説明

プレートコンパクター

【課題】簡単な構成で、一台で、敷設面に敷かれた土木材料を従来のプレートコンパクターと同様にして路盤等の締固めを行えるだけでなく、表面仕上げも容易に行うことができるプレートコンパクターを提供することを目的としている。
【解決手段】振動板を起振機によって振動させ、この振動によって敷設面に敷設された土木材料を転圧するプレートコンパクターにおいて、分銅と、伸縮によって前記分銅を前記振動板に対して上下方向に振動可能に支持する弾性部材と、前記振動板に対して前記分銅を固定状態及び上下振動可能状態のいずれかを選択可能な分銅の固定手段と、を有する前記振動板の振動制御手段を備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強く締固めたい場合だけでなく、表面のみ平滑化あるいは弱く締固めたい場合にも対応することができるプレートコンパクターに関する。
【背景技術】
【0002】
雨水を地中に浸透させることにより地下水の涵養、湧水の保全回復、植生の保全、ヒートアイランド現象の緩和等の環境保全を目的として、表面を含む少なくとも表層をポーラスコンクリートで形成する透水性を有する道路の舗装工法(特許文献1参照)や、ポーラスコンクリートで被覆する法面工法(特許文献2参照)などが既に実施されている。
また、法面にポーラスコンクリートの被覆層を形成する場合、振動板の大きさを大きくしたプレートコンパクターを用いて、法面に吹き付けたコンクリートをポーラスな状態で締固める方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、ポーラスコンクリートを用いた現場打ち透水性コンクリート舗装の施工方法として、上記混練物をコンクリート舗装に従来から用いられているタンピングランマー、プレートコンパクター、バイブロコンパクター、フィニッシャー等の加圧振動機で締固めて施工現場に敷きならす方法が既に提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-200964号公報
【特許文献2】特許4216652号公報
【特許文献2】特開2002-316858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、法面などの表面平滑性が求められない場合には、上記のような従来の加圧振動機によって締固めても問題がないが、通常のアスファルトの締固め等に用いられているプレートコンパクターにおいては、起振機のエンジンの回転数をアクセルの調整によって調整して振動板から転圧面に加わる振動エネルギー調整することができるようになっているものがあるが、起振機のエンジン回転数を下げても、十分に振動エネルギーを下げることができず、単位面積あたりの荷重は十分に小さくすることができない。
したがって、いくらエンジンの回転数を下げても、表面を平滑にしようとして、繰り返しプレートコンパクターで締固めを行うと、コンクリート層の下層側では、骨材が最密充填化されて必要とする透水性が得られなくなってしまうおそれがある。また、何回も同じ場所を走行させると、結合材(セメントペースト)がダレて、底部に流れ落ちたり、走行部周辺の掘り起こしを発生させて、却って、凸凹を発生させてしまったりするおそれもある。
【0005】
その結果、表面仕上げは、左官がコテを持って手作業で行っているのが現状である。
しかし、コテを持って手作業で表面仕上げを行う場合、作業者の熟練性が要求されるとともに、手作業であるため施工時間もかかり、施工面積が大きいと大人数でないと施工が完了するまでにコンクリートが固まってしまうおそれがある。また、コテでは、表面を平滑にできても、コンクリートの配合によっては、表面部分の骨材をインターロックさせることが難しく、表面層が強度的に不十分なものとなってしまうおそれがある。
【0006】
一方、振動板を大きくして、振動板によって転圧部にかかる面圧を下げる方法、あるいは、プレートコンパクター全体の重量を軽いものにして転圧部にかかる面圧を下げる方法をとれば、プレートコンパクターを用いて表面仕上げを行うことは可能である。
しかしながら、単位面積あたりの荷重を小さくした機械では、ポーラスコンクリートが「硬い」場合、締固めのサチュレーション(小さい凸部などは平らになるが、エネルギー不足で全体的な締固めがそれ以上進まない状態。)が起こったとき、対応できないこととなる。
したがって、上記方法の場合、通常の締固めに用いるプレートコンパクターと、表面仕上げ用のプレートコンパクターと2種類用意しなければならず、コストがかかるという問題がある。また、振動板の面積を大きくすると、幅の狭い施工面等には用いることができないという問題がある。プレートコンパクター全体の重量を軽いものとしようとした場合、振動板を薄いものにするなどしなければならず、耐久性に問題が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、簡単な構成で、一台で、敷設面に敷かれた土木材料を従来のプレートコンパクターと同様にして路盤等の締固めを行えるだけでなく、表面仕上げも容易に行うことができるプレートコンパクターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかるプレートコンパクターは、振動板を起振機によって振動させ、この振動によって敷設面に敷設された土木材料を転圧するプレートコンパクターにおいて、分銅と、伸縮によって前記分銅を前記振動板に対して上下方向に振動可能に支持する弾性部材と、前記振動板に対して前記分銅を固定状態及び上下振動可能状態のいずれかを選択可能な分銅の固定手段と、を有する前記振動板の振動制御手段を備えていることを特徴としている。
【0009】
本発明において、固定手段は、特に限定されないが、例えば、振動板に対して固定された枢支軸と、この枢支軸に一端部が枢支されるとともに、回動によってその中間部が分銅の上面に当接する操作レバーと、この操作レバーの他端部を係止して、前記操作レバーの中間部が分銅の上面に当接して分銅越しに弾性部材を振動板方向へ圧縮し、前記分銅を振動板上に設けられた分銅固定部に圧接させた状態に操作レバーを保持する前記振動板に対して固定された操作レバー係止部と、を備えている構成とすることができる。
【0010】
また、振動制御手段は、複数組備えていることが好ましく、特に、少なくとも2組の振動制御手段が、振動板の幅方向の中心軸を挟んで対称に配置されていることが好ましい。
振動板は、特に限定されないが、例えば、補助振動板をボルト等で主振動板に着脱自在にする方法などによって転圧面積可変、すなわち、振動板の転圧面にかかる面圧を変更できるように形成されていてもよい。
【0011】
本発明のプレートコンパクターは、振動板の傾きを視認可能な水準器を、 施工面に水を散水する散水手段を必要に応じて備えている構成としてもよいし、振動板に振動センサが取り付けられるとともに、この振動センサで計測された振動エネルギーを演算する演算装置と、この演算装置で演算された振動エネルギーを作業者に視認可能に表示する表示装置とを備えている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるプレートコンパクターは、以上のように、分銅と、伸縮によって前記分銅を前記振動板に対して上下方向に振動可能に支持する弾性部材と、前記振動板に対して前記分銅を固定状態及び上下振動可能状態のいずれかを選択可能な分銅の固定手段と、を有する前記振動板の振動制御手段を備えているので、簡単な構成で、一台で、敷設面に敷かれた土木材料を従来のプレートコンパクターと同様に路盤等の締固めだけでなく表面仕上げも容易に行うことができる。
【0013】
すなわち、振動制御手段を操作し、分銅を固定した状態では、分銅が振動板の振動に同調して振動し、分銅を含むプレートコンパクター全体の質量分の振動エネルギーが振動板を介して転圧面に加わる。
したがって、従前のコンパクターと同様に一般の路盤等の締固めやアスファルト舗装に使用することができる。
【0014】
一方、振動制御手段を操作し、分銅の固定を解除して、分銅が下方から弾性部材によって支持され、上下に振動自在で、分銅が振動板の振動に共振しない状態に保持すると、振動板が振動しても、振動板の振動が弾性部材によって吸収される。したがって、分銅の質量が振動板による転圧に殆ど寄与せず、転圧面が十分小さな振動エネルギーによって転圧される。
よって、弱い締固めだけでなく、下層のポーラスコンクリートを締固めることなく表面のみを平滑に仕上げることができる。
しかも、誰にでも使用でき、常に同程度の仕上げ性能を発揮し、締固め比を機械的に制御でき、人による差をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるプレートコンパクターの第1の実施の形態をあらわす斜視図である。
【図2】図1のプレートコンパクターの要部平面図である。
【図3】図1のプレートコンパクターの振動制御手段の使用状態を説明する図であって、その分銅固定状態の説明図である。
【図4】図3のY−Y線断面図である。
【図5】図1のプレートコンパクターの振動制御手段の使用状態を説明する図であって、その分銅非固定状態の説明図である。
【図6】本発明にかかるプレートコンパクターの第2の実施の形態をあらわす要部平面図である
【図7】図6のZ―Z線断面図である。
【図8】本発明にかかるプレートコンパクターの第3の実施の形態をあらわす斜視図である。
【図9】本発明にかかるプレートコンパクターの第4の実施の形態を模式的にあらわす説明図である。
【図10】図9のプレートコンパクターの振動エネルギー表示手段の演算方法を説明する流れ図である。
【図11】本発明にかかるプレートコンパクターの第5の実施の形態を模式的にあらわす説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図5は、本発明にかかるプレートコンパクターの第1の実施の形態をあらわしている。
【0017】
図1に示すように、このプレートコンパクターAは、振動板1aと、起振機2と、ハンドル3と、2組(図では片側しかあらわれていない)の振動制御手段4と、を備えている。
振動板1aは、例えば、厚み4〜6mmの鋼板を加工してなり、平板部11と、プレートコンパクターAの進行方向前後が徐々に湾曲して少し立ち上がる湾曲部12とを備え、例えば、平板部11の進行方向(矢印X方向)の寸法が0.3〜0.5mm、幅方向(プレートコンパクターAの進行方向に直交する方向)の寸法が0.6〜1.5mとなっている。
【0018】
起振機2は、公知のプレートコンパクターの起振機と同様になっていて、振動板1aの平板部11の中央に固定されていて、エンジン21がその回転駆動力が起振軸(図示せず)に伝達されることによって起振軸が回転し、この起振軸の回転により振動板1aを振動させるようになっている。
また、起振機2は、エンジン21の回転数を増減させるアクセルレバー22を有し、このアクセルレバー22が後述するハンドル3に固定されている。
【0019】
ハンドル3は、把手部31と、把手部31の両側から平行に伸びる2つの脚部32を備えた門形をしていて、2つの脚部32によって起振機2を振動板1aの幅方向両側から挟むとともに、脚部32の下端がそれぞれプレートコンパクターA全体の重心に近い位置で起振機2の側面にボルト33を介して枢支されている。
すなわち、ハンドル3は、ボルト33を緩めることによって、脚部32の下端を中心にプレートコンパクターAの進行方向の前後方向に回動し、姿勢を変えることができるようになっている。
【0020】
2組の振動制御手段4は、振動板1aの幅方向両側から起振機2を挟むように振動板1aの平板部11に設けられている。
また、振動制御手段4は、図1〜図5に示すように、分銅受部41と、2本のガイドピン42と、2つの弾性部材としてのコイルばね43と、分銅44と、固定手段45と、を備えている。
【0021】
分銅受部41は、コーナー部分が他の部分により高くなった平面視矩形の枠状をしていて、下端が溶接等によって平板部11に固定されている。
2本のガイドピン42は、平板部11の分銅受部41に囲まれた部分から垂直に立ち上がるように設けられていて、下端が溶接によって平板部11に固定されている。
ガイドピン42の上端は、分銅受部41より上方に突出している。
【0022】
2つのコイルばね43は、それぞれ対応するガイドピン42をコイルの中心軸に一致させた状態で下端が平板部11に溶接固定されている。
また、コイルばね43は、後述するように、分銅44を非固定状態とするとともに、アクセルレバー22を調整して起振機2にエンジン21の回転数を最も下げた状態において、分銅44が振動板1aの振動に共振せず、振動板1aの加振周波数より共振周波数の低い(柔らかい)ものが選択される。
【0023】
分銅44は、分銅受部41と略同じか大きな平面視矩形の板状をしていて、下端面に中央部に2つのガイドピン挿通孔44aが上下方向に貫通するように穿設されている。
ガイドピン挿通孔44aは、ある程度分銅44が水平方向に移動可能なように、その内径がガイドピン42の外径より大きくなっている。
また、分銅44は、その下端面にコイルばね43の上端が溶接で固定されている。
【0024】
さらに、分銅44は、その上面中央に、2条の平行に並ぶ凸条44bを備え、この2つの凸条44bによって後述する操作レバー45bの押圧突起455が嵌り込む断面略U字形の溝44cが進行方向前後に連続するように設けられている。なお、溝44cの少なくとも底部は、押圧突起455が溝44cに沿ってスライドしやすいように樹脂などの滑りやすい材料で形成されていることが好ましい。
【0025】
固定手段45は、支柱45aと、操作レバー45bと、操作レバー係止部45cとを備えている。
支柱45aは、分銅受部41を挟んでの振動板1aの進行方向の後方側で、振動板1aの平板部11に下端が溶接(あるいはボルト)によって固定されている。
【0026】
操作レバー45bは、側面視略への字形をしていて、への字の折れ曲がり部の鈍角側を振動板1a側に向くように一端を支柱45aの上端部に設けられた枢支軸451に回動可能に枢支されている。また、操作レバー45bは、一方の側面のへの字の非枢支側の辺の先端側に後述する操作レバー係止部45cの係合凹部452,453に係合する係合突起454が突設されているとともに、非枢支側の辺の中間部に分銅44側に向かって突出する押圧突起455を備えている。
【0027】
操作レバー係止部45cは、支柱45aとの対面側に上下に並んだ2つの係合凹部452,453を備えている。
下側に配置された係合凹部452は、側面視でコーナー部が湾曲した略L字形をしていて、支柱45a側に開口しているとともに、L字の縦辺部分の幅が係合突起454と略同じ幅が少し幅広になっている。
上側に配置された係合凹部453は、側面視でコーナー部が湾曲した上下を反転させた略L字形をしていて、支柱45a側に開口しているとともに、L字の縦辺部分の幅が係合突起454と略同じ幅が少し幅広になっている。
【0028】
そして、操作レバー45bは、操作レバー45bの先端を持ち、溝44cに押圧突起455が嵌り込んだ状態で、係合突起454の高さ分だけ2点鎖線で示すように、操作レバー係止部45cから遠ざかるように撓ませつつ、係合突起454が係合凹部452のL字の縦辺部分を臨む位置まで枢支軸451を中心に回動させ、撓みを解除して係合突起454を係合凹部452に係合させることによって、分銅44を分銅受部41に圧接状態で保持することができる。
すなわち、操作レバー45bを回動させるにつれ、分銅44に押圧突起455を介して下方への凹圧力が加わり、コイルばね43が収縮していく。なお、押圧突起455が溝44cに嵌り込んだ状態になっているので、操作レバー45bが撓むと、分銅44も撓み方向にズレ動き、コイルばね43も少し斜めに撓みながら収縮していく。そして、係合突起454が係合凹部452のL字の縦辺部分を臨む位置までくると、分銅44の下端が分銅受部41の上端に圧接された状態となる。また、撓みを解除すると、分銅44は分銅受部41の上端に沿いながらコイルばね43の軸が垂直となるようにスライドする。
【0029】
一方、係合突起454の、係合凹部452のL字の縦辺部分への係合を解除し、操作レバー45bを上に向かって回動させて、係合突起454を係合凹部453のL字の縦辺部分に係合させると、分銅44への押圧が全く解除され、分銅44がコイルばね43の付勢力によって分銅受部41から浮き上がり、上下に振動可能になる。
【0030】
つぎに、このプレートコンパクターAの使用方法を説明する。
【0031】
〔通常の路盤等の強い締固め〕
図1〜図4に示すように、操作レバー45bを回動させて開放端側を下部係合凹部453に係合させる。
操作レバー45bの開放端側を下部係合凹部453に係合させることによって、分銅44の上面が操作レバー45bの押圧突起455によって押圧されるので、コイルばね43が圧縮されて、分銅44の下端面が分銅受部41の上端面で受けられた状態に保持される。
そして、この状態で起振機2を作動させて、従来の同様にして押し固めを行う。
【0032】
すなわち、上記のように、分銅44が分銅受部41に圧接された状態では、分銅44が振動板1aの振動に同調して振動し、分銅44を含むプレートコンパクター全体の質量分の振動エネルギーが振動板1aを介して転圧面に加わる。
したがって、従前のコンパクターと同様に一般の路盤等の締固め、固練りコンクリートの締固めやアスファルト舗装に使用することができる。
また、エンジン21のアクセルレバー22を備えているので、振動数の調整も行うことができる。
【0033】
〔弱い締固めあるいは表面仕上げ〕
図5に示すように、操作レバー45bを、係合突起454の係合凹部452への係合を解除し、係合突起454が上側の係合凹部453に係合するように回動させて、操作レバーによる分銅44へ押圧を解除する。
そして、この状態でエンジン21のアクセルレバー22を最も低速側になるように操作するとともに、起振機2を作動させて従来の同様にして押し固めを行う。
すなわち、上記のように、操作レバー45bによる分銅44へ押圧を解除した状態では、分銅44がコイルばね43によって上下に振動自在に下方から支持されている。しかも、エンジン21が最も低速で回転駆動する場合、分銅44が振動板1aの振動に対して共振しない。
【0034】
そして、プレートコンパクターA全体の質量から分銅44の質量を殆ど除いた質量分に相当するポーラスコンクリートの締固めに要するエネルギーより小さな振動エネルギーが振動板1aを介して転圧面に加わることになる。
すなわち、振動板1aによって、ポーラスコンクリートの締固めに要するエネルギーより小さな振動エネルギーしか転圧面に加わらないので、締固め効果はサチュレートし、仕上げ(締固め)が不足の箇所を再度走行させても、掘り起こしや凸凹が発生しにくく、より安心して使用できる。因みに、わずかに残る盛り上がりや筋を修正したいとき、エネルギーが小さい設定でなければ、元よりも悪くなってしまうおそれがある。
しかも、表面付近は骨材をインターロック(砕石どうしを密着させ、表面を平滑化)させて表面付近を目標とする一定の締固め状態とすることができるとともに、内部に高い空隙率を確保することができる。
【0035】
したがって、高い透水性・排水性を確保して、長期的に目詰まりしにくく、表面の強度を高い、透水性舗装を、ポーラスコンクリートを用いて誰にでも簡単にコテ仕上げより平滑性な仕上がりにできるとともに、作業時間を短縮できる。また、透水性舗装に起こりやすい骨材の剥脱を防止できる。しかも、締固めをソフトにでき、沈下量が小さいため、不陸(凹凸)を生じにくく、修正もしやすい。
【0036】
このプレートコンパクターAは、以上のように、振動制御手段4によって、振動エネルギーを大きく変えることができ、1台のプレートコンパクターAを用意するだけで、大きな振動エネルギーによる強い締固め、小さな振動エネルギーによる弱い締固め及び表面仕上げを簡単に誰でも行うことができる。そして、表面仕上げを、コテを用いて手作業で行う必要がなくなるので、作業時間の短縮を図ることができるとともに、仕上げ状態の均一化も図れる。しかも、振動制御手段4がコイルばね43と、分銅44と、この分銅44を固定する操作レバー45b等の部材を従来のプレートコンパクターに付加しただけの構成であるので、従来のプレートコンパクターの改造によって製造コストをあまりかけずに製造することもできる。
また、上記プレートコンパクターAは、ボルト33を緩めることによって、進行方向の前後にハンドル3を簡単に回動させることができるので、ハンドル3の進行方向の後方側に傾けた状態にすれば、ハンドル3を持って進行方向の後方側から押しながら作業を行うことができ、ハンドル3の進行方向の前方側に傾けた状態にすれば、ハンドル3を持って進行方向の前方側から引きながら作業を行うことができる。したがって、ハンドル3が片側固定だと、プレートコンパクターAを回転させようとしたときに、重心に偏よりが生じて、振動板1aに振動によって却って転圧面を掘り起こしたり、荒らしたりするおそれがたかくなるが、上記のようにハンドル3の姿勢を偏向かのうであると、最もスムーズに機械を回転させる姿勢やタイミングがとりやすくなり、掘り起こしを防止できる。
さらに、振動制御手段4が振動板1aの幅方向の両側に設けられているので、作業中、走行予定部分の片側が高いと判断したときは、片側だけ分銅を固定状態にして振動エネルギーの左右のバランスを変化させて補正を行なうことができる。
【0037】
図6及び図7は、本発明にかかるプレートコンパクターの第2の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、このプレートコンパクターBは、振動板1bが起振機(図示せず)を搭載した振動板本体13と、上記プレートコンパクターAと同様の振動制御手段4を搭載した2枚の副振動板14(図では片側しかあらわれていない)とから構成され、図6及び図7に示すように、振動板本体13と副振動板14とがボルト15及びナット16によって固定されている以外は、上記プレートコンパクターAと同様になっている。
このプレートコンパクターBは、起振機を搭載した振動板本体13と、振動制御手段4を搭載した2枚の副振動板14とが、振動板本体13及び副振動板14に設けられた固定辺13a, 14a同士を突合せて、固定辺13a, 14aを、ボルト15の頭部とナット16との間に挟み込むことによって固定されている。したがって、ボルト15及びナット16を取り除き、副振動板14を取り除けば、狭い面積の強い締固めのみが要求される場合にも対応することができるとともに、既存のプレートコンパクターを少し改造するだけで得られ、低コストで本発明のプレートコンパクターを得ることができる。
なお、振動板本体13と副振動板14との固定は、ボルト15及びナット16に代えてクランプを用いるようにしても構わない。
【0038】
図8は、本発明にかかるプレートコンパクターの第3の実施の形態をあらわしている。
図8に示すように、このプレートコンパクターCは、上記プレートコンパクターAに、散水手段5をさらに設けた以外は、上記プレートコンパクターAと同様になっている。
【0039】
すなわち、散水手段5は、起振機2に固定されたポンプ付きの水タンク51と、振動板1aの進行方向前方側に設けられた噴霧ノズル52と、水タンク51からの水を噴霧ノズル52に送るチューブ53と、ハンドル3に固定されたポンプの操作スイッチ54とを備えている。
そして、散水手段5は、操作スイッチ54を操作してポンプを作動させることによって、水タンク51から水タンク51内の水をチューブ53を介して噴霧ノズル52に送り、噴霧ノズル52から進行方向前方の転圧面に向かって水を噴霧するようになっている。
【0040】
このプレートコンパクターCは、上記プレートコンパクターAと同様の効果を備えているとともに、上記のように、散水手段5を有しているので、ポーラスコンクリートの敷き均しの後、少々時間が経過しても、水噴霧すれば、平滑に仕上げられる。
なお、噴霧ノズル52は、進行方向の前後にそれぞれ設けるようにしても構わない。また、噴霧ノズル52の噴霧形状は必要な部分に散水できれば特に限定されない。
【0041】
図9は、本発明にかかるプレートコンパクターの第4の実施の形態をあらわしている。
図9に示すように、このプレートコンパクターDは、上記プレートコンパクターAに、さらに、振動センサ(加速度センサ)61、演算装置62と、表示装置63とを備えている。
【0042】
振動センサ61は、振動板1aに取り付けられて、振動板1aの振動を計測するようになっている。
演算装置62は、起振機2の側面に取り付けられて、振動センサ61で計測された振動データから振動エネルギーを演算するようになっている。
表示装置63は、起振機2の作業者が容易に視認可能な位置に取り付けられて、演算装置62で演算された振動エネルギーの結果を表示するようになっている。
すなわち、このプレートコンパクターDは、図10に示すように、演算装置62が、その演算部で振動センサ61から送られてきた振動データから振動板1aの振幅を演算するとともに、演算によって得られた振幅と、演算装置62のメモリーに記憶された記憶データ、例えば、振動板1aの転圧面積、起振機2のエンジンの回転数及び転圧に寄与する質量と、から振動エネルギーを演算して、その結果を表示装置63に表示するようになっている。
【0043】
このプレートコンパクターDは、上記プレートコンパクターAと同様の効果を備えているとともに、上記のように、表示装置63に表示された振動エネルギーを作業者が見ながら作業を行えるので、より品質を安定させることができる。
【0044】
図11は、本発明にかかるプレートコンパクターの第5の実施の形態をあらわしている。
図11に示すように、このプレートコンパクターEは、上記プレートコンパクターAに、さらに、水準器71と、基準ポール72と、スタビライザー73とを備えている以外は、上記プレートコンパクターAと同様になっている。
【0045】
すなわち、水準器71は、振動板1aの平板部11が水平になった状態のとき、水平状態を示すように、起振機2の上面に設けられている。
基準ポール72は、振動板1aの平板部11に対して垂直に配置される長尺の垂直部72aと、垂直部72aの下端から直角に折れ曲がって形成された振動板1aの平板部11に対して平行に配置される短尺の水平部72bとを備え、水平部72b部分が起振機2に固定されている。
スタビライザー73は、振動板1aの進行方向前後にそれぞれヒンジ73aを介して回動し、振動板1aの平板部11に対して、その底面が略水平状態の姿勢と、直交状態の姿勢とを選択可能になっている。スタビライザー73の寸法は、進行方向の寸法が50〜100mm、幅方向(プレートコンパクターEの進行方向に直交する方向)の寸法が振動板1aの幅方向の寸法と略同じになっている。
【0046】
このプレートコンパクターEは、上記プレートコンパクターAと同様の効果を備えている。
そして、水準器71を備えているので、起振機2を停止し、水準器71を確認すれば転圧面が水平に仕上がっているかどうかを簡単に確認できる。勿論、転圧中も水準器71を確認すればより確実に平滑に仕上げることができる。
なお、水準器71は、傾斜面を平滑に仕上げることができるように、平板部11に対して角度を変更自在な支持機構を設けるようにしても構わない。
【0047】
また、基準ポール72を備えているので、この基準ポール72の転圧面との傾きを確認しながら作業を行えば、振動板1aの傾きがわかりやすくなり、平坦に仕上げる感覚が得られやすい。
さらに、スタビライザー73を備えているので、スタビライザー73をヒンジ73aを解して回動させ、その底面が振動板1aの平板部11と略同一面に収まるようにすれば、平坦性をより向上させることができる。そして、スタビライザー73を平板部11に対して直交する姿勢にすれば、プレートコンパクターEの保管時に邪魔にならない。
なお、スタビライザー73は、振動板1aの進行方向の前後いずれか一方に設けられていても構わない。
【0048】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、操作レバーで分銅をコイルばねの圧縮方向に押さえ、分銅が分銅受部に圧接されるまで、コイルばねを収縮させることによって分銅を振動板に固定し、振動板と分銅とを一体に振動させるようにしているが、振動板の振動に同調して動くクランプ手段を設け、このクランプ手段によって分銅をクランプして分銅を振動板に固定するようにしても構わない。
上記の実施の形態では、分銅振動制御手段が、振動板の幅方向に並んで設けられていたが、起振機を挟んで振動板の進行方向前後に設けるようにしても構わないし、振動板の四隅に設けるようにしても構わない。例えば、分銅を前後に配置すれば、分銅質量の2段階調節機能をもつことに相当する。
【0049】
上記の実施の形態では、分銅を溶接によってコイルばねの上端に固定するようにしていたが、コイルばねの上端に固定板を一体固定し、この固定板にボルトナット等を用いて分銅を着脱自在に固定する構造としてもよい。
上記の実施の形態では、弾性部材としてコイルばねが用いられていたが、板ばねや、ゴム弾性体、あるいはこれらの複合材料を用いるようにしてもよい。
【0050】
上記の実施の形態では、起振機がエンジンの駆動力によって起振軸を回転させるようになっていたが、電動モータの駆動力を用いるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、エンジンがアクセルを備えていたが、アクセルは無くても構わない。
【符号の説明】
【0051】
A,B,C,D,E プレートコンパクター
1a,1b 振動板
11 平板部
12 湾曲部
13 振動板本体
14 副振動板
2 起振機
3 ハンドル
4 振動制御手段
43 コイルばね(弾性部材)
44 分銅
45 固定手段
45a 支柱
45b 操作レバー
45c 操作レバー係止部
451 枢支軸
5 散水手段
61 振動センサ
62 演算装置
63 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板を起振機によって振動させ、この振動によって敷設面に敷設された土木材料を転圧するプレートコンパクターにおいて、
分銅と、
伸縮によって前記分銅を前記振動板に対して上下方向に振動可能に支持する弾性部材と、
前記振動板に対して前記分銅を固定状態及び上下振動可能状態のいずれかを選択可能な分銅の固定手段と、を有する前記振動板の振動制御手段を備えていることを特徴とするプレートコンパクター。
【請求項2】
固定手段が、振動板に対して固定された枢支軸と、
この枢支軸に一端部が枢支されるとともに、回動によってその中間部が分銅の上面に当接する操作レバーと、
この操作レバーの他端部を係止して、
前記操作レバーの中間部が分銅の上面に当接して分銅越しに弾性部材を振動板方向へ圧縮し、前記分銅を振動板上に設けられた分銅固定部に圧接させた状態に操作レバーを保持する前記振動板に対して固定された操作レバー係止部と、
を備えている請求項1に記載のプレートコンパクター。
【請求項3】
振動制御手段を複数組備えている請求項1または請求項2に記載のプレートコンパクター。
【請求項4】
少なくとも2組の振動制御手段が、振動板の幅方向の中心軸を挟んで対称に配置されている請求項3に記載のプレートコンパクター。
【請求項5】
振動板が、転圧面積可変に形成されている請求項1〜請求項4のいずれかに記載のプレートコンパクター。
【請求項6】
振動板の傾きを視認可能な水準器を備えている請求項1〜請求項5のいずれかに記載のプレートコンパクター。
【請求項7】
施工面に水を散水する散水手段を備えている請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプレートコンパクター。
【請求項8】
振動板に振動センサが取り付けられるとともに、この振動センサで計測された振動エネルギーを演算する演算装置と、この演算装置で演算された振動エネルギーを作業者に視認可能に表示する表示装置とを備えている請求項1〜請求項7のいずれかに記載のプレートコンパクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−21341(P2011−21341A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165488(P2009−165488)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】