説明

プリント配線板

【課題】はんだクラック等の配線不良を防止しつつ、部品実装領域の外側のレイアウトにかかる制限を小さくすることができるプリント配線板の提供。
【解決手段】マトリクス状に配列された複数の電極パッド3と、複数の電極パッド3が配列された部品実装領域5の外側に設けられ熱応力を緩和する孔部7と、を有するプリント配線板1であって、部品実装領域5に実装されると共に、平面視で該部品実装領域5よりも大きな外縁を有するBGAパッケージ2を備え、孔部7は、BGAパッケージ2の外縁に対応する位置に設けられているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電子部品としてBGA(Ball grid array)パッケージを実装するプリント配線板が開示されている。近年、プリント配線板は、このような小型の電子部品が高密度で実装される傾向にあり、動作時には、これらの発熱による影響で高温状態となる。プリント配線板が、動作時の膨張と非動作時の復元(収縮)とを繰り返すと、実装しているBGAパッケージ等に対して熱ストレスが大きくかかる。
【0003】
上記従来技術では、プリント配線板に外部応力が作用したときに、当該外部応力によるたわみを低減するためのたわみ低減穴を少なくとも一つ形成している。このたわみ低減穴は、マトリクス状に配列された複数の電極パッドの部品実装領域の外側において、当該領域の少なくとも一つの対角線上に形成されている。この構成によれば、配線板の変形をたわみ低減穴で吸収できるため、上記熱ストレスに伴う熱応力を緩和し、配線部の接触不良や断線(はんだクラック)等の不具合を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、たわみ低減穴のような孔部を形成することによって、部品実装領域の外側のスペースが消費されるため、部品実装領域の外側の配線や他の電子部品等の配置についてレイアウトの自由度に制限がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、はんだクラック等の配線不良を防止しつつ、部品実装領域の外側のレイアウトにかかる制限を小さくすることができるプリント配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、マトリクス状に配列された複数の電極パッドと、上記複数の電極パッドが配列された部品実装領域の外側に設けられ熱応力を緩和する孔部と、を有するプリント配線板であって、上記部品実装領域に実装されると共に、平面視で該部品実装領域よりも大きな外縁を有する部品パッケージを備え、上記孔部は、上記部品パッケージの外縁に対応する位置に設けられているという構成を採用する。
【0008】
また、本発明においては、上記孔部は、上記部品パッケージの外縁のうち第1の辺と第2の辺とが交わる角部に設けられているという構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、上記孔部は、上記第1の辺と上記第2の辺とが交わる交点と、上記交点から所定距離をあけて上記第1の辺及び上記第2の辺のそれぞれに設けられているという構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、上記孔部は、上記第1の辺と上記第2の辺とに跨って設けられているという構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、上記孔部は、電気的に接地されたスルーホールであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、部品実装領域に実装されると共に、平面視で該部品実装領域よりも大きな外縁を有する部品パッケージを備え、孔部は、上記部品パッケージの外縁に対応する位置に設けられている。部品実装領域よりも部品パッケージの外縁が大きい場合、部品実装領域内に配列された電極パッド上に、部品パッケージのボール電極等を適正に配置するためには、位置合せのためのアライメントマークが必要となる。ここで、部品パッケージの外縁に対応する位置に孔部を設けることによって、当該孔部に、熱応力を緩和する機能だけでなく、アライメントの機能を付加し、アライメントマークとして兼用する。これにより、アライメントマークを別途設けることなく、部品実装領域の外側のスペース消費を小さくすることができる。
このように、本発明によれば、はんだクラック等の配線不良を防止しつつ、部品実装領域の外側のレイアウトにかかる制限を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態におけるプリント配線板の平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるプリント配線板の要部を示す拡大平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態におけるプリント配線板の要部を示す拡大平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態におけるプリント配線板の要部を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係るプリント配線板の実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるプリント配線板1の平面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるプリント配線板1の要部を示す拡大平面図である。
図1に示すように、プリント配線板1は、その表面に部品パッケージ(本実施形態ではBGAパッケージ2)が実装される基板である。なお、本実施形態のプリント配線板1に実装される部品パッケージとしては、BGA(Ball grid array)パッケージに限らず、LGA(Land grid array)パッケージ等であってもよい。
【0016】
プリント配線板1は、ガラスエポキシ材やガラスコンポジット材等の絶縁材料からなる板状の部材であり、その表面に電極パッド3や不図示の配線パターン等が形成されている。このプリント配線板1は、不図示の外部筐体(例えば、アルミダイキャスト等)内に収容されて、その縁部が、該外部筐体に対してネジ止め等で固定されている。
【0017】
電極パッド3は、BGAパッケージ2をリフローはんだ付けする際に、パッケージ底面のボール電極(はんだボール)が配置される場所である。電極パッド3は、BGAパッケージ2の電極の数に応じて複数設けられている。電極パッド3は、図示するように、マトリクス状に配列されている。なお、複数の電極パッド3が配列された平面視矩形状の領域が、部品実装領域5である。
【0018】
プリント配線板1は、複数の電極パッド3が配列された部品実装領域5の外側において熱応力を緩和する孔部7を備えている。孔部7は、プリント配線板1の厚み方向に形成された穴である。本実施形態の孔部7は、内壁部に導電層7aが形成されたスルーホールである。この孔部7は、図2に示すように、電気的に接地されている。なお、孔部7としては、内壁部に導電層7aが形成されない単なる貫通孔であってもよい。
【0019】
図1に戻り、BGAパッケージ2は、部品実装領域5に実装されると共に、平面視で該部品実装領域5よりも大きな外縁を有する。孔部7は、BGAパッケージ2の外縁に対応する位置に設けられている。本実施形態のBGAパッケージ2の外縁は、部品実装領域5と相似形状で、ひと回り大きな平面視矩形状を呈している。本実施形態の孔部7は、BGAパッケージ2の外縁に沿って複数設けられている。
【0020】
具体的に、本実施形態の孔部7は、BGAパッケージ2の外縁の4つの角部8のそれぞれに対応して、4つ設けられている。これら複数の孔部7は、同径、同構成で、BGAパッケージ2の外縁の対角線上に配置されている。具体的には、複数の孔部7のうち、孔部7Aと孔部7Cとが組となってBGAパッケージ2の外縁の対角線上に配置され、孔部7Bと孔部7Dとが組となってBGAパッケージ2の外縁の対角線上に配置されている。
【0021】
図2に示すように、BGAパッケージ2の外縁の角部8とは、BGAパッケージ2の外縁のうち第1の辺9Aと第2の辺9Bとが交わる交点10を含むBGAパッケージ2の外縁内の所定領域である。孔部7は、第1の辺9Aと第2の辺9Bとが交わる交点10を中心として形成されている。本実施形態では、孔部7の一部が、平面視で角部8と重なり、孔部7の残部が、平面視で目視できるように形成されている。
【0022】
孔部7は、ドリル等の工具によって角部8に対応する位置に形成される。角部8は、部品実装領域5の角端に位置する電極パッド3aと隣り合う位置関係を有するため、当該電極パッド3aに孔部7を近づけすぎると、電極パッド3aと孔部7との間にレジストを適切に形成することができず、例えばレジストが電極パッド3aに被ることがある。したがって、孔部7を形成する場合には、レジスト被りを考慮しつつ、適切な距離をあけて形成することが好ましい。
【0023】
続いて、上記構成のプリント配線板1の作用について説明する。
プリント配線板1は、不図示の外部筐体に対してネジ止め等で拘束されており、動作時の温度上昇による熱膨張の影響が、図1に示す白抜き矢印の方向、すなわち内向きに作用する。そうすると、部品実装領域5の角端(例えば電極パッド3a)において、BGAパッケージ2とのはんだクラックが生じ易くなる。
【0024】
本実施形態のプリント配線板1は、複数の電極パッド3が配列された部品実装領域5の外側おいて熱応力を緩和する孔部7を備えている。このように、部品実装領域5の外側に孔部7を設けることにより、配線板の熱膨張による影響を、部品実装領域5の手前側で効率よく吸収することができる。このため、部品実装領域5において、配線板の歪み、熱応力が緩和され、はんだクラック等の配線不良が防止される。
【0025】
本実施形態においては、部品実装領域5に実装されると共に、平面視で該部品実装領域5よりも大きな外縁を有するBGAパッケージ2を備え、孔部7は、BGAパッケージ2の外縁に対応する位置に設けられている。部品実装領域5よりもBGAパッケージ2の外縁が大きい場合、部品実装領域5内に配列された電極パッド3上に、BGAパッケージ2のボール電極を適正に配置するためには、位置合せのためのアライメントマークが必要となる。
【0026】
本実施形態において孔部7は、BGAパッケージ2の外縁のうち第1の辺9Aと第2の辺9Bとが交わる角部8に設けられている。したがって、4つの孔部7と、4つの角部8とを合わせることにより、BGAパッケージ2のボール電極を、電極パッド3上の適正な位置に配置するアライメントを行うことができる。そして、BGAパッケージ2のリフローはんだ付けを適切に行うことができる。
【0027】
このように、BGAパッケージ2の外縁に対応する位置に孔部7を設けることによって、当該孔部7に、熱応力を緩和する機能だけでなく、アライメントの機能を付加し、アライメントマークとして兼用することができる。これにより、アライメントマークを別途設けることなく、部品実装領域5の外側のスペース消費を小さくすることができる。したがって、部品実装領域5の外側のレイアウトにかかる制限を小さくすることができる。
【0028】
また、本実施形態において孔部7は、電気的に接地されたスルーホールである。この構成によれば、孔部7を電気的に接地し、GND電位とすることで電位を安定させ、部品実装領域5等におけるノイズを低減することができる。また、部品実装領域5の角隅の電極パッド3aにおいては、BGAパッケージ2のGND電極等が配置され易い。このように、孔部7に、さらに電位を安定させる機能を付加することで、別途GND電極を設けることなく、部品実装領域5の外側のスペース消費をさらに小さくすることができる。
【0029】
したがって、上述の本実施形態によれば、マトリクス状に配列された複数の電極パッド3と、複数の電極パッド3が配列された部品実装領域5の外側に設けられ熱応力を緩和する孔部7と、を有するプリント配線板1であって、部品実装領域5に実装されると共に、平面視で該部品実装領域5よりも大きな外縁を有するBGAパッケージ2を備え、孔部7は、BGAパッケージ2の外縁に対応する位置に設けられているという構成を採用することによって、はんだクラック等の配線不良を防止しつつ、部品実装領域5の外側のレイアウトにかかる制限を小さくすることができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0031】
図3は、本発明の第2実施形態におけるプリント配線板の要部を示す拡大平面図である。
図3に示すように、第2実施形態においては、孔部7が、第1の辺9Aと第2の辺9Bとが交わる交点10と、交点10から所定距離をあけて第1の辺9A及び第2の辺9Bのそれぞれに設けられている。
【0032】
この構成によれば、当該3つの孔部7で電極パッド3aを囲うように配置できるため、はんだクラック等の配線不良を確実に防止することができる。
なお、孔部7の数を増やすと、レイアウト的には上記実施形態よりも制限されるというトレードオフがある。しかしながら、当該3つの孔部7と、一つの角部8とを合せることによって、BGAパッケージ2全体のアライメントが可能となる。したがって、上記実施形態のように、全ての角部8に孔部7を設けることなく(例えば対角線上の2箇所で)アライメントができるため、部品実装領域5の外側のレイアウトにかかる制限が過度に大きくなることはない。
【0033】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0034】
図4は、本発明の第3実施形態におけるプリント配線板の要部を示す拡大平面図である。
図4に示すように、第3実施形態においては、孔部7が、第1の辺9Aと第2の辺9Bとに跨って平面視略L字状に設けられている。
【0035】
この構成によれば、平面視L字形状の孔部7で電極パッド3aを、第2実施形態のように間をあけることなく囲えるため、はんだクラック等の配線不良をより確実に防止することができる。
また、トレードオフについては、第2実施形態と同様であり、全ての角部8に孔部7を設けることなくアライメントができるため、部品実装領域5の外側のレイアウトにかかる制限が過度に大きくなることはない。
【0036】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…プリント配線板、2…BGAパッケージ(部品パッケージ)、3…電極パッド、5…部品実装領域、7…孔部(スルーホール)、8…角部、9A…第1の辺、9B…第2の辺、10…交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の電極パッドと、前記複数の電極パッドが配列された部品実装領域の外側に設けられ熱応力を緩和する孔部と、を有するプリント配線板であって、
前記部品実装領域に実装されると共に、平面視で該部品実装領域よりも大きな外縁を有する部品パッケージを備え、
前記孔部は、前記部品パッケージの外縁に対応する位置に設けられていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記孔部は、前記部品パッケージの外縁のうち第1の辺と第2の辺とが交わる角部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記孔部は、前記第1の辺と前記第2の辺とが交わる交点と、前記交点から所定距離をあけて前記第1の辺及び前記第2の辺のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記孔部は、前記第1の辺と前記第2の辺とに跨って設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記孔部は、電気的に接地されたスルーホールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89853(P2013−89853A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230710(P2011−230710)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】