説明

プレス装置

【課題】複数のプレスユニットを制御・運転する油圧制御ユニットを低コストで構成できるとともに、省エネが実現でき運転コストも低減可能なプレス装置を提供する。
【解決手段】複数のプレスユニット2を一の油圧制御ユニット4で制御・運転するプレス装置1であって、前記プレスユニット2はサーボバルブ3を有し、前記油圧制御ユニット4は圧油を吐出するポンプ9と圧油を蓄圧するアキュムレータ6を有し、前記プレスユニット2及び前記油圧制御ユニット4のいずれかのユニットは前記複数のプレスユニット2の各々へ前記ポンプ9の圧油又は前記アキュムレータ6の圧油を択一的に選択して供給する切換弁5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプレスユニットを一の油圧制御ユニットで制御・運転するプレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧プレスは、例えば特許文献1に示すように、油圧プレス自体にポンプユニット、アキュムレータ及びサーボ弁等からなる油圧制御駆動装置を備えている。そのため、油圧プレスを複数並設する場合には、油圧制御駆動装置も油圧プレスと同数必要になり、大きな設備コストが要求される。この問題に対しては、例えば特許文献2に記載があるように共用ポンプを採用することである程度解決する。
【0003】
しかしながら、特許文献2の共用ポンプの技術によれば、プレスの主シリンダの油圧を制御するリリーフ弁は、設定圧力の圧油をタンクに戻すように作動するので、大きな電力損失を生じさせる。また、特許文献2におけるポンプは一の固定吐出型ポンプのみであり、本願のプレス装置のように長時間の圧力保持作動を必要としその間に他のプレス装置の開閉作動が入り込むというような実施形態には適用不可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−172500号公報
【特許文献2】実公平1−33228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、複数のプレスユニットを制御・運転する油圧制御ユニットを低コストで構成できるとともに、省エネが実現でき運転コストも低減可能なプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のプレスユニットを一の油圧制御ユニットで制御・運転するプレス装置であって、前記プレスユニットはサーボバルブを有し、前記油圧制御ユニットは圧油を吐出するポンプと圧油を蓄圧するアキュムレータを有し、前記プレスユニット及び前記油圧制御ユニットのいずれかのユニットは前記複数のプレスユニットの各々へ前記ポンプの圧油又は前記アキュムレータの圧油を択一的に選択して供給する切換弁を有するプレス装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプレス装置によれば、複数のプレスユニットを制御・運転する油圧制御ユニットを低コストで構成できるとともに、省エネが実現でき運転コストも低減可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明を実施するプレス装置の油圧制御ユニットを含む構成図である。
【0009】
プレス装置1は、複数のプレスユニット2と、それらを制御・運転する一の油圧制御ユニット4とからなる。
【0010】
プレスユニット2は、多段の熱板(不図示)を固定盤(不図示)と可動盤18の間に等間隔で配設し、熱板間に挿入した成形材料を可動盤18の下面に設け油圧シリンダ20に嵌挿したラム19で熱板とともに圧締して成形するプレス本体17と、前記油圧シリンダ20へ制御された圧油を供給するため油圧シリンダ20の近傍に取付けたサーボバルブ3とからなる。
【0011】
油圧制御ユニット4は、作動油のタンク11と、タンク11から作動油を吸引して加圧し圧油を吐出するポンプ9と、ポンプ9を回転駆動するモータ10と、ポンプ9から吐出された圧油を導く管路12と、管路12に一方の入力ポートで接続される複数の切換弁5と、管路12に開閉弁8を介した管路13で接続されるアキュムレータ6と、アキュムレータ6の管路13から開閉弁7を介して複数の切換弁5の他方の入力ポートに接続される管路14とからなる。なお、ポンプ9は可変吐出量ポンプであってもよい。また、ポンプ9が固定吐出量ポンプである場合には、モータ10はサーボモータやインバータ駆動の誘導モータのような変速自在に制御されるモータであることが好ましい。またさらに、管路13にはアキュムレータ6に蓄圧する圧油の圧力を規定するリリーフ弁等の圧力調整弁が必要であるが図示を省略する。
【0012】
切換弁5は、ポンプ9の圧油を供給する管路12を接続する一方の入力ポートと、アキュムレータ6の圧油を供給する管路14を接続する他方の入力ポートとを有し、図示しない制御装置の信号に基づいて一方の入力ポートと他方の入力ポートのいずれかの入力ポートを択一的に選択して出力ポートへ連通させる。ただし、切換弁5は、一方の入力ポートと他方の入力ポート以外にいずれのポートへも連通せず管路12が閉鎖される状態となる中立の切換位置が設けられるものであることが、アキュムレータ6への蓄圧作動を良好に実行させる点で好ましい。
【0013】
切換弁5の出力ポートには管路15が接続され、管路15の他端はサーボバルブ3の入力ポートに接続されている。サーボバルブ3の出力ポートはプレス本体17の油圧シリンダに接続されている。サーボバルブ3にはドレンポートが設けられ、ドレンポートは管路16で油圧制御ユニット4のタンク11に接続されている。
【0014】
切換弁5は、各プレスユニット2と油圧制御ユニット4との設置距離が比較的近く、管路15,16の敷設が短距離である場合には、図1に示すように、油圧制御ユニット4に設けられることが好ましい。しかしながら、各プレスユニット2と油圧制御ユニット4との設置距離が比較的遠く、かつ、プレスユニット2同士の間隔が十分近い場合には、プレスユニットと油圧制御ユニットとの管路が二本のみでよいことから、切換弁をプレスユニット2に設けることが有利となる。
【0015】
次に、プレス装置1の作動について詳細に説明する。複数のプレスユニット2のうち任意のプレスユニット2を成形開始させるため、プレス本体17のラム19を上昇させる。このとき、成形開始させるプレスユニット2以外のプレスユニット2は成形開始しないようにシーケンス制御プログラム上でインタロックが施されている。そして、ポンプ9は設定されたラム19上昇速度に応じた吐出を行う。ラム19を上昇させるプレスユニット2に対応する切換弁5は管路12が管路15に連通するように切換えられ、それ以外の切換弁5は閉となっている。ラム19を上昇させるプレスユニット2に対応するサーボバルブ3は、管路15から油圧シリンダ20へ全開状態で連通するようになっている。開閉弁7,8は閉となっている。ラム19はポンプ9の吐出量を変化させることにより適宜な速度プログラムで上昇する。このように、ポンプ9は、ラム19の上昇移動に必要な量のみ圧油を吐出し、ラム19が上昇移動しないときは停止しているので、固定吐出量ポンプを定回転モータで駆動する場合のようにラム19が上昇移動しないときも吐出することに起因する電力損失を回避させることが出来る。
【0016】
ラム19と熱板が上昇して全ての成形材料が上方の熱板に密着したとき、そのプレス本体17に対応する切換弁5は管路14が管路15に連通するように切換えられるとともに、開閉弁7が開となる。それにより、プレス本体17の油圧シリンダ20にはアキュムレータ6に蓄圧された圧油がサーボバルブ3を介して供給される。このとき、サーボバルブ3は、油圧シリンダ20内の油圧力が図示しない制御装置で設定された値となるようフィードバック制御されて、適宜な開度に調節され成形材料の圧縮・保圧制御を行う。このフィードバック制御は、成形材料の圧縮に基づく僅かな圧油の不足を補うように制御されるのであり、圧油の流量は少量であるから、プレス成形に特有の1時間にも及ぶ長時間の保圧成形制御であっても、アキュムレータ6の蓄圧油量で十分賄えるとともに、僅かな電力消費量で済むのである。これに対し、従来のように、油圧シリンダの油圧制御にリリーフ弁を用いた場合には、多量の圧油をタンクに戻すこととなるので、アキュムレータの蓄圧油量では保圧制御を継続させることが困難であるとともに、大きな電力消費を招くのである。
【0017】
任意の一又は複数のプレス本体17が保圧制御中には、他の一のプレス本体17は成形開始のためラム19を上昇開始させることが出来る。この作動工程は前記と同様である。また、いずれのプレス本体17もラム19の上昇工程を実行していないときには、開閉弁8を開きポンプ9を略最大の吐出量にしてアキュムレータ6に所定圧力の圧油を供給しアキュムレータ6を蓄圧する。各プレス本体17が保圧(冷却)工程を終了したときには、そのプレス本体17に対応するサーボバルブ3を油圧シリンダ20から管路16に適宜な開度で連通させて、ラム19の下降速度制御を実行する。ラム19が下降完了したことにより、そのプレス本体17における成形工程が終了する。
【0018】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施するプレス装置の油圧制御ユニットを含む構成図である。
【符号の説明】
【0020】
1 プレス装置
2 プレスユニット
3 サーボバルブ
4 油圧制御ユニット
5 切換弁
6 アキュムレータ
7,8 開閉弁
9 ポンプ
10 モータ
11 タンク
12 ,13,14,15,16 管路
17 プレス本体
18 可動盤
19 ラム
20 油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレスユニットを一の油圧制御ユニットで制御・運転するプレス装置であって、
前記プレスユニットはサーボバルブを有し、前記油圧制御ユニットは圧油を吐出するポンプと圧油を蓄圧するアキュムレータを有し、前記プレスユニット及び前記油圧制御ユニットのいずれかのユニットは前記複数のプレスユニットの各々へ前記ポンプの圧油又は前記アキュムレータの圧油を択一的に選択して供給する切換弁を有することを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記ポンプは、変速自在に制御されるモータで駆動される請求項1に記載のプレス装置。

【図1】
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