説明

プレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造及びその結合方法

【課題】
高い耐力を有し、短い施工期間で施工可能にするプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造及びその結合方法の提供。
【解決手段】
円筒又は楕円形筒の一部を構成するプレキャスト弧状部分ブロック26,26…を筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面26a,26bが互いに突き合わせ配置に接合され、両接合端部の互いに連通する配置の両補強材挿入孔32,36内に棒状をした補強材34が両弧状部分ブロック26,26を跨らせて挿入され、補強材34の周囲と補強材挿入孔32,36内面との隙間がグラウトによって埋められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にPCウェルや橋脚等の筒状構造物を構成するプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造及びその結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCウェル構造物や橋脚等として用いられている筒状構造物には、円環状の複数の短円筒体を中心軸方向に順次連接することにより構築されるものが知られており、その短円筒体をプレキャストコンクリートブロックによって構成することにより、構築現場においてコンクリートの養生期間を要しない等、大幅な施工期間短縮を図ることができるようになっている。
【0003】
しかし、構築しようとする筒状構造物の直径が大きいと、筒状構造物を構成する短円筒体も大きくなり、短円筒体を生産現場から施工現場まで搬送する大型トラック等の輸送手段に積載できない為、この短円筒体を複数の部分ブロックに分割して成形しておき、部分ブロック毎に搬送し、施工現場において各部分ブロックを接合させて短円筒体を形成するようにしている。
【0004】
この各部分ブロックの周方向での接合構造は、隣り合う部分ブロックの接合面を相互に突き合わせ、その接合面同士を接着剤で接着させる構造や、図7に示すように隣り合う部分ブロック1,1の接合面部に接合板2を配置し、その背面部に設けた凹部3を通して接合板2,2同士をボルト4により連結する構造等が知られている。
【0005】
また、中心軸方向に隣り合う部分ブロックの位置を周方向で相互にずらして接合させ、中心軸方向に連続する各部分ブロックにPC緊張材を挿通させてプレストレスを導入することにより互いに補強しあう構造になっている。
【0006】
また、図8に示すように、部分ブロック5,5の周方向両端より該ブロック5の周方向に向けて埋設した鉄筋6,6の端部を突出させておき、隣り合う部分ブロック5,5の端部より突出した鉄筋同士6,6をカプラー等の連結具7を介して連結し、各部分ブロック5,5間の隙間8に現場打ちコンクリートを打設することにより接合する構造も知られている。尚、図中符号9は、部分ブロック5,5間の間隙を一定に保つために使用するジャッキからなる位置決め装置である。
【特許文献1】特開平06−073994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の如き従来の接着剤やボルトによって接合する構造では、隣り合う部分ブロック間に鉄筋が配置されていない為、耐力が低いという問題があった。
【0008】
一方、各部分ブロック間の間隙で鉄筋を連結し、その間隙に現場打ちによりコンクリートを打設する構造では、接合部に鉄筋が埋設されているので高い耐力を有するが、現場打ちコンクリートの養生に一定の期間を要するために工期が長くなるという問題があり、更に、部分ブロック間の間隙を保つための位置決め装置やコンクリート打設用設備の設備費等によって施工コストが嵩むという問題もあった。
【0009】
そこで本発明は、上述の従来技術の問題を鑑み、高い耐力を有し、短い施工期間で施工可能にするプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造及びその結合方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、円筒又は楕円形筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面が互いに突き合わせ配置に接合され、該両接合端部の互いに連通する配置の両補強材挿入孔内に棒状又は弧状をした補強材が両部分ブロックを跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められているプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、円筒又は楕円形筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面を互いに突き合わせ配置に接合させ、該両接合端部の互いに連通する配置の補強材挿入孔内に棒状をした補強材が両部分ブロック跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められたブロック間結合部の形成に際し、前記周方向に隣り合う部分ブロック間の両接合部の補強材挿入孔を、前記棒状補強材が長手方向にスライド自在な径に形成し、一方の補強材挿入孔の長さを前記棒状補強材がその全長に亘って収容される深さに形成するとともに該補強材挿入孔の奥部に補強材押出手段導入路を連通開口させておき、かつ、他方の補強材挿入孔を前記棒状補強材の一部のみが収容される深さに予め形成しておき、前記一方の補強材挿入孔に棒状補強材をその全長に亘って収納させた状態で前記両接合面を突き合わせ配置に接合させた後、前記補強材押出手段導入路を通して押出手段を挿入し、棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出すことによって該棒状補強材を両補強材挿入孔に跨った位置にスライドさせ、然る後両補強材挿入孔にグラウトを充填するプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合方法であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成に加え、補強材挿入孔を部分ブロックの周方向に向けた弧状に形成しておくことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3の構成に加え、押出手段は、可撓性を有する可撓性押出棒をもって構成され、該可撓性押出棒を部分ブロックの内周面部又は外周面部に開口した補強材押出手段導入路より挿入し、前記可撓性押出棒により一方の補強材挿入孔に全長に亘って収納させた棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出すことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面を互いに突き合わせ配置に接合させ、該両接合端部の互いに連通する配置の補強材挿入孔内に弧状をした補強材が両部分ブロック跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められたブロック間結合部の形成に際し、前記周方向に隣り合う部分ブロック間両接合部の補強材挿入孔を、一方が部分ブロックの筒内周又は筒外周に開口し、他方が前記周方向接合端面に開口した弧状に形成しておき、前記両接合面を突き合わせ配置に接合させた後、前記弧状補強材を前記筒内周又は筒外周の開口より補強材挿入孔に挿入し、該弧状補強材を両補強材挿入孔に跨った位置にスライドさせ、然る後両補強材挿入孔にグラウトを充填するプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造は、円筒又は楕円形筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面が互いに突き合わせ配置に接合され、該両接合端部の互いに連通する配置の両補強材挿入孔内に棒状をした補強材が両部分ブロックを跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められていることによって、ブロック間結合部において高い耐力が得られ、構造物全体の耐力も向上する。
【0016】
本発明に係るブロック間に好適に棒状補強材を配置することができ、現場打ちコンクリートを必要としないので施工工期が短縮され、施工コストの低減を図ることができる。
方法は、円筒又は楕円形筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面を互いに突き合わせ配置に接合させ、該両接合端部の互いに連通する配置の補強材挿入孔内に棒状をした補強材が両部分ブロック跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められたブロック間結合部の形成に際し、前記周方向に隣り合う部分ブロック間の両接合面の補強材挿入孔を、前記棒状補強材が長手方向にスライド自在な径に形成し、一方の補強材挿入孔の長さを前記棒状補強材がその全長に亘って収容される深さに形成するとともに該補強材挿入孔の奥部に補強材押出手段導入路を連通開口させておき、かつ、他方の補強材挿入孔を前記棒状補強材の一部のみが収容される深さに予め形成しておき、前記一方の補強材挿入孔に棒状補強材をその全長に亘って収納させた状態で前記両接合面を突き合わせ配置に接合させた後、前記補強材押出手段導入路を通して押出手段を挿入し、棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出すことによって該棒状補強材を両補強材挿入孔に跨った位置にスライドさせ、然る後両補強材挿入孔にグラウトを充填することによって、ブロック間に好適に棒状補強材を配置することができ、現場打ちコンクリートを必要としないので施工工期が短縮され、施工コストの低減を図ることができる。
【0017】
補強材挿入孔を部分ブロックの周方向に向けた弧状に形成しておくことによって、補強材挿入孔内を好適にスライドさせることができる。
【0018】
押出手段は、可撓性を有する可撓性押出棒をもって構成され、該可撓性押出棒を部分ブロックの内周面部又は外周面部に開口した補強材押出手段導入路より挿入し、前記可撓性押出棒により一方の補強材挿入孔に全長に亘って収納させた棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出すことによって、好適に棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出すことができるとともに、設備が簡易であるので安価である。
【0019】
筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面を互いに突き合わせ配置に接合させ、該両接合端部の互いに連通する配置の補強材挿入孔内に棒状をした補強材が両部分ブロック跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められたブロック間結合部の形成に際し、前記周方向に隣り合う部分ブロック間両接合部の補強材挿入孔を、一方が部分ブロックの筒内周又は筒外周に開口し、他方が前記周方向接合端面に開口した弧状に形成しておき、前記両接合面を突き合わせ配置に接合させた後、弧状の前記補強材を前記筒内周又は筒外周の開口より補強材挿入孔に挿入し、該弧状補強材を両補強材挿入孔に跨った位置にスライドさせ、然る後両補強材挿入孔にグラウトを充填することによって、ブロック間に好適に補強材を配置することができ、現場打ちコンクリートを必要としないので施工工期が短縮され、施工コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
【0021】
図1は、筒状構造物の一例としてPCウェル構造物を示し、図中符号20はPCウェル構造物、符号21は鋼製刃口である。
【0022】
このPCウェル構造物20は、円環状の複数の短円筒体22,22…を順次地盤Aに圧入しながら沈設して筒中心軸方向、即ち上下方向に短円筒体22,22…を連接することにより地盤A内で長尺円筒状に形成されている。
【0023】
このPCウェル構造物20の周壁には、円筒中心軸方向(以下、単に軸方向と記す)にPC緊張材23,23…が挿通され、このPC緊張材23,23…を緊張させることにより構造物に軸方向のプレストレスが導入されている。
【0024】
PC緊張材23は、図2に示すように、各短円筒体22の上端において緊張し、定着具24により支圧板25上に定着させ、定着具24に上方側のPC緊張材23を連結し、順次プレストレスを付与すると同時に互いに中心軸方向で隣り合う短円筒体22同士を連結し、短円筒体22を中心軸方向に連接するようになっている。
【0025】
また、短円筒体22は、図3に示すように、円環を均等に3分割した弧状の三つのプレキャスト弧状部分ブロック26,26…を円周方向に連結することにより形成される。
【0026】
また、各短円筒体22は、外周に鋼板やPC鋼撚線等からなるタガ部材27,27を配置している。
【0027】
更に、各短円筒体22は、中心軸方向で隣り合う弧状部分ブロック26,26が互いに周方向でずれた配置、即ち、軸方向で隣り合う一方の短円筒体22に対し、他方の短円筒体22が周方向で所定角度分ずれた位置に配置されている。
【0028】
各弧状部分ブロック26は、図3に示すように、円環を均等3分割した円弧状にプレキャストコンクリートブロックにより形成され、その円環中心軸方向(以下、単に軸方向と記す)の接合端部には、縁部に囲まれた凹部28が形成されている。
【0029】
この弧状部分ブロック26には、軸方向に貫通したPC緊張材挿通孔29,29…が周方向に一定の間隔を置いて形成され、これにプレストレス導入用のPC緊張材23が挿通されるようになっている。
【0030】
尚、PC緊張材挿通孔29の上端開口縁部には、PC緊張材23の端部を定着させる定着用支圧板25が備えられている。
【0031】
また、弧状部分ブロック26には、軸方向に貫通した補強材挿通孔30,30…が各PC緊張材挿通孔29,29間に間隔を置いて形成されている。
【0032】
尚、短円筒体22が軸方向に連結され、軸方向に連続した補強材挿通孔30には、PC鋼撚線や鉄筋等からなる補強材31が挿通され、その補強材31と補強材挿通孔30の内面との間の間隙に無収縮モルタルが充填されるようになっている。
【0033】
また、弧状部分ブロック26の一方の周方向端部には、PC緊張材挿通孔29の外側及び内側に配置された補強材挿入孔32,32が形成され、その奥部に補強材押出手段導入路33が連通されている。
【0034】
補強材挿入孔32は、その長手方向を弧状部分ブロックの周方向に向けた弧状に形成され、この補強材挿入孔32には、棒状補強材34が周方向でスライド可能に全長に亘って収容され、この棒状補強材34が周方向接合端面26aより突出できるようになっている。
【0035】
この補強材挿入孔32は、その中間部より接合端面側部32aの内径が大きく形成され、棒状補強材34が長手方向にスライド自在になっている。
【0036】
棒状補強材34は、丸鋼棒をもって弧状に形成され、その長さは、補強材挿入孔32の周方向長さと略同じ長さに形成され、補強材挿入孔32に全長に亘って収容されるようになっている。
【0037】
補強材押出手段導入路33は、補強材挿入孔32と連通して形成され、即ち、弧状部分ブロック26の内周面部又は外周面部に開口し、この周面部から補強材挿入孔32の接合端面26aとは反対側の端部に向けて形成され、この補強材押出手段導入路33より押出手段である可撓性を有する可撓性押出棒35を挿入し、棒状補強材34を補強材挿入孔32より押し出すようになっている。
【0038】
可撓性押出棒35は、可撓性を有する金属線材を心材とし、その心材の周りに合成樹脂材が配置されて丸棒状に形成されており、補強材押出手段導入路33に変形しつつ通され、補強材挿入孔32内に挿入させることができるようになっている。
【0039】
また、弧状部分ブロック26の他方の周方向端部には、PC緊張材挿通孔29の外側及び内側に配置された補強材挿入孔36,36が形成され、その長手方向を弧状部分ブロック26の周方向に向けた弧状に形成されている
補強材挿入孔36は、補強材挿入孔32,32の位置に合わせて、即ち補強材挿入孔32,36が互いに連通する配置に形成され、隣接する弧状部分ブロック26,26の接合端面26a,26bを突き合わせた状態で、隣り合う一方の弧状部分ブロック26の補強材挿入孔32より押し出された棒状補強材34が挿入されるようになっている。
【0040】
この補強材挿入孔36は、補強材挿入孔32の接合端面側部32aの内径と略同径、即ちスライド自在な径で、棒状補強材34の一部のみ(約半分)が収容される深さに形成され、挿入された棒状補強材34は、その先端部が奥面36aで当て止めされる位置まで補強材挿入孔36内をスライドできるようになっている。
【0041】
このような弧状部分ブロック26,26のブロック間結合部は、図5に示すように、隣り合う弧状部分ブロック26,26の接合端面26a,26b同士を相互に突き合わせ配置に接合させた構造になっており、目地部、即ち互いに対向する接合端面26a,26b間部には接着剤を介在させている。
【0042】
また、このブロック間結合部には、互いに連通する配置に補強材挿入孔32,36を有し、この両補強材挿入孔32,36内に両弧状部分ブロック26,26を跨らせて棒状補強材34が挿入され、棒状補強材34の周囲と補強材挿入孔32,36内面との間の間隙がグラウトによって埋められ、これにより結合されている。
【0043】
尚、短円筒体22の外周には、タガ部材27,27が配置されており一定の強度が確保されるので、ブロック間結合部の補強材挿入孔32,36内に充填されたグラウトが養生期間中であっても短円筒体22を地中に圧入することができるようになっている。
【0044】
また、グラウトを充分に充填する為には、弧状部分ブロック26に、補強材挿入孔32,36と連通し、ブロックの内周面部又は外周面部に開口した吐出孔40,40…を設けることが好ましい。
【0045】
このようにすることによって、各部分ブロック間の周方向結合部において高い耐力が得られ、構造物全体においても高い耐力が得られるようになっている。
【0046】
この弧状部分ブロック26,26を結合するには、まず、隣り合う弧状部分ブロック26,26を、接合端面26a、26bを接着剤を介して相互に突き合わせて接合する。
【0047】
このとき、棒状補強材34は、補強材挿入孔32内に全長に亘って収容させておき、弧状部分ブロック26の接合端面26aより引っ込んだ状態にしておく。
【0048】
そして、補強材押出手段導入路33に可撓性押出棒35を挿入し、補強材押出手段導入路33を通して可撓性押出棒35を補強材挿入孔32内に突出させ、可撓性押出棒35の先端で棒状補強材34の端部を押し、棒状補強材34を周方向補強材挿入孔36側に押し出す。
【0049】
押し出された棒状補強材34は、図4に示すように、隣り合う一方の弧状部分ブロック26の周方向接合端面26aより突出し、両補強材挿入孔32,36に亘って跨る位置までスライドし、他方の弧状部分ブロック26の補強材挿入孔奥面36aに当て止めされる。
【0050】
然る後、補強材押出手段導入路33より可撓性押出棒35を引抜き、その補強材押出手段導入路33よりグラウトを流し込み、棒状補強材34の周囲と補強材挿入孔32,36内面との間の間隙及び補強材押出手段導入路33内をグラウトで埋める。
【0051】
このとき、吐出孔40,40より補強材挿入孔32,36内の空気を吸引させ、補強材挿入孔32,36内を減圧することによりグラウトが充分に充填されるようにする。
【0052】
そして、グラウトが充分に充填されたら、グラウトを養生し、連通する両補強材挿入孔32,36内に両弧状部分ブロック26,26を跨らせて棒状補強材34を挿通させて両弧状部分ブロック26,26が結合される。
【0053】
尚、ブロック間結合構造は、図6に示すような構造であってもよい。上述の実施例と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
弧状部分ブロック26は、図4に示す弧状部分ブロック26の補強材挿入孔32,36及び押出手段導入路33に替えて、周方向両端部にそれぞれ弧状の補強材挿入孔50,51が形成されている。
【0055】
補強材挿入孔50,50は、端部の内外両側に一方が弧状部分ブロック26の円筒内周面又は外周面に開口し、他方が周方向接合端面26aに開口した弧状に形成され、その内径は補強材52がスライド自在な径になっている。
【0056】
同様に補強材挿入孔51,51は、端部の内外両側に一方が弧状部分ブロック26の円筒内周面又は外周面に開口し、他方が周方向接合端面26bに開口した弧状に形成され、その内径は補強材52がスライド自在な径になっている。
【0057】
隣り合う両弧状部分ブロック26,26に形成された補強材挿入孔50,51は、共に同じ曲率半径にて形成され、隣り合う弧状部分ブロック26,26の接合端面26a,26bを互いに突き合わせ配置に接合すると互いに連通するように配置されている。
【0058】
補強材52は、丸鋼材をもって補強材挿入孔50,51と略同じ曲率半径の円弧状に形成されている。
【0059】
このような弧状部分ブロック26,26による筒状構造物のブロック間結合構造は、図6に示すように、隣り合う弧状部分ブロック26,26の接合端面26a,26b同士を相互に突き合わせ配置に接合させた構造になっており、目地部、即ち互いに対向する接合端面間部には接着剤を介在させている。
【0060】
また、このブロック間結合部には、互いに連通する配置に補強材挿入孔50,51を有し、この両補強材挿入孔50,51内に両弧状部分ブロック26,26を跨らせて弧状補強材52が挿入され、弧状補強材52の周囲と補強材挿入孔50,51内面との間の間隙及び両補強材挿入孔50,51の空隙部分がグラウト53によって埋められ、これにより結合されている。
【0061】
この弧状部分ブロック26,26を結合するには、まず、隣り合う弧状部分ブロック26,26を、接合端面26a、26bを接着剤を介して相互に突き合わせて接合する。
【0062】
このようにすることにより、隣り合う弧状部分ブロック26,26の接合部に形成された弧状の補強材挿入孔50,51が互いに連通する。
【0063】
然る後、いずれか一方のブロックの内周開口及び外周開口より補強材挿入孔50に弧状の補強材52を挿入し、更に、補強材52を押して、補強材52の挿入方向先側略半分が接合端面26aより突出して補強材挿入孔51に挿入される位置、即ち両ブロック26,26を跨ぐ位置までスライドさせる。このとき、補強材52は円弧状に形成されているため、円滑に挿入及びスライドがなされるようになっている。
【0064】
そして、このように補強材52が補強材挿入孔50,51に挿入された状態で、一方のブロック26の内周開口及び外周開口より補強材挿入孔50,51内にグラウトを注入し、補強材挿入孔50,51と補強材52との間の間隙及び補強材挿入孔50,51の空隙部分をグラウト53で埋める。
【0065】
そして、充填されたグラウト53を養生させ、連通する両補強材挿入孔50,51内に両弧状部分ブロック26,26を跨らせて弧状補強材52を挿通させて両弧状部分ブロック26,26を結合する。
【0066】
尚、上述の実施例では、筒状構造物を地中に沈設されるPCウェル構造物20を例に説明したが、筒状構造物は、橋脚のように地上に設置されるものであってもよく、トンネル用覆工等その他の筒状構造物であってもよく、筒状構造物は、円筒の他、楕円形筒や角形筒等であってもよい。
【0067】
また、上述の実施例では、均等3分割にした形状の弧状部分ブロック26について説明したが、均等2分割や更に複数に均等分割した形状であってもよく、筒体を不均等に分割した複数の部分ブロックにより短筒体を構成するようにしてもよい。
【0068】
上述の実施例では、補強材挿入孔を部分ブロック26の内外両側に一対で設けた例について説明したが、中央部、内側又は外側のいずれか一方だけに設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係るブロック間結合構造を有する筒状構造物の一例を示す正面図である。
【図2】同上の筒状構造物の部分拡大断面図である。
【図3】同上の中心軸方向接合面部を示す平面図である。
【図4】図3中の部分ブロックを示す断面図である。
【図5】本発明に係る部分ブロックのブロック間結合構造を示す断面図である。
【図6】本発明に係る部分ブロックのブロック間結合構造の他の一例を示す断面図である。
【図7】従来の部分ブロックの接合部構造の一例を示す断面図である。
【図8】同上の部分ブロックの接合部構造の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
20 PCウェル構造物(筒状構造物)
21 鋼製刃口
22 短円筒体
23 PC緊張材
24 定着具
25 支圧板
26 部分ブロック
27 タガ部材
28 凹部
29 PC緊張材挿通孔
30 補強材挿通孔
31 補強材
32 補強材挿入孔
33 補強材押出手段導入路
34 棒状補強材
35 可撓性押出棒
36 補強材挿入孔
40 吐出孔
50,51 補強材挿入孔
52 (弧状)補強材
53 グラウト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、
前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面が互いに突き合わせ配置に接合され、該両接合端部の互いに連通する配置の両補強材挿入孔内に棒状又は弧状をした補強材が両部分ブロックを跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められていることを特徴としてなるプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合構造。
【請求項2】
筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面を互いに突き合わせ配置に接合させ、該両接合端部の互いに連通する配置の補強材挿入孔内に棒状をした補強材が両部分ブロック跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められたブロック間結合部の形成に際し、
前記周方向に隣り合う部分ブロック間両接合部の補強材挿入孔を、前記棒状補強材が長手方向にスライド自在な径に形成し、一方の補強材挿入孔の長さを前記棒状補強材がその全長に亘って収容される深さに形成するとともに該補強材挿入孔の奥部に補強材押出手段導入路を連通開口させておき、かつ、他方の補強材挿入孔を前記棒状補強材の一部のみが収容される深さに予め形成しておき、
前記一方の補強材挿入孔に棒状補強材をその全長に亘って収納させた状態で前記両接合面を突き合わせ配置に接合させた後、前記補強材押出手段導入路を通して押出手段を挿入し、棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出すことによって該棒状補強材を両補強材挿入孔に跨った位置にスライドさせ、
然る後両補強材挿入孔にグラウトを充填することを特徴としてなるプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合方法。
【請求項3】
補強材挿入孔を部分ブロックの周方向に向けた弧状に形成しておく請求項2に記載のプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合方法。
【請求項4】
押出手段は、可撓性を有する可撓性押出棒をもって構成され、該可撓性押出棒を部分ブロックの内周面部又は外周面部に開口した補強材押出手段導入路より挿入し、前記可撓性押出棒により一方の補強材挿入孔に全長に亘って収納させた棒状補強材を他方の補強材挿入孔側に押し出す請求項2又は3に記載のプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合方法。
【請求項5】
筒の一部を構成するプレキャスト部分ブロックを筒周方向及筒中心線方向に多数連結して構築された筒状構造物にあって、前記筒周方向側に互いに隣り合う部分ブロックの周方向側接合端面を互いに突き合わせ配置に接合させ、該両接合端部の互いに連通する配置の補強材挿入孔内に弧状をした補強材が両部分ブロック跨らせて挿入され、該補強材の周囲と前記補強材挿入孔内面との隙間がグラウトによって埋められたブロック間結合部の形成に際し、
前記周方向に隣り合う部分ブロック間接合部の補強材挿入孔を、一方が部分ブロックの筒内周又は筒外周に開口し、他方が前記周方向接合端面に開口した弧状に形成しておき、
前記両接合面を突き合わせ配置に接合させた後、前記弧状補強材を前記筒内周又は筒外周の開口より補強材挿入孔に挿入し、該弧状補強材を両補強材挿入孔に跨った位置にスライドさせ、
然る後両補強材挿入孔にグラウトを充填することを特徴としてなるプレキャスト部分ブロックによる筒状構造物のブロック間結合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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