説明

プレートフィン型熱交換器

【課題】ヘッダータンクの端部で接合部やその周辺のコア部分における大きな熱応力の発生を抑制し、変形や破損を防止し得るプレートフィン型熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器は、高温流体の通路と低温流体の通路とが交互に積層配置されたコア8と、コアの側面に開口している低温流体通路の入口および出口に接合された入側および出側ヘッダータンク9a、9bを有し、ヘッダータンクの端部が丸みをもった形状をなし、かつ、流体通路の入口および出口がヘッダータンク内にのみ開口する構成である。端部が丸みをもったヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分に、高温および低温流体通路と異なる通路を配置したり、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない他方の流体通路を配置したり、ヘッダータンクの先端に近づくに伴い流体通路の入口および出口の幅を狭める構成を採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲にわたる産業分野で使用されているプレートフィン型熱交換器に関し、さらに詳しくは、高温流体および低温流体を流通させる通路が交互に積層配置された熱交換器本体(以下、「コア」という)に取り付けられたヘッダータンクの接合部(付け根)や、その周辺コア部における大きな熱応力の発生を防止することができるプレートフィン型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートフィン型熱交換器は、高温流体を流通させる通路と低温流体を流通させる通路とが交互に積層配置された熱交換器であり、小型軽量で熱交換効率に優れた熱交換器として、産業機械、鉄道車両、電力設備、その他広範囲にわたる産業分野で使用されている。
【0003】
図1は、プレートフィン型熱交換器の構造例を示す斜視図である。この熱交換器1は、高温流体(例えば、燃焼排ガス)を流通させる高温流体通路3と、低温流体(例えば、冷却用空気)を流通させる低温流体通路4とが、交互に積層配置されたコア2を備え、このコア2の側面に接合されたヘッダータンク5a、5bを有している。
【0004】
高温流体通路3と低温流体通路4とはチューブプレート(図示せず)と称される仕切り板で仕切られ、両流体通路3、4内には、伝熱促進用のコルゲート型や各種の形状からなるフィン7が設けられている。また、図1には明示していないが、チューブプレート同士の間隔を保ち、流路を密封するためのサイドバーが設けられている。例えば、図1では、コア2の手前側の右側面全面(但し、ヘッダータンク5aの接合部を除く)や、コア2の手前側の左側面に現れている低温流体通路4には、サイドバーが設けられている。
【0005】
高温流体Hは、図1中でコア2の手前側の左側面から高温流体通路3を奥側に通過し、低温流体Lは、コア2の手前側の右側面に取り付けられた入側のヘッダータンク5aから供給され、低温流体通路4を通過し、コア2の奥側の左側面に取り付けられた出側のヘッダータンク5bから排出される。これにより両流体間では、高い効率で熱交換が行われる。
【0006】
図2は、図1に示したプレートフィン型熱交換器のコア構造における流体通路の構成を説明する図であり、(a)は低温流体通路4の構成を、(b)は高温流体通路3の構成を示している。
【0007】
図2(a)に示すように、低温流体通路4は、入側のディストリビューター部4a、メインフィン部4bおよび出側のディストリビューター部4cから構成されている。ノズル6aを経て入側のヘッダータンク5aから供給された低温流体Lは、入側のディストリビューター部4aを通過し、図2(b)に示す高温流体通路3のメインフィン部3bと平行に配置されたメインフィン部4bに分配される。その後、低温流体Lは、メインフィン部4bを通過する過程で高温流体Hとの熱交換が行われ、出側のディストリビューター部4cを経て、出側のヘッダータンク5bおよびノズル6bから排出される。すなわち、ディストリビューター部4a、4cはコアの側面に開口してそれぞれ低温流体通路4の入口、出口を構成し、その入口、出口の全域に被さるようにヘッダータンク5a、5bが接合されている。
【0008】
一方、図2(b)に示すように、高温流体Hは、コア入側3aから直ちにメインフィン部3bに供給され、低温流体Lとの間で熱交換が行われた後、コア出側3cから排出される。
【0009】
このように構成されたプレートフィン型熱交換器1では、低温流体通路4の入口および出口の断面がいずれも同一の長方形であるため、そこに接合されるヘッダータンクの接合面の形状も長方形である。そのため、コアとヘッダータンクに大きな温度差が発生したり、ヘッダータンクの接合部(付け根)周辺で大きな温度差が発生する場合には、ヘッダータンクの端部(接合部に近いヘッダータンク部分)やその周辺のコア部分に大きな熱応力が発生する。特にヘッダータンクの端部では、その角部に応力が集中して高い熱応力が発生するため、熱交換器に変形や破損が発生する場合がある。
【0010】
この問題に対処するため、例えば、特許文献1には、ガスタービンや高温型燃料電池の排ガスと空気との熱交換に使用されるプレートフィン型の空気予熱器(空気が排ガス通路と直交する方向から供給され、排ガスと平行流を形成した後、直交方向に排出される)として、空気通路の入側ディストリビューターまたは出側ディストリビューターが排ガス通路の入口端からガス流れ方向に所定距離だけ離れた位置(言い換えると、熱交換器の内側)で積層配置された空気予熱器(熱交換器)が記載されている。
【0011】
この空気予熱器によれば、高級な耐熱材料や複雑な構造等を要することなく、排ガス通路の入口端や、熱交換器とヘッダータンクの端部に生じる大きな温度勾配を抑制し、熱応力を低減することができるとしている。しかし、ヘッダータンクの端部に角部が存在している以上、その部分に熱応力が集中するので、同文献に記載される技術は、熱応力対策として必ずしも十分なものではない。また、同文献に記載の空気予熱器のように空気通路のディストリビューターを熱交換器の内側に設けると、その分、熱交換器として機能する部分が小さくなる。熱交換能力を維持しようとすると、排ガス通路の入口端を外側に設けなければならず、熱交換器が全体として大きくなる。
【0012】
【特許文献1】特開2008−39227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このようなプレートフィン型熱交換器の局部における大きな熱応力の発生という問題に鑑みてなされたものであり、特に、ヘッダータンクの端部において、接合部に近いヘッダー部分や接合部周辺のコア部分における大きな熱応力の発生を抑制し、変形や破損を防止し得るプレートフィン型熱交換器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、高温流体通路や低温流体通路の入口および出口に取り付けるヘッダータンクの断面形状を、コアの形状に合わせて長方形とするのではなく、端部を円形状や楕円形状とする(すなわち、曲率半径Rの大きい丸みをもたせた形状とする)対処法について検討した。その結果、ヘッダータンク接合部近傍のチューブプレート(空気側)やヘッダータンクの端部の熱応力が大きく低下することが熱応力解析により判明した。
【0015】
しかしながら、例えば低温流体通路の入口に接合した長方形のヘッダータンクを、端部に大きな丸みを設けたヘッダータンクに置き換えると、低温流体通路の入口の一部がヘッダータンクから外れる(言い換えれば、ヘッダータンク外に開口する)こととなり、後述するように、熱効率の低下等を招く。これについては、例えば次の(a)〜(c)に示す構成を採用することにより対処することができる。
【0016】
(a)ヘッダータンクから外れる入口および出口を含む流体通路を、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない通路であって、高温流体通路および低温流体通路と異なる別の通路で置き換える。
(b)ヘッダータンクから外れる入口および出口を含む流体通路を、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない他方の流体通路で置き換える。
(c)端部に大きな丸みを設けたヘッダータンクの端部の輪郭に合わせ、当該ヘッダータンクの先端に近づくに伴い流体通路の入口および出口の幅を狭める。
【0017】
本発明はこのような検討結果に基づきなされたもので、下記のプレートフィン型熱交換器を要旨とする。
【0018】
すなわち、高温流体を流通させる高温流体通路と低温流体を流通させる低温流体通路とが交互に積層配置されたコアと、当該コアの側面に開口している高温流体通路および低温流体通路のうちのいずれか一方または両方の入口および出口にそれぞれ接合された入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクとを有するプレートフィン型熱交換器であって、入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクのうちの少なくとも一方のヘッダータンクの端部が丸みをもった形状をなし、かつ、当該ヘッダータンクが接合される流体通路の入口および出口が当該ヘッダータンク内にのみ開口していることを特徴とする熱交換器である。
【0019】
前記の「コアの側面に開口している高温流体通路および低温流体通路のうちのいずれか一方または両方の入口、出口」とは、入側ヘッダータンクからこれら流体をコア内の流体通路に送り込む入口、これら流体をコアの流体通路から出側ヘッダータンクに排出する出口をいう。すなわち、これらの入口、出口は、コアの側面のうちサイドバーが設けられていない部分である。
【0020】
本発明のプレートフィン型熱交換器においては、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分に、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない通路であって、高温流体通路および低温流体通路と異なる通路を配置する実施の形態(実施形態1)を採ることができる。
【0021】
また、本発明のプレートフィン型熱交換器においては、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分に、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない他方の流体通路を配置する実施の形態(実施形態2)を採ることができる。
【0022】
さらに、本発明のプレートフィン型熱交換器においては、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部位分に、当該ヘッダータンクの先端に近づくに伴い流体通路の入口および出口の幅を狭める実施の形態(実施形態3)を採ることも可能である。
【0023】
前記の実施形態1〜3において、「丸みをもった形状をなすヘッダータンクの端部」とは、ヘッダータンクの端の部分で、接合部が丸みをもつ部分である(以下、単に「ヘッダータンクの端部」ともいう)。例えば、後に示す図4において、ヘッダータンクの下端から5層目(高温流体通路と低温流体通路を対として1層とする)の流体通路までを覆う部分である。また、「当該端部に対応するコア部分」とは、このヘッダータンクの端部が接合された面を含む全ての流体通路(層)の部分をいう。図4において、コアの下端から5層目の流体通路までのコア部分をいう。
【発明の効果】
【0024】
本発明のプレートフィン型熱交換器を使用すれば、コアとヘッダータンクの間に温度差が生じる場合であっても、ヘッダータンクの端部において、接合部に近いヘッダー部分や接合部周辺のコア部分に集中して高い熱応力が発生するのを抑制することができ、熱交換器の変形や破損の発生を防止することができる。しかも、本発明のプレートフィン型熱交換器は、前記特許文献1に記載の熱交換器のように流体通路のディストリビューターを熱交換器の内側に設けることは不要であり、熱交換器としての機能が低下することはなく、全体として大きくなることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
前述の通り、本発明のプレートフィン型熱交換器は、高温流体を流通させる高温流体通路と低温流体を流通させる低温流体通路とが交互に積層配置されたコアと、当該コアの側面に開口している高温流体通路および低温流体通路のうちのいずれか一方または両方の入口および出口にそれぞれ接合された入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクとを有するプレートフィン型熱交換器を前提とするものであって、入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクのうちの少なくとも一方のヘッダータンクの端部が丸みをもった形状をなし、かつ、当該ヘッダータンクが接合される流体通路の入口および出口が当該ヘッダータンク内にのみ開口していることを特徴とする。
【0026】
図3は、本発明のプレートフィン型熱交換器の概略構成例を示す図で、同図(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。図3に示すように、本発明の熱交換器は、コア8と、この例では両端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンク9a、9bを有している。ヘッダータンク9a、9bにはそれぞれノズル10a、10bが取り付けられている。
【0027】
ヘッダータンク9a、9bが取り付けられた部位、すなわちコアの側面には低温流体通路の入口および出口が開口しており、低温流体Lはノズル10aを経てヘッダータンク9aからコア8内に供給される。低温流体Lは、図3(c)に破線で示した入側のディストリビューター部11aを通過し、メインフィン部11bで高温流体Hとの間で熱交換が行われた後、出側のディストリビューター部11cを経て、ヘッダータンク9bおよびノズル10bから排出される。
【0028】
図3では明示していないが、低温流体通路の入口および出口はヘッダータンク9a、9b内にのみ開口している。
【0029】
図4は、図3(b)におけるヘッダータンク9aの端部を拡大した一部断面を含む図で、後に説明する実施形態3の熱交換器の構成を示す図である。端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンク9aを太い実線で示している。比較のために、従来の長方形のヘッダータンクを太い破線で示している。伝熱促進用のコルゲート型のフィン12が設けられた部分が開口部で、ディストリビューター部11aへの入口を構成している。
【0030】
ヘッダータンク9aから供給された低温流体は、開口している入口からディストリビューター部11aを通過してコア内部へ導かれる。高温流体は、通路13を経て、図4の左から右へ通過する。低温流体の各通路のうち、前記の開口部以外の部分(図4中に、符号11sを付した部分)には、サイドバーが設けられている。図4中で塗りつぶしで示す部分は、従来の長方形のヘッダータンクが取り付けられた場合に開口部であった部分であり、本発明の熱交換器では、サイドバーが設けられる。
【0031】
図4に示すように、本発明の熱交換器では、低温流体通路の入口(ディストリビューター部11aへの入口)はヘッダータンク9a内にのみ開口している。低温流体通路の出口についても同様である。
【0032】
本発明のプレートフィン型熱交換器でヘッダータンクの端部を丸みをもった形状とするのは、接合部周辺のヘッダー部分やコア部分における大きな熱応力の発生を抑制するためである。従来の接合面の形状が長方形のヘッダータンクを使用した場合、ヘッダータンクの端部において、接合部周辺で大きな温度差が発生すると、特にヘッダータンクの角部で応力が集中し、ヘッダータンクの接合部に近いヘッダー部分や接合部周辺のコア部分に大きな熱応力が発生する。ヘッダータンクの端部に丸みを持たせることにより、後述する実施例に示すように、応力集中が緩和され熱応力が大きく低下する。
【0033】
ヘッダータンクの端部に形成する丸みの形状等について特に限定はない。僅かな丸みをもたせるだけでも効果が認められるが、例えば、円形状、楕円形状など、大きな曲率半径Rをもった丸み形状にすると効果が大きい。
【0034】
前記図3に例示したように、ヘッダータンクの端部の丸みは、入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクのそれぞれの両端部に形成するのが望ましいが、両ヘッダータンクのうちの一方のヘッダータンクの両端部に形成してもよい。また、両端部ではなく、例えば一方の端部で大きな熱応力が発生する場合には、その端部のみに丸みをもたせてもよい。
【0035】
本発明のプレートフィン型熱交換器において、丸みをもった形状をなすヘッダータンクが接合される流体通路の入口および出口が当該ヘッダータンク内にのみ開口する構成とするのは、次に述べるように、良好な熱効率を維持する上から望ましく、また、安全性の観点からも必要だからである。
【0036】
本発明のプレートフィン型熱交換器においては、コアに取り付けるヘッダータンクの断面形状を長方形から、端部に丸みをもたせた形状に変更するため、例えば、前記図4で塗りつぶし部で示すように、ヘッダータンク内に含まれないこととなる開口部が生じる。それらを開口したまま放置すると、その開口に接続する流路内の低温流体との熱交換のために高温流体が保持する熱エネルギーが無駄に消費される。また、前記開口は外気に開放されているので、開口に接続する流路内の昇温された流体が外気中に放出された場合、不慮の事態を招くおそれもある。
【0037】
前記の実施形態1〜3は、この端部に丸みをもたせたヘッダータンクが接合される流体通路の入口および出口が当該ヘッダータンク内にのみ開口する構成を満たすように、対応策を具体的に講じた熱交換器である。
【0038】
実施形態1は、本発明のプレートフィン型熱交換器において、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分に、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない通路であって、高温流体通路および低温流体通路と異なる通路を配置した熱交換器である。
【0039】
コアを組み立てる場合、高温流体を流通させる通路(層)と低温流体を流通させる通路(層)とが交互に積層配置される。その際、生産を効率よく行うために、コアを幾つかの「単位コア」に分割しておき、この単位コアを対象として組み立て、ろう付けを行い、単位コアを必要数積み重ねて熱交換器のコアを形成する方式が採られる。
【0040】
前記図3に示した熱交換器は、14段の単位コア8a(図3(a)、(b)参照)が積み重ねられ、コア8が形成されている。
【0041】
実施形態1の熱交換器では、この単位コア8aを積み重ねる際に、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンク9aの当該端部に対応する部分に、それ以外の部分に用いた単位コア8aとは異なる単位コアを使用する。この単位コアは、ヘッダータンク9aの端部に対応する部位に開口をもたず、高温流体を供給または排出するための開口も設けられていない。すなわち、ヘッダータンク9aの端部に対応する部位には、高温流体通路および低温流体通路として機能しない別の通路が積層配置された単位コアを使用する。
【0042】
このように、実施形態1の熱交換器では、ヘッダータンクの端部に対応する部分の単位コアは熱交換には関与しないが、高温流体通路および低温流体通路のいずれの入口および出口もヘッダータンク内にのみ開口しているので、良好な熱効率が維持され、安全性も確保される。
【0043】
上記の説明では、単位コアの使用を前提としているが、もちろん、単位コアに分割せず、高温流体通路と低温流体通路を交互に積層配置して組み立て、ろう付けを行う一体型コアにおいて上記対策を講じてもよい。その場合、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分の厚さ(すなわち、流体通路(層)の数)に応じて、高温流体通路および低温流体通路と異なる通路(層)を配置する。
【0044】
この実施形態1の熱交換器の大きな利点は、コア自体に特別な改造等を加える必要がなく、コア組み立ての際に、ヘッダータンクの端部に対応する部分で、使用する単位コアの種類、あるいは単位コアに分割しない一体型のコアが使用されている場合には、配置する通路(層)を変更するだけでよいという点にある。
【0045】
実施形態2は、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分に、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない他方の流体通路を配置した熱交換器である。例えば、ヘッダータンク内に低温流体流路の入口および出口が開口している場合、他方の流体通路は、高温流体通路が該当する。
【0046】
実施形態2の熱交換器では、前記実施形態1の熱交換器と同様、コア組み立ての際に、ヘッダータンクの端部に対応する部分の単位コアとして、それ以外の部分に用いた単位コアとは異なる単位コアを使用する。この単位コアは、ヘッダータンクの端部に対応する部位に開口をもたないのは実施形態1の熱交換器と同じであるが、ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない他方の流体通路(前記の例で言えば、高温流体通路)を積層配置した構成である。ここでは、他方の流体通路を流れる流体(前記の例では、高温流体)は、一方の流体通路を流れる流体(前記の例では、低温流体)と熱交換することなく通過する。なお、一体型のコアが使用されている場合にこの対策を講じてもよい。
【0047】
実施形態2の熱交換器においても、高温流体通路および低温流体通路の入口および出口がヘッダータンク内にのみ開口しているので、良好な熱効率が維持され、安全性も確保される。また、コア組み立ての際に、使用する単位コアの種類を、あるいは一体型のコアにおいては積層配置する通路(層)を変更するだけでよいという利点も有している。
【0048】
実施形態3は、端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応するコア部分に、当該ヘッダータンクの先端に近づくに伴い流体通路の入口および出口の幅が狭められた熱交換器である。
【0049】
この実施形態3の熱交換器は、ヘッダータンクの端部に対応するコア部分が前記の図4に示した構造を有している。同図に示すように、低温流体の通路は、最下層の通路から上方へ4層目の通路まで、ヘッダータンクの端部の輪郭に合わせ、入口の幅が両側から順次狭められている。図4において、塗りつぶしで示す部分が、入口の幅を狭めるためにサイドバーにより塞がれた部分である。
【0050】
この熱交換器においても、低温流体通路の入口および出口がヘッダータンク内に配置されているので、良好な熱効率が維持され、安全性も確保される。
【0051】
端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクは、前記図3に示した縦型のものに限定されない。使用箇所の実態に合わせた高さが低い熱交換器においては、横型のヘッダータンクを取り付けることも可能である。
【0052】
図5は、本発明のプレートフィン型熱交換器の他の概略構成例を示す正面図である。図5に示すように、熱交換器のコア14に両端部が丸みをもった形状のヘッダータンク15a、15bが接合されている。ヘッダータンク15a、15bには、低温流体を供給または排出するためのノズル16a、16bが取り付けられている。低温流体通路の入口および出口(開口部)がヘッダータンク内にのみ開口していることは、前述のとおりである。
【0053】
以上説明した本発明のプレートフィン型熱交換器では、コアとヘッダータンクの間に温度差が生じた場合でも、ヘッダータンクの端部において、接合部に近いヘッダー部分や接合部周辺のコア部分における応力集中を緩和することができる。これにより、大きな熱応力の発生を抑制し、熱交換器の変形や破損の発生を防止することができる。
【0054】
なお、図3には、ヘッダータンクから低温流体が供給されてヘッダータンク側が低温になり、コア側が高温になる場合を例示したが、本発明の熱交換器は、ヘッダータンクが高温流体通路の入口、出口に取り付けられ、ヘッダータンク側が高温になり、コア側が低温になる場合であっても、同等の効果を奏する。
【実施例】
【0055】
従来の長方形のヘッダータンクが取り付けられたプレートフィン型熱交換器(以下、「角ヘッダー取付け構造」という)、および本発明の端部に丸みをもった形状のヘッダータンクが取り付けられたプレートフィン型熱交換器(以下、「円形ヘッダー取付け構造」という)の解析モデルを用い、熱交換器を起動させた直後の状態を想定して熱応力解析を行った。解析モデルの形状は前記図5に例示した横型のヘッダータンクが低温流体通路の出口に取り付けられた熱交換器である。この場合の高温流体は燃焼排ガスであり、低温流体は空気である。
【0056】
図6は、熱応力解析に用いた解析モデルの外観と発生応力の測定点を示す斜視図である。同図(a)および(b)はそれぞれ解析モデルの概略の外観を、同図(c)および(d)は従来の角ヘッダー取付け構造の解析モデルにおける発生応力の測定点を、同図(e)および(f)は本発明の円形ヘッダー取付け構造の解析モデルにおける発生応力の測定点をそれぞれ示している。この解析モデルは、コア17と、長方形のヘッダータンク18または丸みをもった形状のヘッダータンク19を有している。
【0057】
表1に、熱応力解析結果の一例として、従来の角ヘッダー取付け構造と本発明の円形ヘッダー取付け構造における発生応力の比較結果を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1において、発生応力の測定点は、(i)スペーサバー(排ガス入口)、(ii)チューブプレート(空気側)および(iii)ヘッダータンク(コア接合部)の3箇所である。(iii)は接合部近傍のヘッダー部分を指す。チューブプレートは、排ガス通路(高温流体通路)と空気通路(低温流体通路)との仕切り板であり、スペーサバーは、積層された各通路同士の隙間を確保するために設けられる部材である。また、発生応力は、従来の角ヘッダー取付け構造の(i):スペーサバー(排ガス入口)における発生応力を1(基準)として表示した。
【0060】
図6の(c)〜(f)には、当該測定点を(i)〜(iii)の符号を付して示している。
【0061】
表1に示すように、ヘッダータンクの形状を角ヘッダー取付け構造から円形ヘッダー取付け構造に変更することにより、ヘッダータンク接合部近傍のチューブプレート(空気側)(測定点(ii))や、ヘッダータンク(コア接合部)(測定点(iii))における応力が大きく低下することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のプレートフィン型熱交換器は、ヘッダータンクの端部が丸みをもった形状をなしており、この熱交換器を使用すれば、コアとヘッダータンクの間に温度差が生じた場合でも、ヘッダータンクの端部やその周辺コアにおける高い熱応力の発生を抑制し、熱交換器の変形や破損の発生を防止することができる。
【0063】
したがって、本発明のプレートフィン型熱交換器は、鉄道車両、電力設備、その他広範囲にわたる産業分野において有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】プレートフィン型熱交換器の構造例を示す斜視図である。
【図2】プレートフィン型熱交換器のコア構造における流体通路の構成を説明する図であり、同図(a)は低温流体通路の構成を、(b)は高温流体通路の構成を示す図である。
【図3】本発明のプレートフィン型熱交換器の概略構成例を示す図で、同図(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【図4】図3(b)におけるヘッダータンクの端部を拡大して模式的に示した一部断面を含む正面図である。
【図5】本発明のプレートフィン型熱交換器の他の概略構成例を示す正面図である。
【図6】熱応力解析に用いた解析モデルの外観と発生応力の測定点を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1:熱交換器、 2:コア、 3:高温流体通路、 4:低温流体通路、
4a:入側のディストリビューター部、 4b:メインフィン部、
4c:出側のディストリビューター部、 5a、5b:ヘッダータンク、
6a、6b:ノズル、 7:フィン、 8:コア、
9a、9b:ヘッダータンク、 10a、10b:ノズル、
11a:入側のディストリビューター部、 11b:メインフィン部、
11c:出側のディストリビューター部、 12:フィン、 13:通路、
14:コア、 15a、15b:ヘッダータンク、
16a、16b:ノズル、 17:コア、
18:長方形のヘッダータンク、 19:端部が丸みをもった形状のヘッダータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体を流通させる高温流体通路と低温流体を流通させる低温流体通路とが交互に積層配置された熱交換器本体と、当該熱交換器本体の側面に開口している高温流体通路および低温流体通路のうちのいずれか一方または両方の入口および出口にそれぞれ接合された入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクとを有するプレートフィン型熱交換器であって、
入側ヘッダータンクおよび出側ヘッダータンクのうちの少なくとも一方のヘッダータンクの端部が丸みをもった形状をなし、
かつ、当該ヘッダータンクが接合される流体通路の入口および出口が当該ヘッダータンク内にのみ開口していることを特徴とするプレートフィン型熱交換器。
【請求項2】
端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応する熱交換器本体部分に、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない通路であって、高温流体通路および低温流体通路と異なる通路が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプレートフィン型熱交換器。
【請求項3】
端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応する熱交換器本体部分に、当該ヘッダータンク内に入口および出口が開口していない他方の流体通路が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプレートフィン型熱交換器。
【請求項4】
端部が丸みをもった形状をなすヘッダータンクの当該端部に対応する熱交換器本体部分に、当該ヘッダータンクの先端に近づくに伴い流体通路の入口および出口の幅が狭められていることを特徴とする請求項1に記載のプレートフィン型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−127604(P2010−127604A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306589(P2008−306589)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】