説明

プリント配線基板

【目的】 プリント配線基板において、部品端子との接続に必要な面積でランドを形成しても、近接するランド間での半田同士の接触による短絡を防ぐ。
【構成】 基板本体の表面に、半田付けにより部品端子10を固定する挿入孔(端子固定領域)3の周囲に半田を付着させる材料からなるランド4を形成し、そのランド4を、挿入孔3の周囲に同心状の内側環状領域11と外側環状領域12に分割して設ける。その分割をランド基材に対する円弧状の切り抜き部13による半田非付着領域によって行う。
その内側環状領域11と外側環状領域12とを接続部14によって部分的に相互に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の部品を実装するプリント配線基板に関し、特に実装する各部品の端子を半田付けするランドを高密度に形成するプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高機能化に伴って、プリント配線基板における部品の実装密度が高くなっており、そのためプリント配線基板上に形成される配線パターンや、実装する部品の端子を半田付けするランド同士の配置間隔が狭くなってきている。したがって、近接するランド間での半田の接触を防ぐためにも、各ランドにおける半田の付着量は厳密に管理する必要がある。
【0003】
しかし、部品の端子の形状は多様であり、またその固定形態についても挿入孔にリード線を挿入して固定する場合や、フラットな端子を基板の表面に固定する表面実装等による違いがある。そのため、ランドもまた、それら部品の端子形状や固定形態等に応じて多様な形状に形成され、それぞれの半田付け条件は、多様に異なるものとなっている。
しかし、現在利用されている自動半田付け装置では、それら個々のランドの半田付け条件の違いに厳密に対応して付着させる半田量を適切に管理することは困難であり、その結果、ランドによっては過剰な半田を付着せざるを得ない場合が生じていた。
【0004】
ここで、近接する2つのランドに対してそれぞれ過剰に半田を付着させた場合の半田の接触現象を具体的に説明する。例として、図11に示すように、レジスト110で覆われた基板上に部品の端子であるリード線102を挿入孔103に挿入して固定するための2つの環状のランド101を近接して形成し、そのランド101にそれぞれ必要以上の半田を付着させた場合について説明する。
【0005】
半田の付着によってリード線102とランド101を安定して接続させるためには、ランド101をある一定以上の面積として形成する必要がある。しかし、そのランド101を端子固定領域である挿入孔103の周囲に図11に示すように円環状に形成すると、そのランド101の表面に溶融状態の半田が多量に付着したときに、その表面張力によって球状に近い形状の半田粒になろうとする。その結果、側断面図である図12に示すように、その半田粒104の側面104aはランド101の領域より外側に膨出する。
【0006】
その状態で、次の実装工程に移すために基板105を搬送ベルト等で搬送すると、振動等により液状の半田粒104が大きく揺れて近接するランド101間で引き合ってすぐに接触してしまい、図13に示すように半田粒104の短絡状態になってしまう。このような短絡状態が1箇所でも形成されると機器全体が不良品となってしまうことから、半田粒の短絡を如何にして防ぐかが機器の生産性を大きく左右する要素となっている。
【0007】
そこで、このような半田による短絡を防ぐために、例えば特許文献1には、隣接する複数のランドをそれぞれ互いに近接する方向と逆向きまたは直交する方向に尖端部を有する涙目形状に形成することによって、それぞれの半田粒を互いに平行又は離間する方向に細長い形状に形成し、半田粒同士の接触を防ぐようにすることが開示されている。
【特許文献1】実公平7−49824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているようにランドに尖端部を形成しても、溶融状態の半田を供給した際にランドの領域全体に過剰な量の半田が付着してしまうことがあり、その場合にはランド領域の全周で外側に側面が膨出する半田粒が形成されるため、基板の移動時に半田粒が大きく揺れると近接するランド同士で半田粒が接触してしまうことがある。
この発明は、プリント配線基板におけるこれらの問題に鑑みてなされたものであり、半田による部品端子との接続を確実にするために必要な面積でランドを形成しても、近接するランド間で半田同士が接触して短絡しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、半田付けにより部品の端子を固定する端子固定領域の周囲に半田を付着させる材料からなるランドが形成されたプリント配線基板において、上記の目的を達成するため、そのランドを上記端子固定領域の周囲に同心状に複数に分割して設けたものである。その複数に分割されたランドは、部分的に相互に接続されていてもよい。
あるいは、上記ランドを、上記端子固定領域の周囲に周方向に複数に分割して設けてもよい。
これらのプリント配線基板における上記ランドは、例えば半田を付着させない半田非付着領域によって複数に分割される。
【0010】
あるいはまた、上記ランドを、上記端子固定領域の周囲に円環状に設けられた本体部と、その本体部の外周から外方へ突出するように設けられた余剰部とによって構成し、その本体部と余剰部との間に半田を付着させない半田非付着領域を設けてもよい。
上記各半田非付着領域は、上記ランドの基材の一部に形成された切り抜き部であるとよい。
もしくは、上記半田非付着領域は、上記ランドの基材の表面に疎半田材料が被着された領域であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によるプリント配線基板は、ランドに付着させる半田を端子固定領域に対して同心状又は周方向に複数に分割するか、あるいは円環状の本体部とその本体部の外周から外方へ突出する余剰部とによって構成しているため、ランドを部品端子との半田による接続が確実になされるように充分な面積に形成されていても、そのランドの表面に溶融した半田がまとまって付着せず、半田粒の形状が崩れて必要量以上に半田が付着するのを防ぎ、あるいは余剰部に余分な半田を逃がし、半田粒の側面がランド領域より外側に膨出するのを防ぐことができる。したがって、近接するランド間での半田同士の接触による短絡を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1の実施形態〕
図2は、この発明によるプリント配線基板の第1の実施形態の配線面の一部を示す斜視図である。この図2に示すプリント配線基板1は長方形の基板本体2を備えており、この基板本体2にはICパッケージなどの部品の端子を挿入して固定するための挿入孔3が多数設けられている。そして、各挿入孔3の周囲には銅箔からなる略環状のランド4が設けられており、各ランド4には同じ銅箔で形成された配線パターン5が接続され、それぞれ接地パターン6やスルーホール7などに接続している。また、ランド4や配線パターン5が設けられている箇所以外の基板本体2の表面上はレジスト8で被覆されており、ランド4や配線パターン5の間を電気的に絶縁するとともに、基板本体2上の不要な部分に半田が付着するのを防ぐようにしている。
【0013】
そして、このプリント配線基板1の図2で見える側の面が配線面であり、このプリント配線基板1に実装する殆どの部品は図2では見えない背面側から搭載され、各端子を挿入孔3に挿入して基板本体2を貫通し、配線面側に突出した各端子の先端とその周囲のランド4が半田付けされるようになっている。但し表面実装部品の場合は、配線パターン5とランド4が形成されている面に搭載される。
【0014】
図2に示しているランドはどれも同じ形状のものであり、図1はそれらのランドのうちの1つを拡大して示す平面図である。なお、この図1及び図3乃至図10において、明瞭かつ簡潔に図示する便宜上、各ランドは半田を付着させていない状態で示すとともに、各ランドに接続する配線パターンの図示は省略している。
【0015】
図1において、この実施形態のプリント配線基板1に設けられるランド4は、銅箔等の半田を付着させる材料からなる。図2に示した基板本体2には、部品のリード線である端子10を挿入して固定する端子固定領域をなす挿入孔3が形成され、その周囲の表面にランド4が略環状に設けられている。そのランド4は、挿入孔3の全周に近接する内側の仮想線円Aの内部の内側環状領域11と、外側の仮想線円Bの外部の外側環状領域12とからなり、同心状に複数(この例では2つ)に分割されて設けられている。
【0016】
その内側環状領域11と外側環状領域12との間(2つの仮想線円A,Bの間)には、半田を付着させない半田非付着領域として銅箔等の基材を円弧状に切り抜いた切り抜き部13が4個形成され、円周方向における各切り抜き部13間の部分が内側環状領域11と外側環状領域12とを部分的に相互に接続する接続部14となっている。
そして、基板本体2の表面のランド4以外の部分はレジスト8で被覆されている。しかし、ランド4を構成する内側環状領域11と外側環状領域12及び接続部14は銅箔等の基材が露出して半田を付着させることができ、その面積は部品端子10をランド4に安定して半田を接続するのに十分な面積になっている。
【0017】
このような構成のランド4に溶融した状態の半田を付着させると、それが切り抜き部13には付着しないため、溶融した半田が内側環状領域11と外側環状領域12とに分割されて付着する。その溶融半田が接続部14を通して流動して端子10の全周に充分な半田を付着させ、端子10ランドと4との接続を確実にすることができる。
【0018】
また、ランド4が端子固定領域領域である挿入孔3の周囲に円弧状の切り抜き部13によって同心状に複数に分割されて設けられているため、ランドの表面に溶融した半田がまとまって付着せず、環状に分割されて一つの大きな半田粒にはならないので、その側面がランド4上から外側に大きく膨出するのを防ぐことができる。そのため、その状態でプリント配線基板1が移動されても、近接するランド間で半田同士が接触して短絡するようなことが生じない。
したがって、プリント配線基板の実装密度を向上させるためにランド4の間隔を狭めて密接に配置しても、近接するランド間での半田同士の接触による短絡を防ぐことができる。
【0019】
この実施形態では、ランドを2つに分割した同心状の環状領域として形成したが、3つ以上に分割した同心状の環状領域として形成してもよい。また、それらを部分的に相互に接続する接続部も、溶融半田の分割と流通を円滑かつ均等に行うには、周方向に均等な間隔で設けるのが望ましいが、適宜に任意の間隔で設けてもよいし、また設ける数も4つに限るものではない。
なお、各接続部14の中央とランド4の中心とを結ぶ線の方向が、プリント配線基板を半田付着工程から次の工程へ移動させる際の移動方向に対して斜め方向(例えば45°)になるようにするとよい。それによって、基板の移動時にランド4に付着している溶融半田が接続部14を通って流動して外側方へ膨出するのを抑制することができる。


【0020】
あるいは、その接続部を設けずに切り抜き部13を完全な環状に形成しても、過大な半田粒が形成されやすい内側環状領域11から半田粒の揺動によって外側環状領域12に溶融半田が接触して吸収、分散されるため、半田粒が適切に分割されることになる。その場合、内側環状領域11だけで部品の端子10とランド4との確実な半田接続に必要な面積が確保されるようにすればよい。
【0021】
〔第2の実施形態〕
次に、この発明によるプリント配線基板の第2の実施形態について説明する。
図3は、そのプリント配線基板の1つのランドを示す図1と同様な平面図である。このプリント配線基板においても、各ランド15は、部品の端子10が挿入される端子固定領域である挿入孔3の周囲の表面に、同心状に形成された内側環状領域11と外側環状領域12とに分割されて設けられている。
【0022】
この第2の実施形態において前述した第1の実施形態と相違する点は、内側環状領域11と外側環状領域12とを分割する半田非付着領域が、ランド15を形成する基材の表面に半田が付着しにくい疎半田材料を被着させた疎半田領域16である点だけである。
つまり、基板本体の表面に銅箔等によって完全な円環状に形成されたランドの基材の表面に、図3に示すように、耐熱性コーティング材であるソルダーレジスト等の疎半田材料を被着させて、半田が付着しない4個の円弧状の疎半田領域16を形成している。そして、第1の実施形態と同様に、円周方向でこの各疎半田領域16の間に、内側環状領域11と外側環状領域12とを部分的に相互に接続する接続部14を設けている。
【0023】
この第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、完全な円環状に形成されたランド15の基材全体で導電体(銅箔)の面積を大きく確保できるため、ランド15の電極としての強度が強くなるとともに、端子10との接続点における電圧降下を防いで電位を安定させることができ、電波障害などを起こし易い不要輻射や伝導ノイズの発生を防ぐことができる。
【0024】
なお、疎半田材料としてはソルダーレジスト以外に、塗料、油脂、樹脂、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ステンレス、酸化皮膜なども使用することができる。
また、ランド15を同心環状に分割する数やそれらを部分的に相互に接続する接続部14の位置や数及び有無などについても、第1の実施形態の場合と同様に種々に変更し得る。
【0025】
〔第3の実施形態〕
ところで、この発明を実施するプリント配線基板におけるランドの形状は、上述した第1、第2の実施形態のような円環状に限らない。
図4は、この発明の第3の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。このプリント配線基板には、基板本体の端子10を挿入して固定するための端子固定領域である挿入孔3の周囲に、外形が略正方形のランド17が設けられている。
【0026】
そして、この実施形態のランド17も、挿入孔3の全周に近接して内側の仮想線Cの内部に形成された内側方形領域18と、外側の仮想線Dの外部に形成された外側方形領域19とに分割されている。そのために半田非付着領域として、銅箔等によるランドの基材にそれぞれ正方形の各コーナ部をなすように直角に曲がった屋根型の4個の切り抜き部20が形成されている。そして、その隣接する各切り抜き部20の間に、内側方形領域18と外側方形領域19とを部分的に相互に接続する接続部14を設けている。
【0027】
この第3の実施形態によっても、前述した第1の実施形態と同様な効果が得られる。なお、この実施形態は、端子固定領域として挿入孔3に代えて表面実装部品の正方形の端子を固定するための正方形の端子固定領域を設ける場合には好適である。
また、ランド17を同心方形状に分割する数やそれらを部分的に相互に接続する接続部14の位置や数及び有無などについても、第1の実施形態の場合と同様に種々に変更し得る。
【0028】
〔第4の実施形態〕
次に、この発明によるプリント配線基板の第4の実施形態について説明する。
図5は、この発明の第4の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。このプリント配線基板には、基板本体上に銅箔等によって外形が略正方形にランド基材が形成され、その中央部の仮想線で示す領域が部品固定領域22であり、その周囲が方形のランド21となっている。その端子固定領域22は、前述した第1の実施形態の場合と同様に、部品の端子を挿入して固定するための挿入孔が形成されていてもよいし、ICやLSI等の表面実装部品(SMD)の端子がクリーム半田で直接接着される領域であってもよい。
【0029】
そして、この実施形態のランド21は、端子固定領域22の全周に近接する内側方形領域18とその外側の中間方形領域23と、さらにその外側の外側方形領域とが同心状に形成されている。それらの各方形領域18,23,19は、ランドの基材の表面にそれぞれ正方形の各コーナ部をなすように直角に曲がった屋根型に疎半田材料を被着させた4個の内側疎半田領域24と、4個の外側疎半田領域25とによって分割されている。
【0030】
そして、隣接する各内側疎半田領域24の間に内側方形領域18と中間方形領域23とを部分的に相互に接続する接続部14aが、隣接する各外側外側疎半田領域25の間に中間方形領域23と外側方形領域とを部分的に相互に接続する接続部14bがそれぞれ設けられている。
この実施形態の場合にも、最も過大な半田粒が形成される内側方形領域18から半田粒の揺動によって外側の方形領域へ接触、吸収及び分散が行われるが、これが中間方形領域23と外側方形領域19の2段階に段階的に行われるため、前述した各実施形態の場合より半田粒が一層細かく分割され、半田同士の接触による短絡をより確実に防ぐことができる。
【0031】
しかも、半田非付着領域をランド基材の表面に疎半田材料を被着させた疎半田領域によって形成し、正方形のランド基材全体がランド21の導電体となって充分な面積を確保できる。そのため、前述した第2の実施形態と同様に、ランドの電極としての強度を高め、端子との接続点における電圧降下を防いで電位を安定させ、電波障害などを起こし易い不要輻射や伝導ノイズの発生も防ぐことができるという効果も得られる。
なお、ランドの同心状の分割を3分割以上にすることも可能であるが、コストや実装面積の関係から現実的には、表面実装の場合は2分割又は3分割が望ましく、挿入孔に部品端子を挿入して固定する場合は2乃至5分割するのが望ましい。
【0032】
また、端子固定領域およびランドの外形は、搭載する部品の端子の形状に合わせて、長方形や三角形、五角形その他の多角形、楕円形や半円形など、種々の形状にすることができる。そのうち図5に示したように外形が四角形のランドは、ICやLSI等の表面実装部品の端子を直接接着するのに好適である。また、楕円よりも円、長方形よりも正方形のように円形に近い形状の方が半田粒も球に近くなるため、ランドに半田非付着領域を設けて半田粒を分割する効果が高くなる。
【0033】
〔第5の実施形態〕
次に、この発明によるプリント配線基板の第5の実施形態について説明する。
図6は、そのプリント配線基板の1つのランドを示す図1と同様な平面図である。このプリント配線基板においても、ランド26は環状であり、その中央の端子固定領域には部品端子10を挿入して固定する挿入孔3が形成されている。
【0034】
さらに、この環状のランド26の領域内において挿入孔3を中心に径方向に対向する2箇所に半田非付着領域として疎半田領域27が設けられている。この実施形態では、その2箇所の疎半田領域27がそれぞれ端子固定領域である挿入孔3から半径方向にランド基材の外周まで延びており、それによって環状のランド26を周方向に2分割して半円弧状のランド部26Aと26Bを形成している。
【0035】
そして、そのランド部26A,26Bの表面は半田を付着できる領域であり、その領域は部品端子10をランドに安定して半田接続するのに十分な面積を有している。このような構成のランド26に溶融半田を付着させると、それが疎半田領域27によって周方向に分割された2つのランド部26A,26Bの表面に分割されて付着する。
したがって、この実施形態によっても、部品端子10をランド26に確実に接続するのに充分な半田を付着させることができ、且つその半田粒が2つに分割されるので大きな半田粒にならず、プリント基板の移動によって近接するランド間で溶融半田同士が接触して短絡するのを防ぐことができる。
【0036】
また、ランド26を分割する半田非付着領域を疎半田領域27で設けており、環状のランド基材全体がランド26の導電体として機能するので、前述した第2、第4の実施形態と同様の効果も得ることができる。
さらに、その疎半田領域27に代えて、ランド基材のそれに対応する部分を切除した径方向の切り欠き部によって、ランド26を周方向に分割するようにしてもよい。
【0037】
また、半田非付着領域を設ける数は2箇所に限るものではなく、環状のランドを周方向に3分割以上に分割するように周方向に間隔を置いて3個所以上設けてもよい。
例えば図7に示すように、環状のランド基材の表面に直交する径方向に90°間隔で4個の疎半田領域27を設け、環状のランド28を4分割した扇形の4個のランド部28A〜28Dを形成してもよい。
【0038】
ランドの周方向の分割数をもっと多くしてもよいが、半田非付着領域を多数設ける場合は、それらが互いに重ならないようにその幅を狭くする必要がある。また、ランド全体で半田を付着させる面積を十分に確保する必要があるため、通常の大きさのランドにおいては径方向の切り欠きを設ける場合は最大で4つ、疎半田領域を設ける場合でも最大でも16程度までが望ましい。
さらに、この実施形態において、半田を付着させる工程から次の工程に移動する際のプリント配線基板の移動方向に略直交する方向に半田非付着領域を設けることも有効である。この場合、半田非付着領域が半田の動きを阻止するように作用する。
【0039】
また、これらの実施形態における複数に分割された各ランド部を、部分的に相互に接続するように接続部を形成してもよい。例えば図6に示したランド26の2分割されたランド部26Aと26B、あるいは図7に示したランド28の4分割されたランド部28A〜28Dにおいて、隣接するランド部の内周部付近又は外周部付近あるいはその両方を部分的に相互に接続するようにしてもよい。それらによって、各ランド部に付着した溶融半田がその接続部を通して流れ、均等な分割が円滑になされるようになる。
各ランド部の内周付近を互いに接続すれば、部品端子10とランドとを接続するための半田を全周に亘って充分に確保することが容易になる。
【0040】
〔第6の実施形態〕
次に、この発明によるプリント配線基板の第6の実施形態について説明する。
図8は、そのプリント配線基板の1つのランドを示す図1と同様な平面図である。このプリント配線基板におけるランド29は、仮想線円Fの内部の部品端子10を挿入して固定する端子固定領域である挿入孔3の周囲に円環状に設けられた本体部30と、その本体部30から外方へ突出するように設けられた余剰部31,32とからなっている。
【0041】
本体部30と3箇所の余剰部31,32との間には、銅箔等の導電材からなるランド基材に形成した3箇所のスロット状の切り抜き部33による半田非付着領域が設けられている。
両端の直角三角形状の2つの余剰部31は、その間の細長い余剰部32によって接続され、本体部30とも接続部14によって部分的に接続されている。なお、余剰部31,32は、他のランドが近接して設けられていない方向に突出するように設けるのが望ましい。
【0042】
このような構成のランド29に溶融半田を付着させると、本体部30に充分な量の溶融半田が付着して部品端子10をランド29に確実に接続することができ、余分な溶融半田は接続部14を通して両端の余剰部31に流れ分割される。また、2つの余剰部31間でも余剰部32を通して溶融半田が流通し、均等な分割がなされる。
【0043】
したがって、この実施形態によっても、部品端子をランドに確実に半田付けすることができ、且つ余分な半田を余剰部へ流して分割するので、半田粒が必要以上に大きくなるこはなく、近接するランド間での半田同士の接触による短絡を防ぐことができる。
なお、この実施形態における半田非付着領域である切り抜き部33に代えて、ランド基材の表面に疎半田材料を被着させて細長い疎半田領域を形成してもよい。
【0044】
この実施形態の変形例を図9及び図10に示す。図9に示すランド34は、環状の本体部30の外周から90°の角度間隔で径方向に突出するように直角三角形状の一対の余剰部31を設け、その本体部30と余剰部31とを仮想線円Fに対する接線方向に両側からランド基材に形成した切り欠き部33′によって分離し、その切り残しによる接続部14′によって部分的接続している。
【0045】
また、図10に示すランド35は、環状の本体部30と図9に示した例と同様な直角三角形状の一対の余剰部31を、ランド基材の表面に仮想線円Fに対する接線方向に形成した短冊状の疎半田領域36(半田非付着領域)で分割し、その各疎半田領域36の一方の端部に疎半田材料を被着しない接続部14設け、各余剰部31を部分的に本体部30と接続させている。
これらの変形例によっても、図8に示した第6の実施形態の場合と同様な効果が得られる。また、この場合のランドの本体部は円形に限られるものではなく、四角形やその他の多角形、あるいは楕円形等、固定する端子の形状に合わせて形成することができる。余剰部も三角形以外の形状にしてもよい。
さらに、余剰部は2箇所あるいは3箇所に限らず、1箇所あるいは4箇所以上設けてもよい。
【0046】
また、特に図示しないが、本体部と余剰部とを部分的に接続する接続部を設けずに、本体部と余剰部とを、細い非半田付着領域によって完全に分割してもよい。その場合でも、過大な半田粒が形成されやすい本体部から半田粒の揺動によって余剰部に溶融半田が接触し、吸収及び分散されるため半田粒が適切に分割される。その場合には、本体部だけで部品端子とランドとの半田接続に必要な面積が確保されるようにすればよい。
【0047】
なお、上記第1〜3,第5,第6の実施形態におけるランド4,15,17,26,28,29,34,35は、部品端子10がリード線又はピンであり、それを固定する端子固定領域がリード線又はピンを挿入する挿入孔3であったが、第4の実施形態の場合と同様に、部品端子の先端をランドの表面に当接させて接着固定した状態で半田付けする、いわゆる表面実装の場合にも適用できる。その場合、各ランドの中央部の端子固定領域は挿入孔のない平面となる。
このように、この発明によるプリント配線基板が備えるランドは、多様な部品や実装形態に適用できるので、汎用性の高いものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、各種の家庭用及び産業用の電子機器に使用されるプリント配線基板、すなわちICやLSI等の半導体部品や各種電気・電子部品等の部品を搭載して自動的もしくは手動で半田付けするプリント配線基板に適用することができる。また、ICやLSIなどの集積回路の内部でのチップとパッケージのリード端子とのワイヤボンディングによる配線の半田付けにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図2中に示すランドの1つを拡大して示す平面図である。
【図2】この発明によるプリント配線基板の第1の実施形態の配線面の一部を示す斜視図である。
【図3】この発明の第2の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。
【図4】この発明の第3の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。
【図5】この発明の第4の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。
【0050】
【図6】この発明の第5の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。
【図7】同じくその変形例を示すランドの平面図である。
【図8】この発明の第6の実施形態のランドを示す図1と同様な平面図である。
【図9】同じくその第1の変形例を示すランドの平面図である。
【図10】同じくその第2の変形例を示すランドの平面図である。
【0051】
【図11】従来のプリント配線基板に設けられた隣接する2つのランドにそれぞれ部品の端子を挿入した状態を示す平面図である。
【図12】同じくその2つのランドにそれぞれ過剰な量の半田で部品の端子を半田付けした状態を示す断面図である。
【図13】同じくその2つのランド上の半田粒どうしが接触して短絡した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1:プリント配線基板 2:基板本体 3:挿入孔(端子固定領域)
4,15,17,21,26,28,29,34,35:ランド
5:配線パターン 6:接地パターン 7:スルーホール 8:レジスト
10:部品端子 11:内側環状領域 12:外側環状領域
13:切り抜き部(半田非付着領域) 14,14a,14b,14′:接続部
16:疎半田領域(半田非付着領域) 18:内側方形領域
19:外側方形領域 20:切り抜き部(半田非付着領域)
22:端子固定領域 23:中間方形領域
24:内側疎半田領域(半田非付着領域)
25:外側疎半田領域(半田非付着領域)
26A,26B,28A〜28D:ランド部 27:疎半田領域(半田非付着領域)
30:本体部 31,32:余剰部 33:切り抜き部(半田非付着領域)
33′:切り欠き部(半田非付着領域) 36:疎半田領域(半田非付着領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田付けにより部品の端子を固定する端子固定領域の周囲に半田を付着させる材料からなるランドが形成されたプリント配線基板において、
前記ランドを、前記端子固定領域の周囲に同心状に複数に分割して設けたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記複数に分割されたランドは、部分的に相互に接続されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板。
【請求項3】
半田付けにより部品の端子を固定する端子固定領域の周囲に半田を付着させる材料からなるランドが形成されたプリント配線基板において、
前記ランドを、前記端子固定領域の周囲に周方向に複数に分割して設けたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項4】
配線基板において請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプリント配線基板において、
前記ランドは、半田を付着させない半田非付着領域によって複数に分割されていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項5】
半田付けにより部品の端子を固定する端子固定領域の周囲に半田を付着させる材料からなるランドが形成されたプリント配線基板において、
前記ランドが、前記端子固定領域の周囲に円環状に設けられた本体部と、該本体部の外周から外方へ突出するように設けられた余剰部とからなり、
前記本体部と余剰部との間に半田を付着させない半田非付着領域を設けたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項6】
前記半田非付着領域は、前記ランドの基材に形成された切り抜き部又は切り欠き部であることを特徴とする請求項4又は5に記載のプリント配線基板。
【請求項7】
前記半田非付着領域は、前記ランドの基材の表面に疎半田材料が被着された領域であることを特徴とする請求項4又は5に記載のプリント配線基板。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−229177(P2006−229177A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60771(P2005−60771)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】