説明

プロジェクター及びその制御方法

【課題】使用終了時にユーザーの都合や状況等に応じて冷却時間を定めることが可能なプロジェクター及びその制御方法を提供する。
【解決手段】光源から射出された光を変調して投写するプロジェクターの制御方法において、動作を終了させるための1回目の電源キーの操作を受け付ける第1の操作ステップ(ステップS101)と、第1の操作ステップの後で、2回目の電源キーの操作を受け付ける第2の操作ステップ(ステップS106)と、第2の操作ステップの後で、光源を消灯させるとともに、冷却ファンの回転を停止させる終了ステップ(ステップS107,S108)と、第1の操作ステップと第2の操作ステップの間において、光源の輝度を低減させること、及び冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施する冷却ステップ(ステップS102,S103)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を投写するプロジェクター及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から射出された光を変調して画像を形成し、この画像をスクリーン等に投写するプロジェクターの多くは、光源の点灯等に伴って高温となる筐体の内部を冷却するための冷却装置(冷却ファン等)を備えている。この冷却装置は、光源を消灯させた後もしばらくの間冷却を継続するようになっており、高温のまま放置された場合に生じ得る各種構成部品の劣化を抑制している(特許文献1参照)。なお、光源が消灯した後の冷却は、「クールダウン」等と呼ばれる。
【0003】
近年、プロジェクターの各種構成部品の耐久性(耐熱性)を向上させること等により、クールダウンを省略したり、クールダウンに要する時間を短縮させたりしたプロジェクターが注目されている。このようなプロジェクターを用いれば、使用後すぐに商用電源を遮断して片付けることが可能となるため、ユーザーの利便性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−17583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クールダウンを省略したり、クールダウンの時間を短縮させたりしたプロジェクターでは、使用中に高温となった筐体の一部が、使用後においても比較的高温のままになっている場合があり、筐体に触れてしまったユーザーに不快感を与えてしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、光源から射出された光を変調して投写する画像投写部と、前記画像投写部を冷却する冷却ファンと、前記光源の点灯を制御する光源制御部と、前記冷却ファンの動作を制御する冷却制御部と、入力操作を受け付ける入力操作部と、前記入力操作部が、動作を終了させるための第1の終了操作、及び前記第1の終了操作に引き続いて行われる第2の終了操作を受け付けた場合に、前記光源制御部に前記光源を消灯させるとともに、前記冷却制御部に前記冷却ファンの回転を停止させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記入力操作部が前記第1の終了操作を受け付けてから、前記第2の終了操作を受け付けるまでの間、前記光源制御部に前記光源の輝度を低減させること、及び前記冷却制御部に前記冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施することを特徴とする。
【0008】
このプロジェクターによれば、第1の終了操作を受け付けてから、第2の終了操作を受け付けるまでの間、光源の輝度を低減させること、及び冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施するため、第2の終了操作を行うタイミングを遅らせれば遅らせるほど、プロジェクターの温度を低減することが可能となる。このため、プロジェクターを十分に冷却させたいユーザーは、第1の終了操作を行った後、時間が経ってから第2の終了操作を行えばよいし、プロジェクターをすぐに片付けたいユーザーは、第1の終了操作を行った後、即座に第2の終了操作を行えばよい。つまり、プロジェクターの使用を終了する際に、ユーザーの都合や状況等に応じて冷却時間を定めることが可能となり、利便性が向上する。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記入力操作部が前記第1の終了操作を受け付けた後で、前記第2の終了操作を促す案内部をさらに備えることが望ましい。
【0010】
このプロジェクターによれば、第1の終了操作の後で、案内部が第2の終了操作を促すため、操作に不慣れなユーザーであっても、プロジェクターを終了させるための操作を容易に行うことが可能となる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記制御部は、前記入力操作部が前記第1の終了操作を受け付けた後に、前記第2の終了操作とは異なる所定の操作を受け付けた場合には、前記光源の輝度及び前記冷却ファンの回転速度を、前記第1の終了操作を受け付ける前の状態に復帰させることが望ましい。
【0012】
このプロジェクターによれば、第1の終了操作の後に、第2の終了操作とは異なる所定の操作がなされると、光源の輝度及び冷却ファンの回転速度が元の状態に復帰するため、誤って第1の終了操作を行ってしまった場合でも、その操作を容易に取り消すことが可能となる。
【0013】
[適用例4]本適用例に係るプロジェクターの制御方法は、光源から射出された光を変調して投写する画像投写部と、前記画像投写部を冷却する冷却ファンと、入力操作を受け付ける入力操作部と、を備えたプロジェクターの制御方法であって、前記入力操作部が、動作を終了させるための第1の終了操作を受け付ける第1の操作ステップと、前記第1の操作ステップの後で、前記入力操作部が、前記第1の終了操作に引き続いて行われる第2の終了操作を受け付ける第2の操作ステップと、前記第2の操作ステップの後で、前記光源を消灯させるとともに、前記冷却ファンの回転を停止させる終了ステップと、前記第1の操作ステップと前記第2の操作ステップの間において、前記光源の輝度を低減させること、及び前記冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施する冷却ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このプロジェクターの制御方法によれば、第1の終了操作を受け付けてから、第2の終了操作を受け付けるまでの間、光源の輝度を低減させること、及び冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施するため、第2の終了操作を行うタイミングを遅らせれば遅らせるほど、プロジェクターの温度を低減することが可能となる。このため、プロジェクターを十分に冷却させたいユーザーは、第1の終了操作を行った後、時間が経ってから第2の終了操作を行えばよいし、プロジェクターをすぐに片付けたいユーザーは、第1の終了操作を行った後、即座に第2の終了操作を行えばよい。つまり、プロジェクターの使用を終了する際に、ユーザーの都合や状況等に応じて冷却時間を定めることが可能となり、利便性が向上する。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係るプロジェクターの制御方法において、前記第1の操作ステップの後で、前記第2の終了操作を促す案内ステップをさらに備えることが望ましい。
【0016】
このプロジェクターの制御方法によれば、第1の操作ステップ後に、第2の終了操作を促す案内ステップを備えているため、操作に不慣れなユーザーであっても、プロジェクターを終了させるための操作を容易に行うことが可能となる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係るプロジェクターの制御方法において、前記第1の操作ステップの後に、前記第2の終了操作とは異なる所定の操作を受け付けるキャンセルステップと、前記キャンセルステップの後で、前記光源の輝度及び前記冷却ファンの回転速度を、前記第1の操作ステップの前の状態に復帰させる復帰ステップと、をさらに備えることが望ましい。
【0018】
このプロジェクターの制御方法によれば、第1の終了操作の後に、第2の終了操作とは異なる所定の操作がなされると、光源の輝度及び冷却ファンの回転速度が元の状態に復帰するため、誤って第1の終了操作を行ってしまった場合でも、容易に元の状態に復帰させることが可能となる。
【0019】
また、上述したプロジェクター及びその制御方法がプロジェクターに備えられたコンピューターを用いて構築されている場合には、上記形態及び上記適用例は、その機能を実現するためのプログラム、或いは当該プログラムを前記コンピューターで読み取り可能に記録した記録媒体等の態様で構成することも可能である。記録媒体としては、フレキシブルディスクやハードディスク、CDやDVD等の光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性の半導体メモリーを搭載したメモリーカードやUSBメモリー、プロジェクターの内部記憶装置(RAMやROM等の半導体メモリー)等、前記コンピューターが読み取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プロジェクターを示す斜視図であり、前面、上面、及び右側面を示す図。
【図2】プロジェクターを示す斜視図であり、背面、底面、及び右側面を示す図。
【図3】プロジェクターの回路構成を示すブロック図。
【図4】オフ操作時のプロジェクターの動作を説明するためのフローチャート。
【図5】メッセージ画像が重畳された投写画像を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、光源から射出された光を変調して、外部から入力される画像情報に基づく画像(以降、「入力画像」という。)を形成し、この画像をスクリーン等に投写するプロジェクターについて説明する。
【0022】
図1及び図2は、本実施形態のプロジェクターを示す斜視図であり、図1は、前面、上面、及び右側面を示す図、図2は、背面、底面、及び右側面を示す図である。
図1及び図2に示すように、プロジェクター1は、装置本体が筐体2に収容された構成を有しており、筐体2の前面2fには、画像を投写する投写レンズ13が露出している。筐体2の上面2tには、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための入力操作部22が備えられ、入力操作部22の近傍には、プロジェクター1の動作状態を報知するためのLED報知部23が備えられている。筐体2の背面2rには、商用電源が供給される電源端子28と、図示しない外部の画像出力装置から画像情報が入力される画像情報入力部24とが設けられている。画像情報入力部24には、複数の入力端子24aが配置されており、各入力端子24aには、一端が画像出力装置に接続されたケーブルの他端が接続される。
【0023】
プロジェクター1は、筐体2の内部に冷却ファン33(図3参照)を備えており、光源の点灯等に伴って高温となる筐体2の内部を冷却することができる。筐体2の底面2bには、外部から空気を吸入するための吸気口3aが形成されており、冷却ファン33の回転によって吸気口3aから吸入された空気は、筐体2の内部を冷却した後、筐体2の右側面2sに形成された排気口3bから排出される。
【0024】
図3は、プロジェクターの回路構成を示すブロック図である。
図3に示すように、プロジェクター1は、画像投写部10、制御部20、記憶部21、入力操作部22、LED報知部23、画像情報入力部24、入力選択部25、画像処理部26、OSD処理部27、電源端子28、電源回路29、光源制御部30、温度センサー31、冷却制御部32、冷却ファン33等を備えて構成されており、これらは、筐体2(図1及び図2参照)の内部に収容されている。
【0025】
画像投写部10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12B、投写光学系としての投写レンズ13、液晶駆動部14等を含んでいる。画像投写部10は、表示部に相当するものであり、光源11から射出された光を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bで変調して画像を形成し、この画像を投写レンズ13から投写して投写面Sに表示する。
【0026】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を液晶ライトバルブ12R,12G,12B側に反射するリフレクター11bとを含んで構成されている。光源11から射出された光は、図示しないインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R,12G,12Bに入射する。
【0027】
液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ12R,12G,12Bには、マトリクス状に配列された複数の画素(図示せず)が形成されており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。液晶駆動部14が、入力される画像情報に応じた駆動電圧を各画素に印加すると、各画素は、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像が色光毎に形成される。形成された各色の画像は、図示しない色合成光学系によって画素毎に合成されてカラー画像となった後、投写レンズ13から拡大投写される。
【0028】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)や、各種データ等の一時記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等を備え、記憶部21に記憶されている制御プログラムに従って動作することによりプロジェクター1の動作を統括制御する。つまり、制御部20は、記憶部21とともにコンピューターとして機能する。また、制御部20には、時間の計測を行うためのタイマー20aが備えられている。
【0029】
記憶部21は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリー、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)等の不揮発性のメモリーにより構成されている。記憶部21には、プロジェクター1の動作を制御するための制御プログラムや、プロジェクター1の動作条件等を規定する各種設定データ等が記憶されている。
【0030】
入力操作部22は、ユーザーからの入力操作を受け付けるものであり、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。入力操作部22が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを切り替えるための電源キー22a(図1参照)、有効な入力端子24aを切り替えるための入力切替キー22b(図1参照)等がある。ユーザーが入力操作部22の各種操作キーを操作(押下)すると、入力操作部22は、この入力操作を受け付けて、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、入力操作部22として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、図示しないリモコン信号受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0031】
LED報知部23は、LED(発光ダイオード)を備えたインジケーターであり、制御部20の指示に基づいてその表示状態を切り替えることにより、ユーザーにプロジェクター1の動作状態(電源のオン・オフや異常発生等)を報知する。なお、LED報知部23は、その表示状態、即ち点灯、点滅、消灯、発光色等を適宜切り替えることによって、多数の動作状態を表すことが可能になっている。
【0032】
画像情報入力部24は、上述したように複数の入力端子24aを備えており、各入力端子24aには、ビデオ再生装置やパーソナルコンピューター等、外部の画像出力装置から、図示しないケーブルを介して画像情報が入力される。各入力端子24aに入力された画像情報は、入力選択部25に供給される。
【0033】
入力選択部25は、複数の入力端子24aのうち、制御部20の指示に基づく1つの入力端子24aを選択し、この入力端子24aに入力される画像情報を画像処理部26に出力する。ユーザーが、入力操作部22に備わる入力切替キー22bを操作して所望の入力端子24aを指定すると、制御部20は、この入力端子24aに入力される画像情報が画像処理部26に出力されるよう、入力選択部25に指示をする。
【0034】
画像処理部26は、入力選択部25から入力される画像情報を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの各画素の階調を表す画像情報に変換する。ここで、変換された画像情報は、R,G,Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素から射出する光の強弱(階調)が規定される。また、画像処理部26は、制御部20の指示に基づき、変換した画像情報に対して、明るさ、コントラスト、シャープネス、色合い等を調整するための画質調整処理等を行い、処理後の画像情報をOSD処理部27に出力する。
【0035】
OSD処理部27は、制御部20の指示に基づいて、入力画像上にメニュー画像やメッセージ画像等のOSD(オンスクリーンディスプレー)画像を重畳するための処理を行う。OSD処理部27は、図示しないOSDメモリーを備えており、OSD画像を形成するための図形やフォント等を表す画像データを記憶している。制御部20が、OSD画像の重畳を指示すると、OSD処理部27は、必要な画像データをOSDメモリーから読み出して、指定されたOSD画像を形成するためのOSD画像情報を生成する。そして、入力画像上の所定の位置にOSD画像が重畳されるように、画像処理部26から入力される画像情報にこのOSD画像情報を合成する。OSD画像情報が合成された画像情報は、液晶駆動部14に出力される。なお、制御部20からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部27は、画像処理部26から入力される画像情報を、そのまま液晶駆動部14に出力する。
【0036】
液晶駆動部14が、OSD処理部27から入力される画像情報に従って液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを駆動すると、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、画像情報に応じた画像を形成し、この画像が投写レンズ13から投写される。
【0037】
電源回路29には、電源端子28を介してAC100V等の商用電源が外部から供給される。電源回路29は、商用電源(交流電源)を所定の電圧の直流電源に変換し、光源制御部30を始めとするプロジェクター1の各部に電力を供給する。また、電源回路29は、制御部20の指示に基づいて、画像の投写に必要な電力(動作電力)を各部に供給する状態(電源オン状態)と、動作電力の供給を停止して、電源をオンにするための操作を待機する状態(スタンバイ状態)とを切り替えることができる。
【0038】
光源制御部30は、電源回路29で生成された直流電流を交流矩形波電流に変換するインバーター(図示せず)や、光源ランプ11aの電極間の絶縁破壊を行って、光源ランプ11aの始動を促すためのイグナイター(図示せず)等を備えており、制御部20の指示に基づいて光源11の点灯を制御する。具体的には、光源制御部30は、光源11を始動させて所定の電力を供給することにより光源11を点灯させるとともに、電力の供給を停止して光源11を消灯させることができる。また、光源制御部30は、制御部20の指示に基づいて光源11に供給する電力を制御することにより、光源11の輝度(明るさ)を調整することが可能であり、本実施形態では、通常利用される輝度である「高輝度」と、「高輝度」よりも暗い「低輝度」の2段階に調整することができる。
【0039】
温度センサー31は、サーミスター等で構成され、筐体2の内部の温度を検出し、検出結果を冷却制御部32に出力する。この温度センサー31は、光源11、液晶ライトバルブ12R,12G,12B、電源回路29等のように、熱を発する部位や熱によるダメージを受けやすい部位に配置される。また、筐体2の内部の温度を直接検出する代わりに、排気口3bから排出される空気の温度を検出すること等により、筐体2の内部の温度を間接的に検出するようにしてもよい。
【0040】
冷却制御部32は、制御部20の指示に基づいて、冷却ファン33の回転の始動、及びその停止を制御するとともに、制御部20の指示と温度センサー31の検出結果とに基づいて冷却ファン33の回転数(回転速度)を制御する。本実施形態の冷却制御部32は、冷却ファン33の回転速度を複数段階に切り替え可能になっている。そして、冷却制御部32は、筐体2の内部温度が高温であるほど、冷却ファン33の回転速度を増大させて温度上昇を抑制し、内部温度が低い場合には、ファンの回転に伴う騒音と電力消費とを抑制すべく冷却ファン33の回転速度を低下させる。
【0041】
冷却ファン33は、例えば、軸流ファンやシロッコファン等によって構成される。冷却ファン33は、冷却制御部32の制御に基づいて回転することにより、吸気口3aから外部の空気を吸入して、筐体2の内部(特に、画像投写部10や電源回路29等)を冷却し、冷却後の空気を排気口3bから排出する。なお、冷却ファン33は、複数のファンによって構成されてもよく、例えば、吸気口3aの近傍に配置されるファン(吸気ファン)と、排気口3bの近傍に配置されるファン(排気ファン)とを含んで構成されてもよい。
【0042】
次に、プロジェクター1の動作について説明する。
電源端子28に電源ケーブル(図示せず)の一端が接続され、この電源ケーブルの他端に備わる電源プラグがコンセントに挿し込まれると、電源回路29に商用電源が供給される。商用電源が供給されると、電源回路29は、少なくとも制御部20、記憶部21、入力操作部22、LED報知部23に電力(スタンバイ電力)の供給を行い、制御部20は、この電力供給を受けて、制御プログラムに従った動作を開始する。商用電源が供給された直後には、プロジェクター1は、スタンバイ状態(「電源オフ状態」ともいう。)であり、制御部20は、LED報知部23をオレンジ色で点灯させるとともに、入力操作部22の電源キー22aに対する操作を監視する。そして、電源キー22aがユーザーにより操作されると、制御部20は、電源回路29に指示をして、各部への動作電力の供給を開始させ、プロジェクター1を電源オン状態に移行させる。
【0043】
プロジェクター1が電源オン状態に移行すると、制御部20は、LED報知部23を緑色で点灯させる。そして、制御部20は、冷却制御部32に指示をして、冷却ファン33を始動させるとともに、温度センサー31の検出結果に基づいて、冷却ファン33の回転速度を制御させる。さらに、制御部20は、光源制御部30に指示をして光源11を点灯させる。この結果、入力端子24aに入力される画像情報に基づく画像が画像投写部10から投写される。
【0044】
電源オン状態でユーザーにより電源キー22aが操作されると、制御部20は、光源制御部30に指示をして光源11を消灯させた後に、プロジェクター1をスタンバイ状態に移行させる。なお、本明細書では、スタンバイ状態でなされる電源キー22aの操作、即ちプロジェクター1を電源オン状態に移行させて、光源11を点灯させるための操作を「オン操作」と呼び、電源オン状態でなされる電源キー22aの操作、即ち光源11を消灯させてプロジェクター1をスタンバイ状態に移行させるための操作を「オフ操作」と呼ぶ。
【0045】
ここで、オフ操作の際に、電源キー22aが一度操作されただけで光源11を消灯させてしまうと、ユーザーが誤って電源キー22aを操作してしまった場合にも光源11が消灯してしまうことになる。光源11(特に放電型の光源ランプ11a)は、瞬時に再点灯させることが困難であることから、誤って光源11を消灯させてしまった後、すぐにオン操作を行ったとしても、画像が再表示されるまで長い時間ユーザーを待たせてしまう。そこで、本実施形態では、電源オン状態で電源キー22aが操作された場合には、確認メッセージを投写するようにしており、この状態で再度電源キー22aが操作された場合に、光源11を消灯させてスタンバイ状態に移行するようになっている。つまり、本実施形態では、電源オン状態において、電源キー22aを2回操作することが、オフ操作となる。
【0046】
図4は、オフ操作時のプロジェクター1の動作を説明するためのフローチャートであり、電源オン状態から、オフ操作がなされてスタンバイ状態に移行するまでの動作を示している。
図4に示すように、ステップS101では、制御部20は、電源キー22aの操作(1回目の操作)がなされたか否かを判断する。そして、電源キー22aが操作されていない場合には本ステップを繰り返し、電源キー22aが操作された場合にはステップS102に移行する。
【0047】
電源キー22aが操作されてステップS102に移行すると、制御部20は、光源制御部30に指示をして、光源11の輝度を低輝度に低減させる。続くステップS103では、制御部20は、冷却制御部32に指示をして、温度センサー31の検出結果に拘らずに、冷却ファン33の回転速度を増大させる。具体的には、複数段階の回転速度のうちの最大の回転速度で冷却ファン33を回転させる。
【0048】
ステップS104では、制御部20は、OSD処理部27に指示をして、スタンバイ状態への移行を確認するためのメッセージ画像Mc(図5参照)を入力画像P上に重畳表示させる。図5に示すように、メッセージ画像Mcには、スタンバイ状態に移行するか、即ち電源をオフにするかを確認するための確認メッセージ(「電源をオフにしますか?」)とともに、確認メッセージに対する応答方法(「はい」の場合には、電源キー22aを操作し、「いいえ」の場合には、他の操作キーを操作すること)が表記されている。つまり、メッセージ画像Mcは、電源キー22aの操作及びその他の操作キーの操作をユーザーに促すためのものでもある。
【0049】
ステップS105では、制御部20は、メッセージ画像Mcを表示してからの経過時間を計測するために、タイマー20aによる計時を開始する。
【0050】
ステップS106では、制御部20は、確認メッセージに対する応答として、電源キー22aの操作(2回目の操作)がなされたか否かを判断する。そして、電源キー22aが操作された場合にはステップS107に移行し、電源キー22aが操作されていない場合にはステップS110に移行する。
【0051】
2回目の電源キー22aの操作がなされてステップS107に移行した場合には、制御部20は、光源制御部30に指示をして、光源11を消灯させ、続くステップS108では、冷却制御部32に指示をして、冷却ファン33の回転を停止させる。
【0052】
ステップS109では、制御部20は、LED報知部23をオレンジ色で点灯させる等、他の必要な終了処理(図示せず)を行った後、電源回路29に指示をして動作電力の供給を停止させることにより、プロジェクター1をスタンバイ状態に移行させて、フローを終了する。
【0053】
一方、ステップS106において、2回目の電源キー22aの操作がなされずにステップS110に移行した場合には、制御部20は、電源キー22a以外の他の操作キーが操作されたか否かを判断する。そして、他の操作キーが操作された場合にはステップS111に移行し、いずれの操作キーも操作されていない場合にはステップS114に移行する。
【0054】
電源キー22a以外の他の操作キーが操作されてステップS111に移行した場合には、制御部20は、OSD処理部27に指示をして、メッセージ画像Mcの重畳表示を終了させ、ステップS112では、制御部20は、光源制御部30に指示をして、光源11の輝度を、1回目の電源キー22aの操作を受け付ける前の輝度に復帰させる。そして、続くステップS113では、制御部20は、冷却制御部32に指示をして、温度センサー31の検出結果に応じた回転速度で冷却ファン33を回転させる通常制御状態に復帰させて、ステップS101に戻る。つまり、制御部20は、光源11の輝度及び冷却ファン33の回転速度を、1回目の電源キー22aの操作を受け付ける前の状態に復帰させる。この結果、オフ操作はキャンセルされて、入力画像の投写が再開する。
【0055】
また、ステップS110にて、電源キー22a以外の他の操作キーも操作されずにステップS114に移行した場合には、制御部20は、タイマー20aの計時結果に基づいて、メッセージ画像Mcを表示してから所定時間が経過したか否かを判断する。そして、所定時間が経過していない場合には、ステップS106に戻り、所定時間が経過した場合には、ステップS111に移行してオフ操作をキャンセルし、入力画像の投写を再開する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0057】
(1)本実施形態のプロジェクター1によれば、1回目の電源キー22aの操作を受け付けてから、2回目の電源キー22aの操作を受け付けるまでの間、光源11の輝度を低減させるとともに、冷却ファン33の回転速度を増大させているため、2回目の電源キー22aの操作を遅らせれば遅らせるほど、プロジェクター1の温度を低減することが可能となる。このため、プロジェクター1を十分に冷却させたいユーザーは、1回目の電源キー22aの操作を行った後、時間が経ってから2回目の電源キー22aの操作を行えばよいし、プロジェクター1をすぐに片付けたいユーザーは、1回目の電源キー22aの操作を行った後、即座に2回目の電源キー22aの操作を行えばよい。つまり、プロジェクター1の使用を終了する際に、ユーザーの都合や状況等に応じて冷却時間を定めることが可能となり、利便性が向上する。
【0058】
(2)本実施形態のプロジェクター1によれば、1回目の電源キー22aの操作の後、OSD処理部27によりメッセージ画像Mcを重畳表示させて、後続の操作を促しているため、操作に不慣れなユーザーであっても、プロジェクター1を終了させるための操作を容易に行うことが可能となる。
【0059】
(3)本実施形態のプロジェクター1によれば、1回目の電源キー22aの操作の後に、電源キー22a以外の操作キーの操作がなされると、光源11の輝度及び冷却ファン33の回転速度を元の状態に復帰させているため、誤って電源キー22aの操作を行ってしまった場合でも、その操作を容易に取り消すことが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態では、1回目の電源キー22aの操作が第1の終了操作に相当し、2回目の電源キー22aの操作が第2の終了操作に相当する。また、メッセージ画像Mcを表示する際のOSD処理部27が案内部に相当する。また、ステップS101が第1の操作ステップ、ステップS106が第2の操作ステップ、ステップS107,S108が終了ステップ、ステップS102,S103が冷却ステップ、ステップS104が案内ステップ、ステップS110がキャンセルステップ、そして、ステップS112,S113が復帰ステップに相当する。
【0061】
(変形例)
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0062】
上記実施形態では、電源オン状態において、電源キー22aの操作の後に、再度電源キー22aを操作することによってスタンバイ状態に移行するようにしているが、これら2回の操作は、必ずしも同一の操作キー(電源キー22a)である必要はない。つまり、電源キー22aの操作の後に、電源キー22a以外の所定の操作キーが操作された場合にスタンバイ状態に移行するようにしてもよい。
【0063】
上記実施形態では、1回目の電源キー22aの操作が行われた後に、光源11の輝度を低減すること、及び冷却ファン33を回転速度を増大させることの双方を行うようにしているが、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態において、メッセージ画像Mcは、光源11が低輝度の状態で投写されることから、視認性が低下する恐れがある。このため、メッセージ画像Mcに関しては、高輝度で投写される他のOSD画像よりも、メッセージ(文字)と背景とのコントラストを高くすることが望ましい。
【0065】
上記実施形態では、光変調装置として3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いた3板式のプロジェクター1について説明したが、これに限定されない。例えば、各画素の中にそれぞれR光、G光、B光を透過可能なサブ画素を含んだ1つの液晶ライトバルブによって画像を形成する態様とすることも可能である。
【0066】
上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いているが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【0067】
上記実施形態では、光源11は、放電型の光源ランプ11aによって構成されているが、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源等の固体光源や、その他の光源に適用することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1…プロジェクター、2…筐体、2b…底面、2f…前面、2r…背面、2s…右側面、2t…上面、3a…吸気口、3b…排気口、10…画像投写部、11…光源、11a…光源ランプ、11b…リフレクター、12R,12G,12B…液晶ライトバルブ、13…投写レンズ、14…液晶駆動部、20…制御部、20a…タイマー、21…記憶部、22…入力操作部、22a…電源キー、22b…入力切替キー、23…LED報知部、24…画像情報入力部、24a…入力端子、25…入力選択部、26…画像処理部、27…OSD処理部、28…電源端子、29…電源回路、30…光源制御部、31…温度センサー、32…冷却制御部、33…冷却ファン、Mc…メッセージ画像、P…入力画像、S…投写面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光を変調して投写する画像投写部と、
前記画像投写部を冷却する冷却ファンと、
前記光源の点灯を制御する光源制御部と、
前記冷却ファンの動作を制御する冷却制御部と、
入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記入力操作部が、動作を終了させるための第1の終了操作、及び前記第1の終了操作に引き続いて行われる第2の終了操作を受け付けた場合に、前記光源制御部に前記光源を消灯させるとともに、前記冷却制御部に前記冷却ファンの回転を停止させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記入力操作部が前記第1の終了操作を受け付けてから、前記第2の終了操作を受け付けるまでの間、前記光源制御部に前記光源の輝度を低減させること、及び前記冷却制御部に前記冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施することを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記入力操作部が前記第1の終了操作を受け付けた後で、前記第2の終了操作を促す案内部をさらに備えたことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクターであって、
前記制御部は、前記入力操作部が前記第1の終了操作を受け付けた後に、前記第2の終了操作とは異なる所定の操作を受け付けた場合には、前記光源の輝度及び前記冷却ファンの回転速度を、前記第1の終了操作を受け付ける前の状態に復帰させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
光源から射出された光を変調して投写する画像投写部と、前記画像投写部を冷却する冷却ファンと、入力操作を受け付ける入力操作部と、を備えたプロジェクターの制御方法であって、
前記入力操作部が、動作を終了させるための第1の終了操作を受け付ける第1の操作ステップと、
前記第1の操作ステップの後で、前記入力操作部が、前記第1の終了操作に引き続いて行われる第2の終了操作を受け付ける第2の操作ステップと、
前記第2の操作ステップの後で、前記光源を消灯させるとともに、前記冷却ファンの回転を停止させる終了ステップと、
前記第1の操作ステップと前記第2の操作ステップの間において、前記光源の輝度を低減させること、及び前記冷却ファンの回転速度を増大させることの少なくとも一方を実施する冷却ステップと、
を備えたことを特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターの制御方法であって、
前記第1の操作ステップの後で、前記第2の終了操作を促す案内ステップをさらに備えたことを特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のプロジェクターの制御方法であって、
前記第1の操作ステップの後に、前記第2の終了操作とは異なる所定の操作を受け付けるキャンセルステップと、
前記キャンセルステップの後で、前記光源の輝度及び前記冷却ファンの回転速度を、前記第1の操作ステップの前の状態に復帰させる復帰ステップと、
をさらに備えたことを特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33858(P2011−33858A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180369(P2009−180369)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】