説明

プロジェクター

【課題】反射型光変調装置の位置ずれを抑制できるプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、複数の色光を色光毎にそれぞれ変調する複数の反射型光変調装置4と、複数の反射型光変調装置4に対してそれぞれ傾斜して配設され、入射した複数の色光をそれぞれ偏光分離する複数の反射型偏光板3と、複数の反射型光変調装置4にて変調され複数の反射型偏光板3にて偏光分離された各色光を合成する色合成光学装置7と、反射型光変調装置4及び反射型偏光板3を支持する支持体6と、色合成光学装置7に固定される接続部材8とを備える。支持体6及び接続部材8は、溶接により互いに接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R(赤),G(緑),B(青)の3つの色光をそれぞれ変調するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の3つの反射型光変調装置と、各反射型光変調装置にて変調された各色光を合成する色合成光学装置と、合成された光束を投射する投射レンズとを備えたプロジェクターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のプロジェクターでは、反射型光変調装置及び色合成光学装置の他、入射した光束を互いに偏光方向が直交する各直線偏光光に偏光分離する3つの反射型偏光板と、反射型光変調装置及び反射型偏光板を支持する3つの取付部材(支持体)と、色合成光学装置に固定され、支持体を支持する3つの調整部材とを備える。
【0003】
調整部材は、色合成光学装置の光入射面に取り付けられる本体と、本体の外縁において、互いに対向する位置から光入射側に突出する一対の腕部とを備える。
一対の腕部には、他方の腕部に向けて突出する係合突起部がそれぞれ設けられている。
支持体は、三角柱状の中空部材で構成され、各側面にそれぞれ反射型光変調装置及び反射型偏光板が取り付けられる。
また、支持体における三角柱状の各底面に相当する部分には、一対の係合突起部がそれぞれ遊嵌状態で挿入される係合受け部がそれぞれ形成されている。
そして、支持体は、一対の係合受け部に一対の係合突起部がそれぞれ遊嵌された状態で、係合受け部及び係合突起部同士を接着剤で固着することで、支持体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−008638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、硬化後の接着剤は、弾性に劣るものである。
このため、プロジェクターの使用時にプロジェクターに対して一時的に外力が加わることで、接着剤が変形して支持体が所望の位置からずれた場合には、支持体が元の位置(所望の位置)に戻り難いものである。
そして、支持体が所望の位置からずれると、反射型光変調装置が投射レンズのバックフォーカス位置に位置し、かつ、各反射型光変調装置間で画素ずれがない位置(設計上の位置)からずれることとなり、各反射型光変調装置間での画素ずれが発生し易いものとなる。
【0006】
本発明の目的は、反射型光変調装置の位置ずれを抑制できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクターは、複数の色光を色光毎にそれぞれ変調する複数の反射型光変調装置と、前記複数の反射型光変調装置に対してそれぞれ傾斜して配設され、入射した前記複数の色光をそれぞれ偏光分離する複数の反射型偏光板と、前記複数の反射型光変調装置にて変調され前記複数の反射型偏光板にて偏光分離された各色光を合成する色合成光学装置と、前記反射型光変調装置及び前記反射型偏光板を支持する支持体と、前記色合成光学装置に固定される接続部材とを備え、前記支持体及び前記接続部材は、溶接により互いに接合されることを特徴とする。
【0008】
本発明では、支持体は、色合成光学装置(接続部材)に対して溶接により接合される。ここで、溶接による接合部分は、接着剤に比較して、弾性に優れるものである。
このことにより、プロジェクターの使用時にプロジェクターに対して一時的に外力が加わることで、溶接による接合部分が変形して支持体が所望の位置からずれた場合であっても、支持体が元の位置(所望の位置)に復帰し易いものとなる。
したがって、反射型光変調装置の位置ずれを抑制でき、本発明の目的を達成できる。
【0009】
本発明のプロジェクターでは、前記支持体及び前記接続部材の溶接位置は、前記反射型偏光板の偏光分離面を含む平面に対して、前記反射型光変調装置の配設位置とは反対側に設けられていることが好ましい。
ところで、例えば、支持体及び接続部材の溶接位置が、反射型偏光板の偏光分離面(偏光分離が行われる面)を含む平面に対して、反射型光変調装置の配設位置側に設けられている場合(以下、このような溶接位置を第1溶接位置と記載)には、以下の問題が生じる恐れがある。
【0010】
第1溶接位置は、設計上の位置に配設された反射型光変調装置の光変調面を、反射型偏光板の偏光分離面を含む平面を基準として仮想的に対称移動させた光変調面(擬似光変調面)の中心位置(以下、虚像中心)に対して離間した位置に位置する。
例えば、支持体が所望の位置からずれる際に、虚像中心を中心として回転するような支持構造である場合には、このように回転しても、虚像中心から擬似的に出射され色合成光学装置の光入射面に垂直に入射する主光線(擬似主光線)の位置は変化しない。すなわち、このような支持構造では、支持体が所望の位置からずれ、かつ、支持体が元の位置に復帰しない場合であっても、画素ずれが発生しない。
【0011】
しかしながら、第1溶接位置で支持体及び接続部材を溶接により接合した場合には、上述したように虚像中心から離間した位置に第1溶接位置が位置付けられているため、支持体が所望の位置からずれる際に、虚像中心から離間した位置を中心として回転し易いものとなる。
すなわち、支持体が所望の位置からずれ、かつ、支持体が元の位置に復帰しない場合には、支持体の位置ずれに伴う擬似主光線の位置ずれ量が多いものとなり、結果として、画素ずれ量が多いものとなる。このため、良好な投影画像を形成することが難しい。
【0012】
本発明では、支持体及び接続部材の溶接位置が上述した位置に設けられているので、溶接位置を虚像中心に近い位置に位置付けることができる。
このため、支持体が所望の位置からずれる場合には、虚像中心に近接した位置、あるいは、虚像中心を中心として支持体を回転させることが可能となる。
したがって、支持体が所望の位置からずれ、かつ、支持体が元の位置に復帰しない場合であっても、支持体の位置ずれに伴う擬似主光線の位置ずれ量を少ないものとし、結果として、画素ずれ量を少ないものとすることができる。このため、良好な投影画像を形成できる。
また、反射型光変調装置等の光学素子から離れた箇所に溶接位置が設定されるため、溶接時の熱による当該光学素子への影響を緩和できる。
【0013】
本発明のプロジェクターでは、前記溶接位置は、前記反射型偏光板の入射光束及び出射光束の光軸を含む面に対して対称な位置にそれぞれ設けられていることが好ましい。
本発明では、溶接位置が上述した位置にそれぞれ設けられているので、接続部材による支持体の支持状態を安定に維持しつつ、支持体が所望の位置からずれる際に、虚像中心に近接した位置、あるいは、虚像中心を中心として支持体を回転させることができる。
【0014】
本発明のプロジェクターでは、前記反射型光変調装置の光変調面が投射レンズのバックフォーカス位置に位置し、かつ、各前記反射型光変調装置間の画素ずれがない位置に配設された時に、前記反射型光変調装置の光変調面を、前記平面を基準として仮想的に対称移動させた光変調面を擬似光変調面とし、前記擬似光変調面の中心位置を虚像中心とした場合に、前記溶接位置は、前記虚像中心から、前記反射型偏光板の入射光束及び出射光束の光軸を含む面に垂直な方向に延びた位置に位置付けられていることが好ましい。
本発明では、溶接位置が上述した位置に位置付けられているので、支持体が所望の位置からずれる際に、虚像中心を中心として支持体を回転させることができる。
したがって、支持体の位置ずれに伴う擬似主光線の位置ずれ量を略0とすることができ、すなわち、画素ずれ量を略0とすることができる。
【0015】
本発明のプロジェクターでは、前記反射型光変調装置の光変調面が投射レンズのバックフォーカス位置に位置し、かつ、各前記反射型光変調装置間で画素ずれがない位置に配設された時に、前記反射型光変調装置の光変調面を、前記平面を基準として仮想的に対称移動させた光変調面を擬似光変調面とし、前記擬似光変調面の中心位置を虚像中心とした場合に、前記溶接位置は、前記虚像中心を通る前記擬似光変調面の法線を中心とした180°の回転対称となる位置にそれぞれ設けられていることが好ましい。
本発明では、溶接位置が上述した位置にそれぞれ設けられているので、接続部材による支持体の支持状態を安定に維持しつつ、支持体が所望の位置からずれる際に、虚像中心に近接した位置、あるいは、虚像中心を中心として支持体を回転させることができる。
【0016】
本発明のプロジェクターでは、前記接続部材は、一対設けられ、前記色合成光学装置における前記複数の色光がそれぞれ入射する複数の光入射面に交差する一対の交差端面の双方にそれぞれ固定され、前記支持体を挟むように配設されていることが好ましい。
本発明によれば、色合成光学装置及び支持体間に接続部材が介在しないため、接続部材の取り付けを容易に行うことができ、色合成光学装置に対して支持体が固定されたユニットを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における光学装置の構成を示す図。
【図3】第1実施形態における光学装置の構成を示す図。
【図4】第1実施形態における光学装置の構成を示す図。
【図5】第2実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図6】第2実施形態における光学装置の構成を示す図。
【図7】第2実施形態における光学装置の構成を示す図。
【図8】第2実施形態における位置調整後のプリズムに対するワイヤーグリッド、反射型光変調装置、及び偏光板の位置関係を説明するための図。
【図9】第2実施形態における位置調整後のプリズムに対するワイヤーグリッド、反射型光変調装置、及び偏光板の位置関係を説明するための図。
【図10】第2実施形態における効果を説明するための図。
【図11】第2実施形態における効果を説明するための図。
【図12】第2実施形態における効果を説明するための図。
【図13】第2実施形態における効果を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。具体的に、図1は、本願の要部である投射ユニット2の構成を示す斜視図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
なお、本実施形態のプロジェクター1では、具体的な図示は省略したが、テレセントリック光学系が採用されている。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体(図示略)内部に収納される投射ユニット2を備える。
【0019】
投射ユニット2は、光源装置(図示略)から出射され、ダイクロイックミラー等の色分離光学装置で分離されたR,G,Bの各色光をそれぞれ変調し、変調した各色光を合成して投射するものである。
この投射ユニット2は、図1に示すように、光学装置2Aと、投射レンズ2Bと、光学装置2A及び投射レンズ2Bを支持する基体2Cとを備える。
【0020】
〔光学装置の構成〕
図2ないし図4は、光学装置2Aの構成を示す図である。具体的に、図2は、光学装置2Aの構成を示す分解斜視図である。図3(A)は、図1中、左側から光学装置2Aを見た平面図である。図3(B)は、図3(A)におけるIII−III線の断面図である。図4は、光学装置2Aの光学系を図1中、左側から見た模式図である。
光学装置2Aは、図1ないし図4に示すように、反射型偏光板としての3つのワイヤーグリッド3と、3つの反射型光変調装置4と、3つの偏光板5(図2〜図4)と、3つの支持体6(図1〜図3)とを備える。
なお、以下では、説明の便宜上、R色光側のワイヤーグリッドを3R、G色光側のワイヤーグリッドを3G、B色光側のワイヤーグリッドを3Bとしている。
【0021】
〔ワイヤーグリッドの構成〕
3つのワイヤーグリッド3は、格子構造に基づく回折により入射した光束を偏光分離する。各ワイヤーグリッド3は、図1ないし図4に示すように、支持体6により、入射光束の光軸に対して略45°傾斜した状態で配置される。
そして、各ワイヤーグリッド3は、入射した光束のうち、所定の偏光光(第1の直線偏光光)を透過させ、第1の直線偏光光の偏光方向に直交する偏光方向を有する偏光光(第2の直線偏光光)を反射させ、入射した光束を偏光分離する。
【0022】
〔反射型光変調装置の構成〕
3つの反射型光変調装置4は、シリコン基板上に液晶が形成された所謂LCOSで構成された反射型液晶パネルを備える。各反射型光変調装置4は、図1ないし図4に示すように、支持体6により、各ワイヤーグリッド3を透過した光束の光軸に対して略直交した状態でそれぞれ配置される。
そして、各反射型光変調装置4は、制御装置(図示略)からの信号が入力されることで前記液晶の配向状態が制御され、ワイヤーグリッド3を透過した偏光光の偏光方向を変調し、ワイヤーグリッド3に向けて反射させる。反射型光変調装置4にて変調され、ワイヤーグリッド3に向けて反射された光束は、第2の直線偏光光と同一の偏光方向を有する偏光光のみがワイヤーグリッド3にて反射されてプリズム7に向う。
【0023】
〔偏光板の構成〕
3つの偏光板5は、各反射型光変調装置4にて変調されワイヤーグリッド3にて反射された第2の直線偏光光の偏光方向と略同一の偏光方向を有する偏光光を透過させる。すなわち、ワイヤーグリッド3及び偏光板5の双方を用いることで、ワイヤーグリッド3にて所望の直線偏光光以外の偏光成分が反射された場合であっても、偏光板5にて前記偏光成分を除去する構成を採用している。
そして、各偏光板5は、図2ないし図4に示すように、支持体6により、プリズム7の各光入射面71にそれぞれ対向するように配置される。
【0024】
〔クロスダイクロイックプリズムの構成〕
プリズム7は、図2または図3に示すように、各偏光板5を透過した各色光がそれぞれ入射される3つの光入射面71を有し、入射した各色光を合成する。
このプリズム7は、4つの直角プリズムを貼り合せた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合せた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。これら誘電体多層膜は、ワイヤーグリッド3Gにて反射されたG色光を透過し、各ワイヤーグリッド3R,3Bにて反射されたR,B色光をそれぞれ反射させる。このようにして、各色光が合成される。そして、プリズム7で合成された光束(画像)は、投射レンズ2Bにてスクリーンに向けて投射される。
【0025】
〔支持体の構成〕
3つの支持体6は、R,G,Bの色光毎に配設されるワイヤーグリッド3、反射型光変調装置4、及び偏光板5をそれぞれ支持する。
この支持体6は、図2または図3に示すように、断面略直角二等辺三角形状を有する三角柱状の中空部材であり、斜面である第1側面61、頂角を挟む第2側面62及び第3側面63を備える。そして、各側面61〜63には、開口部64(図3(B))がそれぞれ形成されている。
【0026】
第1側面61には、ワイヤーグリッド3が固定される。
また、第2側面62には、反射型光変調装置4が固定される。
さらに、第3側面63には、偏光板5が固定される。
以上のように、各側面61〜63に各部材3〜5がそれぞれ固定されることで、各開口部64が閉塞され、支持体6内部の空間が密閉される。すなわち、この密閉空間内に反射型光変調装置4の反射面が配置されることとなるので、反射面への粉塵の付着を防ぐことができ、反射面に付着した粉塵が投影画像中に影として映る等の投影画像の劣化を防止できる。
また、支持体6において、各側面61〜63に交差する一対の底面65は、図2または図3に示すように、平坦状に形成されている。
なお、本実施形態では、支持体6は、アルミニウムで構成されている。
【0027】
〔接続部材の構成〕
接続部材8は、図2または図3に示すように、一対設けられ、プリズム7における各光入射面71に交差する一対の交差端面72にそれぞれ固定され、支持体6を挟むように配置される。
なお、以下では、説明の便宜上、図2中、左側に位置する接続部材を第1接続部材81とし、右側に位置する接続部材を第2接続部材82とする。
【0028】
第1接続部材81は、図1ないし図3に示すように、基部811及び接続部812が一体形成されたものである。
基部811は、交差端面72の平面形状と略同一の平面形状を有する矩形状の板体で構成されている。
この基部811において、各光入射面71にそれぞれ倣う各端面には、図2または図3に示すように、光路上流側(各光入射面71の法線方向)に突出する突出部811Aがそれぞれ形成されている。
これら突出部811Aは、交差端面72の一辺と略同一の長さ寸法を有し交差端面72と略平行となる状態で突出する板体状の幅広部811Bと、幅広部811Bの先端部分の中央部分から幅広部811Bと平行となる状態で突出する幅狭部811Cとを備える。
接続部812は、図1に示すように、基部811の板面から面外方向に突出し、光学装置2Aを基体2Cに対して固定する部分である。
【0029】
第2接続部材82は、図1ないし図3に示すように、交差端面72の平面形状と略同一の平面形状を有する矩形状の板体で構成されている。
この第2接続部材82において、各光入射面71にそれぞれ倣う各端部には、図2または図3に示すように、幅狭部811Cに対向するように、光路上流側に張り出す張出部821がそれぞれ形成されている。
なお、本実施形態では、上述した接続部材8は、支持体6と同様に、アルミニウムで構成されている。
【0030】
〔投射ユニットの製造方法〕
次に、上述した投射ユニット2の製造方法について説明する。
先ず、作業者は、プリズム7に対して接続部材8を固定するとともに、第1接続部材81を基体2Cに対して固定し、投射レンズ2Bとプリズム7とを一体化する。また、作業者は、支持体6に対して各部材3〜5を固定する。
次に、作業者は、治具(図示略)を利用し、当該治具に支持体6を保持させながら、偏光板5が光入射面71に対向する姿勢に設定する。
そして、作業者は、3つの支持体6を上述した姿勢に設定した後、各反射型光変調装置4の位置調整(フォーカス調整及びアライメント調整)を開始する。
なお、以下では、説明の便宜上、光入射面71の法線方向をZ軸とし、光入射面71の互いに交差する一対の辺縁にそれぞれ沿う方向をX軸及びY軸とする。
【0031】
先ず、作業者は、以下に示すように、フォーカス調整を実施する。
すなわち、作業者は、治具を操作し、治具からワイヤーグリッド3に向けてフォーカス調整用の光束を出射させる。
そして、作業者は、反射型光変調装置4にて変調され、ワイヤーグリッド3、偏光板5、プリズム7、及び投射レンズ2Bを介してスクリーンに投射された投影画像を確認しながら、投影画像が合焦状態となるように、治具を操作して支持体6を移動させる。
具体的に、作業者は、治具を操作して、Z軸に沿う方向、X軸を中心とした回転方向(以下、Xθ方向)、及びY軸を中心とした回転方向(以下、Yθ方向)に支持体6を移動させる。
【0032】
そして、作業者は、3つの反射型光変調装置4のフォーカス調整を実施した後、以下に示すように、アライメント調整を実施する。
すなわち、作業者は、治具を操作し、治具から各ワイヤーグリッド3に向けてアライメント調整用の光束(R,G,Bの各色光)をそれぞれ出射させる。
そして、作業者は、各反射型光変調装置4にて変調され、各ワイヤーグリッド3、各偏光板5、プリズム7、及び投射レンズ2Bを介してスクリーンに投射されたR,G,Bの各投影画像を確認しながら、各投影画像の画素が一致するように、治具を操作して各支持体6を移動させる。
具体的に、作業者は、治具を操作して、X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向、及びZ軸を中心とした回転方向(以下、Zθ方向)に各支持体6を移動させる。
【0033】
次に、作業者は、上述した位置調整を実施した後、接続部材8の幅狭部811C及び張出部821の先端部分と、支持体6の各底面65とを溶接により互いに接合する。
なお、溶接の方法としては、ガス溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接、レーザー溶接、抵抗溶接、ろう付け・はんだ付け、スポット溶接等、種々の方法を採用できる。
ここで、図1及び図3では、幅狭部811C及び張出部821と各底面65との溶接により接合された接合部分には、「W」の符号を付している。
また、以下では、説明の便宜上、接合部分Wの中心位置を溶接位置SP(図3(B))と記載する。
具体的に、溶接位置SPは、幅狭部811C(張出部821)の先端部分におけるX軸に沿う方向の中心位置と底面65との間において、Y軸に沿う方向の中心位置である。
以上のように、接合されることで、プリズム7に対して各支持体6が固定され、投射ユニット2が製造される。
【0034】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、支持体6は、プリズム7(接続部材8)に対して溶接により接合される。ここで、接合部分Wは、接着剤に比較して、弾性に優れるものである。
このことにより、プロジェクター1の使用時にプロジェクター1に対して一時的に外力が加わることで、接合部分Wが変形して支持体6が所望の位置からずれた場合であっても、支持体6が元の位置(所望の位置)に復帰し易いものとなる。
したがって、反射型光変調装置4の位置ずれを抑制できる。
【0035】
また、支持体6及び接続部材8は、同一のアルミニウムで構成されている。
このことにより、支持体6及び接続部材8間の熱膨張変形を同程度に収め、線膨張係数の違いにより発生する熱応力を緩和し、熱による反射型光変調装置4の位置ずれを回避できる。
さらに、接続部材81,82は、一対の交差端面72にそれぞれ固定され、支持体6を挟んで一対設けられている。
このことにより、プリズム7及び支持体6間に接続部材81,82が介在しないため、各接続部材81,82の取り付けを容易に行うことができ、投射ユニット2を容易に製造できる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図5は、第2実施形態におけるプロジェクター1の概略構成を示す図である。
図6及び図7は、光学装置2Aの構成を示す図である。
具体的に、図5は、本願の要部である投射ユニット2の構成を示す斜視図である。図6は、光学装置2Aの構成を示す分解斜視図である。図7(A)は、図5中、左側から光学装置2Aを見た平面図である。図7(B)は、図7(A)におけるVII-VII線の断面図である。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、図5ないし図7に示すように、接続部材8及び支持体6の溶接位置SP(図7(B))を変更したものである。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0037】
具体的に、第2実施形態では、支持体6において、第1側面61の各底面65側には、図5ないし図7に示すように、第1側面61に直交する方向に突出した突出部66がそれぞれ形成されている。
これら突出部66において、各底面65側の面66A(以下、固定面66Aと記載)は、底面65と面一となるように形成されている。
また、第2実施形態では、接続部材8において、3つの幅狭部811C及び3つの張出部821は、前記第1実施形態と比較して、突出寸法が長く設定され、固定面66Aに対向する位置まで突出するように形成されている。
【0038】
そして、第2実施形態では、前記第1実施形態と同様に3つの反射型光変調装置4の位置調整(フォーカス調整及びアライメント調整)を実施した後、接続部材8の幅狭部811C及び張出部821の先端部分と、支持体6における各固定面66Aとの間を溶接により互いに接合することで、投射ユニット2が製造される。
【0039】
図8及び図9は、位置調整(フォーカス調整及びアライメント調整)後のプリズム7に対するワイヤーグリッド3、反射型光変調装置4、及び偏光板5の位置関係を説明するための図である。具体的に、図8は、光学装置2Aを図5中、左側から見た場合でのR色光側のみの各部材3〜5,7の位置関係を示している。G色光側及びB色光側の位置関係も同様である。図9は、図8の位置関係を+Z軸側から見た図である。
なお、図8及び図9では、説明の便宜上、ワイヤーグリッド3については、反射型光変調装置4にて変調された光束のうち、第2の直線偏光光を反射させ、第1の直線偏光光を透過させる偏光分離面3Aのみを図示している。また、反射型光変調装置4については、入射した光束を変調して画像を形成する光変調面4Aのみを図示している。さらに、偏光板5については、光入射面5Aのみを図示している。
【0040】
また、図8及び図9において、光線L1,L2は、光変調面4Aの中心位置P(画像の中心位置)から出射され、偏光分離面3Aを介して光入射面71に垂直に入射される主光線を示している。
さらに、図8及び図9において、破線で示す擬似光変調面4A0は、上述した位置調整により投射レンズ2Bのバックフォーカス位置に位置し、かつ、各反射型光変調装置4間で画素ずれがない設計位置に位置付けられた光変調面4Aを、偏光分離面3Aを含む平面Sを基準として仮想的に対称移動させた光変調面を示している。
また、図8において、破線で示す光線L0は、擬似光変調面4A0の中心位置P0(平面Sを基準として中心位置Pを対称移動させた位置、以下、虚像中心P0と記載)から出射され、光入射面71に垂直に入射される擬似主光線を示している。
【0041】
上述したように位置調整した場合には、各部材3〜5は、図8に示すように、主光線L2及び擬似主光線L0が光入射面71の中心位置に向うように位置付けられる。
また、各接続部材81,82と支持体6との各溶接位置SPは、図8に示すように、平面Sに対して反射型光変調装置4の配設位置とは反対側に位置付けられる。
より具体的に、各溶接位置SPは、図8に示すように、X軸に沿う方向から見て、虚像中心P0に略合致し、虚像中心P0を通る擬似光変調面4A0の法線N(本実施形態では、擬似主光線L0)上にそれぞれ位置付けられる。
【0042】
また、各溶接位置SPは、図9に示すように、法線Nを中心とした180°の回転対称となる位置にそれぞれ位置付けられる。
換言すれば、各溶接位置SPは、図8または図9に示すように、ワイヤーグリッド3の入射光束及び出射光束の光軸を含む面(光線L1,L2を含む面)を基準として対称な位置にそれぞれ位置付けられる。また、各溶接位置SPは、虚像中心P0から、光線L1,L2を含む面に垂直な方向(X軸に沿う方向)に延びた位置に位置付けられる。
そして、本実施形態では、X軸に沿う方向にそれぞれ位置する各溶接位置SPが上述したように設定されているため、支持体6が所望の位置(位置調整後の支持体6の位置)からずれる場合には、虚像中心P0を中心として回転することとなる。
【0043】
上述した第2実施形態によれば、以下の効果がある。
図10ないし図13は、第2実施形態における効果を説明するための図である。具体的に、図10ないし図13は、図8に示すようなプリズム7に対する各部材3〜5の位置関係で支持した支持体6を各位置SP,SP1〜SP3を通りX軸に沿う各軸を中心として5°回転させた状態をそれぞれ示している。
なお、位置SP1は、図11に示すように、X軸に沿う方向から見た場合に、偏光板5における光入射面5Aの中心位置に合致する位置である。また、位置SP2は、図12に示すように、X軸に沿う方向から見た場合に、光変調面4Aの中心位置Pに合致する位置である。さらに、位置SP3は、図13に示すように、X軸に沿う方向から見た場合に、偏光分離面3Aの中心位置に合致する位置である。
また、図10ないし図13では、説明の便宜上、回転後の偏光分離面3A(ワイヤーグリッド3)を2点鎖線で示し、「´」を付加した3´(3A´)の符号を付している。他の光変調面4A(反射型光変調装置4)、光入射面5A(偏光板5)、主光線L1,L2、擬似光変調面4A0、虚像中心P0、及び擬似主光線L0も同様である。
【0044】
本実施形態では、X軸に沿う方向にそれぞれ位置する各溶接位置SPが上述したように設定されているので、支持体6が所望の位置(位置調整後の支持体6の位置)からずれる場合には、虚像中心P0を中心として回転することとなる。
例えば、図10に示すように、各溶接位置SPを通りX軸に沿う軸を中心として5°支持体6を回転させた場合であっても、虚像中心P0を中心として回転することとなるため、回転後の擬似主光線L0´の位置は、回転前の擬似主光線L0の位置と同一位置となる。なお、虚像中心P0を中心として回転するため、他の軸(例えば、Y軸やZ軸に沿う軸)を中心として支持体6を回転させても同様である。
したがって、支持体6が所望の位置からずれ、かつ、支持体6が元の位置に復帰しない場合であっても、支持体6の位置ずれに伴う擬似主光線L0,L0´の位置ずれ量X(図10)を0とし、結果として画素ずれ量を0とすることができる。このため、良好な投影画像を形成できる。
【0045】
これに対して、例えば、本実施形態とは異なり各溶接位置SPを図11ないし図13に示す各溶接位置SP1〜SP3に設定した場合には、支持体6が所望の位置からずれる際に、虚像中心P0から離間した位置を中心として回転することとなる。このため、支持体6の位置ずれに伴う擬似主光線L0,L0´の位置ずれ量X1〜X3が大きいものとなり、結果として画素ずれ量が大きいものとなる。
なお、虚像中心P0からの距離が各溶接位置SP1〜SP3の順に小さくなるため、図11ないし図13に示すように、位置ずれ量X1〜X3も同様に、位置ずれ量X1〜X3の順に小さくなる。
【0046】
また、上述した位置にそれぞれ位置する各溶接位置SPで支持体6を支持するので、各接続部材81,82による支持体6の支持状態を安定に維持しつつ、支持体6が所望の位置からずれる際に、虚像中心P0を中心として支持体6を回転させることができる。
さらに、反射型光変調装置4やワイヤーグリッド3等の光学素子から離れた箇所に溶接位置SPが設定されるため、溶接時の熱による当該光学素子への影響を緩和できる。
【0047】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態において、投射ユニット2の製造方法は、前記実施形態で説明した製造方法に限らない。
例えば、前記各実施形態では、スクリーン上の投影画像を確認しながら反射型光変調装置4の位置調整を実施していたが、これに限らず、プリズム7から出射される位置調整用の光束をCCDカメラ等で直接、検出しながら位置調整を実施する方法を採用しても構わない。すなわち、光学装置2Aを製造した後に、基体2Cを介して光学装置2Aと投射レンズ2Bとを一体化する方法を採用しても構わない。
【0048】
前記各実施形態では、反射型偏光板としてワイヤーグリッド3が用いられていたが、反射型偏光板であればその他の構成を採用しても構わない。
例えば、反射型偏光板として、誘電体多層膜によって形成される偏光分離素子、液晶材料等の屈折率異方性(複屈折性)を有する有機材料を層状に積層させた高分子系の層状偏光板、偏りのない光を右回りの円偏光と左回りの円偏光とに分離する円偏光反射板と1/4波長板を組み合わせた光学素子、ブリュースター角を利用して反射偏光光と透過偏光光とに分離する光学素子、あるいは、ホログラムを利用したホログラム光学素子等を採用しても構わない。
【0049】
前記第2実施形態では、各溶接位置SPがX軸に沿う方向から見て虚像中心P0に合致するように設定されていたが、これに限らず、平面Sに対して反射型光変調装置4の配設位置とは反対側に設けられていれば、各溶接位置をいずれの位置に設定しても構わない。
【0050】
前記第2実施形態では、各溶接位置SPは、X軸に沿ってそれぞれ位置付けられ、虚像中心P0を通る法線Nを中心とした180°の回転対称となる位置にそれぞれ設けられていたが、これに限らない。各溶接位置SPは、虚像中心P0を通る法線Nを中心とした180°の回転対称となる位置であれば、例えば、Y軸に沿ってそれぞれ設けられた構成としても構わない。
【0051】
前記各実施形態では、各接続部材81,82は、一対の交差端面72にそれぞれ固定され、支持体6を挟むように配設されていたが、これに限らない。
例えば、接続部材としては、従来と同様に(特許文献1に記載の調整部材と同様に)、プリズム7の光入射面71に取り付けられる本体と、本体の外縁において、互いに対向する位置から光入射側に突出する一対の腕部とを備え、一対の腕部にて支持体を支持する構成としても構わない。
また、例えば、各接続部材81,82のうちいずれか一方のみで支持体6を支持する構成を採用しても構わない。
前記各実施形態では、支持体6及び接続部材8は、アルミニウムで構成されていたが、これに限らず、その他の材料で構成しても構わない。また、支持体6及び接続部材8を同一材料で構成する他、異なる材料で構成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアターに用いられるプロジェクターとして利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・プロジェクター、3・・・ワイヤーグリッド(反射型偏光板)、3A・・・偏光分離面、4・・・反射型光変調装置、4A・・・光変調面、4A0・・・擬似光変調面、6・・・支持体、7・・・クロスダイクロイックプリズム(色合成光学装置)、71・・・光入射面、72・・・交差端面、8・・・接続部材、N・・・法線、P0・・・虚像中心、S・・・平面、SP・・・溶接位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色光を色光毎にそれぞれ変調する複数の反射型光変調装置と、
前記複数の反射型光変調装置に対してそれぞれ傾斜して配設され、入射した前記複数の色光をそれぞれ偏光分離する複数の反射型偏光板と、
前記複数の反射型光変調装置にて変調され前記複数の反射型偏光板にて偏光分離された各色光を合成する色合成光学装置と、
前記反射型光変調装置及び前記反射型偏光板を支持する支持体と、
前記色合成光学装置に固定される接続部材とを備え、
前記支持体及び前記接続部材は、
溶接により互いに接合される
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記支持体及び前記接続部材の溶接位置は、
前記反射型偏光板の偏光分離面を含む平面に対して、前記反射型光変調装置の配設位置とは反対側に設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記溶接位置は、
前記反射型偏光板の入射光束及び出射光束の光軸を含む面に対して対称な位置にそれぞれ設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクターにおいて、
前記反射型光変調装置の光変調面が投射レンズのバックフォーカス位置に位置し、かつ、各前記反射型光変調装置間で画素ずれがない位置に配設された時に、前記反射型光変調装置の光変調面を、前記平面を基準として仮想的に対称移動させた光変調面を擬似光変調面とし、前記擬似光変調面の中心位置を虚像中心とした場合に、
前記溶接位置は、
前記虚像中心から、前記反射型偏光板の入射光束及び出射光束の光軸を含む面に垂直な方向に延びた位置に位置付けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記反射型光変調装置の光変調面が投射レンズのバックフォーカス位置に位置し、かつ、各前記反射型光変調装置間で画素ずれがない位置に配設された時に、前記反射型光変調装置の光変調面を、前記平面を基準として仮想的に対称移動させた光変調面を擬似光変調面とし、前記擬似光変調面の中心位置を虚像中心とした場合に、
前記溶接位置は、
前記虚像中心を通る前記擬似光変調面の法線を中心とした180°の回転対称となる位置にそれぞれ設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記接続部材は、
一対設けられ、前記色合成光学装置における前記複数の色光がそれぞれ入射する複数の光入射面に交差する一対の交差端面の双方にそれぞれ固定され、前記支持体を挟むように配設されている
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−173306(P2012−173306A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31760(P2011−31760)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】