説明

プレス成形装置、およびプレス成形方法

【課題】燃料電池用の金属セパレータにシワやたわみが生じることを防止し、さらに金属セパレータの搬出作業を迅速に行うことによって金属セパレータの製造作業の作業効率を向上し得るプレス成形装置、およびプレス成形方法を提供する。
【解決手段】プレス成形装置570は、付勢手段622の付勢力によるノックアウト部材621の移動を規制してポンチ610とノックアウト部材との間に隙間部を形成する停止位置にノックアウト部材を保持し、ブランク材670を打ち抜き加工して成形された金属セパレータを、停止位置にノックアウト部材を保持した状態で搬出路650へ搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形装置、およびプレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に用いられる金属セパレータは、薄板状の金属からなるブランク材に流体を流通させるための流路溝を成形し、そのブランク材を打ち抜き加工して製造している(特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、ブランク材からワークを打ち抜く加工は、ブランク材を載置するダイおよびダイに対して接近離反移動するポンチを備えたプレス成形装置によって行う。ポンチによってワークを打ち抜くと、ワークの種類によっては、打ち抜いたワークにシワやたわみなどが生じることがある。打ち抜いたワークにシワやたわみが発生することを防止するために、ブランク材に対してポンチに向かう方向へ背圧を付与するノックアウト部材をダイに設けたプレス成形装置がある。打ち抜いたワークは、ノックアウト部材が支持した状態でダイ上に戻る。このため、ダイ上には、スクラップ材として回収される打ち抜き加工後のブランク材と、ワークとが存在することになる。
【特許文献1】特開2003−151571
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路溝を成形したブランク材を打ち抜き加工して金属セパレータを製造するにあたり、ノックアウト部材を備えたプレス成形装置を適用した場合、打ち抜いた金属セパレータにシワやたわみが発生することを防止することはできる。その一方、上述したように、ダイ上には打ち抜き加工後のブランク材と金属セパレータとが存在することになる。金属セパレータの搬出は、打ち抜き加工後のブランク材と分別してロボットハンドや作業者の手作業によって行う必要がある。このため、金属セパレータを搬出する作業が煩雑化し、作業を迅速に行うことが困難になる。搬出作業の煩雑化に伴って金属セパレータの製造作業の作業効率の低下が招かれ得る。
【0005】
そこで、本発明の目的は、燃料電池用の金属セパレータにシワやたわみが生じることを防止しつつ金属セパレータの搬出作業を迅速に行うことによって金属セパレータの製造作業の作業効率を向上し得るプレス成形装置、およびプレス成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料電池用金属セパレータの流路溝が形成されたブランク材を打ち抜き加工することによって金属セパレータを成形する成形装置であって、ブランク材を載置するダイ、およびダイに対する接近離反移動によってブランク材を打ち抜き加工するポンチを備えるプレス型を有している。さらに、付勢手段によってポンチに向かう方向に付勢力を付与してダイに配置され、ブランク材を支持するとともにポンチのプレス成形方向への移動に伴う押圧によって付勢力に抗して移動するノックアウト部材と、付勢力によるノックアウト部材の移動を規制してポンチとノックアウト部材との間に隙間部を形成する停止位置にノックアウト部材を保持する保持手段と、を有している。そして、隙間部からプレス型外部へ連通する搬出路と、ブランク材を打ち抜き加工して成形された金属セパレータを、停止位置にノックアウト部材を保持した状態でノックアウト部材から搬出路へ搬送する搬送手段と、を有している。
【0007】
また、本発明は、燃料電池用金属セパレータの流路溝が形成されたブランク材を打ち抜き加工することによって金属セパレータを成形する成形方法であって、プレス型が備えるダイにブランク材を載置し、ダイに対して接近離反移動自在に設けられたポンチに向かう方向に付勢力を付与してダイに配置したノックアウト部材によってブランク材を支持させる。次に、ダイに対してポンチを接近移動させることによってノックアウト部材を押圧して付勢力に抗して移動させながらブランク材を打ち抜き加工して金属セパレータを成形する。さらに、付勢力によるノックアウト部材の移動を規制してポンチとノックアウト部材との間に隙間部を形成する停止位置にノックアウト部材を保持し、停止位置にノックアウト部材を保持した状態でノックアウト部材が支持する金属セパレータを隙間部からプレス型外部へ連通する搬出路へ搬送する。
【発明の効果】
【0008】
ノックアウト部材によって背圧を付与しつつブランク材を打ち抜き加工し、ポンチとノックアウト部材との間に隙間部を形成する停止位置にノックアウト部材を保持した状態で金属セパレータをノックアウト部材から搬送するため、燃料電池用の金属セパレータにシワやたわみが生じることを防止でき、さらに金属セパレータの搬出作業を迅速に行うことによって金属セパレータの製造作業の作業効率を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、燃料電池スタック10を示す概略斜視図、図2は、燃料電池スタック10を構成する単セル50を示す断面図、図3(A)は、燃料電池用金属セパレータの製造装置500を示す正面図、図3(B)は、燃料電池用金属セパレータの製造装置500を示す平面図、図4(A)は、本実施形態に係るプレス成形装置570を示す断面図、図4(B)は、図4(A)の4A−4A方向から見た断面図、図5は、搬送手段660による搬送方法の説明に供する流路溝110の拡大図、図6〜図8は、プレス成形方法の説明に供するプレス成形装置600の断面図である。
【0011】
図1および図2は、本発明の実施の形態であるプレス成形装置570によって打ち抜き加工された燃料電池用金属セパレータ100(以下、金属セパレータとも記す)を適用した燃料電池スタック10および単セル50を示している。図3は、燃料電池用金属セパレータの製造装置500にプレス成形装置570を組み込んだ実施の形態を示す。
【0012】
図4(A)および図4(B)を参照して、プレス成形装置570は、概説すれば、燃料電池用金属セパレータ100の流路溝110が形成されたブランク材670を載置するダイ620、およびダイ620に対する接近離反移動によってブランク材670を打ち抜き加工するポンチ610を備える打ち抜き加工用のプレス型600(プレス型に相当する)と、付勢手段622によってポンチ610に向かう方向(図中矢印A)に付勢力を付与してダイ620に配置され、ブランク材670を支持するとともにポンチ610のプレス成形方向への移動に伴う押圧によって付勢力に抗して移動する(図4(A)中下方)ノックアウト部材621と、付勢力によるノックアウト部材621の移動を規制してポンチ610とノックアウト部材621との間に隙間部gを形成する停止位置pにノックアウト部材621を保持する保持手段640と(図6(B)をも参照)、隙間部gから打ち抜き加工用のプレス型600外部へ連通する搬出路650と、ブランク材670を打ち抜き加工して成形された金属セパレータ100を、停止位置pにノックアウト部材621を保持した状態でノックアウト部材621から搬出路650へ搬送する搬送手段660と、を有している。
【0013】
搬送手段660は、流路溝110に向けてガスa1、a2(気体に相当する)を吹き付けて金属セパレータ100を搬送するガス供給部661(送風機に相当する)を備えている。保持手段640は、ダイ620に対して係合することによって停止位置pにノックアウト部材621を保持する係合部材641と(図6(B)をも参照)、ダイ620と係合部材641との係合を解除する係合解除部材643と(図8(A)をも参照)、を有している。搬出路650には、金属セパレータ100に傷が付くことを防止する弾性部材651を設けている。
【0014】
図1および図2を参照して、燃料電池スタック10、単セル50、および金属セパレータ100について説明する。
【0015】
図1を参照して、燃料電池スタック10は、燃料ガスと酸化剤ガスの反応によって起電力を生じる単位電池としての単セル50を複数積層して構成している。燃料電池スタック10の両端部には、燃料電池スタック10において発電された電力を取り出す端子部材である集電板11と、絶縁板12と、エンドプレート13と、を有している。
【0016】
燃料電池スタック10の内部を貫通した貫通孔(図示せず)にタイロッド14を挿通し、そのタイロッド14の端部を締結部材(図示せず)によって締結している。燃料電池スタック10には、締結による加圧力を付与している。
【0017】
燃料電池スタック10の両端部に設けられたそれぞれのエンドプレート13には、燃料電池スタック10内に流体を流入させるための導入口15a、16a、17a、および流通させた流体を排出する排出口15b、16b、17bを設けている。燃料ガスは、燃料ガス導入口15aから流入させて燃料ガス排出口15bから排出する。酸化剤ガスは、酸化ガス導入口16aから流入させて酸化ガス排出口16bから排出する。冷却水は、冷却水導入口17aから流入させて冷却水排出口17bから排出する。
【0018】
図2を参照して、単セル50は、膜電極接合体60と、膜電極接合体60を挟持する金属セパレータ100によって構成している。
【0019】
膜電極接合体60は、燃料極70と、空気極80と、電解質膜90と、を有している。燃料極70は、触媒層71およびガス拡散層72を備えている。空気極80も同様に、触媒層81およびガス拡散層82を備えている。
【0020】
金属セパレータ100は、ステンレスやアルミ等の薄板状のブランク材670に凹凸形状の流路溝110を成形した後、ブランク材670を打ち抜き加工して製造する。凹凸形状の流路溝110は、専用の成形型531、532によって成形する(図3(A)および(B)をも参照)。
【0021】
燃料極70と金属セパレータ100の流路溝110との間に、水素を流通させるための燃料ガス流路Hを形成する。空気極80と金属セパレータ100との間に、酸化剤ガスを流通させるための酸化剤ガス流路Oを形成する。向かい合わせて配置された金属セパレータ100の流路溝110同士の間に、冷却水が流れる冷却水流路Wを形成する。
【0022】
次に、単セル50において電気を生じさせるために行う化学反応を説明する。
【0023】
燃料極70に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒粒子により酸化され、プロトンおよび電子となる。生成されたプロトンは、燃料極70の触媒層71に含まれる電解質および燃料極70の触媒層71が接触している電解質膜90を通って、空気極80の触媒層81に到達する。燃料極70の触媒層71で生成した電子は、燃料極70の触媒層71、燃料極70のガス拡散層72、燃料極70の側に配置された金属セパレータ100および外部回路(図示せず)を通って、空気極80の触媒層81に達する。そして、空気極80の触媒層81に達したプロトンおよび電子は空気極80に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応して水を生成する。単セル50は、上記の化学反応を通して電気を生成する。
【0024】
次に、図3(A)および図3(B)を参照して、燃料電池用金属セパレータの製造装置500は、ロール部材に巻き付けて準備されたブランク材670を供給するアンコイラー510と、アンコイラー510から供給されたブランク材670のたわみを防止するたわみ防止治具520と、ブランク材670を成形加工する成形機530と、ブランク材670に対してアンコイラー510からリコイラー550に向う方向(図中矢印方向)に引っ張り力を付与するフィーダー540と、打ち抜き加工後のブランク材680(以下、スクラップ材とも記す)を巻き取るリコイラー550と、燃料電池用金属セパレータの製造装置500の各部の動作を制御する制御部560と、を有している。金属セパレータ100の製造工程は、図中矢印方向に進行する。
【0025】
ブランク材670には、燃料電池用の金属セパレータの材料として公知であるステンレスを用いる。ステンレスを、厚さ寸法0.1mm程度の薄板状に成形し、ロール部材に巻き付けて準備する。ブランク材670には、燃料電池用の金属セパレータの材料として公知であるアルミ等を用いることも可能である。
【0026】
たわみ防止治具520は、アンコイラー510と成形機530との間に配置する。支持部521と矯正ローラー522との間にブランク材670を挟みこむことによって、ブランク材670がたわむことを防止する。
【0027】
成形機530は、ダイ620に載置されたブランク材670に流路溝110を予備成形する第1成形型531と、予備成形された流路溝110を本成形する第2成形型532と、第1成形型531および第2成形型532によって流路溝110が形成されたブランク材670を打ち抜き加工するポンチ610を備えたプレス成形装置570(図4(A)をも参照)と、を有している。ブランク材670を載置するダイ620は、第1成形型531、第2成形型532、およびポンチ610のそれぞれの下型として共用化する。
【0028】
フィーダー540は、ブランク材670に対して引っ張り力(図中矢印方向)を付与する。ブランク材670がたわむことを防止し、リコイラー550による巻取り作業を円滑に行うことを可能にする。
【0029】
制御部560は、制御信号を送信し、成形機530の動作や、送風機661の動作、および係合解除部材643の動作などを制御する(図4(A)をも参照)。
【0030】
図4(A)、および図4(B)を参照して、ノックアウト部材621には、ダイ620下部に設けられた付勢手段622によってポンチ610に向かう方向(図中矢印A方向)に付勢力を付与している。付勢手段622は、ノックアウト部材621に対して弾発力を付与するバネ部材によって構成している。付勢手段には、例えば、油圧等によって付勢力を付与する構成のものを用いることも可能である。
【0031】
打ち抜き加工用のプレス型600は、ブランク材670においてスクラップ材となる部位672をダイ620との間で挟み込むガイド型625をさらに有している。
【0032】
ノックアウト部材621は、流路溝110が形成された部位を囲むようにブランク材670を支持する。ガイド型625は、ブランク材670においてスクラップ材となる部位672をダイ620との間で挟み込む。
【0033】
打ち抜き加工する際、ポンチ610は、ブランク材670のうち、流路溝110の周辺部671を打ち抜く。流路溝110の周辺部671に対しては、ポンチ610によるプレス成形方向への押圧と、付勢手段622によるポンチ610へ向かう方向への背圧とを付与する。
【0034】
打ち抜き加工されたブランク材670のうち、流路溝110およびその周辺部671は、金属セパレータ100を構成する。金属セパレータ100は、搬出路650から搬出する。スクラップ材680は、ダイ620上からリコイラー550によって回収する。
【0035】
搬送手段660が備えるガス供給部661は、ポンチ610およびノックアウト部材621に設けられた送風路662を介してガスa1、a2を金属セパレータ100に吹き付ける。制御部560は、ノックアウト部材621を停止位置pに保持した状態でガス供給部661へ制御信号s1を送信する。ガス供給部661は、制御部560からの制御信号s1に従って送風路662へガスa1、a2を供給する(図7(A)をも参照)。制御部560は、ガスの供給量やガスを供給するタイミングを制御する。
【0036】
図示例にあっては、ポンチ610およびノックアウト部材621に送風路662を設けている。ガスの吹き付け量を増加させることができ、効率的に金属セパレータ100を搬送することが可能になっている。
【0037】
図5を参照して、金属セパレータ100を搬送する際、流路溝110に向かう方向へガスa1、a2を吹き付ける。金属セパレータ100が風圧を受け易くなるため、金属セパレータ100を搬出路650へ効率的に搬送することが可能となる。図示例にあっては、金属セパレータ100が受ける風圧を増加させるため、流路溝110の縦壁部に向かう方向へガスa1、a2を吹き付けている。
【0038】
ガスa1、a2には、空気を利用しているが、ガスの種類はこれに限定されるものではない。例えば、窒素ガス等を用いることも可能である。
【0039】
送風路662を設ける位置、送風路662の形状、およびガスa1、a2を吹き付ける方向等は、図示されるものに限定されず、適宜変更することができる。例えば、ダイ620内に送風路を設け、ガスの吹き付け量を増加させることも可能である。
【0040】
図4(A)および図4(B)を参照して、搬出路650は、打ち抜き加工用のプレス型600外部に設けられた収納ボックス652へ連通して設けている。金属セパレータ100は、ダイ620内を貫通して設けられた搬出路650を経由して収納ボックス652内に収納する。金属セパレータ100が収納された収納ボックス652は、燃料電池用金属セパレータの製造装置500の外部へロボットハンド等によって搬送する。
【0041】
搬出路650に設けた弾性部材651は、緩衝材として機能し、搬出路650内を通過する金属セパレータ100に傷が付くことを防止する。弾性部材651には、硬質のウレタン材を用いている。弾性部材651の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、低反発のウレタン材等を用いることも可能である。
【0042】
係合部材641は、ノックアウト部材621内に配置し、係合解除部材643は、ダイ620内に配置している。
【0043】
ダイ620に設けられた凹状の係合部645にピン形状の係合部材641を係合することによって、ノックアウト部材621を停止位置pに保持する。停止位置pに保持されたノックアウト部材621とポンチ610との間に隙間部gを形成する(図7(A)をも参照)。
【0044】
係合部材641には、バネ部材642によって係合部645に向かう方向に弾発力を付与している。係合部材641は、ノックアウト部材621のプレス成形方向への移動に伴って係合部645に向けて突出して係合する(図6(A)をも参照)。係合部材641の係合部645に対する係合を維持することによって停止位置pにノックアウト部材621を保持する。
【0045】
係合解除部材643は、係合部645に向けて伸縮自在なロッドによって構成している。駆動部644を動作させることによって係合解除部材643の伸縮動作を駆動する。駆動部644には、例えば、空気圧や油圧によって動作する流体圧シリンダを用いることが可能である。
【0046】
金属セパレータ100を搬出路650へ搬送した後、制御部560から制御信号s2を送信し、駆動部644を動作させる。駆動部644は、係合解除部材643を係合部材641に向けて伸長させる。係合解除部材643を係合部材641に押し付けることによって係合部材641の係合を解除する(図8(A)をも参照)。係合を解除することによって付勢手段622によるノックアウト部材621の移動を開始させる(図8(B)をも参照)。係合解除部材643の動作を制御することによって、金属セパレータ100が搬出路650へ搬送されるまでノックアウト部材621を停止位置pにおいて保持することができる。
【0047】
ダイ620に対して係合する係合部材641および係合部材641の係合を解除する係合解除部材643を用いることによって、停止位置pにおけるノックアウト部材621の保持および保持解除を簡易な作業によって行うことができる。このため、ノックアウト部材621を停止位置pにおいて保持および保持解除する作業を行う場合であっても、打ち抜き加工の作業効率が低下することを防止できる。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0049】
図6(A)を参照して、付勢手段622によってポンチ610に向かう方向(図中矢印A方向)に付勢されたノックアウト部材621は、流路溝110が形成された部位を囲むようにブランク材670を支持する(図4(B)をも参照)。
【0050】
図6(B)を参照して、ポンチ610をプレス成形方向(図中矢印B方向)へ向けて移動させる。ノックアウト部材621は、ポンチ610の移動に伴う押圧によって付勢手段622による付勢力に抗して移動する(図中矢印B′で示す)。ポンチ610は、ノックアウト部材621との間において流路溝110の周辺部671を挟みこんだ状態で移動し、流路溝110の周辺部671を打ち抜く。ガイド型625は、ダイ620との間でスクラップ材680となる部位672を挟み込む(図4(B)をも参照)。流路溝110の周辺部671に対しては、ポンチ610によるプレス成形方向への押圧と、付勢手段622によるポンチ610へ向かう方向への背圧とを付与する。
【0051】
打ち抜き加工後、流路溝110およびその周辺部671は、金属セパレータ100を構成する。ガイド型625とダイ620との間に挟みこまれた部位672は、スクラップ材680となる。金属セパレータ100は、ノックアウト部材621上に載置し、スクラップ材680は、ダイ620上に残置する。
【0052】
背圧を付与した状態でブランク材670を打ち抜き加工するため、金属セパレータ100にシワやたわみが生じることを防止できる。
【0053】
バネ部材642は、ノックアウト部材621が定められた位置まで下降すると係合部材641を係合部645に向けて突出させる。係合部材641は、係合部645に対して係合する。係合部材641を係合させることによって、付勢手段622の付勢力によるノックアウト部材621の移動を規制してノックアウト部材621を停止位置pに保持する。
【0054】
図7(A)を参照して、ノックアウト部材621を停止位置pに保持した状態でポンチ610を金属セパレータ100から離反する方向(図中矢印C方向)へ移動させる。ノックアウト部材621とポンチ610との間に隙間部gを形成する。
【0055】
制御部560からの制御信号s1に従って、送風路662へガスa1、a2を供給する。ノックアウト部材621を停止位置pに保持した状態で金属セパレータ100にガスa1、a2を吹き付けて搬出路650へ搬送する。
【0056】
前述したように、金属セパレータ100は、厚さ寸法が0.1mm程度の金属薄板を材料として構成している。ロボットハンド等によって金属セパレータ100とスクラップ材680とを分別して金属セパレータ100を搬送する場合、ロボットハンドの把持によって金属セパレータ100にシワや変形等が生じ得る。
【0057】
これに対して本実施形態にあっては、ガスa1、a2の吹き付けによって金属セパレータ100を搬送する。このため、搬送作業によって金属セパレータ100にシワや変形等が生じることを防止できる。
【0058】
図7(B)を参照して、金属セパレータ100は、搬出路650を経由して収納ボックス652内に収納する。搬出路650に設けた弾性部材651は、緩衝材として機能し、搬出路650内を通過する金属セパレータ100に傷が付くことを防止する。
【0059】
従来の打ち抜き加工用のプレス型を備えたプレス成形装置にあっては、打ち抜き加工された金属セパレータをノックアウト部材上に載置した状態でダイ上に戻す構成となっている。このため、ポンチとノックアウト部材との間から金属セパレータを搬出する場合には、ダイ上に戻された金属セパレータと、ダイ上に残置されたスクラップ材とを作業者の手作業やロボットハンドによって分別して搬出する必要がある。このため、プレス成形装置からの金属セパレータの搬出作業が煩雑化し、作業を迅速に行うことが困難になる。搬出作業の煩雑化に伴って金属セパレータの製造作業の作業効率の低下が招かれる。
【0060】
これに対して、本実施形態にあっては、ノックアウト部材621を停止位置pに保持することによって、ポンチ610とノックアウト部材621との間に隙間部gを形成する。隙間部gを利用して停止位置pに保持したノックアウト部材621から金属セパレータ100を搬送する。金属セパレータ100をダイ620上に戻すことなく、金属セパレータ100を打ち抜き加工用のプレス型600から搬出することが可能になる。金属セパレータ100とスクラップ材680とを分別する作業を省くことができ、金属セパレータ100の搬出作業を迅速に行うことが可能になる。このため、金属セパレータ100の製造作業の作業効率を向上させることができる。
【0061】
図8(A)を参照して、金属セパレータ100を搬出路650へ搬送した後、制御部560からの制御信号s2に従って係合解除部材643を伸長させる。係合解除部材643を係合部材641に押し付けて係合を解除する。金属セパレータ100が搬出路650へ搬送されるまでノックアウト部材621を停止位置pにおいて保持することによって、ダイ620上に金属セパレータ100が戻されることを防止する。
【0062】
図8(B)を参照して、係合部材641の係合を解除することによって、ノックアウト部材621の保持を解除し、付勢手段622の付勢力によるノックアウト部材621の移動を開始させる。
【0063】
リコイラー550は、ブランク材670を巻き取って移動させ(図中矢印Dで示す)、ダイ620およびノックアウト部材621上に打ち抜き加工前のブランク材670を載置する。ダイ620上には、金属セパレータ100が戻されないため、流路溝が形成されたブランク材に対して引き続き打ち抜き加工を行うことができる。
【0064】
上述したように、本実施形態によれば、打ち抜き加工用のプレス型600が備えるダイ620に配置されたノックアウト部材621を停止位置pに保持し、ノックアウト部材621から金属セパレータ100を搬送する。金属セパレータ100をダイ620上に戻すことなく、金属セパレータ100を打ち抜き加工用のプレス型600から搬出する。金属セパレータ100とスクラップ材680とを分別する作業を省くことができ、金属セパレータ100の搬出作業を迅速に行うことができる。このため、金属セパレータ100の製造作業の作業効率を向上させることができる。背圧を付与した状態でブランク材670を打ち抜き加工するため、金属セパレータ100にシワやたわみが生じることを防止できる。
【0065】
搬送手段660は、ガスa1、a2の吹き付けによって金属セパレータ100を搬送する。このため、搬送作業によって金属セパレータ100にシワや変形等が生じることを防止できる。流路溝110に向かう方向へガスa1、a2を吹き付けることによって、金属セパレータ100に風圧を受け易くしている。このため、金属セパレータ100を搬出路650へ効率的に搬送することができる。
【0066】
ダイ620に対して係合する係合部材641および係合部材641の係合を解除する係合解除部材643を用いることによって、停止位置pにおけるノックアウト部材621の保持および保持解除を簡易な作業によって行うことができる。そのため、ノックアウト部材621を停止位置pにおいて保持および保持解除する作業を行う場合であっても、打ち抜き加工の作業効率が低下することを防止できる。
【0067】
搬出路650に設けた弾性部材651は、緩衝材として機能し、搬出路650内を通過する金属セパレータ100に傷が付くことを防止できる。
【0068】
搬送手段は、気体を吹き付けることによって金属セパレータを搬送する構成に限定されるものではない。例えば、伸長自在に設けられたロッド等によって金属セパレータを押し出して搬送する構成にすることも可能である。
【0069】
係合部材および係合解除部材は、図示された形状や構成に限定されるものではない。係合部材がダイに対して係合することによって、ノックアウト部材を停止位置において保持することができ、保持解除部材が係合部材の係合を解除することによって、付勢手段の付勢力によるノックアウト部材の移動を可能にするような形状や構成であればよい。
【0070】
ノックアウト部材を保持する停止位置や隙間部の幅寸法は、特に限定されるものではない。付勢手段によるノックアウト部材の移動を規制した状態で金属セパレータを搬出路へ搬送することが可能な形態であればよい。
【0071】
搬出路に設ける弾性部材は、金属セパレータを搬出する際に緩衝材として機能させることが可能な位置に設けられていればよく、形状等は特に限定されるものではない。
【0072】
本発明のプレス成形装置は、燃料電池用の流路溝が成形されたブランク材を打ち抜き加工することによって金属セパレータを製造することを目的としてその作用を発揮する。このため、流路溝の成形および打ち抜き加工を連続して行う燃料電池用金属セパレータの製造装置500に組み込んだ実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】燃料電池スタックを示す概略斜視図である。
【図2】燃料電池スタックを構成する単セルを示す断面図である。
【図3】図3(A)は、燃料電池用金属セパレータの製造装置を示す正面図であり、図3(B)は、燃料電池用金属セパレータの製造装置を示す平面図である。
【図4】図4(A)は、本実施形態に係るプレス成形装置を示す断面図、図4(B)は、図4(A)の4A−4A方向から見た断面図である。
【図5】搬送手段による搬送方法の説明に供する流路溝の拡大図である。
【図6】図6(A)および(B)は、プレス成形方法の説明に供するプレス成形装置の断面図である。
【図7】図7(A)および(B)は、プレス成形方法の説明に供するプレス成形装置の断面図である。
【図8】図8(A)および(B)は、プレス成形方法の説明に供するプレス成形装置の断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10 燃料電池スタック、
50 単セル、
60 膜電極接合体、
70 燃料極、
80 空気極、
90 電解質膜、
100 金属セパレータ、
110 流路溝、
500 燃料電池用金属セパレータの製造装置、
510 アンコイラー、
520 たわみ防止治具、
521 支持部、
522 矯正ローラー、
530 成形機、
531 第1成形型、
532 第2成形型、
540 フィーダー、
550 リコイラー、
560 制御部、
570 プレス成形装置、
600 打ち抜き加工用のプレス型(プレス型)、
610 ポンチ、
620 ダイ、
621 ノックアウト部材、
622 付勢手段、
625 ガイド型、
640 保持手段、
641 係合部材、
642 バネ部材、
643 係合解除部材、
644 駆動部、
645 係合部、
650 搬出路、
651 弾性部材、
652 収納ボックス、
660 搬送手段、
661 ガス供給部(送風機)、
662 送風路、
670 ブランク材(流路溝が形成されたブランク材)、
671 流路溝の周辺部、
672 スクラップ材となる部位、
680 スクラップ材、
s1、s2 制御信号、
a1、a2 ガス(気体)、
g 隙間部、
p 停止位置、
H 燃料ガス流路、
O 酸化剤ガス流路、
W 冷却水流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用金属セパレータの流路溝が形成されたブランク材を載置するダイ、および前記ダイに対する接近離反移動によって前記ブランク材を打ち抜き加工するポンチを備えるプレス型と、
付勢手段によって前記ポンチに向かう方向に付勢力を付与して前記ダイに配置され、前記ブランク材を支持するとともに前記ポンチのプレス成形方向への移動に伴う押圧によって前記付勢力に抗して移動するノックアウト部材と、
前記付勢力による前記ノックアウト部材の移動を規制して前記ポンチと前記ノックアウト部材との間に隙間部を形成する停止位置に前記ノックアウト部材を保持する保持手段と、
前記隙間部から前記プレス型外部へ連通する搬出路と、
前記ブランク材を打ち抜き加工して成形された金属セパレータを、前記停止位置に前記ノックアウト部材を保持した状態で前記ノックアウト部材から前記搬出路へ搬送する搬送手段と、を有するプレス成形装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記流路溝に向けて気体を吹き付けて前記金属セパレータを搬送する送風機を備える、請求項1に記載のプレス成形装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記ダイに対して係合することによって前記停止位置に前記ノックアウト部材を保持する係合部材と、前記ダイと前記係合部材との係合を解除する係合解除部材と、を有する請求項1または請求項2に記載のプレス成形装置。
【請求項4】
前記搬出路に設けられ、前記金属セパレータに傷が付くことを防止する弾性部材をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレス成形装置。
【請求項5】
プレス型が備えるダイに燃料電池用金属セパレータの流路溝が形成されたブランク材を載置し、前記ダイに対して接近離反移動自在に設けられたポンチに向かう方向に付勢力を付与して前記ダイに配置したノックアウト部材によって前記ブランク材を支持する工程と、
前記ダイに対して前記ポンチを接近移動させることによって前記ノックアウト部材を押圧して前記付勢力に抗して移動させながら前記ブランク材を打ち抜き加工して金属セパレータを成形する工程と、
前記付勢力による前記ノックアウト部材の移動を規制して前記ポンチと前記ノックアウト部材との間に隙間部を形成する停止位置に前記ノックアウト部材を保持する工程と、
前記停止位置に前記ノックアウト部材を保持した状態で前記ノックアウト部材が支持する前記金属セパレータを前記隙間部から前記プレス型外部へ連通する搬出路へ搬送する工程と、を有するプレス成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−125462(P2010−125462A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299876(P2008−299876)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】