説明

プレス熱板精度の検査方法

【課題】
実際の成形に即した条件で分析することができる熱板精度の検査方法を提供する。
【解決手段】加熱加圧後に識別可能な格子状マーキング1及び円形マーキング2を表面に形成したプリプレグを、プレス熱板間に置き、加熱加圧して、加熱加圧後に格子状マーキング1及び円形マーキング2の変化を調べ、熱板の平行度を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス熱板(以下、熱板という)精度の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の基板材料や電気絶縁用の電気用積層板は、所定枚数のプリプレグを重ねて加熱加圧して製造される。
多層プリント配線板は、構成材をプリプレグを介して重ねて加熱加圧して製造される。ここで、構成材とは、内層材及び外層材であり、内層材は内層回路を形成したプリント配線板、また外層材は外層回路を形成するための片面銅張積層板又は銅はくである。
【0003】
積層板及び多層プリント配線板の製造において使用されるプリプレグは、繊維基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸した後、含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたものである。
プリプレグに含浸された熱硬化性樹脂は、加熱により一旦溶融して流動状態となり、その後硬化反応が進行して不溶不融の硬化樹脂に変化する。プリプレグに含浸された熱硬化性樹脂が溶融したときの流動性は樹脂の組成及び半硬化状態にするときの条件に依存する。この流動性が適正でないと、ボイド、カスレなど製品不良の原因となる。
従来、この流動性については、プリプレグを試験的に加熱加圧することにより調べていた。
【0004】
電気用積層板、多層プリント配線板何れにしても、成形には平行熱板(以下単に熱板という)を備えたプレスが使用されている。熱板を備えたプレスによる成形は、一般には平行板成形と称している。
平行板成形において、熱板精度は、製品の品質を左右する。熱板の精度、特に、平行度が適正でないと、圧力むらができ、厚さ精度を悪化させる。
従来、熱板の精度を検査する方法としては、熱板の間にはんだ線を置き、加圧、又は、加熱加圧した後、はんだ線の厚さを測定する方法、熱板の間に感圧紙を置き、加圧した後、感圧紙の変色度合いにより圧力分布を知る方法などが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
はんだ線を用いる方法や感圧紙を用いる方法では、プリプレグの流動性を調べることができない。また、実際の成形時には、クッション、回路の凹凸、治具類の存在も影響するので、成形と同じ条件とはならない。
単に、プリプレグをプレスにより試験的に加熱加圧する方法では熱板精度を検査することができない。
本発明は、実際の成形に即した条件で分析することができる熱板精度の検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加熱加圧後に識別可能なマーキングを表面に形成したプリプレグを、熱板間に置き、加熱加圧して、マーキングの変化から熱板の平行度を確認することを特徴とする熱板精度の検査方法である。
加熱加圧によりプリプレグの樹脂が流動するのに伴い、マーキングが変化するが、このマーキングの変化度合い、特に移動距離から、流動性を判定することができる。
そして、プリプレグの樹脂が流動することによるマーキングの変化が均等であれば、熱板の平行度が良好であると判定できる。なお、熱板精度の定量的確認は、プリプレグを加熱加圧した後にその厚さを測定することにより可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プリプレグの樹脂の流動性を調べるのと同じ操作で熱板精度を検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
加熱加圧後に識別可能なマーキングとは、加熱加圧により消失しないマーキングである。このようなマーキングとしては、油性のインクを用いた筆記具、特に、フェルトペンが最適である。水性のインクは、熱硬化性樹脂との親和性が悪くてマーキングできないので好ましくない。また、刻印のようなマーキングは、加熱加圧中に消失してしまうので不適である。
インクの色調は、熱硬化性樹脂と異なる色調であればよく、他に制限はない。
【0009】
マーキングは、プリプレグ全面に対称形とするのが好ましい。このようなマーキングとしては、例えば、図1の(a)に示すような格子状マーキング1が挙げられる。また、単一形状とするのではなく、例えば、図1の(a)に示すように格子状マーキング1の格子の中に円形マーキング2を描くように、いくつかの形状のマーキングを併用するのが好ましい。
【実施例1】
【0010】
厚さ0.2mm、510×510mmのガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグ(日立化成工業株式会社製、GEA−67N(商品名)を使用した)に油性のフェルトペンを用いて、幅3mmの直線を50mm間隔で縦横に引いて、格子状マーキング1を形成し、さらに、各格子の中心に直径約5mmの中黒円を描いて円形マーキング2を形成した(図1(a)参照)。
このプリプレグ1枚をステンレス鏡板の間に挿み、温度170℃、圧力3MPaで120分間加熱加圧した。その結果、マーキングは図1(b)に示すように変化していた。樹脂の流動方向や流動の度合いを明瞭に把握でき、かつ加熱加圧後の格子状マーキング1b及び加熱加圧後の円形マーキング2bの形態からみて熱板の平行度も良好であることが確認された。
【実施例2】
【0011】
熱板中央部が摩耗により凹んでいるプレスを使用して実施例1と同様に加熱加圧した。その結果、中央部のマーキングは、図1(c)に示すように変化していた。すなわち、熱板の凹み部分に向かって樹脂が流れるので、円形マーキング2及び格子状マーキング1の線も熱板の凹み部分に向かって移動し、加熱加圧後の格子状マーキング1c及び加熱加圧後の円形マーキング2cの形態となっていた。そこで、熱板を研削して平行度を修正して実施例1と同様に加熱加圧した。その結果、プリプレグのマーキングは図1(b)とほぼ同様にになり、熱板の平行度が実施例1のプレスと同等となったことが確認された。
【実施例3】
【0012】
熱板平行度が乱れたプレスを使用して実施例1と同様に加熱加圧した。その結果、マーキングは、図1(d)に示すようになっていた。すなわち、熱板間隔が広い部分に向かって樹脂が流れるので、円形マーキング2及び格子状マーキング1の線も、加熱加圧後の格子状マーキング1d及び加熱加圧後の円形マーキング2dのような形態となっていた。なお、図1(d)はマーキングの乱れが大きい部分を抜き出して図示したものである。図1(d)から、熱板間隔は、プリプレグが図1(d)に相当する部分の空間が大きくなっていると判断された。そこで、熱板とプレス本体殿間にスペーサーを入れて平行度を調整して、実施例1と同様に加熱加圧した。その結果、プリプレグのマーキングは図1(b)とほぼ同等にになり、熱板の平行度が実施例1のプレスと同等となったことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に関する平面図であり、(a)は加熱加圧前の状態を示し、(b)は加熱加圧後の状態を示し、(c)及び(d)は同じく加熱加圧後の状態で乱れが大きい部分を抜き出して示す。
【符号の説明】
【0014】
1 格子状マーキング
2 円形マーキング
1b,1c,1d 加熱加圧後の格子状マーキング
2b,2c,2d 加熱加圧後の円形マーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱加圧後に識別可能なマーキングを表面に形成したプリプレグを、プレス熱板間に置き、加熱加圧して、マーキングの変化からプレス熱板の平行度を確認することを特徴とするプレス熱板精度の検査方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−258819(P2006−258819A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107031(P2006−107031)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【分割の表示】特願平8−303380の分割
【原出願日】平成8年11月14日(1996.11.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】