説明

プリントデータ生成装置

【課題】 予め不特定の体裁で印字された印刷物の紙面上の図柄を識別し、余白領域を特定し、余白領域に合わせて追加印字を行うプリンタ出力用データを生成するプリントデータ生成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 プリントデータ生成装置10は、画像取込部31で同取込部31に付帯する画像取込カメラ37から印刷物17の印刷面の画像情報を取り込み、
余白領域識別部32で取り込まれた画像情報から図柄が印字された領域(図柄領域)と図柄が印字されていない領域(余白領域)とを識別し、データ加工部33で追加印刷用データを余白領域の位置、大きさに合わせて加工し、出力条件設定部34で追加印刷する領域の位置や大きさなどの出力条件とともに出力制御部35から後工程プリンタ11に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不特定の図柄が印刷された印刷物に、追加して図柄を印刷する際に、不特定の図柄に応じて追加する図柄を生成するプリントデータ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広告手段の一つとして、ダイレクトメールの形で広告物を個人に直接配送することは既に広く行われている。最近では、広告効果をさらに高めるために、広告物の内容を配送先の個人ごとに変化させ、個別に編集した紙面を製作して配送するようなことも珍しいものではなくなった。例えば通信販売の広告用ダイレクトメールでは、顧客ごとの購買履歴から顧客の嗜好を分析し、嗜好に合った物品の広告を選択的に組合せて印刷する、といったことが行われている。このように、一様でない情報(以下、可変情報という)を自在に編集し、印刷できるのはコンピュータ技術とプリンタ技術の融合の賜物であり、印刷分野ではこのような手法を「オンデマンド印刷」と呼ぶ。
【0003】
一方、上記のオンデマンド印刷による広告物にしても、美麗な手の込んだものが望まれるようになり、1つの紙面の中でも、一部は高画質カラー画像、一部は文字、というように、用いる画像出力装置(例えばプリンタ)は異なるグレードあるいは異なる特性のもので打ち分ける、といった必要が生じている。
また、このように1つの紙面に対して複数の画像出力装置の使い分けができれば、特に繁忙期には処理の分散化を図る上でも好都合である。
さらに、可変情報に個人情報を伴うと、情報管理の観点から、個人情報の有無で工程を完全に分離するなどの必要も出てきており、この点からも、1つの紙面に対し、複数の画像出力装置を使い分ける必要が出てきている。
【0004】
オンデマンド印刷は別称バリアブル印刷と呼ばれごとく、「バリアブル」な図柄や体裁を「オンデマンド」で構成し「完全データ」の形に編集してプリントするが、上記のように複数の異なるプリンタで打ち分けようとすると種々の問題が生じる。例えば、オンデマンド印刷では、印刷するデータありきであるから、印刷に用いる絵柄や体裁を事前に設定して「完全データ」としておく必要があるが、実際の工程の中では「完全データ」の作成がしばしばネックとなる。というのは、例えば、前段のプリンタと後段のプリンタで異なる工程で打ち分ける場合、前段のプリンタにより印刷されたバリアブル印刷物に対し、後段のプリンタが出力すべき図柄の位置や大きさを前段の印刷物の余白部に合わせ、その都度変化させる必要があり、画像出力装置を分離すると完全データの作成が困難になるからである。
このように、異なる画像出力装置を使い分け、多様な体裁で図柄が印刷された印刷物に、追加して図柄を印刷するような必要性が高まっている。
【0005】
特許文献1は、顧客情報に応じて広告等の情報を付加するバリアブル印刷システムに関する発明である。印刷指示があると、予め用意されたバリアブルデータと同バリアブルデータに対応する付加データ(例えば広告データ)をフォームデータに基いて合成し、印刷装置により印刷を行うことを例示している。
特許文献2は、同じくバリアブル印刷システムに関する発明であるが、繁忙期のバリアブル印刷の負荷軽減策として、バリアブル印刷を行なう前に、予めフォームデータのみを用紙に印刷し、バリアブル印刷の際は、バリアブルデータからフォームデータを除いたものを、フォームデータが印刷済みの用紙に印刷する技術を開示している。
特許文献3は、画像領域内の画像の識別する余白識別手段により、原画像に対し画像の有無により複数の領域に分割する技術について述べている。
【0006】
しかし、特許文献1の発明はバリアブル印刷の特徴を活かし付加情報を自在に組み合わせるが、印刷機には一括したデータとして出力することになるため、印刷機に出力するまでに予め用意されたデータと付加情報を合わせた「完全データ」が必要となる。また、特許文献2の発明では、バリアブルデータ(可変情報)は予め印刷される固定的フォームデータの体裁に合わせることになるため、余白を認識して図柄を配置するものではない。
特許文献3の発明は、余白部分を認識するが、余白部分に要する画像形成装置の消耗を避けるためのものであり、余白部分に図柄等を配置するものではなく、また、ここで用いる余白識別手段は、余白部分を実際の印刷物から抽出するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−33635号公報
【特許文献2】特開2008−65526号公報
【特許文献3】特開平7−87300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、予め可変情報が印刷された印刷物の図柄や体裁を識別し、印刷物の状態に合わせて追加印刷を可能とするプリントデータ生成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のプリントデータ生成装置は、
予め不特定の領域に図柄が印刷された印刷物に対して、画像出力装置を介して更に別図柄を追加して形成するためのプリントデータ生成装置であって、
前記プリントデータ生成装置は、前記印刷物を撮像して、印刷物の図柄を画像情報として読み込む画像取込部と、前記画像取込部により取り込まれた画像情報から、図柄のない余白領域を抽出する余白領域識別部と、前記余白領域の属性情報と、前記余白領域に印刷すべき別図柄の属性情報とを照合し、前記余白領域に収まる追加印刷用データを生成するデータ加工部と、前記追加印刷用データを前記画像出力装置に出力するための出力条件を設定する出力条件設定部と、を備え、
前記余白領域の属性情報は、少なくとも該領域の位置および大きさにかかわる情報を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記出力条件は、少なくとも前記別図柄の出力位置を含むことを特徴とする。
なお、前記画像出力装置はレーザ加工装置であってもよく、その場合、前記出力条件は、レーザ加工条件であることを特徴とする。
また、前記出力条件は、当該余白領域に画像出力をしない場合を含むことを特徴とする。
さらに、前記画像出力装置はレーザ加工装置を含み、
前記出力条件は、レーザ加工条件であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプリントデータ生成装置によれば、予め印刷された印刷物の図柄や体裁を識別し、印刷対象の状態に合わせた追加印刷が可能となる。これにより、印刷済み印刷物の図柄と追加印刷の図柄の体裁上の調整が不要となるため、印刷紙面の体裁構成の制約がなくなり、また、追加印刷用画像出力装置の選択の自由度も広がる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のプリントデータ生成装置を含むプリントシステム全体を示す図
【図2】前工程プリンタによる印刷物を示す図
【図3】本発明のプリントデータ生成装置の機能ブロック図
【図4】余白領域識別部の処理過程を示す図
【図5】データ加工部の処理過程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<プリントデータ生成装置の構成>
図1は、本発明のプリントデータ生成装置に加え、画像出力装置等を含めたプリントシステム全体の構成を表わす。
【0014】
図1に示すプリントシステム1は、予め印刷された印刷物17を出力するための前工程プリンタ15と追加印刷のための後工程プリンタ11からなる少なくとも2台の画像出力装置(以下、単にプリンタともいう)を持ち、前工程プリンタ15と追加印刷のための後工程プリンタ11が連結された構成としている。本発明のプリントデータ生成装置10は後工程プリンタ11に出力する印刷データの生成を担うものである。
なお、前工程プリンタ15のための印刷データを生成する制御装置14は、プリントデータ生成装置10と同期する必要はなく、予め印刷された印刷物17が全く別の工程で作成され、追加印刷のための後工程プリンタ11に供給される形態であってもよい。
【0015】
図2は、前工程プリンタ15が出力する印刷物17の例である。印刷物17a〜17cに見られるように、印刷物17には前工程プリンタ15により可変の図柄として文字21や画像22が印刷されるため、図柄の配置(体裁)が様々であり、したがって、追加印刷の位置や領域は印刷物毎に異なったものとなる。すなわち、印刷物17a〜17cにおいて、印刷された図柄以外の領域が後工程プリンタ11により印刷可能な領域である余白領域25となる。また、印刷物17cに示すように、余白領域25の数は複数であってもよい。また、印刷物17dは、余白領域25がないときの紙面の態様を表わす。
なお、本願における図柄とは、文字、画像など紙面に印刷される情報全体を意味する。
【0016】
図3は本発明のプリントデータ生成装置の構成を表わす。
本発明のプリントデータ生成装置10は、図柄にかかわるデータ処理を実行するデータ処理部36および付帯機器からなり、データ処理部36は、画像取込部31、余白領域識別部32、データ加工部33、出力条件設定部34、出力制御35、記憶部39などで構成され、また、付帯機器として画像取込カメラ37、入出力機器38などを持つ。
【0017】
画像取込部31は、同取込部31に付帯する画像取込カメラ37から印刷物17の印刷面の画像情報を取り込み、余白領域識別部32に送信する。
余白領域識別部32は、取り込まれた画像情報から図柄が印刷された領域(図柄領域)と図柄が印刷されていない領域(余白領域)とを識別し、余白領域の位置、大きさなど余白領域に関する属性情報とともにデータ加工部33に送信する。
【0018】
データ加工部33は、余白領域に関する属性情報と同領域に印刷すべき図柄とその属性情報から追加印刷データと同データに関する属性情報を生成する。
出力条件設定部34は、追加印刷データとその属性情報から出力条件を生成し、出力制御部35から後工程プリンタ11に出力する。ここで、出力条件とは、例えば、後工程プリンタ11が追加印刷データを印刷すべき位置情報およびサイズ情報を含み、さらに必要であれば、追加印刷データの形状、文字/画像の区別などを含む。
【0019】
余白領域に印刷するための追加情報(図柄および属性情報)は予め記憶部39に格納されており、さらに記憶部39には、上記の工程を制御するプログラム、追加印刷データ生成の過程で発生するデータ、作業履歴などを記録することができる。また、これら追加印刷データの生成や後工程プリンタ11への出力に係わる工程全体の進行、および操作者との情報の授受は工程管理部30が実行する。入出力機器38は、表示部や入力部を持ち、操作者との情報の授受を行うための付帯機器である。
【0020】
<処理の説明>
図4および図5は、本発明のプリントデータ生成装置の処理工程を示す図であり、特に余白領域識別部32における処理の過程を図4(a)〜(e)に表わす。
(a)取込画像40は、画像取込部31により生成された印刷物の画像情報である。
(b)余白領域識別部32は、まず、印刷された文字41、画像42から、個々の図柄43が占める領域を識別し、
(c)さらに各領域の位置、間隔を測りながら(例えば、所定の間隔以下は塗りつぶす)図柄領域44を生成する。なお、図柄領域44は、図に示すように図柄領域44の周縁に余白を設けてもよい。
(d)図柄領域44以外の領域が追加印刷のための余白領域45となり、
(e)余白領域45が所定の面積以上であれば、印刷可能領域46として、その位置、大きさにかかわる情報をデータ加工部33に送信する。
【0021】
なお、図4の例では図柄43も余白領域45も矩形の領域として扱っており、この場合、位置、大きさにかかわる情報(属性情報)は、例えば、矩形の4点の座標、あるいは矩形の対角線の2点の座標などで表わすことができる。また、余白領域45は矩形に限らず、矩形を連結した多角形の領域としてもよく、この場合、余白領域45は複数の座標を連結した閉領域として表わすことができる。また、図柄領域44と印刷可能領域46の干渉を避けるため、図示のように、印刷可能領域46は、余白領域45から縮小した態様としてもよい。
【0022】
図5は、データ加工部33における処理を示す図であり、図示の例では印刷可能領域46が1箇所、追加図柄情報が文字の場合を表わしている。
予め印刷物17に印刷されている文字41、画像42の配置は様々であるため、印刷可能領域46の位置と大きさは印刷物毎に変化する。そこで、出力条件設定部33では、記憶部39に格納されている追加図柄情報(図柄および属性情報)を印刷可能領域46に合わせて加工し、追加印刷データとして後工程プリンタ11に出力する。
【0023】
追加すべき図柄を印刷可能領域46の大きさに合わせて加工するには、同図柄が画像の場合は、画像の縦横比を保ちながら印刷可能領域46に合わせ拡大または縮小の処理を行えばよい。また、同図柄が文字の場合は、文字数を保ちながら文字のポイント(大きさ)を調整することによって行う。印刷分野では、このような文字の処理を「流し込み」と呼ぶ。
【0024】
印刷可能領域46の属性情報(属性情報A51と呼ぶ)は、余白領域識別部32から得られ、また、印刷可能領域46に印字すべき追加図柄情報として文字情報55およびその属性情報(属性情報B52と呼ぶ)が記憶部39から得られる。
データ加工部33では、属性情報A51と属性情報B52から、文字情報55を加工するための加工情報54と後工程プリンタ11の制御に必要な出力情報58を含む新たな属性情報(属性情報C53と呼ぶ)を生成する。
文字情報55は加工情報54したがって図柄加工56が施される。文字情報55の属性は文字であるので、図柄加工56では、印刷可能領域46に合わせた流し込みが行われる。
このように加工された文字情報57は、最終的には出力制御部35を経て後工程プリンタ11で印刷される。
このようにして印刷可能領域46に追加図柄59が印刷された印刷物50が得られる。
【0025】
なお、出力情報58は、文字情報57を少なくとも印刷すべき位置、大きさにかかわる情報を含み、さらに、文字情報57に関する情報、例えば、画像/文字の別、フォント種類、文字サイズ、解像度、色情報などを含んでもよい。
【0026】
また、余白領域45が存在しない場合や、後工程プリンタ11が印刷すべき追加情報がない場合は、出力条件の位置情報およびサイズ情報を印刷不可とすることによって、あるいは、追加印刷データを空データとすることによって、追加印刷を省くことができる。
【0027】
なお、本発明のプリントデータ生成装置10によれば、印刷物17への追加加工としては、上記のような「印刷」に限らず、他の加工のための情報も生成可能である。その一つにミシン目加工がある。ミシン目は、折り目や切り離しを容易にするための加工であり、多くの場合は金属製の刃型を用いて加工するが、ミシン目の位置や大きさを自在に加工する方法としてレーザ加工がある。そこで、後工程プリンタ11にレーザ加工装置を加え、プリントデータ生成装置10の出力条件をレーザ照射の位置情報や照射強度情報とすることによりオンデマンド印刷に適したミシン目加工が実現できる。
これを応用すれば、追加印刷用のプリンタで余白にクーポンを印刷し、その周囲に切取りのためのミシン目を入れるなどの加工が可能となる。
【0028】
以上、説明したように、本発明のプリントデータ生成装置によれば、大きさや位置が様々な可変印刷データが印刷された印刷物に対して、前記可変印刷データと追加印刷データを予め合成することなく余白領域に追加印刷できる。例えば帳票印刷においては、通常は帳票のレイアウト設計に際し、予め出力位置を定義した定義体(レイアウト)の作成を行うが、本発明のプリントデータ生成装置により、後工程プリンタ側での定義体の作成が不要となる。
【符号の説明】
【0029】
1 プリントシステム
10 プリントデータ生成装置
11 後工程プリンタ
14 制御装置
15 前工程プリンタ
17、50 印刷物
21、41 文字
22、42 画像
25、45 余白領域
36 データ処理部
37 画像取込カメラ
38 入出力機器
44 図柄領域
46 印刷可能領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め不特定の領域に図柄が印刷された印刷物に対して、画像出力装置を介して更に別図柄を追加して形成するためのプリントデータ生成装置であって、
前記プリントデータ生成装置は、
前記印刷物を撮像して、印刷物の図柄を画像情報として読み込む画像取込部と、
前記画像取込部により取り込まれた画像情報から、図柄のない余白領域を抽出する余白領域識別部と、
前記余白領域の属性情報と、前記余白領域に印刷すべき別図柄の属性情報とを照合し、前記余白領域に収まる追加印刷用データを生成するデータ加工部と、
前記追加印刷用データを前記画像出力装置に出力するための出力条件を設定する出力条件設定部と、
を備え、
前記余白領域の属性情報は、少なくとも該領域の位置および大きさにかかわる情報を含むことを特徴とするプリントデータ生成装置。
【請求項2】
前記出力条件は、少なくとも前記別図柄の出力位置を含むことを特徴とする請求項1記載のプリントデータ生成装置。
【請求項3】
前記出力条件は、当該余白領域に画像出力をしない場合を含むことを特徴とする請求項1記載のプリントデータ生成装置。
【請求項4】
前記画像出力装置はレーザ加工装置を含み、
前記出力条件は、レーザ加工条件であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のプリントデータ生成装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−8253(P2013−8253A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141276(P2011−141276)
【出願日】平成23年6月25日(2011.6.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】