プリント配線板及び電気機器
【課題】電源層とグランド層との各パターンから発生する不要電磁放射を抑制すること。
【解決手段】電子部品を搭載していないプリント配線板10自体の共振周波数fとほぼ同一の共振周波数を有するバイパスコンデンサ18を、プリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に搭載する。
【解決手段】電子部品を搭載していないプリント配線板10自体の共振周波数fとほぼ同一の共振周波数を有するバイパスコンデンサ18を、プリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に搭載する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばICチップ、トランジスタ、抵抗、コンデンサなどを搭載し、数十MHz以上の高周波信号が伝播するプリント配線板及びこのプリント基板を備えた電気機器に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロプロセッサを搭載したデジタル機器では、マイクロプロセッサの動作速度の高速化とともに、マイクロプロセッサと他のICチップとの間の信号伝送速度も高速化している。例えば、パーソナルコンピュータを例にとると、マイクロプロセッサの動作周波数は600MHzを超えている。
【0003】このようなマイクロプロセッサを搭載したプリント配線板では、マイクロプロセッサとメモリとの間にダイレクトRAMBUSメモリの採用が予定されており、これを用いるとプリント基板上を伝播する信号は、マイクロプロセッサとメモリとの間において400MHzの高周波に達する勢いである。但し、現状ではSDRAMが主流であり、周波数は100MHzから133MHzへと高くしようとしている。
【0004】このようなプリント配線板上を伝播するクロック信号は、ディジタル信号であることから高調波成分を有しており、実際にプリント配線板上を伝播する信号の周波数はクロック周波数よりもさらに高周波の信号が伝播することになる。このように高周波の信号が伝播すると、プリント配線板ではノイズ対策、特に電源系のノイズが重要になってくる。
【0005】このノイズ対策について図11に示すプリント配線板上の回路図を参照して説明する。プリント配線板上には、複数の回路ブロック100、101、103が形成され、これら回路ブロック100、101、103に対して電源回路104から電力供給を行うようになっている。通常の電子機器では、プリント配線板上の各回路に対して、装置内部の電源回路又は電池等から導体を介して電力が供給されている。例えば、パーソナルコンピュータでは、電源回路がプリント配線板の電源層、グランド層に接続され、プリント配線板に搭載された各回路ブロックや電子部品に電力を供給している。
【0006】電源回路104から各回路ブロック100、101、103までの各距離は、個々の回路ブロック100、101、103により異なり、このうちプリント配線板の端部に搭載された回路ブロック100、101又は103では非常に長くなる。この電源回路104から各回路ブロック100、101又は103までの距離が長くなることは、電源回路104からグランド層を通して流れる巨大な電流ループが形成されることを意味する。
【0007】パーソナルコンピュータに用いられるプリント配線板について考察すると、上記電流ループ長は、プリント配線板上を伝播する信号の波長に対して無視できない大きさになっている。この場合、各回路ブロック100、101、103に対して十分な電流供給ができなくなり、正常な動作が期待できなくなる。
【0008】この対策として、各回路ブロック100、101、103の近傍(通常は、ICチップの近傍)にコンデンサ(後述するデカップリングコンデンサ)105を接続し、このコンデンサ105を電源供給源として作用させている。これにより、各回路ブロック100、101、103ごとにそれぞれ電源を設置したのと等価となり、電源の電流ループを小さくし、高速動作を可能にしている。上記コンデンサ105は、各回路ブロック100、101、103の電源を等価的に分離する作用をすることから、デカップリング・コンデンサと呼ばれる。
【0009】高周波では、電源層、グランド層のインダクタンス成分に起因したグランドバウンスの影響が深刻になるため、デカップリング・コンデンサ105の働きが重要になる。このデカップリング・コンデンサ105は、ICチップへの電力供給を目的としているので、一般的に0.1μF、0.01μFなどの容量の大きなコンデンサが選択される。
【0010】一方、電源層、グランド層を流れる電流により発生する電磁波障害(EMI:Electro-Magnetic-Interference)は、その対策が困難であることや、その周波数が電子機器の動作周波数に近いこと、そのレベルが大きいことなどにより問題となっている。
【0011】電源層、グランド層から放射される電磁波は、これら電源層、グランド層の金属パターンの形状によって周波数が決まる。例えば、図12(a)(b)に示すように電源層106及びグランド層107からなるプリント配線板108において、電源層106及びグランド層107の辺の長さがa、bの長方形で、かつこれら電源層106とグランド層107とが対向している場合の共振周波数fは、 f={c/2π・(εf)1/2}・k …(1) k2=(mπ/a)2+(nπ/b)2により表される。
【0012】ここで、m=0,1,2,… n=0,1,2,…c:真空中の光速2.998×108m/sεf:誘電体の比誘電率
【0013】
【発明が解決しようとする課題】共振周波数fにおいては、放射電磁波の強度が大きくなるため、この放射電磁波による何らかのEMI対策が必要になる。先に述べたデカップリング・コンデンサ4は、プリント配線板の共振周波数をより高い周波数に移行させる効果があるが、EMI対策の観点から十分とはいえない。
【0014】EMIの効果的な対策としては、例えば電源層とグランド層との間に損失を加える方法がある。この方法として例えば特開平6−132668号公報には、電源層とグランド層との間にダンピング素子を接続して不要な電磁波の放射を抑制する方法が記載されている。又、特開平10−190237号公報には、電源層とグランド層との間に抵抗体を挿入し、不要な電磁波を前記抵抗体で吸収する方法が記載されている。
【0015】しかしながら、これらの対策は、プリント配線板への搭載部品が増加したり、プリント配線板の構造が複雑となり、プリント配線板をコストアップさせる等の問題がある。
【0016】そこで本発明は、電源層とグランド層との各パターンの間の共振から発生する不要電磁放射を抑制することができるプリント配線板を提供することを目的とする。
【0017】又、本発明は、不要な電磁波を抑制して安定した動作ができる電気機器を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、少なくとも1個のICチップが搭載され、かつ電源層及びグランド層が少なくとも1層づつ形成されたプリント配線板において、電源層とグランド層とに接続される少なくとも1つのバイパスコンデンサを備えたプリント配線板である。
【0019】請求項2記載の本発明は、請求項1記載のプリント配線板において、バイパスコンデンサは、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンス値がプリント配線板自体の共振周波数に略一致するものである。
【0020】請求項3記載の本発明は、請求項1記載のプリント配線板において、バイパスコンデンサを、コンデンサ成分とインダクタンス成分からなる等価回路で表わしたときのコンデンサ成分単体、インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に、電源層、グランド層のパターン形状で定まる電源層とグランド層との間の共振周波数の少なくとも1つの周波数が含まれるようにプリント配線板とバイパスコンデンサとを組み合わされたものである。
【0021】請求項4記載の本発明は、請求項3記載のプリント配線板において、コンデンサ成分単体、インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に含まれる電源層、グランド層のパターン形状で定まる電源層とグランド層との間の共振周波数は、基本周波数である。
【0022】請求項5記載の本発明は、請求項3記載のプリント配線板において、コンデンサ成分単体、インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲が、電源層、グランド層のパターン形状で定まる電源とグランド層との間の共振周波数のうち異なる共振周波数を包含するようにバイパスコンデンサを選択又は組み合わされている。
【0023】請求項6記載の本発明は、請求項1記載のプリント配線板において、バイパスコンデンサは、ICチップを取り囲むように複数配置されているものである。
【0024】請求項7記載の本発明は、請求項1乃至6のうちいずれか1項記載のプリント配線板を備えた電気機器である。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】図1はプリント配線板の構成図である。このプリント配線板10には、少なくともICチップQやトランジスタ、抵抗、コンデンサなど電子部品が搭載されている。通常、電子機器に用いられるプリント配線板10は、複数の導体層を有しており、特に高周波信号を扱うプリント配線板10では、電源層11とグランド層11とに専用の各層が設けられている。実際のプリント配線板10には、信号を伝播するための信号配線層(不図示)が存在する。
【0027】以下、電源層11及びグランド層12のみを有するプリント配線板10について説明する。電源層11とグランド層12との間の共振現象を考える場合、信号配線層の影響は小さいので、他の部分は考慮しない。
【0028】図2(a)(b)は電源層11及びグランド層12のみを有するプリント配線板10の構成図である。このプリント配線板10は、上記の如く電源層11、グランド層12、パッド層13、スルーホールランド層14からなる導体層4層の基板である。これら層11〜14を形成する導体は銅からなり、絶縁体15はガラス・エポキシからなる一般的なプリント配線板である。パッド層13にはパーソナルコンピュータ用チップ部品が接続されるパッド16が形成され、電源層11とグランド層12との間には抵抗やコンデンサなどの素子を接続することができるようになっている。
【0029】又、プリント配線板10には、Sパラメータ測定を行うことができるように同軸コネクタを搭載するための給電用同軸コネクタパッド17が形成されている。
【0030】電源層11及びグランド層12は、それぞれ例えば182mm×182mmの正方形に形成されている。なお、電源層11とグランド層12との間隔は0.3mm、プリント配線板10の厚さは0.7mmである。
【0031】このように電源層11とグランド層12との各平行平板の金属導体が対向して配置されているときの共振周波数fは、上記式(1)により表される。上記図2に示すプリント配線板10に対して上記式(1)より計算される共振周波数fを表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】最も低い共振周波数fは、例えばパーソナルコンピュータのMPU(Microprocessing Unit)の動作周波数と同程度であり、何らかの干渉を引き起こすことが懸念される。
【0034】上記表1に示すプリント配線板10の共振周波数fにおいて、プリント配線板10は、電磁波を放射するアンテナとしての効率が他の周波数よりも大きくなり、EMIの問題を引き起こす可能性がある。プリント配線板のEMIを評価する方法としては例えばSパラメータを用いる方法がある。
【0035】このSパラメータは、反射係数の概念を2端子対網に拡張したものであり、高周波測定においては一般的に用いられる概念である。Sパラメータは、プリント配線板10から放射される電磁波を直接測定するものではないが、Sパラメータと放射電磁波とに相関があることが報告されている。上記図2に示すプリント配線板10の場合、共振点におけるSパラメータのレベルが小さい方が放射電磁波は大きくなる。
【0036】図3は上記図2に示すプリント配線板10に同軸コネクタを接続し、かつプリント配線板10の4隅にそれぞれ容量の異なる各バイパスコンデンサ18、例えばバイパスコンデンサ無し、容量0.01μF×4、容量47pF×4、容量10pF×4の各バイパスコンデンサを搭載したときのSパラメータ(Sll)の測定結果を示す。又、図4は図3に示したSパラメータの共振周波数におけるピーク値を示す。
【0037】バイパスコンデンサ18が無い場合は、上記表1の共振周波数fにおいて、Sパラメータに急激な減少が生じている。バイパスコンデンサ18をプリント配線板10に搭載することにより、バイパスコンデンサ18を含めたプリント配線板10全体のインピーダンスが変化し、共振周波数fとこの共振周波数fにおけるSパラメータの大きさが変化している。
【0038】デカップリング・コンデンサとして一般的に使用されている容量0.01μFのコンデンサを搭載した場合は、共振のピークの絶対値(以下単にピーク値という場合はその絶対値を意味する)が小さくなるが、周波数150MHz付近で新たな共振が発生する。容量が10pFの場合は、バイパスコンデンサ18が無い場合とほとんど変化がない。
【0039】容量が47pFの場合は、基本周波数以外のピーク値はほぼ全て減少している。すなわち、容量が47pFの場合は、バイパスコンデンサ18が無い場合と比較して略1dB低下している。
【0040】このようなSパラメータの変化は次のように考察される。プリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に接続されたバイパスコンデンサ18は、電源層11とグランド層12との間を特定のインピーダンスで接続する。このインピーダンスが充分小さければ、バイパスコンデンサ18を搭載した位置は振動し難くなるため共振のピーク値が小さくなり、共振周波数fの値が変化する。
【0041】図5及び図6はインピーダンスー周波数特性を示すもので、図5は容量0.01μFのコンデンサに対応し、図6は容量10pF、47pFのコンデンサに対応する。図5から分かるように通常デカッブリング・コンデンサとして使用される容量の大きなコンデンサは、低周波ではインピーダンスが低いが、上記表1に示す共振周波数fの領域ではインピーダンスは大きくなっている。
【0042】これとは反対に図6に示す容量の小さいコンデンサのほうがインピーダンスが小さくなっている。コンデンサは、電極のインダクタンスと容量の直列回路で表されるので、コンデンサ自身の共振周波数において最もインピーダンスが小さくなる。
【0043】従って、電子部品を搭載していないプリント配線板10自体の共振周波数fとほぼ同一の共振周波数を有するバイパスコンデンサ18を搭載することが、電源層11とグランド層12との間の共振を抑制するためには効果的であることが分かる。
【0044】容量47pFのバイパスコンデンサ18は、500MHz〜1GHzの周波数帯域で他のコンデンサよりもインピーダンスが小さいので、電源層11とグランド層12との間の共振の抑制に効果があったものと考えられる。
【0045】バイパスコンデンサ18のインピーダンスが小さい周波数範囲は、共振周波数の近傍の周波数帯であるので、1種類のコンデンサのみで表1に示した全ての共振周波数fに対処することはできない。従って、特性の異なる複数のコンデンサを搭載することが考えられる。
【0046】図7は特性の異なる各バイパスコンデンサ18を搭載したときのSパラメータを示す。同図では、容量47pFと容量0.01μFのバイパスコンデンサ18を組み合わせた場合、全てのピーク値が0.01μF単独のコンデンサよりも小さくなっている。
【0047】従って、プリント配線板10とバイパスコンデンサ18との組み合わせとすることにより、全ての周波数範囲において電磁放射を小さくできることが分かる。
【0048】以上のように本発明のプリント配線板10は、少なくとも1個のICチップQを搭載し、電源層11及びグランド層12を少なくとも1層づつ含むプリント配線板10において、電源層11とグランド層12のパターンに接続される少なくとも1つのバイパスコンデンサ18を備える。
【0049】このバイパスコンデンサ18は、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンス値がプリント配線板10自体の共振周波数fに略一致することが好ましい。
【0050】この場合、バイパスコンデンサ18をコンデンサ成分とインダクタンス成分からなる等価回路で表すと、このときのコンデンサ成分単体とインダクタンス成分単体との各インピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続したときの等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲内に、電源層11及びグランド層12のパターン形状で定まる電源層11とグランド層12との間の共振周波数の少なくとも1つの周波数が含まれる範囲内にプリント配線板10とバイパスコンデンサ18とを組み合わせるようにする。
【0051】一般に、バイパスコンデンサ18は、電極の導体と電極間に形成される誘電体とからなり、等価回路で表すと、図8に示すようにインダクタンス成分(コンデンサ電極インダクタンス)20とコンデンサ成分(コンデンサ容量)21との直列接続回路となる。
【0052】コンデンサ容量21の周波数特性は、図9に示すように共振周波数fにおいてインピーダンスが最小となる。同図からプリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に接続するバイパスコンデンサ18は、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンスの最小値がプリント配線板10自体の共振周波数fに一致するものが最良となる。
【0053】このようなバイパスコンデンサ18をプリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に接続すると、共振周波数fにおいては電源層11とグランド層12とを短絡したことと等価になる。
【0054】従って、上記図2に示すプリント配線板10に、プリント配線板10の共振周波数f近傍で共振するバイパスコンデンサ18を搭載すると、電源層11及びグランド層12の振動面積が実効的に小さくなり、プリント配線板10の共振周波数fにおける不要電磁波の放射を減少させることができる。
【0055】プリント配線板10にバイパスコンデンサ18を搭載した構造体全体の共振周波数はより高周波側に移動するが、高周波においてはプリント配線板10の誘電体の損失等により不要電磁波の放射レベルはさほど大きくならない。しかるに、バイパスコンデンサ18を適切に選択するだけで、プリン卜配線板10の電源層11及びグランド層12から放射される不要電磁波を減少させることができる。
【0056】ここで、バイパスコンデンサ18の配置は、図10(a)〜(d)に示すように種々の配置が使用される。同図(a)はバイパスコンデンサ18を給電用同軸コネクタパッド17を取り囲むように配置するもので、この配置によりプリント配線板10の電源層11及びグランド層12の実効的な大きさを減少させたことと等価になり、より放射電磁波を減少できる。
【0057】同図(b)はバイパスコンデンサ18をプリント配線板10の縦横方向に所定の間隔をおいて複数配置したものであり、同図(c)は同図(b)に示すバイパスコンデンサ18の配置に加えてプリント配線板10の中央とプリント配線板10の各辺の中央に配置したものである。同図(d)はバイパスコンデンサ18をプリント配線板10の任意の位置に配置したものである。又、図10(a)〜(d)における給電点は、実際のプリント配線板10ではICチップQに相当する。
【0058】このように上記一実施の形態によれば、特別なEMI対策部品をプリント配線板10に搭載することなく、プリント配線板10の電源層11及びグランド層12の共振現象により放射される不要電磁波を抑制することができる。
【0059】又、このプリント配線板10を各種電気機器に用いれば、電気機器において不要な電磁波を抑制して安定した動作を行わせることができる。
【0060】なお、本発明は、上記一実施の形態に限定されるものでなく次の通りに変形してもよい。
【0061】例えば、プリント配線板10は、その形状が正方形に形成されているものに限らず、不定形の形状に形成されていてもよい。この不定形の形状のプリント配線板に接続するバイパスコンデンサでも、上記一実施の形態と同様に周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンスの最小値がプリント配線板自体の共振周波数に一致するものである。不定形の形状のプリント配線板の共振周波数は、電磁界シミュレーションを用いて求めることができる。
【0062】
【発明の効果】以上詳記したように本発明によれば、電源層とグランド層との各パターンから発生する不要電磁放射を抑制することができるプリント配線板を提供できる。
【0063】又、本発明によれば、不要な電磁波を抑制して安定した動作ができる電気機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態を示す外観図。
【図2】本発明に係わる電源層及びグランド層のみを有するプリント配線板の一実施の形態を示す構成図。
【図3】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態においてバイパスコンデンサを搭載したときのSパラメータの測定結果を示す図。
【図4】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるSパラメータの共振周波数におけるピーク値を示す図。
【図5】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるインピーダンス−周波数特性を示す図。
【図6】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるインピーダンス−周波数特性を示す図。
【図7】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態における特性の異なる各バイパスコンデンサを搭載したときのSパラメータを示す図。
【図8】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるバイパスコンデンサをインダクタンス成分とコンデンサ成分とにより等価的に表した直列接続回路。
【図9】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるコンデンサ容量の周波数特性を示す図。
【図10】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるバイパスコンデンサの配置例を示す図。
【図11】従来におけるノイズ対策を説明するためのプリント配線板上の回路図。
【図12】従来における電源層、グランド層から放射される電磁波を説明するためのプリント配線板の構成図。
【符号の説明】
10:プリント配線板
11:電源層
12:グランド層
13:パッド層
14:スルーホールランド層
15:絶縁体
16:パッド
17:給電用同軸コネクタパッド
18:バイパスコンデンサ
Q:ICチップ
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばICチップ、トランジスタ、抵抗、コンデンサなどを搭載し、数十MHz以上の高周波信号が伝播するプリント配線板及びこのプリント基板を備えた電気機器に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロプロセッサを搭載したデジタル機器では、マイクロプロセッサの動作速度の高速化とともに、マイクロプロセッサと他のICチップとの間の信号伝送速度も高速化している。例えば、パーソナルコンピュータを例にとると、マイクロプロセッサの動作周波数は600MHzを超えている。
【0003】このようなマイクロプロセッサを搭載したプリント配線板では、マイクロプロセッサとメモリとの間にダイレクトRAMBUSメモリの採用が予定されており、これを用いるとプリント基板上を伝播する信号は、マイクロプロセッサとメモリとの間において400MHzの高周波に達する勢いである。但し、現状ではSDRAMが主流であり、周波数は100MHzから133MHzへと高くしようとしている。
【0004】このようなプリント配線板上を伝播するクロック信号は、ディジタル信号であることから高調波成分を有しており、実際にプリント配線板上を伝播する信号の周波数はクロック周波数よりもさらに高周波の信号が伝播することになる。このように高周波の信号が伝播すると、プリント配線板ではノイズ対策、特に電源系のノイズが重要になってくる。
【0005】このノイズ対策について図11に示すプリント配線板上の回路図を参照して説明する。プリント配線板上には、複数の回路ブロック100、101、103が形成され、これら回路ブロック100、101、103に対して電源回路104から電力供給を行うようになっている。通常の電子機器では、プリント配線板上の各回路に対して、装置内部の電源回路又は電池等から導体を介して電力が供給されている。例えば、パーソナルコンピュータでは、電源回路がプリント配線板の電源層、グランド層に接続され、プリント配線板に搭載された各回路ブロックや電子部品に電力を供給している。
【0006】電源回路104から各回路ブロック100、101、103までの各距離は、個々の回路ブロック100、101、103により異なり、このうちプリント配線板の端部に搭載された回路ブロック100、101又は103では非常に長くなる。この電源回路104から各回路ブロック100、101又は103までの距離が長くなることは、電源回路104からグランド層を通して流れる巨大な電流ループが形成されることを意味する。
【0007】パーソナルコンピュータに用いられるプリント配線板について考察すると、上記電流ループ長は、プリント配線板上を伝播する信号の波長に対して無視できない大きさになっている。この場合、各回路ブロック100、101、103に対して十分な電流供給ができなくなり、正常な動作が期待できなくなる。
【0008】この対策として、各回路ブロック100、101、103の近傍(通常は、ICチップの近傍)にコンデンサ(後述するデカップリングコンデンサ)105を接続し、このコンデンサ105を電源供給源として作用させている。これにより、各回路ブロック100、101、103ごとにそれぞれ電源を設置したのと等価となり、電源の電流ループを小さくし、高速動作を可能にしている。上記コンデンサ105は、各回路ブロック100、101、103の電源を等価的に分離する作用をすることから、デカップリング・コンデンサと呼ばれる。
【0009】高周波では、電源層、グランド層のインダクタンス成分に起因したグランドバウンスの影響が深刻になるため、デカップリング・コンデンサ105の働きが重要になる。このデカップリング・コンデンサ105は、ICチップへの電力供給を目的としているので、一般的に0.1μF、0.01μFなどの容量の大きなコンデンサが選択される。
【0010】一方、電源層、グランド層を流れる電流により発生する電磁波障害(EMI:Electro-Magnetic-Interference)は、その対策が困難であることや、その周波数が電子機器の動作周波数に近いこと、そのレベルが大きいことなどにより問題となっている。
【0011】電源層、グランド層から放射される電磁波は、これら電源層、グランド層の金属パターンの形状によって周波数が決まる。例えば、図12(a)(b)に示すように電源層106及びグランド層107からなるプリント配線板108において、電源層106及びグランド層107の辺の長さがa、bの長方形で、かつこれら電源層106とグランド層107とが対向している場合の共振周波数fは、 f={c/2π・(εf)1/2}・k …(1) k2=(mπ/a)2+(nπ/b)2により表される。
【0012】ここで、m=0,1,2,… n=0,1,2,…c:真空中の光速2.998×108m/sεf:誘電体の比誘電率
【0013】
【発明が解決しようとする課題】共振周波数fにおいては、放射電磁波の強度が大きくなるため、この放射電磁波による何らかのEMI対策が必要になる。先に述べたデカップリング・コンデンサ4は、プリント配線板の共振周波数をより高い周波数に移行させる効果があるが、EMI対策の観点から十分とはいえない。
【0014】EMIの効果的な対策としては、例えば電源層とグランド層との間に損失を加える方法がある。この方法として例えば特開平6−132668号公報には、電源層とグランド層との間にダンピング素子を接続して不要な電磁波の放射を抑制する方法が記載されている。又、特開平10−190237号公報には、電源層とグランド層との間に抵抗体を挿入し、不要な電磁波を前記抵抗体で吸収する方法が記載されている。
【0015】しかしながら、これらの対策は、プリント配線板への搭載部品が増加したり、プリント配線板の構造が複雑となり、プリント配線板をコストアップさせる等の問題がある。
【0016】そこで本発明は、電源層とグランド層との各パターンの間の共振から発生する不要電磁放射を抑制することができるプリント配線板を提供することを目的とする。
【0017】又、本発明は、不要な電磁波を抑制して安定した動作ができる電気機器を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、少なくとも1個のICチップが搭載され、かつ電源層及びグランド層が少なくとも1層づつ形成されたプリント配線板において、電源層とグランド層とに接続される少なくとも1つのバイパスコンデンサを備えたプリント配線板である。
【0019】請求項2記載の本発明は、請求項1記載のプリント配線板において、バイパスコンデンサは、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンス値がプリント配線板自体の共振周波数に略一致するものである。
【0020】請求項3記載の本発明は、請求項1記載のプリント配線板において、バイパスコンデンサを、コンデンサ成分とインダクタンス成分からなる等価回路で表わしたときのコンデンサ成分単体、インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に、電源層、グランド層のパターン形状で定まる電源層とグランド層との間の共振周波数の少なくとも1つの周波数が含まれるようにプリント配線板とバイパスコンデンサとを組み合わされたものである。
【0021】請求項4記載の本発明は、請求項3記載のプリント配線板において、コンデンサ成分単体、インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に含まれる電源層、グランド層のパターン形状で定まる電源層とグランド層との間の共振周波数は、基本周波数である。
【0022】請求項5記載の本発明は、請求項3記載のプリント配線板において、コンデンサ成分単体、インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲が、電源層、グランド層のパターン形状で定まる電源とグランド層との間の共振周波数のうち異なる共振周波数を包含するようにバイパスコンデンサを選択又は組み合わされている。
【0023】請求項6記載の本発明は、請求項1記載のプリント配線板において、バイパスコンデンサは、ICチップを取り囲むように複数配置されているものである。
【0024】請求項7記載の本発明は、請求項1乃至6のうちいずれか1項記載のプリント配線板を備えた電気機器である。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】図1はプリント配線板の構成図である。このプリント配線板10には、少なくともICチップQやトランジスタ、抵抗、コンデンサなど電子部品が搭載されている。通常、電子機器に用いられるプリント配線板10は、複数の導体層を有しており、特に高周波信号を扱うプリント配線板10では、電源層11とグランド層11とに専用の各層が設けられている。実際のプリント配線板10には、信号を伝播するための信号配線層(不図示)が存在する。
【0027】以下、電源層11及びグランド層12のみを有するプリント配線板10について説明する。電源層11とグランド層12との間の共振現象を考える場合、信号配線層の影響は小さいので、他の部分は考慮しない。
【0028】図2(a)(b)は電源層11及びグランド層12のみを有するプリント配線板10の構成図である。このプリント配線板10は、上記の如く電源層11、グランド層12、パッド層13、スルーホールランド層14からなる導体層4層の基板である。これら層11〜14を形成する導体は銅からなり、絶縁体15はガラス・エポキシからなる一般的なプリント配線板である。パッド層13にはパーソナルコンピュータ用チップ部品が接続されるパッド16が形成され、電源層11とグランド層12との間には抵抗やコンデンサなどの素子を接続することができるようになっている。
【0029】又、プリント配線板10には、Sパラメータ測定を行うことができるように同軸コネクタを搭載するための給電用同軸コネクタパッド17が形成されている。
【0030】電源層11及びグランド層12は、それぞれ例えば182mm×182mmの正方形に形成されている。なお、電源層11とグランド層12との間隔は0.3mm、プリント配線板10の厚さは0.7mmである。
【0031】このように電源層11とグランド層12との各平行平板の金属導体が対向して配置されているときの共振周波数fは、上記式(1)により表される。上記図2に示すプリント配線板10に対して上記式(1)より計算される共振周波数fを表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】最も低い共振周波数fは、例えばパーソナルコンピュータのMPU(Microprocessing Unit)の動作周波数と同程度であり、何らかの干渉を引き起こすことが懸念される。
【0034】上記表1に示すプリント配線板10の共振周波数fにおいて、プリント配線板10は、電磁波を放射するアンテナとしての効率が他の周波数よりも大きくなり、EMIの問題を引き起こす可能性がある。プリント配線板のEMIを評価する方法としては例えばSパラメータを用いる方法がある。
【0035】このSパラメータは、反射係数の概念を2端子対網に拡張したものであり、高周波測定においては一般的に用いられる概念である。Sパラメータは、プリント配線板10から放射される電磁波を直接測定するものではないが、Sパラメータと放射電磁波とに相関があることが報告されている。上記図2に示すプリント配線板10の場合、共振点におけるSパラメータのレベルが小さい方が放射電磁波は大きくなる。
【0036】図3は上記図2に示すプリント配線板10に同軸コネクタを接続し、かつプリント配線板10の4隅にそれぞれ容量の異なる各バイパスコンデンサ18、例えばバイパスコンデンサ無し、容量0.01μF×4、容量47pF×4、容量10pF×4の各バイパスコンデンサを搭載したときのSパラメータ(Sll)の測定結果を示す。又、図4は図3に示したSパラメータの共振周波数におけるピーク値を示す。
【0037】バイパスコンデンサ18が無い場合は、上記表1の共振周波数fにおいて、Sパラメータに急激な減少が生じている。バイパスコンデンサ18をプリント配線板10に搭載することにより、バイパスコンデンサ18を含めたプリント配線板10全体のインピーダンスが変化し、共振周波数fとこの共振周波数fにおけるSパラメータの大きさが変化している。
【0038】デカップリング・コンデンサとして一般的に使用されている容量0.01μFのコンデンサを搭載した場合は、共振のピークの絶対値(以下単にピーク値という場合はその絶対値を意味する)が小さくなるが、周波数150MHz付近で新たな共振が発生する。容量が10pFの場合は、バイパスコンデンサ18が無い場合とほとんど変化がない。
【0039】容量が47pFの場合は、基本周波数以外のピーク値はほぼ全て減少している。すなわち、容量が47pFの場合は、バイパスコンデンサ18が無い場合と比較して略1dB低下している。
【0040】このようなSパラメータの変化は次のように考察される。プリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に接続されたバイパスコンデンサ18は、電源層11とグランド層12との間を特定のインピーダンスで接続する。このインピーダンスが充分小さければ、バイパスコンデンサ18を搭載した位置は振動し難くなるため共振のピーク値が小さくなり、共振周波数fの値が変化する。
【0041】図5及び図6はインピーダンスー周波数特性を示すもので、図5は容量0.01μFのコンデンサに対応し、図6は容量10pF、47pFのコンデンサに対応する。図5から分かるように通常デカッブリング・コンデンサとして使用される容量の大きなコンデンサは、低周波ではインピーダンスが低いが、上記表1に示す共振周波数fの領域ではインピーダンスは大きくなっている。
【0042】これとは反対に図6に示す容量の小さいコンデンサのほうがインピーダンスが小さくなっている。コンデンサは、電極のインダクタンスと容量の直列回路で表されるので、コンデンサ自身の共振周波数において最もインピーダンスが小さくなる。
【0043】従って、電子部品を搭載していないプリント配線板10自体の共振周波数fとほぼ同一の共振周波数を有するバイパスコンデンサ18を搭載することが、電源層11とグランド層12との間の共振を抑制するためには効果的であることが分かる。
【0044】容量47pFのバイパスコンデンサ18は、500MHz〜1GHzの周波数帯域で他のコンデンサよりもインピーダンスが小さいので、電源層11とグランド層12との間の共振の抑制に効果があったものと考えられる。
【0045】バイパスコンデンサ18のインピーダンスが小さい周波数範囲は、共振周波数の近傍の周波数帯であるので、1種類のコンデンサのみで表1に示した全ての共振周波数fに対処することはできない。従って、特性の異なる複数のコンデンサを搭載することが考えられる。
【0046】図7は特性の異なる各バイパスコンデンサ18を搭載したときのSパラメータを示す。同図では、容量47pFと容量0.01μFのバイパスコンデンサ18を組み合わせた場合、全てのピーク値が0.01μF単独のコンデンサよりも小さくなっている。
【0047】従って、プリント配線板10とバイパスコンデンサ18との組み合わせとすることにより、全ての周波数範囲において電磁放射を小さくできることが分かる。
【0048】以上のように本発明のプリント配線板10は、少なくとも1個のICチップQを搭載し、電源層11及びグランド層12を少なくとも1層づつ含むプリント配線板10において、電源層11とグランド層12のパターンに接続される少なくとも1つのバイパスコンデンサ18を備える。
【0049】このバイパスコンデンサ18は、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンス値がプリント配線板10自体の共振周波数fに略一致することが好ましい。
【0050】この場合、バイパスコンデンサ18をコンデンサ成分とインダクタンス成分からなる等価回路で表すと、このときのコンデンサ成分単体とインダクタンス成分単体との各インピーダンスよりも、コンデンサ成分とインダクタンス成分とを直列接続したときの等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲内に、電源層11及びグランド層12のパターン形状で定まる電源層11とグランド層12との間の共振周波数の少なくとも1つの周波数が含まれる範囲内にプリント配線板10とバイパスコンデンサ18とを組み合わせるようにする。
【0051】一般に、バイパスコンデンサ18は、電極の導体と電極間に形成される誘電体とからなり、等価回路で表すと、図8に示すようにインダクタンス成分(コンデンサ電極インダクタンス)20とコンデンサ成分(コンデンサ容量)21との直列接続回路となる。
【0052】コンデンサ容量21の周波数特性は、図9に示すように共振周波数fにおいてインピーダンスが最小となる。同図からプリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に接続するバイパスコンデンサ18は、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンスの最小値がプリント配線板10自体の共振周波数fに一致するものが最良となる。
【0053】このようなバイパスコンデンサ18をプリント配線板10の電源層11とグランド層12との間に接続すると、共振周波数fにおいては電源層11とグランド層12とを短絡したことと等価になる。
【0054】従って、上記図2に示すプリント配線板10に、プリント配線板10の共振周波数f近傍で共振するバイパスコンデンサ18を搭載すると、電源層11及びグランド層12の振動面積が実効的に小さくなり、プリント配線板10の共振周波数fにおける不要電磁波の放射を減少させることができる。
【0055】プリント配線板10にバイパスコンデンサ18を搭載した構造体全体の共振周波数はより高周波側に移動するが、高周波においてはプリント配線板10の誘電体の損失等により不要電磁波の放射レベルはさほど大きくならない。しかるに、バイパスコンデンサ18を適切に選択するだけで、プリン卜配線板10の電源層11及びグランド層12から放射される不要電磁波を減少させることができる。
【0056】ここで、バイパスコンデンサ18の配置は、図10(a)〜(d)に示すように種々の配置が使用される。同図(a)はバイパスコンデンサ18を給電用同軸コネクタパッド17を取り囲むように配置するもので、この配置によりプリント配線板10の電源層11及びグランド層12の実効的な大きさを減少させたことと等価になり、より放射電磁波を減少できる。
【0057】同図(b)はバイパスコンデンサ18をプリント配線板10の縦横方向に所定の間隔をおいて複数配置したものであり、同図(c)は同図(b)に示すバイパスコンデンサ18の配置に加えてプリント配線板10の中央とプリント配線板10の各辺の中央に配置したものである。同図(d)はバイパスコンデンサ18をプリント配線板10の任意の位置に配置したものである。又、図10(a)〜(d)における給電点は、実際のプリント配線板10ではICチップQに相当する。
【0058】このように上記一実施の形態によれば、特別なEMI対策部品をプリント配線板10に搭載することなく、プリント配線板10の電源層11及びグランド層12の共振現象により放射される不要電磁波を抑制することができる。
【0059】又、このプリント配線板10を各種電気機器に用いれば、電気機器において不要な電磁波を抑制して安定した動作を行わせることができる。
【0060】なお、本発明は、上記一実施の形態に限定されるものでなく次の通りに変形してもよい。
【0061】例えば、プリント配線板10は、その形状が正方形に形成されているものに限らず、不定形の形状に形成されていてもよい。この不定形の形状のプリント配線板に接続するバイパスコンデンサでも、上記一実施の形態と同様に周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンスの最小値がプリント配線板自体の共振周波数に一致するものである。不定形の形状のプリント配線板の共振周波数は、電磁界シミュレーションを用いて求めることができる。
【0062】
【発明の効果】以上詳記したように本発明によれば、電源層とグランド層との各パターンから発生する不要電磁放射を抑制することができるプリント配線板を提供できる。
【0063】又、本発明によれば、不要な電磁波を抑制して安定した動作ができる電気機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態を示す外観図。
【図2】本発明に係わる電源層及びグランド層のみを有するプリント配線板の一実施の形態を示す構成図。
【図3】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態においてバイパスコンデンサを搭載したときのSパラメータの測定結果を示す図。
【図4】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるSパラメータの共振周波数におけるピーク値を示す図。
【図5】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるインピーダンス−周波数特性を示す図。
【図6】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるインピーダンス−周波数特性を示す図。
【図7】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態における特性の異なる各バイパスコンデンサを搭載したときのSパラメータを示す図。
【図8】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるバイパスコンデンサをインダクタンス成分とコンデンサ成分とにより等価的に表した直列接続回路。
【図9】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるコンデンサ容量の周波数特性を示す図。
【図10】本発明に係わるプリント配線板の一実施の形態におけるバイパスコンデンサの配置例を示す図。
【図11】従来におけるノイズ対策を説明するためのプリント配線板上の回路図。
【図12】従来における電源層、グランド層から放射される電磁波を説明するためのプリント配線板の構成図。
【符号の説明】
10:プリント配線板
11:電源層
12:グランド層
13:パッド層
14:スルーホールランド層
15:絶縁体
16:パッド
17:給電用同軸コネクタパッド
18:バイパスコンデンサ
Q:ICチップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1個のICチップが搭載され、かつ電源層及びグランド層が少なくとも1層づつ形成されたプリント配線板において、前記電源層と前記グランド層とに接続される少なくとも1つのバイパスコンデンサを備えたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記バイパスコンデンサは、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンス値が前記プリント配線板自体の共振周波数に略一致することを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】 前記バイパスコンデンサを、コンデンサ成分とインダクタンス成分からなる等価回路で表わしたときの前記コンデンサ成分単体、前記インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、前記コンデンサ成分と前記インダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に、前記電源層、前記グランド層のパターン形状で定まる前記電源層と前記グランド層との間の共振周波数の少なくとも1つの周波数が含まれるように前記プリント配線板と前記バイパスコンデンサとを組み合わされたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項4】 前記コンデンサ成分単体、前記インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、前記コンデンサ成分と前記インダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に含まれる前記電源層、前記グランド層のパターン形状で定まる前記電源層と前記グランド層との間の共振周波数は、基本周波数であることを特徴とする請求項2記載のプリント配線板。
【請求項5】 前記コンデンサ成分単体、前記インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、前記コンデンサ成分と前記インダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲が、前記電源層、前記グランド層のパターン形状で定まる前記電源と前記グランド層との間の共振周波数のうち異なる共振周波数を包含するように前記バイパスコンデンサを選択又は組み合わされていることを特徴とする請求項3記載のプリント配線板。
【請求項6】 前記バイパスコンデンサは、前記ICチップを取り囲むように複数配置されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項7】 請求項1乃至6のうちいずれか1項記載のプリント配線板を備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項1】 少なくとも1個のICチップが搭載され、かつ電源層及びグランド層が少なくとも1層づつ形成されたプリント配線板において、前記電源層と前記グランド層とに接続される少なくとも1つのバイパスコンデンサを備えたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記バイパスコンデンサは、周波数に対するコンデンサ成分とインダクタンス成分からなるインピーダンス値が前記プリント配線板自体の共振周波数に略一致することを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】 前記バイパスコンデンサを、コンデンサ成分とインダクタンス成分からなる等価回路で表わしたときの前記コンデンサ成分単体、前記インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、前記コンデンサ成分と前記インダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に、前記電源層、前記グランド層のパターン形状で定まる前記電源層と前記グランド層との間の共振周波数の少なくとも1つの周波数が含まれるように前記プリント配線板と前記バイパスコンデンサとを組み合わされたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項4】 前記コンデンサ成分単体、前記インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、前記コンデンサ成分と前記インダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲に含まれる前記電源層、前記グランド層のパターン形状で定まる前記電源層と前記グランド層との間の共振周波数は、基本周波数であることを特徴とする請求項2記載のプリント配線板。
【請求項5】 前記コンデンサ成分単体、前記インダクタンス成分単体のインピーダンスよりも、前記コンデンサ成分と前記インダクタンス成分とを直列接続した等価回路のインピーダンスが小さくなる周波数範囲が、前記電源層、前記グランド層のパターン形状で定まる前記電源と前記グランド層との間の共振周波数のうち異なる共振周波数を包含するように前記バイパスコンデンサを選択又は組み合わされていることを特徴とする請求項3記載のプリント配線板。
【請求項6】 前記バイパスコンデンサは、前記ICチップを取り囲むように複数配置されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項7】 請求項1乃至6のうちいずれか1項記載のプリント配線板を備えたことを特徴とする電気機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図8】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2001−203434(P2001−203434A)
【公開日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−9237(P2000−9237)
【出願日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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