説明

プリント配線板及びプリント配線板の製造方法

【課題】曲げ半径が小さくても破断を回避することが可能なプリントを提供する。
【解決手段】プリント配線板1は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10上に形成され、端子部22を有する配線パターン20と、ベースフィルム10に積層され、端子部22を露出させつつ配線パターン20を覆うカバーレイ30と、を備え、カバーレイ30の表面に複数の研磨傷が形成されており、カバーレイ30における折り曲げ予定部分313,314に保護フィルム41,42が貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部を有すると共に小さな曲げ半径で折り曲げられるプリント配線板、及びそのプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他の配線基板等とコネクタ嵌合する配線端子部をめっき処理する前に、酸化膜や有機物等を除去するために、配線端子部の表面に対してバフ研磨処理を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、プリント配線板において端子部以外も研磨されてしまうため、配線パターンをラミネートしているカバーレイの表面にも多数の研磨傷が形成される。
【0005】
フレキシブルプリント配線板の曲げ半径が一層小さくなると、折り曲げ時にこうした研磨傷を起点としてクラックが進展し、当該フレキシブルプリント配線板が破断する場合があるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、曲げ半径が小さくても破断を回避することが可能なプリント配線板及びプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係るプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、端子部を有する配線パターンと、前記絶縁層に積層され、前記端子部を露出させつつ前記配線パターンを覆う被覆層と、を備えたプリント配線板であって、前記被覆層の表面に複数の研磨傷が形成されており、前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分に保護層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
[2]上記発明において、前記保護層は、前記研磨傷の内部に入り込んでいてもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記保護層は、基材と、前記基材に積層された接着層と、を有しており、前記接着層は、前記研磨傷の内部に入り込んでいてもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記保護層は、前記被覆層の表面に塗布され硬化したインクから形成されており、前記インクは、前記研磨傷の内部に入り込んでいてもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記プリント配線板は、前記折り曲げ予定部分で折り曲げられていてもよい。
【0012】
[6]本発明に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁層上に配線パターンの導体層を形成する第1の工程と、被覆層を前記絶縁層に積層して、前記導体層の一部を前記被覆層から露出させつつ前記導体層を前記被覆層で覆う第2の工程と、少なくとも前記導体層の露出部分を機械的に研磨する第3の工程と、前記導体層の露出部分に対してめっき処理を行って、前記導体層の上にめっき層を形成する第4の工程と、前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分に保護層を形成する第5の工程と、を備えており、前記第5の工程は、前記第3の工程と第4の工程との間、又は、前記第4の工程の後に実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被覆層の表面における折り曲げ予定部分に保護層を形成するので、プリント配線板を折り曲げた際に研磨傷を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板の破断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図である。
【図2】図2(a)は、図1のIIA-IIA線に沿った断面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIB部の拡大図である。
【図3】図3(a)は、図1のIIIA-IIIA線に沿った断面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIB部の拡大図である。
【図4】図4(a)は、図1のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB部の拡大図である。
【図5】図5(a)は、保護層の第1変形例を示す断面図であり、図5(b)は、図5(a)のVB部の拡大図である。
【図6】図6(a)は、保護層の第2変形例を示す断面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIB部の拡大図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、図7の各ステップにおけるプリント配線板の側面図であり、図8(a)は図7のステップS10を示す図であり、図8(b)は図7のステップS20を示す図であり、図8(c)は図7のステップS30を示す図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、図7の各ステップにおけるプリント配線板の側面図であり、図9(a)は図7のステップS60を示す図であり、図9(b)は図7のステップS70を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図、図2(a)は図1のIIA-IIA線に沿った断面図、図2(b)は図2(a)のIIB部の拡大図、図3(a)は図1のIIIA-IIIA線に沿った断面図、図3(b)は図3(a)のIIIBの拡大図、図4(a)は図1のIVA-IVA線に沿った断面図、図4(b)は図4(a)のIVBの拡大図である。
【0017】
本実施形態におけるプリント配線板1は、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、ノート型パソコン、タブレット型情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、及びデジタルオーディオカメラ等の電子機器に組み込まれるフレキシブルプリント配線板(FPC)である。このプリント配線板1は、図1〜図4に示すように、ベースフィルム10、配線パターン20、及びカバーレイ30を備えており、全体としてL型形状を有している。なお、プリント配線板の平面形状は、特にこれに限定されず、任意の形状を選択することができる。
【0018】
ベースフィルム10は、例えばポリイミド(PI)から構成されたフレキシブルな絶縁性フィルムである。なお、このベースフィルム10を、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、又はアラミド等で構成してもよい。本実施形態におけるベースフィルム10が本発明における絶縁層の一例に相当する。
【0019】
このベースフィルム10上には複数の配線パターン20が形成されている。本実施形態では、図1に示すように、複数の配線パターン20が等間隔で平行に配置されており、ベースフィルム10上にL型に延在している。なお、配線パターン20の形状や配置等は特に限定されない。また、ベースフィルム10の両面に配線パターンを形成したり、配線パターンにバイアホール等を含めてもよい。
【0020】
この配線パターン20の両端には端子部22がそれぞれ設けられている。この端子部22には、例えば他のプリント配線板やケーブル等に設けられたコネクタが接続されて、この端子部22を介してプリント配線板1が外部の電子回路と接続される。なお、端子部が形成される位置は、配線パターンの端部に限定されず、配線パターンにおける任意の位置を選択することができる。また、配線パターンにおける端子部の数も特に限定されない。
【0021】
配線パターン20において端子部22以外の部分21(以下単に、配線部21と称する。)は、例えば、ベースフィルム10に積層された銅箔を所定形状にエッチングすることで形成されており、図3(a)や図4(a)に示すように、銅層23のみで構成されている。これに対し、配線パターン20の端子部22は、図2(a)に示すように、配線部21から延在する銅層23と、当該銅層23の表面に電解めっき処理によって形成されためっき層24と、から構成されている。
【0022】
このめっき層24は、図2(b)に示すように、ニッケル(Ni)層241を下地として有していると共に、そのニッケル層241の表面に形成された金(Au)層242を有している。このニッケル層241は、銅層23への金層242の拡散を抑制するためのバリア層として機能する。なお、めっき層24の構成は特に上記に限定されない。例えば、ニッケル層を省略して、銅層23の上に金層242を直接形成してもよい。また、めっき層24を無電解めっき処理によって形成してもよい。
【0023】
カバーレイ30は、図3(a)及び図4(a)に示すように、配線パターン20の配線部21を保護するための樹脂層31と、この樹脂層31をベースフィルム10に接着する接着層32と、を有しており、図1に示すように、配線パターン20の配線部21を覆うようにベースフィルム10上に積層されている。一方、同図に示すように、配線パターン20の端子部22は、このカバーレイ30から露出している。本実施形態におけるカバーレイ30が、本発明における被覆層の一例に相当する。
【0024】
このカバーレイ30の樹脂層31は、例えばポリイミド(PI)から構成されたフレキシブルな絶縁性基材である。なお、この樹脂層31を、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、又はアラミド等で構成してもよい。
【0025】
一方、カバーレイ30の接着層32は、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤から構成されている。なお、ベースフィルム10を液晶ポリマ(LCP)で構成すると共に、カバーレイ30の樹脂層31も液晶ポリマ(LCP)で構成する場合には、熱融着によってこれらを相互に貼り付けることができるので、接着層32が不要となる。
【0026】
なお、このカバーレイ30を、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いた感光性カバーレイ材料からなるドライフィルムで構成してもよい。或いは、ポリイミドやエポキシをベースとしたカバーレイインクや、液状の感光性カバーレイ材料を、ベースフィルム10上にスクリーン印刷することで、カバーレイ30を形成してもよい。
【0027】
このフレキシブルプリント配線板1は、図1に示すように、例えば、第1の折り曲げ線Cを中心として、曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げられると共に、第2の折り曲げ線Cを中心として、曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げられた状態で、電子機器に組み込まれる。因みに、本実施形態におけるプリント配線板1は、屈曲が繰り返される電子機器の可動部に組み込まれるのではなく、極小の曲げ半径で折り曲げた(塑性変形させた)状態で電子機器に恒久的に組み込まれる。このため、本実施形態のプリント配線板1には、屈曲耐久性よりも、極小曲げ半径に対する強靭性が要求される。なお、上記のプリント配線板の折り曲げ位置や曲げ半径は一例に過ぎず、特にこれに限定されない。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、カバーレイ30の樹脂層31の表面311における第1の折り曲げ予定部分313に、第1の保護フィルム41が貼り付けられている。同様に、カバーレイ30の樹脂層31の表面311における第2の折り曲げ予定部分314に、第2の保護フィルム42が貼り付けられている。本実施形態における第1及び第2の保護フィルム41,42が、本発明における保護層の一例に相当する。
【0029】
なお、第1及び第2の折り曲げ線C,Cはいずれも仮想上の直線である。また、第1の折り曲げ予定部分313は、カバーレイ30において第1の折り曲げ線Cを中心とした折り曲げが予定されている部分であり、カバーレイ30の表面311において、第1の折り曲げ線C自体と、当該第1の折り曲げ線Cの近傍と、を含む領域である。同様に、第2の折り曲げ予定部分314も、カバーレイ30において第2の折り曲げ線Cを中心として折り曲げが予定されている部分であり、カバーレイ30の表面311において、第2の折り曲げ線C自体と、当該第2の折り曲げ線Cの近傍と、を含む領域である。
【0030】
第1の保護フィルム41は、図4(a)に示すように、基材43と、基材43をカバーレイ30の樹脂層31の表面311に接着する接着層44と、を備えている。特に図示しないが、第2の保護フィルム42も、第1の保護フィルム41と同一の構成を有しており、基材と接着層を有している。
【0031】
第1の保護フィルム41の基材43は、例えば、ポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されたフレキシブルな絶縁性基材である。また、この第1の保護フィルム41の接着層44は、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系粘着剤(アクリル系感圧型接着剤)から構成されている。
【0032】
ところで、本実施形態では、後述するように、端子部22のめっき層24を形成する前に、銅層23上に存在する酸化物や有機物等の異物を除去するために、当該銅層23の表面に対してバフ研磨処理が行われている。この際に、カバーレイ30の樹脂層31の表面311もバフ研磨に曝されてしまうため、図3(b)や図4(b)に示すように、樹脂層31の表面311に、1[μm]以上の深さを有する研磨傷312が多数形成されている。
【0033】
このような多数の研磨傷が形成されたプリント配線板を曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げると、この研磨傷を起点としてクラックが進展して、プリント配線板が破断して、配線パターンが断線してしまう場合がある。
【0034】
これに対し、本実施形態では、上述のように、カバーレイ30の表面311における折り曲げ予定部分313,314に保護フィルム41,42が貼り付けられており、図4(b)に示すように、研磨傷312に保護フィルム41,42の接着剤が充填され、当該保護フィルム41,42の接着層44が研磨傷312の内部に入り込んでいる。このため、プリント配線板1を折り曲げ線C,Cで折り曲げた際に、研磨傷312を起点としてカバーレイ30にクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板1の破断を回避することができる。
【0035】
また、カバーレイ30の全面に保護フィルムを貼り付けるのではなく、カバーレイ30の折り曲げ予定部分313,314のみに保護フィルム41,42を貼り付けることで、保護フィルムの使用量を減らすことができ、プリント配線板1の高コスト化を抑制することもできる。
【0036】
なお、保護フィルム41,42に代えて、図5や図6に示すような保護層50をカバーレイ30の樹脂層31に形成してもよい、図5(a)及び図5(b)は保護層の第1変形例を示す断面図であり、図6(a)及び図6(b)は保護層の第2変形例を示す断面図である。
【0037】
保護フィルム41,42に代えて、図5(a)に示すように、カバーレイ30の樹脂層31の表面311にインクを塗布して硬化させることで、当該樹脂層31上に保護層50を形成してもよい。この保護層50を形成するインクとしては、例えば、ソルダレジストインクやカバーレイインク等を例示することができる。
【0038】
この場合にも、図5(b)に示すように、樹脂層31の研磨傷312にインクが充填され、当該保護層50が研磨傷312の内部に入り込んでいるので、研磨傷312を起点としたクラックの進展を抑制することができる。また、インクによって保護層50を形成することで、保護フィルム41,42と比較して、プリント配線板1の総厚を薄くすることができる。
【0039】
なお、図6(a)及び図6(b)に示すように、樹脂層31上の保護層50の厚さを極力薄くして、研磨傷312の内部のみに保護層50が存在するようにしてもよい。この場合にも、図5(a)及び図5(b)で説明した第1変形例と同様に、研磨傷312を起点としたクラックの進展を抑制すると共に、プリント配線板1を一層薄くすることができる。
【0040】
以下に、本実施形態におけるプリント配線板の製造方法について、図7〜図9を参照しながら説明する。
【0041】
図7は本実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャート、図8(a)〜図8(c)及び図9(a)〜図9(b)は図7の各ステップにおけるプリント配線板の側面図である。なお、図8(a)〜図8(c)及び図9(a)〜図9(b)は、プリント配線板1を図1のA方向から見た図である。
【0042】
先ず、図7のステップS10において、図8(a)に示すように、ベースフィルム10上に配線パターン20をサブトラクティブ法によって形成する。具体的には、銅張積層板の銅箔上に、配線パターン20に対応した形状のマスクを用いてレジストパターンを形成した後、塩化鉄エッチング液、塩化銅エッチング液、又はアルカリエッチャント等を用いて銅箔に対してエッチング処理を行う。これにより、ベースフィルム10上に配線パターン20の配線部21が形成される。なお、端子部22については、このステップS10において銅層23のみが形成される。本実施形態における銅層23が本発明における導体層の一例に相当する。
【0043】
なお、配線パターン20の形成方法は、特に上記に限定されない。例えば、セミアディティブ法のように、めっき処理によって配線パターンを形成してもよい。或いは、銀ペーストや銅ペースト等の導電性ペーストをベースフィルム上にスクリーン印刷することで、配線パターンを形成してもよい。
【0044】
次いで、図7のステップS20において、図8(b)に示すように、カバーレイ30をベースフィルム10上に積層し、ホットプレスによってこれらを加熱及び加圧することで、カバーレイ30をベースフィルム10に貼り付ける。この際、配線パターン20の配線部21は、カバーレイ30に全て覆われるが、当該配線パターン20の両端に位置する端子部22の銅層23は、カバーレイ30から露出している。
【0045】
次いで、図7のステップS30において、図8(c)に示すように、バフ研磨機のバフロール60を回転させながらプリント配線板に対して相対的に移動させて、配線パターン20の端子部22における銅層23の表面を研磨する。この研磨によって、銅層23上に存在する酸化物や有機物等の異物が除去される。また、端子部22のみならず、カバーレイ30の樹脂層31の表面311もバフ研磨機のバフロール60によって研磨され、当該樹脂層31の表面311に、1[μm]以上の深さを有する研磨傷312(図3(b)及び図4(b)参照)が多数形成される。
【0046】
このステップS30で使用されるバフロール60は、研磨剤を均一に付着させた布をロールに巻き付けて構成されている。研磨剤としては、例えば、酸化アルミ(Al)等のセラミックス微粒子やダイヤモンド微粒子を例示することができる。また、この研磨剤が付着される布としては、例えば、ナイロン製の布やポリプロピレン製の布等を例示することができる。
【0047】
なお、カバーレイ30の表面311に形成された多数の研磨傷312は、回転するバフロール60の前進/後退方向(図1における「バフ研磨方向」を参照)に対して実質的に平行に配置されており、相互に平行に配置されている。また、本実施形態では、図1に示すように、第1の折り曲げ線Cが、バフロール60の前進/後退方向に対して直交しているのに対し、第2の折り曲げ線Cが、バフロール60の前進/後退方向に対して実質的に平行となっている。
【0048】
次いで、図7のステップS40において、配線パターン20の端子部22における銅層23に対して前処理を行う。具体的には、先ず、端子部22の銅層23に対して脱脂洗浄処理を行うことで、銅層23の表面上の油性物質を除去する。次いで、端子部22の銅層23に対して酸処理を行うことで、銅層23上の酸化膜を除去する。なお、このステップS40における前処理の内容は一例に過ぎず、特にこれに限定されない。
【0049】
次いで、図7のステップS50において、電解ニッケルめっき処理によって、ニッケル層241(図2(b)参照)を端子部22における銅層23の表面に形成する。次いで、図7のステップS60において、電解金めっき処理によって、金層242(図2(b)参照)をニッケル層241の表面に形成する。これにより、図9(a)に示すように、銅層23上にめっき層24が形成され、端子部22が完成する。
【0050】
因みに、ステップS30において端子部22の銅層23の表面を研磨せずに、ステップS50において銅層23に対してめっき処理を行ってしまうと、銅層23とめっき層24との間の界面の密着性が低くなる場合がある。このため、端子部22における接触抵抗が高くなったり、コネクタ挿抜の繰り返しに対する端子部22の耐摩耗性が低下する場合がある。
【0051】
次いで、図7のステップS70において、図9(b)に示すように、第1の保護フィルム41を、カバーレイ30の表面311における第1の折り曲げ予定部分313に貼り付ける。特に図示しないが、同様に、第2の保護フィルム42も、カバーレイ30の表面311における第2の折り曲げ予定部分314に貼り付ける。これにより、本実施形態のプリント配線板1が完成する。
【0052】
本実施形態では、このステップS70において、カバーレイ30の折り曲げ予定部分313,314に保護フィルム41,42を貼り付けるので、保護フィルム41,42の接着層44が研磨傷312の内部に入り込んでいる(図4(b)参照)。このため、プリント配線板1を折り曲げ線C,Cで折り曲げた際に、研磨傷312を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板1の破断を回避することができる。
【0053】
また、本実施形態では、このステップS70において、カバーレイ30の全面に保護フィルムを貼り付けるのではなく、カバーレイ30の表面311において折り曲げ予定部分313,314のみに保護フィルム41,42を貼り付けるので、保護フィルムの使用量を減らすことができ、プリント配線板1の高コスト化を抑制することもできる。
【0054】
なお、上述のように、第1の折り曲げ線Cはバフロール60の前進/後退方向に対して非平行となっているのに対し、第2の折り曲げ線Cはバフロール60の前進/後退方向に対して平行となっていることから、第1の保護フィルム41を省略して第2の保護フィルム42のみをカバーレイ30に貼り付けてもよい。すなわち、カバーレイ30の表面311において、研磨傷312と実質的に同一の向きの折り曲げ線Cを含む折り曲げ予定部分314のみに、保護フィルム42を貼り付けてもよい。
【0055】
また、めっき処理の前(すなわちステップS30の後であってステップS40の前)に、ステップS70を行ってもよい。
【0056】
なお、本実施形態における図7のステップS10が本発明における第1の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS20が本発明における第2の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS30が本発明における第3の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS40〜S60が本発明における第4の工程の一例に相当し、本実施形態における図7のステップS70が本発明における第5の工程の一例に相当する。
【0057】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0058】
以下に、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態におけるプリント配線板の破断抑制効果を確認するためのものである。
【実施例】
【0059】
<実施例1>
実施例1では、実施形態において説明した図1に示すようなL型形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0060】
具体的には、先ず、厚さ25[μm]のポリイミドフィルム(ベースフィルム)に厚さ18[μm]の銅箔が積層され、図1中のS,Sがいずれも50[mm]、w,wが何れも10[mm]のL型形状の片面銅箔積層板を準備し、この銅箔上にレジストパターンを形成してから当該銅箔に対してエッチング処理を行うことで、0.1[mm]間隔で平行に配置されたL型の配線パターンを30本形成した。それぞれの配線パターンの幅は0.1[mm]とした。
【0061】
次いで、厚さ12.5[μm]のポリイミドフィルムに、厚さ30[μm]の熱硬化型接着剤を塗布したカバーレイを、配線パターンの両端がそれぞれ3[mm]露出するように、ベースフィルム上に積層し、ホットプレスにて165℃で70分間キュア処理することで、カバーレイをベースフィルムに貼り合わせた。
【0062】
次いで、当該プリント配線板の全面に対してバフ研磨処理を行った後、カバーレイの第1及び第2の折り曲げ予定部分に保護フィルムをそれぞれ貼り付けた。なお、バフ研磨処理では、粒度#1000の酸化アルミをナイロン布に付着させたバフロールを使用し、バフロールの前進/後退方向(バフ研磨方向)を、第2の折り曲げ線(図1における符号Cに相当)に対して平行とした。また、バフロールの回転数を1450[rpm]とし、送り速度を1.65[m/min]とし、バフロールの押圧力は、1.5〜2.0[mm]のフットマークが形成されるように設定した。また、保護フィルムとして、厚さ12.5[μm]のPETフィルムに、厚さ15[μm]の熱硬化型接着剤を塗布したフィルムを用いた。
【0063】
以上のように作製された10個のプリント配線板を、直径0.6[mm]のマンドレル(曲げ半径:0.3[mm])を用いて、第1の折り曲げ線(図1における符号Cに相当)を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、第1の保護フィルムを剥がし、顕微鏡を用いて、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分(図1における符号313に相当)を目視により観察した。
【0064】
また、第1の折り曲げ線と同様の条件で、10個のプリント配線板を第2の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、第2の保護フィルムを剥がし、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分(図1における符号314に相当)を観察した。
【0065】
この実施例1のサンプルでは、第1及び第2の折り曲げ予定部分のいずれについても、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0066】
<実施例2>
実施例2では、ストレートな形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0067】
この実施例2では、プリント配線板の全体形状を、全長が100[mm]、幅が10[mm]の短冊形状とし、配線パターンの形状も直線形状としたこと以外は、実施例1と同様である。但し、この実施例2では、カバーレイにおける折り曲げ予定部分を、当該カバーレイにおいて長手方向の中央部分の1箇所のみとし、カバーレイの中央部のみに保護フィルムを貼り付けた。また、バフロールの前進/後退方向(バフ研磨方向)をプリント配線板の幅方向に対して平行とした。
【0068】
この実施例2のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント基板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に保護フィルムを剥がし、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわちカバーレイの中央部分)を観察した。この実施例2のサンプルでも、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの折り曲げ予定部分にクラックは発生していなかった。
【0069】
<比較例1>
比較例1では、第1及び第2の保護フィルムをカバーレイに貼り付けなかった点を除いて、実施例1と同様のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0070】
この比較例1のサンプルについても、実施例1の同様の条件で、10個のプリント配線板を第1の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1回〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分を観察した。
【0071】
同様に、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を第2の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分を観察した。
【0072】
第1の折り曲げ予定部分については、第1の折り曲げ線の方向に対して、バフ研磨処理におけるバフロールの前進/後退方向が直交していたため、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0073】
一方、第2の折り曲げ予定部分については、プリント配線板を3回折り曲げた時点でカバーレイの樹脂層が破断し、プリント配線板を8回折り曲げた時点でカバーレイの接着層も破断して配線パターンが露出した。
【0074】
<比較例2>
比較例2では、保護フィルムをカバーレイに貼り付けなかった点を除いて、実施例2と同様のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0075】
この比較例2のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわちカバーレイの中央部分)を観察した。
【0076】
この比較例2のサンプルでは、上述の比較例1における第2の折り曲げ予定部分と同様に、プリント配線板を3回折り曲げた時点でカバーレイの樹脂層が破断し、プリント配線板を8回折り曲げた時点でカバーレイの接着層も破断して配線パターンが露出した。
【0077】
以上のように、保護フィルムを貼り付けた実施例1及び実施例2では、折り曲げに伴うクラックの発生を抑制することができた。これに対し、保護フィルムを貼り付けていない比較例1及び比較例2では、カバーレイの表面においてバフロールの前進/後退方向に沿った折り曲げ線を含む折り曲げ予定部分にクラックが発生した。
【符号の説明】
【0078】
1…プリント配線板
10…ベースフィルム
20…配線パターン
21…配線部
22…端子部
23…銅層
24…めっき層
241…ニッケル層
242…金層
30…カバーレイ
31…樹脂層
311…表面
312…研磨傷
313,314…折り曲げ予定部分
32…接着層
41,42…保護フィルム
43…基材
44…接着層
50…保護層
60…バフロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、端子部を有する配線パターンと、
前記絶縁層に積層され、前記端子部を露出させつつ前記配線パターンを覆う被覆層と、を備えたプリント配線板であって、
前記被覆層の表面に複数の研磨傷が形成されており、
前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分に保護層が形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記保護層は、前記研磨傷の内部に入り込んでいることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント配線板であって、
前記保護層は、
基材と、
前記基材に積層された接着層と、を有しており、
前記接着層は、前記研磨傷の内部に入り込んでいることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプリント配線板であって、
前記保護層は、前記被覆層の表面に塗布され硬化したインクから形成されており、
前記インクは、前記研磨傷の内部に入り込んでいることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のプリント配線板であって、
前記プリント配線板は、前記折り曲げ予定部分で折り曲げられていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
絶縁層上に配線パターンの導体層を形成する第1の工程と、
被覆層を前記絶縁層に積層して、前記導体層の一部を前記被覆層から露出させつつ前記導体層を前記被覆層で覆う第2の工程と、
少なくとも前記導体層の露出部分を機械的に研磨する第3の工程と、
前記導体層の露出部分に対してめっき処理を行って、前記導体層の上にめっき層を形成する第4の工程と、
前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分に保護層を形成する第5の工程と、を備えており、
前記第5の工程は、前記第3の工程と第4の工程との間、又は、前記第4の工程の後に実行されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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