに所定の弾性力で押付けられて
いる紙押さえローラ26が配置されている。紙送りローラ25は後方傾斜路部分18の後
側に配置され、紙押さえローラ26はその前側において、ローラ取付板27に対して紙送
りローラ25に接近する方向に移動可能に支持され、常に、板ばねや線ばね等のばね力に
よって紙送りローラ25の側に付勢されている。記録紙ロール7から引き出された記録紙
7aは、紙送りローラ25と紙押さえローラ26の間に挟まれ、不図示の駆動源が紙送り
ローラ25を回転することによって搬送路15に沿って搬送される。なお、本例では、プ
ラテン部21と、その上下に連続している搬送ガイド部28、16aとが単一部品である
プラテンフレーム55から形成されている。
【0044】
次に、記録紙排出口5の近傍には、記録紙の自動切断ユニット30が配置されている。
自動切断ユニット30は、記録紙の搬送経路を挟み、前側に配置された固定刃31と、後
側に配置された可動刃32と、可動刃32を動作させるための駆動機構33とを備えてお
り、可動刃32および駆動機構33はケース34に内蔵されている。固定刃31と可動刃
32との間にある記録紙7aは、可動刃32が固定刃31の上面を摺動することによって
切断される。また、記録紙排出口5の前縁部分には手動操作により記録紙を切断可能な切
断刃35が取り付けられている。
【0045】
ここで、本例のプリンタユニット11では、記録紙ロール7の交換作業などを簡単に行
うことができるようにするために、記録紙ロールの装填部8の開閉蓋4を開けると、上記
構成の記録紙搬送路15も開放状態となるように構成されている。そのために、固定側ユ
ニット12に搬送路15を構成している一方の側の構成部品を取り付け、移動側である開
閉側ユニット13には開閉蓋4と、搬送路15を構成している他方の側の構成部品を取り
付け、開閉側ユニット13を開くと、記録紙ロールの装填部8が開放されると同時に、搬
送路15も開放されるようになっている。
【0046】
すなわち、固定側ユニット12には、記録紙ロールの装填部8、搬送路部分16の搬送
面16b、印字ヘッド20、紙押さえローラ26および自動切断ユニット30の固定刃3
1が取り付けられている。これに対して、開閉側ユニット13には、搬送路部分16、前
方傾斜路部分17および後方傾斜路部分18を規定しているプラテンフレーム(搬送ガイ
ド部16b、プラテン部21および搬送ガイド部28)と、紙送りローラ25と、自動切
断ユニット30の可動刃32および駆動機構33が取り付けられている。また、開閉蓋4
も取り付けられている。
【0047】
上記構成により、可動刃32が何らかの故障で切断状態、つまり可動刃32が固定刃3
1と交叉状態で停止されたときであっても、可動刃32が固定刃31の上側に位置してい
るので、開閉側ユニット13は移動可能となる。
【0048】
図5は開閉側ユニット13を半開きにした状態における側方から見た場合の各部品の位
置を示す説明図であり、図6は開閉側ユニット13を全開にした状態を示す斜視図である
。これらの図から分かるように、開閉側ユニット13を全開にすると、上方から記録紙ロ
ール7を記録紙ロールの装填部8に落とし込むという簡単な操作により記録紙ロール7を
装填できる。また、搬送路15が開放状態になっているので、搬送路15に沿って記録紙
ロール7から引き出した記録紙7aを配置する操作も極めて簡単である。さらに、開閉側
ユニット13を閉じて図2、図4に示す状態に戻すと、記録紙7aが印字ヘッド20とプ
ラテン部21の間、および紙送りローラ25と紙押さえローラ26の間を通って記録紙排
出口5から引き出された状態が自動的に形成される。
【0049】
次に、これら固定側ユニット12および開閉側ユニット13の構造を更に詳しく説明す
る。まず、固定側ユニット12は本体フレーム40を備えており、この本体フレーム40
の前側部分にはキャリッジガイド軸23が幅方向に架け渡されている。このキャリッジガ
イド軸23には、前述のように、印字ヘッド20を搭載したヘッドキャリッジ22が往復
移動可能な状態で支持されている。また、本体フレーム40には、リボンフレーム41が
装着されている。
【0050】
本体フレーム40の後側の部分には記録紙ロール7を装填するための装填部8が形成さ
れており、この装填部26の後端部分には、幅方向に延びる回転中心軸43が本体フレー
ム40に掛け渡されている。この回転中心軸43が開閉側ユニット13の回転中心となっ
ている。
【0051】
一方、開閉側ユニット13は開閉フレーム51を有しており、この開閉フレー51は、
前後方向に延びる左右の腕部分52、53と、これら腕部分52、53の前端部分を連結
している前端連結板部分54とを備えている。左右の腕部分52、53の後端部分は、上
記の回転中心軸43の両端部分によって回転自在に支持されている。開閉フレーム51の
前端連結部分54の前端にはプラテンフレーム55(プラテン部21、搬送ガイド部16
a、搬送ガイド部28)が取り付けられており、この裏面側には紙送りローラ軸56が取
り付けられており、このプラテンフレーム55における搬送ガイド部28に形成した開口
からは、紙送りローラ軸56に同軸状に固定した2個の紙送りローラ25の外周面が前方
に突出している。開閉フレーム51の前端連結板部分54の上には、水平に自動切断ユニ
ット30の可動刃32および駆動機構33が搭載されている。
【0052】
ここで、図4から分かるように、本例の固定側ユニット12においては、前述のように
、印字ヘッド20が上方を向くように傾斜配置されており、これに対応するように、リボ
ンカセット装着部10に装着されたリボンカセット9も同一方向に傾斜配置された状態と
なる。また、開閉側ユニット13の側においては、印字ヘッド20のヘッド面20aに対
して一定間隔で平行に対峙するように、プラテン部21が下方を向くように傾斜配置され
ている。また、開閉側ユニット13の回転中心、すなわち回転中心軸43の中心軸線43
aの高さ位置は、印字ヘッド20のヘッド面20aよりも下側とされている。
【0053】
この結果、開閉側ユニット13の開閉に伴う当該開閉側ユニット先端部分の移動軌跡、
すなわち、印字ヘッド20に対峙しているプラテン部21の上端および下端の移動軌跡は
、図4、図5に想像線21A、21Bで示すようになる。これらの移動軌跡21A、21
Bは、印字ヘッド20に一定間隔で対峙している位置(開閉側ユニット13が閉じている
状態の位置)から、印字ヘッド20のヘッド面20aに対して、前方あるいは上方ではな
く、後方に遠ざかる円弧であり、開閉側ユニット13の開閉時に、これらの移動軌跡21
A、21Bが印字ヘッド20に交差することはない。
【0054】
また、開閉側ユニット13の回転中心線43aは印字ヘッド20のヘッド面20aより
も下側に位置しているので、これらの移動軌跡21A、21Bは、開閉側ユニット13の
移動に伴う後方への移動量が大きい。さらに、本例では、印字ヘッド20を傾斜配置した
ことに伴って、リボンカセット装着部10も傾斜配置されている。これにより、リボンカ
セット9は、当該装着部10に対して略垂直方向であるところの前方上側から斜め方向(
図4に示す矢印9Aの方向)に着脱される構造になっている。
【0055】
この結果、印字ヘッド20の真上には、図5に示すように、開閉側ユニット13の移動
軌跡に掛からなく、且つ、リボンカセット9の着脱時におけるリボンの移動に障害になら
ないスペースSができる。本例では、このスペースを利用して、紙押さえローラ26、自
動切断ユニット30の固定刃31を配置している。
【0056】
上記構成により、印字ヘッド20の真上には紙押さえローラ26や自動切断ユニット3
0の固定刃31が配置されているが、これらに邪魔されることなく、リボンカセット9を
着脱できる。よって、リボンカセット9の着脱をワンタッチで行うことができるという利
点がある。また、スペースSを有効活用することから装置構成を小型でコンパクトにする
ことができる。
【0057】
さらにまた、印字ヘッド20およびプラテン部21の傾斜角度と、開閉側ユニット13
の回転中心線43aの高さ位置の一方あるいは双方を調整することにより、開閉側ユニッ
ト13の移動軌跡を変更できる。これにより、印字ヘッド20の真上に形成される移動軌
跡に掛からないスペースSを増減でき、部品レイアウトの自動度が増すという利点もある

【0058】
なお、本例は、ドットインパクト式の印字ヘッド20を備えたプリンタに関するもので
あるが、印字ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いたプリンタに対しても本発明を同
様に適用可能である。さらに、印字ヘッドとしてサーマルヘッドのような接触型のものを
用いたプリンタに対しても適用可能である。
【0059】
また、本例においては、自動切断機構および搬送機構が印字ヘッドの上側に配置された
例を用いて説明したが、自動切断機構のみ印字ヘッドの上側に配置され、搬送機構が印字
ヘッドより下側(搬送経路の上流側)に配置されたものであっても構わない。
【0060】
また、本例では、第2経路36をリボンカセットのリボンが通過する経路として説明し
たが、例えば、バリデーション印字が可能のように記録紙排出口5とは異なる位置で第2
経路の延長上にシートが挿入可能なスリットを開閉蓋3にも設けて、上方から印字位置に
挿入する構造としても構わない。その場合、スリットからシートを挿入するとシートは第
2経路及び印字位置を通過しその先端は固定側ユニット12の規制部12aに当接してレ
シートはセット可能となる。
このように、第2経路はインクリボンの移動及びレシートの経路とすることが可能であ
り、小型で操作性のよいプリンタを提供することができる。
【0061】
また、本例では、スペースSの領域に紙押さえローラ26を配置した例を示しているが
、紙押さえローラの替わりに紙送りローラを配置し開閉フレームに紙押さえローラを配置
させても構わなく、この場合は駆動する側が移動しない本体フレームなのでローラを駆動
するための輪列等は設計し易い効果がある。
【0062】
更に、本例においては、開閉フレーム51にプラテン部21が支持され、本体フレーム
40に印字ヘッド20が支持された例を用いて説明したが、本体フレームにプラテン、開
閉フレームに印字ヘッドを支持させても構わないが、印字ヘッドの制御ケーブル等を考慮
すると本実施例が望ましい。
【0063】
同様に、プラテンは板状のものであってもローラタイプであっても構わないものである

【符号の説明】
【0064】
1 プリンタ
4 開閉蓋
5 記録紙排出口
7 記録紙ロール
8 記録紙ロールの装填部
9 リボンカセット
9A リボンカセットの着脱方向
10 リボンカセット装着部
11 プリンタユニット
12 固定側ユニット
13 開閉側ユニット
15 記録紙搬送路
16 搬送路部分
17 前方傾斜路部分
18 後方傾斜路部分
20 印字ヘッド
20a ヘッド面
21 プラテン部
21A プラテン上端の移動軌跡
21B プラテン下端の移動軌跡
25 紙送りローラ
26 紙押さえローラ
30 自動切断ユニット
31 固定刃
32 可動刃
33 駆動機構
40 本体フレーム
43 回転中心軸
43a 中心軸線
51 開閉フレーム
52、53 左右の腕部
54 前端連結板部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に印字を行うために互いに対峙して配置される印字ヘッド及びプラテンと、
前記印字ヘッド若しくは前記プラテンの一方を支持する本体フレームと、
前記印字ヘッド若しくは前記プラテンの他方を支持し、前記印字ヘッドと前記プラテン
とが対向する印字位置と前記印字ヘッドと前記プラテンとが離間する開位置とをとりうる
ように前記本体フレームに回動自在に支持された開閉フレームと、
前記本体フレームに取り付けられた第1の規定部と、前記開閉フレームに備えられ第2
の規定部によって形成される第1経路であって、前記印字位置を経て前記記録媒体の排出
口に続く第1経路と、
前記本体フレームに取り付けられた第3の規定部と、該第3の規定部と対峙する第4の
規定部によって形成される第2経路であって、前記第1経路の前記印字位置下流側から前
記第1経路と分かれる第2経路とを有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記記録媒体を切断するために、固定刃と、可動刃と、この可動刃を駆動する駆動機構
とを備えた自動切断機構を有し、
前記固定刃は前記第1経路と前記第2経路との間に取り付けられ、前記可動刃は前記開
閉フレームに取り付けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記記録媒体を挟持して搬送するための送りローラ及び押さえローラとを有し、
前記送りローラ及び押さえローラのどちらか一方は、前記開閉フレームに取り付けられ
、他方は、前記第1経路と前記第2経路との間に取り付けられていることを特徴とするプ
リンタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの項において、
前記本体フレームの側に形成された記録紙ロールの装填部と、
この装填部を開閉するための開閉蓋とを有しており、
この開閉蓋は前記開閉フレームに取り付けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1経路は、前記装填部から前記印字ヘッドによる前記印字位置を経由して前記排
出口に前記記録媒体を導く搬送路であって、
前記開閉フレームを開くと、開放状態になるように、当該開閉フレームと前記本体フレ
ームの間に形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記印字ヘッドはドットインパクト方式のものであり、
前記第2経路は、前記本体フレームに装着されるリボンカセットのリボンの移動のため
の経路であることを特徴とするプリンタ。
【請求項7】
記録媒体に印字を行うために互いに対峙して配置される印字ヘッド及びプラテンと、
前記印字ヘッドを支持する本体フレームと、
前記プラテンを支持し、前記記録媒体をセット可能に開口する開位置と前記印字ヘッド
と前記プラテンとが対向する印字位置とをとりうるように前記本体フレームに回動自在に
支持された開閉フレームと、
前記印字ヘッドは、そのヘッド面が斜め上方を向くように傾斜配置されており、
前記プラテンは、前記開閉フレームを閉じると、前記印字ヘッドのヘッド面に対して平
行に対峙するように、前記開閉フレームに取り付けられており、
前記開閉フレームの回転中心は、前記印字ヘッドのヘッド面よりも低い位置にあること
を特徴としている。
【請求項8】
請求項7において、
前記本体フレームにおける前記印字ヘッドよりも上側の位置に取り付けられた紙押さえ
ローラと、
前記開閉フレームを閉じると、前記紙押さえローラに当接した状態となるように、当該
開閉フレームにおける前記プラテンよりも上側の位置に取り付けられている紙送りローラ
とを有していることを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
請求項2において、
前記紙送りローラにより送り出される記録紙を切断するために、固定刃と、可動刃と、
この可動刃を駆動する駆動機構とを備えた自動切断機構を有しており、
前記固定刃は前記本体フレームにおける前記紙押さえローラよりも上側の位置に取り付
けられ、
前記可動刃および前記駆動機構は、前記開閉フレームにおける前記紙送りローラよりも
上側の位置に取り付けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
請求項7ないし9のうちのいずれの項において、
前記印字ヘッドはドットインパクト方式のものであり、
前記本体フレームには、斜め上方から、リボンカセットを傾斜した姿勢で装着可能なリ
ボンカセット装着部が配置されていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99947(P2013−99947A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−276150(P2012−276150)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2009−294632(P2009−294632)の分割
【原出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】