説明

プロセッサ及び電子内視鏡システム

【課題】 上記の如き電子ズーム機能を有した装置やシステムにおいて倍率設定が変化した場合であってもモニタに表示される映像の輝度を常に適正なものに設定する。
【解決手段】 電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、その光量を調整可能な光量調整手段と、倍率を設定する倍率設定手段と、設定された倍率で画像が表示されるよう当該画像の情報を抽出する画像情報抽出手段と、抽出された画像情報に含まれる輝度情報に基づいて光量調整手段を制御する調光制御手段とを備えたプロセッサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのプロセッサ、及び、このようなプロセッサを備えた電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
その先端部に備えられた撮像素子で体腔内を撮像する電子内視鏡と、該撮像素子から出力される信号を処理してモニタに出力するプロセッサを備えた電子内視鏡システムが広く知られ実用に供されている。このような電子内視鏡システムにはズーム機能を有するものがあり、それにより術者は、例えば倍率を上げて病変部等の注視すべき部分を詳細に観察することができる。電子内視鏡システムに採用され得るズームの方式には、例えば、画像信号の一部を切り取って拡大表示する電子ズームや、電子内視鏡先端部に組み込まれた変倍光学系によって拡大/縮小像を得る光学ズーム等が挙げられる。前者のズーム方式を採用した場合、例えば先端部の細径化や小型化に有利であり、且つ、製造コストを抑えられるメリットがある。これに対して後者のズーム方式を採用した場合、例えば変倍後であっても鮮明な映像を得られるというメリットがある。前者のズーム方式を採用した電子内視鏡システムが例えば特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開平9−113819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記特許文献1に示されたような電子内視鏡システムでは、倍率設定が変化しても照明光量が変化しないため、例えば管空内の遠景箇所等の暗い部分を拡大表示した場合、モニタに表示される映像は暗いままである。また、例えば輝度信号が飽和状態に近いような部分を拡大表示した場合、その映像は、全体的に過度に明るいものとなってしまう。
【0004】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、上記の如き電子ズーム機能を有した装置やシステムにおいて倍率設定が変化した場合であってもモニタに表示される映像の輝度を常に適正なものに設定することができるプロセッサ、及び、電子内視鏡システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係るプロセッサは、電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのものであり、該電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、その光量を調整可能な光量調整手段と、該倍率を設定する倍率設定手段と、設定された倍率で画像が表示されるよう当該画像の情報を抽出する画像情報抽出手段と、抽出された画像情報に含まれる輝度情報に基づいて光量調整手段を制御する調光制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
なお、上記プロセッサにおいて、調光制御手段が、該輝度情報と所定の参照情報との比較結果に基づいて光量調整手段を制御することができる。
【0007】
また、上記プロセッサにおいて、光量調整手段が、照明光量を物理的に制限し得る絞り機構であっても良い。
【0008】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係るプロセッサは、電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのものであり、該電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、その光量を調整可能な光量調整手段と、該電子内視鏡から輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、該倍率を設定する倍率設定手段と、該輝度情報及び設定された倍率に基づいて光量調整手段を制御する調光制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、上記プロセッサにおいて、調光制御手段が、設定された倍率に基づいて、該輝度情報を、該表示部に表示されるべき画像情報に対応した表示輝度情報と、表示されない画像情報に対応した非表示輝度情報とに分離し、該表示輝度情報を用いて光量調整手段を制御するよう構成されていても良い。また、該表示輝度情報と所定の参照情報との比較結果に基づいて光量調整手段を制御するよう構成されていても良い。また、該表示輝度情報に加えて、該非表示輝度情報を用いて光量調整手段を制御するよう構成されていても良い。
【0010】
また、上記の課題を解決する本発明の更に別の態様に係るプロセッサは、電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのものであり、該電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、その光量を調整可能な光量調整手段と、該電子内視鏡から輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、該倍率を設定する倍率設定手段と、設定された倍率で画像が表示されるよう当該画像の情報を抽出する画像情報抽出手段と、該輝度情報及び設定された倍率、又は、抽出された画像情報に含まれる輝度情報の何れか一方に基づいて光量調整手段を制御する調光制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
なお、上記プロセッサにおいて、光量調整手段が、照明光量を物理的に制限し得る絞り機構であっても良い。
【0012】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る電子内視鏡システムは、上記プロセッサと、体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係る電子内視鏡システムは、上記プロセッサの中で輝度情報取得手段を有したプロセッサと、体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡とを備えたものであり、電子内視鏡が、撮像素子の出力信号に所定の処理を施す信号処理手段と、該出力信号の中から所定の処理が施される前の段階の処理前輝度信号を抽出する輝度信号抽出手段とを有し、輝度情報取得手段が、輝度信号抽出手段により抽出された処理前輝度信号を取得することを特徴とする。
【0014】
なお、上記電子内視鏡システムで実行される該所定の処理が、プロセッサとの信号の整合性をとるための処理であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプロセッサ及び電子内視鏡システムでは、表示部に表示され得る観察領域内の被写体の輝度のみに基づいて調光制御が実行される。すなわち設定された倍率が加味された輝度情報を用いて調光制御が実行されるため、倍率の変化によって映像が明るくなり過ぎたり、又は、暗くなり過ぎたりすることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の電子内視鏡システムについて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム100の構成を示したブロック図である。電子内視鏡システム100は、患者の体腔内を術者が観察・診断するためのシステムであり、体腔内を撮像するための電子内視鏡10、光源装置と画像処理装置とを兼ね備えたプロセッサ30、及び、体腔内の映像を表示可能なモニタ60を有している。
【0018】
電子内視鏡10は、体腔内に挿入される可撓性を有した挿入部可撓管1を有している。電子内視鏡10内部には、その先端部から末端部に掛けて、光の伝送路である光ファイバから成るライトガイド2が延在している。挿入部可撓管1の先端部前面には照明光を照射するための配光レンズ3が、ライトガイド2の一端(先端側)と結合するように設けられている。また、上記先端部前面には配光レンズ3の他に対物レンズ4が設けられており、その後方に固体撮像素子5が配置されている。また、複数の伝送路が束ねられた信号線6が固体撮像素子5から電子内視鏡10の末端部に掛けて引き出されている。電子内視鏡10の末端部にはコネクタ部7が設けられており、これにより、電子内視鏡10はプロセッサ30と光学的及び電気的に接続される。なお、コネクタ部7近傍には、電子内視鏡10とプロセッサ30との間で信号の整合性をとるため、固体撮像素子5の出力信号に所定の処理を施すDSP(Digital Signal processor)21が配置されている。ここでいう所定の処理には、例えば、A/D変換処理、信号のダイナミックレンジを所定の範囲に制限するクリッピング処理、輝度の階調特性や色再現性特性が適切になるようにγ(ガンマ)特性を補正するガンマ補正処理等が含まれる。上記出力信号は、これらの処理を施されることにより、プロセッサ30の仕様を満たすよう変換される。
【0019】
プロセッサ30は、光源装置として、ランプ用電源31、ランプ32、絞り33、モータ34、モータドライバ35、調光回路70、及び、コンデンサレンズ36を有している。ランプ32は、ランプ用電源31から供給される電圧によって点灯する、体腔内照明用の白色光の光源であり、例えばメタルハライドランプや、キセノンランプ、ハロゲンランプ等が想定される。なお、ランプ32は、コリメートレンズを有しており、上記白色光を平行光に変換後に出射する。絞り33は、ランプ32から出射された白色光を物理的に制限するものであり、その開口径が可変し得る。モータ34は、後述の調光制御を行う調光回路70からの信号に基づいて作動するモータドライバ35によって駆動制御され、絞り33の開口形状を可変させる。これにより、白色光が適正な光量に調整されてコンデンサレンズ36に向けて進行する。ここで、電子内視鏡10とプロセッサ30とが接続されているとき、ライトガイド2の他端(末端側)は、コンデンサレンズ36前方であり、その焦点位置近傍に位置する。従ってコンデンサレンズ36を通過した白色光は、ライトガイド2の他端近傍に収束して、その内部に入射して進行し、配光レンズ3を介して外部を照明する。これにより例えば体腔内が照明され、術者は体腔内の観察・診断或いは処置を行うことができる。
【0020】
配光レンズ3から照射された照明光は、観察対象である生体組織を照明し、当該組織で反射される。この反射光は、対物レンズ4に入射し、そのパワーによって後方に配置された固体撮像素子5の受光面(複数の受光素子がマトリクス状に配列された面)上に観察対象(例えば体腔内の生体組織)の光学像として結像する。結像された光学像は、各受光素子においてその光量に応じた電荷として蓄積され、生体組織の像となり得る画像信号に変換される。ここで生成された画像信号は信号線6を伝送してDSP21に入力される。なお、DSP21は所定のタイミングパルスを出力する同期信号発生回路を含んでおり、固体撮像素子5は、このタイミングパルスに基づいて駆動し、蓄積された電荷すなわち画像信号をDSP21に出力する。
【0021】
DSP21は、例えば本出願人により提案された特許文献2(特開平11−169339号公報)に記載された信号処理装置と同様の機能を有しており、固体撮像素子5からの出力信号をサンプリングして色分離して色差信号R−Y、B−Y、輝度信号YIRIS、及び、輝度信号Yとし、プロセッサ30に向けて出力する。なお、輝度信号YIRISは、クリッピングやガンマ補正等の処理が施される前の段階の輝度信号であり、固体撮像素子5からの出力信号と互いにリニアの関係(すなわち比例関係)にある。従って調光用の信号として最適である。
【0022】
プロセッサ30は、画像処理を行う構成として、システムコントロールユニット51、操作パネル52、ズーム処理回路53、タイミング発生器54、メモリ55、D/A変換器56A、56B、56C、及び、映像信号処理回路57を有している。DSP21から出力された色差信号R−Y、B−Y、及び、輝度信号Yは、それぞれズーム処理回路53に入力する。
【0023】
ここで、操作パネル52は、術者がプロセッサ30を操作するための各種入力キーを備えている。このような入力キーの一つに、例えば観察領域の倍率を設定するものがある。操作パネル52の操作によって倍率が変更されるとモニタ60に表示される映像の範囲も変化する。例えば倍率を大きく設定した場合、表示中の一部の観察領域が拡大表示される。このため、例えば特定部分を詳細に観察・診断するような場合には、倍率を大きく設定することが有効である。また、例えば倍率を小さく設定した場合、表示される観察領域が広くなり、術者は例えば病変部及びその周辺を見渡すことができる。従って例えば病変部とその周辺との相関を把握したい場合、倍率を小さく設定することが有効である。
【0024】
ズーム処理回路53は、システムコントロールユニット51の制御下で作動し、操作パネル52で設定されている倍率でモニタ60に映像が表示されるようズーム処理を実行する。例えば操作パネル52で設定可能な倍率が段階的にある場合、ズーム処理回路53は、それぞれの倍率に対応した領域の画素の各信号(色差信号R−Y、B−Y、及び、輝度信号Y)を、全画素中の各信号から抽出するようなデータを有している。ズーム処理回路53は、そのデータに基づいて、表示されるべき画素の各信号のみをメモリ55に出力する。例えば固体撮像素子5の有効画素が水平方向に640で垂直方向に480あるとし、設定されている倍率が1倍のとき、ズーム処理回路53は、全画素の各信号をメモリ55に出力する。これに対して倍率が2倍のとき、固体撮像素子5の受光面中心に位置する画素を中心とした水平方向に320、垂直方向に240の画素の各信号をメモリ55に出力する。
【0025】
メモリ55は、複数のフレームメモリを有しており、各信号をタイミング発生器54によって出力されるタイミングパルスに同期させてそれぞれのフレームメモリに格納する。これらの各信号は、所定のタイミングで同時に読み出しされ、D/A変換器56A、56B、56Cによってアナログ信号に変換され、映像信号処理回路57に出力される。
【0026】
映像信号処理回路57は、入力された信号を、ズーム処理回路53で抽出された画素の数(別の言い方をすると設定倍率)に拘わらずモニタ60に表示され得る映像が常に同一サイズとなるよう処理する。例えば設定倍率が1倍のときには固体撮像素子5における一画素がモニタ60中で一画素で表示されるよう処理する。これに対して倍率が2倍のときには固体撮像素子5における一画素がモニタ60では四画素(二行二列)で表示されるよう処理する。すなわち、モニタ60の二行二列の四画素が同一の色差及び輝度信号に基づいて表示されるよう補間処理する。上記処理後、所定のフォーマットの映像信号に変換してモニタ60に出力する。これにより、モニタ60に例えば患者の体腔内の映像が表示される。なお、ここでいう所定のフォーマットには、例えばコンポジットビデオ信号や、Y/Cビデオ信号、RGBビデオ信号等がある。また、上記補間処理をズーム処理回路53で実行させるよう、プロセッサ30中の信号処理回路を構成しても良い。
【0027】
ここで図2に、本実施形態のプロセッサ30が有している調光回路70の概略構成を示す。また、図3(a)〜(b)、図4(a)、(b)、図5(a)、(b)に、調光回路70中の各処理段階の信号の波形を示す。図3〜図5の各波形において、縦軸が信号の出力値であり、横軸が時間である。調光回路70は、DC再生回路71、82、切り出し回路72、LPF(Low Pass Filter)73、77、83、ホールド回路74、比較器75、78、84、アンプ76、80、85、微分器79、加算器81、及び、スイッチ回路86を有している。
【0028】
DC再生回路71は、DSP21の同期信号発生回路から出力されるクランプパルスCに基づいて、図3(a)に示された、DSP21から出力される輝度信号YIRISに対してクランプ処理を実行する。すなわち輝度信号YIRISは、その信号レベル(例えば黒レベル)が所定の基準電圧に基づいてDC再生される。DC再生後、輝度信号YIRISは切り出し回路72に出力される。
【0029】
切り出し回路72は、図3(b)に示された、ズーム処理回路から出力されるズームパルスに基づいて、輝度信号YIRISの一部を切り出す。ズームパルスはモニタ60に表示されるべき映像の信号(別の言い方をすると、メモリ55に出力されるべき画素情報に対応した信号)を抽出するためのものであり、「H」の期間に対応する画素がモニタ60に表示されるべきものであり、「L」の期間に対応する画素がモニタ60に表示されないものである。切り出し回路72は、輝度信号YIRISを、ズームパルスが「H」の期間中にはLPF73に出力し、「L」の期間中にはLPF77に出力する。これにより、LPF73には、図3(c)に示された輝度信号であって、「H」の期間中は輝度信号YIRISそのままの値であり、「L」の期間中は例えばクランプレベルに固定された値となるズーム内輝度信号が入力する。また、LPF77には、図4(a)に示された輝度信号であって、「H」の期間中は例えばクランプレベルに固定された値となり、「L」の期間中は輝度信号YIRISそのままの値となるズーム外輝度信号が入力する。なお、観察領域の倍率を上げるに従ってモニタ60で映像として表示される固体撮像素子5の画素が低減することから、前記の倍率と「H」の期間は互いに反比例の関係にあると言える。
【0030】
LPF73は、所定の時定数に基づいてズーム内輝度信号を積分する。これによりズーム内輝度信号は、平均化された滑らかな波形の輝度信号(図3(d)参照)に変換されてホールド回路74に出力された後、調光に不要な期間の信号の出力値を一定にするようホールド処理されて(図3(e)参照)、比較器75に出力される。
【0031】
比較器75には、ホールド回路74からの上記ホールド後の輝度信号以外に、システムコントロールユニット51からの参照電圧Vrefが入力される。参照電圧Vrefは、電子内視鏡10に供給されるべき照明光の目標光量に対応した参照値であり、モニタ60に表示される映像の輝度を適正にするためのものである。比較器75は、上記ホールド後の輝度信号と参照電圧Vrefとを比較して、参照電圧Vrefに対する上記ホールド後の輝度信号の出力(すなわち撮像対象の輝度)の差分を算出してアンプ76に出力する。アンプ76は、前記の差分信号を増幅して加算器81に出力する。
【0032】
LPF77は、所定の時定数に基づいてズーム外輝度信号を積分する。これによりズーム外輝度信号は、平均化された滑らかな波形の輝度信号(図4(b)参照)に変換されて比較器78に出力される。
【0033】
比較器78には、LPF77からの上記積分後の輝度信号以外に、先と同一の参照電圧Vrefが入力される。比較器78は、上記積分後の輝度信号と参照電圧Vrefとを比較して、参照電圧Vrefに対する上記積分後の輝度信号の出力(すなわち撮像対象の輝度)の差分を算出して微分器79に出力する。微分器79は比較器78から出力された前記の差分信号を微分してアンプ80に出力し、この差分信号はアンプ80により増幅されて加算器81に出力される。
【0034】
加算器81は、アンプ76とアンプ80から出力された信号を加算してスイッチ回路86に出力する。スイッチ回路86は、所定のスイッチ信号に基づいて作動し、前記の加算信号とアンプ85から出力される後述の信号をモータドライバ35に択一的に出力する。なお、所定のスイッチ信号は、例えば操作パネル52における設定に応じ、システムコントロールユニット51から出力される。
【0035】
モータドライバ35は、例えば上記加算信号に基づいてモータ34を制御し、絞り33を適切な開口径に絞る。この結果、体腔内への照明光量が物理的に調整されて、モニタ60に表示される映像は、その輝度が適正なものとなり、例えば画素が光量過剰で白く潰れてしまったり、光量不足で黒く潰れてしまったりすることが軽減され、術者は、鮮明な映像で診断等を行うことができるようになる。
【0036】
ここで、アンプ76から出力される信号は、モニタ60に表示され得る観察領域内の被写体の輝度のみに基づいて生成されている。すなわち前記の信号では観察領域外の被写体の輝度が考慮されていないため、これを調光制御に用いた場合、観察の範囲内だけ(別の観点では倍率)を加味した照明光量の調整が行われ、倍率の変化によって映像が明るくなり過ぎたり、又は、暗くなり過ぎたりすることがなくなる。
【0037】
なお、本実施形態ではアンプ76及びアンプ80出力される二つの信号を加算して調光信号としているが、別の実施形態ではアンプ76から出力される信号のみを調光信号として用いても良い。このような場合であっても倍率が加味された調光が行われ、モニタ60に映し出される映像の輝度は安定する。
【0038】
しかしながらアンプ80から出力される信号をも調光信号として用いると、より優れた調光制御が実施可能となる。例えばアンプ76から出力される信号のみで調光制御を行う場合において、体腔内観察中に映像の周辺部分に壁部等の被写体が突然映し出されたとき、当該被写体の反射によってハレーションが発生する。ハレーション発生後、調光制御により絞り33が絞られてハレーションが抑えられるが、絞り動作の応答に掛かる期間中、ハレーションが出ている映像がモニタ60に表示され続けてしまうことがある。ここで、アンプ80から出力される信号も調光信号として用いた場合、ハレーションの発生を事前に防止し、又は、その量を抑えることが可能となる。
【0039】
アンプ80から出力される信号は、モニタ60に表示され得る観察領域外の被写体の輝度のみに基づいて生成されている。例えば固体撮像素子5で光学像として受光されているが、観察領域外であるためモニタ60上には映し出されない被写体があるとする。このような被写体は、観察領域から僅かに外れた場所に位置するため、電子内視鏡10の観察方向を変更したり倍率を下げたりしたときに高い確率で観察領域周辺部に現れる。ここで、切り出し回路72において生成されたズーム外輝度信号には、このような被写体の輝度信号が例えば図4(a)に示されるような鋭い変化のある波形として現れる。これを微分器79で微分することにより、鋭い変化のある部分(すなわち観察領域外の被写体の位置情報)だけを強調したような信号が生成される。アンプ80で増幅されたこの信号をアンプ76からの信号に加算して調光信号として用いると、モータドライバ35は、その出力値が高い部分に対して絞り33を速く動作させる。このため、絞り動作の応答時間が短くなり、結果として、ハレーションの発生が事前に防止され、又は、その量が抑えられる。なお、アンプ80から出力される信号は、あくまで観察領域外の輝度情報であるため、補助的に用いられるべきである。本実施形態では、輝度が変化した際の絞り33の初期動作時のみ、アンプ80からの信号を用いるようにしている。
【0040】
また、本実施形態の調光回路70は、図5(a)に示された、ズーム処理回路53でズーム処理された後の輝度信号に基づいて調光信号を生成することもできる。ズーム処理後の輝度信号は、DC再生回路71と同様の機能を有するDC再生回路82に出力され、これによりクランプ処理されてLPF83に出力される。
【0041】
LPF83は、所定の時定数に基づいてズーム処理後の輝度信号を積分する。これによりズーム処理後の輝度信号は、平均化された滑らかな波形の輝度信号(図5(b)参照)に変換されて比較器84に出力される。
【0042】
比較器84には、LPF83からの上記積分後の輝度信号以外に、先と同一の参照電圧Vrefが入力される。比較器84は、上記積分後の輝度信号と参照電圧Vrefとを比較して、参照電圧Vrefに対する上記積分後の輝度信号の出力(すなわち撮像対象の輝度)の差分を算出してアンプ85に出力する。アンプ85は、前記の差分信号を増幅してスイッチ回路86に出力する。スイッチ回路86は、アンプ85からの信号を出力するよう設定されているとき、当該信号をモータドライバ35に出力する。モータドライバ35は、例えばこの信号に基づいてモータ34を制御し、絞り33を適切な開口径に絞る。この結果、体腔内への照明光量が物理的に調整されて、モニタ60に表示される映像は、その輝度が適正なものとなり、例えば画素が光量過剰で白く潰れてしまったり、光量不足で黒く潰れてしまったりすることが軽減され、術者は、鮮明な映像で診断等を行うことができるようになる。
【0043】
アンプ85から出力される信号は、アンプ76から出力される信号と同様に、モニタ60に表示され得る観察領域内の被写体の輝度のみに基づいて生成されている。従ってこれを調光制御に用いた場合でも、観察の範囲内だけ(別の観点では倍率)を加味した照明光量の調整が行われ、倍率の変化によって映像が明るくなり過ぎたり、又は、暗くなり過ぎたりすることがなくなる。
【0044】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0045】
なお、本実施形態では輝度信号YIRISに基づいて生成された信号と、ズーム処理後の輝度信号に基づいて生成された信号とを調光信号として択一的に用いているが、別の実施形態では何れか一方の信号を生成して調光信号として用いるようプロセッサを構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のプロセッサが有している調光回路の構成を示したブロック図である。
【図3】調光回路における各処理段階の信号の波形を示した図である。
【図4】調光回路における各処理段階の信号の波形を示した図である。
【図5】調光回路における各処理段階の信号の波形を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
10 電子内視鏡
30 プロセッサ
53 ズーム処理回路
60 モニタ
70 調光回路
72 切り出し回路
100 電子内視鏡システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのプロセッサにおいて、
該電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、
その光量を調整可能な光量調整手段と、
該倍率を設定する倍率設定手段と、
設定された倍率で画像が表示されるよう当該画像の情報を抽出する画像情報抽出手段と、
抽出された画像情報に含まれる輝度情報に基づいて前記光量調整手段を制御する調光制御手段と、を備えたこと、を特徴とするプロセッサ。
【請求項2】
前記調光制御手段が、該輝度情報と所定の参照情報との比較結果に基づいて前記光量調整手段を制御すること、を特徴とする請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項3】
前記光量調整手段が、照明光量を物理的に制限し得る絞り機構であること、を特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載のプロセッサ。
【請求項4】
電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのプロセッサにおいて、
該電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、
その光量を調整可能な光量調整手段と、
該電子内視鏡から輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、
該倍率を設定する倍率設定手段と、
該輝度情報及び設定された倍率に基づいて前記光量調整手段を制御する調光制御手段と、を備えたこと、を特徴とするプロセッサ。
【請求項5】
前記調光制御手段が、設定された倍率に基づいて、該輝度情報を、該表示部に表示されるべき画像情報に対応した表示輝度情報と、表示されない画像情報に対応した非表示輝度情報とに分離し、
該表示輝度情報を用いて前記光量調整手段を制御すること、を特徴とする請求項4に記載のプロセッサ。
【請求項6】
前記調光制御手段が、該表示輝度情報と所定の参照情報との比較結果に基づいて前記光量調整手段を制御すること、を特徴とする請求項5に記載のプロセッサ。
【請求項7】
前記調光制御手段が、該表示輝度情報に加えて、該非表示輝度情報を用いて前記光量調整手段を制御すること、を特徴とする請求項4又は請求項5の何れかに記載のプロセッサ。
【請求項8】
電子内視鏡により撮像された画像を設定された倍率で表示部に表示させるためのプロセッサにおいて、
該電子内視鏡に提供される照明光を出射する光源と、
その光量を調整可能な光量調整手段と、
該電子内視鏡から輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、
該倍率を設定する倍率設定手段と、
設定された倍率で画像が表示されるよう当該画像の情報を抽出する画像情報抽出手段と、
該輝度情報及び設定された倍率、又は、抽出された画像情報に含まれる輝度情報の何れか一方に基づいて前記光量調整手段を制御する調光制御手段と、を備えたこと、を特徴とするプロセッサ。
【請求項9】
前記光量調整手段が、照明光量を物理的に制限し得る絞り機構であること、を特徴とする請求項4から請求項8の何れかに記載のプロセッサ。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかに記載のプロセッサと、
体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡と、を備えたこと、を特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項11】
請求項4から請求項9の何れかに記載のプロセッサと、体腔内を撮像する撮像素子を有した電子内視鏡とを備えた電子内視鏡システムであって、
前記電子内視鏡が、
前記撮像素子の出力信号に所定の処理を施す信号処理手段と、
該出力信号の中から所定の処理が施される前の段階の処理前輝度信号を抽出する輝度信号抽出手段と、を有し、
前記輝度情報取得手段が、前記輝度信号抽出手段により抽出された処理前輝度信号を取得すること、を特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項12】
該所定の処理が、前記プロセッサとの信号の整合性をとるための処理であること、を特徴とする請求項11に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−20762(P2007−20762A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205230(P2005−205230)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】