説明

プリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法およびフィルタユニット

【課題】プリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法であって、2以上の原反片を互いに接続して1つの原反とした後に、当該原反をプリーツ加工する場合においても、原反片の確実な接続と、その後の安定したプリーツ加工の実施とが可能な製造方法を提供する。
【解決手段】2以上の原反片をヒートシールにより互いに接続して1つの原反とした後に、当該原反をプリーツ加工する方法とする。原反片が撥液処理されている場合には、原反片間に接着補助材(例えばウレタン不織布)を配置した状態でヒートシールしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法と、当該方法により得たフィルタ濾材を備えるフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
気体中の粒子を除去するフィルタユニットが、クリーンルームの換気システム、空気清浄機、掃除機などに幅広く使用されている。フィルタユニットは一般に、不織布、多孔質膜などからなるフィルタ濾材が支持枠(フレーム)に支持された構造を有する。フィルタ濾材は、フィルタユニットとしての単位容積あたりの濾過面積を大きくするために、通常、プリーツ加工されている(特許文献1参照)。
【0003】
プリーツ加工されたフィルタ濾材は、その原反をプリーツ加工機によりプリーツ加工して製造される。原反は、例えば帯状である場合、ロールに巻回された状態からプリーツ加工機に連続的に供給される。なお、プリーツ加工は折り曲げ加工の一種であり、プリーツ加工によって濾材の主面は、所定の方向(原反および濾材が帯状である場合、その幅方向)に伸びる山および谷が交互に出現する形状となる。
【特許文献1】特開平11−253719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原反に異物、汚れなどの欠点がある場合、プリーツ加工前に当該欠点を除去することが望まれる。この場合、図3に示すように、原反16における欠点5を含む部分6をある程度の長さL2で切除して、残った部分7、8を互いに接続した後に、接続後の原反1をプリーツ加工すればよい。このとき、部分7、8は、原反16の一部(部分6)の切除に伴って当該原反16が分割されることで形成された各々の部分である。部分7、8のそれぞれを原反片15a、15bとすると、原反片15a、15bは互いに接続されて一つの原反1となり、その後、当該原反1はプリーツ加工される。
【0005】
また、帯状の原反を加工機に供給するロールを交換する際には、交換対象であるロールから送出された第1の原反の末端部と、新しいロールから送出された第2の原反の始端部とを接続し、接続後の原反をプリーツ加工することが行われている。これにより、第1の原反に対するプリーツ加工の完了後、改めて第2の原反をプリーツ加工機に通す場合に比べて、ロールの交換がスムーズとなり、フィルタ濾材の生産性が向上する。ここで、第1および第2の原反のそれぞれを原反片とすると、各々の原反片は互いに接続して一つの原反となり、その後、当該原反はプリーツ加工される。
【0006】
従来、原反片の接続には両面テープが使用される。しかし、両面テープによる接続では、原反片間の接続強度が十分ではなく、プリーツ加工の際に接続部分が剥がれることがある。また、加工機のロールやブレードにテープが付着して、製造ラインが停止することもある。
【0007】
そこで本発明は、プリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法であって、2以上の原反片を互いに接続して1つの原反とした後に、当該原反をプリーツ加工する場合においても、原反片の確実な接続と、その後の安定したプリーツ加工の実施とが可能な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法は、フィルタ濾材の原反をプリーツ加工する工程を含む製造方法であって、2以上の原反片をヒートシールにより互いに接続して1つの原反とした後に、当該原反をプリーツ加工する方法である。
【0009】
本発明のフィルタユニットは、上記本発明の製造方法により得たフィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持する支持枠とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、2以上の原反片を互いに接続して1つの原反とした後に、当該原反をプリーツ加工する場合においても、原反片の確実な接続と、その後の安定したプリーツ加工の実施とが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1、2を用いて、本発明の製造方法の一例を説明する。
【0012】
図1に示す方法では、帯状の原反1がプリーツ加工機3に供給され、加工機3においてプリーツ加工されて、プリーツ加工されたフィルタ濾材4となる。フィルタ濾材4は、カッティングなどの後工程を経た後、例えば支持枠に組み込まれてフィルタユニットとなる。
【0013】
原反1は、図2に示すように、帯状の原反片15a、15bをヒートシールにより互いに接続して得た原反である。
【0014】
図1、2に示す方法では、原反片15a、15bの確実な接続と、原反片15a、15bの接続により形成された原反1の安定したプリーツ加工が可能となる。
【0015】
原反片15a、15bの構成は、ヒートシールによる接続が可能であり、かつプリーツ加工後にフィルタ濾材として使用できる限り特に限定されない。例えば、その形状は特に限定されず、典型的には矩形状、帯状である。少なくとも1つの原反片の形状が帯状であれば、原反片の接続により形成された原反1は帯状となり、連続的なフィルタ濾材4の製造が可能となる。
【0016】
原反片15a、15bは、例えば、図3に示すように、原反16(プリーツ加工する原反1と区別するために、これ以降、原濾材16という)の一部を切除するとともに分割することにより形成された各々の部分7、8である。なお、図3に示す例で切除される「原濾材16の一部」は、欠点5を含む部分6であり、この場合、原濾材16に存在していた欠点5が除去された原反1がプリーツ加工される。
【0017】
原反片15a、15bは、帯状の原反をプリーツ加工機に供給するロールの交換時における、交換対象であるロールから送出された第1の原反および新しいロールから送出された第2の原反であってもよい。この場合、上述したように、ロールの交換がスムーズとなり、フィルタ濾材4の生産性が向上する。
【0018】
図1、2に示す例において接続する原反片の数は2であるが、本発明の製造方法において接続する原反片の数は特に限定されず、例えば、3以上の原反片を互いに接続して1つの原反1としてもよい。
【0019】
原反片15a、15bにおいてヒートシールによる接続がなされる位置は、接続後の原反1をプリーツ加工できる限り特に限定されないが、典型的には、図2に示すように、各々の原反片の端部9a、9bである。即ち、本発明の製造方法では、2以上の原反片を、各々の原反片の端部において互いに接続してもよい。
【0020】
図4に示すように、少なくとも一方の原反片の端部から離れた位置で原反片15a、15bを接続してもよく(図4に示す例では、原反片15bの端部14から離れた接続部分10で原反片15a、15bが接続されている)、この場合、双方の原反片を互いに接続した後に、上記少なくとも一方の原反片(原反片15b)における端部14から接続部分10に至るまでの部分11をさらに切除してもよい。
【0021】
図2に示す例では、原反片15aと原反片15bとが互いに接するようにヒートシールして、双方の原反片を接続している。このように本発明の製造方法では、2以上の原反片を、原反片同士が直接接するようにヒートシールして、互いに接続してもよい。この場合、原反片を両面テープで接続したときとは異なり、原反片の接続方法に起因するアウトガスの発生がない。これにより、従来、アウトガスの問題から両面テープを使用できなかった、ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)などの高規格クリールルームでの使用が前提となるフィルタ濾材を製造する際にも、原反片の接続が可能となる。
【0022】
なお、原反片同士が直接接するようにヒートシールする場合、原反片自身がヒートシール可能である必要があり、典型的には、原反片はヒートシール可能な材料を含む。
【0023】
ヒートシール可能な材料は、例えば熱可塑性樹脂である。
【0024】
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0025】
本発明の製造方法では、図5に示すように、原反片15aと原反片15bとの間に接着補助材12を配置した状態でヒートシールすることにより、双方の原反片を互いに接続してもよい。即ち、本発明の製造方法では、2以上の原反片を、原反片間に接着補助材を配置した状態でヒートシールして、互いに接続してもよい。
【0026】
最終的に形成されるフィルタ濾材の用途によっては、撥液処理(撥水処理および/または撥油処理)された原反片が使用される。撥液処理された原反片の接続は、両面テープでは困難である。また、原反片が撥液処理されている場合、原反片同士を直接接触させたヒートシールでは、その接続強度が低下することがある。しかし、このような場合においても、接着補助材を原反片間に配置したヒートシールを行うことで、その接続強度がより向上し、安定したプリーツ加工の実施が可能となる。
【0027】
接着補助材は、例えば不織布である。なお、不織布を接着補助材に用いることで、上述したアウトガスの問題を回避できる。
【0028】
不織布は、例えばウレタン不織布である。
【0029】
ヒートシールの具体的な方法は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。
【0030】
ヒートシールには、超音波方式、熱方式、インパルス方式などの各種の方式があるが、原反片に対する熱の印加時間およびシール後の冷却時間が短くて済むインパルス方式が好適である。
【0031】
ヒートシール幅は、原反片の形状、サイズによっても異なるが、通常、1〜5cm程度である。ヒートシールされた部分では、フィルタ濾材4としての気体の透過性が低下するために、ヒートシール幅は過度に大きくないことが望ましい。一方、ヒートシール幅が過度に小さくなると、原反片間の接続強度を確保できず、原反1の安定したプリーツ加工が困難となる。
【0032】
ヒートシール幅は、原反片15aと15bとの重複部分(各々の原反片の主面に垂直な方向から見た重複部分)全体をヒートシールする場合、当該重複部分の長さ(図2に示すL1)である。
【0033】
原反片は、例えば、上述した熱可塑性樹脂の不織布、織布、メッシュ、フェルト、多孔質膜である。なお、2以上の原反片をヒートシールにより互いに接続して得た原反1(プリーツ加工する原反)は、ヒートシールによる接続部分を除き、基本的に当該原反片と同じ構成を有する。また、原反1をプリーツ加工して得たフィルタ濾材4は、プリーツ加工されていることを除き、基本的に当該原反と同じ構成を有する。
【0034】
原反片は、PTFE多孔質膜を有していてもよい。この場合、圧力損失が小さく、高い捕集効率を有するフィルタ濾材が得られる。
【0035】
原反片は、PE繊維およびPET繊維を含む不織布層(PE−PET不織布層)を有していてもよい。この場合、原反片の構成によっては、圧力損失が非常に小さいフィルタ濾材が得られる。
【0036】
PTFE多孔質膜および/またはPE−PET不織布層を有する原反片では、最終的にフィルタ濾材となったときに、これら多孔質膜および不織布層によって気体中の粒子が除去される。
【0037】
原反片は、PE−PET不織布層によってPTFE多孔質膜が挟持された構造を有していてもよい。このような構造を有する原反片として、例えば、PE−PET不織布層/PTFE多孔質膜/PE−PET不織布層の三層構造を有する原反片、あるいはPE−PET不織布層/PTFE多孔質膜/PE−PET不織布層/PTFE多孔質膜/PE−PET不織布層の五層構造を有する原反片がある。
【0038】
原反片の接続により形成された原反1をプリーツ加工する方法は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。例えば、プリーツ加工機によって原反1をプリーツ加工すればよいが、プリーツ加工機についても同様に、レシプロ方式、ロータリー方式などの各種の方式をとる公知の加工機を使用できる。
【0039】
図6に、本発明のフィルタユニットの一例を示す。図6に示すフィルタユニット21は、プリーツ加工されたフィルタ濾材4と、濾材4を支持する支持枠22とを備える。フィルタ濾材4は、上述した本発明の製造方法により得たフィルタ濾材である。
【0040】
なお、図6では、フィルタ濾材4における原反片同士が接続された部分(接続部分)の図示を省略するが、実際に製造されるフィルタユニット21においても、濾材4に接続部分が存在しないことがある。原反片の形状によっては(特に、原反片が長尺の帯状である場合には)、原反1のごく一部にしか接続部分が存在しないためである。また、フィルタユニット21の製造時に、接続部分を切除するようにフィルタ濾材4をカッティングすることも可能であり、この場合、製造されたユニット21の濾材4に接続部分は存在しない。
【0041】
支持枠22には、フィルタユニットとして一般的な材料、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート樹脂、各種のエラストマー樹脂などを用いることができる。支持枠22は、一般にABS樹脂またはPP樹脂からなるが、上記列記した樹脂以外の樹脂を用いてもよい。例えば、支持枠22としての寸法精度の確保を考慮して、ガラス繊維を混合した樹脂からなる支持枠22としてもよい。
【0042】
フィルターユニット21を形成する具体的な方法は特に限定されず、例えば、濾材4を用いて支持枠22をインサート成形すればよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0044】
最初に、本実施例で作製したフィルタ濾材の評価方法を示す。
【0045】
[濾材の圧力損失]
作製した濾材を、有効濾過面積が100cm2となるように円形のホルダーにセットした後、濾材の両面に圧力差を発生させて当該濾材に気体を透過させた。ここで、透過する気体の線速度が5.3cm/秒となる圧力差をマノメータにより測定し、測定した圧力差の値を、作製したフィルタ濾材で生じる圧力損失(Pa)とした。
【0046】
[濾材の捕集効率]
作製した濾材を、圧力損失の測定と同様にホルダーにセットし、濾材の両面に圧力差を発生させて当該濾材に気体を透過させた。次に、濾材を透過する気体の線速度が5.3cm/秒となるように上記圧力差を調整した後、多分散ジオクチルフタレート(DOP)粒子を、0.1〜0.15μmの粒径を有するDOP粒子の濃度が約107個/Lとなるように濾材の上流側に流し、濾材の上流側および下流側における0.1〜0.2μmの粒径を有するDOP粒子の濃度、および0.3〜0.4μmの粒径を有するDOP粒子の濃度をパーティクルカウンタにより測定して、以下の式により、各々の粒径範囲を有するDOP粒子に対する濾材の捕集効率を求めた。
捕集効率={1−(下流側DOP粒子濃度/上流側DOP粒子濃度}×100(%)
【0047】
(実施例1)
PTFE多孔質膜を一対のPE−PET不織布で挟持した三層構造を有するA4サイズの原反片(日東電工製、NTF9317−H01)2枚を準備し、インパルス方式のヒートシール機(富士インパルス製、OPL−600−10)を用いて、双方の原反片を互いに接続した。
【0048】
原反片の接続は、以下のように行った(図7参照)。最初に、2枚の原反片15a、15bを、当該原反片の主面に垂直な方向から見て、面方向に連続し、かつ各々の端部が重複するように、並べて配置した。双方の原反片が重複する長さL3は3cmとした。
【0049】
次に、原反片15a、15bの重複部分における、各々の原反片の縁31a、31bから1cm以上2cm以下の部分32を、加熱ホーン33によりヒートシールし、原反片15a、15bを接着、接続した。ヒートシール幅L1は1cmである。
【0050】
なお、原反片をヒートシールするにあたっては、加熱ホーン33と原反片15a、15bとの間に、離型用フィルム34としてPTFEフィルム(日東電工製、No.903UL)を配置した。ヒートシールの条件は160℃、5秒とした。
【0051】
次に、原反片15a、15bをヒートシールにより接続して得た原反を、プリーツ加工機(東洋工機製、TK−11)によりプリーツ加工して、プリーツ加工されたフィルタ濾材を得た。プリーツ加工の山高さは20mmとした。
【0052】
(実施例2)
PE−PET不織布層/PTFE多孔質膜/PE−PET不織布層/PTFE多孔質膜/PE−PET不織布層の五層構造を有する原反片(日東電工製、NTF9522−U01)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プリーツ加工されたフィルタ濾材を得た。
【0053】
(実施例3)
撥液処理した原反片(実施例1で用いたNTF9317−H01を撥液処理したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プリーツ加工されたフィルタ濾材を得た。なお、NTF9317−H01の撥液処理は、撥液処理剤(信越シリコーン製X−70−02913)1kgを溶剤(住友3M製FC−5060(3M))9kgに溶解させて得た処理液に、NTF9317−H01を浸漬し、乾燥させることで行った。
【0054】
(実施例4)
2枚の原反片をヒートシールにより接続する際に、双方の原反片の間にウレタン不織布(KBセーレン製、エスパンシオーネ)を配置した以外は、実施例3と同様にして、プリーツ加工されたフィルタ濾材を得た。なお、ウレタン不織布の形状は、原反片の主面に垂直な方向から見て、原反片のヒートシール部分(接続部分)と同じ形状とした。また、ウレタン不織布は、上記方向から見たときに、接続部分の全体に存在するように配置した。
【0055】
(比較例1)
2枚の原反片の接続をヒートシールではなく両面テープ(日東電工製、No.500)で行った以外は、実施例1と同様にして、プリーツ加工された濾材を得た。なお、両面テープの形状は、原反片の主面に垂直な方向から見て、実施例1で作製した濾材におけるヒートシール部分(接続部分)と同じ形状とした。
【0056】
(比較例2)
2枚の原反片の接続をヒートシールではなく両面テープ(日東電工製、No.500)で行った以外は、実施例2と同様にして、プリーツ加工された濾材を得た。なお、両面テープの形状は、原反片の主面に垂直な方向から見て、実施例2で作製した濾材におけるヒートシール部分(接続部分)と同じ形状とした。
【0057】
(比較例3)
実施例3に記載の方法で撥液処理したNTF9317−H01を原反片として用い、原反片の接続にヒートシールではなく両面テープ(日東電工製、No.500)を用いた以外は実施例1と同様にして、プリーツ加工された濾材の作製を試みた。しかし、原反片と原反片とが両面テープによって接着せず、プリーツ加工する原反が作製できなかった。
【0058】
各実施例および比較例(比較例3を除く)で作製したプリーツ加工された濾材、ならびにプリーツ加工前の原反に対し、その圧力損失および捕集効率を評価した。また、プリーツ加工によって、原反片の接続部分(ヒートシールまたは両面テープによる接続部分)に剥がれが生じていないか否かを目視により確認した。評価結果を以下の表1に示す。
【0059】
なお、プリーツ加工前の原反に対する圧力損失および捕集効率の測定は、プリーツ加工された濾材に対する圧力損失および捕集効率の測定と同様に行った。また、プリーツ加工された濾材およびプリーツ加工前の原反に対して圧力損失および捕集効率を評価する際には、有効濾過面積に占める原反片の接続部分の割合が同一となるようにした。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示すように、両面テープにより原反片を接続した比較例1、2では、プリーツ加工の際に加わるせん断力により接続部分に剥がれが生じ、剥がれた部分からのリークによって、フィルタ濾材の圧力損失および捕集効率が測定できなかった。また、プリーツ加工前の時点で既に、接続部分における微細なリークが存在するためか、捕集効率が低下していた。
【0062】
これに対して、ヒートシールにより原反片を接続した実施例1〜4では、確実な原反片の接続と安定したプリーツ加工の実施とが可能であり、特に実施例1、2、4では、プリーツ加工によっても捕集効率が低下しなかった。撥液処理した原反片を用いた実施例3では、プリーツ加工により捕集効率が低下したが、プリーツ加工後に捕集効率および圧力損失の測定ができなかった比較例1、2に比べると、プリーツ加工性を大幅に改善できた。
【0063】
また、実施例3、4の結果から、撥液処理された原反片を用いる場合、原反片間にウレタン不織布を配置したヒートシールにより、その接続強度を改善でき、プリーツ加工をより安定して実施できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、プリーツ加工されたフィルタ濾材および当該濾材を備えるフィルタユニット、特にULPAなどの高い捕集効率を有するフィルタユニット、を、安定して製造できる。
【0065】
本発明の製造方法により得たフィルタ濾材およびフィルタユニットは、クリーンルームの換気システム、空気清浄機、掃除機などの各種のデバイスに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【図2】本発明のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【図3】本発明のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【図5】本発明のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【図6】本発明のフィルタユニットの一例を示す模式図である。
【図7】実施例における原反片のヒートシール方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 原反
3 プリーツ加工機
4 フィルタ濾材
5 欠点
6 部分
7 部分
8 部分
9a、9b 端部
10 接続部分
11 部分
12 接着補助材
14 端部
15a、15b 原反片
16 原反(原濾材)
21 フィルタユニット
22 支持枠
31a、31b 縁
32 部分
33 加熱ホーン
34 離型用フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ濾材の原反をプリーツ加工する工程を含む、プリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法であって、
2以上の原反片をヒートシールにより互いに接続して1つの原反とした後に、当該原反をプリーツ加工する、プリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項2】
前記2以上の原反片が、帯状の原濾材の一部を切除するとともに分割することにより形成された各々の部分である請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項3】
前記2以上の原反片を、各々の前記原反片の端部において互いに接続する請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項4】
前記2以上の原反片を、前記原反片同士が直接接するようにヒートシールして、互いに接続する請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項5】
前記2以上の原反片を、前記原反片間に接着補助材を配置した状態でヒートシールして、互いに接続する請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項6】
前記原反片が撥液処理されている請求項5に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項7】
前記接着補助層がウレタン不織布である請求項6に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項8】
前記原反片が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を有する請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項9】
前記原反片が、ポリエチレン(PE)繊維およびポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を含む不織布層を有する請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項10】
前記原反片が、PE繊維およびPET繊維を含む不織布層によってPTFE多孔質膜が挟持された構造を有する請求項1に記載のプリーツ加工されたフィルタ濾材の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得た、プリーツ加工されたフィルタ濾材と、前記濾材を支持する支持枠とを備えるフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−285573(P2009−285573A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140935(P2008−140935)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】