プリント配線板およびその製造方法
【課題】大掛かりな設備を必要とすることなく容易に可撓性を有するプリント配線板を製造することを目的とする。
【解決手段】プリント配線板は、予め成膜した感光性ソルダーレジスト41をガラスクロス10の両面にラミネートして形成した積層シート50に、写真法によってバイヤホール用孔51を形成した後、硬化させ、前記積層シート50の両面および前記バイヤホール用孔51にセミアディティブ法により配線層が形成されている。また、前記積層シート50は、前記バイヤホール用孔51に露出する前記ガラスクロス10の微細貫通孔を塞ぐように化学銅めっきされている。
【解決手段】プリント配線板は、予め成膜した感光性ソルダーレジスト41をガラスクロス10の両面にラミネートして形成した積層シート50に、写真法によってバイヤホール用孔51を形成した後、硬化させ、前記積層シート50の両面および前記バイヤホール用孔51にセミアディティブ法により配線層が形成されている。また、前記積層シート50は、前記バイヤホール用孔51に露出する前記ガラスクロス10の微細貫通孔を塞ぐように化学銅めっきされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板およびその製造方法に関するものである。特に、可撓性を有するプリント配線板およびその製造方法に用いられて好適である。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板には、柔軟性があり大きく変形できる可撓性を有するプリント配線板が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような可撓性を有するプリント配線板を製造する場合、含浸用繊維質基材にマトリックス耐熱性樹脂を含浸させてBステージ状態のプリント配線板用プリプレグを用いて製造する製造方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献2によるプリント配線板の製造方法では、樹脂マトリックスからなる接着剤溶液に含浸用繊維質基材を浸漬して含浸させたり、含浸用繊維質基材にロールコーターやドクターバー等を介して接着剤を塗布して含浸させたりした後、60〜100℃に設定した乾燥炉で乾燥硬化することによって、半硬化状態とした接着剤層を有するプリプレグを製造する。また、接着剤溶液を構成する樹脂マトリックスが熱硬化性樹脂の場合は、半硬化状態(Bステージ状態)の接着剤層を熱硬化して硬化状態(Cステージ状態)とした後、予め接着剤溶液に分散していた熱硬化性樹脂微粉末の少なくとも一部を、酸や酸化剤で溶解除去して接着剤層の表面を粗化する。その後、従来の方法によって無電解めっきを施してプリント配線板を製造する。
【0004】
更に、特許文献2では、接着剤溶液を構成する樹脂マトリックスが感光性樹脂の場合、基板上に形成させた半硬化状態(Bステージ状態)の接着剤層にフォトマスクを密着させ、光硬化して硬化状態(Cステージ状態)とし、その後、不要な部分を現像処理し、バイヤホール用の穴等を形成して、上述した方法と同様にして無電解めっきを施すことを特徴とするアディティブプロセスが適用されるプリント配線板の製造方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232651号公報
【特許文献2】特開平5−222539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のプリント配線板の製造方法によれば、樹脂マトリックスからなる接着剤溶液を用意しなければならず、このような接着剤溶液を取り扱うには、大掛かりな設備が必要になってしまう。特に、通常のプリント配線板を製造する事業者ではプリント配線板の機械加工、めっき加工、配線パターニング加工、レジスト印刷およびコーティング処理等を主に行っている。そのため、可撓性を有するプリント配線板を製造しようとする場合、接着剤溶液を製造したり、含浸用繊維質基材を接着剤用溶液に浸漬したりするための設備が新たに必要になってしまい、製造コストがかかってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、大掛かりな設備を必要とすることなく容易にプリント配線板を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリント配線板は、予め成膜した感光性ソルダーレジストを繊維基材の両面にラミネートして形成した積層シートに、写真法によってバイヤホール用孔を形成した後、硬化させ、前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする。
また、前記積層シートは、前記バイヤホール用孔に露出する前記繊維基材の微細貫通孔を塞ぐように化学銅めっきされた後、前記セミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする。
また、前記積層シートは、前記感光性ソルダーレジストをフィルム上にスクリーン印刷によって成膜しプレベークさせた後、前記繊維基材の両面にラミネートされていることを特徴とする。
また、前記繊維基材は、ガラスクロス、化学繊維、金属繊維または天然繊維であることを特徴とする。
また、前記ガラスクロスは、厚さ50μm以下であることを特徴とする。
また、前記繊維基材は、前記化学繊維、前記金属繊維または前記天然繊維により形成されるメッシュであることを特徴とする。
また、前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂を有していることを特徴とする。
また、前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂およびウレタン系樹脂を有していることを特徴とする。
本発明のプリント配線板の製造方法は、スクリーン印刷によってフィルム上に感光性ソルダーレジストの成膜を形成する工程と、繊維基材の両面に、プレベークした前記成膜をラミネートして積層シートを形成する工程と、写真法によって前記積層シートにバイヤホール用孔を形成した後、前記積層シートをアフターベークする工程と、アフターベークした前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大掛かりな設備を必要とすることなく容易にプリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ガラスクロスを示す断面図である。
【図2】図2は、固定枠を示す斜視図である。
【図3】図3は、ガラスクロスを固定枠に固定した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、PETフィルム上に感光性ソルダーレジストを成膜した状態を示す図である。
【図5】図5は、ガラスクロスの両面に感光性ソルダーレジストを転写した状態を示す図である。
【図6】図6は、積層シートに露光した状態を示す図である。
【図7】図7は、積層シートにバイヤホール用孔を形成した状態を示す図である。
【図8】図8は、絶縁板に化学銅めっきを施した状態を示す図である。
【図9】図9は、絶縁板に感光性めっきレジストを形成した状態を示す図である。
【図10】図10は、絶縁板に電気銅めっきを形成した状態を示す図である。
【図11】図11は、絶縁板から感光性めっきレジストを剥離した状態を示す図である。
【図12】図12は、絶縁板から化学銅めっきを除去した状態を示す図である。
【図13】図13は、絶縁板に感光性ソルダーレジストを塗布した状態を示す図である。
【図14】図14は、絶縁板に感光性ソルダーレジストを現像した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るプリント配線板およびプリント配線板の製造方法について説明する。本実施形態では、プリント配線板用基材として繊維基材を用い、プリント配線板用基材の表面を覆う絶縁材として感光性ソルダーレジストを用い、柔軟性があり大きく変形できるような可撓性を有するアンクラッドのプリント配線板を製造する。以下、プリント配線板の製造方法について工程を分けて具体的に説明する。
【0012】
本実施形態では、繊維基材としてガラスクロスを用いる。図1はガラスクロス10の断面図である。図1に示すガラスクロス10は、一方方向に配列される一束のガラス繊維11と、このガラス繊維11に直交する方向に配列される一束のガラス繊維12とが交互に交じわる平織で形成されている。また、ガラスクロス10は、ガラス繊維11、12が束状であるために、ガラスクロス10の表面と直交する方向に沿った微細貫通孔が全面に亘って形成されている。ここでは、ガラスクロス10としてIPCスペック♯1078、厚さ42μmを用いる。上述した厚みのガラスクロス10は、フレキシブルなプリント配線板の用途に用いる場合に好適な厚みであり、製造されるプリント配線板が可撓性を有する。なお、プリント配線板が可撓性を有するには、ガラスクロス10の厚みが75μm以下、好ましくは50μm以下のものを用いる。
(工程1)
ガラスクロス10を切断する。ここでは、ガラスクロス10を後述する固定枠20に貼付できるサイズに切断する。
【0013】
(工程2)
固定枠20を作製する。固定枠20は、ガラスクロス10を貼付して固定するための治具である。ガラスクロス10は、以下に続く工程10まで固定枠20に固定された状態で処理される。図2は固定枠20を示す斜視図である。固定枠20は、外形が510×340mmであって、中央に490×320mmの開口21が形成されている。固定枠20の片面には、開口21に沿って両面テープ22が貼付されている。ここでは、固定枠20としてガラスエポキシ基板(FR−4相当)を用いる。
【0014】
(工程3)
ガラスクロス10を固定枠20に固定する。この工程では、真空吸引機能付きのソルダーレジスト印刷装置の印刷テーブルにガラスクロス10を載置する。ソルダーレジスト印刷装置は載置されたガラスクロス10に反りやしわが発生しないように、いわゆるナチュラルテンションにてバキューム吸引する。次に、固定枠20の両面テープ22がガラスクロス10に粘着されるように、固定枠20をガラスクロス10上に重ね合わせて仮止めする。仮止め後、ソルダーレジスト印刷装置のバキューム吸引を解除して、印刷テーブルから固定枠20およびガラスクロス10を取り外す。次に、耐熱・耐薬品テープ23を用いてガラスクロス10を固定枠20に固定する。図3は耐熱・耐薬品テープ23を用いてガラスクロス10を固定枠20に固定した状態を示す斜視図である。以下では、図3に示すものをワークパネル30という。
【0015】
(工程4)
感光性ソルダーレジスト41を成膜加工する。この工程では、上述した真空吸引機能付きのソルダーレジスト印刷装置の印刷テーブルにエンボス加工されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(以下、PETフィルム40という)を載置する。ソルダーレジスト印刷装置は載置されたPETフィルム40に反りやしわが発生しないようにバキューム吸引し、位置決めする。ソルダーレジスト印刷装置を用いて、印刷版を介しPETフィルム40上に感光性ソルダーレジスト41をスクリーン印刷し、感光性ソルダーレジスト41を成膜する。感光性ソルダーレジスト41を成膜する面積は、固定枠20の開口21内に収まる程度が望ましい。
【0016】
図4は、PETフィルム40上に感光性ソルダーレジスト41を成膜した状態を示す図である。図4に示す感光性ソルダーレジスト41の成膜を、1つのワークパネル30に対して2枚作製する。ここでは、感光性ソルダーレジスト41としてサンワ化学 SPFR−5200EA−2CV黒(ネガタイプ)を用い、感光性ソルダーレジスト41の成膜の厚みを25〜30μmにする。上述した感光性ソルダーレジストは、硬化した後にも耐屈曲性に優れ、フレキシブルなプリント配線板を製造する用途に用いられる。具体的には、感光性ソルダーレジスト41は、主成分をエポキシ樹脂とし、ウレタン系樹脂が加えられている。なお、エンボス加工されているPETフィルム40を用いるのは、後述する工程6までの取扱性を高めると共にPETフィルム40から感光性ソルダーレジスト41を剥離するときの剥離性を向上させるためである。
【0017】
(工程5)
PETフィルム40上の感光性ソルダーレジスト41をプレベークする。この工程では、PETフィルム40と感光性ソルダーレジスト41との剥離性を向上させるために、感光性ソルダーレジスト41を常温にて6時間放置する。その後、温風乾燥炉によって80℃で30分間加熱して、感光性ソルダーレジスト41を仮乾燥させることで、感光性ソルダーレジスト41が仮硬化する。
【0018】
(工程6)
ガラスクロス10に感光性ソルダーレジスト41を真空ラミネート(DFR転写)する。
この工程では、ドライフィルム用真空ラミネータ装置を用いて、ワークパネル30のガラスクロス10にプレベークした感光性ソルダーレジスト41の成膜を積層して、真空ラミネートする。感光性ソルダーレジスト41の成膜をガラスクロス10に真空ラミネートすることにより、感光性ソルダーレジスト41の膜厚を均一に積層させることができる。
【0019】
工程6をより具体的に説明すると、ガラスクロス10は、まず一方の片面に感光性ソルダーレジスト41の成膜が転写され、所定時間放置された後、他方の片面に感光性ソルダーレジスト41の成膜が転写され、更に所定時間放置される。片面ずつ転写することによって、ガラスクロス10内の空気溜りをより削減することができる。その後、感光性ソルダーレジスト41からPETフィルム40を剥離する。なお、感光性ソルダーレジスト41をガラスクロス10に転写してから放置する時間が長いほど、PETフィルム40の剥離性を向上させることできる。
【0020】
図5は、ガラスクロス10の両面に感光性ソルダーレジスト41が転写された状態を示す図である。以下では、図5に示すものを積層シート50という。ここで、ドライフィルム用真空ラミネータ装置として、ニチゴーモートン製VACUUM APPLICTOR MODを用いる。また、ガラスクロス10の片面当たりのラミネート条件は、真空時間を1時間、スラップダウン(プレス時間)を20秒間、温度を60℃とする。なお、ガラスクロス10の両面に同時に感光性ソルダーレジスト41を真空ラミネートしてもよい。
【0021】
(工程7)
写真法によりバイヤホール用孔を形成する。ここで、バイヤホールは、プリント配線板の両面を導電させる穴である。バイヤホール用孔は、バイヤホールとしてプリント配線板の両面を導電させる前の孔である。
この工程では、製造するプリント配線板用に設計されたバイヤホール加工用のフォトマスク(ネガフィルム)を予め作成しておく。ソルダーレジスト用露光装置を用い、フォトマスクを介して積層シート50の両面を同時に露光する。このとき、露光されている部分の感光性ソルダーレジスト41が硬化し、露光されていない部分の感光性ソルダーレジスト41が未硬化のままとなる。図6は積層シート50のうち露光されていない部分を未露光部42として示している。未露光部42は後述する工程によってバイヤホール用孔として形成される。
【0022】
(工程8)
積層シート50を現像する。この工程では、ソルダーレジスト用現像装置を用い、現像液によって積層シート50の未露光部42の感光性ソルダーレジスト41を除去する。すなわち、未露光部42の感光性ソルダーレジスト41は硬化していないので、現像液によって溶解する。図7は積層シート50に未露光部42の感光性ソルダーレジスト41を除去した状態を示す図である。図7に示すように未露光部42がバイヤホール用孔51として形成される。なお、バイヤホール用孔51は、内部にガラスクロス10が介在している状態であり、ガラスクロス10の微細貫通孔によって貫通されている。
【0023】
(工程9)
積層シート50をアフターベーク(後硬化)する。この工程では、ベーク炉によって150℃で60分間加熱して、積層シート50を後硬化させる。すなわち、積層シート50の感光性ソルダーレジスト41を熱硬化させることで、ガラスクロス10と感光性ソルダーレジスト41とからなるアンクラッドの絶縁板が製造される。以下では、この工程9によって後硬化された積層シート50を絶縁板60という。
【0024】
(工程10)
絶縁板60の表面を研磨する。この工程では、不織布を用いて絶縁板60の両面を研磨する。絶縁板60を研磨することにより、表面が粗化され、次の工程11で施される化学銅めっきと絶縁板60との密着性およびアンカー効果を向上させることができる。ここでは、不織布としてバフブラシ♯800を用いる。絶縁板60を研磨し水洗した後、乾燥させる。その後、絶縁板60を固定枠20の開口21に沿って切り出し、固定枠20から絶縁板60を取り外す。なお、絶縁板60の粗化は、不織布を用いた機械的な研磨に限られず酸化剤溶液を用いた化学処理によって粗化してもよい。
【0025】
固定枠20から取り外した絶縁板60は、次の工程11以降から従来通りの加工によって可撓性を有するプリント配線板を製造することが可能である。固定枠20を作製する工程以外、上述した工程1〜工程10までは、通常のプリント配線板を製造する事業者が備える装置および加工条件の範囲内で処理することができる。
また、従来のプリント配線板はポリイミドなどの絶縁フィルムが用いられているが、ガラスクロス等の繊維基材を用いることにより、プリント配線板の材料費を削減することができる。
【0026】
次に、工程10によって製造された絶縁板60は、バイヤホール用孔51が形成されたアンクラッド板として、以下の工程でプリント配線板を製造する処理を継続させることができる。以下では、セミアディティブ法を取り上げて、工程10によって得られた絶縁板60に配線層を形成し、プリント配線板を製造する工程を説明する。
(工程11)
絶縁板60に化学銅めっき61を施す。図8は絶縁板60の両面およびバイヤホール用孔51に化学銅めっき61が施された状態を示す図である。化学銅めっき61はガラスクロス10の布目を浸透し、微細貫通孔を塞ぐように形成される。更に、化学銅めっき61は、バイヤホール用孔51においてガラスクロス10の両面上に所定の厚みで形成される。このようにガラスクロス10の微細貫通孔および両面上に化学銅めっき61が施されることで、バイヤホール用孔51がバイヤホール62として形成される。すなわち、絶縁板60の両面は化学銅めっき61が施されたバイヤホール62によって導電される。なお、工程10によって絶縁板60の表面を粗化しているので、絶縁板60と化学銅めっき61との密着性およびアンカー効果が向上している。ここでは、化学銅めっき61を絶縁板60の両面にそれぞれめっき厚3μm施した。
【0027】
(工程12)
絶縁板60に感光性めっきレジスト71を形成する。具体的には、絶縁板60の両面全体に感光性めっきレジスト71を施し、製造するプリント配線板の回路パターンに合わせて、絶縁板60の両面に施された感光性めっきレジスト71を露光する。その後、現像液によって、露光されていない感光性めっきレジスト71を除去することで現像する。図9は絶縁板60に感光性めっきレジスト71を現像した状態を示す図である。
【0028】
(工程13)
絶縁板60に電気銅めっき81を施す。図10は絶縁板60の両面に電気銅めっき81が形成されている状態を示す図である。この工程では、感光性めっきレジスト71によって覆われず露出している化学銅めっき61上に電気銅めっき81が施される。電気銅めっき81によって回路パターン、すなわち配線層が形成される。ここでは、電気銅めっき81を絶縁板60の両面にそれぞれめっき厚20μm施した。
【0029】
(工程14)
感光性めっきレジスト71を剥離する。この工程では、剥離液を用いて絶縁板60の両面に形成されている感光性めっきレジスト71を剥離する。図11は感光性めっきレジスト71が剥離された状態を示す図である。
(工程15)
化学銅めっき61を除去する。この工程では、エッチング液を用いて絶縁板60の両面から露出している化学銅めっき61を除去する。図12は化学銅めっき61が除去された状態を示す図である。化学銅めっき61が除去されることで離間する電気銅めっき81間の導電性が切り離される。
【0030】
(工程16)
絶縁板60をベーキング(焼成)する。ベーキングすることによって絶縁板60と電気銅めっき81との間の密着性が向上する。
(工程17)
絶縁板60に感光性ソルダーレジスト91を塗布する。この工程では、専用の感光性ソルダーレジスト塗布装置を用いて、絶縁板60の両面に感光性ソルダーレジスト91を塗布する。感光性ソルダーレジスト91を塗布することによって、電気銅めっき81で形成される回路パターンを保護することができる。図13は絶縁板60の両面に感光性ソルダーレジスト91を塗布した状態を示す図である。ここでは、感光性ソルダーレジスト91は、工程4と同一のものを用いる。
【0031】
(工程18)
感光性ソルダーレジスト91を露光および現像する。具体的には、プリント配線板の回路パターンのうち、電子部品が実装される電気銅めっき81以外を露光する。その後、現像液によって、露光されていない感光性ソルダーレジスト91を除去することで現像する。図14は絶縁板60に感光性ソルダーレジスト91を現像した状態を示す図である。
【0032】
(工程19)
絶縁板60を本乾燥させ、必要に応じて金めっき等により表面処理した後、検査をすることによってプリント配線板が完成する。
完成したプリント配線板の可撓性をJIS K5400に準じてマンドレル径2mmで角度0度から180度の屈曲を10回繰り返した後に、プリント配線板を目視で確認したところ、クラックがないことを確認した。なお、完成したプリント配線板の厚みは略0.2mmであった。
【0033】
このように製造されたプリント配線板は、柔軟性があり大きく変形できる可撓性を有している。したがって、上述したプリント配線板の製造方法によれば、大掛かりな設備を必要とすることなく、通常のプリント配線板を製造する事業者であっても、特別な設備を必要とすることなく、容易に可撓性を有するプリント配線板を製造することができる。
【0034】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上述した実施例では、繊維基材としてガラスクロスを用いる場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、繊維基材として化学繊維、金属繊維または天然繊維を用いてもよく、スクリーン印刷に使用される化学繊維、金属繊維または天然繊維により形成されるメッシュを用いてもよい。
また(工程11)〜(工程19)では、セミアディティブ法による実施を例示したが、この工程を他のアデティブ法(フルアディティブ法、パートリーアディティブ法等)や若しくは接着剤を用いて銅箔をラミネートしてサブトラクティブ法によって配線層を形成しても本発明のプリント配線板を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、可撓性を有するプリント配線板を製造する場合に有効に利用される。
【符号の説明】
【0036】
10:ガラスクロス 20:固定枠 30:ワークパネル 40:PETフィルム 41:感光性ソルダーレジスト 50:積層シート 51:バイヤホール用孔 61:化学銅めっき 62:バイヤホール 71:感光性めっきレジスト 81:電気銅めっき 91:感光性ソルダーレジスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板およびその製造方法に関するものである。特に、可撓性を有するプリント配線板およびその製造方法に用いられて好適である。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板には、柔軟性があり大きく変形できる可撓性を有するプリント配線板が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような可撓性を有するプリント配線板を製造する場合、含浸用繊維質基材にマトリックス耐熱性樹脂を含浸させてBステージ状態のプリント配線板用プリプレグを用いて製造する製造方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献2によるプリント配線板の製造方法では、樹脂マトリックスからなる接着剤溶液に含浸用繊維質基材を浸漬して含浸させたり、含浸用繊維質基材にロールコーターやドクターバー等を介して接着剤を塗布して含浸させたりした後、60〜100℃に設定した乾燥炉で乾燥硬化することによって、半硬化状態とした接着剤層を有するプリプレグを製造する。また、接着剤溶液を構成する樹脂マトリックスが熱硬化性樹脂の場合は、半硬化状態(Bステージ状態)の接着剤層を熱硬化して硬化状態(Cステージ状態)とした後、予め接着剤溶液に分散していた熱硬化性樹脂微粉末の少なくとも一部を、酸や酸化剤で溶解除去して接着剤層の表面を粗化する。その後、従来の方法によって無電解めっきを施してプリント配線板を製造する。
【0004】
更に、特許文献2では、接着剤溶液を構成する樹脂マトリックスが感光性樹脂の場合、基板上に形成させた半硬化状態(Bステージ状態)の接着剤層にフォトマスクを密着させ、光硬化して硬化状態(Cステージ状態)とし、その後、不要な部分を現像処理し、バイヤホール用の穴等を形成して、上述した方法と同様にして無電解めっきを施すことを特徴とするアディティブプロセスが適用されるプリント配線板の製造方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232651号公報
【特許文献2】特開平5−222539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のプリント配線板の製造方法によれば、樹脂マトリックスからなる接着剤溶液を用意しなければならず、このような接着剤溶液を取り扱うには、大掛かりな設備が必要になってしまう。特に、通常のプリント配線板を製造する事業者ではプリント配線板の機械加工、めっき加工、配線パターニング加工、レジスト印刷およびコーティング処理等を主に行っている。そのため、可撓性を有するプリント配線板を製造しようとする場合、接着剤溶液を製造したり、含浸用繊維質基材を接着剤用溶液に浸漬したりするための設備が新たに必要になってしまい、製造コストがかかってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、大掛かりな設備を必要とすることなく容易にプリント配線板を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリント配線板は、予め成膜した感光性ソルダーレジストを繊維基材の両面にラミネートして形成した積層シートに、写真法によってバイヤホール用孔を形成した後、硬化させ、前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする。
また、前記積層シートは、前記バイヤホール用孔に露出する前記繊維基材の微細貫通孔を塞ぐように化学銅めっきされた後、前記セミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする。
また、前記積層シートは、前記感光性ソルダーレジストをフィルム上にスクリーン印刷によって成膜しプレベークさせた後、前記繊維基材の両面にラミネートされていることを特徴とする。
また、前記繊維基材は、ガラスクロス、化学繊維、金属繊維または天然繊維であることを特徴とする。
また、前記ガラスクロスは、厚さ50μm以下であることを特徴とする。
また、前記繊維基材は、前記化学繊維、前記金属繊維または前記天然繊維により形成されるメッシュであることを特徴とする。
また、前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂を有していることを特徴とする。
また、前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂およびウレタン系樹脂を有していることを特徴とする。
本発明のプリント配線板の製造方法は、スクリーン印刷によってフィルム上に感光性ソルダーレジストの成膜を形成する工程と、繊維基材の両面に、プレベークした前記成膜をラミネートして積層シートを形成する工程と、写真法によって前記積層シートにバイヤホール用孔を形成した後、前記積層シートをアフターベークする工程と、アフターベークした前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大掛かりな設備を必要とすることなく容易にプリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ガラスクロスを示す断面図である。
【図2】図2は、固定枠を示す斜視図である。
【図3】図3は、ガラスクロスを固定枠に固定した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、PETフィルム上に感光性ソルダーレジストを成膜した状態を示す図である。
【図5】図5は、ガラスクロスの両面に感光性ソルダーレジストを転写した状態を示す図である。
【図6】図6は、積層シートに露光した状態を示す図である。
【図7】図7は、積層シートにバイヤホール用孔を形成した状態を示す図である。
【図8】図8は、絶縁板に化学銅めっきを施した状態を示す図である。
【図9】図9は、絶縁板に感光性めっきレジストを形成した状態を示す図である。
【図10】図10は、絶縁板に電気銅めっきを形成した状態を示す図である。
【図11】図11は、絶縁板から感光性めっきレジストを剥離した状態を示す図である。
【図12】図12は、絶縁板から化学銅めっきを除去した状態を示す図である。
【図13】図13は、絶縁板に感光性ソルダーレジストを塗布した状態を示す図である。
【図14】図14は、絶縁板に感光性ソルダーレジストを現像した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るプリント配線板およびプリント配線板の製造方法について説明する。本実施形態では、プリント配線板用基材として繊維基材を用い、プリント配線板用基材の表面を覆う絶縁材として感光性ソルダーレジストを用い、柔軟性があり大きく変形できるような可撓性を有するアンクラッドのプリント配線板を製造する。以下、プリント配線板の製造方法について工程を分けて具体的に説明する。
【0012】
本実施形態では、繊維基材としてガラスクロスを用いる。図1はガラスクロス10の断面図である。図1に示すガラスクロス10は、一方方向に配列される一束のガラス繊維11と、このガラス繊維11に直交する方向に配列される一束のガラス繊維12とが交互に交じわる平織で形成されている。また、ガラスクロス10は、ガラス繊維11、12が束状であるために、ガラスクロス10の表面と直交する方向に沿った微細貫通孔が全面に亘って形成されている。ここでは、ガラスクロス10としてIPCスペック♯1078、厚さ42μmを用いる。上述した厚みのガラスクロス10は、フレキシブルなプリント配線板の用途に用いる場合に好適な厚みであり、製造されるプリント配線板が可撓性を有する。なお、プリント配線板が可撓性を有するには、ガラスクロス10の厚みが75μm以下、好ましくは50μm以下のものを用いる。
(工程1)
ガラスクロス10を切断する。ここでは、ガラスクロス10を後述する固定枠20に貼付できるサイズに切断する。
【0013】
(工程2)
固定枠20を作製する。固定枠20は、ガラスクロス10を貼付して固定するための治具である。ガラスクロス10は、以下に続く工程10まで固定枠20に固定された状態で処理される。図2は固定枠20を示す斜視図である。固定枠20は、外形が510×340mmであって、中央に490×320mmの開口21が形成されている。固定枠20の片面には、開口21に沿って両面テープ22が貼付されている。ここでは、固定枠20としてガラスエポキシ基板(FR−4相当)を用いる。
【0014】
(工程3)
ガラスクロス10を固定枠20に固定する。この工程では、真空吸引機能付きのソルダーレジスト印刷装置の印刷テーブルにガラスクロス10を載置する。ソルダーレジスト印刷装置は載置されたガラスクロス10に反りやしわが発生しないように、いわゆるナチュラルテンションにてバキューム吸引する。次に、固定枠20の両面テープ22がガラスクロス10に粘着されるように、固定枠20をガラスクロス10上に重ね合わせて仮止めする。仮止め後、ソルダーレジスト印刷装置のバキューム吸引を解除して、印刷テーブルから固定枠20およびガラスクロス10を取り外す。次に、耐熱・耐薬品テープ23を用いてガラスクロス10を固定枠20に固定する。図3は耐熱・耐薬品テープ23を用いてガラスクロス10を固定枠20に固定した状態を示す斜視図である。以下では、図3に示すものをワークパネル30という。
【0015】
(工程4)
感光性ソルダーレジスト41を成膜加工する。この工程では、上述した真空吸引機能付きのソルダーレジスト印刷装置の印刷テーブルにエンボス加工されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(以下、PETフィルム40という)を載置する。ソルダーレジスト印刷装置は載置されたPETフィルム40に反りやしわが発生しないようにバキューム吸引し、位置決めする。ソルダーレジスト印刷装置を用いて、印刷版を介しPETフィルム40上に感光性ソルダーレジスト41をスクリーン印刷し、感光性ソルダーレジスト41を成膜する。感光性ソルダーレジスト41を成膜する面積は、固定枠20の開口21内に収まる程度が望ましい。
【0016】
図4は、PETフィルム40上に感光性ソルダーレジスト41を成膜した状態を示す図である。図4に示す感光性ソルダーレジスト41の成膜を、1つのワークパネル30に対して2枚作製する。ここでは、感光性ソルダーレジスト41としてサンワ化学 SPFR−5200EA−2CV黒(ネガタイプ)を用い、感光性ソルダーレジスト41の成膜の厚みを25〜30μmにする。上述した感光性ソルダーレジストは、硬化した後にも耐屈曲性に優れ、フレキシブルなプリント配線板を製造する用途に用いられる。具体的には、感光性ソルダーレジスト41は、主成分をエポキシ樹脂とし、ウレタン系樹脂が加えられている。なお、エンボス加工されているPETフィルム40を用いるのは、後述する工程6までの取扱性を高めると共にPETフィルム40から感光性ソルダーレジスト41を剥離するときの剥離性を向上させるためである。
【0017】
(工程5)
PETフィルム40上の感光性ソルダーレジスト41をプレベークする。この工程では、PETフィルム40と感光性ソルダーレジスト41との剥離性を向上させるために、感光性ソルダーレジスト41を常温にて6時間放置する。その後、温風乾燥炉によって80℃で30分間加熱して、感光性ソルダーレジスト41を仮乾燥させることで、感光性ソルダーレジスト41が仮硬化する。
【0018】
(工程6)
ガラスクロス10に感光性ソルダーレジスト41を真空ラミネート(DFR転写)する。
この工程では、ドライフィルム用真空ラミネータ装置を用いて、ワークパネル30のガラスクロス10にプレベークした感光性ソルダーレジスト41の成膜を積層して、真空ラミネートする。感光性ソルダーレジスト41の成膜をガラスクロス10に真空ラミネートすることにより、感光性ソルダーレジスト41の膜厚を均一に積層させることができる。
【0019】
工程6をより具体的に説明すると、ガラスクロス10は、まず一方の片面に感光性ソルダーレジスト41の成膜が転写され、所定時間放置された後、他方の片面に感光性ソルダーレジスト41の成膜が転写され、更に所定時間放置される。片面ずつ転写することによって、ガラスクロス10内の空気溜りをより削減することができる。その後、感光性ソルダーレジスト41からPETフィルム40を剥離する。なお、感光性ソルダーレジスト41をガラスクロス10に転写してから放置する時間が長いほど、PETフィルム40の剥離性を向上させることできる。
【0020】
図5は、ガラスクロス10の両面に感光性ソルダーレジスト41が転写された状態を示す図である。以下では、図5に示すものを積層シート50という。ここで、ドライフィルム用真空ラミネータ装置として、ニチゴーモートン製VACUUM APPLICTOR MODを用いる。また、ガラスクロス10の片面当たりのラミネート条件は、真空時間を1時間、スラップダウン(プレス時間)を20秒間、温度を60℃とする。なお、ガラスクロス10の両面に同時に感光性ソルダーレジスト41を真空ラミネートしてもよい。
【0021】
(工程7)
写真法によりバイヤホール用孔を形成する。ここで、バイヤホールは、プリント配線板の両面を導電させる穴である。バイヤホール用孔は、バイヤホールとしてプリント配線板の両面を導電させる前の孔である。
この工程では、製造するプリント配線板用に設計されたバイヤホール加工用のフォトマスク(ネガフィルム)を予め作成しておく。ソルダーレジスト用露光装置を用い、フォトマスクを介して積層シート50の両面を同時に露光する。このとき、露光されている部分の感光性ソルダーレジスト41が硬化し、露光されていない部分の感光性ソルダーレジスト41が未硬化のままとなる。図6は積層シート50のうち露光されていない部分を未露光部42として示している。未露光部42は後述する工程によってバイヤホール用孔として形成される。
【0022】
(工程8)
積層シート50を現像する。この工程では、ソルダーレジスト用現像装置を用い、現像液によって積層シート50の未露光部42の感光性ソルダーレジスト41を除去する。すなわち、未露光部42の感光性ソルダーレジスト41は硬化していないので、現像液によって溶解する。図7は積層シート50に未露光部42の感光性ソルダーレジスト41を除去した状態を示す図である。図7に示すように未露光部42がバイヤホール用孔51として形成される。なお、バイヤホール用孔51は、内部にガラスクロス10が介在している状態であり、ガラスクロス10の微細貫通孔によって貫通されている。
【0023】
(工程9)
積層シート50をアフターベーク(後硬化)する。この工程では、ベーク炉によって150℃で60分間加熱して、積層シート50を後硬化させる。すなわち、積層シート50の感光性ソルダーレジスト41を熱硬化させることで、ガラスクロス10と感光性ソルダーレジスト41とからなるアンクラッドの絶縁板が製造される。以下では、この工程9によって後硬化された積層シート50を絶縁板60という。
【0024】
(工程10)
絶縁板60の表面を研磨する。この工程では、不織布を用いて絶縁板60の両面を研磨する。絶縁板60を研磨することにより、表面が粗化され、次の工程11で施される化学銅めっきと絶縁板60との密着性およびアンカー効果を向上させることができる。ここでは、不織布としてバフブラシ♯800を用いる。絶縁板60を研磨し水洗した後、乾燥させる。その後、絶縁板60を固定枠20の開口21に沿って切り出し、固定枠20から絶縁板60を取り外す。なお、絶縁板60の粗化は、不織布を用いた機械的な研磨に限られず酸化剤溶液を用いた化学処理によって粗化してもよい。
【0025】
固定枠20から取り外した絶縁板60は、次の工程11以降から従来通りの加工によって可撓性を有するプリント配線板を製造することが可能である。固定枠20を作製する工程以外、上述した工程1〜工程10までは、通常のプリント配線板を製造する事業者が備える装置および加工条件の範囲内で処理することができる。
また、従来のプリント配線板はポリイミドなどの絶縁フィルムが用いられているが、ガラスクロス等の繊維基材を用いることにより、プリント配線板の材料費を削減することができる。
【0026】
次に、工程10によって製造された絶縁板60は、バイヤホール用孔51が形成されたアンクラッド板として、以下の工程でプリント配線板を製造する処理を継続させることができる。以下では、セミアディティブ法を取り上げて、工程10によって得られた絶縁板60に配線層を形成し、プリント配線板を製造する工程を説明する。
(工程11)
絶縁板60に化学銅めっき61を施す。図8は絶縁板60の両面およびバイヤホール用孔51に化学銅めっき61が施された状態を示す図である。化学銅めっき61はガラスクロス10の布目を浸透し、微細貫通孔を塞ぐように形成される。更に、化学銅めっき61は、バイヤホール用孔51においてガラスクロス10の両面上に所定の厚みで形成される。このようにガラスクロス10の微細貫通孔および両面上に化学銅めっき61が施されることで、バイヤホール用孔51がバイヤホール62として形成される。すなわち、絶縁板60の両面は化学銅めっき61が施されたバイヤホール62によって導電される。なお、工程10によって絶縁板60の表面を粗化しているので、絶縁板60と化学銅めっき61との密着性およびアンカー効果が向上している。ここでは、化学銅めっき61を絶縁板60の両面にそれぞれめっき厚3μm施した。
【0027】
(工程12)
絶縁板60に感光性めっきレジスト71を形成する。具体的には、絶縁板60の両面全体に感光性めっきレジスト71を施し、製造するプリント配線板の回路パターンに合わせて、絶縁板60の両面に施された感光性めっきレジスト71を露光する。その後、現像液によって、露光されていない感光性めっきレジスト71を除去することで現像する。図9は絶縁板60に感光性めっきレジスト71を現像した状態を示す図である。
【0028】
(工程13)
絶縁板60に電気銅めっき81を施す。図10は絶縁板60の両面に電気銅めっき81が形成されている状態を示す図である。この工程では、感光性めっきレジスト71によって覆われず露出している化学銅めっき61上に電気銅めっき81が施される。電気銅めっき81によって回路パターン、すなわち配線層が形成される。ここでは、電気銅めっき81を絶縁板60の両面にそれぞれめっき厚20μm施した。
【0029】
(工程14)
感光性めっきレジスト71を剥離する。この工程では、剥離液を用いて絶縁板60の両面に形成されている感光性めっきレジスト71を剥離する。図11は感光性めっきレジスト71が剥離された状態を示す図である。
(工程15)
化学銅めっき61を除去する。この工程では、エッチング液を用いて絶縁板60の両面から露出している化学銅めっき61を除去する。図12は化学銅めっき61が除去された状態を示す図である。化学銅めっき61が除去されることで離間する電気銅めっき81間の導電性が切り離される。
【0030】
(工程16)
絶縁板60をベーキング(焼成)する。ベーキングすることによって絶縁板60と電気銅めっき81との間の密着性が向上する。
(工程17)
絶縁板60に感光性ソルダーレジスト91を塗布する。この工程では、専用の感光性ソルダーレジスト塗布装置を用いて、絶縁板60の両面に感光性ソルダーレジスト91を塗布する。感光性ソルダーレジスト91を塗布することによって、電気銅めっき81で形成される回路パターンを保護することができる。図13は絶縁板60の両面に感光性ソルダーレジスト91を塗布した状態を示す図である。ここでは、感光性ソルダーレジスト91は、工程4と同一のものを用いる。
【0031】
(工程18)
感光性ソルダーレジスト91を露光および現像する。具体的には、プリント配線板の回路パターンのうち、電子部品が実装される電気銅めっき81以外を露光する。その後、現像液によって、露光されていない感光性ソルダーレジスト91を除去することで現像する。図14は絶縁板60に感光性ソルダーレジスト91を現像した状態を示す図である。
【0032】
(工程19)
絶縁板60を本乾燥させ、必要に応じて金めっき等により表面処理した後、検査をすることによってプリント配線板が完成する。
完成したプリント配線板の可撓性をJIS K5400に準じてマンドレル径2mmで角度0度から180度の屈曲を10回繰り返した後に、プリント配線板を目視で確認したところ、クラックがないことを確認した。なお、完成したプリント配線板の厚みは略0.2mmであった。
【0033】
このように製造されたプリント配線板は、柔軟性があり大きく変形できる可撓性を有している。したがって、上述したプリント配線板の製造方法によれば、大掛かりな設備を必要とすることなく、通常のプリント配線板を製造する事業者であっても、特別な設備を必要とすることなく、容易に可撓性を有するプリント配線板を製造することができる。
【0034】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上述した実施例では、繊維基材としてガラスクロスを用いる場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、繊維基材として化学繊維、金属繊維または天然繊維を用いてもよく、スクリーン印刷に使用される化学繊維、金属繊維または天然繊維により形成されるメッシュを用いてもよい。
また(工程11)〜(工程19)では、セミアディティブ法による実施を例示したが、この工程を他のアデティブ法(フルアディティブ法、パートリーアディティブ法等)や若しくは接着剤を用いて銅箔をラミネートしてサブトラクティブ法によって配線層を形成しても本発明のプリント配線板を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、可撓性を有するプリント配線板を製造する場合に有効に利用される。
【符号の説明】
【0036】
10:ガラスクロス 20:固定枠 30:ワークパネル 40:PETフィルム 41:感光性ソルダーレジスト 50:積層シート 51:バイヤホール用孔 61:化学銅めっき 62:バイヤホール 71:感光性めっきレジスト 81:電気銅めっき 91:感光性ソルダーレジスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め成膜した感光性ソルダーレジストを繊維基材の両面にラミネートして形成した積層シートに、写真法によってバイヤホール用孔を形成した後、硬化させ、前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする可撓性を有するプリント配線板。
【請求項2】
前記積層シートは、前記バイヤホール用孔に露出する前記繊維基材の微細貫通孔を塞ぐように化学銅めっきされた後、前記セミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記積層シートは、前記感光性ソルダーレジストをフィルム上にスクリーン印刷によって成膜しプレベークさせた後、前記繊維基材の両面にラミネートされていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記繊維基材は、ガラスクロス、化学繊維、金属繊維または天然繊維であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記ガラスクロスは、厚さ50μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記繊維基材は、前記化学繊維、前記金属繊維または前記天然繊維により形成されるメッシュであることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂およびウレタン系樹脂を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
スクリーン印刷によってフィルム上に感光性ソルダーレジストの成膜を形成する工程と、
繊維基材の両面に、プレベークした前記成膜をラミネートして積層シートを形成する工程と、
写真法によって前記積層シートにバイヤホール用孔を形成した後、前記積層シートをアフターベークする工程と、
アフターベークした前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層を形成する工程と、を有することを特徴とする可撓性を有するプリント配線板の製造方法。
【請求項1】
予め成膜した感光性ソルダーレジストを繊維基材の両面にラミネートして形成した積層シートに、写真法によってバイヤホール用孔を形成した後、硬化させ、前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする可撓性を有するプリント配線板。
【請求項2】
前記積層シートは、前記バイヤホール用孔に露出する前記繊維基材の微細貫通孔を塞ぐように化学銅めっきされた後、前記セミアディティブ法により配線層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記積層シートは、前記感光性ソルダーレジストをフィルム上にスクリーン印刷によって成膜しプレベークさせた後、前記繊維基材の両面にラミネートされていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記繊維基材は、ガラスクロス、化学繊維、金属繊維または天然繊維であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記ガラスクロスは、厚さ50μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記繊維基材は、前記化学繊維、前記金属繊維または前記天然繊維により形成されるメッシュであることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記感光性ソルダーレジストは、少なくともエポキシ樹脂およびウレタン系樹脂を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
スクリーン印刷によってフィルム上に感光性ソルダーレジストの成膜を形成する工程と、
繊維基材の両面に、プレベークした前記成膜をラミネートして積層シートを形成する工程と、
写真法によって前記積層シートにバイヤホール用孔を形成した後、前記積層シートをアフターベークする工程と、
アフターベークした前記積層シートの両面および前記バイヤホール用孔にセミアディティブ法により配線層を形成する工程と、を有することを特徴とする可撓性を有するプリント配線板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−151193(P2012−151193A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7368(P2011−7368)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
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