説明

プロスタグランジン組成物および血管痙攣の治療のためのその使用

血管痙攣の治療のための組成物および方法が提供され、それは、罹患した組織に半固体血管作用性プロスタグランジン組成物のある量を適用することを含む。また再移植身体部分における微小循環を改善する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2003年4月2日に出願された米国仮出願第60/459,896号の利益を請求する。上記出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
血管痙攣は血管の収縮であり、血管により供給される組織の虚血をもたらす。動脈、静脈および静脈移植片における長期の痙攣は20年間以上にわたり顕微手術における生理学的合併症として報告されている(Buncke,H.J.,Microsurgery:Transplantation−Replantation,on−line edition,Chapter 36,http//buncke.org/extbook.html,accessed December 13,2002)。血管痙攣は内因性の平滑筋の収縮、局所のノルアドレナリンの代謝、神経原性およびホルモン性の過程およびプロスタグランジン代謝を含むいくつかの過程から生じる。局所薬剤、例えば硫酸マグネシウム、リドカイン、パパベリンおよびクロルプロマジンは血管痙攣を良好に軽減したと報告されている。血管痙攣の軽減のための他の報告されている方法は神経ブロック、全身アドレナリン作働薬および全身血管拡張剤、例えばニトロプルシドナトリウムを包含する(Buncke,on−line edition,http//buncke.org/book/ch36/ch36 2.html)。プロスタグランジン機能の修飾物質、交感神経遮断薬、カルシウムチャンネルブロッカーおよび多くの他の薬剤にとっての役割を見出すための実験は、一般的には明確に適用できるモデルや再生可能な方法で良い結果をもたらしていない(Buncke,on−line edition,http//buncke.org/book/ch36/ch36 5.html)。血管痙攣は風邪、機械的外傷または化学的メディエーター、例えばアドレナリンにより発現される場合がある。
【0003】
時間内に循環が回復しない場合、再灌流傷害により組織の損傷が起こる場合がある。再灌流傷害は総虚血の一定期間に続く再灌流の後に観察される細胞の変化および組織の損傷を指す。四肢の再移植、臓器移植、遊離皮弁組織再構築および心筋梗塞や卒中であっても、これらは全て、血流が回復した後の再灌流傷害による実質欠損をもたらす場合がある間隔組織虚血の臨床例である。無再流動現象としてその全臨床範囲において観察される組織再灌流傷害は再灌流への炎症応答と考えられ、最終的には組織の死滅をもたらす。
【0004】
プロスタグランジンEは下記式:
【化1】

【0005】
により示される20炭素原子の脂肪酸であるプロスタン酸の誘導体であり、そして、例えばChinoin PharmaceuticalおよびChemical Works Ltd.(Budapest,Hungary)より「Alprostadil USP」の名称で、Pharmacia & Upjohnより「Caverject」の名称で販売されている。アルファ−シクロデキストリンと複合化されたプロスタグランジンEはアルプロスタチルアルファデクスとしてOno Pharmacueticals(Japan)から、そして注射用形態においてはSchwarz Pharma(Germany)の「Edex(登録商標)」または「Viradex(登録商標)」の名称のものが入手可能である。
【0006】
プロスタグランジンEは開放された血管の維持のため、従ってその他の疾患のなかでも末梢血管疾患の治療のために有用な血管拡張剤である。プロスタグランジンEの経皮送達から得られる潜在的な利益は長期にわたり認識されているが、プロスタグランジン送達のための局所用組成物の開発にあたるこれまでの研究は十分成功していない。プロスタグランジン製剤を含む大部分の薬剤は単独で作用する場合は、他の薬剤送達経路で得られるものに匹敵する薬剤濃度水準を与えるほど十分には皮膚に透過しない。この問題点を克服するために局所用薬剤処方は典型的には皮膚浸透増強剤を含有する。皮膚浸透増強剤はまた吸収増強剤、加速剤、アジュバント、可溶化剤、吸着促進剤等とも称される。名称にかかわらず、このような薬剤は皮膚を通過する薬剤の吸収を改善する役割を果たす。理想的な浸透増強剤は皮膚を通過する薬剤の流入を増大させるのみならず、皮膚を刺激、感作または損傷することなくそれを行う。更にまた、理想的な浸透増強剤は使用可能な剤形(例えばクリームまたはゲル)の物理的な品質または局所用組成物の化粧品としての品質に悪影響を与えてはならない。
【0007】
皮膚を経由する薬剤の浸透の速度の増大における有効性について広範な種類の化合物が評価されている。例えば種々の皮膚浸透増強剤の使用および試験を検討しているPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I. and Smith H.E.(eds.),CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL.(1995)およびBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,IL.(1997)を参照できる。
【0008】
発明の開示
本発明者等は、浸透増強剤を含むプロスタグランジン組成物の投与が血管痙攣における血管の収縮を軽減し血流を回復させることを発見した。方法および組成物は再移植手術の間またはその後に起こる血管痙攣を含む数種の状態における血管痙攣の軽減のために有用である。別の態様において、本発明は再移植された身体部分における顕微手術を向上させるための方法および組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は組織虚血を治療する方法を提供する。更に別の実施形態において、本発明は再灌流傷害を防止するための組成物および方法を提供する。
【0009】
1つの実施形態においては、本発明は血管痙攣の治療が必要な患者の組織の領域に半固体のプロスタグランジン組成物の有効量を適用する工程を含むそのような治療を必要とする対象におけるそのような治療の方法を提供し、ここで、組成物は血管作用性プロスタグランジン;多糖類ガムおよびポリアクリル酸重合体よりなる群から選択される重合体濃厚化剤;脂肪族C〜Cアルコール、脂肪族C〜C30エステルおよびこれらの混合物よりなる群から選択される親油性成分;水、および、約3〜約7.4の範囲で組成物に緩衝pH値を与える緩衝系を含む。特に好ましい実施形態においては、組成物は更に浸透増強剤を含む。好ましい実施形態において、本発明は、血管作用性プロスタグランジンの有効量、アルキル−(N−置換アミノ)アルカノエート、アルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート、(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエート、(N,N−ジ置換アミノ)アルカノールアルカノエート、薬学的に許容されるその塩およびその混合物よりなる群から選択される浸透増強剤;ポリアクリル酸重合体、多糖類ガム、修飾多糖類ガムおよびこれらの混合物よりなる群から選択される重合体濃厚化剤;親油性成分;水、および、組成物のpHを約3〜約7.4とする緩衝系を含む組成物を提供する。組成物は皮膚に局所適用するか、非経口(例えば皮下)または直接、曝露組織、例えば手術または創傷治療中の血管の血管外膜(extima)に適用してよい。
【0010】
血管作用性プロスタグランジンはPGE、PGA、PGB、PGF1α、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGA、PGB、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGF3α、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよび混合物よりなる群から選択される。好ましくは、血管作用性プロスタグランジンはプロスタグランジンE、プロスタグランジンE、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよびその混合物よりなる群から選択される。好ましい実施形態においては、血管作用性プロスタグランジンはPGEである。血管作用性プロスタグランジンがPGEである場合、適用当たりの用量は少なくとも約0.08mgPGEが適当であり、好ましくは約0.08mg〜約0.64mgPGEである。
【0011】
一部の好ましい実施形態においては、シアシニング多糖類ガムまたはシアシニングポリアクリル酸重合体を含むことが適当な組成物は、非ニュートンレオロジー特性を示す。1つの実施形態においては、組成物はチクソ性である。別の実施形態においては組成物は擬似可塑性である。好ましい実施形態においては、組成物は約5000ポアズ(cps)〜約20000cps、より好ましくは約7000cps〜約13000cpsの粘度を有する。
【0012】
好ましい実施形態においては、シアシニング多糖類ガムはガラクトマンナンガムまたは修飾ガラクトマンナンガムである。好ましい修飾ガラクトマンナンガムは修飾グアガムである。1つの実施形態においては、浸透増強剤はドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネートまたは薬学的に許容されるその塩である。別の実施形態においては、浸透増強剤はラウリン酸、イソプロピルミリステートおよびトリエタノールアミンの混合物を含む。1つの実施形態において、親油性成分は少なくとも1つの脂肪族C〜C30エステルを含む。好ましい実施形態においては、親油性成分はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびその混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む。別の実施形態においては、親油性成分はグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチン、トリステアリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む。
【0013】
典型的には、酸性緩衝系は約3〜約7.4の範囲、より好ましくは約3.0〜約6.5、最も好ましくは約3.5〜約6.0の範囲で組成物に緩衝pH値を与える。特定の実施形態においては、組成物は更にスクロースエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、長鎖アルコールおよびグリセリルエステルよりなる群から選択される乳化剤を含む。適宜、乳化剤はグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチン、トリステアリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む。場合により、組成物は更に芳香剤を含む。一部の実施形態においては、組成物は更に組成物の総重量を基にしてミルテノール約5%までを含む。適宜、組成物は更に保存料を含む。1つの実施形態においては、組成物は更に局所麻酔剤を含む。
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明は本発明の組成物を準備すること、罹患した組織の表面に組成物を適用すること、および、場合により、罹患した組織に供給する血管の血管外膜に組成物を適用することによる、虚血組織の再灌流傷害を防止する方法を提供する。好ましい実施形態においては、組織への血管灌流容量は組成物の適用後、30分以内、より好ましくは10分以内、最適には10分未満で正常値に戻る。別の態様において、本発明は血管痙攣の治療のため、特に再移植身体部分における局所微小循環の向上のため、または再灌流傷害の防止のための医薬の製造に有用な組成物を提供する。
【0015】
他の、または、これ以上の目標、目的、特徴、利点、実施形態等は本明細書および添付の請求項から当業者には自明である。
【0016】
発明の詳細な記述
血管痙攣は指、腕および脚のような身体部分の再移植の成功を制限するよく知られた問題である。顕微手術を実施して切断された血管を再連結した場合も、血管痙攣は手術中に外科医の縫合する能力を損なう場合があり、そして再付着した四肢への術後の血流をブロックする場合がある。血管痙攣が顕微手術の前に生じた場合、血管は剛直化して外科医は吻合不能となる。血管痙攣が顕微手術後に起これば、吻合の一側面で血管が剛直化し血流がブロックされる。
【0017】
血管拡張剤を用いた現在の治療は約20%の成功率を有しており、効果は30〜60分以降には観察されない。現在の治療法が失敗した場合、血管痙攣の領域を超えた虚血による組織の損傷は再付着した四肢の損失をもたらす。このような場合、外科医は四肢を切断しなければならず、対象に更に苦痛をもたらし、さらなる費用および入院期間が必要となってしまう。
【0018】
一般的に、本発明の方法および局所用プロスタグランジン組成物を用いた治療は約5分以内に血管痙攣の領域を通過する血流を増大させる。治療は早期の臨床試験において、高い成功率を有し、約100%の有効性を示す。これらの試験において、対象はBeijing Jishuitan Hospitalにおいて治療および試験した患者であった。一般的に自動車または工場での事故により切断された患者の腕、脚または指は動脈吻合のための顕微手術を用いて再付着(再移植)されている。
【0019】
定義
特段の記載が無い限り、明細書および請求項を含む本出願において使用される以下の用語は以下に記載する定義を有するものとする。本明細書および請求項において、単数表記「a」、「an」、「the」は、内容が明らかに別途指示されるものでない限り、複数表記を含むものとする。
【0020】
「アルキル」とは、特段の記載が無い限り炭素原子1〜20を有する炭素および水素原子のみよりなる1価の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、エイコシル等を含むが、これらに限定されない。
【0021】
「低級アルキル」とは特段の記載が無い限り炭素原子1〜6個を有する炭素および水素原子のみよりなる1価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基である。低級アルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、n−ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0022】
「低級アルコキシ」とはRが上記の通り定義される低級アルキル基である−O−R基を意味する。低級アルコキシ基の例はメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0023】
「ハロゲン」とはフルオロ、ブロモ、クロロおよび/またはヨード基である。
【0024】
「任意の」または「場合により」とは、後に記載する事象または状況が起こってもよいが必然ではないこと、および、その記述がその事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば「任意の結合」とはその結合が存在してもしなくてもよいこと、および、その記述が単結合、二重結合または三重結合を含むことを意味する。
【0025】
「薬学的に許容される」とは、一般的に安全で非毒性であり、生物学的にも、そして他の面においても望ましくないものではない医薬組成物を調製する場合に有用であることを意味し、そして、獣医科用および人間用の医薬品用途のために許容されるものを包含する。
【0026】
化合物の「薬学的に許容される塩」とは、上記定義の通り薬学的に許容され、そして親化合物の望ましい薬理学的活性を保有する塩を意味する。このような塩には下記のもの、即ち:
1.無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等から形成した;または、有機酸、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ケイヒ酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、o−(ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−1−カルボン酸、4,4’−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、3−フェニルプロピオン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、t−ブチル酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリメチル酢酸等から形成された酸付加塩;または、
2.親化合物中に存在する酸性のプロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオンで置き換えられるか;または有機または無機の塩基と配位している場合に形成される塩、
が包含される。許容される有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、メチルアミン、エチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヒドロエチルアミン、モルホリン、ピペラジンおよびグアニジン等を包含する。許容される無機の塩基は水酸化アルミニウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびヒドラジンを包含する。好ましい薬学的に許容される塩は塩酸およびトリフルオロ酢酸から形成された塩である。
【0027】
「対象」とは哺乳類および非哺乳類を意味する。「哺乳類」とは、哺乳綱のクラスの何れかのメンバー、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;牧場動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギおよびブタ;家畜、例えばウサギ、イヌおよびネコ;実験動物、例えばげっ歯類、例えばラット、マウスおよびモルモット等を意味する。非哺乳類の例は例えばトリ等であるが、これらに限定されない。「対象」という用語は特定の年齢および性別を指すものではない。
【0028】
「治療有効量」とは疾患を治療するために対象に投与された場合に疾患のそのような治療を行うのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は化合物、治療すべき疾患の状態、重症度または治療すべき疾患、対象の年齢および相対的健康状態、投与の経路および形態、担当の医師および獣医の判断および他の要因により変動する。
【0029】
「薬理学的作用」という用語は、本明細書においては治療の意図する目的を達成する対象にもたらされる作用を包含する。1つの好ましい実施形態において、薬理学的作用は治療すべき対象の血管痙攣の症状が予防、軽減または低減されることを意味する。例えば、薬理学的作用は治療される対象における血管痙攣の予防または低減をもたらすものである。
【0030】
「病状」とは何れかの疾患、状態、症状または徴候を意味する。
【0031】
疾患を「治療すること」または「治療」とは、下記:
1.病状に曝露されるか、その素因があるが病状の症状を経験または呈していない対象において病状を予防すること、即ち、病状の臨床症状が発生しないようにすること、
2.病状を抑制すること、即ち、病状またはその臨床症状の発生を停止させること、または、
3.病状を軽減すること、即ち、病状またはその臨床症状の一時的または持続的な退行をもたらすこと、
を包含する。
【0032】
「プロドラッグ」とは、所望の薬理学的作用をもたらすために、投与後に患者によりインビボで代謝されて化合物の薬理学的に活性な形態となる化合物の薬理学的に不活性な形態を意味する。対象への投与の後、化合物の薬理学的に不活性な形態は生物学的な液体または酵素の影響下インビボで化合物の薬理学的に活性な形態に変換される。多くの化合物について代謝は主に肝臓で起こるが、他の組織および臓器のほぼ全て、特に肺は多様な程度の代謝を行うことができる。化合物のプロドラッグの形態は例えば生体利用性を向上させるため、苦味のような不快な特徴をマスキングするため、静脈内投与のために溶解度を改変するため、または、化合物の部位特異的送達を行うために利用してよい。本明細書に記載する化合物に言及する場合は、化合物のプロドラッグ形態も包含するものとする。
【0033】
好ましい実施形態においては、医薬組成物は少なくとも1つの血管作用性プロスタグランジン、好ましくはプロスタグランジンE、浸透増強剤、重合体濃厚化剤、親油性成分、水および約3〜約7.4の範囲で組成物に緩衝pH値を与える緩衝系を含む。1つの実施形態において、浸透増強剤はアルキル(N−置換アミノ)エステルまたは薬学的に許容されるその塩である。
【0034】
血管作用性プロスタグランジンは末梢血管拡張剤として作用するものであり、例えば天然に存在するプロスタグランジン、例えばPGE、PGA、PGB、PGF1α、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGA、PGB、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGF3α;天然プロスタグランジンの半合成または合成の誘導体、例えばカルボプロストトロメタミン、ジノプロストトロメタミン、ジノプロストン、リポプロスト、ジェメプロスト、メテノプロスト、サルプロストンおよびチアプロストである。プロスタグランジンEおよびプロスタグランジンEが本発明の方法と共に使用するのに特に好ましい血管作用性プロスタグランジンである。
【0035】
更にまた、非エコサノイド血管拡張剤1つ以上の同時投与が望ましい場合があり、そして場合により相乗作用を示す。プラゾシンとプロスタグランジンEの組み合わせはこの点に関して特に好都合であることがわかっている。
【0036】
適当な非エコサノイド血管拡張剤は、例えば硝酸塩、例えばニトログリセリン、2硝酸イソソルビド、4硝酸エリスリチル、硝酸アミル、ニトロプルシドナトリウム、モルシドミン、リンシドミンクロルヒドレート(SIN−1)およびS−ニトロソ−N−アセチル−d,l−ペニシラミン(SNAP);アミノ酸、例えばL−アルギニン;長時間および短時間作用性のα−アドレナリンブロッカー、例えばフェノキシベンザミン、ジベナミン、フェントラミン、タムスロシンおよびインドラミン、特にキナゾリン誘導体、例えばアルフゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシンおよびトリマゾシン;血管拡張性の天然の薬草組成物およびその生物活性抽出物、例えば牛車腎気丸、ウインターセーボリー、Bai−hua qian−hu、lipotab、柴朴湯、ビンポセチン、ギンコビロバ、ウキアゼナ、アマチャヅル、gypenosides、ゴシュユ、ルテカルピン、デヒドロエボジアミン、タンジン、紫丹参、小柴胡湯、大棗、チョウセンニンジンおよびこれらの混合物(米国特許第6,007,824号);麦角アルカロイド、例えばエルゴタミンおよびエルゴタミン類縁体、例えばアセトエルガミン、ブラズエルゴリン、ブロムエルグリド、シアンエルゴリン、デロルゴトライル、ジスレルギン、マレイン酸エルゴノビン、酒石酸エルゴタミン、エチスレルギン、レルゴトライル、リセルギド、メスレルギン、メテルゴリン、メテルゴタミン、ニセルゴリン、ペルゴリド、プロピセルギド、プロテルグリドおよびテルグリド;抗高血圧剤、例えばジアゾキシド、ヒドララジンおよびミノキシジル;血管拡張剤、例えばニモデピン、ピナシジル、シクランデレート、ジピリダモールおよびイソクスプリン;クロルプロマジン;ハロペリドール;ヨヒンビン;トラゾドンおよび血管作用性腸ペプチドを包含するが、これらに限定されない。
【0037】
プロスタグランジンEは当業者がよく知るものである。その薬理学的活性、副作用および通常の用量範囲に関しては種々の文献が参照されている、例えばPhysician’s Desk Reference,51st Ed.(1997),The Merck Index,12th Ed.,Merck & Co.,N.J.(1996)およびMartindale The Extra Pharmacopeia,28t Ed.,London,The Pharmaceutical Press(1982)を参照できる。本発明において参照するプロスタグランジンE並びに他の化合物は生理学的に適合性のある塩およびそのエステル誘導体を含む薬学的に許容される誘導体を包含するものとする。
【0038】
医薬組成物中のプロスタグランジンEのような血管作用性プロスタグランジンの量は治療有効量であり、必然的に所望の用量、剤形(例えば座剤または局所用)および使用する血管作用性プロスタグランジンの特定の形態に応じて変動する。「プロスタグランジン」という用語は本明細書においては一般的にプロスタグランジンの遊離の酸および薬学的に許容されるその誘導体、例えばPGE、薬学的に許容されるその塩および低級アルキルエステル(「低級アルキル」という用語は本明細書においては炭素原子1〜4個を含む直鎖または分枝鎖のアルキルを意味する)を指す。組成物は一般的に組成物の総重量を基にして血管作用性プロスタグランジン、例えばプロスタグランジンE0.001%〜1%を含有し、典型的には0.05%〜1%、好ましくは0.1%〜0.5%を含有する。
【0039】
血管作用性プロスタグランジンと組み合わせて使用する場合は、ピペラジニルキナゾリン抗高血圧剤、例えばプラゾシンは、使用する特定のピペラジニルキナゾリン抗高血圧剤の力価および血管作用性プロスタグランジンの種類と用量に応じて、単位用量当たり、約0.1mg〜約2.0mgの量で存在する。血管作用性プロスタグランジンおよびピペラジニルキナゾリン抗高血圧剤の用量および比率は予定外の実験を行うことなく当業者が日常的に決定できる。
【0040】
プロスタグランジン製剤も含めて単独では大部分の薬剤は他の薬物送達経路により得られる濃度水準に匹敵するものを与えられるほど皮膚を十分には透過しない。この問題を克服するために、局所用薬物処方は典型的には皮膚浸透増強剤を含有する。皮膚浸透増強剤はまた吸収増強剤、加速剤、アジュバント、可溶化剤、吸着促進剤等とも称される。名称に関わらず、そのような薬剤は皮膚を通過する薬物の吸収を向上させる働きを有する。理想的な浸透増強剤は皮膚を通過する薬物の流入を増大させるのみならず、皮膚を刺激、感作または損傷することなくこれを行う。更にまた理想的な浸透増強剤は使用可能な剤形(例えばクリームまたはゲル)の物理的な品質または局所用組成物の化粧品としての品質に悪影響を与えてはならない。
【0041】
広範な種類の化合物が皮膚を通過する薬物の浸透の速度を増大させる場合のその有効性について評価されている。例えば種々の皮膚浸透増強剤の使用と試験を検討しているPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I. and Smith H.E.(eds),CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL.(1995)およびBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Phister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,IL.(1997)を参照できる。プロスタグランジンの局所用組成物において使用するための適当な浸透増強剤は米国特許第4,980,378号、第5,082,866号および第6,118,020号および国際公開WO95/09590号に開示されている。プロスタグランジンの送達のためにこのような浸透増強剤を使用している局所用組成物は米国特許第6,046,244号、第6,323,241号および第6,489,207号に記載されている。
【0042】
本発明の局所用組成物は1つ以上の浸透増強剤を含有することができる。本発明のための好ましい浸透増強剤に含まれるものは、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチルラウレート、トリエタノールアミン、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、ラウリン酸、ラウロカプラム(Azone(商標))、ジオキソラン(米国特許第4,861,764号に記載)、大環状ケトン、HP−101、オキサゾリジオンおよび生体分解性浸透増強剤(Wong等への米国特許第4,980,378号および第5,082,866号に記載、例えばアルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート(例えばドデシルN,N−ジメチルアミノイソプロピオネート(DDAIP))、N,N−ジ置換アミノアルカノールアルカノエート(国際公開WO95/09590号)およびこれらの混合物である。存在する場合は、イソプロピルミリステートは約0.1〜約10重量%、好ましくは約3重量%の量で存在する。存在する場合はトリエタノールアミンは約0.1〜約5重量%、好ましくは約0.5重量%の量で存在する。存在する場合はラウリン酸は約0.1〜約5重量%、好ましくは約1重量%の量で存在する。
【0043】
浸透増強剤は血管作用性プロスタグランジン、例えばプロスタグランジンEの浸透を増強するのに十分な量で存在する。特定の量は必然的に、所望の放出速度および使用するプロスタグランジンEの特定の形態に従って変動する。一般的に浸透増強剤は組成物の総重量に基づいて約0.5〜約20重量%の量で存在する。好ましくは、浸透増強剤は組成物の約1重量%〜約10重量%の範囲の量で存在する。より好ましくは浸透増強剤は組成物の約1重量%〜約5重量%の範囲の量で存在する。
【0044】
一般的に適当な浸透増強剤は上記したもの並びにスルホキシド、アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール、アミド、界面活性剤、テルペン、アルカノン、有機酸およびこれらの混合物から選択できる。一般的にはChattaraj,S.C. and Walker,R.B.,Penetration Enhancer Classification,pp.5−20, in Maibach,H.I.,and Smith,H.E.,(eds),Percutaneous Penetration Enhancer,CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL.(1995)およびBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement, in Gosh T.K.,et al.,(eds.) Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,IL.(1997)を参照できる。適当なスルホキシドはジメチスルスホキシド、デシルメチルスルホキシドおよびこれらの混合物を包含する。適当なアルコールはエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、ベンジルアルコール、カプリルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、2−ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコールおよびこれらの混合物を包含する。適当な脂肪酸は吉草酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸、イソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸およびイソステアリン酸およびこれらの混合物を包含する。
【0045】
適当な脂肪酸エステルはイソプロピルn−ブチレート、イソプロピルn−ヘキサノエート、イソプロピルn−デカノエート、イソプロピルミリステート、、イソプロピルパルミテート、オクチルドデシルミリステート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸ジエチル、ラウリン酸エチルおよびこれらの混合物を包含する。適当なポリオールはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ソルビトール、デキストラン、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオールおよびこれらの混合物を包含する。
【0046】
適当なアミドは尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチトルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルオクタミド、ジメチルデカミド、1−アルキル−4−イミダゾリン−2−オン、ピロリドン誘導体、環状アミド、ヘキサメチレンラウロアミドおよびその誘導体、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびこれらの混合物を包含する。適当なピロリドン誘導体は1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1−ラウリル−2−ピロリドン、1−メチル−4−カルボキシ−2−ピロリドン、1−ヘキシル−4−カルボキシ−2−ピロリドン、1−ラウリル−4−カルボキシ−2−ピロリドン、1−デシル−チオエチル−2−ピロリドン(HP−101)、1−メチル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、1−ヘキシル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、1−ラウリル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドン、N−ジメチルアミノプロピルピロリドン、N−ココアルキピロリドン、N−タローアルキピロリドン、N−(2−ヒドロキシメチル)−2−ピロリドンの脂肪酸エステルおよびこれらの混合物を包含する。適当な環状アミドは1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン(ラウロカプラム、Azone(登録商標))、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ファルネシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルゲラニルアザシクロヘプタン−2−オン、1−(3,7−ジメチルオクチル)アザシクロヘプタン−2−オン、1−(3,7,11−トリメチルオクチル)アザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘキサン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロペンタン−2,5−ジオン、1−ファルネシルアザシクロペンタン−2−オンおよびこれらの混合物を包含する。
【0047】
適当な界面活性剤はアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、胆汁酸塩およびレシチンを包含する。適当なアニオン系界面活性剤はラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物を包含する。適当なカチオン系界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよびこれらの混合物を包含する。適当なノニオン系界面活性剤はα−ヒドロ−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピル)ポリ(オキシエチレン)ブロック共重合体、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールのポリエチレングリコールエステルおよびこれらの混合物を包含する。適当なα−ヒドロ−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピル)ポリ(オキシエチレン)ブロック共重合体はポロキサマー231、182および184およびこれらの混合物を包含する。適当なポリオキシエチレンエーテルは4−ラウリルエーテル(Brij30)、(Brij93)、(Brij96)、20−オレイルエーテル(Brij99)およびこれらの混合物を包含する。適当なポリオキシエチレンソルビタンエステルはモノラウレート(Tween20、Span20)、モノパルミテート(Tween40)、モノステアレート(Tween60)およびモノオレエート(Tween80)およびこれらの混合物を包含する。適当な脂肪酸のポリエチレングリコールエステルは8−オキシエチレンステアレートエステル(Myrj45)、(Myrj51)、40−オキシエチレンステアレートエステル(Myrj52)およびこれらの混合物を包含する。適当な胆汁酸塩はコール酸ナトリウム、ラウロコール酸のナトリウム塩、グリコール酸およびデスオキシコール酸およびこれらの混合物を包含する。
【0048】
適当なテルペンはD−リモネン、α−ピネン、β−エンレン、α−テルピネオール、テルピネン−4−オール、カルボール、カルボン、プレゴン、ピペリトン、メントン、メントール、ゲラニオール、シクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、α−ピネンオキシド、シクロペンテンオキシド、1,8−シネオール、イラン油、アニス油、ケノポジ油、ユーカリ油およびこれらの混合物を包含する。適当なアルカノンはN−ヘプタン、N−オクタン、N−ノナン、N−デカン、N−ウンデカン、N−ドデカン、N−トリデカン、N−テトラデカン、N−ヘキサデカンおよびこれらの混合物を包含する。適当な有機酸はクエン酸、コハク酸、サリチル酸、サリチル酸塩(例えばメチル、エチルおよびプロピルグリコール誘導体を含む)、酒石酸およびこれらの混合物を包含する。
【0049】
好ましい実施形態においては、浸透増強剤はアルキル−2−(N−置換アミノ)−アルカノエート、(N−置換アミノ)−アルカノールアルカノエートまたはこれらの混合物でる。簡便のためにアルキル−2−(N−置換アミノ)−アルカノエートおよび(N−置換アミノ)−アルカノールアルカノエートはアルキル(N−置換アミノ)エステルの表記のもとに統合される。
【0050】
本発明に適するアルキル−2−(N−置換アミノ)−アルカノエートは下記:
【化2】

【0051】
[式中、nは約4〜約18の値を有する整数であり;Rは水素、C〜Cアルキル、ベンジルおよびフェニルよりなる群のメンバーであり;RおよびRは水素およびC〜Cアルキルよりなる群のメンバーであり;そしてRおよびRは水素、メチルおよびエチルよりなる群のメンバーである]により示すことができる。
【0052】
好ましいものはアルキル(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート、例えばC〜C18アルキル(N,N−ジ置換アミノ)アセテートおよびC〜C18アルキル(N,N−ジ置換アミノ)プロピオネートおよび薬学的に許容されるその塩および誘導体である。例示される特定のアルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエートは下記式:
【化3】

【0053】
のドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネート(DDAIP);
および下記式:
【化4】

【0054】
のドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−アセテート(DDAA)を包含する。
【0055】
アルキル−2−(N−置換アミノ)−アルカノエートは公知である。例えばドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネート(DDAIP)はSteroids,Ltd.(Chicago,IL)より入手できる。更にアルキル(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエートは不整合が生じない範囲で参照により本明細書に組み込まれるWong等への米国特許第4,980,378号に記載の通り更に容易に入手できる化合物から合成できる。そこに記載される通りアルキル2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエートは2工程の合成により容易に調製される。第1の工程において、長鎖アルキルクロロアセテートは、適切な塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、典型的には適当な溶媒、例えばクロロホルム中における、相当する長鎖アルコールとクロロメチルクロロホルメート等との反応により調製する。反応は下記:
【化5】

【0056】
[式中R、R、Rおよびnは上記の通り定義される]の通り表すことができる。反応温度は約10℃〜約200℃または還流温度から選択してよいが、室温が好ましい。溶媒の使用は任意である。溶媒を使用する場合は、広範な種類の有機溶媒を選択してよい。塩基の選択も重要ではない。好ましい塩基は第3アミン、例えばトリエチルアミン、ピリジン等である。反応時間は一般的に約1時間〜3日の範囲である。
【0057】
第2の工程においては、長鎖のアルキルクロロアセテートを以下のスキーム:
【化6】

【0058】
[式中n、R、R、R、RおよびRは前述の通り定義される]に従って適切なアミンと縮合する。過剰なアミン反応体は典型的には塩基として使用し、そして、反応は適当な溶媒、例えばエーテル中で行うのが好都合である。この第2の工程は好ましくは室温で行うが、温度を変えてもよい。反応時間は通常は約1時間〜数日の範囲である。好都合な精製法を適用することにより、得られるエステルを医薬組成物中で使用できるようにする。
【0059】
適当な(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエートは下記式:
【化7】

【0060】
[式中、nは約5〜約18の値を有する整数であり;yは0〜約5の値を有する整数であり;そしてR、R、R、R、R、RおよびRは水素、C〜CアルキルおよびC〜Cアリールよりなる群のメンバーであり;そしてRは水素、ヒドロキシル、C〜CアルキルおよびC〜Cアリールよりなる群のメンバーである]により表すことができる。適当な(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエートの調製および既知浸透増強剤を超える利点については国際公開WO95/09590号に開示されている。
【0061】
好ましいものは(N−置換アミノ)−アルカノールアルカノエート、例えばC〜C18カルボン酸エステルおよび薬学的に許容されるその塩である。例示される特定の(N,N−ジ置換アミノ)−アルカノールアルカノエートは下記式:
【化8】

【0062】
の1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノールドデカノエート(DAIPD);
下記式:
【化9】

【0063】
の1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノールミリステート(DAIPM);
下記式:
【化10】

【0064】
の1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノールオレエート(DAIPO)を包含する。
【0065】
(N,N−ジ置換アミノ)−アルカノールアルカノエートはトリエチルアミンの存在下ラウロイルクロリドに相当するアミノアルキノールを反応させることにより容易に調製される。クロロホルムのような溶媒は任意であるが好ましい。例えば1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノールをクロロホルム中およびトリエチルアミンの存在下、ラウロイルクロリドと反応させて1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノールドデカノエート(DAIPD)を形成することができる。本発明のための適当な浸透増強剤のうち、DDAIPが一般的には好ましい。
【0066】
浸透増強剤はプロスタグランジンEの浸透を増強するのに十分な量で存在する。特定の量は必然的に所望の放出速度および使用するプロスタグランジンEの特定の形態に応じて変動する。一般的にはこの量は組成物の総重量を基にして約0.5%〜約10%の範囲である。1つの実施形態において、血管作用性プロスタグランジンがプロスタグランジンEである場合は、浸透増強剤は組成物の約0.01〜約5重量%の量のDDAIPである。
【0067】
更に、他の知られた経皮浸透増強剤も所望により添加してよい。例示されるものはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、2−ピロリドン、N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン(Azone(商標)、Nelson Researchの登録商標)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、カルシウムチオグリコレート、オキサゾリジノン、ジオキソラン誘導体、ラウロカプラム誘導体、および、大環状増強剤、例えば大環状ケトンである。
【0068】
天然および修飾された多糖類のガムもまた組成物の重要な成分である。適当な代表的ガムは天然および修飾されたガラクトマンナンガム類である。ガラクトマンナンガムはD−ガラクトースおよびD−マンノース単位を含有する炭水化物重合体、またはそのような重合体の他の誘導体である。比較的多数のガラクトマンナン類が存在し、それらはその起源に応じて組成が異なる。ガラクトマンナンガムは(1→4)結合したβ−D−マンノピラノシル単位の直鎖構造を特徴としている。主鎖に(1→6)結合した単一メンバーのα−D−マンノピラノシル単位は側鎖として存在する。ガラクトマンナンガムは2種のマメ植物(Cyamposis tetragonalobusおよびpsoraloids)の何れかの種子の粉砕内胚乳であるグアガムおよびイナゴマメの木(ceratonia siliqua)の種子の内胚乳中に存在するローカストビーンガムを包含する。適当な修飾多糖類ガムは天然および置換された多糖類ガムのエーテル、例えばカルボキシメチルエーテル、エチレングリコールエーテルおよびプロピレングリコールエーテルを包含する。例示される置換多糖類ガムはメチルセルロースである。
【0069】
他の適当な代表的ガムは寒天ガム、カラギーナンガム、ガッティガム、カラヤガム、ラムサンガムおよびキサンタンガムを包含する。本発明の組成物は種々のガムの混合物またはガムと酸性重合体の混合物を含有してよい。
【0070】
ガムおよび特にガラクトマンナンガムはよく知られた物質である。例えばIndustrial Gums: Polysaccharides & Their Derivatives,Whistler R.L. and BeMiller J.N.(eds.),3rd Ed. Academic Press(1992)およびDavidosn R.L.,Handbook of Water−Soluble Gums & Resins,McGraw−Hill,Inc.,N.Y.(1980)を参照できる。大部分のガムは種々の形態、一般的には粉末で市販されており、そして食品および局所用組成物においてそのまま使用できる。例えば粉末形態のローカストビーンガムはTic Gums Inc.(Belcam,MD)より入手可能である。
【0071】
多糖類ガムを存在させる場合は、組成物の総重量を基にして約0.1%〜約5%の範囲で存在し、好ましくは0.5〜3%の範囲である。1つの実施形態においては、多糖類ガム2.5重量%が存在する。代表的な組成物は後記する実施例において記載する。
【0072】
多糖類ガムの任意の代替はポリアクリル酸重合体である。ポリアクリル酸重合体の一般的な品種は「カーボマー」として一般的に知られている。カーボマーはポリアルケニルポリエーテルと緩く交差結合したポリアクリル酸重合体である。これは「CARBOPOL(商標)」の名称の下にB.F.Goodrich Company(Akron,Ohio)から市販されている。カーボマーの特に好ましい品種は「CARBOPOL940」の名称のものである。
【0073】
使用に適する他のポリアクリル酸重合体は「Pemulen(商標)」(B.F.Goodrich Company)および「POLYCARBOPHIL(商標)」(A.H.Robbins,Richmond,VA)の名称の下に市販されている。Pemulen(商標)はC10〜C30アルキルアクリレートおよび1つ以上のアクリル酸、メタクリル酸またはスクロースのアリルエーテルまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルと交差結合したそれらの単純なエステルの1つの単量体の共重合体である。POLYCARBOPHIL(商標)増強剤はジビニルグリコールと交差結合したポリアクリル酸である。
【0074】
ポリアクリル酸重合体が存在する場合は、それらは組成物の総重量を基にして約0.5%〜約5%に相当する。
【0075】
本発明の実施に適する半固体組成物および浸透増強剤は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,046,244号、第6,118,020号および第6,323,241号に詳述されている。
【0076】
半固体の組成物は組成物が投与部位に自然に保持されるような適当に選択された粘度を有する。半固体の組成物はニュートンまたは非ニュートンレオロジーの特性を示す。一部の好ましい実施形態においては、本発明の半固体の組成物は非ニュートンのレオロジー特性を示し、即ちその場合、見かけの粘度は組成物に適用される剪断速度に依存する。好ましくは、組成物は「シアシニング」レオロジー特性を有する。本明細書においては「シアシニング」とは、見かけの粘度の低下が時間非依存性(擬似可塑性)、時間依存性(チクソ性)または流動が開始する前に超過しなければならない応力として定義される降伏応力に関わるものであるかどうか(ビンガム塑性体および一般化ビンガム塑性体)に関わらず、見かけの粘度(剪断速度に対する剪断応力の比)の低下を指すものとする。一般的にはHarris,J.,&Wilkinson,W.L.“Non−Newtonian Fluid”,pp.856−858 in Parker,S.P.,ed.,McGraw−Hill Encyclopedia of Physics,Second Edition,McGraw−Hill,New York,1993を参照できる。組成物の適当な粘度範囲は約5000センチポアズ(cps)〜約20000cps、好ましくは約7000〜約13000cpsである。
【0077】
別の重要な成分は親油性の成分である。本明細書においては「親油性成分」とは親油性および親水性の両方である薬剤を指す。医薬品分野の当業者の知る通りある化合物の親油性の性質または「親油性」は分配係数を用いることにより他の化合物との比較のために日常的に定量される。分配係数は不均一な系(2相の)が平衡状態にある場合の2相の間の物質の分布の比として国際純正応用化学連合(IUPAC)により定義され;2相中の同じ分子種の濃度(または厳密には活性)の比は一定温度において一定である。
【0078】
〜C脂肪族アルコール、C〜C30脂肪族エステルおよびそれらの混合物が親油性成分として機能できる。例示される適当なアルコールはエタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールであり、適当なエステルは酢酸エチル、酢酸ブチル、ラウリン酸エチル、プロピオン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルである。本明細書においては「脂肪族アルコール」という用語はポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを包含する。1つの実施形態においては、アルコールとエステルの混合物が好ましく、特にエタノールとラウリン酸エチルの混合物が好ましい。別の実施形態においてはイソプロピルミリステート約0.1〜約10重量%、好ましくはイソプロピルミリステート約3重量%をエチルラウレートの代替とする。一部の実施形態においては、親油性成分は少なくとも1つの液体ポリオールを包含する。好ましい実施形態においては、液体ポリオールはポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600よりなる群から選択されるポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールを使用する場合は、ポリエチレングリコールは組成物の総重量を基にして約1重量%〜約25重量%の量で存在する。好ましいポリエチレングリコールはポリエチレングリコール400(PEG400)である。存在する場合は、ポリエチレングリコール400は組成物の総重量を基にして約1重量%〜約25重量%、好ましくは約3重量%〜約20重量%の量で存在する。
【0079】
1つの実施形態において、親油性成分を含むC〜C30脂肪族エステルおよびその混合物はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびこれらの混合物よりなる群から選択されるグリセロールのC〜C30脂肪族エステルを包含する。適当な脂肪族エステルは飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびこれらの混合物のグリセリルエステルを包含する。適当な飽和脂肪酸はカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸を包含する。好ましい実施形態においては、、ラウリン酸約0.1〜約5重量%、好ましくは約1重量%が存在する。適当な不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸を包含する。適当なグリセリルエステルはグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチンおよびトリステアリンを包含し、好ましくはトリミリスチンである。
【0080】
必要とされる親油性成分の濃度は必然的に、所望の半固体のコンシステンシーおよび所望の皮膚浸透促進作用のような他の要因により変動する。親油性成分の濃度は組成物の総重量を基にして0.5重量%〜40重量%の範囲が適当である。好ましい局所用組成物は組成物の総重量を基にして7重量%〜40重量%の範囲の親油性成分を含有する。
【0081】
脂肪族アルコールおよび脂肪族エステルの混合物を使用する場合は、アルコールの適当な量は0.5%〜10%の範囲である。1つの好ましい実施形態においては、アルコールの量は5%〜15%の範囲であり、脂肪族エステルは2%〜15%の範囲である(やはり組成物の総重量に基づく)。別の好ましい実施形態においては、アルコールの量は0.5%〜10%の範囲であり、脂肪族エステルは0%〜10%の範囲である(やはり組成物の総重量に基づく)。
【0082】
必要とされる親油性成分の濃度は必然的に、所望の半固体のコンシステンシーおよび所望の皮膚浸透促進作用のような他の要因により変動する。好ましい局所用組成物は、組成物の総重量を基にして7重量%〜40重量%の範囲の親油性成分を含有する。脂肪族アルコールおよび脂肪族エステルの混合物である親油性成分を使用する場合は、アルコールの好ましい量は5%〜15%の範囲であり、脂肪族エステルは2%〜15%の範囲である(やはり組成物の総重量に基づく)。
【0083】
任意であるが好ましい成分は乳化剤である。重要な要因ではないが、適当な乳化剤は一般的に親水性−親油性バランス値10超を示す。スクロースエステル、そして特にスクロースステアレートは組成物のための乳化剤として機能できる。スクロースステアレートは種々の製造元より入手できるよく知られた乳化剤である。乳化剤を使用する場合は、組成物の総重量を基にして約2%までの量で存在するスクロースステアレートが好ましい。スクロースステアレート乳化剤の好ましい量は多糖類ガムに対する乳化剤の重量比としても表示できる。所望の半固体のコンシステンシーおよび分離抵抗性を得るためには、1対6の乳化剤対ガムの比が好ましく、1対4の比が最も好ましい。
【0084】
ポリオキシエチレンソルビタンエステル、長鎖アルコール、好ましくはセトステアリルアルコールおよび脂肪酸グリセリドを包含する他の乳化剤もまた適当である。適当なポリオキシエチレンソルビタンエステルは、モノラウレート(Tween20、Span20)、モノパルミテート(Tween40)、モノステアレート(Tween60)およびモノオレエート(Tween80)およびこれらの混合物を包含する。好ましい脂肪酸グリセリドはグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチンおよびトリステアリンを包含する。
【0085】
組成物は酸緩衝系を含む。酸緩衝系は所望の範囲内に組成物のpHを維持または緩衝する働きを有する。「緩衝系」または「緩衝剤」という用語は、本明細書においては、水溶液中にある場合に、酸または塩基が添加された場合にpH(即ち水素イオン濃度または活性)の大きな変化に抵抗してそのような溶液を安定化させる溶質の物質を指す。即ち上記した範囲における初期緩衝pH値からのpHの変化に対する抵抗に関与する溶質の薬剤はよく知られている。多くの適当な緩衝剤が存在するが、リン酸カリウム1水和物が本発明の組成物のために有効であることがわかっている。
【0086】
医薬組成物の最終pH値は生理学的に適合性のある範囲内で変動してよい。必然的に最終pH値はヒトの皮膚に対して刺激性のないものである。この制約の下に、プロスタグランジンEの安定性を向上させるため、および、必要なコンシステンシーを調節するためにpHを選択してよい。1つの実施形態においては、好ましいpH値は約3.0〜7.4、より好ましくは約3.0〜約6.5、最も好ましくは約3.5〜6.0である。
【0087】
組成物の残余の成分は水であり、これは精製することが必要である。組成物は組成物の総重量を基にして約50〜約90%の範囲の水を含有する。存在する水の特定の量は重要ではないが、所望のコンシステンシーおよび/または他の成分の濃度を得るために調節する。
【0088】
プロスタグランジンE安定化剤、着色剤、レオロジー調節剤および保存料は、それらがプロスタグランジンEの皮膚浸透を過剰に制限せず、所望の半固体のコンシステンシーを妨害しないような範囲まで添加することができる。
【0089】
意図される半固体組成物の剤形はクリーム、ゲル、軟膏、コロイド状懸濁液等であり、そして更に経皮パッチ等の装置と共に使用するのに適する組成物であってよいが、これらに限定されない。
【0090】
上記した成分は半固体製剤全体に渡って均一に分散してプロスタグランジンEを含む安定な組成物を与えるような何れかの順序および方法で組み合わせてよい。このような組成物を調製する1つの可能な方法では、予備混合された水/緩衝液中に多糖類ガム(またはポリアクリル酸重合体)を均一に分散し、そして次に得られた混合物を十分均質化(即ち混合)し、これを「パートA」と表示することができる。乳化剤を存在させる場合は、これを水/緩衝液に添加した後に多糖類ガムを分散させる。パートAのpH値を所望の水準に調節する何れかの適当な方法を用いてよく、例えば濃リン酸または水酸化ナトリウムを添加するなどしてよい。
【0091】
別途、それ自体がアルコール、エーテルまたはアルコールとエステルの混合物であってよい親油性の成分中でプロスタグランジンEを攪拌しながら溶解させる。次に浸透増強剤を添加する。あるいは、親油性成分がアルコールとエステルの両方を含む場合は、プロスタグランジンEをアルコールに溶解した後に、浸透増強剤、次いでエステルを添加することができる。いずれの場合においても、得られる混合物は「パートB」と表示することができる。最終工程では一定の混合下にパートBをパートAに緩徐に添加(例えば滴下)する。
【0092】
得られた局所用組成物は、比較すれば、薬剤の過剰負荷を伴わない改善されたプロスタグランジンEの透過性および生体利用性、低減した皮膚の損傷および関連する炎症、および、剤形設計における増大した柔軟性を含む上記した好都合な特性を示す。これらの組成物は、他の送達方法に伴う低い生体利用性および急速な化学的分解を回避しながら、末梢血管疾患、男性不能およびプロスタグランジンEで治療される他の障害の長期間の治療のために使用できる。対象の皮膚への局所用組成物中でのプロスタグランジンEの適用は、対象に対して継続的に所定量のプロスタグランジンEを投与できるようにし、そして、注射によるより高用量の単回または複数回の投与で生じる望ましくない作用を回避する。除放性の投薬速度を維持することにより、対象の標的組織におけるプロスタグランジンEの濃度は最適治療範囲内により良好に維持できる。
【0093】
1つの実施形態においては、組成物は組成物の総重量を基にして修飾多糖類ガム約0.01%〜約5%;PGE、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよびこれらの混合物よりなる群から選択されるプロスタグランジン約0.001%〜約1%;DDAIPまたはその塩約0.5%〜約10%;エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物よりなる群から選択される低級アルコール約0.5%〜約10%;ラウリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸イソプロピルおよびこれらの混合物よりなる群から選択されるエステル約0.5%〜約10%;および酸緩衝剤を含む。好ましくは組成物はまた約2%までのスクロースステアレートを含む。
【0094】
場合により、組成物はまた乳化剤約5%までを含む。好ましくは組成物はまた乳化剤約2%までを含む。適当な乳化剤はポリソルベート類、例えばTween、グリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチンおよびトリステアリンを包含する。好ましい乳化剤はトリミリスチンである。
【0095】
本発明の実施は以下の実施例において説明するとおりである。これらの実施例は本発明の範囲を限定するのではなく、説明するものである。プロスタグランジンEの有効性に悪影響を及ぼさない治療用組成物の変更は当業者の知るとおりであり、本発明の範囲に包含されるものである。例えば着色料、抗微生物性保存料、乳化剤、香料、プロスタグランジンE安定化剤等のような添加成分は、得られる組成物が上記した望ましい特性を維持する限り、組成物中に含有させてよい。保存料を存在させる場合は、通常は約0.05〜約0.30%の量で添加する。適当な保存料はメチルパラベン(メチルPABA)、プロピルパラベン(プロピルPABA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)を包含する。適当な香料および芳香剤は当該分野で知られており;適当な芳香剤は組成物の総重量を基に約5%までのミルテノール、好ましくは約2%のミルテノールである。本発明の組成物は、所望により少量、約0.01〜約4重量%の局所麻酔剤を含有できる。典型的な局所麻酔剤はリドカイン、ジクロニン、ジブカイン、薬学的に許容されるその塩およびその混合物を包含する。1つの好ましい実施形態においては、局所麻酔剤は組成物の総重量を基にして約0.5のジクロニンである。
【0096】
医薬品製剤は好ましくは単位剤形にある。このような形態において、製剤は活性成分の適量を含有する単位用量に細分する。単位剤形はパッケージ入りの製剤であり、その場合、個々の量の医薬品製剤を含有するパッケージは例えば剛性のプラスチックディスペンサーまたは可撓性のパックである。
【0097】
本発明の別の態様は、ラベル表示された使用説明書と組み合わせて、適当な容器中に、好ましくは米国特許第6,224,573号に開示されているディスペンサーのような容器中に、上記した勃起機能不全を治療するための組成物を含む製品である。あるいは、容器は適当なオリフィスサイズを有するチューブ、例えば先端延長チューブ、パウチ、パックまたはスクイズボトルであることができ、何れかの適当な材料、例えば剛性プラスチックまたは可撓性プラスチックから製造できる。
【0098】
ラベルの使用説明書はパンフレット、製品のパッケージに貼り付けられた、またはそれに伴ったラベルの形態である。
【0099】
特段の記載が無い限り、各組成物は従来通りそれぞれの記載した成分を共に混合することにより調製する。
【0100】
実施例1
典型的な組成物
典型的な組成物Aを以下の通り調製した。パートAはプロスタグランジンE(Alprostadil USP)0.4部をエタノール5部に溶解することにより形成した。次に、ドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネート5部をアルコール−プロスタグランジンE溶液に混合し、次にラウリン酸エチル5部を添加した。
【0101】
パートBはpH5.5の水/緩衝液から調製した。水/緩衝液は精製水に十分なリン酸カリウム1水和物を添加して0.1M溶液を作成することにより調製した。水/緩衝液のpHは強塩基溶液(1N水酸化ナトリウム)および強酸(1Nリン酸)を用いて5.5に調節した。緩衝液は総組成物の約80部に相当した。本明細書において特定する全ての部は重量部である。
【0102】
緩衝液にラウリン酸エチル0.5部を添加した。次にローカストビーンガム(粉末形態)を緩衝液に分散させ、ホモゲナイザーを用いて均質化した。以下の表1は成分を列挙したものである。
【0103】
得られた組成物はパッチおよび接着テープのような支持部材を必要とすることなく皮膚に適用するのに適した延展可能な半固体であった。組成物は外観が均質であると同時に分離に対して抵抗性であった。
【表1】

【0104】
別の典型的な組成物B〜Iは表1に列挙した成分を用いて同様の方法において調製される。上記した通り、組成物Hのような別の実施形態においては、組成物は修飾された多糖類ガム、好適には修飾されたガラクトマンナンガム、例えばグアガムを含んでよい。あるいは、ポリアクリル酸共重合体を多糖類ガムの代わりに使用してよい。
【0105】
実施例2
血管痙攣に対するアンタゴニストとしての局所用PGE組成物の薬力学的試験
塩酸アドレナリンにより誘導された血管痙攣に対する局所用PGE組成物(所定量のPGEを含有するように適宜調節された実施例1の組成物H)の鎮痙(痙攣の退行)および血管拡張の作用をウサギ耳における血管直径の変化をモニタリングすることによりインビボで試験した。
【表2】

【0106】
注記:陽性対照はDDAIP浸透増強剤を含有しない0.4%PGE滅菌クリームとし、他の全てのPGEクリーム製剤は2.5重量%のDDAIP浸透増強剤を含んでいた。スミアンキシンはバオジングニング(10%EDTA存在下の5%塩酸ジメチルアニリンチアゾール)とハロペリドールの混合物である。
【0107】
試験に使用した性別不問の体重2〜3kgのニュージーランドウサギはBreed Branch of Beijing Yuancheng Miaomu Company,Ltd.,licence No.SCK2002−004により提供された。全身麻酔はSUMIANXIN(0.3ml/kg)の筋肉内注射により誘導した。ウサギ合計60匹を無作為に群当たり10匹の6群に割り付けた。試験は20℃の一定室温において実施した。血管はSony DSC−S75デジタルカメラを用いて造影し、記録した。血管の直径をAdobe Photoshop 6.0ソフトウエアを用いて測定した。
【0108】
ウサギ耳を剃毛して調製した後、塩酸アドレナリン(1mg/ml)0.05mlを耳基部上1cmの中心動脈の周囲の組織に注射した。血管痙攣は典型的にはアドレナリン注射後約5分に観察された。種々のPGE濃度の局所用組成物80mgの単回投与を、耳中心動脈の典型的な血管痙攣の出現後10分に耳基部上0.5〜2cmの皮膚領域上に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%の濃度でPGEを投与することによりそれぞれ80、160、320および640マイクログラム(μg)のPGEの用量が与えられた。
【0109】
デジタル写真は血管痙攣の誘導後10分、および、種々のPGE局所用組成物の投与後10、15、30、60、90および120分に、麻酔後の血管の正常な状態について撮った。
【0110】
デジタル画像をコンピューターにアップロードし、Adobe Photoshop 6.0ソフトウエアを用いて分析した。耳基部上1.5cmの点における中心動脈の直径を0.1mmの精度で測定した。データは平均の直径±標準偏差(SD)として以下の表3に示すとおりであり;t検定を用いて統計学的分析を行った。
【表3】

【0111】
図1A−1Bはウサギの右(図1A)および左(図1B)の耳の光透過による剃毛背面部の画像である。各図の矢印2本は両方の耳の基部の近傍の中心動脈および静脈に隣接する組織への0.1%アドレナリン溶液2mlの注射後5分に観察された血管痙攣を示す。
【0112】
図2A−2Bは右耳の底部近傍の中心動脈および静脈に隣接する皮膚上への0.4%局所用PGE組成物125mgの局所適用後約5分の図1のウサギの右(図2A)および左(図2B)の耳の光透過による剃毛背面部の画像である。適用後15分において、右耳の全ての血管は血管痙攣部位(2本の矢印の間)も含めて拡張している。適用後35分には全ての血管は正常に拡張し、良好な循環を示した。比較においてブランク対照を投与した左耳の血管は血管痙攣が持続している(矢印、図2B)。
【0113】
平均のデータは上記表3に平均直径±標準偏差(SD)、N=10で示し、図3にグラフで示した。図3は図1および図2において説明したウサギ耳における血管痙攣の試験の平均結果を示す代表的グラフである。上記した通り、種々のPGE濃度を有する局所用組成物80mgの単回投与を、血管痙攣が耳中心動脈に生じた典型的な時間の10分後に耳基部の上0.5〜2cmの皮膚領域上に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%のPGEを含む局所用組成物の投与によりそれぞれ80(黒丸)、160(黒三角)、320(X)および640(*)マイクログラム(μg)のPGEの用量、並びにPGEを含まないクリーム(0μgPGE、黒ひし形)および陽性対照(浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物、黒丸)を設けた。デジタル写真は血管痙攣の誘導後10分、および、種々のPGE組成物の投与後10、15、30、60、90および120分に、麻酔後の血管の正常な状態について撮った。データは平均血管直径±標準偏差で示す。Sは血管痙攣の時間;A**は局所用組成物の投与時間を示す。
【表4】

【0114】
初期血管直径に回復するまでに要する平均時間を上記表4に示す。ブランク対照組成物(0μgPGE)、DDAIP浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物および80μgPGEを含有する局所用組成物は試験中の120分以内に血管直径の回復をもたらさなかった。より多い量のPGEを有する局所用組成物は血管直径の回復をもたらし、回復に要する時間は用量依存的に減少していた。本試験においては、閾値超の有効用量であるPGE320mg用量においてDDAIP含有および非含有の組成物の間には6倍を超える差があった。
【表5】

【0115】
初期血管直径に回復するまでに要する平均時間を、ベースライン超過した付加的血管拡張を示している上記表5に示す。ブランク対照組成物、DDAIP浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物および0.1重量%PGEを含有する局所用組成物を用いた治療は血管直径が血管痙攣前の数値より大きかった場合、試験中の120分以内に血管直径の回復をもたらさなかった。より多い量のPGEを有する局所用組成物の投与は血管の用量依存的拡張をもたらした。「陽性」はDDAIPを含有しない320μg(0.4重量%)PGEを含有する組成物により得られた結果を示している。この試験においては同じ有効用量であるPGE320mgのDDAIP含有および非含有の組成物の作用には3倍超の差があったことに留意すべきである。
【0116】
薬剤投与後10分および15分:ブランク対照群と比較して、80μgPGEクリームおよび陽性対照組成物によりもたらされた血管直径の変化は有意(P>0.05)でなかったが、他のPGE組成物の残余によりもたらされた血管直径の変化はP<0.01水準で有意であった。有意差(P<0.01)は320μgおよび640μgのPGE処置群の間(p>0.05)を除く全ての処置群間で観察された。
【0117】
薬剤投与後30分:ブランク対照投与群と比較して、血管直径変化の有意差(P<0.01)が陽性対照投与群(P>0.05)を除くPGE濃度の各々の処置群について観察された。実験投与群のうち、有意差(P<0.01)は320μgおよび640μgのPGE投与群の間(p>0.05)を除く全ての投与群間で観察された。
【0118】
薬剤投与後60分および90分:ブランク対照投与群と比較して、血管直径変化の有意差(P<0.01)が80μg投与および陽性対照の投与群(P>0.05)を除くPGE濃度の各々の投与群について観察された。実験投与群のうち、有意差(P<0.01)は320μgおよび640μgのPGE投与群の間(p>0.05)を除く全ての投与群間で観察された。
【0119】
薬剤投与後120分:ブランク対照投与群と比較して、血管直径変化の有意差(P<0.01)が80μg、160μgPGEおよび陽性対照の投与群(P>0.05)を除くPGE濃度の各々の投与群について観察された。実験投与群のうち、有意差(P<0.01)は320μgおよび640μgのPGE投与群の間(p>0.05)を除く全ての投与群間で観察された。
【0120】
結果はブランク対照群と比較して、全ての時点において320μgおよび640μgPGE投与群で有意差(P<0.01)が観察されたが、これら後者2群の間には著しい変化が無かった(P<0.05)ことを示している。DDAIP浸透増強剤を含有する局所用組成物の場合は0.2〜0.8重量%の範囲のPGEで用量依存効果が観察されたが、PGE0.4重量%を含有するがDDAIPを含有しない局所用組成物はPGEを含有しないブランク対照群と同等の作用を有していた。
【0121】
実施例3
局所用PGE組成物を用いた血管痙攣の治療における血管灌流容量変化のレーザードプラー試験
塩酸アドレナリンにより誘導された血管痙攣に対する局所用PGE組成物(所定量のPGEを含有するように適宜修飾された実施例1の組成物H)の鎮痙(血管痙攣の拮抗)および血管拡張の作用をウサギ耳の中心動脈の血管灌流容量変化をモニタリングすることにより試験した。上記実施例2に記載した通りウサギを入手し、麻酔し、血管痙攣を誘導した。ウサギ合計60匹を無作為に群当たり10匹の6群に割り付けた。
【0122】
血管灌流容量および皮膚温度はPeriFlux5000レーザードプラー血流量測定システム(Perimed AB,Stockholm,Sweden)を用いて測定した。上記実施例2の場合のように、種々のPGE濃度の局所用組成物80mgの単回投与を、耳中心動脈の典型的な血管痙攣の出現後10分に耳基部上0.5〜2cmの皮膚領域上に適用した。レーザープローブを耳基部の上約1.5cmの中心動脈の領域に固定した。測定は麻酔後の正常な状態の時点、血管痙攣後10分、薬剤投与後10分、15分、30分、60分、90分および120分に行った。
【表6】

【0123】
平均のデータは上記表6に平均血管灌流容量±標準偏差(SD)、N=10で示し、図4にグラフで示した。図4は経皮レーザードプラー血流量測定により測定したウサギ耳の血管痙攣における血管灌流容量の試験の平均結果を示す代表的グラフである。上記した通り、種々のPGE濃度を有する局所用組成物80mgの単回投与を、血管痙攣が耳中心動脈に生じた典型的な時間の10分後に耳基部の上0.5〜2cmの皮膚領域上に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%のPGEを含む局所用組成物の投与によりそれぞれ80(黒丸)、160(黒三角)、320(X)および640(*)マイクログラム(μg)のPGEの用量、並びにPGEを含まないクリーム(0μgPGE、黒ひし形)および陽性対照(浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物、黒丸)を設けた。測定は血管痙攣の誘導後10分、および、種々のPGE組成物の投与後10、15、30、60、90および120分に、麻酔後の血管の正常な状態について行った。データは平均±標準偏差で示す。Sは血管痙攣の時間;A**は局所用組成物の投与時間を示す。陽性対照、0μgおよび80μ群は薬剤投与後120分の試験終了時までに正常な血管灌流を達成できなかった。
【表7】

【0124】
血管痙攣後10分〜局所用組成物の適用後120分に生じた累積血管灌流容量を上記表7に示す。ブランク対照組成物(0μgPGE)および陽性対照である浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物は血管灌流容量が僅かで同等の変化をもたらした。より多い量のPGEを有する局所用組成物の投与は血管灌流容量のより大きい累積変化をもたらし、用量依存的な増大を示した。
【表8】

【0125】
初期血管灌流容量を回復するまでの局所用組成物投与後に要した平均の時間を上記表8に示す。ブランク対照組成物(0μgPGE)、浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物および80μgPGEを含有する局所用組成物の投与は試験中の120分以内に血管灌流容量の回復をもたらさなかった。より多い量のPGEを有する局所用組成物の投与は血管灌流容量の回復をもたらし、回復に要する時間は用量依存的に減少していた。
【0126】
薬剤投与後10〜90分:ブランク対照群と比較して、陽性対照群の血管灌流の変化の有意差(P>0.05)は観察されなかったのに対し、他のPGE濃度の血管灌流変化の有意差(P<0.01)は観察された。
【0127】
薬剤投与後120分:ブランク対照群と比較して、全てのPGE濃度群につき血管灌流変化の有意差(P<0.01)が観察された。160μgのPGE群と比較して、陽性対照および80μgのPGE濃度群(P<0.01)を除き、全てのPGE濃度群で血管灌流変化の有意差(P<0.01)が観察された。
【0128】
実験結果はPGE滅菌クリームの局所適用がアドレナリン誘発血管痙攣および血管灌流変化の有効な拮抗剤であることを示している。80μg〜640μgの濃度範囲のPGEで用量依存性が観察された。
【0129】
実施例4
ウサギ手術中の血管痙攣に対する拮抗剤としての局所用PGE組成物の薬物動態試験
塩酸アドレナリンにより誘導された血管痙攣に対する局所用PGE組成物(所定量のPGEを含有するように適宜修飾された実施例1の組成物H)の鎮痙(痙攣の拮抗)および血管拡張の作用をウサギ耳における血管直径の変化をモニタリングすることにより試験した。
【0130】
ウサギは上記実施例2に記載の通り入手し、麻酔した。合計70匹のウサギを群当たり10匹の7群に無作為に割り付けた。
【0131】
血流速度および血管の断面積はToshiba Multifunction Ultrasonography 6000システムを用いて測定し、分析した。
【0132】
約2cmの長さの大腿動脈の部分を3cm切開して露出させた。塩酸アドレナリン(1mg/1ml)4滴を1mlシリンジにより大腿動脈曝露セグメント中心表面上に滴下し、血管痙攣を誘導した。試験全体を20℃の一定室温において実施した。塩酸アドレナリン適用後約10分に、処置フィールドを滅菌食塩水で局所的に灌注し、滅菌パッドで乾燥した。種々のPGE濃度の局所用組成物40mgの単回投与を単離された大腿動脈の2cm部分の表面上に適用した。このフィールド上への1mlシリンジからのパパベリン(30mg/ml)4滴の単回投与を陽性対照として使用した。
【0133】
切開部は局所用組成物の適用後に閉じた。超音波プローブを切開部から1cmの固定位置においた。血流速度および血管断面積の数値は血管痙攣後5分および10分、薬剤投与後5分、10分、15分、30分、60分、90分および120分に麻酔後の正常な状態の時点においてToshiba Multifunction Ultrasonographyにより記録した。一般的に血流容量=血流速度x血管断面積である。
【0134】
データは平均±SDで示し;t検定により統計学的分析を行った。
【0135】
平均データは以下の表9において瞬間血流容量±標準偏差(SD)、N=10で示し、図6にグラフを示した。
【表9】

【0136】
図6は超音波検査法で測定したウサギ大腿動脈の血管灌流容量の平均結果を示す代表的グラフである。上記した通り、種々のPGE濃度を有する局所用組成物40mgの単回投与を、塩酸アドレナリンの適用後10分に大腿動脈の外科的に露出させた部分の表面に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%のPGEを含む局所用組成物の投与によりそれぞれ80(黒丸)、80(黒三角)、160(X)および320(*)マイクログラム(μg)のPGEの用量、並びにPGEを含まないクリーム(0μgPGE、黒ひし形)、(浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物、黒丸)および30mg/mlパパベリン4滴の陽性対照を設けた。測定は血管痙攣の誘導後5および10分、および、種々のPGE組成物の投与後5、10、15、30、60、90および120分に、麻酔後の血管の正常な状態について行った。データは平均±標準偏差として示す。Sは血管痙攣の時間;A**は局所用組成物の投与時間を示す。浸透増強剤DDAIPを含有しない組成物はDDAIPを含有する同じ用量のPGEを有する組成物よりも著しく低い作用を示した。
【表10】

【0137】
血管痙攣後10分〜局所用組成物の適用後120分に生じた累積血流容量を上記表10に示す。ブランク対照組成物(0μgPGE)および0.4%PGEを含有する組成物を用いた処置は血管灌流容量が僅かで同等の変化をもたらした。パパベリンの投与は80μgPGEを含有する組成物で得られるものに匹敵する僅かに高値の作用をもたらした。より多い量のPGEを有する局所用組成物の投与は血流容量のより大きい累積変化をもたらし、用量依存的な増大を示した。
【表11】

【0138】
初期血流容量を回復するまでの局所用組成物投与後に要した平均の時間を上記表11に示す。ブランク対照組成物(0μgPGE)および40μgPGE組成物を用いた処置は試験中の120分以内に血流容量の回復をもたらさなかった。より多い量のPGEを有する局所用組成物はパパベリンと同様に血流容量の回復をもたらした。
【0139】
薬剤投与後10〜90分:ブランク対照群と比較して、全てのPGE濃度の群の瞬間血流容量(mm/s)の有意差(P<0.01)が観察された。
【0140】
薬剤投与後120分:ブランク対照群と比較して、40μg、80μgおよび陽性対照群(P>0.05)を除く全てのPGE濃度の群で瞬間血流容量(mm/s)の有意差(P<0.01)が観察された。
【0141】
実験結果は血管の露出表面への直接のPGE滅菌クリームの適用はアドレナリン誘導瞬間血流容量変化に対して効果的に作用し、局所血流を向上させることを示している。PGE滅菌クリームの血管拡張作用はパパベリンより良好であると考えられる。80μg〜320μgの濃度範囲のPGEで用量依存性が観察された。
【0142】
実施例5
特別に製剤した0.4%PGE局所用組成物の局所適用に関する予備試験の結果
これらの予備試験の目的は不十分な局所的血液循環により生じる血管痙攣および皮膚障害の治療のための特別に製剤された0.4重量%PGE局所用組成物の薬効を調べるために設計されている。体重3〜4kgの24匹の成熟ニュージーランドウサギを3群に分け、即ち、12匹のウサギを被験群に割り付け;6匹のウサギをPGE対照群に割り付けおよび6匹のウサギをアルコール対照群に割り付けた。各群1匹のウサギを選択して最初の6試験の各々に対し同時に試験に参加させた。
【0143】
ウサギに右耳を被験適用部位として選択し、その左耳を対照として観察した。アドレナリン溶液(0.1%(1:1000)溶液の0.2ml)を両耳の底部近傍の中心動脈および静脈の両方に隣接する領域に注射した。5分後に標準的な血管痙攣が両耳上に出現した。3被験物質の1つである1.8%DDAIP HClを含有する0.4%PGE局所用組成物125mgを右耳の中心動脈および静脈に隣接する皮膚の2cmx2cmの領域に適用した。
【0144】
PGE対照群およびアルコール対照群のウサギの両耳に同様にして血管痙攣を誘導した。同様に、75%エタノール水溶液に溶解したPGEまたは75%エタノール水溶液ベヒクル単独の1mgをPGE対照群およびアルコール対照群の各ウサギの右耳に適用した。血管直径の経時変化を観察した。
【0145】
被験群においては、0.4重量%PGE局所用組成物を右耳皮膚に適用した5分後に血管痙攣が軽減した。右耳の血管は15分後に明らかに拡張していた。右耳の血管床もまた拡張しており、適用後30分で最大に達した。右耳の血流は顕著に増大していた。作用は2時間持続した後徐々に消失した。左耳の血管痙攣は2時間後に自発的に軽減した。
【0146】
PGE対照群においては、血管痙攣は右耳皮膚へのPGEの適用後20分に僅かに軽減した。右耳の血管は30分後に拡張した。拡張作用は60分間持続し、その後消失した。右耳の血管床に顕著に残存する変化は観察されなかった。左耳の血管痙攣は2時間持続し、その後自発的に消失した。
【0147】
アルコール対照群においては、血管痙攣は75%アルコールを右耳皮膚に適用した後10分に僅かに軽減した。血管痙攣は90分後に消失した。右耳の血管床に顕著に残存する変化は観察されなかった。左耳の血管痙攣は2時間持続し、その後自動的に消失した。
【0148】
実施例6
手術中の局所血管痙攣を改善および防止するための局所適用
局所血管痙攣を防止および治療するための手術中の局所用プロスタグランジン組成物の使用を検討した。
【0149】
0.4%PGEを含有する実施例2の局所用プロスタグランジン組成物H約125mg(0.5mgPGE用量)を、血管吻合中に局所血管痙攣が生じた場合、吻合部位の血管外膜に適用した。局所血管および全身血液動態の血管痙攣前後の変化を観察して記録した。11対象を3群に割り付けた。
【0150】
群1は腎疾患のために動静脈瘻修復を必要とし血管拡張剤の全身投与が数種の合併症のために禁忌とされている6人の対象よりなる。動静脈吻合の間の動静脈瘻の形成の後の血管外膜上に局所用プロスタグランジン組成物約125mgを適用した。
【0151】
群2は傷害直後の標準的な血管痙攣を有する緊急手掌外傷患者である2人の対象よりなる。血管吻合後の吻合部位の血管外膜に局所用プロスタグランジン組成物約125mgを適用した。
【0152】
群3は血管手術患者である3人の対象よりなる。血塊摘出時に行われた血管吻合後に群3の2人の対象において血管痙攣が発生した。血管痙攣は群3の他の対象においては血管の閉塞部を除去する際に行われた血管吻合の後に発生した。血管吻合後の吻合部位の血管外膜に局所用プロスタグランジン組成物約125mgを適用した。
【0153】
手術後の患者には他の血管拡張剤は与えなかった。局所血管直径の変化はデジタルカメラを用いて巨視的に記録した。レーザードプラー流量測定を用いて局所的血液動態的変化を測定した。
【0154】
局所用プロスタグランジン組成物は、血管吻合後に標準的な血管痙攣が生じ、そして自発的に軽減することなく15分より長く持続した後に適用した。典型的には血管痙攣は局所用プロスタグランジン組成物の適用後2〜5分に軽減し、10分後には血管は明らかに拡張していた。血管の直径は一般的には血管痙攣中に見られるものの約2倍まで増大し;動脈の拍動の強化も観察される。拡張作用は持続し適用後20分においても観察された。レーザードプラー血流量測定により測定した局所血流は局所用プロスタグランジン組成物の適用前と比較して最大局所血流量において5倍の増大を示していた。血圧および脈拍に有意な変化はみとめられなかった。手術後2週間の観察期間の間、いずれの患者においても二次的な血管痙攣は観察されなかった。創傷治癒は良好に進行した。
【0155】
以上の記述は本発明の説明を意図しており、範囲は添付の請求項により定義される。本発明の精神および範囲を外れることなく多くの変更および改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、ウサギの右(図1A)および左(図1B)の耳の光透過による剃毛背面部の画像である。各図の矢印2本は両方の耳の基部の近傍の中心動脈および静脈に隣接する組織への0.1%アドレナリン溶液2mlの注射後5分に観察された血管痙攣を示す。
【図2】図2は、右耳の底部近傍の中心動脈および静脈に隣接する皮膚への0.4重量%PGEを含有する局所用組成物125mgの局所適用後約5分の図1のウサギの右(図2A)および左(図2B)の耳の光透過による剃毛背面部の画像である。適用後15分において、右耳の全ての血管は血管痙攣部位(2本の矢印の間)も含めて拡張している。全ての血管は正常に拡張し、適用後35分には良好な循環を示した。比較においてブランク対照を投与した左耳の血管は血管痙攣が持続している(矢印、図2B)。
【図3】図3は、図1および図2において説明したウサギ耳における血管痙攣の試験の平均結果を示す代表的グラフである。上記した通り、種々のPGE濃度を有する局所用組成物80mgの単回投与を、血管痙攣が耳中心動脈に生じた典型的な時間の10分後に耳基部の上0.5〜2cmの皮膚領域上に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%のPGEを含む局所用組成物の投与によりそれぞれ80(黒丸)、160(黒三角)、320(X)および640(*)マイクログラム(μg)のPGEの用量、並びにPGEを含まないクリーム(0μgPGE、黒ひし形)および陽性対照(浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物、黒丸)を設けた。
【図4】図4は、経皮レーザードプラー血流量計により測定したウサギ耳の血管痙攣における血管灌流容量の試験の平均結果を示す代表的グラフである。上記した通り、種々のPGE濃度を有する局所用組成物80mgの単回投与を、血管痙攣が耳中心動脈に生じた典型的な時間の10分後に耳基部の上0.5〜2cmの皮膚領域上に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%のPGEを含む局所用組成物の投与によりそれぞれ80(黒丸)、160(黒三角)、320(X)および640(*)マイクログラム(μg)のPGEの用量、並びにPGEを含まないクリーム(0μgPGE、黒ひし形)および陽性対照(浸透増強剤を含有しない0.4%PGE局所用組成物、黒丸)を設けた。測定は血管痙攣の誘導後10分、および、種々のPGE組成物の投与後10、15、30、60、90および120分に、麻酔後の血管の正常な状態について行った。データは平均±標準偏差として示す。Sは血管痙攣の時間;A**は局所用組成物の投与時間を示す。
【図5】図5Aおよび図5Bは、ウサギ大腿動脈の血流の超音波写真を示す。
【図6】図6は、超音波で測定したウサギ大腿動脈の血管痙攣の血管灌流容量の試験の平均結果を示す代表的グラフである。上記した通り、種々のPGE濃度を有する局所用組成物40mgの単回投与を、塩酸アドレナリンの適用後10分に大腿動脈の外科的に露出させた部分の表面に適用した。0.1、0.2、0.4または0.8重量%のPGEを含む局所用組成物の投与によりそれぞれ80(黒丸)、80(黒三角)、160(X)および320(*)マイクログラム(μg)のPGEの用量、並びにPGEを含まないクリーム(0μgPGE、黒ひし形)およびDDAIPを含有しないPGE局所用組成物160μg(黒丸)を設けた。測定は血管痙攣の誘導後5および10分、および、種々のPGE組成物の投与後5、10、15、30、60、90および120分に、麻酔後の血管の正常な状態について行った。データは平均±標準偏差として示す。Sは血管痙攣の時間;A**は局所用組成物の投与時間を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管作用性プロスタグランジン;
浸透増強剤;
多糖類ガムおよびポリアクリル酸重合体よりなる群から選択される重合体濃厚化剤;
脂肪族C〜Cアルコール、脂肪族C〜C30エステル、液体ポリオールおよびこれらの混合物よりなる群から選択される親油性成分;水、および、
約3から約7.4の範囲で組成物に緩衝pH値を与える緩衝系;
を含む半固体組成物。
【請求項2】
前記血管作用性プロスタグランジンがPGE、PGA、PGB、PGF1α、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGA、PGB、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGF、PGF3α、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよび混合物よりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記血管作用性プロスタグランジンがプロスタグランジンE、プロスタグランジンE、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよびその混合物よりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が約5000センチポアズ(cps)から約20000cpsの粘度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が約7000cpsから約13000cpsの粘度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記多糖類ガムがシアシニング多糖類ガムである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記シアシニング多糖類ガムがガラクトマンナンガムである請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記シアシニング多糖類ガムが修飾ガラクトマンナンガムである請求項6記載の組成物。
【請求項9】
前記修飾ガラクトマンナンガムが修飾グアガムである請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記浸透増強剤がアルキル−(N−置換アミノ)アルカノエート、アルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート、(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエート、(N,N−ジ置換アミノ)アルカノールアルカノエート、薬学的に許容されるその塩およびその混合物よりなる群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記浸透増強剤がドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネートまたは薬学的に許容されるその塩である請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記親油性成分が少なくとも1つの脂肪族C〜C30エステルを含む請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記親油性成分がモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびその混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記親油性成分がグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチン、トリステアリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記緩衝系が約3から約6.5の範囲で前記組成物に緩衝pH値をもたらす請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が更にスクロースエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、長鎖アルコールおよびグリセリルエステルよりなる群から選択される乳化剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記乳化剤がグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチン、トリステアリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が更に芳香剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が更に組成物の総重量を基にしてミルテノール約5%までを含む請求項1記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が更に保存料を含む請求項1記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が更に局所麻酔剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項22】
血管作用性プロスタグランジン;
浸透増強剤;
シアシニング多糖類ガムおよびシアシニングポリアクリル酸重合体よりなる群から選択される重合体濃厚化剤;
脂肪族C〜Cアルコール、脂肪族C〜C30エステル、液体ポリオールおよびこれらの混合物よりなる群から選択される親油性成分;水、および、
約3から約7.4の範囲で組成物に緩衝pH値を与える緩衝系;
を含む、半固体組成物の有効量を血管痙攣の治療を必要とする対象の組織の領域に適用すること;
を含むそのような治療の必要な対象における血管痙攣の治療方法。
【請求項23】
前記組織が皮膚である請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記組織が血管外膜(extima)である請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記血管作用性プロスタグランジンがプロスタグランジンE、プロスタグランジンE、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよびその混合物よりなる群から選択される請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記浸透増強剤がアルキル−(N−置換アミノ)アルカノエート、アルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート、(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエート、(N,N−ジ置換アミノ)アルカノールアルカノエート、薬学的に許容されるその塩およびその混合物よりなる群から選択される請求項22記載の方法。
【請求項27】
前記浸透増強剤がドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネートまたは薬学的に許容されるその塩である請求項22記載の方法。
【請求項28】
前記親油性成分が少なくとも1つの脂肪族C〜C30エステルを含む請求項22記載の方法。
【請求項29】
血管作用性プロスタグランジン;
浸透増強剤;
多糖類ガムおよびポリアクリル酸重合体よりなる群から選択される重合体濃厚化剤;
脂肪族C〜Cアルコール、脂肪族C〜C30エステル、液体ポリオールおよびこれらの混合物よりなる群から選択される親油性成分;水、および、
約3から約7.4の範囲で組成物に緩衝pH値を与える緩衝系;
を含む、半固体組成物の有効量を血管の血管外膜に適用すること;
を含む再移植身体部分の微小循環を改善する治療の必要な対象におけるそのような改善のための方法。
【請求項30】
再移植された身体部分の皮膚および身体の隣接皮膚に半固体プロスタグランジン組成物の有効量を適用する工程を更に含む請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記血管作用性プロスタグランジンがプロスタグランジンE、プロスタグランジンE、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよびその混合物よりなる群から選択される請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が約5000センチポアズ(cps)から約20000cpsの粘度を有する請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が約7000cpsから約13000cpsの粘度を有する請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記多糖類ガムがシアシニング多糖類ガムである請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記シアシニング多糖類ガムがガラクトマンナンガムである請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記シアシニング多糖類ガムが修飾ガラクトマンナンガムである請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記修飾ガラクトマンナンガムが修飾グアガムである請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記浸透増強剤がアルキル−(N−置換アミノ)アルカノエート、アルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート、(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエート、(N,N−ジ置換アミノ)アルカノールアルカノエート、薬学的に許容されるその塩およびその混合物よりなる群から選択される請求項29記載の方法。
【請求項39】
前記浸透増強剤がドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネートまたは薬学的に許容されるその塩である請求項29記載の方法。
【請求項40】
前記親油性成分が少なくとも1つの脂肪族C〜C30エステルを含む請求項29記載の方法。
【請求項41】
前記重合体濃厚化剤がポリアクリル酸重合体である請求項29記載の方法。
【請求項42】
前記親油性成分がモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびその混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む請求項29記載の方法。
【請求項43】
前記親油性成分がグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチン、トリステアリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む請求項29記載の方法。
【請求項44】
前記酸性緩衝系が約3から約6.5の範囲で前記組成物に緩衝pHをもたらす請求項29記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が更にスクロースエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、長鎖アルコールおよびグリセリルエステルよりなる群から選択される乳化剤を含む請求項29記載の方法。
【請求項46】
前記乳化剤がグリセリルモノオレエート、トリオレイン、トリミリスチン、トリステアリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つのグリセリルエステルを含む請求項29記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が更に芳香剤を含む請求項29記載の方法。
【請求項48】
前記組成物が更に組成物の総重量を基にしてミルテノール約5%までを含む請求項29記載の方法。
【請求項49】
前記組成物が更に保存料を含む請求項29記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が更に局所麻酔剤を含む請求項29記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が更に局所麻酔剤を含む請求項1に従う方法。
【請求項52】
プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、薬学的に許容されるその塩、その低級アルキルエステルおよびその混合物よりなる群から選択される血管作用性プロスタグランジン;
アルキル−(N−置換アミノ)アルカノエート、アルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート、(N−置換アミノ)アルカノールアルカノエート、(N,N−ジ置換アミノ)アルカノールアルカノエートよりなる群から選択されるアルキル(N−置換アミノ)エステル、薬学的に許容されるその塩およびその混合物よりなる群から選択される浸透増強剤;
多糖類ガムおよびポリアクリル酸重合体よりなる群から選択される重合体濃厚化剤;
脂肪族C〜Cアルコール、脂肪族C〜C30エステル、液体ポリオールおよびこれらの混合物よりなる群から選択される親油性成分;水、および、
約3から約7.4の範囲で組成物に緩衝pH値を与える緩衝系;
を含む、半固体組成物の有効量を組織の表面に適用すること;
を含む組織において局所微小循環を改善する方法。
【請求項53】
前記組織に供給している血管の血管外膜に前記半固体組成物を適用する工程を更に含む請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記組成物を適用する表面が皮膚の表面である請求項52記載の方法。
【請求項55】
前記多糖類ガムがシアシニング多糖類ガムである請求項52記載の方法。
【請求項56】
前記シアシニング多糖類ガムがガラクトマンナンガムである請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記シアシニング多糖類ガムが修飾ガラクトマンナンガムである請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記修飾ガラクトマンナンガムが修飾グアガムである請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記重合体濃厚化剤がポリアクリル酸重合体である請求項52記載の方法。
【請求項60】
前記浸透増強剤がドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネートまたは薬学的に許容されるその塩である請求項52記載の方法。
【請求項61】
前記親油性成分が少なくとも1つの脂肪族C〜C30エステルを含む請求項52記載の方法。
【請求項62】
請求項1の組成物を準備すること;および、
罹患した組織の表面に前記組成物を適用すること;
を含む罹患した組織の再還流傷害を防止する方法。
【請求項63】
前記罹患した組織に供給する血管の血管外膜に前記組成物を適用する工程を更に含む請求項62記載の方法。
【請求項64】
正常な血液灌流量が10分以内に罹患組織において回復する請求項62記載の方法。
【請求項65】
血管痙攣の治療のための医薬の製造のための請求項1から21の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項66】
再移植身体部分における微小循環の治療のための医薬の製造のための請求項1から21の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項67】
再灌流傷害を防止するための医薬の製造のための請求項1から21の何れか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−522136(P2006−522136A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509517(P2006−509517)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/009841
【国際公開番号】WO2004/089381
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(501233743)ネックスメド ホールディングス インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】