説明

プリント配線基板の製造方法

【課題】配線基板の表面にめっき皮膜が付着することを抑制して、研磨やエッチング等によって不要なめっき皮膜を取り除く必要がなく、断線やショート等のない信頼性の高いプリント配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】内層樹脂11上面の内層導体回路12上に絶縁樹脂13を積層し、絶縁樹脂13上に撥水性を有するコーティング樹脂14を被覆形成する。或いは、内層樹脂11上面の内層導体回路12上に、撥水性を有するコーティング樹脂14を表面に被覆形成した絶縁樹脂13を積層する。そして、コーティング樹脂14を被覆した絶縁樹脂13に、コーティング樹脂14を貫通する貫通孔(15V,15T)を形成し、絶縁樹脂13に触媒16を付与して貫通孔15内にめっき金属17を埋め込む。コーティング樹脂14は絶縁樹脂13の全表面を被覆し、形成された貫通孔15内にのみ触媒16が付着するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の製造方法及びプリント配線基板に関し、特に、配線基板表面へのめっき皮膜の付着を防止し、断線やショート等を防止することができるプリント配線基板の製造方法及びその製造方法により製造したプリント配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の飛躍的発展に伴い、プリント配線基板も高密度化、高性能化の要求が高まり需要が大きく拡大している。特に、携帯電話やノートパソコン、カメラ等の最新デジタル機器のマザー配線基板においては、その小型化・薄型化に伴って、配線パターンの高密度化・微細化の要望が高まっている。また、搭載された部品と部品との間においては、より高周波で接続することの要求も高まっており、高速信号を扱うことに有利な信頼性の高い配線基板が求められている。
【0003】
現在、実装技術として、セミアディティブ法やフルアディティブ法による配線基板の製造方法が多用されている。
【0004】
一般に、ビルドアップ工法のセミアディティブ法では、例えば下地として無電解銅めっき処理を施し、レジストにより回路パターンを形成した後に、電気銅めっきにより銅回路を形成する。しかしながら、セミアディティブ法では、形成した銅回路の粗密、基板の形状等の影響により、電気めっき処理時の電流の流れ方が変わり、めっき厚み(銅回路の高さ)に差異が生じてしまうという欠点がある。また、回路が微細化(配線自体及び配線間のスペースが狭い)するに従って、レジストの形成で位置ズレや現像不良等の問題が発生しやすくなり、断線、回路のショート等が生じやすくなる。さらに、電気銅めっき処理後に、電気銅めっきの通電用の下地として形成させた無電解めっき処理による金属銅をエッチングにより取り除く必要があり、このエッチング工程により必要な回路部分の断線、あるいはエッチング不足による回路のショート等が生じやすくなるという問題もある。
【0005】
一方で、フルアディティブ工法では、ブラインドビアの形成された基材に触媒を付与した後、レジストにより回路パターンを形成し、無電解銅めっき処理のみによって銅回路を形成する。しかしながら、この従来のフルアディティブ法は、回路が微細化するに従って、レジストの形成で位置ズレや現像不良等の問題が発生しやすくなり、断線、回路のショートが生じやすくなるという問題がある。また、工法上、レジストの下に触媒が残ることになるが、回路が微細化するに従って回路間の絶縁性が低下していき、ショートに至る場合もある。
【0006】
このような従来の実装技術の問題を解決するために、レーザ等を用いて基板表面にトレンチやビアホールを形成し、そのトレンチやビアホールに対して無電解銅めっきで埋め込む方法が試みられている(特許文献1参照)。
【0007】
そして、例えば、本件発明者等が先に出願した特願2008−172657に係る技術では、環状基を有した硫黄系有機化合物を含有した無電解めっき液を用いて、トレンチやビアホールに対して、ボイドやシーム等の欠陥を生じさせることなくめっき金属を埋め込み、高速信号を扱うプリント配線基板や配線密度の高いプリント配線基板の製造に好適に利用することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−117415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本件発明者等が先に出願した特願2008−172657に係る技術では、絶縁樹脂の表面全面に触媒付与し、基板表面にもめっき皮膜を形成しているため、後工程において、研磨やエッチング処理等によって不要なめっき皮膜を除く必要がある。また、大きなサイズ、例えば500×600mm基板では、研磨やエッチング処理等によって不要な金属銅等を精度良く取り除くことは困難であり、さらに余分な設備、エネルギー、時間等が必要となり、経済性や生産性が著しく損なわれる。またさらに、その特願2008−172657に係る技術では、保護フィルムを張って触媒付与後に剥がし、トレンチ内部のみに触媒が残るようにする方法も行われているが、これも経済性や生産性に優れているとは言い難い。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、配線基板の表面にめっき皮膜が付着することを抑制して、研磨やエッチング等によって不要なめっき皮膜を取り除く必要がなく、断線やショート等のない信頼性の高いプリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、絶縁樹脂層の上に撥水性を有するコーティング樹脂層を被覆形成させ、このコーティング樹脂層を貫通する貫通孔を形成させてめっき処理を施すことにより、基板表面にめっき皮膜を形成させることなく、断線や回路ショート等の発生を防止したプリント配線基板を製造できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明に係るプリント配線基板の製造方法は、内層樹脂の上面に形成された導体回路上に絶縁樹脂を積層し、該絶縁樹脂上に撥水性を有するコーティング樹脂を被覆形成するコーティング樹脂形成工程、あるいは内層樹脂の上面に形成された導体回路上に、撥水性を有するコーティング樹脂を表面に被覆形成した絶縁樹脂を積層するコーティング付き絶縁樹脂積層工程と、上記絶縁樹脂に、上記コーティング樹脂を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、上記絶縁樹脂に触媒を付与し、無電解めっきによって上記貫通孔内に金属を埋め込むめっき処理工程とを有し、上記コーティング樹脂形成工程あるいは上記コーティング付き絶縁樹脂積層工程においては、上記コーティング樹脂を上記絶縁樹脂の全表面に被覆し、上記めっき処理工程において、上記絶縁樹脂の、上記貫通孔形成工程にて形成された貫通孔内にのみ触媒が付着するようにしたことを特徴とする。
【0013】
上記コーティング樹脂は、耐薬品性を有する樹脂からなるものであることが好ましく、例えばフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、シアネート樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、アセナフチレン樹脂、オレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選択されることが好ましい。また、上記貫通孔は、レーザを用いて形成することが好ましい。
【0014】
ここで、貫通孔とは、絶縁樹脂を物理的に貫通するように設けられ、絶縁樹脂の表裏両面の両導電層を電気的に接合可能とするためのビアホールや、配線パターンを形成するトレンチを表す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コーティング樹脂により被覆されて、絶縁樹脂の表面にめっき皮膜が形成されなくなるので、後工程において研磨やエッチング等によって余分なめっき皮膜を除去する必要がなくなり、効率的に、断線や回路ショート等の発生を抑制した信頼性の高いプリント配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法の工程を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態に係る表面処理方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、内層樹脂の上面に形成された導体回路上に絶縁樹脂を積層し、その絶縁樹脂上に撥水性を有するコーティング樹脂を被覆形成するコーティング樹脂形成工程、あるいは内層樹脂の上面に形成された導体回路上に、撥水性を有するコーティング樹脂を表面に被覆形成した絶縁樹脂を積層するコーティング付き絶縁樹脂積層工程と、コーティング樹脂が被覆された絶縁樹脂に、コーティング樹脂を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、絶縁樹脂に触媒を付与して、無電解めっきによって貫通孔内に金属を埋め込むめっき処理工程とを有している。そして、コーティング樹脂形成工程あるいはコーティング付き絶縁樹脂積層工程においては、コーティング樹脂を絶縁樹脂の全表面に被覆し、めっき処理工程において、絶縁樹脂の、貫通孔形成工程にて形成された貫通孔内にのみ触媒が付着するようにしたことを特徴としている。
【0019】
絶縁樹脂上に被覆形成するコーティング樹脂は、撥水性を有する樹脂からなり、まためっき処理の前処理工程における、例えばデスミア処理にて使用される強い酸化剤によっても浸食されることのない耐薬品性の高い樹脂からなるものが好ましい。
【0020】
本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、このように、撥水性を有する樹脂からなるコーティング樹脂を絶縁樹脂上に被覆させることによって、そのコーティング層を貫通する貫通孔に無電解めっき金属を埋め込む処理をする際に、貫通孔内のみに触媒及びめっき金属が付着することとなる。これにより、貫通孔内にのみめっき皮膜が形成され、絶縁樹脂表面にめっき皮膜を形成させることを抑制しためっき処理を施すことができる。
【0021】
したがって、従来のように、めっき処理後に配線基板の表面に付着しためっき皮膜を、研磨やエッチング等によって除去する必要がなくなり、エッチング等による断線やショート等の発生を抑制することができる。以下、さらに詳細に本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法について、図1を参照にして説明する。
【0022】
なお、図1(a)〜(e)は、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法を概略的に示した断面図である。この図1の各断面図においては、基板1の一方の面しか図示されていないが、両側の面に対して処理を行う場合を除く趣旨のものではない。また、以下に詳述する工程を繰り返すことによって、さらに多層構造を有する多層プリント配線基板を製造することもできる。
【0023】
本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、図1(a)に示すように、まず内層樹脂11の上面に形成された内層導体回路(金属回路)12上に、絶縁樹脂13を積層させる。
【0024】
内層樹脂11は、電気的絶縁性を有する樹脂からなり、配線パターンとなる内層導体回路12がその表面に貼着した構造となっており、第1の絶縁層1Lを構成している。この内層導体回路12を貼着させた内層樹脂11が、プリント配線基板のベース基板となる。
【0025】
内層樹脂11に使用される樹脂は、特に限定されるものではなく周知のものを用いることができ、後述する絶縁樹脂13として用いられる樹脂と同様に種々のものを使用することができる。なお、この内層樹脂11を底面(ベース)とし、片面だけに層を積層して多層プリント配線基板を形成してもよく、内層樹脂11の両面から、絶縁層及び導電層をさらに積層して多層プリント配線基板を形成するようにしてもよい。
【0026】
内層導体回路12は、多層プリント配線基板の内層配線パターンを形成する金属回路であって第1の導電層2Lを構成し、ベース層である内層樹脂11に貼着あるいはめっき処理によって形成されている。
【0027】
内層導体回路12は、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン等の金属箔、あるいはこれらの合金箔、例えばアルミニウム青銅、リン青銅、黄青銅等の銅合金や、ステンレス、アンバー、ニッケル合金、スズ合金等から構成され、これら金属箔等を単層あるいは複数層に積層したものを使用することができる。その中でも、特にめっき密着性、導電性、コスト等の観点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0028】
内層導体回路12上に積層させる絶縁樹脂13は、特に限定されるものではなく周知のものを使用することができる。
【0029】
具体的には、例えばエポキシ樹脂(EP樹脂)や、熱硬化性樹脂フィルムであるポリイミド樹脂(PI樹脂)、ビスマレイミド―トリアジン樹脂(BT樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂)等や、さらに熱可塑性樹脂フィルムである液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエーテルサルホン(PES樹脂)等、種々の樹脂を用いることができる。または、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にEP樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料からなる板材等を使用してもよい。さらに、可撓性フィルム等を用いてもよい。特に好ましい樹脂としては、後工程における無電解めっき処理時に、めっき液に有害な溶出物がなく、界面剥離を起こさない等の、めっき処理工程に対する耐性を有するとともに、硬化を行って回路を形成した後、回路面及び上下面の層と十分な密着性を有して、冷熱サイクル等の試験で剥離やクラック等を発生しない樹脂であるとよい。この絶縁樹脂13は、例えば導電性の層が形成された複数の基板を接着して多層構造とされたものを使用してもよい。
【0030】
本実施の形態においては、例えば、ベースとなる内層樹脂11の表面に、数μm〜25μmの厚さを有する銅箔等を重ねて配線パターンを形成する内層導体回路(銅回路)12を貼着した銅張積層板を形成する。そして、この銅張積層板上に導電層間を絶縁する絶縁樹脂13を重ね合わせて、加温、加圧等したり、または接着材等を使用することによって固着させ、第2の樹脂層3Lを形成する。なお、熱圧着の条件としては、特に限定されず、一例として温度100〜300℃、圧力5〜60kg/cm等の条件での処理が挙げられるが、絶縁樹脂13のガラス転移温度や結晶融解温度等を考慮して設定するのが望ましい。また、上述した銅張積層板は、銅箔をベースとなる内層樹脂11にめっき処理することによって形成することもできる。
【0031】
次に、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、図1(b)に示すように、積層した絶縁樹脂13上に、撥水性を有するコーティング樹脂14を被覆形成して、コーティング層4Lを形成する。
【0032】
なお、図1(a)及び(b)の工程においては、あらかじめコーティング樹脂14をその表面に被覆形成した絶縁樹脂13を、内層樹脂11の上面に形成された内層導体回路12上に積層させるようにしてもよい。すなわち、上述のように内層樹脂11の上面に形成された内層導体回路12上に絶縁樹脂13を積層し、その絶縁樹脂13上に撥水性を有するコーティング樹脂14を被覆形成するか、あるいは内層樹脂11の上面に形成された内層導体回路12上に、撥水性を有するコーティング樹脂を表面に被覆形成した絶縁樹脂13を積層する。
【0033】
コーティング樹脂14は、絶縁性を有するとともに、撥水性を有する樹脂からなる。また、このコーティング樹脂14は、めっき処理の前処理工程における、例えばデスミア処理やその他めっき前処理において使用される強い酸化剤によっても浸食されることのない耐薬品性を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
具体的に、コーティング樹脂14を構成する樹脂としては、例えばフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、シアネート樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、アセナフチレン樹脂、オレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0035】
コーティング樹脂14によって、第2の樹脂層3L上に形成されるコーティング層4Lは、0.1μm〜10μm程度の厚みとすることが好ましい。コーティング樹脂14からなるコーティング層4Lが薄過ぎる場合には、後工程における触媒16付与において、絶縁樹脂13に触媒16が付着することを防止するコーティング効果の機能が十分に果たせなくなる。一方で、コーティング層4Lが厚過ぎる場合には、コーティング樹脂14を貫通するトレンチの深さを深くする必要が生じ、トレンチ幅が狭い場合等では、トレンチの形成が困難となる。
【0036】
本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、このように、撥水性を有する樹脂からなるコーティング樹脂14を絶縁樹脂13上に形成して、絶縁樹脂13の全表面を被覆する。このことにより、めっき処理前に触媒を付与する際に、後述するビアホール15Vやトレンチ15T等の貫通孔15(15V,15T)内にのみ触媒16が付着するようになり、貫通孔15内を除いた絶縁樹脂13表面においては触媒液が撥水されて、付着することを抑制することができる。そして、その後のめっき処理において、絶縁樹脂13表面にめっき金属(めっき皮膜)17が付着することを抑制することができる。すなわち、コーティング樹脂14は、絶縁樹脂被覆用の撥水性樹脂であり、絶縁樹脂13表面においてめっき金属が析出形成されることを防止するために用いられる。
【0037】
また、コーティング樹脂14として耐薬品性を有する樹脂を用いることによって、デスミア処理等のめっき前処理によって浸食することなく、確実に絶縁樹脂13をコーティングすることができる。そして、絶縁樹脂13に触媒16やめっき液が付着することを防いで、貫通孔15内を除く絶縁樹脂13表面にめっき金属17が付着することを抑制することができる。
【0038】
なお、絶縁樹脂13上にコーティング樹脂14を積層するにあたり、絶縁樹脂13上に、図示しない接着材層を積層させた後にコーティング樹脂14を被覆形成させるようにしてもよい。この場合、接着材層としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン等からなる耐熱性の接着シート等を用いることができ、これを加熱により融着させて、接着材層を形成する。融着条件としては、特に制限されず、接着シート等を構成する材質に応じて常法に従って行えばよく、例えば100〜190℃程度に加熱した状態で30秒〜2分程度おくことによって融着して接着材層を形成する。
【0039】
また、コーティング樹脂14を被覆形成させた絶縁樹脂13上に、さらにエポキシ樹脂等の絶縁樹脂を積層させて、ビルドアップ積層板としてもよい。
【0040】
さらに、このコーティング樹脂14は、めっき処理後に除去するようにしてもよい。
【0041】
次に、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、図1(c)に示すように、コーティング樹脂14が積層された絶縁樹脂13に、コーティング樹脂14を貫通する貫通孔15(15V,15T)を形成する。
【0042】
上述のように、貫通孔15(15V,15T)とは、絶縁樹脂13を物理的に貫通するように設けられ、絶縁樹脂13の表裏両面の両導電層を電気的に接合可能とするためのビアホール15Vや、配線パターンを形成するトレンチ15Tを表す。具体的に、ビアホール15Vは、絶縁樹脂13に、コーティング樹脂14を貫通して、基板1の内層に設けられた内層導体回路12を露出させるように形成される。そして、形成されたビアホール15Vに金属めっきが充填されて、内層導体回路12に導通可能となる。また、トレンチ15Tは、延びた溝、及び局部的なビア、すなわち溝の底から下にある導電性領域への局部的接点まで延びる領域の両者を表すものであり、絶縁樹脂13に、コーティング樹脂14を貫通して絶縁樹脂13の途中まで形成され、内層導体回路12とは導通接続されずに、回路パターンを形成する。
【0043】
ビアホール15Vやトレンチ15T等の貫通孔15の形成方法としては、エッチングによる形成、レーザ加工機を用いたレーザによる形成等、種々の方法を用いることが可能であるが、好ましくは、レーザを用いて形成するとよい。レーザを用いて貫通孔15を形成することにより、微細な形状を速やかに加工することが可能となり、また従来法において問題となっていた露光・現像での位置ずれや現像不良等の不具合を防止することができる。また、配線基板の小型化・薄型化、さらに微細化にも柔軟に対応することができ、信頼性の高い配線パターンを形成することができる。
【0044】
レーザにより貫通孔15を形成する場合、レーザとしては、微小孔を形成するのに一般的に使用されている種々のものを用いることができる。例えば、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いることができる。また、気体レーザであるアルゴンレーザやヘリウム−ネオンレーザ、固体レーザであるサファイアレーザ、その他に色素レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等を用いてもよい。その中でも、特に、より微細な孔を形成することが可能な、Nd−YAGレーザやエキシマレーザ等を用いることが好ましく、形成する貫通孔15の大きさによって変更させることが望ましい。
【0045】
貫通孔15の大きさは、アスペクト比、直径の大きさ、深さのそれぞれに関して特定の範囲に限られるものではなく、種々の大きさの貫通孔に対して、本発明を適用することができる。
【0046】
本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法では、このように、レーザ等を用いて、コーティング樹脂14を貫通して、コーティング樹脂14の下層にある絶縁樹脂13に貫通孔15を形成する。これにより、後述するめっき処理にて貫通孔15内にめっき金属を埋め込むことで、内層導体回路12と配線基板表面とが導通可能になるとともに、配線パターンが形成される。
【0047】
次に、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法では、図示しないが、貫通孔15を形成させた基板に対して、所定のめっき前処理を施す。
【0048】
具体的には、まず、デスミア処理を施す。デスミア処理は、トレンチ等の貫通孔15の形成時に発生したスミアや残留樹脂を除去する目的で行われる。
【0049】
デスミア処理は、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の膨潤液による膨潤処理後、過マンガン酸ナトリウム溶液又は過マンガン酸カリウム溶液等によって樹脂基板をエッチング処理する。そしてその後、硫酸ヒドロキシルアミン等の溶液によって、樹脂基板に残留している、例えばマンガン酸化物等を還元して溶解させる還元処理を行う。より具体的に説明すると、まず、膨潤処理としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等を含有した膨潤液を用い、約60〜90℃程度の条件で10〜30分間、基板をその膨潤液に浸漬させる。このようにして、基板に対して膨潤処理を施すことによって、後工程における樹脂エッチング処理においてスミアや残留樹脂を除去し易くする。樹脂エッチング処理溶液としては、例えば過マンガン酸カリウム、水酸化ナトリウム、イオン交換水からなるアルカリ性過マンガン酸塩の混合液等、周知の処理液を用いることができ、50〜80℃の温度条件で10〜20分間基板を樹脂エッチング処理溶液中に浸漬させて行う。このようにして、レーザによる貫通孔15の形成時に発生したスミアや残留樹脂を除去することによって、貫通孔15内に充填させる無電解めっき金属と内層導体回路12との導通不良や接続性の悪化、さらには断線等を防ぐことができる。なお、このデスミア処理は、プラズマやエキシマレーザを用いた物理的なデスミア処理であってもよい。
【0050】
また、デスミア処理中において、ビアホール15Vやトレンチ15T等の貫通孔15の内部に空気溜が生じた場合には、適宜脱気処理を行うようにしてもよい。この脱気処理は、その後の工程において、空気溜の存在によって生じる貫通孔15内への薬液の浸透阻害を防止する目的で行われる。
【0051】
また、樹脂エッチング溶液等を基板表面から水洗した後は、この基板1に還元処理を施して、基板表面、トレンチ15T内、及び活性化領域となるビアホール15V底部の内層導体回路12表面をクリーニングする。具体的に説明すると、還元処理は、還元溶液中に、例えば45℃で5分間、基板を浸漬して内層導体回路12表面を還元させる。この還元溶液としては、例えば硫酸、硫酸ヒドロキシルアミン、活性剤、有機酸及びイオン交換水を含有させた還元溶液を用いることができる。この還元処理によって、基板表面、トレンチ15T内、ビアホール15V内及びビアホール15V底部に露出した内層導体回路12表面に残留している、例えばマンガン酸化物等を還元して溶解させて清浄にする。
【0052】
次に、周知の方法により清浄処理を施して基板をクリーニングする。清浄処理は、例えば、清浄溶液中に65℃で5分間、基板を浸漬させて、基板表面や貫通孔15内部のゴミ等を除去するとともに、貫通孔15内部に水濡れ性を与える。清浄溶液としては、酸性溶液を用いても、アルカリ性溶液を用いてもよい。この清浄処理工程によって、貫通孔15内部を清浄にし、後工程にて形成されるめっき皮膜のより一層の密着性等を向上させる。
【0053】
また、貫通孔15であるビアホール15V底部に露出した内層導体回路12表面に対する活性化処理を行うようにしてもよい。この活性化処理は、硫酸や塩酸の10%溶液からなる酸性溶液等を用いて、酸性の溶液中に基板を5〜10秒間浸漬させて行う。酸性溶液としては、硫酸や塩酸の10%溶液等を用いて行うことができるが、例えば導電性金属粒子に銅を用いた導電性ペーストのよって内層導体回路パターンが形成された場合には、過硫酸塩又は硫酸及び過酸化水素水の混合溶液等を用いて処理することが好ましい。このように、酸性溶液に浸漬(酸処理)させることによって、活性化領域である内層導体回路12表面に残ったアルカリを中和し、薄い酸化膜を溶解させることができる。また、酸化膜を取り除いた内層導体回路12表面をエッチング(ソフトエッチング)してもよく、これにより、後工程において形成される無電解めっき金属の密着性を向上させ、内層導体回路12表面を活性化した状態とすることができる。
【0054】
なお、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法においては、上述したような無電解めっきの前処理を行うことに限られるものではなく、適宜異なる前処理を採用することができ、また採用する金属の種類によって、処理時間や薬液の濃度等を変更させることができる。
【0055】
また、本明細書における貫通孔15であるビアホール15Vの底部とは、例えば基板1の下面からレーザによって貫通孔15が形成され、内層導体回路12表面が上方に位置しても、ビアホール15Vにおける内層導体回路12表面の露出した部位を意味するものとする。
【0056】
次に、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、図1(d)及び(e)に示すように、絶縁樹脂13に触媒16を付与して、無電解めっき処理によって貫通孔15内にめっき金属17を埋め込む。
【0057】
絶縁樹脂13に対する触媒16の付与は、特に限られるものではないが、例えば2価のパラジウムイオン(Pd2+)を含有した触媒液を用いて行うことができる。触媒液の組成の一例として、例えば、Pd濃度が100〜300mg/Lの塩化パラジウム(PdCl・2HO)と、Sn濃度が10〜20g/Lの塩化第一スズ(SnCl・2HO)と、150〜250mL/Lの塩酸(HCl)を含有する混合溶液を用いることができる。
【0058】
触媒16の付与は、触媒液中に基板1を、例えば温度30〜40℃の条件で1〜3分間浸漬させて、まずPd−Snコロイドを基板1の表面に吸着させる。そして次に、常温条件下で、50〜100mL/Lの硫酸又は塩酸からなるアクセレータ(促進剤)に基板1を浸漬して触媒の活性化を行う。この活性化処理によって、錯化合物のスズが除去され、パラジウム吸着粒子となり、最終的にパラジウム触媒として、無電解めっき処理による金属めっきの析出を促進させるようになる。
【0059】
なお、この触媒16の付与においては、水酸化ナトリウムやアンモニア溶液をアクセレータとして用いてもよい。また、コンディショナー液やプレディップ液を用いて、貫通孔15内における絶縁樹脂13とめっき金属17との密着性を強固にする前処理を施してもよい。さらに、基板1を触媒液に浸漬させて付与することに限られず、例えば触媒液を基板にスプレー等して接触させることによって付与するようにしてもよい。またさらに、触媒16を付与した後、例えば10%硫酸及びレデューサーを用いて、基板1表面に付着している触媒16のパラジウム吸着粒子を還元して活性化させることによって、めっき金属の析出を促進させるようにしてもよい。
【0060】
また、触媒16は、上記のものに限られるものではなく、銅イオン(Cu2+)を含有した触媒液を用いて行ってもよい。また、スズを含有しない酸性コロイドタイプ又はアルカリイオンタイプの触媒液を用いることもできる。
【0061】
本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、上述のように、絶縁樹脂13上にコーティング樹脂14を被覆形成させ、そのコーティング樹脂14を貫通して絶縁樹脂13に貫通孔15を形成させて触媒16を付与するようにしている。そして、絶縁樹脂13をコーティングするコーティング樹脂14は、撥水性を有した樹脂によって構成されているので、基板1に触媒16を付与してもコーティング樹脂14には触媒が作用しなくなり、後述するめっき処理によってもコーティング樹脂14表面にはめっき金属が形成されないようにすることができる。
【0062】
次に、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、上述のようにして基板1に触媒16を付与した後、無電解めっき処理を行って、貫通孔15内にめっき金属を埋め込み、プリント配線基板の回路を形成する。
【0063】
この無電解めっき処理においても用いられる無電解めっき液は、特に限定されないが、例えば水溶性第二銅(合金)塩や水溶性ニッケル(合金)塩等の水溶性金属塩を主成分として、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド、グリオキシル酸又はその塩、次亜リン酸又はその塩、ジメチルアミノボラン等の1種以上の還元剤と、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムや酒石酸ナトリウムカリウム等の錯化剤を含有するとともに、少なくとも1種の硫黄系有機化合物をレベラーとして含有する無電解めっき液を用いることができる。
【0064】
このような、硫黄系有機化合物をレベラーとして含有する無電解めっき液を用いることによって、長時間に亘ってボイドやシーム等の欠陥の発生を抑制しながら、トレンチ等の貫通孔15に対して良好にめっき金属を埋め込むことができる。なお、この例示した無電解めっき液についての技術事項は、本件発明者等が先に出願した特願2008−172657に記載されている。
【0065】
無電解めっき液に含有させる金属は、特に限定されず、例えば銅やニッケル等を金属イオンとして含有した無電解めっき液を用いることができる。その中でも特に、貫通孔15内における絶縁樹脂13との密着性、及びめっき析出物の電気特性等の観点から、銅イオンを含有させた無電解銅めっき液を用いて処理することが好ましい。
【0066】
また、無電解めっき液には、必要に応じて、界面活性剤、めっき析出促進剤等を含有させることができ、また2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン等の公知の安定剤・皮膜物性改善剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0067】
無電解めっき処理におけるめっき処理時間は、特に限定されず、トレンチ等の貫通孔15の大きさ等によって適宜調整することが好ましい。一例として、例えば30〜600分間、触媒が付与された基板を無電解めっき液中に浸漬させる。
【0068】
また、無電解めっき処理におけるめっき処理温度は、例えば銅イオン等の金属イオンの還元反応が起こる温度であれば特に限定はされないが、効率の良い還元反応を起こさせるために、めっき液の温度が20〜90℃となるように調整することが好ましく、特に50〜70℃とすることがより好ましい。
【0069】
また、無電解めっき液のpHは、特に限定されないが、pH10〜14とすることが好ましい。無電解銅めっき液のpHをこのように高アルカリ条件の範囲とすることにより、効率的な銅イオン等の金属イオンの還元反応が進行し、金属めっき皮膜の析出速度が良好となるという効果が得られる。なお、無電解めっき液には、pHをpH10〜14の範囲に維持させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のpH調整剤を含有させることができる。好ましくは、これらのpH調整剤としての化合物を水で希釈して適宜添加する。
【0070】
この無電解めっき処理を行うに際しては、液の攪拌を十分に行って、トレンチ等の貫通孔内にイオン供給が十分に行われるようにするとよい。液の攪拌方法としては、空気攪拌やポンプ循環等による方法がある。また、長時間に亘ってめっき処理を実施する場合には、めっき浴中に硫酸ナトリウムが蓄積してめっきの異常析出の原因になる場合があるため、適宜強制的にめっき液の一部を汲み出すようにするとよい。
【0071】
また、この無電解めっき処理においては、必要に応じて、二段階めっき処理を施すようにしてもよい。すなわち、貫通孔15内における絶縁樹脂13上に下地めっき皮膜を形成する一次めっき処理を行い、そして形成された下地めっき皮膜上に二次めっき処理を行って回路パターンを形成するようにしてもよい。これにより、貫通孔15内における絶縁樹脂13とめっき金属17との密着をさらに向上させることができる。
【0072】
なお、上述した無電解めっき処理において例示した無電解めっき液及びその組成、処理条件等は一例であり、当然これらに限られるものではない。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法は、内層樹脂の上面に形成された導体回路上に絶縁樹脂を積層し、その絶縁樹脂上に撥水性を有するコーティング樹脂を被覆形成するコーティング樹脂形成工程、あるいは内層樹脂の上面に形成された導体回路上に、撥水性を有するコーティング樹脂を表面に被覆形成した絶縁樹脂を積層するコーティング付き絶縁樹脂積層工程と、コーティング樹脂が被覆された絶縁樹脂に、コーティング樹脂を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、絶縁樹脂に触媒を付与して、無電解めっきによって貫通孔内に金属を埋め込むめっき処理工程とを有している。そして、コーティング樹脂形成工程あるいはコーティング付き絶縁樹脂積層工程においては、コーティング樹脂を絶縁樹脂の全表面に被覆し、めっき処理工程において、絶縁樹脂の、貫通孔形成工程にて形成された貫通孔内にのみ触媒が付着するようにしたことを特徴としている。
【0074】
このように、絶縁樹脂13上に、撥水性を有するコーティング樹脂14を被覆形成するようにし、このコーティング樹脂14を貫通して絶縁樹脂13にビアホール15Vやトレンチ15T等の貫通孔15を形成しているので、後工程における触媒16の付与において、コーティング樹脂14によって貫通孔15を除いた絶縁樹脂13に触媒が付着されることを防止でき、めっき処理を施して基板1表面に余分なめっき皮膜が形成されることを防ぐことができる。
【0075】
これにより、余分なめっき皮膜を、研磨やエッチング等によって除去する必要がなくなり、エッチング等による断線等を防止することができる。特に、例えば高速信号を扱うプリント配線基板や、配線密度の高いプリント配線基板にあっては、エッチング等によって断線やショートの原因をもたらし易くなり、余分なめっき皮膜を形成させてしまうことは、作業的、経済的観点からも好ましくない。その点においても、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法を用いることによって、効果的に配線基板表面にめっき皮膜が形成されることを抑制できるので、高速信号を扱うプリント配線基板や配線密度の高いプリント配線基板であっても、信頼性向上させた製造が可能となる。
【0076】
また、大きなサイズ、例えば500×600mmの基板においては、基板の反り等の影響により、基板表面を均一に研磨したりエッチングすることは困難となる。このような基板に対して、本実施の形態に係るプリント配線基板の製造方法を適用することによって、余分に付着しためっき金属を取り除く必要はなくなり、余分な設備を設ける必要もなく、作業効率や生産性も向上して、均一な表面を有する良好な配線基板を製造することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0078】
また、本発明は、上記の実施形態に係る配線基板の製造方法、ビルドアップ工法による高密度多層配線基板の製造にのみ適用されるものではなく、例えばウエハレベルCSP(Chip SizエポキシPackageまたはChip ScaleエポキシPackage)、あるいはTCP(Tape Carrier Package)等における多層配線層の製造工程にも適用することができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を用いて形成した基板に、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックス)を積層し、ビア形成に用いるレーザ加工機(日立ビアメカニクス株式会社製)を使用して幅20μm、深さ20μmのトレンチ(回路)を形成した。
【0081】
引き続き、デスミアプロセス(上村工業株式会社製:膨潤液 DEC-501,樹脂エッチング液 DES-502,還元処理液 DEN-503H)によりレーザ加工残渣を除去した後、触媒付与プロセス(上村工業株式会社製アルカッププロセス:クリーナーコンディショナー ACL-009,キャタリスト MAT,レデューサー MAB)により触媒(シード層)を付与した後、以下の無電解銅めっき液を用いて、70℃の温度条件で2時間無電解銅めっき処理を行った。
【0082】
≪無電解銅めっき液≫
硫酸銅:0.04mol/L
EDTA:0.1mol/L
水酸化ナトリウム:4g/L
ホルムアルデヒド:4g/L
2,2’−ビピリジル:2mg/L
ポリエチレングリコール(分子量1000):1000mg/L
2,2’−ジピリジルジスルフィド:5mg/L
【0083】
その後、表面へのめっき析出観察及び断面観察にてトレンチの埋まり性を測定した。
【0084】
(実施例2)
触媒付与プロセス(上村工業株式会社製アルカッププロセス:クリーナーコンディショナー ACL-009,キャタリスト MAT,レデューサー MAB)により触媒(シード層)を付与した後の無電解めっき処理として、下地めっきとしての無電解銅めっき(上村工業株式会社製 SP2)を15分間行い、実施例1と同様の無電解銅めっき液にて無電解銅めっき皮膜を2時間形成させたこと以外は、実施例1と同様にして配線基板を形成し、表面へのめっき析出観察及び断面観察にてトレンチの埋まり性を測定した。
【0085】
(実施例3)
一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を用いて形成した基板に、フッ素樹脂フィルム(デュポン株式会社製テフロン(登録商標))を積層したこと以外は、実施例2と同様にして配線基板を形成し、表面へのめっき析出観察及び断面観察にてトレンチの埋まり性を測定した。
【0086】
(比較例1)
一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を用いて形成した基板に、コーティング樹脂層を積層させることなく、ビア形成に用いるレーザ加工機(日立ビアメカニクス株式会社製)を使用して幅20μm、深さ20μmのトレンチを形成したこと以外は、実施例1と同様にして配線基板を形成し、表面へのめっき析出観察及び断面観察にてトレンチの埋まり性を測定した。
【0087】
(比較例2)
一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を用いて形成した基板に、コーティング樹脂層を積層させることなく、ビア形成に用いるレーザ加工機(日立ビアメカニクス株式会社製)を使用して幅20μm、深さ20μmのトレンチを形成したこと以外は、実施例2と同様にして配線基板を形成し、表面へのめっき析出及びトレンチの埋まり性について断面観察により測定した。
【0088】
以下の表1に、各実施例及び比較例における配線基板表面を断面観察し、基板表面のめっき析出及びトレンチの埋まり性についての結果を示す。なお、断面観察は、めっき処理した後の基板をポリプレン製ケース(径30mm×高さ60mm)に入れ、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシジレン株式会社製 No815)によって樹脂埋めし(硬化剤としてトリエチレントリアミンを使用)、切断・研磨(切断機:STRUERS社製 Labotom-3、研磨機:BUEHLER社製 EcoMet6、VibroMet2)を行った後、顕微鏡(LEICA社製 DMI3000M)を用いて観察した。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示されるように、絶縁樹脂を積層した基板上に、コーティング樹脂を積層させないで、従来のようにトレンチを形成し、無電解銅めっき処理によって銅めっきを埋め込んだ比較例1及び2においては、トレンチ内には良好に銅めっきを埋め込むことはできたものの、配線基板の表面にまで銅めっき皮膜が形成されてしまった。
【0091】
このような比較例1及び2において形成された基板では、基板表面に形成された余分なめっき皮膜を後工程で研磨やエッチング等によって除去する必要が生じる。その際、研磨やエッチング等の処理によって、断線やショートの原因となって、信頼性の高い配線基板を製造することができない。
【0092】
一方で、絶縁樹脂を積層した基板上に、コーティング樹脂としてのポリイミドフィルムを積層させた実施例1及び2では、基板表面にめっき皮膜は形成されず、トレンチ内へのめっき埋まり性も良好であった。
【0093】
同様に、コーティング樹脂として、フッ素樹脂フィルムを積層させた実施例3においても、基板表面にめっき皮膜は形成されることなく、良好にトレンチ内にのみ銅めっきを埋め込むことができた。
【0094】
このような実施例1乃至3の配線基板では、めっき処理後に配線基板の表面に付着した銅めっきを研磨やエッチング等によって除去する等の処理が必要なく、エッチング等に起因して発生する断線やショートを効率的に防止することができる。また、研磨やエッチング等の処理をするための設備や薬液等も当然に不要となり、作業性や生産性良く、信頼性の高い良好なプリント配線基板を製造することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 基板、11 内層樹脂、12 内層導体回路、13 絶縁樹脂、14 コーティング樹脂、15 貫通孔、15V ビアホール、15T トレンチ、16 触媒、17 めっき金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層樹脂の上面に形成された導体回路上に絶縁樹脂を積層し、該絶縁樹脂上に撥水性を有するコーティング樹脂を被覆形成するコーティング樹脂形成工程、あるいは内層樹脂の上面に形成された導体回路上に、撥水性を有するコーティング樹脂を表面に被覆形成した絶縁樹脂を積層するコーティング付き絶縁樹脂積層工程と、
上記絶縁樹脂に、上記コーティング樹脂を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
上記絶縁樹脂に触媒を付与し、無電解めっきによって上記貫通孔内に金属を埋め込むめっき処理工程とを有し、
上記コーティング樹脂形成工程あるいは上記コーティング付き絶縁樹脂積層工程においては、上記コーティング樹脂を上記絶縁樹脂の全表面に被覆し、上記めっき処理工程において、上記絶縁樹脂の、上記貫通孔形成工程にて形成された貫通孔内にのみ触媒が付着するようにしたことを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
上記コーティング樹脂は、さらに耐薬品性を有する樹脂であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
上記コーティング樹脂は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、シアネート樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、COPNA樹脂、ケイ素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、アセナフチレン樹脂、オレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選択されることを特徴とする請求項2記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
上記貫通孔は、レーザを用いて形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項5】
上記金属は、銅であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載のプリント配線基板の製造方法によって製造されたプリント配線基板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−287862(P2010−287862A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142624(P2009−142624)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】