説明

プレス機械のワーク搬送装置

【課題】簡単な連結機構でフィードビームを支持部に切り離し可能に連結できるプレス機械のワーク搬送装置を提供することである。
【解決手段】トランスファ式鍛造プレスのフィードビーム1の両端側の連結部8aを、磁力によって支持部としての延長ビーム7a、7bの連結部8bに切り離し可能に連結することにより、簡単な連結機構でフィードビーム1を支持部に切り離し可能に連結できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械で加工されるワークを、把持具を有するフィードビームで搬送するプレス機械のワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造プレスや板金プレス等のプレス機械は、生産性と安全性を高めるために、加工されるワークを、把持具を有するフィードビームで搬送するワーク搬送装置を設けたものが多い。フィードビームは、直線運動するものと、旋回運動するものとがあり、通常、ワークの搬送方向のみでなく、ワークを把持具でクランプ、アンクランプするために、上下方向にも運動する。また、把持具としては、ワークを真空で吸着するもの、ワークを磁力で吸着するもの、ワークを機械式にチャックするもの等が用いられており、トランスファ式の鍛造プレスでは、一対の平行なフィードビームに対向するフィンガを設け、一対のフィードビームを接近、離反させて、対向するフィンガでワークをクランプ、アンクランプするものが多く採用されている。
【0003】
このようなワーク搬送装置のフィードビームは、一端側または両端側を支持部に支持され、支持部を介して直線運動や旋回運動を付与されるが、ロット毎にワークに適した把持具を有するフィードビームと交換できるように、支持部に切り離し可能に連結されている。従来、このようなフィードビームの支持部への連結手段としては、機械式のものが採用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたものでは、図6に示すように、トランスファ式鍛造プレス用の一対の平行なフィードビーム51の両端側を支持する左右のビーム52a、52bを、支持シリンダ53によって上方へ傾動可能とするとともに、左右のビーム52a、52bの先端の連結部54を伸縮する油圧シリンダ55を設け、連結部54に設けた連結ロッド54aを、フィードビーム51の両端部に設けた角形中空部56に上方から係合させることにより、フィードビーム51の両端側を、支持部としての左右のビーム52a、52bに切り離し可能に連結している。
【0005】
また、特許文献2に記載されたものでは、図7に示すように、トランスファ式プレス用の一対の平行なフィードビーム61の一端側と、これを支持するビーム62の先端とに、上下方向に係合する凹凸形状の係合部63a、63bを設けるとともに、ビーム62の中にシリンダ64を組み込み、このシリンダ64のロッド64aの先端に設けた係止部64bを、フィードビーム61の一端側とビーム62の先端とに設けた連通する貫通孔65a、65bに嵌挿することにより、フィードビーム61の一端側を支持部としてのビーム62に切り離し可能に連結している。なお、図示は省略するが、フィードビーム61の他端側は、断面凹形状のガイド部材によって、長手方向へスライド可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2904407号公報
【特許文献2】特公平7−63777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載された従来のプレス機械のワーク搬送装置は、フィードビームを支持部に連結する手段として機械式のものを採用し、シリンダ等のアクチュエータを用いて、フィードビームを着脱するようにしているので、連結機構が複雑なものとなる問題がある。また、フィードビームと支持部を含む可動部の慣性質量が大きくなり、断続的に加速、減速と停止を繰り返すフィードビームによるワークの搬送精度も低下する。
【0008】
そこで、本発明の課題は、簡単な連結機構でフィードビームを支持部に切り離し可能に連結できるプレス機械のワーク搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、プレス機械で加工されるワークを、把持具を有するフィードビームで搬送し、このフィードビームの一端側または両端側を支持部に切り離し可能に連結したプレス機械のワーク搬送装置において、前記フィードビームの少なくとも一端側の連結部を、磁力によって前記支持部に切り離し可能に連結した構成を採用した。
【0010】
すなわち、フィードビームの少なくとも一端側の連結部を、磁力によって支持部に切り離し可能に連結することにより、簡単な連結機構でフィードビームを支持部に切り離し可能に連結できるようにした。
【0011】
前記支持部は、前記フィードビームの一端側に延長するように連結されるビーム部を有するものとすることができる。
【0012】
前記プレス機械が、鍛造されるワークの送り方向に複数の金型が配列されたトランスファ式の鍛造プレスである場合は、前記フィードビームを、その両端側が前記支持部に切り離し可能に連結され、前記配列された複数の金型の前後でワークの送り方向へ延びるように平行に配設されて、前後方向に互いに接近、離反し、前記把持具としての対向するフィンガでワークをクランプ、アンクランプする一対のものとすることができる。
【0013】
前記連結部を、前記フィードビームと前記支持部との連結端面に、フィードビームの軸方向に嵌まり合うカップリング構造を設け、このカップリング構造で軸方向に嵌まり合う連結端面同士を、前記磁力により軸方向に吸着するものとすることにより、フィードビームを支持部に対して軸方向に相対移動させるのみで、フィードビームを簡単に支持部に着脱することができる。
【0014】
前記連結部を磁力によって支持部に切り離し可能に連結する手段は、前記連結されるフィードビーム側と支持部側の少なくとも一方に、永電磁磁石を設けたものとすることができる。永電磁磁石は、連結部の前面側に永久磁石を配置し、その後面側に電磁石を配置したものであり、電磁石に一時的に通電することにより、電磁石の磁極を反転させて、相手部材を吸着する永久磁石の磁力線を後面側の電磁石側に誘導し、磁力による相手部材の吸着を解除することができる。
【0015】
前記連結部を磁力によって支持部に切り離し可能に連結する手段は、前記連結されるフィードビーム側と支持部側の少なくとも一方に、電磁石を設けたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るプレス機械のワーク搬送装置は、フィードビームの少なくとも一端側の連結部を、磁力によって支持部に切り離し可能に連結したので、簡単な連結機構でフィードビームを支持部に切り離し可能に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るワーク搬送装置を採用した鍛造プレスを示す正面図
【図2】図1の平面図
【図3】(a)は図1のフィードビームと延長ビームの連結部を拡大して示す切欠き正面図、(b)は(a)の延長ビームの側面図
【図4】(a)は図3(a)の変形例を示す切欠き正面図、(b)は(a)の延長ビームの側面図
【図5】(a)〜(c)は、図1のフィードビームの連結を切り離す手順を示す正面図
【図6】従来のトランスファ式鍛造プレスのフィードビームの連結を説明する正面図
【図7】従来のトランスファ式プレスのフィードビームの連結を説明する正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は、本発明に係るワーク搬送装置を採用したトランスファ式の鍛造プレスを示す。この鍛造プレスは、プレス本体31のワークWの送り方向に複数の金型32が配列され、ワーク搬送装置の一対の平行なフィードビーム1が、配列された金型32の前後に送り方向に延びるように配設されている。各フィードビーム1は、把持具としての対向する複数のフィンガ2を有し、送り方向への進退動作、前後方向への開閉動作、および上下方向への昇降動作をするように、後述する3次元駆動装置で作動され、供給端側からワークWを受け取って、受け取ったワークWをフィンガ2でクランプ、アンクランプして配列された各金型32に順送りし、加工されたワークWを排出端側に排出する。
【0019】
前記3次元駆動装置は、プレス本体31の四隅のポスト33に取り付けられ、昇降駆動装置3、進退駆動装置4および開閉駆動装置5とからなり、いずれも各サーボモータ3a、4a、5aで駆動されるボールねじ機構3b、4b、5bのナットを、それぞれ上下方向、送り方向および前後方向に直線駆動するものとされている。昇降駆動装置3と開閉駆動装置5は、供給端側と排出端側の両側に設けられ、進退駆動装置4は排出端側のみに設けられており、各フィードビーム1の供給端側は、開閉駆動装置5に送り方向へスライド自在に支持されたスライドビーム6に取り付けられるようになっている。
【0020】
前記各フィードビーム1は、支持部としての延長ビーム7a、7bを、両端側に延長されるように連結されている。供給端側の延長ビーム7aは、スライドビーム6にピン結合で取り付けられ、排出端側の延長ビーム7bは、開閉駆動装置5に直接ピン結合で取り付けられている。
【0021】
図3(a)、(b)は、前記フィードビーム1の連結部8aと各延長ビーム7a、7bの連結部8bを拡大して示す。この図は一端側の連結部8a、8bのみを示すが、他端側の連結部8a、8bも、左右の向きが逆になるだけで、構成は同じである。フィードビーム1と各延長ビーム7a、7bは、それぞれ角パイプで形成されており、フィードビーム1の両端部の連結部8aは、角パイプよりも少し大径とされた矩形断面の磁性体で形成されている。各延長ビーム7a、7bの先端部の連結部8bは、フィードビーム1の連結部8aと同じ矩形断面に形成され、前面側の永久磁石9aとその後側の電磁石9bとを組み合わせた複数の永電磁磁石9が組み込まれている。また、各連結部8a、8bの前面の連結端面には、対角のコーナ部に、互いに軸方向に嵌まり合う凹部10と凸部11が、位置決めを兼ねたカップリング構造として設けられている。
【0022】
前記永電磁磁石9の永久磁石9aはネオジウム磁石とされ、強力な磁力線でフィードビーム1側の磁性体を吸着して、連結部8a、8b同士を連結する。また、電磁石9bは、アルニコ磁石と電磁コイル9cとからなり、電磁コイル9cに0.5秒程度の短時間一時的に通電することにより、アルニコ磁石の磁極を反転させて、フィードビーム1側の磁性体を吸着する永久磁石の磁力線を後面側の電磁石9b側に誘導し、磁力による連結部8a、8bの連結を解除する。なお、連結部8a、8bの連結時には、アルニコ磁石の磁力線も、フィードビーム1側の磁性体を吸着し、連結を強化する。
【0023】
図4(a)、(b)は、前記連結部8a、8bの変形例を示す。この変形例では、フィードビーム1の連結部8aは実施形態のものと同様に、磁性体で形成されているが、各延長ビーム7a、7b側の連結部8bに、電磁石12が組み込まれている点が異なる。この変形例では、電磁石12の電磁コイル12aに通電することにより、発生する磁力線でフィードビーム1側の磁性体を吸着して、連結部8a、8b同士を連結し、電磁コイル12aへの通電を止めたときに磁力線がなくなって、連結を解除するようになっている。また、各連結部8a、8bの前面の外周部には、互いに軸方向に嵌まり合うカップリング構造として凹溝13と凸条14が設けられている。
【0024】
図3および図4に示した永電磁磁石9や電磁石12で連結部8a、8bを切り離し可能に連結する手段は、シリンダ等のアクチュエータを必要としないので、ワーク搬送装置の可動部の慣性質量を小さくして、ワークの搬送精度も向上させることができる。
【0025】
図5(a)〜(c)は、前記フィードビーム1の連結を切り離す手順を示す。まず、図5(a)に示すように、前記昇降駆動装置3でフィードビーム1を下限位置に下降させて、フィードビーム1を下金型32の上面に載置するとともに、ピン結合された各延長ビーム7a、7bの先端側を、ポスト33に取り付けた受け具33aに支持して、供給端側の連結部8a、8bの磁力による連結を解除する。つぎに、図5(b)に示すように、前記排出端側の進退駆動装置4で、フィードビーム1を少し排出端側へ移動させて、供給端側の連結部8a、8bを切り離したのち、供給端側の連結部8a、8bの磁力による連結を解除する。最後に、図5(c)に示すように、排出端側の進退駆動装置4で、排出端側の延長ビーム7bを排出端側へ少し引き寄せ、排出端側の連結部8a、8bを切り離す。こののち、両側の連結を切り離されたフィードビーム1は、下金型32と一緒にプレス本体31の外側に取り出される。
【0026】
上述した実施形態では、プレス機械をトランスファ式の鍛造プレスとし、ワーク搬送装置のフィードビームを、両端側を支持部に支持され、直線運動する一対の平行なものとしたが、本発明に係るワーク搬送装置が採用されるプレス機械は、このような鍛造プレスに限定されることはなく、フィードビームは、旋回運動するものや、片側のみを支持されたものであってもよい。
【0027】
また、上述した実施形態と変形例では、フィードビーム側の連結部を磁性体で形成し、支持部としての延長ビーム側の連結部に、永電磁磁石または電磁石等の磁力発生源を組み込んだが、支持部側の連結部を磁性体で形成し、フィードビーム側の連結部に磁力発生源を組み込むこともできる。
【符号の説明】
【0028】
1 フィードビーム
2 フィンガ
3 昇降駆動装置
4 進退駆動装置
5 開閉駆動装置
3a、4a、5a サーボモータ
3b、4b、5b ボールねじ機構
6 スライドビーム
7a、7b 延長ビーム
8a、8b 連結部
9 永電磁磁石
9a 永久磁石
9b 電磁石
9c 電磁コイル
10 凹部
11 凸部
12 電磁石
12a 電磁コイル
13 凹溝
14 凸条
31 プレス本体
32 金型
33 ポスト
33a 受け具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械で加工されるワークを、把持具を有するフィードビームで搬送し、このフィードビームの一端側または両端側を支持部に切り離し可能に連結したプレス機械のワーク搬送装置において、前記フィードビームの少なくとも一端側の連結部を、磁力によって前記支持部に切り離し可能に連結したことを特徴とするプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項2】
前記支持部が、前記フィードビームの一端側に延長するように連結されるビーム部を有するものである請求項1に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記プレス機械が、鍛造されるワークの送り方向に複数の金型が配列されたトランスファ式の鍛造プレスであり、前記フィードビームが、その両端側を前記支持部に切り離し可能に連結され、前記配列された複数の金型の前後でワークの送り方向へ延びるように平行に配設されて、前後方向に互いに接近、離反し、前記把持具としての対向するフィンガでワークをクランプ、アンクランプする一対のものである請求項1または2に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記連結部を、前記フィードビームと前記支持部との連結端面に、フィードビームの軸方向に嵌まり合うカップリング構造を設け、このカップリング構造で軸方向に嵌まり合う連結端面同士を、前記磁力により軸方向に吸着するものとした請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記連結部を磁力によって支持部に切り離し可能に連結する手段が、前記連結されるフィードビーム側と支持部側の少なくとも一方に、永電磁磁石を設けたものである請求項1乃至4のいずれかに記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項6】
前記連結部を磁力によって支持部に切り離し可能に連結する手段が、前記連結されるフィードビーム側と支持部側の少なくとも一方に、電磁石を設けたものである請求項1乃至4のいずれかに記載のプレス機械のワーク搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−104610(P2011−104610A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261031(P2009−261031)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】