説明

プロジェクタ

【課題】機械的な駆動部を用いずにスペックルノイズを効果的に低減させ、高品質な画像を表示することが可能なプロジェクタを提供すること。
【解決手段】コヒーレント光を射出する光源部である各色光用光源装置11R、11G、11Bと、光源部から射出したコヒーレント光を画像信号に応じて変調する空間光変調部である各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bと、光の偏光状態を変化させる複数の変調領域を備え、空間光変調部から射出した光の偏光状態を複数の変調領域により時間的及び空間的に変化させる偏光変調部である偏光変調用液晶素子20と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ、特に、レーザ光を用いて画像を表示するプロジェクタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタの光源として、レーザ光源を用いる技術が提案されている。プロジェクタの光源として従来用いられているUHPランプと比較すると、レーザ光源は、高い色再現性、瞬時点灯が可能、長寿命である等の利点がある。コヒーレント光であるレーザ光をスクリーン等の拡散面に照射させると、明点及び暗点がランダムに分布するスペックルパターンと呼ばれる干渉模様が現れることがある。スペックルパターンは、拡散面の各点で拡散した光同士がランダムに干渉し合うことにより発生する。画像を表示する際にスペックルパターンが認識されると、ぎらぎらとするちらつき感を観察者へ与えるため、画像観賞へ悪影響を及ぼすこととなる。このため、レーザ光源を用いる場合、スペックルノイズへの対策を講じる必要がある。スペックルノイズの低減について、例えば、特許文献1には、拡散素子を回転又は振動させることによって複数のスペックルパターンを重畳させる技術が提案されている。特許文献1において提案される技術では、複数のスペックルパターンを重畳させ、特定のスペックルパターンを認識させにくくすることで、スペックルノイズを低減させる。
【0003】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、拡散素子を回転又は振動させる機械的な駆動部が必要であると、装置の信頼性の低下や、静粛性の悪化が引き起こされる場合がある。機械的な駆動部に対して、拡散素子に高い耐久性が要求されることとなると、コストが増大することにもなる。このように、従来の技術によると、機械的な駆動部を用いずにスペックルノイズを低減させることが困難であるという問題を生じる。本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、機械的な駆動部を用いずにスペックルノイズを効果的に低減させ、高品質な画像を表示することが可能なプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るプロジェクタは、コヒーレント光を射出する光源部と、光源部から射出したコヒーレント光を画像信号に応じて変調する空間光変調部と、光の偏光状態を変化させる複数の変調領域を備え、空間光変調部から射出した光の偏光状態を複数の変調領域により時間的及び空間的に変化させる偏光変調部と、を有することを特徴とする。
【0006】
光の偏光状態を時間的に変化させるとは、プロジェクタからの投写光により形成される画像中の特定位置P1に着目する場合に、特定位置P1における光の偏光状態が時間の経過とともに変化していることをいうものとする。光の偏光状態を空間的に変化させるとは、ある時間T1に着目する場合に、画像中の特定位置P1における光と、特定位置P1以外の特定位置P2における光との間において偏光状態が変化していることをいうものとする。偏光変調部は、光の偏光状態を時間的及び空間的に変化させることにより、スペックルパターンを変化させる。ランダムに生じさせた複数のスペックルパターンを重畳させることにより、スペックルノイズを効果的に低減させることができる。プロジェクタは、光の偏光状態を変化させる偏光変調部を用いることで、スペックルノイズを低減させるための機械的な駆動部を不要とすることも可能である。これにより、機械的な駆動部を用いずにスペックルノイズを効果的に低減させ、高品質な画像を表示することが可能なプロジェクタを得られる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様としては、偏光変調部は、液晶素子を有することが望ましい。液晶素子は、変調領域ごとの印加電圧を制御することにより、液晶素子から射出する光の偏光状態を変調領域ごとに変化させる。これにより、光の偏光状態を時間的及び空間的に変化させることができる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様としては、空間光変調部により変調された光を投写する投写光学系を有し、偏光変調部は、投写光学系に設けられることが望ましい。これにより、空間光変調部から射出した光の偏光状態を変化させることができる。また、投写光学系の内部に偏光変調部を配置することにより、投写光学系の外部に偏光変調部を配置する場合よりもプロジェクタを小型にすることもできる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、偏光変調部は、投写光学系の絞りの位置に配置されることが望ましい。投写光学系のうち最も光が収束する絞りの位置に偏光変調部を設けることにより、偏光変調部を小型にすることができる。偏光変調部を小型にできることで、投写光学系のうち絞り以外の位置に偏光変調部を配置する場合に比較して、投写光学系を小型にすることもできる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、空間光変調部により形成された像の中間像を形成する結像光学系を有し、偏光変調部は、中間像の位置に配置されることが望ましい。これにより、空間光変調部から射出した光の偏光状態を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係るプロジェクタ10の構成を模式的に表したものである。プロジェクタ10は、スクリーン23に光を投写し、スクリーン23で反射する光を観察することで画像を鑑賞するフロント投写型のプロジェクタである。赤色(R)光用光源装置11R、緑色(G)光用光源装置11G、青色(B)光用光源装置11Bは、コヒーレント光であるレーザ光を射出する光源部として機能する。
【0013】
R光用光源装置11Rは、レーザ光であるR光を射出するレーザ光源であって、例えば半導体レーザを備える。拡大レンズ12は、R光用光源装置11Rからのレーザ光の光束を拡大させる。回折光学素子13は、拡大レンズ12からのレーザ光を回折させ、回折光を射出する。回折光学素子13は、照射領域の整形及び拡大、照射領域における光量分布の均一化を行う。回折光学素子13としては、例えば、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)を用いる。R光用空間光変調装置14Rは、回折光学素子13からのR光を画像信号に応じて変調する空間光変調部として機能する。R光用空間光変調装置14Rで変調された光は、クロスダイクロイックプリズム15へ入射する。
【0014】
G光用光源装置11Gは、レーザ光であるG光を射出するレーザ光源であって、例えば半導体レーザを備える。G光用空間光変調装置14Gは、G光用光源装置11Gから拡大レンズ12及び回折光学素子13を経たG光を画像信号に応じて変調する空間光変調部として機能する。G光用空間光変調装置14Gで変調された光は、クロスダイクロイックプリズム15のうちR光が入射する面とは異なる面へ入射する。
【0015】
B光用光源装置11Bは、レーザ光であるB光を射出するレーザ光源であって、例えば半導体レーザを備える。B光用空間光変調装置14Bは、B光用光源装置11Bから拡大レンズ12及び回折光学素子13を経たB光を画像信号に応じて変調する空間光変調部として機能する。B光用空間光変調装置14Bで変調された光は、クロスダイクロイックプリズム15のうちR光が入射する面、G光が入射する面とは異なる面へ入射する。各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bは、透過型液晶表示装置である。透過型液晶表示装置としては、例えば、高温ポリシリコンTFT液晶パネル(High Temperature Polysilicon;HTPS)を用いる。
【0016】
クロスダイクロイックプリズム15は、互いに略直交させて配置された2つのダイクロイック膜16、17を有する。第1ダイクロイック膜16は、R光を反射し、G光及びB光を透過させる。第2ダイクロイック膜17は、B光を反射し、R光及びG光を透過させる。クロスダイクロイックプリズム15は、それぞれ異なる方向から入射したR光、G光及びB光を合成し、投写レンズ18の方向へ射出する。投写レンズ18は、クロスダイクロイックプリズム15で合成された光をスクリーン23に向けて投写する投写光学系である。
【0017】
投写レンズ18は、前群レンズ19及び後群レンズ21により構成される。前群レンズ19は、絞り22の射出側に配置されている。後群レンズ21は、絞り22の入射側に配置されている。前群レンズ19及び後群レンズ21は、テレセントリック光学系を構成する。後群レンズ21へ入射する光の主光線は、投写レンズ18の光軸に略平行である。絞り22は、例えば、後群レンズ21の後側焦点の位置に設けられている。投写レンズ18において、後群レンズ21からの光束は、絞り22の位置で最も収束する。
【0018】
偏光変調用液晶素子20は、投写レンズ18の絞り22の位置に配置されている。偏光変調用液晶素子20は、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bから射出した光の偏光状態を変化させる偏光変調部として機能する。投写レンズ18のうち最も光束が収束する絞り22の位置に偏光変調用液晶素子20を設けることにより、偏光変調用液晶素子20を小型にすることができる。偏光変調用液晶素子20を小型にできることで、投写レンズ18のうち絞り22以外の位置に偏光変調用液晶素子20を配置する場合に比較して、投写レンズ18を小型にすることもできる。なお、前群レンズ19及び後群レンズ21は、絞り22の位置で光束を収束可能であれば良く、テレセントリック光学系を構成する場合に限られない。
【0019】
図2は、偏光変調用液晶素子20の平面概略構成を示す。偏光変調用液晶素子20は、16個の変調領域25を有する。変調領域25は、縦に4個、横に4個のマトリクス状に配置されている。各変調領域25は、互いに独立して光の偏光状態を変化させる。
【0020】
図3は、偏光変調用液晶素子20の要部構成を説明するものである。偏光変調用液晶素子20は、アレイ基板31及び対向基板32により液晶部33を封止して構成されている。対向基板32は、アレイ基板31に対して光が入射する側に配置されている。液晶部33は、ネマティック液晶等の棒状の液晶分子からなる液晶材料である。アレイ基板31には、薄膜トランジスタ35及び透明電極36が形成されている。液晶部33を挟んで、アレイ基板31の透明電極36と対向する位置には、不図示の透明電極が形成されている。偏光変調用液晶素子20は、透明電極36が設けられている領域において光を透過させる。偏光変調用液晶素子20のうち、光を透過させる各領域は、図2に示す変調領域25を構成する。図3は、偏光変調用液晶素子20のうち、4個の変調領域25が設けられた部分を示している。
【0021】
対向基板32の透明電極のうち液晶部33側、アレイ基板31の透明電極36のうち液晶部33側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された不図示の配向膜がそれぞれ設けられている。対向基板32側の配向膜、アレイ基板31側の配向膜は、ラビング方向が互いに直交するように配置されている。これにより、液晶部33の液晶分子は、対向基板32側とアレイ基板31側とで長軸方向が90度ねじれた状態で保持される。
【0022】
信号線34及び走査線37は、アレイ基板31に設けられている。信号線34は、薄膜トランジスタ35のソースに接続されている。走査線37は、薄膜トランジスタ35のゲートに接続されている。偏光変調用液晶素子20は、変調領域25ごとに設けられた薄膜トランジスタ35を介して、液晶部33へ印加する電圧を変調領域25ごとに調整するアクティブマトリクス方式の駆動を採用している。なお、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bとして用いられる透過型液晶表示装置の入射側及び出射側には偏光板が設けられるのに対して、偏光変調用液晶素子20には、かかる偏光板は不要である。
【0023】
液晶部33への電圧の印加を停止させる場合、液晶分子は、対向基板32及びアレイ基板31の間で長軸方向が対向基板32及びアレイ基板31に対して略平行であり、かつ一様にねじれた配向状態となる。この場合、液晶部33へ入射した直線偏光の振動面は、液晶分子の配向状態に応じて回転する。液晶部33へ入射した光は、直線偏光の振動面が回転することにより、偏光状態が変化する。液晶部33へ最大電圧を印加する場合、液晶分子は、液晶部33へ印加される電界に対して長軸方向が平行となる。この場合、液晶部33へ入射した光は、偏光状態が殆ど変化せずに射出する。偏光変調用液晶素子20は、液晶部33へ印加する電圧をゼロから最大電圧の間で調整することにより、液晶分子の配向状態を適宜変化させ、光の偏光状態を調整する。偏光変調用液晶素子20は、変調領域25ごとに印加電圧を調整することにより、変調領域25ごとに光の偏光状態を調整する。
【0024】
なお、偏光変調用液晶素子20は、ラビング方向が互いに直交するように対向基板32側の配向膜、及びアレイ基板31側の配向膜が設けられる構成に限られず、ラビング方向が平行になるように配向膜が設けられる構成としても良い。この場合、液晶部33への電圧の印加を停止させる場合、液晶分子は、ラビング方向に長軸方向が平行となる。この場合、液晶分子の長軸方向に対して振動面が傾けられた直線偏光を液晶部33へ入射させることにより、直線偏光の振動面を回転させることができる。
【0025】
図4は、偏光変調用液晶素子20による光の偏光状態の調整について説明するものである。各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bから射出する光は、特定の振動方向の直線偏光である。偏光変調用液晶素子20は、液晶の性質である旋光性により、直線偏光の振動面を回転させる。偏光変調用液晶素子20は、直線偏光の振動面を回転させる程度に応じて、振動方向が調整された直線偏光を射出する。図中、両矢印は、直線偏光を射出することを表している。両矢印の向きは、直線偏光の振動方向を表している。
【0026】
また、偏光変調用液晶素子20は、液晶の性質である複屈折性により、所定の振動方向の直線偏光について位相を遅らせる。偏光変調用液晶素子20は、振動方向が互いに直交する直線偏光成分について位相差を付与することにより、円偏光や楕円偏光を射出する。図中、円形の矢印は、円偏光を射出することを表している。楕円形状の矢印は、楕円偏光を射出することを表している。円偏光及び楕円偏光は、位相差を付与する態様に応じて、右旋回、左旋回のいずれかとする。楕円偏光は、直線偏光成分の偏りに応じて、楕円の縦横比を変化させる。
【0027】
偏光変調用液晶素子20は、複数の変調領域25において、液晶部33へ印加する電圧をそれぞれ時間的に変化させることにより、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bから射出した光の偏光状態を時間的及び空間的に変化させる。ここで、光の偏光状態の変化とは、直線偏光、円偏光、及び楕円偏光のいずれかへの変化、直線偏光の場合は振動方向の変化、円偏光の場合、旋回方向の変化、楕円偏光の場合、旋回方向の変化、及び楕円の縦横比の変化の全てをいうものとする。また、変調領域25から射出する光の偏光状態が、偏光変調用液晶素子20へ入射する際の偏光状態と同一であるタイミングがある場合も含むものとする。
【0028】
光の偏光状態を時間的に変化させるとは、プロジェクタ10からの投写光により形成される画像中の特定位置P1に着目する場合に、特定位置P1における光の偏光状態が時間の経過とともに変化していることをいうものとする。光の偏光状態を空間的に変化させるとは、ある時間T1に着目する場合に、画像中の特定位置P1における光と、特定位置P1以外の特定位置P2における光との間において偏光状態が変化していることをいうものとする。なお、全てのタイミングにおいて、各変調領域25から射出する光の偏光状態を全て異ならせる必要があるわけではなく、あるタイミングにおいて二以上の変調領域25から同じ偏光状態の光を射出する場合も含まれるものとする。偏光変調用液晶素子20は、効果的にスペックルノイズを低減させるには、特定の複数の偏光状態を変調領域25間で順次入れ換えるのみではなく、偏光状態をランダムに変化させることが望ましい。
【0029】
このようにして、偏光変調用液晶素子20は、光の偏光状態を複数の変調領域25により時間的及び空間的に変化させることにより、スペックルパターンを変化させる。ランダムに生じさせた複数のスペックルパターンを重畳させることにより、スペックルノイズを効果的に低減させることができる。プロジェクタ10は、光の偏光状態を変化させる偏光変調用液晶素子20を用いることで、スペックルノイズを低減させるための機械的な駆動部を不要とすることも可能である。これにより、機械的な駆動部を用いずにスペックルノイズを効果的に低減させ、高品質な画像を表示できるという効果を奏する。
【0030】
偏光変調用液晶素子20は、例えば、1秒間に60回以上の周期で光の偏光状態を切り換えることが望ましい。これにより、人間が特定のスペックルパターンを認識するよりも早くスペックルパターンを変化させることを可能とし、スペックルノイズを効果的に低減させることができる。偏光変調用液晶素子20は、アクティブマトリクス方式で駆動する構成に限られず、パッシブマトリクス方式で駆動する構成であっても良い。パッシブマトリクス方式による駆動を採用する場合、薄膜トランジスタ35、信号線34、及び走査線37に代えて、アレイ基板31側と対向基板32側とで互いに直交するように形成された複数の電極を用いる。この場合、変調領域25ごとに電圧を調整するための構成を簡易にできることから、偏光変調用液晶素子20の構成を簡易にでき、製造コストを低減できる利点がある。アクティブマトリクス方式による駆動を採用する場合、パッシブマトリクス方式による駆動に比べて、液晶の応答時間を短くできる利点がある。
【0031】
偏光変調用液晶素子20は、複数の変調領域25を有するものであれば良く、16個の変調領域25を有するものに限られない。変調領域25の数は、スペックルノイズを効果的に低減可能であれば良く、適宜決定することができる。偏光変調用液晶素子20は、変調領域25の数が少ないほど製造を簡易にでき、かつ薄膜トランジスタ35等が設けられた部分へ光が入射することによる光の損失を低減できる利点がある。また、偏光変調用液晶素子20は、変調領域25の数が多いほど、スペックルパターンをランダムに変化させ、効果的にスペックルノイズを低減させることができる利点がある。
【0032】
偏光変調用液晶素子20は、投写レンズ18の絞り22の位置に配置される場合に限られない。偏光変調用液晶素子20は、投写レンズ18のうち絞り22以外の位置に配置することとしても良い。例えば、偏光変調用液晶素子20は、投写レンズ18の瞳位置に配置することとしても良い。プロジェクタ10は、投写レンズ18の内部に偏光変調用液晶素子20を配置することにより、投写レンズ18の外部に偏光変調用液晶素子20を配置する場合よりも小型にできる利点がある。さらに、偏光変調用液晶素子20は、投写レンズ18に設ける場合に限られない。偏光変調用液晶素子20は、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bから射出した光の光路中であれば、いずれの位置に配置することとしても良い。
【0033】
本実施例のように、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bからの光をクロスダイクロイックプリズム15で合成する構成の場合、クロスダイクロイックプリズム15より射出側に偏光変調用液晶素子20を配置することが望ましい。これにより、1つの偏光変調用液晶素子20により各色光の偏光状態を変化させることができる。偏光変調用液晶素子20は、特定の振動方向の直線偏光のみを入射させる場合に限られず、例えば、偏光状態がランダムな光を入射させる場合も、偏光状態を変化させることによりスペックルノイズを効果的に低減させることができる。
【0034】
プロジェクタ10は、空間光変調装置として透過型液晶表示装置を用いる構成に限られない。空間光変調装置としては、反射型液晶表示装置(Liquid Crystal On Silicon;LCOS)、DMD(Digital Micromirror Device)、GLV(Grating Light Valve)等を用いても良い。プロジェクタ10は、色光ごとに空間光変調装置を備える構成に限られない。プロジェクタ10は、一つの空間光変調装置により二つ又は三つ以上の色光を変調する構成としても良い。プロジェクタ10は、空間光変調装置を用いる場合に限られない。プロジェクタ10は、画像情報を持たせたスライドを用いるスライドプロジェクタであっても良い。プロジェクタ10は、スクリーンの一方の面に光を供給し、スクリーンの他方の面から射出する光を観察することで画像を鑑賞する、いわゆるリアプロジェクタであっても良い。
【実施例2】
【0035】
図5は、本発明の実施例2に係るプロジェクタの特徴的部分を模式的に表したものである。本実施例は、中間像の位置に配置された偏光変調用液晶素子44を有することを特徴とする。上記実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。結像光学系41及び偏光変調用液晶素子44は、クロスダイクロイックプリズム15及び投写レンズ45の間の光路中に設けられている。結像光学系41は、第1レンズ42及び第2レンズ43を有する。結像光学系41は、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bにより形成された像の中間像を形成する。
【0036】
第1レンズ42及び第2レンズ43は、テレセントリック光学系を構成する。第1レンズ42へ入射する光の主光線は、投写レンズ45の光軸に略平行である。第2レンズ43から射出する光の主光線は、投写レンズ45の光軸に略平行である。偏光変調用液晶素子44は、結像光学系41により形成される中間像の位置に配置されている。偏光変調用液晶素子44は、各色光用空間光変調装置14R、14G、14Bから射出した光の偏光状態を複数の変調領域25(図2参照)により時間的及び空間的に変化させる偏光変調部として機能する。偏光変調用液晶素子44は、配置された位置が異なる他は、上記実施例1の偏光変調用液晶素子20(図2、図3参照)と同様の構成を有する。投写レンズ45は、偏光変調用液晶素子44からの光を不図示のスクリーンへ向けて投写する投写光学系である。
【0037】
本実施例の場合も、機械的な駆動部を用いずにスペックルノイズを効果的に低減させ、高品質な画像を表示することができる。なお、結像光学系41は、中間像を形成可能であれば良く、テレセントリック光学系を構成する場合に限られない。
【0038】
上記各実施例において、光源部は、半導体レーザを備えるものである場合に限られず、固体レーザ、液体レーザ、ガスレーザ等を備えるものであっても良い。プロジェクタは、光源部としてレーザ光源を用いる場合に限られない。プロジェクタは、光源部として、例えば、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)等の固体光源を用いる構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1に係るプロジェクタの構成を模式的に表した図。
【図2】偏光変調用液晶素子の平面概略構成を示す図。
【図3】偏光変調用液晶素子の要部構成を説明する図。
【図4】偏光変調用液晶素子による光の偏光状態の調整について説明する図。
【図5】本発明の実施例2に係るプロジェクタの特徴的部分を模式的に表した図。
【符号の説明】
【0040】
10 プロジェクタ、11R R光用光源装置、11G G光用光源装置、11B B光用光源装置、12 拡大レンズ、13 回折光学素子、14R R光用空間光変調装置、14G G光用空間光変調装置、14B B光用空間光変調装置、15 クロスダイクロイックプリズム、16 第1ダイクロイック膜、17 第2ダイクロイック膜、18 投写レンズ、19 前群レンズ、20 偏光変調用液晶素子、21 後群レンズ、22 絞り、23 スクリーン、25 変調領域、31 アレイ基板、32 対向基板、33 液晶部、34 信号線、35 薄膜トランジスタ、36 透明電極、37 走査線、41 結像光学系、42 第1レンズ、43 第2レンズ、44 偏光変調用液晶素子、45 投写レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を射出する光源部と、
前記光源部から射出した前記コヒーレント光を画像信号に応じて変調する空間光変調部と、
光の偏光状態を変化させる複数の変調領域を備え、前記空間光変調部から射出した光の偏光状態を前記複数の変調領域により時間的及び空間的に変化させる偏光変調部と、を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記偏光変調部は、液晶素子を有することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記空間光変調部により変調された光を投写する投写光学系を有し、
前記偏光変調部は、前記投写光学系に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記偏光変調部は、前記投写光学系の絞りの位置に配置されることを特徴とする請求項3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記空間光変調部により形成された像の中間像を形成する結像光学系を有し、
前記偏光変調部は、前記中間像の位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−198637(P2009−198637A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38378(P2008−38378)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】