説明

プロジェクター

【課題】冷却対象を効率よく冷却できるプロジェクターを提供すること。
【解決手段】画像を投射するプロジェクター1Aは、光源装置31と、光源装置31から出射された光束を変調する光変調装置33と、変調された光束を投射する投射光学装置35と、所定の冷却対象を冷却する冷却装置4Aと、を備える。冷却装置4Aは、投射光学装置による光束の投射方向(P方向)に沿う複数のヒートパイプ42を備え、それぞれのヒートパイプ42は、冷却対象にて発生された熱が伝導される受熱部と、受熱部に伝導された熱が伝導される放熱部とを有し、複数のヒートパイプには、受熱部に対して投射方向先端側に放熱部が位置する第1ヒートパイプ421と、受熱部に対して投射方向基端側に放熱部が位置する第2ヒートパイプ422と、が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源装置と、当該光源装置から出射された光束を変調して画像情報に応じた画像を形成する光変調装置と、当該画像をスクリーン等の被投射面上に拡大投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターが知られている。このようなプロジェクターは、光源装置や制御装置等の熱源を有するが、このような熱源を効果的に冷却しないと、プロジェクターの動作に不具合が生じる可能性がある。
【0003】
これに対し、光源装置に当接される吸熱ブロックと、当該吸熱ブロックに一端が熱伝導可能に接続され、投射光学装置(投影光学手段)により投射される光束の中心軸に沿って延出するヒートパイプと、当該ヒートパイプの他端に取り付けられた放熱フィンとを有する冷却装置を備えたプロジェクターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のプロジェクターでは、光源装置で生じた熱が吸熱ブロックを介して、ヒートパイプの一端に伝導される。この熱は、ヒートパイプ内の媒体により他端に伝導され、放熱フィンにより放熱される。このような構成により、冷却対象である光源装置が冷却される。
【0004】
ここで、ヒートパイプは、吸熱側が放熱側に対して高い位置にあると、当該吸熱側の熱が放熱側に伝導されにくい。一方、プロジェクターは、設置台等に載置された姿勢である正置き姿勢や、正置き姿勢とは上下を逆にして天井等に固定される天吊り姿勢で利用されることがある。更に、プロジェクターは、当該各姿勢において、投射光学装置による光束の投射方向が水平面に対して傾斜する傾斜状態で利用される場合が多い。
【0005】
このため、特許文献1では、正置き姿勢で利用されるプロジェクターにおいては、投射方向に略平行にヒートパイプを設け、傾斜状態で下側となる投射方向基端側に吸熱側の端部を位置させ、上側となる投射方向先端側に放熱側の端部を位置させている。
一方、同文献では、天吊り姿勢で利用されるプロジェクターにおいては、投射方向に略平行にヒートパイプを設け、傾斜状態で上側となる投射方向基端側に放熱側の端部を位置させ、当該傾斜状態で下側となる投射方向先端側に吸熱側の端部を位置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−24939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のプロジェクターは、正置き姿勢で用いられるプロジェクターと、天吊り姿勢で用いられるプロジェクターとで、ヒートパイプにおける吸熱側の端部と放熱側の端部との位置が異なる。このため、正置き姿勢のプロジェクターを天吊り姿勢で用いると、冷却対象の冷却効率が低下し、プロジェクターの動作に問題が生じる可能性がある。このため、設置姿勢に応じたプロジェクターを用意する必要があるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、冷却対象を効率よく冷却できるプロジェクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明のプロジェクターは、画像を投射するプロジェクターであって、光源装置と、前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、変調された前記光束を投射する投射光学装置と、所定の冷却対象を冷却する冷却装置と、を備え、前記冷却装置は、前記投射光学装置による前記光束の投射方向に沿う複数のヒートパイプを備え、それぞれの前記ヒートパイプは、前記冷却対象にて発生された熱が伝導される受熱部と、前記受熱部に伝導された熱が伝導される放熱部とを有し、前記複数のヒートパイプには、前記受熱部に対して前記投射方向先端側に前記放熱部が位置する第1ヒートパイプと、前記受熱部に対して前記投射方向基端側に前記放熱部が位置する第2ヒートパイプと、が含まれることを特徴とする。
【0010】
このような冷却対象としては、光源装置及び光変調装置を例示できる。この他、プロジェクター全体の動作を制御する制御装置や、当該プロジェクターの構成部品に適した電圧を供給する電源装置も冷却対象となり得る。
【0011】
本発明によれば、ヒートパイプには、冷却対象で生じた熱が伝導される受熱部に対して、投射光学装置による光束の投射方向先端側に放熱部が位置する第1ヒートパイプと、受熱部に対して当該投射方向基端側に放熱部が位置する第2ヒートパイプとが含まれる。
これによれば、プロジェクターが前述の正置き姿勢で、かつ、投射方向先端側が基端側に対して上側に位置する上向き傾斜状態にある場合、第1ヒートパイプの受熱部が放熱部に比べて低い位置となるので、当該第1ヒートパイプによる熱伝導を適切に行うことができる。また、当該正置き姿勢で、かつ、投射方向先端側が基端側に対して下側に位置する下向き傾斜状態である場合には、第2ヒートパイプの受熱部が放熱部に比べて低い位置となるので、当該第2ヒートパイプによる熱伝導を適切に行うことができる。
【0012】
一方、プロジェクターが前述の天吊り姿勢で、かつ、下向き傾斜状態にある場合、第2ヒートパイプの受熱部が放熱部に比べて低い位置となるので、当該第2ヒートパイプによる熱伝導を適切に行うことができる。また、当該天吊り姿勢で、かつ、上向き傾斜状態にある場合、第1ヒートパイプの受熱部が放熱部に比べて低い位置となるので、当該第1ヒートパイプによる熱伝導を適切に行うことができる。
このように、プロジェクターの姿勢及び傾斜状態に依らずに、第1ヒートパイプ及び第2ヒートパイプの少なくともいずれかによる熱伝導が効率よく行われるので、冷却対象で生じた熱を当該冷却対象から効果的に伝導させることができる。従って、冷却対象を効率よく冷却できる。
【0013】
本発明では、前記冷却装置は、それぞれ伝導された熱を放熱する第1放熱部材及び第2放熱部材を備え、前記第1ヒートパイプの放熱部は、前記第1放熱部材に熱伝導可能に接続され、前記第2ヒートパイプの放熱部は、前記第2放熱部材に熱伝導可能に接続されていることが好ましい。
本発明によれば、第1ヒートパイプの放熱部に第1放熱部材が熱伝導可能に接続され、第2ヒートパイプの放熱部に第2放熱部材が熱伝導可能に接続されていることにより、第1ヒートパイプ及び第2ヒートパイプの一方のみが機能する場合でも、当該一方のヒートパイプに接続された放熱部材により、受熱部から放熱部に伝導された熱を効率よく放熱できる。従って、より効率よく冷却対象を冷却できる。
【0014】
本発明では、前記冷却装置は、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材にそれぞれ冷却空気を送風する冷却ファンと、前記冷却ファン、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材を内部に収納し、前記冷却空気が内部を流通するダクトと、を備えることが好ましい。
本発明によれば、冷却ファンと、第1放熱部材及び第2放熱部材とがダクト内に設けられているので、冷却ファンにより第1放熱部材及び第2放熱部材に送風される冷却空気の損失を抑制できる。従って、第1放熱部材及び第2放熱部材の冷却効果を高めることができ、ひいては、冷却対象を効率よく冷却できる。
【0015】
本発明では、前記冷却ファンは、前記第1放熱部材と前記第2放熱部材との間に設けられ、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材のうち、一方は、前記ダクト内において前記冷却ファンの吸気側に配置され、他方は、前記ダクト内において前記冷却ファンの排気側に配置されていることが好ましい。
本発明によれば、ダクト内において、第1放熱部材及び第2放熱部材のうちの一方が、冷却ファンの吸気側に配置され、他方が冷却ファンの排気側に配置されている。これによれば、第1放熱部材及び第2放熱部材に対して、1つの冷却ファンにより冷却空気を送風できる。従って、冷却装置の構成を簡略化でき、製造コストを低減できる。
また、ダクト内における第1放熱部材と第2放熱部材との間に冷却ファンが設けられているので、当該冷却ファンの駆動によって生じる騒音を外部に漏れにくくすることができる。従って、プロジェクターの低騒音化を図ることができる。
【0016】
本発明では、前記第1ヒートパイプ及び前記第2ヒートパイプのうち少なくともいずれかは、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材が、前記ダクト内で対向するように屈曲形成されていることが好ましい。
本発明によれば、第1放熱部材及び第2放熱部材がダクト内で対向するように配置されているので、これら第1放熱部材及び第2放熱部材に対して、直線的に冷却空気を送風できる。従って、当該冷却空気の流路が屈曲する場合に比べ、冷却空気の流通時における風圧及び風量の損失を抑制でき、第1放熱部材及び第2放熱部材の冷却効率、ひいては、冷却対象の冷却効率を向上できる。
【0017】
本発明では、前記第1ヒートパイプ及び前記第2ヒートパイプは、それぞれ前記受熱部と前記放熱部との間に、鈍角で屈曲する屈曲部を有することが好ましい。
なお、屈曲部の角度は、屈曲部から受熱部が延出する方向と、当該屈曲部から放熱部が延出する方向とのなす角のうち、小さい方の角度をいう。
ここで、屈曲部の角度に応じて、当該屈曲部から放熱部材を取付可能な位置が変化する。具体的に、屈曲部の角度が、直角以下である場合に比べて直角より大きな角度である場合には、より屈曲部に近い位置に放熱部材を取り付けることができる。
このため、本発明では、受熱部及び放熱部の間の屈曲部の角度は、鈍角に設定されている。これによれば、屈曲部に一層近い位置に放熱部材を取り付けることができ、ひいては、冷却対象に近い位置に放熱部材を取り付けることができる。従って、冷却対象を一層効果的に冷却できる。
さらに、屈曲部が鈍角で屈曲していることにより、当該屈曲部が直角で屈曲している場合での放熱部の長さ寸法と同じ場合でも、受熱部の延出方向に沿う直線と放熱部における屈曲部側とは反対側の端部との距離を短縮できる。従って、冷却装置を小型化でき、ひいては、プロジェクターを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクターの構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における冷却装置を示す斜視図。
【図3】前記実施形態における冷却装置を示す斜視図。
【図4】前記実施形態における冷却装置を示す平面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプロジェクターの冷却装置を示す斜視図。
【図6】前記実施形態における冷却装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの全体構成〕
図1は、本実施形態に係るプロジェクター1Aの構成を示す模式図である。
本実施形態に係るプロジェクター1Aは、内部に設けられた光源装置31から出射された光束を変調して画像情報に応じた画像を形成し、当該画像をスクリーン等の被投射面上に拡大投射するものである。このようなプロジェクター1Aは、図1に示すように、筐体2と、当該筐体2内に収納配置される光学装置3及び冷却装置4Aとを備える。この他、図示を省略するが、プロジェクター1Aは、プロジェクター1A全体を制御する制御装置、及び、プロジェクター1Aの構成部品に電力を供給する電源装置等を備える。
【0020】
〔筐体の構成〕
筐体2は、合成樹脂又は金属により形成された全体略直方体形状の筐体である。この筐体2は、正面21、背面22、左側面23及び右側面24と、天面及び底面(ともに図示省略)とを有する。
これらのうち、正面21には、光学装置3を構成する投射光学装置35が露出する開口211が形成され、当該開口211を介して画像が投射される。この他、正面21には、後述する冷却装置4Aにより冷却対象の冷却に供された空気が排出される排気口212が形成されている。また、左側面23には、筐体2外から冷却空気が導入される吸気口231が形成されている。
なお、図示を省略するが、筐体2の底面には、設置面及び天井等に当接される脚部が設けられている。
【0021】
〔光学装置の構成〕
光学装置3は、前述の制御装置から入力される画像情報に応じた画像を形成及び投射する。この光学装置3は、光源装置31、色分離光学装置32、光変調装置33、色合成光学装置34及び投射光学装置35を有する。この他、光学装置3は、図示を省略するが、光源装置31と色分離光学装置32との間に設けられる均一照明光学装置を備える。この均一照明光学装置は、光源装置31から出射された光束の中心軸に対する直交面内の照度を均一化するものであり、一対のレンズアレイ及び重畳レンズを有する他、入射された光の偏光方向を一種類に揃える偏光変換素子を有する構成を例示できる。
【0022】
光源装置31は、均一照明光学装置を介して、色分離光学装置32に向けて光束を出射する。この光源装置31は、本実施形態では、基板311、反射部312及び集光レンズ313とを有する。
基板311には、固体光源(図示省略)が複数配列されている。このような固体光源としては、レーザーダイオード及びLED(Light Emitting Diode)を例示できる。
反射部312は、基板311における固体光源の実装面に対向配置されている。この反射部312の内部には、図示を省略するが、各固体光源から出射された光を集光レンズ313に向けてそれぞれ略平行に反射させる複数のミラーが設けられている。
集光レンズ313は、反射部312を介して入射される光を集光し、光束として出射する。
【0023】
色分離光学装置32は、入射される光束から赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色光を分離し、当該各色光を光変調装置33(33R,33G,33B)に入射させる。この色分離光学装置32は、ダイクロイックミラー321,323と、全反射ミラー322,324,325を有する。
ダイクロイックミラー321は、入射される光のうち、青色光を反射させ、他の光を透過させる。これにより反射された青色光は、青色光用の光変調装置33(33B)に入射される。一方、ダイクロイックミラー321を透過した光は、全反射ミラー322により光路が90度曲げられ、ダイクロイックミラー323に入射される。
【0024】
ダイクロイックミラー323は、入射される光のうち、緑色光を反射させ、赤色光を透過させる。これにより反射された緑色光は、緑色光用の光変調装置33(33G)に入射される。一方、ダイクロイックミラー323を透過した赤色光は、全反射ミラー324,325を介して、赤色光用の光変調装置33(33R)に入射される。
なお、図示を省略したが、緑色光及び赤色光は、青色光に比べて、光変調装置33に到達するまでの光路が長いため、これら色光の光路上に光の損失を抑制するリレーレンズを配置してもよい。
【0025】
光変調装置33(赤、緑及び青の各色光用の光変調装置を、それぞれ33R,33G,33Bとする)は、色分離光学装置32によって分離される各色光ごとに設けられる。これら光変調装置33は、入射される光を変調し、前述の制御装置から入力される画像情報に応じた画像を形成する。このような光変調装置33は、図示を省略するが、液晶パネルと、当該液晶パネルを挟む一対の偏光板とを有する構成を例示できる。
【0026】
色合成光学装置34は、各光変調装置33により変調された色光を合成する。この色合成光学装置34は、本実施形態では、クロスダイクロイックプリズムにより構成され、3つの入射面を介して入射された各色光を合成し、合成した光(画像光)を投射光学装置35に対向する出射面から出射する。
投射光学装置35は、色合成光学装置34により合成された光を前述の被投射面上に拡大投射する。この投射光学装置35は、鏡筒と、当該鏡筒内に配置された複数のレンズとを有する組レンズとして構成されている。
【0027】
〔冷却装置の構成〕
図2は、冷却装置4Aを示す斜視図である。なお、図2においては、ダクト45の一部を取り外した状態の冷却装置4Aを図示している。
冷却装置4Aは、冷却対象である光源装置31(詳しくは、基板311)を冷却する。この冷却装置4Aは、図1及び図2に示すように、受熱体41、複数のヒートパイプ42、一対の放熱フィン43、冷却ファン44及びダクト45を備える。
【0028】
〔ダクトの構成〕
ダクト45は、合成樹脂により形成された筒状体であり、筐体2に形成された吸気口231と排気口212とを接続する。このダクト45内には、一対の放熱フィン43及び冷却ファン44が収納される。このダクト45は、当該ダクト45内を流通する冷却空気の流通方向が、投射光学装置35による光束の投射方向であるP方向に沿うように形成されている。
【0029】
〔受熱体の構成〕
図3は、図2とは反対側から見た冷却装置4Aを示す斜視図である。また、図4は、冷却装置4Aを示す平面図である。なお、図3においては、冷却ファン44及びダクト45の図示を省略し、図4においては、ダクト45の図示を省略している。
受熱体41は、前述の基板311における少なくとも固体光源が配列された領域と熱伝導可能に接続され、当該基板311にて生じた熱を受熱する。この受熱体41は、熱伝導性を有する金属により横長の直方体形状に形成されており、当該受熱体41の長手方向はP方向と略平行である。
この受熱体41において、基板311に対向する側とは反対側には、図3及び図4に示すように、それぞれヒートパイプ42が嵌め込まれる溝部411がP方向に沿って複数形成されている。
【0030】
〔ヒートパイプの構成〕
ヒートパイプ42(421,422)は、図2〜図4に示すように、一端側が受熱体41に熱伝導可能に接続され、当該受熱体41から伝導された熱を他端側に設けられた放熱フィン43に伝導する。
これらヒートパイプ42は、直線状に延出した受熱部42Aと、同じく直線状に延出した放熱部42Bと、これら受熱部42A及び放熱部42Bの間に形成された屈曲部42Cとを有し、略L字状に形成されている。このうち、屈曲部42Cは、本実施形態では、略直角に屈曲している。
【0031】
このようなヒートパイプ42は、それぞれP方向に沿って配置されるが、受熱部42Aに対する放熱部42B及び屈曲部42Cの位置に応じて、第1ヒートパイプ421と、第2ヒートパイプ422とに区分される。
詳述すると、第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422の受熱部42Aは、それぞれ、受熱体41の長手方向(すなわち、投射光学装置35による投射方向であるP方向)に沿って溝部411に嵌め込まれ、当該受熱体41に半田により固定される。
一方、第1ヒートパイプ421の屈曲部42Cは、受熱部42Aに対してP方向先端側に位置しているのに対し、第2ヒートパイプ422の屈曲部42Cは、受熱部42Aに対してP方向基端側に位置している。
【0032】
また、第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422の放熱部42Bは、受熱体41から離間する方向に、それぞれの屈曲部42Cから延出している。そして、当該第1ヒートパイプ421の放熱部42Bは、放熱フィン43(第1放熱フィン431)に接続され、第2ヒートパイプ422の放熱部42Bは、放熱フィン43(第2放熱フィン432)に接続されている。
このようなヒートパイプ42では、光源装置31で生じた熱が受熱体41を介して伝達される受熱部42A側の温度が、放熱フィン43に接続される放熱部42B側の温度より高くなるため、当該受熱部42Aの熱が、放熱部42Bに伝導される。
【0033】
なお、本実施形態では、4本の第1ヒートパイプ421と、4本の第2ヒートパイプ422との合計8本のヒートパイプ42が受熱体41に取り付けられている。これら第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422は、鉛直方向に交互に配列されている。
このように第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422を配列することにより、受熱体41の温度分布の偏りを抑制でき、ひいては、基板311の温度分布の偏りを抑制できる。
【0034】
〔放熱フィンの構成〕
各放熱フィン43(431,432)は、鉛直面に沿う平板状の板状体43Aが水平方向に沿って、互いに等間隔に複数配列された構成を有し、当該各放熱フィン43で構成は同じである。これら放熱フィン43は、ダクト45内において対向配置されている。
このような放熱フィン43のうち、本発明の第1放熱部材に相当する第1放熱フィン431は、第2放熱フィン432に対してP方向先端側に位置する。この第1放熱フィン431は、第1ヒートパイプ421の放熱部42Bが当該第1放熱フィン431の各板状体43Aを貫通するように、当該放熱部42Bと熱伝導可能に接続されている。
【0035】
また、本発明の第2放熱部材に相当する第2放熱フィン432は、第1放熱フィン431に対してP方向基端側に位置する。この第2放熱フィン432は、第2ヒートパイプ422の放熱部42Bが当該第2放熱フィン432の各板状体43Aを貫通するように、当該放熱部42Bと熱伝導可能に接続されている。
このような第1放熱フィン431及び第2放熱フィン432は、第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422から伝導された熱を、それぞれ放熱する。この際、第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422は、鉛直方向に沿って交互に配列されているので、受熱体41におけるヒートパイプ42の配列ピッチに比べ、各放熱フィン431,432におけるヒートパイプ42の配列ピッチを2倍に広げることができる。従って、各放熱フィン43による放熱効果を高めることができる。
【0036】
〔冷却ファンの構成〕
冷却ファン44は、ダクト45内において第1放熱フィン431と第2放熱フィン432との間に配置される。この冷却ファン44は、軸流ファンであり、吸気側が第2放熱フィン432を向き、排気側が第1放熱フィン431を向くように配置される。
この冷却ファン44が駆動されると、筐体2外の冷却空気が吸気口231を介してダクト45内に導入される。この冷却空気は、図4に示すように、冷却ファン44の吸気面に到達する過程で第2放熱フィン432の板状体43A間を通過する。これにより、第2放熱フィン432に冷却空気が送風され、当該第2放熱フィン432が冷却される。
【0037】
また、冷却ファン44により吸引された冷却空気は、第1放熱フィン431に向けて吐出され、当該第1放熱フィン431の板状体43A間を通過する。これにより、第1放熱フィン431に冷却空気が送風され、当該第1放熱フィン431が冷却される。
これら第1放熱フィン431及び第2放熱フィン432の冷却に供された冷却空気は、ダクト45内を更に流通して、正面21に形成された排気口212から筐体2外に排出される。
【0038】
〔冷却装置の作用〕
ここで、ヒートパイプの性質及びプロジェクターの使用状態について説明し、これらに対する冷却装置4Aの作用を以下に述べる。
ヒートパイプは、一端側の温度が他端側の温度より高い場合に、当該一端側の熱を他端側に伝導する。この際、温度が高い一端側が他端側より低い位置(鉛直方向における下側)にあれば、当該一端側から他端側への熱伝導が効率よく行われる。
しかしながら、温度が高い一端側が他端側より高い位置(鉛直方向における上側)にあると、当該一端側から他端側への熱伝導効率が下がる。
【0039】
一方、プロジェクター1Aは、当該プロジェクター1Aの底面が設置面に対向するように配置される正置き姿勢で、投射光学装置35の投射方向が、水平面に対して傾斜する上向き傾斜状態及び下向き傾斜状態で利用されることがある。
他方、プロジェクター1Aは、当該プロジェクター1Aの底面が天井を向く天吊り姿勢で、投射光学装置35の投射方向が、被投射面の法線に対して傾斜する下向き傾斜状態及び上向き傾斜状態で利用されることがある。
このようなプロジェクター1Aの使用状態では、前述の冷却装置4Aに第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422の一方のみが設けられている場合では、前述の熱伝導が効果的に行われない状態が生じうる。
【0040】
すなわち、冷却装置4Aに第1ヒートパイプ421のみが設けられている場合には、正置き姿勢及び天吊り姿勢での上向き傾斜状態では、当該第1ヒートパイプ421の受熱部42Aは、放熱部42Bより低い位置となる。この場合、当該受熱部42Aから放熱部42Bへの熱伝導は効率よく行われる。
一方、正置き姿勢及び天吊り姿勢での下向き傾斜状態では、第1ヒートパイプ421の受熱部42Aは、放熱部42Bより高い位置となる。この場合、当該受熱部42Aから放熱部42Bへの熱伝導が行われづらいため、受熱体41の冷却、ひいては、光源装置31の冷却が適切に行われにくい。
【0041】
また、冷却装置4Aに第2ヒートパイプ422のみが設けられている場合で、正置き姿勢及び天吊り姿勢での下向き傾斜状態では、当該第2ヒートパイプ422の受熱部42Aが、放熱部42Bに対して低い位置となる。この場合、当該受熱部42Aから放熱部42Bへの熱伝導は効率よく行われる。
一方、正置き姿勢及び天吊り姿勢での上向き傾斜状態では、第2ヒートパイプ422の受熱部42Aが放熱部42Bより低い位置となる。この場合、当該受熱部42Aから放熱部42Bへの熱伝導が行われづらいため、前述の場合と同様に、受熱体41の冷却、ひいては、光源装置31の冷却が適切に行われにくい。
【0042】
これに対し、本実施形態では、冷却装置4Aは、放熱部42Bが受熱部42Aに対してP方向(投射光学装置35による光束の投射方向)先端側に位置し、かつ、P方向に沿って受熱体41に取り付けられる第1ヒートパイプ421と、放熱部42Bが受熱部42Aに対してP方向基端側に位置し、かつ、P方向に沿って受熱体41に取り付けられる第2ヒートパイプ422とを備える。
【0043】
このような構成により、正置き姿勢及び天吊り姿勢のいずれかで、かつ、上向き傾斜状態でプロジェクター1Aが利用される場合には、第1ヒートパイプ421による受熱体41から第1放熱フィン431への熱伝導が効率よく行われる。
また、正置き姿勢及び天吊り姿勢のいずれかで、かつ、下向き傾斜状態でプロジェクター1Aが利用される場合には、第2ヒートパイプ422による受熱体41から第2放熱フィン432への熱伝導が効率よく行われる。
従って、プロジェクター1Aがどのような姿勢及び傾斜状態でも、受熱体41の冷却、ひいては、冷却対象である光源装置31の冷却を効率よく行うことができる。
【0044】
以上説明した本実施形態に係るプロジェクター1Aによれば、以下の効果がある。
すなわち、プロジェクター1Aが、正置き姿勢及び天吊り姿勢のそれぞれで用いられる場合でも、当該プロジェクター1Aの傾斜状態に関らず、受熱部42Aの位置が放熱部42Bより低いヒートパイプ42により、光源装置31から伝導された受熱体41の熱を、当該受熱体41に接続される受熱部42Aから放熱部42Bに効率よく伝導できる。従って、受熱体41、ひいては、光源装置31を効率よく冷却できる。
【0045】
第1ヒートパイプ421の放熱部42Bには、第1放熱フィン431が熱伝導可能に接続され、第2ヒートパイプ422の放熱部42Bには、第2放熱フィン432が熱伝導可能に接続されている。これによれば、第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422の一方のみが適切に機能する場合でも、当該一方のヒートパイプ42に接続された放熱フィン43により、受熱部42Aから放熱部42Bに伝導された熱を効率よく放熱できる。従って、冷却対象である光源装置31を効率よく冷却できる。
【0046】
第1放熱フィン431及び第2放熱フィン432と、これら放熱フィン431,432に冷却空気を送風する冷却ファン44は、ダクト45内に設けられている。これによれば、冷却ファン44により各放熱フィン431,432に送風される冷却空気の損失を抑制できる。従って、当該各放熱フィン431,432の冷却効果を高めることができ、光源装置31を効率よく冷却できる。
また、ダクト45に接続される排気口212は、筐体2において投射光学装置35が露出する正面21に形成されている。これによれば、プロジェクター1Aの使用時に、当該排気口212が障害物により覆われることを抑制できる他、熱を帯びた冷却空気が、プロジェクター1Aの使用者に向けて排出されることを抑制できる。
【0047】
ダクト45内において、第2放熱フィン432は、冷却ファン44の吸気側に配置され、第1放熱フィン431は、冷却ファン44の排気側に配置される。これによれば、各放熱フィン431,432に対して、1つの冷却ファン44により冷却空気を送風できる。従って、冷却装置4Aの構成を簡略化でき、製造コストを低減できる。
また、ダクト45内における第1放熱フィン431と第2放熱フィン432との間に冷却ファン44が設けられているので、当該冷却ファン44の駆動によって生じる騒音をダクト45外、ひいては、プロジェクター1A外に漏れにくくすることができる。従って、プロジェクター1Aの低騒音化を図ることができる。
【0048】
第1ヒートパイプ421及び第2ヒートパイプ422は、それぞれ屈曲部42Cにて屈曲しており、これらヒートパイプ421,422の各放熱部42Bに接続される第1放熱フィン431及び第2放熱フィン432は、ダクト45内で対向するように配置されている。これによれば、冷却ファン44により、第1放熱フィン431及び第2放熱フィン432に対して直線的に冷却空気を送風できる。従って、冷却空気の流路が屈曲する場合に比べ、当該冷却空気の風圧及び風量の損失を抑制でき、各放熱フィン431,432の冷却効率を向上でき、ひいては、光源装置31を一層効率よく冷却できる。
【0049】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係るプロジェクターは、前述のプロジェクター1Aと同様の構成及び機能を有する。ここで、当該プロジェクター1Aでは、各ヒートパイプ42における屈曲部42Cの角度は略直角であったが、本実施形態に係るプロジェクターでは、ヒートパイプにおける屈曲部の角度が鈍角である。この点で、本実施形態に係るプロジェクターと、プロジェクター1Aとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図5は、本実施形態に係るプロジェクター1Bの冷却装置4Bを示す斜視図である。また、図6は、当該冷却装置4Bを示す平面図である。
本実施形態に係るプロジェクター1Bは、詳しい図示を省略するが、冷却装置4Aに代えて冷却装置4Bを備える他は、プロジェクター1Aと同様の構成及び機能を有する。
冷却装置4Bは、図5及び図6に示すように、受熱体41、複数のヒートパイプ46、一対の放熱フィン47、冷却ファン44及びダクト45(図5及び図6では図示省略)を備え、冷却対象である光源装置31を冷却する。
【0051】
〔ヒートパイプの構成〕
ヒートパイプ46は、前述のヒートパイプ42と同様に、P方向に沿って配置される。これらヒートパイプ46は、受熱体41の溝部411に熱伝導可能に取り付けられる直線状の受熱部46Aと、放熱フィン47に熱伝導可能に接続される直線状の放熱部46Bと、これら受熱部46A及び放熱部46Bにより挟まれ、かつ、鈍角で屈曲する屈曲部46Cとを有する。この屈曲部46Cの角度は、当該屈曲部46Cから受熱部46Aが延出する方向と、当該屈曲部46Cから放熱部46Bが延出する方向とのなす角のうち、小さい方の角度をいい、本実施形態では、略120度に設定されている。
【0052】
このようなヒートパイプ46は、受熱部46Aに対する放熱部46B及び屈曲部46Cの位置に応じて、第1ヒートパイプ461と、第2ヒートパイプ462とに区分される。
すなわち、受熱部46Aに対してP方向先端側に屈曲部46C及び放熱部46Bが位置するヒートパイプ46が、第1ヒートパイプ461であり、また、受熱部46Aに対してP方向基端側に屈曲部46C及び放熱部46Bが位置するヒートパイプ46が、第2ヒートパイプ462である。
これら第1ヒートパイプ461と第2ヒートパイプ462とは、それぞれの屈曲部46Cから離れるに従って、放熱部46Bにおける屈曲部46C側とは反対側の端部が、互いに離れるように配置されている。
そして、第1ヒートパイプ461の放熱部46Bには、放熱フィン47のうち、第1放熱フィン471が熱伝導可能に接続され、第2ヒートパイプ462の放熱部46Bには、第2放熱フィン472が熱伝導可能に接続される。
【0053】
なお、冷却装置4Bでは、冷却装置4Aと同様に、4本の第1ヒートパイプ461と、4本の第2ヒートパイプ462との合計8本のヒートパイプ46が受熱体41に取り付けられている。これら第1ヒートパイプ461及び第2ヒートパイプ462は、鉛直方向に交互に配列されている。
このように第1ヒートパイプ461及び第2ヒートパイプ462を配列することにより、受熱体41の温度分布の偏り、ひいては、基板311の温度分布の偏りを抑制できる。この他、受熱体41でのヒートパイプ46の配列ピッチに比べ、各放熱フィン47でのヒートパイプ46の配列ピッチが広がるので、各放熱フィン47の放熱効果を向上できる。
【0054】
〔放熱フィンの構成〕
一対の放熱フィン47(471,472)は、鉛直面に沿って配置される複数の板状体47Aが水平方向に沿って、互いに等間隔に複数配列された構成を有する。これら放熱フィン47は、それぞれ同じ構成を有するが、第1放熱フィン471と第2放熱フィン472とは、それぞれ上下が逆となるように配置される。これら放熱フィン47は、前述のヒートパイプ461,462が屈曲形成されていることにより、ダクト45内で対向配置されている。
これら放熱フィン47のうち、本発明の第1放熱部材に相当する第1放熱フィン471は、第2放熱フィン472に対してP方向先端側に位置し、第1放熱フィン471には、第1ヒートパイプ461の放熱部46Bが各板状体47Aを貫通するように接続される。
また、本発明の第2放熱部材に相当する第2放熱フィン472は、第1放熱フィン471に対してP方向基端側に位置し、第2放熱フィン472には、第2ヒートパイプ462の放熱部46Bが各板状体47Aを貫通するように接続される。
そして、各放熱フィン471,472は、第1ヒートパイプ461及び第2ヒートパイプ462から伝導された熱を、各板状体47Aにより放熱する。
【0055】
ここで、板状体47Aは、前述の板状体43Aとは異なり、一対の平面部47A1,47A2と、これら平面部47A1,47A2間を接続する接続部47A3とを有する。
平面部47A1は、P方向に沿うように配置され、第1放熱フィン471ではP方向基端側に位置し、第2放熱フィン472ではP方向先端側に位置する。
平面部47A2は、P方向に沿うように配置され、第1放熱フィン471ではP方向先端側に位置し、第2放熱フィン472ではP方向基端側に位置する。
接続部47A3は、P方向に対して傾斜している。この接続部47A3の傾斜方向は、当該接続部47A3を貫通する放熱部46Bの延出方向(放熱部46Bの軸方向)に対して直交する方向である。
【0056】
以上説明した本実施形態に係るプロジェクター1Bによれば、前述のプロジェクター1Aと同様の効果を奏する他、以下の効果を奏することができる。
冷却装置4Bにおいて、第1放熱フィン471と第2放熱フィン472との間に配置された冷却ファン44が駆動すると、前述のように、吸気口231からダクト45内に冷却空気が導入される。この冷却空気は、P方向に沿って流通して冷却ファン44に吸引される過程で、図6に示すように、第2放熱フィン472の板状体47A間を流通して、当該第2放熱フィン472を冷却する。この際、各板状体47Aの平面部47A1,47A2は、P方向に沿うように配置されており、また、当該P方向に対する接続部47A3の交差角は、鈍角(本実施形態では略150度)であるので、冷却空気は、各板状体47A間を停滞することなく流通できる。
【0057】
第2放熱フィン472を冷却した冷却空気は、冷却ファン44により吸引されて第1放熱フィン471に向けて吐出され、当該第1放熱フィン471の板状体47A間を流通する。この際、前述の第2放熱フィン472と同様に、各板状体47Aの平面部47A1,47A2がP方向に沿うように配置され、また、当該P方向に対する接続部47A3の交差角が鈍角であることにより、冷却空気は、各板状体47A間を停滞することなく流通できる。
従って、第2放熱フィン472及び第1放熱フィン471に対して円滑に冷却空気が流通するので、当該第2放熱フィン472及び第1放熱フィン471を効率よく冷却でき、ひいては、冷却対象である光源装置31を効率よく冷却できる。
【0058】
また、第1ヒートパイプ461及び第2ヒートパイプ462は、屈曲部46Cの角度が鈍角となるように屈曲形成されている。これにより、図6に示すように、受熱体41における溝部411が形成された面の延長面から、各放熱部46Bにおける受熱体41側とは反対側の端部までの寸法Lを、略直角に屈曲形成されたヒートパイプ42を設けた場合に比べて小さくすることができる。従って、当該ヒートパイプ461,462、放熱フィン47及び冷却ファン44を内部に収納するダクト45の内径を小さくすることができるので、冷却装置4B、ひいては、プロジェクター1Bの大型化を抑制できる。
【0059】
加えて、屈曲部46Cの角度が鈍角であることから、当該角度が直角以下である場合に比べて、当該屈曲部46Cが放熱部46Bに変わる部分を受熱体41に近い位置とすることができる。これによれば、放熱部46Bにおいて、受熱体41に近い位置に放熱フィン47を配置させることができる。従って、受熱体41から放熱フィン47への熱の移動経路を短縮できるので、当該受熱体41の冷却を迅速に行うことができ、ひいては、光源装置31を効率よく冷却できる。
【0060】
更に、冷却装置4Bは、鈍角に屈曲する屈曲部46Cの位置が受熱体41の端部ではない構造となっている。これにより、受熱体41の中央領域には、ヒートパイプ46が8本配置され、受熱体41の中央領域から端部までの間(ヒートパイプ46の屈曲部46Cの位置から、当該屈曲部41から受熱部46Aに向かう方向とは反対方向の受熱体41の端部までの間)には、それぞれヒートパイプが4本配置される。このように、受熱体41において温度が高くなる中央領域に、当該受熱体41の端部より多くのヒートパイプ46が存在することで、受熱体41の温度をより均一にし、当該受熱体41の最大温度を下げることができる。
【0061】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、第1ヒートパイプ421,461は、第1放熱フィン431,471に接続され、第2ヒートパイプ422,462は、第2放熱フィン432,472に接続されているとした。しかしながら、本発明はこれに限らない。すなわち、1つの放熱部材に、各ヒートパイプ42,46が熱伝導可能に接続される構成としてもよい。
【0062】
前記各実施形態では、第1放熱部材及び第2放熱部材として、板状体43A,47Aが等間隔に複数配列された放熱フィン43,47を挙げたが、本発明はこれに限らない。すなわち、放熱特性を有する材料、形状及び性質を有するものであれば、放熱部材として採用可能である。例えば、複数の突起を有するヒートシンクを放熱部材として採用してもよい。
【0063】
前記各実施形態では、冷却ファン44は、ダクト45内において一対の放熱フィン43,47の間に配置されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、冷却空気の流路において、一対の放熱フィン43,47に対して当該冷却空気の流通方向先端側(下流側)又は基端側(上流側)に、冷却ファン44が配置されていてもよい。すなわち、各放熱フィン43,47に冷却空気を適切に供給可能であれば、冷却ファン44の配置は適宜設定可能である。
また、ダクト45内の冷却空気の流通方向も、投射光学装置35による光束の投射方向であるP方向に沿う方向でなくてもよい。
【0064】
前記第1実施形態では、ヒートパイプ42の屈曲部42Cの角度は略直角であるとし、前記第2実施形態では、ヒートパイプ46の屈曲部46Cの角度は120度であるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、ヒートパイプにおける屈曲部の角度は、適宜設定してよい。また、当該角度を鈍角に設定する場合でも、ヒートパイプ、放熱フィン及び冷却ファンの配置や、冷却空気の流通方向、更には、投射光学装置による光束の投射方向等に基づいて、適宜設定可能である。
【0065】
前記各実施形態では、第1放熱部材としての第1放熱フィン431,471と、第2放熱部材としての第2放熱フィン432,472とは、ダクト45内で対向するように配置され、これらの間に冷却ファン44が配置されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、第1放熱部材と第2放熱部材とを離間配置し、これら放熱部材を個別に冷却する冷却ファンをそれぞれ設けてもよい。
【0066】
前記第1実施形態では、第1ヒートパイプ421と第2ヒートパイプ422とは、同じ形状及び同じ構成を有し、前記第2実施形態では、第1ヒートパイプ461と第2ヒートパイプ462とは、同じ形状及び同じ構成を有するとした。しかしながら、本発明はこれに限らない。すなわち、第1ヒートパイプと第2ヒートパイプとで、形状及び構成の異なるヒートパイプを用いてもよい。例えば、当該第1ヒートパイプ及び第2ヒートパイプのうちの少なくとも一方に、屈曲部を有しない直線状のヒートパイプを採用してもよい。各放熱フィン43,47についても、それぞれ同じ形状及び構成でなくてもよい。
【0067】
前記各実施形態では、各放熱フィン43,47は、冷却ファン44により供給される冷却空気によって冷却されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、ダクト45内の密閉性等を確保できれば、エチレングリコール等の液状の冷却流体により、当該各放熱フィンを冷却する構成としてもよい。
【0068】
前記各実施形態では、光源装置31は、固体光源を有するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、超高圧水銀ランプ等の光源ランプ及び反射鏡を有する光源装置を採用してもよい。
前記各実施形態では、冷却装置4A,4Bは、冷却対象として光源装置31を冷却するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、他の構成を冷却対象に設定してもよい。例えば、光変調装置、制御装置及び電源装置を冷却対象としてもよい。
【0069】
前記各実施形態では、プロジェクター1A,1Bは、それぞれ液晶パネルを有する3つの光変調装置33を備える構成としたが、本発明はこれに限らない。すなわち、2つ以下、或いは、4つ以上の光変調装置を備えたプロジェクターにも、本発明を適用できる。
また、前記各実施形態では、光変調装置33は、光束入射面と光束射出面とが異なる透過型の液晶パネルを有する構成としたが、光入射面と光射出面とが同一となる反射型の液晶パネルを有する構成としてもよい。
【0070】
前記各実施形態では、液晶パネル及び偏光板を有する光変調装置33を備えたプロジェクター1A,1Bを例示したが、入射される光束を変調して画像情報に応じた画像(光学像)を形成する光変調装置であれば、他の構成の光変調装置を採用してもよい。例えば、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調装置を用いたプロジェクターにも、本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、プロジェクターに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B…プロジェクター、4A,4B…冷却装置、31…光源装置(冷却対象)、33(33R,33G,33B)…光変調装置、35…投射光学装置、44…冷却ファン、45…ダクト、421,461…第1ヒートパイプ、422,462…第2ヒートパイプ、431,471…第1放熱フィン(第1放熱部材)、432,472…第2放熱フィン(第2放熱部材)、42A,46A…受熱部、42B,46B…放熱部、42C,46C…屈曲部、P…投射方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投射するプロジェクターであって、
光源装置と、
前記光源装置から出射された光束を変調する光変調装置と、
変調された前記光束を投射する投射光学装置と、
所定の冷却対象を冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、前記投射光学装置による前記光束の投射方向に沿う複数のヒートパイプを備え、
それぞれの前記ヒートパイプは、
前記冷却対象にて発生された熱が伝導される受熱部と、
前記受熱部に伝導された熱が伝導される放熱部とを有し、
前記複数のヒートパイプには、
前記受熱部に対して前記投射方向先端側に前記放熱部が位置する第1ヒートパイプと、
前記受熱部に対して前記投射方向基端側に前記放熱部が位置する第2ヒートパイプと、が含まれる
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記冷却装置は、それぞれ伝導された熱を放熱する第1放熱部材及び第2放熱部材を備え、
前記第1ヒートパイプの放熱部は、前記第1放熱部材に熱伝導可能に接続され、
前記第2ヒートパイプの放熱部は、前記第2放熱部材に熱伝導可能に接続されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記冷却装置は、
前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材にそれぞれ冷却空気を送風する冷却ファンと、
前記冷却ファン、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材を内部に収納し、前記冷却空気が内部を流通するダクトと、を備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクターにおいて、
前記冷却ファンは、前記第1放熱部材と前記第2放熱部材との間に設けられ、
前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材のうち、
一方は、前記ダクト内において前記冷却ファンの吸気側に配置され、
他方は、前記ダクト内において前記冷却ファンの排気側に配置されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記第1ヒートパイプ及び前記第2ヒートパイプのうち少なくともいずれかは、前記第1放熱部材及び前記第2放熱部材が、前記ダクト内で対向するように屈曲形成されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクターにおいて、
前記第1ヒートパイプ及び前記第2ヒートパイプは、それぞれ前記受熱部と前記放熱部との間に、鈍角で屈曲する屈曲部を有する
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25212(P2013−25212A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161716(P2011−161716)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】