説明

プリント基板

【課題】信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形の劣化を軽減する。
【解決手段】プリント基板は、絶縁層と、絶縁層を挟んで積層された信号配線層および基準配線層とを備える。信号配線層には、信号配線パターンが形成され、基準配線層には、基準電圧を伝達するための基準配線パターンが形成される。基準配線パターンの少なくとも一部(102a)は、絶縁層を挟んで信号配線パターンの少なくとも一部(101a)に対向する。
基準配線パターンのうち信号配線パターンに対向する部分(121)には、1または複数の欠落部(111)が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント基板に関し、さらに詳しくは、配線負荷容量の低減化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路などの複数の電子部品をプリント基板に搭載することによって電子機器が構成されており、プリント基板に形成された信号配線パターンを通じてこれらの電子部品の間で電気信号が伝達されている。また、信号配線パターンには、電子部品間を電気的に接続する信号配線の他に、電子部品の電気信号を観測するために電子部品からの電気信号を外部へ伝達する観測用の信号配線も含まれている場合がある(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−120812号公報
【特許文献2】特開平11−326372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、信号配線パターンの配線負荷容量が大きくなるほど、信号配線パターンによって伝達される電気信号の信号波形の劣化が顕著になってしまう。このように信号配線パターンにおいて電気信号の信号波形が劣化した場合、電子部品が誤動作してしまったり、電子部品の電気信号を正確に観測できない可能性がある。また、近年、省電力化の推進に伴い、電子部品を駆動するドライバの駆動能力が低くなってきているので、信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形の劣化が益々顕著になる傾向にある。
【0005】
そこで、この発明は、信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形の劣化を軽減できるプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の1つの局面に従うと、プリント基板は、絶縁層と、上記絶縁層を挟んで積層された信号配線層および基準配線層とを備え、上記信号配線層には、信号配線パターンが形成され、上記基準配線層には、基準電圧を伝達するための基準配線パターンが形成され、上記基準配線パターンの少なくとも一部は、上記絶縁層を挟んで上記信号配線パターンの少なくとも一部に対向し、上記基準配線パターンのうち上記信号配線パターンに対向する部分には、1または複数の欠落部が形成される。上記プリント基板では、信号配線パターンの配線負荷容量を低減でき、信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形(信号配線パターンによって伝達される電気信号の波形)の劣化を軽減できる。
【0007】
なお、上記基準配線パターンの一部を構成する基準配線は、上記絶縁層を挟んで上記信号配線パターンの一部を構成する信号配線に対向し、上記基準配線のうち上記信号配線に対向する部分に形成された欠落部は、上記信号配線に沿って延びる線形形状を有しても良い。このように構成することにより、信号配線の単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にできるので、信号配線によって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。
【0008】
または、上記基準配線パターンの一部を構成する基準配線は、上記絶縁層を挟んで上記信号配線パターンの一部を構成する信号配線に対向し、上記基準配線のうち上記信号配線に対向する部分に形成された欠落部は、上記信号配線の線幅よりも短い直径を有した円形形状を有するものであっても良い。
【0009】
または、上記基準配線パターンの一部を構成する基準配線は、上記絶縁層を挟んで上記信号配線パターンの一部を構成する信号配線に対向し、上記基準配線のうち上記信号配線に対向する部分に形成された欠落部は、上記信号配線の線幅を一辺とする正方形よりも小さい四角形形状を有するものであっても良い。
【0010】
この発明のもう1つの局面に従うと、プリント基板は、絶縁層と、上記絶縁層の形成面に形成された基準配線パターンおよび信号配線パターンとを備え、上記基準配線パターンは、基準電圧を伝達するための配線パターンであり、上記基準配線パターンの少なくとも一部は、上記信号配線パターンの少なくとも一部に対向するように形成され、上記基準配線パターンの側面のうち上記信号配線パターンに対向する側面部には、1または複数の凹部が形成される。上記プリント基板では、信号配線パターンの配線負荷容量を低減でき、信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形(信号配線パターンによって伝達される電気信号の波形)の劣化を軽減できる。
【0011】
なお、上記基準配線パターンの一部を構成する第1および第2の基準配線は、上記信号配線パターンの一部を構成する信号配線を挟んで互いに対向し、上記信号配線に対向する上記第1および第2の基準配線の各々の側面に形成された凹部は、上記信号配線を基準として線対称になるように配置されるものであっても良い。このように構成することにより、信号配線の単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にできるので、信号配線によって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。
【0012】
または、上記基準配線パターンの一部を構成する第1および第2の基準配線は、上記信号配線パターンの一部を構成する信号配線を挟んで互いに対向し、上記信号配線に対向する上記第1および第2の基準配線の各々の側面に形成された凹部は、上記信号配線を挟んで互い違いになるように配置されるものであっても良い。このように構成することにより、信号配線の単位長さ当たりの配線負荷容量を均一にできる。これにより、信号配線の単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にできるので、信号配線によって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形の劣化を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1によるプリント基板の構造の一例を示した断面図。
【図2】信号配線パターンの一例を示した平面図。
【図3】基準配線パターンの一例を示した平面図。
【図4】基準配線パターンに形成された欠落部について説明するための平面図。
【図5】信号配線および基準配線の構造の一例を示した平面図。
【図6】信号配線および基準配線の構造の一例を示した斜視図。
【図7】(a)信号配線に伝達される電気信号の一例を示した波形図。(b)基準配線に欠落部が形成されていない場合に信号配線によって伝達される電気信号の一例を示した波形図。(c)基準配線に1または複数の欠落部が形成されている場合に信号配線によって伝達される電気信号の一例を示した波形図。
【図8】欠落部の変形例を示した平面図。
【図9】欠落部の別の変形例を示した平面図。
【図10】欠落部のさらに別の変形例を示した平面図。
【図11】基準配線パターンにおける欠落部の形成について説明するための平面図。
【図12】プリント基板における配線間距離と層間距離との関係について説明するための斜視図。
【図13】半導体集積回路における配線間距離と層間距離との関係について説明するための斜視図。
【図14】基準配線パターンの設計工程について説明するための平面図。
【図15】信号配線パターンの設計工程について説明するための平面図。
【図16】基準配線パターンの設計工程の変形例について説明するための平面図。
【図17】実施形態2によるプリント基板の構造の一例を示した断面図。
【図18】信号配線および基準配線の構造の一例を示した平面図。
【図19】信号配線および基準配線の構造の一例を示した斜視図。
【図20】基準配線の構造の変形例を示した平面図。
【図21】基準配線の構造の別の変形例を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1によるプリント基板の構造の一例を示す。プリント基板1は、絶縁層と配線層とが交互に積層された多層構造を有する。ここでは、プリント基板1は、絶縁層11,12,13と、絶縁層11,12,13を挟んで積層された信号配線層14,基準配線層15,基準配線層16,信号配線層17とを備える。また、図1では、プリント基板1は、POP(Package on Package)構造を有する半導体装置の信号観測用基板として利用される。プリント基板1は、半導体集積回路31,32の間に挟まれている。なお、プリント基板1は、信号配線層14,絶縁層11,および基準配線層15を備えるもの(すなわち、2層構造を有するもの)であっても良い。
【0017】
〔信号配線層〕
信号配線層14には、電気伝導体からなる信号配線パターン101が形成される。図2のように、信号配線パターン101は、所定の電気信号(ここでは、半導体集積回路31からの信号)を伝達するための1または複数の信号配線によって構成される。信号配線層14と同様に、信号配線層17には、電気伝導体からなる信号配線パターン104が形成されており、信号配線パターン104は、所定の電気信号(ここでは、半導体集積回路32からの信号)を伝達するための1または複数の信号配線によって構成される。
【0018】
〔基準配線層〕
基準配線層15には、電気伝導体からなる基準配線パターン102が形成される。図3のように、基準配線パターンは、基準電圧(例えば、接地電圧、または電源電圧)を供給するための1または複数の基準配線によって構成される。また、基準配線パターン102の少なくとも一部は、絶縁層11を挟んで信号配線パターン101の少なくとも一部に対向する。図4のように、基準配線パターン102のうち信号配線パターン101に対向する部分には、1または複数の欠落部111(基準配線を構成する電気伝導体を含まない部分)が形成される。なお、図2および図3では、図示の簡略化のために、欠落部111を省略している。基準配線層15と同様に、基準配線層16には、電気伝導体からなる基準配線パターン103が形成され、基準配線パターンは、基準電圧を供給するための1または複数の基準配線によって構成される。また、基準配線パターン103の少なくとも一部は、絶縁層11を挟んで信号配線パターン104の少なくとも一部に対向し、基準配線パターン103のうち信号配線パターン104に対向する部分には、1または複数の欠落部が形成される。
【0019】
なお、信号配線パターン101,104はビア105を通じて基準配線パターン102,103に電気的に接続されても良い。また、信号配線層17(信号配線パターン104),絶縁層13,および基準配線層16(基準配線パターン103)は、それぞれ、信号配線層14(信号配線パターン101),絶縁層11,および基準配線層15(基準配線パターン102)と同様の構造を有するので、以下では、信号配線層14(信号配線パターン101),絶縁層11,および基準配線層15(基準配線パターン102)を例に挙げて説明する。
【0020】
〔欠落部の形成〕
次に、図5,図6,および図7a〜図7cを参照して、基準配線パターン102に1または複数の欠落部111を形成することによって得られる効果について説明する。なお、図5および図6では、信号配線パターン101の一部を構成する信号配線101aと基準配線パターン102の一部を構成する基準配線102aとが絶縁層11を挟んで互いに対向する場合を例に挙げている。
【0021】
信号配線101aの配線負荷容量は、信号配線101aと基準配線102aとが互いに対向する部分の面積(対向面積)と、信号配線101aを含む信号配線層14と基準配線102aを含む基準配線層15との層間距離(対向距離)と、信号配線層14と基準配線層15との間に挟まれた絶縁層11の誘電率によって決定される。したがって、基準配線102aのうち信号配線101aに対向する部分121に1または複数の欠落部111を形成することにより、対向面積を減少させることができ、その結果、信号配線101aの配線負荷容量を低減できる。ここで、図7aのような波形を有する電気信号が半導体集積回路31から信号配線101aに伝達された場合を想定すると、信号配線101aによって伝達される電気信号の波形は、基準配線102aに欠落部111が形成されていない場合には、図7bのような波形になり、基準配線102aに1または複数の欠落部111が形成されている場合には、図7cのような波形になる。このように、基準配線102aに1または複数の欠落部111を形成することにより、信号配線101aによって伝達される電気信号の波形歪みを抑制できる。
【0022】
以上のように、基準配線パターン102のうち信号配線パターン101に対向する部分に1または複数の欠落部111を形成することによって、信号配線パターン101の配線負荷容量を低減でき、信号配線パターン101の配線負荷容量に起因する信号波形(信号配線パターン101によって伝達される電気信号の波形)の劣化を軽減できる。
【0023】
〔面積比率〕
なお、基準配線102aのうち信号配線101aに対向する部分121の面積に対する欠落面積(1または複数の欠落部111を形成することによって部分121から喪失される部分の面積)の比率は、0.1〜0.9の間であることが好ましい。このように構成することにより、信号波形の劣化を軽減できるとともに、欠落部111を形成することによって基準配線102aの伝達特性が劣化してしまうことを抑制できる。
【0024】
〔欠落部の形状〕
なお、欠落部111の形状(基準配線を構成する電気伝導体を含まない部分の形状)は、円形形状に限定されるものではなく、任意の形状であっても良い。例えば、基準配線102aのうち信号配線101aに対向する部分121からはみ出した形状(図5,図6)であっても良いし、基準配線102aのうち信号配線101aに対向する部分121の中に収まる形状であっても良い。具体例としては、図8のように、信号配線101aの線幅よりも短い直径を有した円形形状を有する1または複数の欠落部112が基準配線102aに形成されても良い。または、図9のように、信号配線101aの線幅を一辺とする正方形よりも小さい四角形形状を有する1または複数の欠落部113が基準配線102aに形成されても良い。なお、欠落部1つ当たりの欠落面積を小さくするとともに欠落部の間隔を狭くする(例えば、信号配線101aの線幅よりも狭くする)ほど、信号配線101aの単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にでき、信号配線101aによって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。
【0025】
また、図10のように、信号配線101aに沿って延びる線状形状を有する1または複数の欠落部114が基準配線102aに形成されても良い。このように構成することにより、信号配線101aの単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にできるので、信号配線101aによって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。
【0026】
〔欠落部の形成位置〕
さらに、図11のように、基準配線パターン102のうち信号配線パターン101に対向する部分(対向部分)だけでなく対向部分の近傍にも、1または複数の欠落部111が形成されても良い。このように構成することにより、基準配線パターン102の対向部分のみに1または複数の欠落部111を形成する場合(図4)よりも、基準配線パターン102の設計を容易にできる。
【0027】
〔配線間距離と層間距離との関係〕
次に、図12および図13を参照して、プリント基板1における配線間距離(信号配線層14における配線間距離)と層間距離(信号配線層14と基準配線層15との層間距離)との関係について説明する。ここでは、信号配線層14に形成された信号配線パターン101の一部を構成する信号配線101b,101cと基準配線層15に形成された基準配線パターン102の一部を構成する基準配線102bとが絶縁層11を挟んで互いに対向する場合を例に挙げて説明する。また、図13には、半導体集積回路31の構造を比較例として挙げており、半導体集積回路31の内部信号を伝達するための信号配線301a(301b)と基準電圧(例えば、電源電圧、または、接地電圧)を伝達するための基準配線302aとが絶縁層を挟んで互いに対向する場合が例示されている。なお、信号配線301c(301d)は、絶縁層を挟んで信号配線301a(301b)に対向する。
【0028】
図12のように、プリント基板1では、信号配線層14と基準配線層15との層間距離X1は、互いに隣接する信号配線101b,101cの配線間距離X2よりも短い。したがって、プリント基板1では、信号配線101b(101c)と基準配線102bとの間の容量結合のほうが信号配線101b,101cの間の容量結合よりも信号配線101b(101c)の配線負荷容量に影響を及ぼしやすい。すなわち、プリント基板1では、基準配線102bに1または複数の欠落部を形成することによって、信号配線101b(101c)の配線負荷容量を低減しやすい。
【0029】
一方、図13のように、半導体集積回路31では、信号配線301a,301bが形成された信号配線層と基準配線302a(例えば、接地配線、または、電源配線)が形成された基準配線層との層間距離Y1は、信号配線301a,301bが形成された信号配線層と信号配線301c,301dが形成された信号配線層との層間距離Y2よりも長い。なお、層間距離Y2は、互いに隣接する信号配線301a,301bの配線間距離Y3よりも短い。例えば、Y1≧10×Y2,Y2≦Y3 である。したがって、半導体集積回路31では、信号配線301a,301bの間の容量結合のほうが信号配線301a(301b)と基準配線302aとの間の容量結合よりも信号配線301a(301b)の配線負荷容量に影響を及ぼしやすい。すなわち、半導体集積回路31では、基準配線302aに欠落部を形成したとしても、信号配線301a(301b)の配線負荷容量を低減しにくい。
【0030】
(配線パターンの設計方法)
次に、図14および図15を参照して、図1に示したプリント基板の設計方法について説明する。ここでは、等間隔に配列された複数のグリッド点を利用して信号配線パターン101および基準配線パターン102を設計する場合を例に挙げて説明する。
【0031】
〔基準配線パターンの設計工程〕
まず、基準配線102cを配置する。次に、図14のように、等間隔に配列された複数のグリッド点(ここでは、マトリクス状に配列されたグリッド点)を基準として、基準配線パターン102の一部を構成する基準配線102cに複数の欠落部111を配置する。図14では、基準配線102cには、グリッド点を中心とする円形形状を有する欠落部111が配置される。このようにして、基準配線パターン102が設計される。
【0032】
〔信号配線パターンの設計工程〕
図15のように、等間隔に配列されたグリッド点(ここでは、マトリクス状に配列されたグリッド点)を基準として、信号配線パターン101の一部を構成する信号配線101d,101eが配置される。このようにして、信号配線パターン101が設計される。
【0033】
以上のように、共通のグリッド点を利用して信号配線パターン101および基準配線パターン102を設計することにより、基準配線パターン102のうち信号配線パターン101に対向する部分に1または複数の欠落部111を配置できる。すなわち、図11のような信号配線パターン101および基準配線パターン102を設計できる。また、共通のグリッド点を利用して信号配線パターン101および基準配線パターン102を設計することにより、信号配線101d(101e)に沿って欠落部111を等間隔(または、ほぼ等間隔)に配置することができる。これにより、信号配線101d,101eの各々の配線負荷容量を同一(または、ほぼ同一)にできるので、信号配線101d,101eの間における信号伝達特性のばらつきを低減できる。
【0034】
〔基準配線パターンの設計工程の変形例〕
なお、図15のように信号配線パターン101を設計した後に、図16のように、基準配線パターン102の設計工程(図14)において基準配線102cに配置された複数の欠落部111のうち信号配線101d,101eが通過していないグリッド点を基準として配置された欠落部111を削除しても良い。このように設計することにより、図4のような信号配線パターン101および基準配線パターン102を設計できる。
【0035】
または、等間隔に配列されたグリッド点を基準として、信号配線パターン101の一部を構成する信号配線101d,101eを配置することによって信号配線パターン101が設計した後に、等間隔に配列された複数のグリッド点のうち信号配線101d,101eが通過するグリッド点を基準として、基準配線102cに1または複数の欠落部111を配置することによって基準配線パターン102を設計しても良い。このように設計した場合も、図16のように基準配線102cのうち信号配線101d,101eに対向する部分に1または複数の欠落部111を配置でき、図4のような信号配線パターン101および基準配線パターン102を設計できる。
【0036】
(実施形態2)
図17は、実施形態2によるプリント基板2の構造の一例を示す。プリント基板2は、単層構造を有する。ここでは、プリント基板2は、絶縁層21と、絶縁層21の形成面に形成された信号配線パターン201および基準配線パターン202とを備える。信号配線パターン201および基準配線パターン202は、電気伝導体からなる。信号配線パターン201および基準配線パターン202が形成された絶縁層21の形成面は、絶縁保護膜(図示せず)によって覆われる。
【0037】
信号配線パターン201は、所定の電気信号(例えば、プリント基板2に搭載された電子部品(図示せず)からの信号)を伝達するための1または複数の信号配線によって構成される。基準配線パターン202は、基準電圧(例えば、接地電圧、または、電源電圧)を伝達するための1または複数の基準配線によって構成される。例えば、基準配線パターン202は、ガードリングであっても良い。また、基準配線パターン202の少なくとも一部は、信号配線パターン201の少なくとも一部に対向するように形成される。基準配線パターン202の側面(厚みを構成する面)のうち信号配線パターン201に対向する側面部には、1または複数の凹部が形成される。
【0038】
次に、図18および図19を参照して、基準配線パターン202の側面に凹部を形成することによる効果について説明する。なお、図18および図19では、信号配線パターン201の一部を構成する信号配線201aと基準配線パターン202の一部を構成する基準配線202a(202b)とが互いに対向する場合を例に挙げている。
【0039】
信号配線201aの配線負荷容量は、信号配線201aと基準配線202a(202b)とが互いに対向する側面部分の面積(対向面積)と、信号配線201aと基準配線202a(202b)との配線間距離(対向距離)と、絶縁層21の形成面を覆う絶縁保護膜(図示せず)の誘電率によって決定される。したがって、基準配線202a(202b)の側面(信号配線201aに対向する側面)に1または複数の凹部211を形成することにより、対向距離を部分的に長くすることができ、その結果、信号配線201aの配線負荷容量を低減できる。これにより、信号配線201aによって伝達される電気信号の波形歪みを抑制できる。
【0040】
以上のように、基準配線パターン202の側面(厚みを構成する面)のうち信号配線パターン201に対向する側面部に1または複数の凹部を形成することにより、信号配線パターン201の配線負荷容量を低減でき、信号配線パターン201の配線負荷容量に起因する信号波形の劣化を軽減できる。
【0041】
また、図18および図19では、基準配線202a,202bは、信号配線201aを挟んで互いに対向する。さらに、基準配線202a,202bの各々の側面に形成された凹部211は、信号配線201aを基準として線対称となるように配置される。このように配置することにより、信号配線201aの単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にできるので、信号配線によって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。なお、基準配線202a,202bの各々に形成された凹部は、信号配線201aを基準として線対称となるように配置されなくても良い。
【0042】
また、図20のように、信号配線201aを挟んで互いに対向する基準配線202a,202c(基準配線パターン202の一部)の各々の側面に形成された凹部211が、信号配線201aを挟んで互い違いになるように配置されても良い。このように配置することにより、信号配線201aの単位長さ当たりの配線負荷容量を均一にできる。これにより、信号配線201aの単位長さ当たりの配線インピーダンスを均一にできるので、信号配線201aによって伝達される電気信号の波形品質をさらに向上させることができる。
【0043】
さらに、図21のように、基準配線パターン202の一部を構成する基準配線202d,202e,202fの片側の側面だけでなく両側の側面に、1または複数の凹部211が形成されても良い。例えば、基準配線202eの一方の側面は、信号配線201bに対向し、基準配線202eの他方の側面は、信号配線201cに対向し、基準配線202eの両側の側面には、1または複数の凹部211が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、上述のプリント基板は、信号配線パターンの配線負荷容量に起因する信号波形の劣化を軽減できるので、POP構造を有する半導体装置に搭載される信号観測基板などとして有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 プリント基板
11,12,13 絶縁層
14,17 信号配線層
15,16 基準配線層
101 信号配線パターン
102 基準配線パターン
101a〜101e 信号配線
102a〜102c 基準配線
111,112,113,114 欠落部
2 プリント基板
21 絶縁層
201 信号配線パターン
202 基準配線パターン
201a〜201c 信号配線
202a〜202f 基準配線
211 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層を挟んで積層された信号配線層および基準配線層とを備え、
前記信号配線層には、信号配線パターンが形成され、
前記基準配線層には、基準電圧を伝達するための基準配線パターンが形成され、
前記基準配線パターンの少なくとも一部は、前記絶縁層を挟んで前記信号配線パターンの少なくとも一部に対向し、
前記基準配線パターンのうち前記信号配線パターンに対向する部分には、1または複数の欠落部が形成される
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準配線パターンの一部を構成する基準配線は、前記絶縁層を挟んで前記信号配線パターンの一部を構成する信号配線に対向し、
前記基準配線のうち前記信号配線に対向する部分に形成された欠落部は、前記信号配線に沿って延びる線形形状を有する
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項3】
請求項1において、
前記基準配線パターンの一部を構成する基準配線は、前記絶縁層を挟んで前記信号配線パターンの一部を構成する信号配線に対向し、
前記基準配線のうち前記信号配線に対向する部分に形成された欠落部は、前記信号配線の線幅よりも短い直径を有した円形形状を有する
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項4】
請求項1において、
前記基準配線パターンの一部を構成する基準配線は、前記絶縁層を挟んで前記信号配線パターンの一部を構成する信号配線に対向し、
前記基準配線のうち前記信号配線に対向する部分に形成された欠落部は、前記信号配線の線幅を一辺とする正方形よりも小さい四角形形状を有する
ことを特徴するプリント基板。
【請求項5】
絶縁層と、
前記絶縁層の形成面に形成された基準配線パターンおよび信号配線パターンとを備え、
前記基準配線パターンは、基準電圧を伝達するための配線パターンであり、
前記基準配線パターンの少なくとも一部は、前記信号配線パターンの少なくとも一部に対向するように形成され、
前記基準配線パターンの側面のうち前記信号配線パターンに対向する側面部には、1または複数の凹部が形成される
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項6】
請求項5において、
前記基準配線パターンの一部を構成する第1および第2の基準配線は、前記信号配線パターンの一部を構成する信号配線を挟んで互いに対向し、
前記信号配線に対向する前記第1および第2の基準配線の各々の側面に形成された凹部は、前記信号配線を基準として線対称になるように配置される
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項7】
請求項5において、
前記基準配線パターンの一部を構成する第1および第2の基準配線は、前記信号配線パターンの一部を構成する信号配線を挟んで互いに対向し、
前記信号配線に対向する前記第1および第2の基準配線の各々の側面に形成された凹部は、前記信号配線を挟んで互い違いになるように配置される
ことを特徴とするプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−64877(P2012−64877A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209676(P2010−209676)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】