説明

プロテインキナーゼCK2の強力阻害剤として有用な縮合ピリジン誘導体

本発明は、新しいファミリーのプロテインキナーゼCK2阻害剤として特異的な式(I)の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩の使用に関し;本発明はまた、がん;自己免疫疾患及び炎症性疾患;感染性疾患;糖尿病;血管新生関連障害;網膜症及び心肥大から選択される障害及び/又は疾患の予防及び/又は治療用の医薬組成物の調製への式(I)の化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインキナーゼCK2阻害する医薬品としての特定の式(I)の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩の使用に関し、本発明はまた、がん;自己免疫疾患及び炎症性疾患;感染性疾患;糖尿病及び心肥大から選択される障害及び/又は疾患の予防及び/又は治療用の医薬組成物の調製への式(I)の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CK2(又はカゼインキナーゼ2)タンパク質は、真核生物においてよく保存されている、多機能性で且つ遍在性のセリン/スレオニンキナーゼであり、このホロ酵素は、αα’β、α’β又はαβヘテロ四量体の形態で結合している、2つの触媒サブユニットα及びα'と2つの同一の調節サブユニットβとから構成されている(図1を参照)。
【0003】
このタンパク質は、多くの生理的又は病理学的プロセスの制御において不可欠な役割を果たし、胚発生(embryonic development)に、最終分化(terminal differentiation)に、並びに細胞周期進行及び細胞生存の制御に不可欠であり、ウイルス起源の腫瘍を含む多くのがんにおいては、その発現が調節解除されてアポトーシスの阻害をもたらし(Ahmedら、Trends In Cell Biology、2002、12、226〜230;Litchfield、Biochem.J.、2003、369、1〜15);細胞成長(cell growth)の促進及びアポトーシスの抑制におけるその二重機能は、その発がん能を説明し得る(Tawficら、Histol Histopathol.、2001年4月;16(2),573〜82)。
【0004】
CK2タンパク質はまた、糸球体腎炎のような炎症性疾患に(Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、2005、102(21)、7736〜7741)、生活環に不可欠なタンパク質のリン酸化に細胞CK2を利用する、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)及びポリオウイルス(PV)のような一部の感染性疾患に、並びに病原寄生虫感染症に(Meggioら、Biochemistry、2004、43、12931〜12936)関与する。
【0005】
異常なCK2発現と、前立腺がん(Laramasら、Eur.J.Cancer、2007、43、928〜934)及び急性骨髄性白血病(Kimら、Clin.Cancer Res.、2007、13、1019〜1028)における好ましくない予後マーカーとの最近の関連付けから、腫瘍形成におけるCK2の意味が確認されている。
【0006】
多くの生理的プロセスにおける不可欠な役割のため及びその機能不全に関連付けられる病態の重要性のため、CK2タンパク質は、医薬品、特に抗がん剤及び抗ウイルス剤の開発に重要な薬理学的標的となっている。
【0007】
したがって、CK2タンパク質は、化学的阻害剤の同定及び特性決定を裏付ける、治療的介入に適する妥当な生理病理学的標的であると考えられる(Paganoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、2004、321、1040〜1044;Duncanら、Biochimica et Biophysica Acta、2008、1784、33〜47)。
【0008】
がん、糖尿病又は炎症のような多くの疾患はプロテインキナーゼCK2の摂動(perturbation)と関連するため、このタンパク質の効果的な阻害剤が必要とされている。
【0009】
これまで先行技術において、いくつかの分子が、CK2タンパク質を阻害できると記載されている:
- 4種の主要分子:ケルセチン、エモジン、4,5,6,7−テトラブロモ−1H−ベンゾトリアゾール(TBB)及びその誘導体並びに5−オキソ−5,6−ジヒドロインドロ−(1,2−a)キナゾリン−7−イル)酢酸を含むATP競合的阻害剤(Duncanら、Biochimica et Biophysica Acta、2008、1784、33〜47)。CK2の触媒活性を特異的に阻害できるこれらの分子としては、CK2に対してより顕著な選択性を示すTBB、5,6−ジクロロ−1−β−D−リボフラノシルベンズイミダゾール(DRB)の誘導体(Sarnoら、FEBS lett.、2001、496、44〜48;Duncanら、Molecular and Cellular Proteomics、2008、7、1077〜1088)を挙げることができる。しかし、TBB及び他のキナーゼ基質類似体は、細胞ATPを用いて他の既知又は未知タンパク質の活性を阻害できるが;このような製品の特異性は確実でないので、それらの使用はインビボでは除外されている;
− 米国特許出願公開第2002/147163号及び米国特許第6,455,307号に記載されている、CK2のαサブユニットに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド。しかし、インビトロで立証されているCK2の阻害は、部分的且つ一過性であって、非常に高用量のアンチセンスオリゴヌクレオチド(細胞の感受性に応じて数十又は数百μg/mL)を必要とする;
− 国際公開WO2005/005632に開示されているsiRNA。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ahmedら、Trends In Cell Biology、2002、12、226〜230
【非特許文献2】Litchfield、Biochem.J.、2003、369、1〜15)
【非特許文献3】Tawficら、Histol Histopathol.、2001年4月;16(2),573〜82
【非特許文献4】Yamadaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、2005、102(21)、7736〜7741
【非特許文献5】Meggioら、Biochemistry、2004、43、12931〜12936
【非特許文献6】Laramasら、Eur.J.Cancer、2007、43、928〜934
【非特許文献7】Kimら、Clin.Cancer Res.、2007、13、1019〜1028
【非特許文献8】Paganoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、2004、321、1040〜1044
【非特許文献9】Duncanら、Biochimica et Biophysica Acta、2008、1784、33〜47
【非特許文献10】Sarnoら、FEBS lett.、2001、496、44〜48
【非特許文献11】Duncanら、Molecular and Cellular Proteomics、2008、7、1077〜1088
【非特許文献12】Bisseryら、Investigational New Drugs、1993、11、263〜277
【非特許文献13】Nabievら、Biochemistry、1994、33、9013〜9023
【非特許文献14】Riouら、Cancer Research、1993、53、5987〜5993)
【非特許文献15】Nguyenら、Anticancer Drug Design、1995、10、277〜297
【非特許文献16】C.H.Nguyen、J−M.Lhoste、F.Lavelle、M.C.Bissery及びE.Bisagni、J.Med.Chem.、1990、33、1519〜1528
【非特許文献17】C.H.Nguyen、F.Lavelle、J.F.Riou、M.C.Bissery、C.Huel及びE.Bisagni、Anti−Cancer Drug Design、1992、7、235〜251
【非特許文献18】S.Vinogradov、V.Roig、Z.Sergueeva、C.H.Nguyen、P.Arimondo、N.T.Thuong、E.Bisagni、J−S.Sun、C.Helene及びU.Asseline、Bioconjugate Chem.、2003、14、120〜135
【非特許文献19】C.H.Nguyen、E.Fan、J.F.Riou、M.C.Bissery、P.Vrignaud、F.Lavelle及びE.Bisagni、Anti−Cancer Drug Design、1995、10、277〜297
【非特許文献20】C.Escude、C.H.Nuyen、S.Kukredi、Y.Janin、J−S.Sun、E.Bisagni、T.Garestier及びC.Helene、Proc.Natl.Acad.Sci.、1998、95、3591〜3596
【非特許文献21】Bioconjugate Chem.、2003、14、120〜135
【非特許文献22】Prudent,R.ら(2008)Mol Cell Biochem 316(1−2):71〜85
【非特許文献23】Filholら(Biochemistry 29:9928〜36(1990))
【非特許文献24】Thi My−Nhung Hoangら、Cell Cycle、2009年、第8巻、第5号、765〜772頁
【非特許文献25】Prudentら、Biochim Biophys Acta.2008;1780(12):1412〜20
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/147163号
【特許文献2】米国特許第6,455,307号
【特許文献3】国際公開WO2005/005632
【特許文献4】EP0402232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、例えば、がん化学療法における耐性の問題を克服するのに有効な方法でプロテインキナーゼCK2を特異的に阻害し得る新規分子を提供することが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、今回、プロテインキナーゼCK2の競合的阻害剤を同定した。
【0014】
本発明の主題は、プロテインキナーゼCK2阻害薬としての使用が開示されていない特異的な化合物に関する。この化合物は、医薬品として使用するための、式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
− 環Cは、ピロール複素環又はピラジン複素環であり、
− Rは、−H又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、環Cがピロール複素環である場合にのみ存在し、
− Rは、−H、二重結合によって環Dに連結されている酸素原子、ハロゲン原子、1,2−エタンジオキシ基(−O−CH−CH−O)、1,2−エタンジチオ基(−S−CH−CH−S−)、フェニル基、ベンジル基、−OR、−SR、−NHR若しくは−N(R)基(式中、Rは−H又は炭素数1〜6のアルキル基である)であり、
− Rは、Rが二重結合によって環Dと連結されている酸素原子、1,2−エタンジオキシ基又は1,2−エタンジチオ基である場合にのみ存在し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、
− R及びRは、同一であるか異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素原子3及び4を介して環Dと縮合されている置換若しくは非置換アリール環を表し、
− R及びRは、水素原子、又は炭素原子6及び7を介して環Bと縮合されているアリール環を表し、前記アリール環は少なくとも1つの−OH又は−NHR’基(式中、R’は、−H又は炭素数1〜6のアルキル基である)によって置換されており、
− R及びRは、水素原子、又は炭素原子8及び9を介して環Bと縮合されているアリール環を表し、前記アリール環は少なくとも1つの−OH又は−NHR’基(式中、R’は、−H又は炭素数1〜6のアルキル基である)によって置換されており、
但し、
・ R及びRが少なくとも1つの−OH若しくは−NHR’基によって置換されているアリール環を表す場合には、R及びRは水素原子であり、
・ R及びRが少なくとも1つの−OH若しくは−NHR’基によって置換されているアリール環を表す場合には、R及びRは水素原子である]
の化合物及びそれらの互変異性型並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「アルキル」は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチル−プロピル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル及びヘキシルを意味する。
【0018】
用語「アリール」は、6〜10個の環炭素原子を有する単環式炭化水素芳香環系又は複素環系を意味する。
【0019】
本明細書中で使用されるように、用語「ハロゲン」は、−F、−Cl、−Br及び−I、好ましくは−Cl、−Br及び−I、より好ましくは−Clから選択されるハロゲン原子を意味する。
【0020】
「薬学的に許容される」という表現は、ヒト及び動物の組織との接触に好適であり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答又は他の合併症を起こさず、妥当なベネフィット/リスク比に相応する化合物、物質、組成物及び/又は剤形を意味する。
【0021】
本発明の化合物と類似した構造を示す化合物は、以前にも記載されている。特に、EP0402232は、一般式:
【0022】
【化2】

【0023】
のピリドベンゾインドール誘導体及びそれらの酸付加塩を記載しており、これらの化合物は抗腫瘍剤として有用である。
【0024】
これらのうち、RP60475又はイントプリシンと称される、R=−H、R=−OH、R=−CH、alk=−(CH−及びR=−CHの化合物が広く研究されている。この化合物は、DNAトポイソメラーゼI及びII阻害剤であり、強いDNA結合親和性を示す。インビトロでは、この化合物は、種々の細胞型に対して細胞毒性があり、固形腫瘍状細胞に対する細胞毒性が比較的大きいことがわかった(Bisseryら、Investigational New Drugs、1993、11、263〜277;Nabievら、Biochemistry、1994、33、9013〜9023;Riouら、Cancer Research、1993、53、5987〜5993)。
【0025】
Nguyenらは、ピロール複素環がピラジン複素環によって置き換えられた同様な化合物を合成した(Nguyenら、Anticancer Drug Design、1995、10、277〜297)。特に、式:
【0026】
【化3】

【0027】
[式中、R=−H又は−CH、alk=−(CH−又は−(CH−及びR’=−CH又は−C
の化合物は、強いDNAトポイソメラーゼI及びII阻害剤であり、抗腫瘍特性を示す。
【0028】
この論文は、式:
【0029】
【化4】

【0030】
[式中、R=−OH又は−OCH
の化合物も記載しているが、これらの化合物は、抗腫瘍性活性を有さない。このことは、これらの化合物の化学構造の変化は、微小であっても、異なる生物活性をもたらし得ることを示している。
【0031】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、プロテインキナーゼCK2の選択的阻害剤であって、トポイソメラーゼ阻害剤ではないことがわかった。したがって、これらの化合物は、CK2調節解除を伴う病態の予防及び/又は治療の開発において有用であることがわかった。
【0032】
好ましい一実施形態において、本発明の式(I)の化合物の環Cは、下記式(Ia):
【0033】
【化5】

【0034】
[式中、基R、R、R、R、R、R、R、R及びRは前記で定義した通りであり、基Rは好ましくは水素原子である]
を定義するピロール複素環である。
【0035】
別の好ましい実施形態において、本発明の式(I)の化合物の環C、下記式(Ib):
【0036】
【化6】

【0037】
[式中、基R、R、R、R、R、R、R及びRは前記で定義した通りである]
を定義するピラジン複素環である。
【0038】
好ましくは、R及びR又はR及びRが置換アリール基を表す場合には、前記置換アリール基は、−OH基によって置換されているフェニル環である。
【0039】
別の好ましい実施形態において、基Rは、ハロゲン原子、より好ましくは塩素原子である。
【0040】
別の好ましい実施形態によれば、基Rが水素原子であり及び/又は基Rがメチル基である式(I)の化合物が、非常に良好な活性のために、特に重要である。
【0041】
別の特に好ましい実施形態によれば、基R及びRは、炭素原子3及び4を介して環Dと縮合されている置換又は非置換フェニル環を表し、式(I)の前記化合物は、下記式(Ic):
【0042】
【化7】

【0043】
[式中、基R、R、R、R、R、R及びRは前記で定義した通りである]
に相当する。
【0044】
本発明による式(I)の最も好ましい化合物は、以下の通りである:
−化合物1:
【0045】
【化8】

【0046】
−化合物2:
【0047】
【化9】

【0048】
薬学的に許容される塩としては、無機酸との付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、若しくは有機酸との付加塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、又はこれらの酸の代替誘導体との付加塩を挙げることができる。
【0049】
本発明の化合物は、当業者によく知られている多くの方法で製造できる。試薬及び出発原料は、市販されているか、又は周知の技術によって容易に合成される。
【0050】
本発明の化合物の合成は、文献中に記載されている:
- 式(Ia)の化合物の合成は、以下の論文:C.H.Nguyen、J−M.Lhoste、F.Lavelle、M.C.Bissery及びE.Bisagni、J.Med.Chem.、1990、33、1519〜1528;C.H.Nguyen、F.Lavelle、J.F.Riou、M.C.Bissery、C.Huel及びE.Bisagni、Anti−Cancer Drug Design、1992、7、235〜251;並びにS.Vinogradov、V.Roig、Z.Sergueeva、C.H.Nguyen、P.Arimondo、N.T.Thuong、E.Bisagni、J−S.Sun、C.Helene及びU.Asseline、Bioconjugate Chem.、2003、14、120〜135中に記載されており;
- 式(Ib)の化合物の合成は、C.H.Nguyen、E.Fan、J.F.Riou、M.C.Bissery、P.Vrignaud、F.Lavelle及びE.Bisagni、Anti−Cancer Drug Design、1995、10、277〜297に記載されており、
- 式(Ic)の化合物の合成は、C.Escude、C.H.Nuyen、S.Kukredi、Y.Janin、J−S.Sun、E.Bisagni、T.Garestier及びC.Helene、Proc.Natl.Acad.Sci.、1998、95、3591〜3596に記載されている。
【0051】
通常、反応は、好適な溶媒中で実施する。関与する反応又は試薬に悪影響を及ぼさなければ、種々の溶媒を使用できる。好適な溶媒の例としては、芳香族、脂肪族又は脂環式炭化水素であることができる炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン;アミド、例えば、ジメチルホルムアミド;アルコール、例えば、エタノール、2-メトキシエタノール及びメタノール;エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン;アセトニトリル;並びに水が挙げられる。
【0052】
反応は、広範囲の温度にわたって起こり得る。一般に、0〜150℃、より好ましくは室温〜260℃の温度において反応を実施するのが都合良い。反応に必要な時間もまた、多くの因子、特に反応温度及び試薬の性質に応じて、広範囲に変動し得る。しかし、反応が前記で概説した好ましい条件下で行われるならば、3〜72時間の時間で通常は充分であろう。
【0053】
製造された式(I)の化合物は、常法によって反応混合物から回収できる。例えば、化合物の回収は、反応混合物から溶媒を留去することによって、又は必要ならば、反応混合物から溶媒を留去後に残分を水中に流し込み、続いて水不混和性有機溶媒で抽出し、抽出物から溶媒を留去することによって、行うことができる。加えて、生成物は、所望ならば、種々の周知技術、例えば、再結晶、再沈殿又は種々のクロマトグラフィー技術、特にカラムクロマトグラフィー又は分取薄層クロマトグラフィーによって更に精製できる。
【0054】
本発明の化合物1及び2は、下記ステップを含む方法によって得ることができる:
【0055】
【化10】

【0056】
化合物1又は2の製造方法は、以下の主要ステップ:
(i)化合物III又はVIIIを得るための、化合物IとIIとの又はIとVIIとの縮合と
(ii)化合物IV又はIXを得るための、得られたヒドラゾンIII又はVIIIの熱的フィッシャーインドール化(thermal Fischer indolization)によるインドール化と
(iii)木炭上パラジウムの存在下における化合物IV又はIXの芳香族化による、化合物V又はXの直接生成と
を含む。
【0057】
インドール化ステップ(ii)及び芳香族化ステップ(iii)は、同一容器で、各ステップを制御して適切な完了を確実にしながら、実施できる。次いで、アセトニトリル−オキシ塩化リン−塩化ベンジルトリエチルアンモニウム−ジエチルアニリン混合物中で化合物V又はXを煮沸し、続いて塩化水素水溶液中で塩化ベンジルトリエチルアンモニウムの存在下でメトキシ化合物VI又はXIを煮沸することによって、本発明の化合物1又は2が得られる。
【0058】
本発明はまた、前記で定義した式(I)の化合物を、薬学的に許容される賦形剤又は担体と共に含む医薬組成物に関する。
【0059】
「薬学的に許容される賦形剤」という表現は、任意の希釈剤、補助剤又は賦形剤、例えば、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、溶媒、分散媒、剤皮、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及びおび吸収遅延剤などを意味する。
【0060】
式(I)の化合物のプロテインキナーゼCK2阻害生物活性を、評価した(実施例2〜6を参照)。
【0061】
前記化合物及びそれらの塩は、これらの性質により、抗腫瘍剤、抗感染症剤、抗炎症剤、抗マラリア剤並びに糖尿病、自己免疫疾患及び炎症性疾患に対して有用な薬剤などの活性薬剤として、更にまた、CK2酵素の過剰な活性に関連する障害及び/又は疾患の予防及び/又は治療への、特にヒトなどの哺乳類の治療への医薬品としての使用に好適である。
【0062】
CK2酵素の過剰な活性に関連する障害及び/又は疾患は、例えば、がん、特に乳がん、前立腺がん、肺がん、頸部がん及び脳がん、腎臓がん、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌並びに膵臓がん;自己免疫疾患及び炎症性疾患、例えば、糸球体腎炎;感染性疾患、例えば、ウイルス感染(例えば、HIV、CMV、HPV、PV、単純疱疹ウイルス1(HSV−1)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルスなど);糖尿病;血管新生関連障害;網膜症(例えば、加齢黄斑変性症、ARMD)及び心肥大である。
【0063】
ヒト又は場合によっては動物に投与される式(I)の化合物の量は、下記実施例中に開示する手段によって測定され得るこの化合物の特異活性によって異なる。この量は、治療される疾病の重症度並びに個々の患者の年齢及び体重によっても異なる。
【0064】
上記の条件に加えて、本発明は、一般式(I)の化合物の生物活性を例示する実施例及びまた、添付した図面に言及する、以下の説明から明白になる他の条件も含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】2つのα触媒サブユニット及び2つのβ調節サブユニットを含むプロテインキナーゼCK2の略図を示す。
【図2】図2A及び2Bは、生細胞中における、TBB、化合物1及び2によるCK2活性の阻害を示す。
【図3】化合物1及び2によるHeLa細胞の増殖阻害を、DMSO及びTBBと比較して示す、(相対生存率)対(試験化合物濃度(μM))のグラフである。
【図4】DMSO及びTBBと比較した、化合物1及び2によるU373がん細胞の増殖阻害を示す。
【図5】図5A及び図5Bは、HeLa(p53陽性)野生細胞型及びU373細胞(p53陰性)における細胞周期に対する、化合物1及び化合物2の影響の分析を示す。
【図6】DMSOと比較した、化合物1及び2による、軟寒天培地上における細胞コロニー形成の阻害を示す。
【図7】図7Aは、化合物1によって誘発された腫瘍成長のインビボにおける阻害を、DMSOと比較して示すグラフ(腫瘍成長(mm)対時間(日))である。図7Bは、この試験中における体重変化を示すグラフ(体重(g)対時間(日))である。
【実施例1】
【0066】
式(I)の化合物の合成
式(I)の化合物1及び2を、Bioconjugate Chem.、2003、14、120〜135に記載され且つ公表された手順に従って、合成した。
【実施例2】
【0067】
式(I)の化合物のCK2阻害活性の特性決定
式(I)の化合物の作用機序を特徴付けるために、それらを、CK2、c−kit及びトポイソメラーゼII活性並びにそれらのDNA挿入能について試験した。
【0068】
1.材料及び方法
− CK2活性に対する式(I)の化合物の作用を、Prudentら(Prudent,R.ら(2008)Mol Cell Biochem 316(1−2):71〜85)に従って測定する:指示濃度の化合物3μL、3μLのCK2α(36ng)、及び100μMのペプチド基質(RRREDEESDDEE、配列番号:1)と10mM MgClと100μM [γ-32P]-ATPとを含む混合物を含む最終容量18μL中で実施される放射能分析で、化合物を試験した。分析は、室温で5分間実施後に、60μLの4%TCA添加によって終了させた。ペプチド基質への32Pの取り込みを、Filholら(Biochemistry 29:9928〜36(1990))に既に記載されているようにして、測定した。
【0069】
− c−kit活性に対する式(I)の化合物の作用を、製造業者の推奨基準(Millipore、参照記号14−559)に従って測定する:25μLの最終反応容量で、c−kit(5〜10mU)を、8mM MOPS(pH7.0)、0.2mM EDTA、10mM MnCl、25μM ATP、0.1mg/mLのポリ(Glu、Tyr)4:1、10mM MgAcetate及び[γ−33P−ATP](特異活性約500cpm/pmol、必要濃度)と共にインキュベートする。反応は、MgATP混合物の添加によって開始する。室温で40分間のインキュベーション後、3%リン酸溶液5μLの添加によって、反応を停止させる。次いで、10μLの反応(reaction)を、Filtermat A上にスポットし、75mMリン酸中で5分間ずつ3回、メタノール中で1回洗浄後、乾燥及びシンチレーション計数を行う。
【0070】
− トポイソメラーゼII活性に対する式(I)の化合物の作用を、製造業者の推奨基準(Vaxron、Ta−001)に従って測定する:10μLの最終反応容量で、1UのトポイソメラーゼIIαを、0.1Mトリス塩酸(Tris−HCl)(pH8.0)、2mM DTT、20mM MgCl、4mM ATP、0.2M NaCl、BSA 2μg、キネトプラストDNA500ng、及びアッセイされる化合物(DMSO中10mM原液から、DMSOの最終濃度1%未満)と共にインキュベートする。反応は、トポイソメラーゼIIαの添加によって開始する。37℃において15分間のインキュベーション後、停止液(3%SDS、1.5mg.mL−1プロテイナーゼK)1μLの添加によって反応を停止させる。37℃において30分間のインキュベーション後、反応混合物をアガロースゲル(1%アガロース)上で分離し、DNAトポ異性体をデンシトメトリー分析によって定量化する。
【0071】
− DNA挿入に対する式(I)の化合物の作用。DNA挿入を、FID(蛍光インターカレーター置換(Fluorescence Intercalator Displacement))を使用して実施した。このアッセイは、DNA結合分子による置換時におけるDNA結合インターカレーター(チアゾールオレンジ)の蛍光の消失に基づいた。簡潔には、二本鎖オリゴヌクレオチドCAATCGGATCGAATTCGATCCGATTG(配列番号:2)(0.25μM)を、10mMカコジラート、100mM KCl(pH7.2)を含む緩衝液中のチアゾールオレンジ(0.75μM)に混合する。試験化合物及び臭化エチジウム(正の対照)を、混合物(0.75μM〜10μM)に加える。20分間のインキュベーション後、蛍光を測定する(励起:490nm、発光:520nm)。このアッセイにおいて、化合物の自己蛍光は陰性であった。
【0072】
2.結果:本発明の範囲外の2種の化合物と比較した、式(I)の化合物の活性
化合物3及び化合物4の式はそれぞれ、アリール環の−OH基が−OCH基によって置き換えられた本発明の化合物1及び2の式に対応する。化合物4は具体的には、先行技術において開示された化合物の定義に対応し:化合物6は、Thi My−Nhung Hoangら、Cell Cycle、2009年、第8巻、第5号、765〜772頁に記載されている。
【0073】
【表1】

【0074】
これらの結果は、化合物1及び2はCK2活性を強く阻害すること、即ち、これらの2つの化合物に関する残留CK2活性は、化合物3及び4と比較して非常に低いが、c−kit及びトポイソメラーゼII活性又はDNA挿入に対しては全く又は殆ど阻害作用がないことを示しており;式(I)の化合物は、プロテインキナーゼCK2の選択的阻害剤である。
【実施例3】
【0075】
細胞に対して強力な(cell-potent)、式(I)の化合物のCK2阻害活性
1.材料及び方法
生細胞へのCK2に対する化合物の阻害能力を試験するための細胞アッセイを開発した。
【0076】
細胞CK2活性アッセイ:YFPタンパク質のC末端に6つのCK2コンセンサスリン酸化部位を添加することによって、キメラYFPベースのCK2活性レポーターを発現するプラスミドpEYFPc1を設計した(pEYFPc1−SβS)。pEYFPc1−SβSは、pEYFPc1−CK2βから、突然変異誘発1には
5’−GCTCAAGCTTCGGATTCTGAAGACGACGATACCGCGGGCCCG−3’(配列番号:3)及び
5’−CGGGCCCGCGGTATCGTCGTCTTCAGAATCCGAAGCTTGAGC−3’(配列番号:4)並びに
突然変異誘発2には
5’−GCTCTGAGGAGGTGTCCGAGGTCGACTGGTTCTGAGGGCTCCGT−3’(配列番号:5)及び
5’−CGGGCCCGCGGTATCGTCGTCTTCAGAATCCGAAGCTTGAGC−3’(配列番号:6)
を用いて、Quickchange−Site Directed mutagenesis kit(Stratagene)による引き続く2ラウンドの突然変異後に得られた(Prudentら、Biochim Biophys Acta.2008;1780(12):1412〜20)。
【0077】
− プラスミドによるHeLa細胞のトランスフェクション、
HeLa細胞を、12ウェルプレート中に細胞10個/ウェルで蒔き、リポフェクタミン(lipofectamine)試薬(Invitrogen)を用いてCK2活性レポータープラスミド(pEYFPc1−SβS)をトランスフェクトした。
【0078】
− CK2阻害活性の試験:正の対照として、生細胞中におけるCK2活性のTBB阻害を最初に試験する:キメラCK2活性−GFPベースのレポーターを発現するプラスミドがトランスフェクトされたHeLa細胞を、CK2阻害剤TBBと共に及び負の対照としてのDMSOと共に24時間インキュベートする。
【0079】
次いで、細胞抽出物をネイティブ電気泳動(native electrophoresis)によって分析し、GFP(緑色蛍光タンパク質)を免疫ブロットによって可視化する:トランスフェクションの翌日、培地を、化合物を含む新しい培地に置き換え、24時間インキュベートした。次いで、細胞を収集し、洗浄ペレットを氷中で30分間、溶解用緩衝液(製造業者推奨基準によれば、50mMトリス(pH=7.4)、0.15M NaCl、2mM EDTA、トリトンX100 1/100、ホスファターゼ阻害剤カクテル2(Sigma)1/100及びロイペプチン、アプロチニン、AEBSF)100μΛによって可溶化した。50mgのタンパク質にグリセロールとブロムフェノールブルーとの混合物を加え、12%ネイティブポリアクリルアミドゲル中を泳動させた。通電転写後、ニトロセルロース膜を1% BSAで遮断し、mAb抗GFP(Roche、ref.1814460)1/1000と共に終夜4℃においてインキュベートした。洗浄後、膜を、ヤギ抗-マウス−HRP二次抗体(Sigma、ref.A4416)1/2000と共に1時間インキュベートし、GFPをECL+ウェスタンブロット検出システム(GE Healthcare)を用いて可視化した。
【0080】
いくつかの濃度の化合物1及び2を、細胞CK2活性アッセイにおいて同一条件で試験する。
【0081】
2.結果
非処理又はDMSO処理HeLa細胞において、CK2は十分に活性であり、CK2活性レポーターは殆どリン酸化アイソフォームとして検出できた(図2Aの下方のバンドを参照)。
【0082】
細胞を既知のCK2阻害剤TBB、化合物1又は化合物2と共に24時間インキュベートする場合には、リン酸化CK2レポーターアイソフォームは、特異的なCK2活性阻害により、用量依存的に消失した(図2A及び2Bを参照)。
【0083】
下記表IIは、細胞CK2活性アッセイにおける、TBB、化合物1及び2の活性を示している:
【0084】
【表2】

【実施例4】
【0085】
化合物1及び化合物2による細胞増殖阻害の特性決定
既知のCK2阻害剤は細胞生存率を低下させるので、いくつかの細胞型の生存率を、化合物1及び2による48時間処理後に測定した。
【0086】
1.材料及び方法
− 細胞:HeLa(ヒトの子宮頚部腺癌)及びU373(ヒトのグリア芽細胞腫)がん細胞株、
− HeLa細胞の増殖阻害を、以下のようにして評価する:Hela細胞を、96ウェルプレートに細胞1.5×10個/ウェルで蒔いた。翌日、培地を、漸増濃度の阻害剤又は対照としての当量のDMSOを含む、新しい培地(10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、BioWest)が補充されたダルベッコ(Dulbecco)培地(Invitrogen Life Technologies,Inc.))に置き換えた。2日後、細胞生存率を、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて製造業者推奨基準に従って測定した。
【0087】
− U373細胞の増殖阻害を、HeLa細胞と同一プロトコールで評価する:蒔いた翌日に、U373細胞を、5μMの化合物1、化合物2又はDMSOで処理する。結果を、DMSOに関して記録された発光を基準として示す。
【0088】
2.結果
HeLa細胞の細胞生存率の低下:
化合物1及び2は、低用量であっても、腫瘍細胞の強い増殖阻害を誘発する(図3)。
【0089】
U373がん細胞株の細胞生存率の低下:
5μMの化合物1及び化合物2は、48時間の処理後に、これらの細胞株の細胞増殖を減少させる効果がある(図4)。
【実施例5】
【0090】
化合物1による細胞周期阻害の分析
1.材料及び方法
次に、実施例4において化合物1及び化合物2で予め処理した細胞を、ヨウ化プロピジウムの混和後に細胞周期分析に供する。
【0091】
細胞周期分布の分析:細胞を、6ウェルプレートで蒔いた。翌日、細胞を、5μMの化合物又は当量のDMSOで処理した。24時間後、細胞を収集し、70%エタノールで30分間固定し、10μg/mLヨウ化プロピジウムで30分間ラベルした。DNA含量を、FACScalibur及びCell Questソフトウェアを用いて分析した。
【0092】
2.結果
分析から、化合物1及び化合物2で処理されたHeLa細胞及びU373細胞が、G2/M期におけるかなりの蓄積によって細胞周期停止を示すことがわかった。HeLa処理細胞ではアポトーシス細胞の付随的増加も観察されるが、U3763細胞ではアポトーシス細胞の付随的増加は観察されず、これらの細胞はアポトーシスに抵抗性である(図5A)。sub−G1、G1、S及びG2/M期におけるHeLa細胞及びU373細胞の比率(%)を、図5Bの表に要約する。
【実施例6】
【0093】
化合物1による、腫瘍細胞の腫瘍形成阻害
1.材料及び方法
腫瘍細胞の腫瘍形成に対する化合物の作用を、コロニー形成アッセイで試験する。
【0094】
軟寒天培養によるコロニー形成アッセイの阻害は、以下のようにして行う:U373細胞を、化合物(5μM)又は当量のDMSOを含む、0.3%寒天−DMEM−10%FBS中に埋め込まれた、0.6%寒天−DMEM−10%FBS層上に注いだ。15日後に、コロニー(細胞20個以上)の数を、10視野/ウェルで計数した。実験は、少なくとも2回、二重反復試験で行った。
【0095】
2.結果
図6に示すように、5μMの化合物1は、コロニー形成の50%阻害の誘発に十分である。
【実施例7】
【0096】
化合物1による、インビボでの腫瘍形成阻害
1.材料及び方法
実験手順は全て、地域の倫理委員会に従った(Comite regional d’ethique pour l’Experimentation animale CREEA、Rhone Alpes−プロトコール番号286)。雌のHarlan胸腺欠損ヌードマウス(週齢6〜8週)の右側腹部に、U373細胞7.5x10個を皮下播種した。腫瘍が±50mm(体積=長さ×幅×高さ)に達したら、22.5% PEG3350、0.45%BSAに溶解された化合物1(0.14mg/100μL/注射−マウス4匹)又は同一緩衝液に溶解された当量のDMSO(最終濃度10%−マウス3匹)(対照群)を、週に3回(2日毎に)2週間、動物に腹腔内投与した。体重及び腫瘍体積を、週2回測定した。腫瘍体積が約1000mmとなった時点で、実験を終了させた。結果を、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として示す。
【0097】
2.結果
化合物1が注射されたマウスでは、DMSOが注射されたマウスと比較して、腫瘍発生率が全ての時点で著しく低下したことが観察される(図7A)。最初の化合物注射後15日で、化合物1が注射されたマウスの腫瘍は、DMSOが注射されたマウスの腫瘍の4.7倍小さかった。更に、記録された体重変化は、統計的に有意でなかった。これは、化合物1が、適用用量において忍容性が高かったことを示している(図7B)。
【実施例8】
【0098】
構造−活性相関試験
構造−活性相関はまた、いくつかの位置が置換に対して許容性があることを示している。CK2−式(I)の化合物の複合体のX線共構造(co-structure)から、キナーゼと阻害剤との分子相互作用へのより深い洞察が得られる。
【0099】
CK2−式(I)の化合物の複合体のX線共構造:
CK2−式(I)の化合物の複合体のX線構造において、化合物(I)のフェニル環の−OH基とVal116の窒素骨格(nitrogen backbone)との間に水素結合が形成されていることが観察でき、これは、この位置に遊離−OH基が必要な根拠を示している。
【0100】
基Rに関しては、溶媒への曝露時に、基Rと水との好ましくない疎水性相互作用により、活性が低下すると思われる。これは、基Rの位置が、溶媒への高曝露環境であることと一致している。
【配列表フリーテキスト】
【0101】
配列番号2:オリゴヌクレオチド
配列番号3:オリゴヌクレオチド
配列番号4:オリゴヌクレオチド
配列番号5:オリゴヌクレオチド
配列番号6:オリゴヌクレオチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品として使用するための、下記式(I):
【化1】

[式中、
− 環Cは、ピロール複素環又はピラジン複素環であり、
− Rは、−H又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、環Cがピロール複素環である場合にのみ存在し、
− Rは、−H、二重結合によって環Dに連結されている酸素原子、ハロゲン原子、1,2−エタンジオキシ基、1,2−エタンジチオ基、フェニル基、ベンジル基、−OR、−SR、−NHR、−N(R)基(式中、Rは−H又は炭素数1〜6のアルキル基である)であり、
− Rは、Rが二重結合によって環Dと連結されている酸素原子、1,2−エタンジオキシ基又は1,2−エタンジチオ基である場合にのみ存在し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、
− R及びRは、同一であるか異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素原子3及び4を介して環Dと縮合されている置換若しくは非置換アリール環を表し、
− R及びRは、水素原子、又は炭素原子6及び7を介して環Bと縮合されているアリール環を表し、前記アリール環は少なくとも1つの−OH又は−NHR’基(式中、R’は、−H又は炭素数1〜6のアルキル基である)によって置換されており、
− R及びRは、水素原子、又は炭素原子8及び9を介して環Bと縮合されているアリール環を表し、前記アリール環は少なくとも1つの−OH又は−NHR’基(式中、R’は、−H又は炭素数1〜6のアルキル基である)によって置換されており、
但し、
・ R及びRが少なくとも1つの−OH若しくは−NHR’基によって置換されているアリール環を表す場合には、R及びRは水素原子であり、
・ R及びRが少なくとも1つの−OH若しくは−NHR’基によって置換されているアリール環を表す場合には、R及びRは水素原子である]
に対応する化合物及びそれらの互変異性型並びにそれらの薬学的に許容される塩であることを特徴とする化合物。
【請求項2】
環Cがピロール複素環であり、Rが水素原子であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRが、炭素原子6及び7を介して環Bと縮合されているフェニル環を表し、前記フェニル環が少なくとも1つの−OH基によって置換されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが、炭素原子8及び9を介して環Bと縮合されているフェニル環を表し、前記フェニル環が少なくとも1つの−OH基によって置換されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
がハロゲン原子であることを特徴とする、請求項1から4に記載の化合物。
【請求項6】
が塩素原子であることを特徴とする、請求項5に記載に記載の化合物。
【請求項7】
が水素原子であることを特徴とする、請求項1から6に記載の化合物。
【請求項8】
がメチル基であることを特徴とする、請求項1から7に記載の化合物。
【請求項9】
基R及びRが、炭素原子3及び4を介して環Dと縮合されている置換又は非置換フェニル環を表し、式(I)の前記化合物が、下記式(Ic):
【化2】

に対応することを特徴とする、請求項1から6に記載の化合物。
【請求項10】
式(I)の化合物が、以下の
− 化合物1:
【化3】

又は
− 化合物2:
【化4】

であることを特徴とする、請求項1から8に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を、薬学的に許容される賦形剤又は担体と共に含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
がん;自己免疫疾患及び炎症性疾患;感染性疾患;糖尿病;血管新生関連障害;網膜症及び心肥大から選択される障害及び/又は疾患の予防及び/又は治療を目的とする医薬品の調製への、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−500325(P2013−500325A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522276(P2012−522276)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002157
【国際公開番号】WO2011/013002
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ (85)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【出願人】(509000747)アンスティトゥー ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ レシェルシュ メディカル(イエヌエスエエールエム) (6)
【出願人】(500056471)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】