説明

プリント基板の評価方法

【課題】本発明は、有害物質規制に対する適合・不適合の評価を確実に行うことが可能なように部材を分離して評価するプリント基板の評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基板分離工程と、金属分離工程と、樹脂分離工程と、評価工程とを備える。基板分離工程は、基板に電子部品が実装されたプリント基板に対し、所定の有害物質規制の適合性を評価する方法であって、基板から電子部品を分離する。金属分離工程は、基板分離工程で分離された電子部品から金属部材を分離する。樹脂分離工程は、金属分離工程で金属部材が分離された電子部品を、樹脂部材とガラス・セラミック部材とに分離する。評価工程は、各分離工程で分離された基板、金属部材、樹脂部材及びガラス・セラミック部材のそれぞれを評価対象物とし、当該評価対象物のそれぞれに対して所定の有害物質規制に基づいて適合性の評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の評価方法に係る発明であって、特に、有害物質規制に対するプリント基板の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子・電気機器には、その制御等のため基板に電子部品を実装したプリント基板が用いられる。このプリント基板は、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ樹脂等に銅箔の回路パターンが形成され、当該回路パターンに、金属部材、樹脂部材、ガラス・セラミック部材からなるIC、抵抗、コンデンサ及びコネクタなどの電子部品がはんだ等で実装されている。
【0003】
このようなプリント基板をリサイクルするために廃棄処分する場合、従来は、プリント基板に粉砕・圧潰・展延工程等を施すことにより、樹脂材料等のその他の材質の材料から金属材料を分離・回収していた。具体的な方法については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
また、このようなプリント基板をリサイクルするために廃棄処分する場合、別の方法として、特許文献2に示しているように、プリント基板を一括破砕した後、磁性セラミック、鉄系金属、非鉄軽金属及びプラスチックに分別し、回収していた。
【0005】
【特許文献1】特開平10-296225号公報(図1)
【特許文献2】特開2001-46975号公報(4頁35〜41行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品が実装されたプリント基板は、電気・電子機器構成部品であるため、環境及び人の健康に有害な影響を与える物質を最小化することを目的とするRoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)指令の対象となっている。このRoHS指令は、電気・電子機器に対する鉛(Pb)、カドミウム、六価クロム、水銀、ポリ臭素化ビフェニル類及びポリ臭素化ジフェニルエーテル類の6物質の使用を制限する指令となっている。
【0007】
しかし、有害物質規制であるRoHS指令において、これら6物質が、すべての部材について使用が制限されているわけではない。RoHS指令では、一部、例外的に規制対象外の項目を含む部材が設定されている。具体的に、電子部品が実装されたプリント基板では、電子部品中のガラスに含まれる鉛や電子部品中のセラミックに含まれる鉛は規制対象外である。同じ電子部品を構成する材料であっても、ガラス・セラミック部材以外の、例えば樹脂部材に含まれる鉛は規制対象となる。
【0008】
一方、基板には、代表的なものとしてガラスエポキシ樹脂が使用される。このガラスエポキシ樹脂は、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させて形成されるため、構成材料であるガラス繊維の材質はガラスである。しかし、基板は、電子部品ではないため、鉛を含有している場合RoHS指令の規制対象となる。すなわち、電子部品が実装されたプリント基板には、鉛を含むと規制対象となるガラスと、鉛を含んでいても規制の対象とならないガラスの両方が存在している。
【0009】
従って、電子部品が実装されたプリント基板に対し有害物質規制の適合性を評価するためには、各部材を完全に分離して、それぞれの部材に対して有害物質規制の項目を評価する必要がある。
【0010】
有害物質規制に対するプリント基板の評価において、特許文献1で開示されている部材の分離方法を用いると、鉛の含有が規制対象外である電子部品中のガラス・セラミック部材と、鉛の含有が規制対象である電子部品中の樹脂部材とを分離しない。そのため、電子部品に対し有害物質規制の適合性を評価する場合に、検出された鉛が規制対象外であるガラス・セラミック部材中に含まれたものであるのか、規制対象の樹脂部材に含まれたものであるのかが判断できず、適合か不適合かの評価ができない問題があった。
【0011】
有害物質規制に対するプリント基板の評価において、特許文献2で開示されている部材の分離方法を用いると、プリント基板と電子部品とを一括して粉砕した後、材質別に分離する。そのため、ガラス・セラミック部材について鉛が検出された場合、当該鉛が、規制対象外である電子部品中のガラス・セラミック部材に含まれるものであるのか、規制対象の他の部材中に含まれるものであるのかを判断できず、有害物質規制の適合・不適合を評価できない問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、有害物質規制に対する適合・不適合の評価を確実に行うことが可能なように部材を分離して評価するプリント基板の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る解決手段は、基板に電子部品が実装されたプリント基板に対し、所定の有害物質規制の適合性を評価する方法であって、基板から電子部品を分離する基板分離工程と、基板分離工程で分離された電子部品から金属部材を分離する金属分離工程と、金属分離工程で金属部材が分離された電子部品を、樹脂部材とガラス・セラミック部材とに分離する樹脂分離工程と、各分離工程で分離された基板、金属部材、樹脂部材及びガラス・セラミック部材のそれぞれを評価対象物とし、当該評価対象物のそれぞれに対して所定の有害物質規制に基づいて適合性の評価を行う評価工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に記載のプリント基板の評価方法は、各分離工程で分離された基板、金属部材、樹脂部材及びガラス・セラミック部材のそれぞれを評価対象物とし、当該評価対象物のそれぞれに対して所定の有害物質規制に基づいて適合性の評価を行うので、有害物質規制に対する適合・不適合の評価を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1に、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法のフローチャートを示す。本実施の形態では、ガラスエポキシ樹脂に銅箔の回路パターンが形成された基板の両面に、IC、抵抗、コンデンサ、コネクタなどの電子部品が接合はんだで接合されたもの(以下、プリント基板という)を評価試料として用いる。しかし、有害物質規制であるRoHS指令では、IC、抵抗、コンデンサ、コネクタなどの電子部品を構成するガラス・セラミック部材に含まれる鉛が有害物質規制の対象外である。
【0016】
そのため、電子部品を構成するガラス・セラミック部材をその他の部材から分離し、それぞれの部材毎に適合性を評価することが重要となる。本実施の形態では、図1に示すフローチャートに基づいて、基板、金属部材、樹脂部材及びガラス・セラミック部材の個々の評価対象物に分離し、当該評価対象物毎に適合性を評価する。
【0017】
具体的に、図1に示す基板分離工程1では、電子部品を基板から分離する。つまり、鉛の含有が規制対象外の部材を含む電子部品といずれの構成部材も規制対象となる基板とを分ける。次に、図1に示す金属分離工程2では、電子部品の中から金属部材を分離する。さらに、図1に示す樹脂分離工程3では、金属部材を分離した電子部品を樹脂部材とガラス・セラミック部材に分離する。つまり、鉛の含有が規制対象外となるガラス・セラミック部材を、樹脂部材と分離する。
【0018】
以上の分離工程(基板分離工程1、金属分離工程2、樹脂分離工程3)を実施することで、基板、基板に付着した接合はんだ、電子部品中の金属部材、電子部品中の樹脂部材、電子部品中のガラス・セラミック部材のそれぞれを評価対象物に分離される。そして、個々の評価対象物毎に有害物質規制の適合性評価を行う。
【0019】
次に、各分離工程について、図面を用いて説明する。まず、図2に、本実施の形態に係る基板分離工程1の概略図を示す。図2では、基板11に電子部品20を実装したプリント基板10が固定治具31で固定されている。なお、基板11と電子部品20との接合は、接合はんだ12で行われている。
【0020】
そして、接合はんだ12を溶融、液状化させるために、固定治具31と共にプリント基板10を加熱炉30に入れる。接合はんだ12は、一般的にPb−Sn共晶はんだ(融点183℃)若しくはPbフリーはんだのSn−Ag−Cuはんだ(融点217℃)が用いられる。そのため、加熱炉30でのプリント基板10の加熱温度は、接合はんだ12を十分に溶融させるのに必要となるSn−Ag−Cuはんだの融点217℃以上に設定する。つまり、加熱炉30での加熱温度を、217〜260℃の範囲にすることが望ましい。
【0021】
また、プリント基板10は、電子部品20が接合されている面が床に対し垂直になるように固定されているので、接合はんだ12が溶融・液状化すると重力により基板11から電子部品20が落下し、容易に基板11と電子部品20とを分離することができる。また、図2では、純銅線32を基板11と電子部品20との間隙に差し込み、接合面に対して水平にスライドさせることで、より容易に基板11と電子部品20とを分離することができる。
【0022】
純銅線32を基板11と電子部品20との間隙に差し込み、スライドさせる掻き取り手段により、接合はんだ12は、大部分が電子部品20と共に基板11から離脱し、一部が基板11の表面に残留し付着する。
【0023】
なお、本実施の形態では、掻き取り手段に純銅線32を用いたが、本発明はこれに限られず、基板11と電子部品20との間隙に差し込むことができ、スライドすることが可能な、その他の金属線や金属網、金属板等の金属材でも良い。
【0024】
次に、本実施の形態では、電子部品20から金属部材21を分離する金属分離工程2を行う。まず、基板11から分離された電子部品20を破砕・粉砕する。具体的には、液体窒素で凍結させた電子部品20を粉砕機に入れ所定の時間粉砕処理することで、電子部品20の構成部材がばらばらになった粒状あるいは粉体状の混合物が得られる。図3に、電子部品20の破砕・粉砕後に得られる金属部材21、樹脂部材22、ガラス・セラミック部材23の粒状あるいは粉体状の混合物を示す。
【0025】
この破砕・粉砕後の電子部品20に対し、図4に示す処理を行う。図4では、まず、粒状あるいは粉体状の電子部品20に、塩酸と硝酸を混合した金属溶解溶液40を加えて加熱処理を行う。この処理により、粒状あるいは粉体状の電子部品20の中から金属部材21のみが金属溶解溶液40に溶解し、その他の樹脂部材22やガラス・セラミック部材23は溶解せずに残留する。この熱処理後の金属溶解溶液40をろ紙を用いてろ過することで、金属部材21が溶解した溶液41はろ紙を通過し、溶解しなかった樹脂部材22及びガラス・セラミック部材23はろ紙上に捕集される。
【0026】
上述の処理により電子部品20から金属部材21を分離することができる。なお、本実施の形態では、金属溶解溶液40として塩酸と硝酸の混合溶液を用いたが、本発明はこれに限られず、金属部材21を選択的に溶解することができる溶液であれば、他の溶液を用いても良い。
【0027】
次に、本実施の形態では、金属部材21を分離した電子部品20を樹脂部材22とガラス・セラミック部材23とに分離する樹脂分離工程3を行う。図5に、電子部品20中の樹脂部材22とガラス・セラミック部材23とを分離する方法の概略図を示す。図5に示す分離方法では、電子部品20に使用される樹脂部材22の比重が2未満、ガラス・セラミック部材23の比重が2以上であることを利用して、風力50を用いて樹脂部材22とガラス・セラミック部材23とを分離する。具体的には、比重の軽い樹脂部材22が、比重の重いガラス・セラミック部材23よりも風力50で遠くに飛ばされるため、風力50の流入口からより遠い位置に集まることになる。なお、本実施の形態では、比重差を利用して風力で分離したが、本発明はこれに限られず、比重2の溶液を利用する方法等、比重差を利用して樹脂部材22とガラス・セラミック部材23とを分離できる方法であれば他の方法でも良い。
【0028】
以上の分離工程(基板分離工程1、金属分離工程2、樹脂分離工程3)により分離した基板11、接合はんだ12、電子部品中の金属部材21、電子部品中の樹脂部材22、電子部品中のガラス・セラミック部材23について、それぞれ有害物質規制の適合性評価を行う。
【0029】
具体的には、評価対象物(基板11、接合はんだ12、電子部品中の金属部材21、電子部品中の樹脂部材22、電子部品中のガラス・セラミック部材23)のそれぞれに対し、有害物質規制であるRoHS指令において規制対象となる含有物質(鉛(Pb)、カドミウム、六価クロム、水銀、ポリ臭素化ビフェニル類及びポリ臭素化ジフェニルエーテル類の6物質)を蛍光X線分析法を用いて同定する(同定工程)。
【0030】
さらに、含有物質の評価対象物の単位重量に対する含有量を求める(定量分析工程)。定量分析工程で得られた含有量が、有害物質規制で決められた閾値以上の場合に不適合と判定する(判定工程)。以上の工程によりプリント基板の有害物質規制の適合性評価を行う。なお、本実施の形態では、基板分離工程で基板11と電子部品20とを分離した際、基板11に付着した接合はんだ12に対し適合性評価を行った。また、判定工程には、有害物質規制の閾値を記憶する記憶部と、定量分析工程で得られた含有量と有害物質規制の閾値とを比較する演算部とに構成された演算処理装置が用いられる。
【0031】
上述した本実施の形態に係るプリント基板の評価方法を、あるプリント基板に適用すると、基板11からは、鉛、カドミウム、クロム、水銀は検出されず、臭素のみ閾値である1000ppmを超える量が検出された。接合はんだ12については、カドミウム、クロム、水銀、臭素は検出されず、鉛のみ170ppm検出した。しかし、有害物質規制で定めている鉛の閾値1000ppmに対して、はるかに小さな値であるので、適合と判定される。
【0032】
電子部品中の金属部材21については、鉛、カドミウム、クロム、水銀、臭素のいずれも検出されず、適合と判定される。電子部品中の樹脂部材22については、鉛、カドミウム、クロム、水銀、臭素のいずれも検出されず、適合と判定される。電子部品中のガラス・セラミック部材23については、カドミウム、クロム、水銀、臭素は検出されず、鉛のみ閾値である1000ppmを超える量を検出した。しかし、電子部品中のガラス・セラミック部材については、鉛の含有が規制対象でないため、閾値を越えても、適合と判定される。
【0033】
また、蛍光X線分析法を用いることで検出した基板11の臭素が、規制対象のポリ臭素化ビフェニル類あるいはポリ臭素化ジフェニルエーテル類であるか否かを確認する必要がある。そのため、有機溶媒抽出−ガスクロマトグラフィー質量分析法により、基板11から検出された臭素の評価を行う。その結果、基板11から検出された臭素から、ポリ臭素化ビフェニル類、ポリ臭素化ジフェニルエーテル類のいずれも検出されず、適合と判定される。以上の結果により、今回評価したプリント基板は、RoHS指令に対し適合であると確認できる。
【0034】
なお、含有物質の同定及び定量分析等の分析手段として本実施の形態では、蛍光X線分析法及びガスクロマトグラフィー質量分析法を用いたが、本発明はこれに限られず、対象となる含有物質が検出可能であればいかなる手段を用いてもよく、例えば、原子吸光分析法、プラズマ発光分光分析法、プラズマ質量分析法、紫外・可視吸光光度法、比色法、X線回折法、ガスクロマトグラフィー分析法、X線光電子分光法、電子プローブマイクロアナリシス、質量分析法等を用いることができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、基板分離工程1、金属分離工程2及び樹脂分離工程を行うことにより、有害物質規制対象である基板11中のガラス部材に含まれる鉛と、有害物質規制対象外である電子部品20中のガラス・セラミック部材23に含まれる鉛とを分離することができる。また、本実施の形態では、電子部品20中の金属部材21を他の部材から分離することができ、さらに有害物質規制対象の電子部品20中の樹脂部材22に含まれる鉛と有害物質規制対象外の電子部品20中のガラス・セラミック部材23に含まれる鉛とを分離して評価することができる。これにより、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法は、基板11の有害物質規制に対する適合・不適合の判定を確実に行うことができ、正確なプリント基板の適合性評価を行うことができる。
【0036】
また、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、プリント基板10の容量及び重量の大半を占める基板11を電子部品20と分離して評価することで、特に電子部品20中の樹脂部材22を評価する際に、基板11を構成する樹脂による希釈効果を軽減することができる。つまり、電子部品20中の樹脂部材22に含有されていた有害物質が、基板11を構成する樹脂によって希釈されずに正確に検出でき、不適合を見逃す問題を回避できる効果もある。
【0037】
さらに、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、基板11を電子部品20と分離して評価することで、非常に硬く、破砕・粉砕が容易でない基板11を除去した電子部品20のみに、破砕・粉砕工程を実施すればよく、破砕・粉砕装置への負荷を大幅に低減することができる効果もある。
【0038】
また、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、純銅線32を利用して基板11から電子部品20を掻き取る手段を設けたことにより、液状化した接合はんだ12の大部分が純銅線32を伝わって電子部品20と異なる場所に落下する。そのため、本実施の形態では、接合はんだ12の付着の少ない電子部品20を回収することができ、電子部品20中の金属部材21の評価を精度良く行うことができる効果もある。
【0039】
さらに、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、電子部品20から金属部材21を分離した後の残存部材が樹脂部材22とガラス・セラミック部材23の2種類となるため、後の分離工程が容易になる効果もある。
【0040】
また、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、比重の大きな金属部材20を分離しておくことにより、樹脂部材22やガラス・セラミック部材23中の有害物質評価を行う際、金属部材20による希釈効果を軽減できる。そのため、本実施の形態では、本来閾値以上の含有物質を含んでいても希釈効果により含有物質が閾値以下となって適合と誤って判定される問題を回避することができる効果もある。
【0041】
(実施の形態2)
図6に、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法のフローチャートを示す。実施の形態1では、図1に示すように、基板と接合はんだとを一体として有害物質規制の適合性評価を行っていた。つまり、実施の形態1では、接合はんだの評価を基板に付着した接合はんだで行い、基板の評価は接合はんだが付着していない部分で行っていた。
【0042】
しかし、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、有害物質規制の適合性評価の対象とする接合はんだを、基板分離工程1で純銅線を伝わって基板から電子部品と異なる場所に落下した接合はんだとしている。つまり、本実施の形態では、基板に付着した接合はんだを用いずに、基板及び電子部品から分離された接合はんだを用いて有害物質規制の適合性評価を行っている。なお、本実施の形態は、上述以外の構成について実施の形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施の形態では、図2に示した掻き取り手段で基板11と電子部品20とを分離し、その際に純銅線32を伝わってきた液状化した接合はんだ12を回収し、基板11とは別に有害物質規制の適合性評価を行う。
【0044】
上述した本実施の形態に係るプリント基板の評価方法を、あるプリント基板に適用すると、接合はんだ12については、カドミウム、クロム、水銀、臭素は検出されなかった。鉛のみ150ppm検出しされたが、鉛の閾値1000ppmに対してはるかに小さな値であるため、適合と判定される。
【0045】
以上のように、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、純銅線32を伝って基板11及び電子部品20から分離された接合はんだ12を評価対象物として適合性の評価を行うので、基板11の影響がなく、接合はんだ12単体の含有物質の評価を行うことができ、接合はんだの有害物質規制の適合評価を確実に行うことができる効果がある。
【0046】
(実施の形態3)
図7に、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法のフローチャートを示す。実施の形態1では、電子部品を分離した基板に対して有害物質規制の適合性評価を行っていた。しかし、本実施の形態では、基板と電子部品とを分離する前に、電子部品が実装されていない基板部分をはさみ等で切り出す切り出し工程4を有している。そして、本実施の形態では、切り出した基板に対して有害物質規制の適合性評価を行っている。なお、本実施の形態は、上述以外の構成について実施の形態1と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
プリント基板に用いる基板は、主にガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ樹脂等の上に銅箔の回路パターンが形成されている。そして、基板に使用されているガラス繊維、エポキシ樹脂、銅箔は、同一基板内であれば、いかなる部位であっても同一である。従って、基板に対する有害物質規制の適合性評価は、電子部品が実装されていない基板の部分で評価しても、電子部品が実装されている基板の部分で評価しても結果は同じである。
【0048】
本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、図7に示すように、プリント基板から、電子部品が実装されていない基板の切断片を切り出し、残りのプリント基板残部については、実施の形態1と同様の処理を行う。なお、プリント基板残部に対して基板分離工程1を行った場合、実施の形態1では基板に付着した接合はんだに対して有害物質規制の適合性評価を行ったが、実施の形態2のように純銅線を伝って基板及び電子部品から分離された接合はんだに対して有害物質規制の適合性評価を行っても良い。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係るプリント基板の評価方法では、電子部品が実装されていない部分の基板を切り出す切り出し工程4を有しているので、電子部品や接合はんだ等の搭載されていない基板を、確実に評価することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプリント基板の評価方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1に係る基板分離工程を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る破砕・粉砕後の電子部品を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る金属分離工程を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る樹脂分離工程を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るプリント基板の評価方法のフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3に係るプリント基板の評価方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 基板分離工程、2 金属分離工程、3 樹脂分離工程、4 切り出し工程、10 プリント基板、11 基板、12 接合はんだ、20 電子部品、21 金属部材、22 樹脂部材、23 ガラス・セラミック部材、30 加熱炉、31 固定治具、32 純銅線、40 金属溶解溶液、41 金属部材が溶解した溶液、50 風力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品が実装されたプリント基板に対し、所定の有害物質規制の適合性を評価する方法であって、
前記基板から前記電子部品を分離する基板分離工程と、
前記基板分離工程で分離された前記電子部品から金属部材を分離する金属分離工程と、
前記金属分離工程で前記金属部材が分離された前記電子部品を、樹脂部材とガラス・セラミック部材とに分離する樹脂分離工程と、
各分離工程で分離された前記基板、前記金属部材、前記樹脂部材及び前記ガラス・セラミック部材のそれぞれを評価対象物とし、当該前記評価対象物のそれぞれに対して前記所定の有害物質規制に基づいて適合性の評価を行う評価工程とを備えることを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項2】
基板に電子部品が実装されたプリント基板に対し、所定の有害物質規制の適合性を評価する方法であって、
前記電子部品が実装されていない部分の前記基板を切り出す切り出し工程と、
前記基板から前記電子部品を分離する基板分離工程と、
前記基板分離工程で分離された前記電子部品から金属部材を分離する金属分離工程と、
前記金属分離工程で前記金属部材が分離された前記電子部品を、樹脂部材とガラス・セラミック部材とに分離する樹脂分離工程と、
前記切り出し工程で切り出された前記基板、各分離工程で分離された前記金属部材、前記樹脂部材及び前記ガラス・セラミック部材のそれぞれを評価対象物とし、当該前記評価対象物のそれぞれに対して所定の有害物質規制に基づいて適合性の評価を行う評価工程とを備えることを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプリント基板の評価方法であって、
前記基板分離工程は、前記電子部品が実装された前記基板を所定の温度に加熱し、前記電子部品と前記基板との間隙に金属材を差し込み、スライドさせて前記基板から前記電子部品を分離することを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント基板の評価方法であって、
前記評価工程は、前記金属材を伝って前記基板及び前記電子部品から分離された接合はんだを前記評価対象物として適合性の評価を行うことを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のプリント基板の評価方法であって、
前記評価工程は、前記基板に付着している接合はんだを前記評価対象物として適合性の評価を行うことを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のプリント基板の評価方法であって、
前記金属分離工程は、前記基板から分離された前記電子部品を粉砕後、金属溶解溶液で前記金属部材を溶かし、ろ過することで前記金属部材を前記電子部品から分離することを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のプリント基板の評価方法であって、
前記樹脂分離工程は、比重差を利用して前記樹脂部材と前記ガラス・セラミック部材とに分離することを特徴とするプリント基板の評価方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載のプリント基板の評価方法であって、
前記評価工程は、
前記評価対象物のそれぞれに対し、前記所定の有害物質規制において規制対象となる含有物質を同定する同定工程と、
前記含有物質の前記評価対象物の単位重量に対する含有量を求める定量分析工程と、
前記定量分析工程で得られた前記含有量が、前記所定の有害物質規制で決められた閾値以上の場合に不適合と判定する判定工程とを備えることを特徴とするプリント基板の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−307437(P2007−307437A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136257(P2006−136257)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】