説明

プレス機およびこのプレス機に対する加工物搬送方法

【課題】ベルト路程ずれの修正が良好に行われるプレス機を提供する。
【解決手段】互いの間隔を変更可能な下側のプレスプレート3と上側のプレスプレート4とから開閉操作される少なくとも1つのプレス段1と、下側のプレスプレート3の周りを回動するとともに加工すべき加工物をプレス段1に対して搬出入するためのコンベアベルト5とを備え、この下側のプレスプレート3が、コンベアベルト5に対して張力の付与と弛緩とを行うテンショナー6とコンベアベルト路程修正手段とを有するプレス機。コンベアベルト路程修正手段がコンベアベルト5をコンベア進行方向に対して交差する方向にずらすためのずらし手段9を含む。ずらし手段9がテンショナー6と同期制御され、コンベアベルト5が弛緩状態でかつ停止状態である場合に路程修正動作を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス段を開閉するために互いの間隔を変更可能な複数のプレスプレートと、加工物をプレス段に対して搬出入するためのコンベアベルトとを備えたプレス機、及びこのプレス機に対する加工物搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなプレス機は、例えば、特許文献1から知られている。このプレス機は、プレス段(プレス加工空間、プレスフロア)を開閉するために互いの間隔を変更可能な上側と下側のプレスプレートを有する少なくとも1つのプレス段と、プレス加工すべき加工物をプレス段に対して搬出入するための、下側のプレスプレートの周りを回動するコンベアベルトとを備える。プレス段の下側のプレスプレートは、コンベアベルトに対して張力を付与したり弛緩したりするためのテンショナーを有し、それによって加工物を搬出入するためにコンベアベルトに対して張力を付与する。加工物の搬出入の間、具体的にはプレス段を閉じる前にテンショナーによってコンベアベルトの張力を緩めることにより、コンベアベルトの張力の影響がでない状態でプレス処理を実施することが可能となる。
【0003】
全てのコンベアベルトと同様、この種のプレス機においてもコンベアベルトの駆動時にコンベアベルトが自身の進行方向に対して交差して、すなわち進行方向から水平に見て右や左に向かって進路から外れる傾向があるため、コンベアベルトを自身の進路あるいは軌道に保つことが容易ではない。コンベアベルトの駆動時に必然的に生じる障害を防止するためにこのようなコンベアベルトの路程(進路)ずれを防止あるいは時々修正する必要がある。従ってこの種のプレス機は、さらにコンベアベルトのベルト進路、つまりベルト路程のずれを修正するための手段を備えている。
【0004】
通常の駆動ローラおよび方向転換ローラの周りを回動するコンベアベルトを有する搬送機構においては、ベルト進路においてコンベアベルトが進路で自ら中心化するようにこれらのローラを樽形あるいは左右円錐形に形成することが一般的である。これに加えて、例えばコンベアベルトの内側において、駆動ローラまたは方向転換ローラの溝で延びている
Vベルト状の止め具などのインターロック式ガイド部材が公知であり、これらを用いてコ
ンベアベルトが自身の進路(路程)からずれることを防止することが可能である。
【0005】
しかしながら、この種のプレス機に用いられるコンベアベルトは、通常幅広く短く、すなわち両方の偏向軸間の距離とコンベアベルトの幅との間における比率がおよそ2:1よりも小さくなるように構成されている。このように比較的短く幅広い搬送ベルトの場合は、先程述べたベルト進路を修正するための従来の手段が多くの場合十分な結果につながらないため、頻繁にずれ障害が発生する。従って、この種のプレス機には能動的なベルト路程ずれ制御手段を導入することが通常となった。この手段は、コンベアベルトのテンショナーに狙いを定めて作用することにより、不均等な張力(右側よりも左側を強くする、あるいは逆など)によってコンベアベルトの路程進行方向あるいは搬送動作の途中に検知された路程ずれを修正あるいは補償する。
【0006】
しかしながら、このような能動的なベルトずれ制御は、手間がかかるものである。さらに、1つ以上の部材からなる封止部材によって下側のプレスプレートと上側のプレスプレートとの間において形成される真空チャンバにおいて、実質的にプレート状である加工物を圧力および熱作用下でラミネートするというこの種のプレス機の好ましい適用例においては、コンベアベルトとして好ましくはアラミド繊維からなる、さほど柔軟性を有しない布製のベルトを使用し、ラミネート時に高い粘着性を有する接着剤を用いるため、さらにこのベルトに対してPTFEを用いてコーティングする必要がある。このようなコンベアベルトのための能動的なベルト制御は、コンベアベルトを所望の進路に保持するために比較的高い動作力を必要とする。これによってテンショナーだけではなくコンベアベルト自体に対する機械的負荷が増加するため、最終的には磨耗が増加することになる。
【0007】
さらに、能動的なベルト制御において高い動作力を必要とする、このような柔軟性を有しないコンベアベルトの場合、コンベアベルトにしわが形成される危険性があるのは、ベルト路程修正のためにコンベアベルトに対して付与される横力がコンベアベルトと駆動ローラまたは方向転換ローラとの間における局所的な摩擦力を超える場合があるからである。この新たな危険性は、特に比較的幅広いコンベアベルトについて当てはまるものである。
【0008】
この種のプレス機のさらに別の好ましい利用例において、このプレスは複数段プレスとして形成されており、プレス段のそれぞれ上側のプレスプレートが同時に次に高いプレス段の下側のプレスプレートである。従って、下側のプレスプレートの周りを回動する、1つのプレス段のコンベアベルトの下部は、その下に存在する別のプレス段の上側のプレスプレートの下方を通って延びている。ここで能動的なベルト制御を用いると、コンベアベルトにおける不均等な張力関係によって、自身の一方側では垂れ下がり、他方では張力がかっているということが生じ得る。このような垂れ下がった状態は、その下方にあるプレス段からの加工物の搬出入を必然的に邪魔してしまうため、避けなければならないが、ここでも比較的短く幅広い搬送ベルトを用いた場合には限られた形でしか可能ではない。
【0009】
コンベアベルトの素材に関係なく、またプレス機の利用方法に関係なく、ベルト進行方向のずれであるベルト路程ずれの修正のために用いられる能動的なベルト制御は、常に全プロセスにおいてエラーが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008‐296583号公報(段落番号〔0024−0032〕、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来技術に鑑みて、本発明の目的は、ベルト路程ずれの修正が良好に行われるプレス機とベルト路程ずれの修正が良好となるベルト搬送方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明によるプレス機は、プレス段を開閉するために互いの間隔を変更可能な下側のプレスプレートと上側のプレスプレートを有する、少なくとも1つのプレス段と、下側のプレスプレートの周りを回動する、加工すべき加工物をプレス段に対して搬出入するためのコンベアベルトとを備え、この下側のプレスプレートは、コンベアベルトに対して張力の付与と弛緩とを行うテンショナーとコンベアベルト路程修正手段とを有する。前記コンベアベルト路程修正手段が前記コンベアベルトをコンベア進行方向に対して交差する方向にずらすためのずらし手段を含み、当該ずらし手段が前記テンショナーと同期制御され、前記コンベアベルトが弛緩状態でかつ停止状態である場合に路程修正動作を実施するためにコンベアベルトのずらしが行われる。
【0013】
本発明におけるプレス機におけるプレス段に対して加工物を搬出入するための加工物搬送方法では、搬出入のためにコンベアベルトに対して張力が付与されて作動されるのに対して停止状態において前記コンベアベルトは前記プレス段を閉じるために弛緩されるが、その際、前記コンベアベルトが弛緩状態にある場合あるいは前記コンベアベルトが停止状態にある場合に、前記コンベアベルトを自身の進行方向に対して交差する方向にずらすことになる路程修正動作によってベルト路程修正が実行される。
【0014】
本発明の本質は、ベルト路程修正がコンベアベルトをベルト進行方向に対して交差するようにずらすという路程修正動作によって実施する点にある。このために使用されるずらし手段は、路程修正動作であるコンベアベルトのずらしがコンベアベルトの停止状態かつコンベアベルトの弛緩状態において実行されるよう、テンショナーと同期動作する。従ってこれまでの従来技術と異なり、ベルト駆動状態におけるアクティブなベルト制御を用いてコンベアベルトの動作中にベルト路程修正を行なうのではなく、停止状態および弛緩状態においてコンベアベルトの位置修正が、それも必要とされる時のみ行なわれるものである。
【0015】
路程修正動作は、コンベアベルトまたはコンベアベルトのベルトエッジの実際の位置が、理想とされる目標の位置から所定量以上逸脱した場合必要に応じて実行されることが好適である。これによって、コンベアベルトの進路が許容できる値を超えた場合あるいは越えそうになった場合に初めて動作が実行されるような効果的なベルト路程修正が可能となる。これによってコンベアベルトの路程修正動作の頻度が有利な形で最小限に抑えられる。
【0016】
さらに路程修正動作を容易にし、そのために必要とされるずらし手段を容易にするため、路程修正動作をそれぞれ前設定されたずらし変位路を用いて実施することが可能である。本発明においては実位置と目標位置の差が所定値に達するか越えると制御指令が生成されるので、極めて容易でありながら効果的なベルト路程修正(ベルト路程のずれ修正:ベルト進路修正)が実現する。
【0017】
本発明の主旨において、このような路程修正動作の指令は、コンベアベルトのベルトエッジの水平方向における実位置を検知するベルトエッジ検知センサの検出結果に基づいてトリガされるように構成すると好適である。このセンサは、評価系と共同して、ベルトエッジの実位置が目標位置からの所定量ずれたことを検知する機能をもつものであり、必要に応じて修正信号を生成すると好都合である。そのようなセンサおよび評価系としては、イメージセンサユニットであってもよいし、あるいは複数の、具体的には2つのベルトエッジ検知センサを含むベルトエッジ検知センサユニットであってよい。ベルトエッジ検知センサユニットにおいて対として使用されるベルトエッジ検知センサは、コンベアベルトのベルトエッジの水平位置における測定対象領域を間に挟み込んで、ベルトエッジが両方のベルトエッジ検知センサのうちいずれか一方によって許容範囲外のずれをもって通過したことを検知された場合に修正制御トリガ信号を生成するようなものであってもよい。さらに、各ベルトエッジにそれぞれ1つのベルトエッジ検知センサを配置してこのような監視領域を定義することも可能である。
【0018】
本発明の枠組みにおける、路程修正動作の必要性を検知するためのさらに別の可能性としては、コンベアベルトのベルトエッジの位置についての目標しきい値を監視するベルトエッジ検知センサを設け、テンショナーがコンベアベルトに対して非対称に作用する張力を付与することによって、コンベアベルトが自身の作動時に目標しきい値に向かって水平方向にずらすようにしてもよい。しきい値に到達した場合、次回コンベアベルトが弛緩している停止状態になった場合に路程修正動作が開始されてコンベアベルトを水平方向にリセットする。本発明のこの実施形態においては、極めて簡単なベルトエッジ検知センサを用い、コンベアベルトを常に同じ方向に好ましくは同じ分量だけずらす、ずらし手段を用いることも提案される。
【0019】
本発明によるプレス機におけるずらし手段は、閉状態において自身の間にコンベアベルトを挟み込む、2つの開閉可能であるグリップ部を有する少なくとも1つの挟持機構を有することが好ましい。これらグリップ部は、具体的にはグリップストリップあるいはクランプとして構成され得る。必要に応じてこのような挟持機構はコンベアベルトの側面に配置されてコンベアベルトを引っ張ったり押したりすることも、必要に応じて両方とも実施することも可能である。コンベアベルトが高い固有安定性を有しない限り、挟持機構に引っ張る動作のみを実施させることが有利であり、その場合には必要に応じて両側に挟持機構を設けてコンベアベルトを両方の交差方向に引っ張ることが可能であるようにする。さらにグリップ部をコンベアベルトの全幅に亘って延びている構成を採用することによって、引っ張り動作あるいは押し動作をともなわずに、コンベアベルトを水平方向にずらすような構成を採用することも可能である。
【0020】
挟持機構の下側のグリップ部を、好ましくは所定の垂直位置に設定されるコンベアベルトガイドとして構成し、これに対して上側のグリップ部を垂直方向に、具体的には摺動可能あるいは偏心して回動可能に保持することが可能である。これによって挟持機構は、構造的には好適な形で簡単に構成されていながらもさらにコンベアベルトをガイドあるいは支持する機能も果たすことになる。
【0021】
挟持機構の両方のグリップ部は、路程修正動作を行うためにコンベアベルトの進行方向に対して交差方向に可動である挟持機構の、少なくとも1つの共通部材としてのベースユニットに組み付け保持され、このベースユニット自体は、コンベアベルトの側面において下側のプレスプレートまたはテンショナーに固定されていることが好ましい。このベースユニットには、挟持機構の閉動作と路程修正動作とを実行するための電気式または空気圧式あるいは電気空気式の駆動部が備えられていると好都合である。
【0022】
特に確実なのは、挟持機構またはずらし手段を閉動作と路程修正動作を実施するための共通のモータが設けられる挟み式として構成することであり、閉動作と路程修正動作のシーケンスは、それ自体公知であるリンク機構および伸縮バネを用いて実現される。
【0023】
路程修正動作が下部で実行されるよう、本発明によるずらし手段をコンベアベルトの下部に設けることが特に好ましい。これは、この種のプレス機においては、コンベアベルトの上部ではコンベアベルトをプレス段あるいは必要に応じて設けられた真空チャンバからさほど突出しないようにしているので、ずらし手段の収容のためにさほど自由な設置空間が見出しにくいためである。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態は、複数段プレス機、すなわちそれぞれ各下側のプレスプレートの周りを回動するコンベアベルトを有する複数のプレス段が上下に配置されている。冒頭で述べたように、本発明によって複数段プレス機において、特別な改善が達成されるのは、不均等な張力によって能動的なベルト進路制御を省略することができることにより、加工物を搬出入する際に不利であった一方側におけるコンベアベルト下部の垂れ下がりがなくなるためである。
【0025】
複数段プレス機においてずらし手段として2つのグリップ部からなる挟持機構を用いた場合、少なくとも別のプレス段の上方に配置されるプレス段における挟持機構の下側のグリップ部に対してローラを有利な形で設けることが可能である。これが有利なのは、プレス機を閉じる際に下側のグリップ部がそのすぐ下に位置しているプレス段のコンベアベルトの上に設置されることになるためである。ローラを配置することによって、一方では下側のグリップ部とこのコンベアベルトとの間、他方では下側のグリップ部と上側のコンベアベルトの下部との間における摩擦が低減される。
【0026】
本発明を圧力および熱作用下で実質的にプレート状の加工物をラミネートするためのプレス機において用いることが特に好ましい。このようなプレス機の場合、下側のプレスプレートと上側のプレスプレートが閉じられた状態で周回状の1つ以上の部材からなる封止部材によって真空チャンバを形成し、その内部において1つ以上の加工物を同時にラミネートすることが可能である。ダイアフラムによってこの真空チャンバを少なくとも1つの加工物を収容するための、真空可能である製品空間と真空可能および/または加圧可能な圧力空間とに分割する。製品空間の真空化、さらに/あるいは圧力空間の加圧により真空チャンバに生じる圧力差によってダイアフラムが加工物に対して押圧されることにより、ダイアフラムがラミネートに必要なプレス圧を加工物に対して付与する。原則的には真空チャンバの下面が加熱板として形成されていることによって、ラミネートに必要な加工熱が直接プレス工程において加工物に対して付与される。
【0027】
このようなラミネートプレス機は、太陽光電池モジュールをラミネートする場合に用いることが好ましい。これらは通常太陽電池層であって、自身の電気接触要素ごとガラスプレートと耐候性を有する膜との間、あるいは2つのガラスプレートの間に配置されて1つ以上の接着層によってガラスプレートあるいは膜にラミネートされることにより、防湿性および耐候性を有するように透光性を有するラミネート構造に封入されているものからなる。ここで使用される接着剤は高い接着性を有し、特にコンベアベルトに対して特に高い要求を必要とするものである。
【0028】
このようなラミネートプレス機において1つあるいは複数の加工物を同時にラミネートするためには、加工物はコンベアベルトによって真空チャンバにおける製品空間内に搬入され、その後コンベアベルトが弛緩される。その後真空チャンバを閉じ、通常は先に真空チャンバの圧力空間を真空化してダイアフラムをチャンバの上半分に対して上方に引っ張る。その後、通常所定のタイムラグをおいて製品空間も真空化されるが、真空チャンバの両方の空間を真空する際に、常に圧力空間と製品空間との間に差圧が保持されるよう調整されることにより、ダイアフラムがチャンバの上半分に保持されてダイアフラムが早めに加工物と接触することを防止するようにする。
【0029】
プレス機のチャンバにおける製品空間が通常では1ミリバール(=ヘクトパスカル:hPa)以下である目標圧力にまで真空化されると、圧力空間を換気することによって圧力空間と製品空間との間における圧力差が逆転してダイアフラムが加工物の上に配置される。圧力空間における圧力を調整することによってダイアフラムに対する所定の接触力が調整されてラミネートのために必要な加工物に対するプレス圧を生成する。圧力と加工熱とがともに接着層の軟化あるいは活性化および必要によってはこれらの硬化または架橋化をもたらす。特に真空チャンバの製品空間を迅速に(可能であれば加工物の顕著な加熱の前に)真空化することによって、接着層において接着剤の硬化または架橋化が始まるまでに結果として生じ得る空気の混入(加工物の層間における設置空気)あるいは必要に応じて加熱の際に生成されたガスが加工物から引き出される。ラミネートが完成した加工物に気泡が存在する場合、加工物の寿命に顕著な影響を及ぼし、最悪の場合には加工物が即時に使用不可となり、すなわち排除品の生成につながる。
【0030】
ラミネート時における加工物は、直接真空チャンバまたは加熱プレートの下面ではなく、搬送ベルトの上に配置されるため、この搬送ベルトは比較的薄いものである必要がある。通常この搬送ベルトの厚みは、下側のプレスプレートと上側のプレスプレートとの間における周回封止部材の封止を可能な限り邪魔しないようにするため1mm以下である。搬送ベルトは、プレス機が閉状態であっても真空チャンバを通過するため、周回封止部材において真空チャンバの2面に対してクランプされる。加工物の領域においてコンベアベルトを通常さらに薄く、可能であれば0.2〜0.5mmであるように構成することによって加熱プレートと加工物との間における可能な限り良好な熱伝達を確保する。
【0031】
同時にコンベアベルトは、太陽光電池モジュールをラミネートする際に通常PTFEを用いてコーティングされる。このようなコーティングは、意図せずして加工物から排出される接着剤の残留物がコンベアベルトに対して付着することがなくなるため、これら残留物に対して極めて効果的であるということが判明した。
【0032】
太陽光電池モジュールをラミネートする際における特別な問題に関連して用いられる特別なコンベアベルトの構造は、冒頭で述べた従来技術において使用されるベルト路程修正手段における問題を大幅に増加させるものである。本発明においては、具体的にはグリップストリップであるずらし手段によって停止状態および弛緩状態でコンベアベルトの位置修正を行なうことによって、その問題の解消がなされ、具体的にはコンベアベルトの寿命が顕著に長くなる。
【0033】
さらに本発明によって、短周期ラミネート加工を実施するために並列して前後に配置された複数段プレス機をともに通過するコンベアベルトのベルト路程修正も効果的に実現可能である。ここでは各コンベアベルトが同時に2つ以上の前後に設けられて同期して協働する複数段プレス機のn個目の段を通過する。複数のプレス機のn個目の段が同一のコンベアベルトによって搭載されることによって構造的な手間を大幅に省くことが可能となる。
【0034】
まさにラミネートプレス機においても、また例えばコールドプレス機など別のプレス機においても、本発明においてはもはやテンショナーを能動的なベルト進路制御のために使用しないという大きな利点を得ることが可能となる。このことにより、コンベアベルトとその駆動ローラとの間に必要な摩擦接触が得られる程度にのみコンベアベルトに対して張力を付与するだけでよくなる。これによって、テンショナーに対しては典型的には従来技術において通常である張力の1/4〜1/3程度の張力を付与するだけでよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】積み降ろし状態の複数段プレス機の概略側面図である。
【図2】図1と同じ図において、プレス機を閉じるために弛緩状態にあるコンベアベルトを示す図である。
【図3】ベルト路程修正手段の稼動状態を示す、図2に対応する図である。
【図4】閉状態のプレス機を示す図である。
【図5】図2における詳細の概略正面図である。
【図6】図3における詳細の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明による複数段プレス機の実施形態を説明する。
図1〜4において、プレス作業空間である合計4つのプレス段1・・・を有し、プレスフレーム2が同期して垂直に昇降することで各プレス段1の間隔が収縮するように動作するプレス機が示されている。図1には開状態のプレス機が示されており、図4には閉状態のプレス機が示されている。
【0037】
各プレス段1は、下側のプレスプレート3と上側のプレスプレート4とからなり、下側のプレスプレート3の周りをプレス段1への積み下ろしを行なうためのコンベアベルト5が回動している。コンベアベルト5の方向転換ローラ7の軸に対して作用するテンショナー6により、張力がかかった状態でコンベアベルト5が方向転換ローラ7と駆動ローラ8との周りを回動して(図示されない)加工物をプレス段1に対して搬入するかプレス段1から搬出する。コンベアベルト5は実質的には空気圧式のピストン・シリンダ・アセンブリからなる。さらにコンベアベルト5の下部側部分(戻り搬送部分)に作用するように、後に詳述されるベルト路程修正のためのずらし手段9が設けられている。
【0038】
本発明に従って構成される複数段プレス機のここでの実施形態は、太陽光電池モジュールをラミネートするためのラミネートプレス機である。従ってそれぞれ上側のプレスプレート4(且つ同時にそれぞれ自身の上方に配置されるプレス段1の下側のプレスプレートでもある)は、自身の下面においてダイアフラム11が張られているダブルフレーム10を有する。ダブルフレーム10は、それぞれ下側のプレスプレート3または上側のプレスプレート4を封止する上側の周回封止部材12および下側の周回封止部材13と隣接するプレスプレート3、4とともに真空化および/または圧力付与のための(図示されない)管を有する真空チャンバを構成する。
【0039】
図1においてプレス機に対して加工物を積載する状態が示されている。このためにプレス機が開かれており(従って全てのプレス段1・・・が同時に開かれている)、コンベアベルト5は対応するテンショナー6によって、コンベアベルトの駆動ローラ8に対する摩擦が加工物搬入のために設定された搬送動作を実施するのに十分であるように均質に張力が付与されている。コンベアベルト5に対して対称的に張力が付与されており、これらのうち左側あるいは右側に垂れ下がるものはないため、全てのプレス段1における加工物の搬入路がフリーである。
【0040】
図2において、その後の処理段階におけるプレス機が示されており、ここでは(図示されない)加工物を搬入した後、ピストン・シリンダ・ユニット6を縮小するように駆動することによってコンベアベルト5が弛緩状態にされている。従って、ここではコンベアベルト5の下部が対称的に垂下している。プレス機を閉じる前にコンベアベルト5を弛緩することによって、各真空チャンバをダブルで通過するコンベアベルト5のベルト張力が真空チャンバを閉じる動作と本来のラミネート処理とに悪影響を及ぼすことを防止する。
【0041】
図3において、既に図2において示された、コンベアベルト5が弛緩されて、まだ開状態のプレス機においてベルト路程修正が実行されることが示されている。ここではずらし手段9が駆動されてそれぞれのコンベアベルト5をクランプするように捉えて(この図においては図示されていない)水平に、ベルト搬送方向に対して交差するようにずらす。このことは図5および6を参照して後に詳述される。
【0042】
図4において、本来のラミネート処理の開始時における状態が示されている。コンベアベルト5は、依然として弛緩した状態においてプレス機が閉じられる。ずらし手段9は、テンショナー6同様、再び停止している。ダブルフレーム10の内部においてそれぞれの下側のプレスプレート3とそれぞれ上側のプレスプレート4との間に形成される真空チャンバは、それぞれダイアフラム11によって分離される製品空間14と圧力空間15とを形成し、ラミネート処理が公知である形で実行される。ラミネート後、プレス機は再び開かれてコンベアベルト5に対して張力が付与されることによって、図1において示される状態が再び形成される。こうしてラミネートされた加工物を搬出して、新しいラミネートされるべき加工物を搬入することが可能である。
【0043】
図5および図6の概略正面図には図2および図3に示された複数段プレス機の詳細が示されている。従って、図5においてはプレス機が開いており、コンベアベルト5が弛緩されており、ずらし手段9が停止している。図6においてプレス機は同様に開いており、コンベアベルト5が弛緩されているものの、ここではずらし手段9が作動しており、ベルト進路の路程修正動作16を実施している。
【0044】
図5および図6にはそれぞれ1つのプレス段1のみが完全な形で示されており、上側のプレス段1の部分、具体的にはその搬送ベルト5が必然的に一緒に描かれている。
【0045】
下側のプレスプレート3は、ずらし手段9として下側のグリップ部17と上側のグリップ部18とを有する挟持機構を有している。両方のグリップ部17、18は、水平であり、ベルト進行方向に対して交差するように移動するベースユニット19に固定されている。このベースユニット自体は下側のプレスプレート3によって支持され、両方のグリップ部17、18を開閉し、路程修正動作16を実施するための(図示されない)駆動部が付設されている。
【0046】
下側のグリップ部17は、垂直方向(ベルト面に対する法線方向)には移動せず、ベースユニット19に対して固着されている。このように下側のグリップ部17がコンベアベルト5のためのガイドストリップとして構成されているのに対して、上側のグリップ部18にはコンベアベルト5を開放する姿勢(図5)と、両方のグリップ部17、18の間に挟持する姿勢(図6参照)とを選択可能であり、この選択的な姿勢変更のために2つの枢支軸が設けられる。
【0047】
ずらし手段9は、コンベアベルト5の下部に係合ないしは接当し、コンベアベルトをベルト進行方向に対して交差する方向に引っ張るかあるいは押し込むことが可能なように構成されている。ずらし手段9に対向するコンベアベルト5のベルトエッジには、極めて簡単で頑丈に構成されているためそれぞれ小さな面積に対してのみ有効となる測定領域を有する、2つのベルトエッジ検知センサ20、21が設けられている。これら両方のベルトエッジ検知センサ20、21は、それらのセンサ間においてコンベアベルト5のベルトエッジの水平位置についての境界領域(目標領域)を設定しており、監視しているベルトエッジがこの溶解領域を外れると直ちに修正信号を生成する。ずらし手段9からコンベアベルト5に対して伝えられる路程修正動作16の修正ストロークは、ベルトエッジ検知センサ20、21によって認識される目標領域の範囲のおよそ半分に相当する。従って、両方のベルトエッジ検知センサ20、21のいずれか一方が修正信号を生成すると、次にベルトが停止した際にずらし手段9が弛緩した状態においてずれ量に応じた適切な路程修正動作を実施することにより、コンベアベルト5のベルトエッジが再び両方の監視センサ20、21の間におけるほぼ中心に位置する。このような修正ストローク量は一定値とすることも可能である。
【0048】
ここにおける図面では概略的に示されている、本発明におけるずらし手段のための一例として取り上げた実施形態に代えて、本明細書にも記載されるように互いに異なる形態の構成を採用することも可能である。
【0049】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1:プレス段
3:下側のプレスプレート
4:上側のプレスプレート
5:コンベアベルト
6:テンショナー
9:ずらし手段
17:下側のグリップ部
18:上側のグリップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス段(1)を開閉するために互いの間隔を変更可能な下側のプレスプレート(3)と上側のプレスプレート(4)を有する、少なくとも1つのプレス段(1)と、下側のプレスプレート(3)の周りを回動する、加工すべき加工物をプレス段(1)に対して搬出入するためのコンベアベルト(5)とを備え、この下側のプレスプレート(3)は、コンベアベルト(5)に対して張力の付与と弛緩とを行うテンショナー(6)とコンベアベルト路程修正手段とを有するプレス機であって、
前記コンベアベルト路程修正手段が前記コンベアベルト(5)をコンベア進行方向に対して交差する方向にずらすためのずらし手段(9)を含み、当該ずらし手段(9)が前記テンショナー(6)と同期制御され、前記コンベアベルト(5)が弛緩状態でかつ停止状態である場合に路程修正動作を実施するためにコンベアベルト(5)のずらしが行われることを特徴とするプレス機。
【請求項2】
前記ずらし手段(9)が、閉状態において前記コンベアベルト(5)を互いの間に挟み込む、2つの開閉可能であるグリップ部(17、18)を有する、少なくとも1つの挟持機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記下側のグリップ部(17)が、コンベアベルトガイドとして構成されているのに対して、前記上側のグリップ部(18)が、前記下側のグリップ部(17)に対して垂直に可動であることを特徴とする請求項2に記載のプレス機。
【請求項4】
前記両方のグリップ部(17、18)が、前記コンベアベルト(5)の進行方向に対して交差する方向への路程修正動作を実施するために移動動作する、少なくとも1つの共通のベースユニット(19)において保持されることを特徴とする請求項2または3に記載のプレス機。
【請求項5】
前記ベースユニット(19)が、前記挟持機構(17、18)の閉動作と路程修正動作のための電気式または空気圧式あるいはその両方式の駆動部を有することを特徴とする請求項4に記載のプレス機。
【請求項6】
前記グリップ部(17、18)が、前記コンベアベルト(5)の全幅に亘って延びていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項7】
前記挟持機構(17、18)が、挟み式として構成され、閉動作と路程修正動作のための共通の駆動部を有することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項8】
前記ずらし手段(9)が、一定の修正ストロークによって路程修正動作を実施するように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項9】
少なくとも1つのベルトエッジ検知センサ(20、21)が設けられ、前記コンベアベルト(5)のベルトエッジの水平方向における実位置を検知し、この実位置が許容範囲から所定量ずれている場合に修正信号を生成するように構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項10】
少なくとも2つのベルトエッジ検知センサ(20、21)が設けられ、当該ベルトエッジ検知センサの互いの間において前記コンベアベルト(5)のベルトエッジの水平位置のための測定監視領域を挟み込み、前記ベルトエッジが一方のベルトエッジ検知センサ(20、21)測定結果が許容範囲外を示した場合、ずれ修正信号が生成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項11】
一方のベルトエッジ検知センサ(20、21)が前記コンベアベルト(5)のベルトエッジの位置に関する目標しきい値を監視し、前記テンショナー(6)が前記コンベアベルト(5)に対して非対称的に作用する張力を付与することによって、前記コンベアベルトが駆動時に前記ベルトエッジ検知センサ(20、21)に向かって水平にずらすことを特徴とする請求項9または10に記載のプレス機。
【請求項12】
前記ずらし手段(9)が、前記コンベアベルト(5)の下部に係合することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項13】
複数のプレス段(1)がそれぞれ1つの、それぞれの下側のプレスプレート(3)の周りを回動する前記コンベアベルト(5)の周りにおいて上下に配置されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項14】
少なくとも別のプレス段(1)の上方に配置されるプレス段(1)の挟持機構の下側のグリップ部(17)に対してローラが設けられることを特徴とする請求項2、12、13のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項15】
前記下側のプレスプレート(3)と上側のプレスプレート(4)は、周回状の1つ以上の部材からなる封止部材(10、12、13)によって閉状態においてプレート状の加工物を圧力および熱作用下でラミネートするための真空チャンバ(14、15)を形成することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のプレス機。
【請求項16】
前記プレスプレート(3、4)は、少なくとも最下位のプレスプレート(3)または最上位のプレスプレート(4)まで加熱プレートとして構成されていることを特徴とする請求項13または15に記載のプレス機。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のプレス機におけるプレス段(1)に対して加工物を搬出入するための加工物搬送方法であって、搬出入のためにコンベアベルト(5)に対して張力が付与されて作動されるのに対して停止状態において前記コンベアベルト(5)は前記プレス段(1)を閉じるために弛緩されるものにおいて、
前記コンベアベルト(5)が弛緩状態にある場合あるいは前記コンベアベルト(5)が停止状態にある場合に、前記コンベアベルト(5)を自身の進行方向に対して交差する方向にずらすことになる路程修正動作によってベルト路程修正が実行されることを特徴とする加工物搬送方法。
【請求項18】
前記路程修正動作が、前記コンベアベルト(5)のベルトエッジの実位置がその目標位置から所定量以上外れた場合に実行されることを特徴とする請求項17に記載の加工物搬送方法。
【請求項19】
前記路程修正動作が、前設定された路程修正ストローク量によって実行されることを特徴とする請求項18に記載の加工物搬送方法。
【請求項20】
前記路程修正動作の実行が、少なくとも1つのベルトエッジ検知センサ(20、21)によって指令されることを特徴とする請求項17から19のいずれか一項に記載の加工物搬送方法。
【請求項21】
前記コンベアベルト(5)が、駆動時に不均等な張力によって側面に向かっての進路を強制される際に、1つのベルトエッジ検知センサ(20、21)がコンベアベルト(5)のベルトエッジの実位置に関するしきい値外れを検知した場合、次の弛緩されたベルト停止状態において路程修正動作が指令されることを特徴とする請求項20に記載の加工物搬送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−31304(P2011−31304A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173702(P2010−173702)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(599098714)ロベルト・ビュルクレ・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BUERKLE GMBH
【住所又は居所原語表記】STUTTGARTER STRASSE 123, D‐72250 FREUDENSTADT, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】