説明

プリント基板銅めっき装置の製造方法

【課題】従来のプリント基板のめっき装置の問題点であった、めっき液の温度上昇を防ぐための、冷却装置の設置によるコスト発生をなくし、プリント基板のめっき装置の設置方法を提供する。
【解決手段】空気攪拌用のエアブロワ15を、一般的に高温になりやすいめっき槽1から、エアブロワ配管用のパイプ21の延長により、温度の影響のない場所もしくは隔離された常温の部屋に設置する。薬液2内に送り込まれる空気10’は吸入時温度が低く、パイプまたはその配管部で配送されている時点で放熱し、常温に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント基板のめっき装置において、冷却機を不要とする装置の発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1〜図3を参照して、従来のプリント基板のめっき方法について説明する。図1〜図3は、従来の一般的なプリント基板の硫酸銅めっき方法を説明するための図である。図1は上方からめっき槽を見た模式図、図2はめっき槽を横から見た断面図、図3は図2のめっき槽に取り付ける、ろ過装置、噴流ポンプ、及びエアブロア、等の付帯設備を説明するための図である。
【0003】
硫酸銅めっき処理は、以下の(い)〜(ほ)手順で実行する。
(い)被めっき対象物 7(例えば、プリント基板である。以下、プリント基板7 と称する)に対して十分大きい銅めっき槽 1 中に、主に硫酸、硫酸銅、塩素、及び添加物を溶解した薬液 2 を満たす(例えば、特許文献1参照。)。
(ろ)所定の容器(例えば、チタン製容器)4 に陽極となる物質(例えば、含りん銅ボールなので、以下、銅ボールと称する)3 を入れる。なお、陽極となる物質 3 は、図1に多数記載されているが、煩雑になるため、参照番号をすべてにつけていない。
(は)陰極とする導電性のバー 5 にプリント基板 7 が設置された所定の治具 6 を吊るす。導電性のバー 5 は、図示しない支持台によって吊られ、治具 6 を懸垂している。
(に)所定の電源(整流器 8 )にて調整された電圧を印加する。
(ほ)陽極側の銅ボール 3 が薬液2 を介して銅イオンとなり、陰極側のプリント基板 7 に析出する。
【0004】
薬液 2 、銅ボール 3 、治具 6 については、周知の材料や形状のものを使用する。
また、薬液 2 の中に、例えばエアパイプ 9 から空気 10 を出力し、空気 10 が入力されることによってめっき液 2 が攪拌され、銅めっき槽 1 内の各イオンの分布を一定にすることも一般的に知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、空気 10 を送り込むことによって、薬液 2 の酸素不足を防ぎ、反応途中のイオンである一価銅の析出を防いでいる。
【0005】
更に、不純物をろ過するために、銅めっき槽 1 内の薬液 2 の吸入と吐出を所定の量で繰り返すためのろ過装置11 が一般的に設置されている。
加えて、特にφ 0.3 mm 以下の小径のスルーホールや非貫通型の穴であるブラインドバイアホールがある場合には、パイプ12 から噴流ポンプ 13 により薬液 2 を排出させ、プリント基板7 へ噴霧する方法がある。パイプ 12 には、所定の径の穴がプリント基板 7 に向いた側にあけられている。
これにより、銅イオン 14 が穴内にも均一に供給され、表面、穴内ともに均一なめっきとなる効果が得られる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−166100公報
【特許文献2】特開2000−256891公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、噴流パイプ 12 により噴霧された薬液 2 は、噴流ポンプ 13 の稼働熱により加熱される。また、ろ過装置 11 についても同様で、薬液 2 が加熱される。さらに、薬液 2 自身も反応熱を発生する。
以上により、めっきが進むにつれて、徐々に薬液温度が上がり、めっきに最適な温度から外れた場合、薬液 2 の成分バランスが崩れ、品質低下の原因となる。
【0008】
これを防ぐために、従来から、冷却機が設置されている。図4と図5に、冷却機の例を示す。
冷却機は、冷却媒体を通して薬液を冷却するものである。その方式は、主に、冷却機内部で冷却する方式(例えば、図4)と、めっき槽内部に冷却媒体を通過させ冷却する方式(例えば、図5)とがある。
しかし、いずれにせよ冷却装置として別に設置しなくてはならず、コストが発生する。特に工場用冷却水などの既存の冷却媒体がない場合は、冷却媒体貯槽も設置しなくてはならず、さらにコスト高になる。
また一般的に、以上の装置は薬液 2 内への空気 10 の供給のためのエアブロワ15 等の付帯設備は、めっき槽 1 の近くに設置されている。また、エアブロワ 15 からは、配管用のパイプ 20 でめっき槽 1 に空気 10 を供給している。
【0009】
本発明の目的は、従来のプリント基板のめっき装置の問題点であった冷却装置の設置によるコスト発生をなくし、プリント基板のめっき装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のめっき装置は、エアブロワ配管用のパイプを延長または隔離し、エアの吸入口を遮蔽の外にしたものである。そして、エアブロワ配管の途中で熱を発散させたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアブロワで薬液を冷却するために通常必要な冷却機が不要になり、冷却コストが不要になる。
また、冷却機による強制ではなく自然放熱を利用しているためエネルギー不要で環境にやさしい。
また、エアブロア設備をめっき槽から遠ざけたため、エアブロア設備の騒音がめっき槽周辺では小さくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のプリント基板製造方法を、図6を参照して説明する。図6は、本発明のプリント基板のめっき装置の一実施例を説明するための図である。図6は、エアブロワ 15 を一般的に高温になりやすいめっき装置から、温度の影響のない場所もしくは隔離された常温の部屋に設置している。
パイプ 21 は、エア量最大 30 l/min のとき 4 m 以上で攪拌能力が不足しない程度とする。
なお、図7に示すように、エアブロワ 15 からめっき槽 1 に空気 10 を供給する配管用のパイプ 22 をめっき槽 1 からはなれた場所で蛇行させたり迂回させたりする配管部 18 を設けて延長するようにしても良い。
【0013】
防音の必要がある場合は、例えば内側にスポンジ状のクッションを貼り消音対策のされた防音カバー 16 をエアブロワ 10 に被せる。
その際空気吸入口 17 は防音カバー16 の外側に設置する。
その結果、薬液 2 内に送り込まれる空気10′は吸入時温度が低く、またパイプ 21 またはその配管部 18 で配送されている時点で放熱し常温に戻っている。
したがって、薬液は常に常温に保たれることになる。これにより冷却機が不要となる。
【0014】
上述したように、上記実施例のめっき装置によれば、エアブロワで薬液を冷却するために通常必要な冷却機が不要になり
・ 冷却コストが不要になる。
・ 冷却機による強制ではなく自然放熱を利用しているためエネルギー不要となる。
(3)エアブロア設備をめっき槽から遠ざけたため、エアブロア設備の騒音がめっき槽周辺では小さくなった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の一般的なプリント基板銅めっき装置の上面図。
【図2】図1のプリント基板銅めっき装置の側面図。
【図3】図2に付帯するプリント基板銅めっき装置の配管図。
【図4】従来の一般的なプリント基板銅めっき装置の冷却装置図。
【図5】従来の一般的なプリント基板銅めっき装置の冷却装置図。
【図6】本発明のプリント基板のめっき装置の一実施例を説明するための図。
【図7】本発明のプリント基板のめっき装置の一実施例を説明するための図。
【符号の説明】
【0016】
1:銅めっき槽、 2:薬液、 3:容器、 4:陽極となる物質、 5:導電性のバー、 6:治具、 7:プリント基板、 8:整流器、 9:エアパイプ、 10,10′:空気、 11:ろ過装置、 12:パイプ、 13:噴流ポンプ、 14:銅イオン、 15:エアブロア、 16:防音カバー、 17: 空気吸入口、 18:配管部、 20,21,22:パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアブロワ配管を延長し、熱を発散させることより、エア攪拌により冷却機能を持たせたプリント基板銅めっき装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−270285(P2007−270285A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98052(P2006−98052)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】