説明

プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】本発明は、プリント配線板の端縁から突出するバリを抑え、かつ安価なプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 得ようとするプリント配線板の外形状に対応した剪断ライン6を配線板母材上10に設定し、パターンの一部が前記剪断ライン6の内側から外側に延長した導電パターン4を形成し、この配線板母材10を剪断ライン6で剪断することにより、導電パターンの一部が配線板の端縁にまで達する形態のプリント配線板を製造する方法において、前記延長した導電パターンにおける剪断ライン6の内側直近に、前記剪断時に応力が集中する応力集中部21を前記配線板母材10の剪断前に設けることによって、プリント配線板の端縁から突出するバリを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に使用するプリント配線板の製造方法及びプリント配線板、特に導電パターンの一部がプリント配線板の端縁にまで達する形態のプリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器に用いられるプリント配線板は、端子及びランド等が貴金属メッキされる場合が多い。このようなプリント配線板には、メッキリードが配設されるが、そのうち、プリント配線板の外周縁部にメッキリードを配設するスペースがないものにあっては、メッキリードがプリント配線板の端縁にまで達するように配設されている。
【0003】
また、上記したような一般的なプリント配線板以外に、例えば機能拡張用カードなど特定の用途に用いられるプリント配線板にあっても、プリント配線板の端縁にまで達するようにエッジコネクタが配置されているものがある。これは、エッジコネクタをソケットに挿着する際、その接続の確実性をあげるためである。
【0004】
これらのプリント配線板の共通点は、導電パターンがプリント配線板の端縁にまで達していることにある。以下、この種のプリント配線板について、従来の製造方法を説明する。
【0005】
第1の例として、メッキリードをプリント配線板に配設した場合であって、メッキリードがプリント配線板の端縁にまで達する形態のプリント配線板の製造方法について説明する。
【0006】
まず、配線板母材上にプリント配線板の外形状に対応する剪断ラインを設定し、この配線板母材上に、配線パターン、ランド、端子またはメッキリード等の導電パターンを形成する。それらのうち、メッキリードは端子等から引き出され、剪断ラインの内側から外側に延長して配設される。
【0007】
図9(a)は、配線板母材上にメッキリード等の導電パターンが形成されたプリント配線板の斜視図である。配線板母材110の表面上に配線パターン102が配設され、その一部に端子103が配設され、さらに端子103からメッキリード104が引き出されている。このメッキリード104は剪断ライン106の内側から外側に延長して配設される。
【0008】
導電パターンの形成後、メッキ処理をし、剪断ラインに沿って剪断することによって、プリント配線板が完成する。ここで、メッキリードは、上記したように、剪断ラインの内側から外側に延長して配設されているため、配線板母材とともに剪断時にメッキパターンが剪断され、これによりメッキリードがプリント配線板の端縁まで達した形態のプリント配線板が得られるのである。
【0009】
第2の例として、エッジコネクタを有するプリント配線板であって、エッジコネクタがプリント配線板の端縁にまで達する形態のプリント配線板の製造方法について説明する。
【0010】
まず、配線板母材上にプリント配線板の外形状に対応する剪断ラインを設定し、この配線板母材上に、配線パターン、ランド、またはエッジコネクタ等の導電パターンを形成する。このとき、エッジコネクタはその先端を剪断ラインの内側から外側に延出させて形成される。
【0011】
図9(b)は、その状態を示すプリント配線板の斜視図である。配線板母材110の表面上に配線パターン102が配設され、その一部にエッジコネクタ107が配設される。このエッジコネクタ107は剪断ライン106の内側から外側に延出して配設される。
【0012】
これら導電パターンの形成後、メッキ処理をし、剪断ラインに沿って剪断することによって、プリント配線板が完成する。ここでも、上記第1の例の場合と同様、剪断される時、剪断ラインの外側に延出したエッジコネクタが剪断されるため、エッジコネクタの先端がプリント配線板の端縁まで達することになる。
【0013】
ところで、上記のプリント配線板にあっては、導電パターン(メッキリード、エッジコネクタ)もろとも金型により配線板母材を剪断することから、プリント配線板の端縁において導電パターンの剪断部にバリが形成されがちである。すなわち、導電パターンは一般に銅箔等の薄い金属箔で形成されているので、金型で剪断すると、金型の上型と下型の間隙に導電パターンの一部が挟まり、引き延ばされることにより、バリが形成されるのである。
【0014】
この点をメッキリードを例に挙げて図を用いて説明する。図10はメッキリードが配設されたプリント配線板が、剪断ラインに沿って剪断された時の斜視図である。メッキリード104の剪断部にバリ130が形成され、プリント配線板の端面に張り付いた状態になっている。このようなバリは他の導電パターンと接触し、ショートを引き起こす場合があるという問題があった。また、このようなバリを通じて導電パターンまたは電子部品間にリークを起こさせる可能性もあった。このようなショートまたはリークが発生すると、電子部品および回路を破壊し、あるいは特性を悪化させ、もしくは電子部品等の寿命を短くしてしまう。このように、バリの発生は様々な問題を招来する原因となっていた。
【0015】
そこで、上記のような問題の解決方法として、配線板母材の剪断ラインに沿ってVカットをいれるという方法が提案されている。
この方法は、導電パターン形成後、剪断ラインの全長に亘ってVカットを入れてから、配線板母材を剪断し、プリント配線板を作成するという方法である。この方法によれば、Vカットによって、剪断ラインの内側から外側に延長した導電パターンが剪断ライン上で分断され、剪断ライン上の導電パターンが削り取られるため、その後の金型による剪断で導電パターンが金型に挟み込まれることもなく、バリが形成されない。
【0016】
また別の方法として、延長した導電パターンに細線部を形成し、配線板母材の剪断ラインの全長に亘ってVカットを入れるという方法が提案されている(実公平7−26859号公報参照)。
【0017】
この方法も、前者の方法と同様に配線板母材の剪断前に、剪断ラインの全長に亘ってVカットを入れる方法であるが、次の点において特徴がある。すなわち、配線板母材の剪断ラインの内側から外側に延長した導電パターンにおいて、導電パターンが剪断ラインと交わる点を含んだ部分、つまりVカットされる部分を細くした細線部を設けたことに特徴がある。この細線部は、通常の線幅の導電パターンをVカットした場合、そのVカット部分において導電パターンの密着が不安定となって、ショートを発生させる恐れがあったため、Vカット時に導電パターンの密着が不安定とならないように設けられたものである。細線部はVカットによって飛散するので、密着が不安定な部分を発生させない。したがって、この方法によれば、導電パターンに不安定な部分を発生させず、かつバリを発生させないでプリント配線板を作成できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記いずれの方法にあっても、Vカットを剪断ラインの全長に亘って入れるものであるから、その分作業時間を要し、またそのための設備も大がかりになってしまう。このため、製造時間がかかるとともにコストが嵩むといった問題があった。
【0019】
ところで、このような問題を解決する手段として、Vカットを入れず、そのかわりに剪断後にバリを研磨することが考えられる。しかし、このような手段を採った場合は、研磨作業工程が増える分、作業時間及び労力を要することとなり、依然として製造時間がかかるとともにコストが嵩むといった問題があった。
【0020】
また、そのような手段とは別に、金型精度をあげ、バリの発生自体を抑えるという方法も考えられる。しなしながら、この方法では、高精度の金型が必要となる分金型費が高価になり、また高精度の金型は上型と下型間のクリアランスが極めて狭いことから磨耗が激しく、その分金型の保守に多くの費用と労力を要するという問題があった。
【0021】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたものであり、その目的は、プリント配線板の製造工程において短時間でコストアップを招来させることなく、バリの発生を最小限に抑えることのできるプリント配線板の製造方法、及びプリント配線板を提供することにある。
【特許文献1】実公平7−26859号公報
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために本発明のプリント配線板の製造方法は、得ようとするプリント配線板の外形状に対応した剪断ラインを配線板母材上に設定し、パターンの一部が前記剪断ラインの内側から外側に延長した導電パターンを形成し、この配線板母材を剪断ラインで剪断することにより、導電パターンの一部が配線板の端縁にまで達する形態のプリント配線板を製造する方法において、前記延長した導電パターンにおける剪断ラインの内側直近に、前記剪断時に応力が集中する応力集中部を前記配線板母材の剪断前に形成しておくことを特徴とする。
【0023】
ここでいう応力集中部とは、剪断時に応力が集中する形状になした部分をいう。
【0024】
この発明によれば、配線板母材を剪断する際、導電パターンが応力集中部で切断され、プリント配線板の端から突出するバリを抑えることができる。すなわち、配線板母材が剪断される時、導電パターンが金型の上型と下型の間隙に挟まり引っ張られ、導電パターンに応力が生じ、金型の剪断動作の進行に伴って次第に応力集中部に応力が集中し、その結果、この応力集中部が変形し、引き千切られるようにして切断される。このようにして切断された部分には、導電パターンが引き延ばされた形状のバリが発生するが、応力集中部は剪断ラインより内側に形成しているので、バリの根元は剪断面より内側に位置し、その結果、バリの先端は配線板母材の剪断面、つまりプリント配線板の端縁より外側に突出しない。また、仮に、バリがプリント配線板の端縁から突出するようなことがあっても、その突出長さは支障のない長さに抑えられる。
【0025】
また、この発明において、応力集中部を導電パターン形成と同時に形成してもよい。
【0026】
この場合、応力集中部を形成する工程を別に設ける必要がなく、その分短時間で且つ低コストでプリント配線板を製造することができる。
【0027】
また、この発明において、導電パターンを幅狭に形成するか、薄肉に形成するか、導電パターンを横断する溝を形成するか、あるいは導電パターンに1つ以上の凹部を形成してもよい。応力集中部をこのような形状にすることで、この部分に応力を集中させることができる。
【0028】
また、この発明において、プレス加工またはスタンピング加工することによって薄肉としてもよい。
【0029】
これらの加工方法によれば、複数箇所に亘る薄肉部を同時に形成することができ、加工費が低く抑えられる。
【0030】
また、この発明において、応力集中部は、エッチングすることによって薄肉としてもよい。ここでいうエッチングとは、ハーフエッチングまたは電解エッチングを含む。この発明によれば、導電パターンをエッチングで形成する工程と同時に、ハーフエッチングすることによって薄肉部を形成することができる。これより、応力集中部を形成する工程が不要となり、その分低コストでプリント配線板が製造できる。なお、このエッチング工程は他の導電パターンの形成と同時に行う場合に限るものではなく、別工程で行うこともできる。また、電解エッチングによって薄肉とすることもできる。
【0031】
また、この発明において、切削または研磨によって薄肉としてもよい。
【0032】
この場合、切削または研磨による方法によって、配線板母材を剪断する前に予め金属に歪を生じさせることができるため、剪断時に応力集中部がより切断され易くなり、バリの発生を抑えることができる。
【0033】
また、この発明において、レーザー光を照射することによって薄肉としてもよい。
【0034】
この場合、レーザー光によって微細加工ができるため、導電パターンが細くプレス加工等によって加工できない場合であっても、応力集中部を容易に形成することができる。
【0035】
また、この発明において、応力集中部の周辺を金属メッキすることにより肉厚とすることにより、応力集中部を他の部位に比して薄肉としてもよい。
【0036】
この場合、上記メッキは、導電パターンのメッキ工程と同時にできるため、応力集中部を形成する工程を別途設ける必要がなく、その分低コストでプリント配線板が製造できる。この金属メッキは、端子等をメッキする貴金属メッキ工程においても、スルーホールの無電解メッキ工程においてもすることができる。なお、このメッキ工程は、他の導電パターンのメッキ工程と同時に行う場合に限るものではなく、別工程で行うこともできる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、上記したようにプリント配線板の端縁において、バリは発生するものの該端縁からの突出をなくすことができ、仮にプリント配線板の端縁からバリが突出するようなことがあったとしても、その突出長さを極力抑えることができる。そのため、プリント配線板の端縁におけるバリを原因とするショートやリークのないプリント配線板を提供することができる。
また、本発明によれば、金型の精度の高低にかかわらず、導電パターンは、剪断時に剪断ラインの内側直近の応力集中部で引き千切られるようにして切断されるから、高精度の金型を用いる必要がない。したがって、通常の金型を用いて配線板母材を剪断することができ、その分金型費を抑えることができる。さらに、高精度の金型は磨耗が早く金型の保守に多くの費用がかかるが、本発明の場合は通常の金型を用いることができるため、金型の保守にかかる費用を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【実施例1】
【0039】
ここでは、本発明をメッキリードが配設されたプリント配線板に適用し、応力集中部を幅狭とした例について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0040】
図1は、導電パターンが形成された配線板の端子付近の斜視図、図2は、剪断された後のメッキリード部分の斜視図、図3(a)から(d)は、メッキリードに設けた幅狭部を上からみた図である。
【0041】
この実施例においては、配線板母材上にプリント配線板の外形状となる剪断ラインを設定し、配線板母材に導電パターンをエッチングによって形成している。以下、詳述する。
【0042】
図1に示すように、配線板母材10には、その表面に、得ようとするプリント配線板の外形状に対応した剪断ライン6が設定されており、この剪断ライン6の内側に配線パターン2が配設されるとともに、配線パターン2の一部に端子3が形成されている。この端子3からメッキリード4が引き出され、剪断ライン6の内側から外側へ延長して配設されている。
【0043】
このように設けられたメッキリード4には、剪断ライン6の内側直近に、幅狭部21が設けられている。この幅狭部21が、剪断時に応力が集中する、本発明にいう応力集中部である。
この幅狭部21を導電パターン形成のパターンマスクに予め設けることで、導電パターンの形成と同時に形成することができる。この場合、幅狭部21を形成するための工程を別途設ける必要もなく、安価な製造方法となる。
【0044】
なお、メッキ処理前にメッキリード4に幅狭部21を設けることにより、この部分におけるメッキリード4の断面積が小さくなり、電気抵抗が大きくなってメッキ処理に悪影響を与える恐れがあるが、このことを配慮して幅狭部21の形状を設計する必要があることは言うまでもない。
【0045】
導電パターンを形成した後、端子3等のメッキ処理をし、配線板母材10を剪断ライン6に沿って剪断することによって、プリント配線板が完成する。
【0046】
ここで、メッキリード4は配線板母材10とともに剪断時に幅狭部21で切断され、これによりプリント配線板の端から突出するバリを抑えられることになる。すなわち、配線板母材10が剪断される時、メッキリード4が金型の上型と下型の間隙に挟まり引っ張られ、メッキリード4に応力が生じ、金型の剪断動作の進行に伴って次第に幅狭部21に応力が集中し、その結果、この幅狭部21が変形し、引き千切られるようにして切断される。このようにして切断された部分には、図2に示すように、メッキリード4が引き延ばされた形状のバリが発生するが、幅狭部21は剪断ラインより内側に形成しているので、バリの根元は剪断面より内側に位置し、その結果、バリの先端は配線板母材10の剪断面、つまりプリント配線板の端縁より外側に突出しない。また、仮に、バリがプリント配線板の端縁から突出するようなことがあっても、その突出長さは支障のない長さに抑えられる。
【0047】
次に、上記した幅狭部の具体的な形状について、図3を参照しながら説明する。
【0048】
図3(a)に示す幅狭部41は、メッキリード4の両側からV字状の切り込みを入れることにより、括れた形状とされたものである。図3(b)に示す幅狭部42は、メッキリード4の両側から一定幅の切欠を形成するとともに、その最奥部をそれぞれV字状に形状することにより、括れた形状とされたものである。図3(c)に示す幅狭部43は、メッキリード4の両側から半円状の切り込みを入れることにより、括れた形状とされたものである。図3(d)に示す幅狭部44は、メッキリード4の両側からU字状の切り込みを入れることにより、括れた形状とされたものである。
【0049】
このように、局所的に括れた形状にすることによって、剪断時にこの部分に応力を集中させることができる。
【0050】
なお、上記の例では、幅狭部はいずれもメッキリード4の両側から相互に同形状の切り込みを入れることにより形成しているが、これに限定されるものではなく、剪断時に応力を集中させることができればどのような形状の切り込みを形成してもよい。例えば、メッキリード4の両側から相互に異形の切り込みを入れてもよいし、メッキリード4の一側からのみ任意形状の切り込みを入れてもよい。
【0051】
幅狭部を設けるにあたって上記切り込みの深さは、幅狭部前後のメッキリード幅に対して20〜30%が目安である。例えば、メッキリード幅が0.15mmの場合、切り込みの深さは30〜50μm程度である。また、メッキリード幅が0.5mmより太い場合、切り込みの深さはメッキリード幅の20〜30%よりも低い比率の寸法でもよい。例えば、メッキリード幅が0.5mmの場合、切り込みの深さは50〜70μm、メッキリード幅が3mmの場合、切り込み深さは0.1〜0.2mmである。
【実施例2】
【0052】
本実施例では、実施例1と同じくメッキリードが配設されたプリント配線板について、本発明を適用し、応力集中部を薄肉とした例を、図4乃至図8を参照して説明する。
【0053】
図4は、導電パターンが形成された配線板の端子付近の斜視図、図5は、溝が形成されたメッキリードをパターン方向に切断した時の断面図、図6は、凹部がメッキリードを横断するように断続的に形成されたメッキリードを上からみた図、図7は、応力集中部が露出するようにレジストを形成したメッキリードの断面図、図8は、応力集中部の周辺を金属メッキし、薄肉部を形成したメッキリードの断面図である。
【0054】
この実施例においては、配線板母材にプリント配線板の外形状となる剪断ラインを設定し、配線板母材に導電パターンをエッチングによって形成している。以下、詳述する。
【0055】
図4に示すように、配線板母材10には、その表面に、得ようとするプリント配線板の外形状に対応した剪断ライン6が設定されており、この剪断ライン6の内側に配線パターン2が配設されるとともに、配線パターン2の一部に端子3が形成されている。この端子3からメッキリード4が引き出され、剪断ライン6の内側から外側へ延長して配設されている。
【0056】
このように設けられたメッキリード4には、剪断ライン6の内側直近に、薄肉部22が設けられている。この薄肉部22が、剪断時に応力が集中する、本発明にいう応力集中部である。
この薄肉部22を、導電パターン形成のパターンマスクに予め設けることで、導電パターンの形成と同時に形成することができる。この場合、薄肉部22を形成するための工程を別途設ける必要もなく、安価な製造方法となる。
【0057】
なお、メッキ処理前にメッキリード4に薄肉部22を設けることにより、この部分におけるメッキリードの断面積が小さくなり、電気抵抗が大きくなってメッキ処理に悪影響を与える恐れがあるが、このことを配慮して薄肉部22の形状を設計する必要があることは言うまでもない。一方、メッキ処理をした後にメッキリード4に薄肉部22を形成する場合は、メッキ処理が完了しているので、上記に示したようなメッキ処理に与える影響を考慮する必要がなく、薄肉部を切断に最適な形状とすることができる。
【0058】
導電パターンを形成した後、端子3等のメッキ処理をし、配線板母材10を剪断ライン6に沿って金型で剪断することによって、プリント配線板が完成する。
【0059】
ここで、メッキリード4は配線板母材10とともに剪断時に薄肉部22で切断され、これによりプリント配線板の端から突出するバリを抑えられることになる。すなわち、配線板母材10が剪断される時、メッキリード4が金型の上型と下型の間隙に挟まり引っ張られ、メッキリード4に応力が生じ、金型の剪断動作の進行に伴って次第に薄肉部22に応力が集中し、その結果、この薄肉部22が変形し、引き千切られるようにして切断される。このようにして切断された部分には、メッキリード4が引き延ばされた形状のバリが発生するが、薄肉部22は剪断ラインより内側に形成しているので、バリの根元は剪断面より内側に位置し、その結果、バリの先端は配線板母材10の剪断面、つまりプリント配線板の端縁より外側に突出しない。また、仮に、バリがプリント配線板の端縁から突出するようなことがあっても、その突出長さは支障のない長さに抑えられる。
【0060】
次に、上記した薄肉部の具体的な形状について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0061】
図5に示すように、薄肉部23は、V字状の溝としており、このような形状の溝とすることによって、剪断時にこの部分に応力を集中させることができる。なお、この溝の形状は、上記した例に限るものではなく、例えば半円やU字状等でもよく、剪断時に応力が集中する形状であればよい。
【0062】
また、図6に示すように、薄肉部24は、メッキリード表面に1つ以上の凹部を形成することで設けてもよい。このようにメッキリード4の表面に凹部を形成することにより、導電パターンの肉厚がこの凹部において薄くなり、上記した溝を形成する場合と同様、剪断時に応力が集中する構造となる。なお、この凹部はメッキリード4を貫通する形状、つまり孔であってもよい。
【0063】
以下に薄肉部の形成方法について説明する。
【0064】
薄肉部は、プレス加工またはスタンピング加工のいずれによって形成してもよい。また、切削または研磨加工によって形成してもよい。これらの機械的な加工による場合、薄肉部の金属結晶構造に歪が生じると考えられ、より切断されやすくなっていると期待される。また、これらの方法では同時に複数箇所の加工ができ、Vカット方法と比較し部品の消耗が少なく、低コストな加工方法といえる。
【0065】
また、薄肉部はレーザー光を照射することによって加工し形成してもよい。レーザー加工は、精密・微細加工が可能であるため、メッキリードが細くプレス加工ができない場合であっても、薄肉部を形成することができる。
【0066】
薄肉部を形成する方法として、物理的な加工ではなく化学的方法によって形成してもよい。例えば、ハーフエッチングによって形成してもよい。ハーフエッチングによって、図6に示すように、メッキリード幅方向に凹部を連ねた構造の薄肉部24を形成することができる。薄肉部を形成するハーフエッチング工程は、導電パターンを形成する工程と同時に行うことができるので、その分、薄肉部を形成する工程を別途設ける必要もなく、低コストでプリント配線板を製造することができる。なお、このハーフエッチング工程は、導電パターンを形成する工程と同時に行うことに限るものではなく、別の工程で行ってもよい。
【0067】
また、例えば、電解エッチング法によって薄肉部を形成してもよい。すなわち、応力集中部を露出するように導電パターンをレジストで被覆し、メッキリードを陽極とし、塩酸に浸漬し、電流を通電し、メッキリードの露出部から金属が溶出させることにより、薄肉とすることができる。具体的には、図7に示すように、配線板母材10の表面にメッキリード4が配設され、さらにその上にレジスト9が被覆される。その後、露出された部分25が、エッチングされ、薄肉部が形成される。なお、この加工方法において、陰極は電解エッチングで通常使用される金属であればよいが、例えば銅を用いることができる。電解液には塩酸を用いることができるが、これに限るものではない。なお、塩酸のように重金属を含まない電解液を用いると、廃液処理が容易であり環境に負荷をかけないで済む。
【0068】
また、薄肉部は、その周辺を肉厚として形成してもよい。すなわち、応力集中部の周辺を金属メッキすることにより肉厚とすることにより、応力集中部を他の部位に比して薄肉となるようにして薄肉部を形成することができる。具体的には、応力集中部をレジストで保護し、その周辺を金属メッキし、その後、レジストを除去することによって、薄肉部を形成することができる。すなわち、図8に示すように、配線板母材10の表面に配設されたメッキリード4の応力集中部の周辺にニッケルメッキ層7を形成し、さらにその上に金メッキ層8を形成し、これによって応力集中部を薄肉とすることができる。ここで、薄肉部26は、ニッケルメッキ層7及び金メッキ層8がなく、その周辺部に比較し薄肉となっているため、剪断時にこの薄肉部26に応力が集中することになる。この方法は、端子をメッキする工程と同時に行うことができるため、薄肉部を形成する工程を別途設ける必要がなく、低コストにプリント配線板を製造できる。
【0069】
また、上記の方法において金属メッキ工程によって応力集中部の周辺を肉厚とする工程を、無電解メッキ工程によって肉厚としてもよい。例えば、プリント配線板のスルーホールをメッキする無電解メッキ工程において、スルーホールをメッキすると同時に、応力集中部以外の周辺を無電解メッキすることによって肉厚とし、薄肉部を形成することができる。
【0070】
なお、実施例においては応力集中部を幅狭とした例と薄肉とした例を説明したが、応力集中部は幅狭であって、かつ薄肉としてもよい。また、応力集中部は、上記実施例で説明した幅狭または薄肉の形成方法の適宜組合せて形成してもよい。
【0071】
なお、本発明を配線板母材の表面にメッキリードを配設したプリント配線板について適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、エッジコネクタ用の端子パターンが剪断ラインの内側から外側へ延出して配設されたプリント配線板の場合にも本発明が適用できる。また、配線板母材の内層部に導電パターンが配設されたプリント配線板を形成する場合において、内層部に配設された導電パターンの一部が剪断ラインの内側から外側に延長して引き出される場合にも、本発明が適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施例を示し、導電パターンが形成された配線板の端子付近の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例を示し、剪断された後のメッキリード部分の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例を示し、メッキリードに設けた幅狭部を上からみた図である。
【図4】本発明の第2実施例を示し、導電パターンが形成された配線板の端子付近の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例を示し、溝が形成されたメッキリードをパターン方向に切断した時の断面図である。
【図6】本発明の第2実施例を示し、凹部がメッキリードを横断するように断続的に形成されたメッキリードを上からみた図である。
【図7】本発明の第2実施例の他の例を示し、応力集中部が露出するようにレジストを形成したメッキリードの断面図である。
【図8】さらに本発明の第2実施例の他の例を示し、応力集中部の周辺を金属メッキし、薄肉部を形成したメッキリードの断面図である。
【図9】従来の製造方法により、配線板母材上にメッキリード等の導電パターンが形成されたプリント配線板の斜視図を示す。
【図10】従来の製造方法によってメッキリードが配設された配線板母材が、剪断ラインに沿って剪断された時の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0073】
1 導電パターンが形成された配線板母材
2 配線パターン
3 端子
4 メッキリード
6 剪断ライン
10 配線板母材
21 応力集中部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
得ようとするプリント配線板の外形状に対応した剪断ラインを配線板母材上に設定し、パターンの一部が前記剪断ラインの内側から外側に延長した導電パターンを形成し、この配線板母材を剪断ラインで剪断することにより、導電パターンの一部が配線板の端縁にまで達する形態のプリント配線板を製造する方法において、
前記延長した導電パターンにおける剪断ラインの内側直近に、前記剪断時に応力が集中する応力集中部を前記配線板母材の剪断前に設けておくことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記応力集中部を導電パターン形成と同時に形成することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
導電パターンを幅狭に形成し、これを応力集中部としたことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
導電パターンを薄肉に形成し、これを応力集中部としたことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
導電パターンを横断する溝を形成することで薄肉とすることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
導電パターンに1つ以上の凹部を形成することで薄肉とすることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
プレス加工またはスタンピング加工することによって薄肉とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
エッチングすることによって薄肉とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
切削または研磨によって薄肉とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
レーザー光を照射することによって薄肉とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記応力集中部の周辺を金属メッキすることにより肉厚とすることにより、応力集中部を他の部位に比して薄肉とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一に記載された製造方法によって製造されたプリント配線板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−86372(P2006−86372A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270218(P2004−270218)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】