説明

プロトンポンプ阻害剤の液体剤形

【課題】微粒子プロトンポンプ阻害剤を含む液体懸濁ビヒクルの提供。
【解決手段】微粒子及び6.0未満のpHと前記微粒子を懸濁させるのに十分な粘度とを有する液体懸濁ビヒクルを含む医薬組成物。前記微粒子は100〜900μmの大きさである、通常胃腸障害または疾患の症状を緩和するのに有用であるプロトンポンプ阻害剤(PPI)を含有する。PPIがランソプラゾールである。したがって前記組成物を構成し、前記組成物を作成するためのキットを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体剤形に関し、特にプロトンポンプ阻害剤の液体剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医薬化合物が酸性環境で分解を受けやすい。例えば、抗生物質(例えば、エリスロマイシン)、プロトンポンプ阻害剤(PPI)(例えば、ランソプラゾールまたはオメプラゾール)及びペンクレアチンは酸性環境で分解し、よって“酸不安定性である”と称されている化合物である。酸不安定性医薬化合物の経口デリバリーは、胃pHが非常に酸性(通常、pH約1.5〜1.9)であるので難しい。胃条件下では、酸不安定性薬物は保護されていないと通常分解し、摂取のためには容易に利用され得ない。
【0003】
pH感受性のために、酸不安定性薬物は該薬物を酸性の胃環境から保護する形態で通常投与されている。腸溶コーティングは恐らく酸不安定性薬物を胃分解から保護するために最も広く使用されている方法である。腸溶コーティング法は通常、薬物粒子または酸不安定性薬物を含有する剤形全体の周りに胃環境の低pHに導入したとき溶解しないコーティングを用いてバリアーを形成している。腸溶コーティングは通常上部小腸で見られるような6以上のpHでは溶解する。この場合、酸不安定性薬物は十分に分解せず、吸収され得る環境に遊離される。腸溶コーティングを必要とする薬物は多くの場合小児患者のように燕下困難な患者または危篤状態患者のように燕下不能な患者にとって服用しがたいカプセル剤や錠剤として処方されている。
【0004】
更に、PPIのような酸不安定性薬物の部分用量を保証する状況も存在する。例えば、肝不全患者ではPPIの通常用量の半分を服用することがしばしば推奨されている。PPIの固体剤形は入手可能であるが、これらの剤形は正確且つ確実に小分けしにくい。特に、PPIを含有する剤形中に含まれる活性成分の正確部分を容易に与える手段はない。
【0005】
上記にもかかわらず、酸不安定性薬物の液体剤形を処方する試みがなされてきた。例えば、米国特許第5,840,737号明細書は、PPIの腸溶性ペレットを含有する市販カプセルの内容物を炭酸水素ナトリウム緩衝液の溶液中に溶解することを推奨している。実際、この方法では医者がカプセルを開けて腸溶性PPIを緩衝液中に放出させなければならない。カプセルの内容物及び緩衝液を混合したら、緩衝液のpHが比較的に高いためにPPIの周りの腸溶コーティングが溶解するようにその混合物を約20〜30分間撹拌または混合する。腸溶コーティングが溶解したならば、PPIは緩衝液中でかなり安定であり、患者に投与することができる。しかしながら、これを実地する際使用する緩衝液の容量はかなり多量で、胃にガスが発生し、よっておくびが生ずる恐れがある。おくびは、緩解のためにPPIが適用される疾患の1つである胃食道逆流症(GERD)を患っている患者にとって好ましくない。また、使用される緩衝液は通常組成物の製造コストを増加させる別の成分である。更に、経口で投与する場合上記溶液の味は不快である。腸溶コーティング層の非溶解成分が相互に粘着する恐れがある粘着性小球体を形成する傾向があるので、腸溶性PPIから腸溶コーティング層を完全に溶解するために十分な注意を払わなければならない。
【0006】
しかしながら、現在利用可能なPPIの液体剤形はいずれも活性成分の一部を正確に分配できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,840,737号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、活性成分の効果を維持し、固体剤形を嚥下困難な患者に対して容易に投与され、活性成分の一部がバルク溶液から正確に投与され得るように分配され得るPPIの液体剤形が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、用量滴定可能(dose titratable)であり且つ胃腸疾患を患っている嚥下困難な患者に容易に投与されるPPIを液体剤形で提供する。前記組成物は一般的には、腸溶コーティングを被せた酸不安定性薬物を含む微粒子;及び6.0未満のpHと前記微粒子を懸濁させるのに十分な粘度を有する液体懸濁ビヒクルを含む。前記組成物は組成物の各種成分を収容する別々の容器を有するキットを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明はPPIの液体組成物を提供する。活性成分の部分用量がバルク組成物から正確に且つ再現可能に分配され得る(ときに、用量滴定(dose titrating)という)。よって、嚥下能力が弱い患者に通常嚥下するのが容易なは活性成分の部分用量が与えられる。
【0011】
一般的には、本発明の組成物は、腸溶性PPIの微粒子;及び腸溶コーティングを溶解しないpHと、微粒子のバルク懸濁液を用量滴定するのに十分な時間微粒子を均一に懸濁させ得る粘度とを有する液体懸濁ビヒクルを含む。微粒子は通常腸溶コーティングで保護されたPPIを含む。任意の公知のPPIが本発明で使用するのに適しており、その中にはランソプラゾール、オメプラゾール及びパントプラゾールが含まれるが、これらに限定されない。PPIの組合せ及びPPIのエナンチオマーやプロドラッグも本発明の組成物中に使用するのに適している。腸溶コーティングを被せる前に前記薬物を他の活性乃至不活性成分と一緒に処方してもよい。例えば、活性成分の完全性を維持するために前記組成物にI族金属またはII族金属の塩(例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムまたは炭酸水素ナトリウム)のような安定剤を使用してもよい。タルクのような充填剤、スクロース、マンニトール及び微晶質セルロースのような糖や他の賦形剤も前記組成物の一部であり得る。
【0012】
また、腸溶コーティング層を施す前にコア処方物に対して複数のコーティングを施してもよい。酸不安定性薬物が腸溶コーティング材料と反応する恐れがある場合には追加コーティングは酸不安定性薬物を保護するために使用される。この場合、追加コーティングは酸不安定性薬物コアと腸溶コーティングの間に存在させる。この目的で一般的に使用される材料には、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されない。微粒子に追加コーティングを使用することは主として酸不安定性薬物の組成及び使用する腸溶コーティング材料に基づいた当業者の選択事項である。追加コーティングは、サブコーティングを有する腸溶性微粒子とサブコーティングを持たない類似の組成の微粒子の両方について安定性を調べることによりルーチンに実験的に決定される。
【0013】
腸溶コーティング及び腸溶コーティングを施す方法は当業界で公知である。腸溶コーティングは一般的には6.0未満のpHを有する環境において溶解しない成分からなる。通常、本発明の腸溶コーティングにより酸不安定性薬物は液体組成物及び胃環境のpHで保護される。任意の公知の腸溶コーティング材料が本発明で使用するのに適しており、その例にはステアリン酸、パルミチン酸及びベヘン酸のようなワックス;及びセルロースアセフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートのようなポリマーが含まれ得る。
【0014】
微粒子は、使用する顆粒化及び篩分け方法に基づいて多種多様な形態をとり得るが、通常大半は球形であり、100〜900μm、より好ましくは100〜700μm、最も好ましくは200〜500μmの大きさを有する。
【0015】
本発明に従って使用され得る液体懸濁ビヒクルは微粒子の腸溶コーティングを溶解しないpHを有する。通常、6.0未満のpHを有する液体懸濁ビヒクルは腸溶コーティングを溶解しない。液体懸濁ビヒクルはもともと6.0未満のpHを有してもよいし、または6.0未満のpHとすべく液体ビヒクルに酸性賦形剤のような追加成分を添加してもよい。適当にpH調節した緩衝液がこの目的で使用可能な適当な酸性賦形剤であり、液体のpHを6.0以下に維持するために公知のいかなる緩衝剤も適している。通常、液体懸濁ビヒクルのpHは6.0未満、好ましくは5.5未満、より好ましくは5.0未満である。
【0016】
液体懸濁ビビクルは組成物中の微粒子の均質性を維持するためにも役立つ。この能力は主として液体ビヒクルの粘度に依存する。通常、液体懸濁ビヒクルは、ビヒクル中で微粒子を軽く混合した後微粒子の均一用量を組成物から分配するのに十分な時間微粒子が液体ビヒクル中に均質に分散されるような粘度を有する。所謂“軽く混合”とは組成物の内容物を少なくとも30秒間、より好ましくは少なくとも60秒間、更に好ましくは少なくとも90秒間回転、振とう、または他の方法で撹拌することを指す。生じた微粒子の懸濁液の用量が混合後すぐに分配され得る。よって、液体ビヒクルの粘度により液体ビヒクル中の微粒子の均質性が少なくとも15秒間、好ましくは少なくとも30秒間、より好ましくは1分間、最も好ましくは2分間維持され得る。液体懸濁ビヒクル中の微粒子に関して使用される“均質に分散”または類似の表現は、活性薬物の所期濃度の少なくとも90%、より好ましくは活性薬物の所期濃度の少なくとも95%が組成物の全体にわたって存在していることを意味する。例えば、特定組成物中のPPIの濃度が100mg/mlであったならば、容器中の任意の特定場所で採取したバルク組成物1mlサンプルは少なくとも90mgのPPIを含んでいなければならない。500cP以上、より好ましくは800cP以上、更に好ましくは900cP以上の粘度を有する組成物が上記目的に適している。この粘度は5rpmで回転する#3スピンドルを備えたブルックフィールド型粘度計を用いて測定した値である。
【0017】
液体懸濁ビヒクルは上記目的を達成するために十分な粘度をもともと有し得る。しかしながら、所望粘度を得るために液体に他の物質を添加してもよい。液体組成物の粘度を上昇させるための増粘剤は各種公知である。例えば、セルロース及びその誘導体;ガム、例えばグアーガム及びキサンタンガム;及びポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポロキサマーが液体の粘度を上昇させるために使用され得る公知の賦形剤である。前記増粘剤は所望粘度が達成されるまで液体に添加され得る。
【0018】
本発明の組成物の性質の故に、液体懸濁ビヒクルの使用用量は大きく変更可能である。液体ビヒクルの使用用量に上限はないが、実際的要件から、通常500ml未満、好ましくは100ml未満、より好ましくは50ml未満、最も好ましくは15ml未満の容量が示唆される。
【0019】
組成物中の微粒子の濃度も変更可能であり、微粒子の大きさ及び微粒子中のPPIの治療有効量に大きく依存する。例えば、PPIの治療有効量は使用するPPIに応じて5〜300mgの範囲で変更され得る。しかしながら、一般的に「治療有効量」は治療を受ける患者が経験している胃腸症状を緩和する頻度で患者に投与される薬物の量を意味する。特定患者に対する特定治療有効量は、治療対象の疾患;その疾患の重篤度;使用する特定化合物の活性;使用する特定組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別及び食事;投与時間;投与ルート;使用する特定化合物の排泄率;治療期間;使用する特定化合物と組み合わせてまたは一緒に使用される薬物;及び医学界の当業者に公知の他の要因を含めた諸要因に依存する。例えば、化合物を所望治療効果を得るのに必要な量よりも少ない用量投与することから始めて所望効果が達成するまで用量を漸増させることは当業者の技量の範囲内である。次いで、これらの要因は患者が所望効果を得るように特定患者に適切に投与するように使用され得る。
【0020】
組成物はいろいろの構成をとり得る。例えば、微粒子は、参照により本明細書に含まれるとする米国特許第5,464,632号明細書及び同第6,299,904号明細書に記載されているような速溶解性錠剤に処方され得る。前記錠剤は、該錠剤を水に入れたときに微粒子及び酸性賦形剤が遊離するように酸性賦形剤をも含み得る。前記錠剤には増粘剤も処方され得る。その結果、錠剤を水に溶解させると、例えば微粒子は適当なpH及び粘度を有する液体懸濁ビヒクル中に存在するであろう。或いは、微粒子及び6.0未満のpHと十分な粘度とを有する液体ビヒクルを含む組成物を製造するためにはサッシェ処方物も適当である。サッシェには通常、本発明の目的のためにPPIの腸溶性微粒子、酸性賦形剤及び増粘剤を含み得る乾燥成分が包装されている。速溶解性錠剤と同様に、サッシェ処方物は単に水に入れると微粒子及び6.0未満のpHと適度な粘度を有する液体ビヒクルを含む組成物が生じ得る。更なる代替例では、液体はすでに適当なpH及び粘度を有していてもよく、微粒子をその液体に添加すると処方物が生ずる。勿論、矯臭剤、甘味剤、保存剤、着色剤等のような他の成分も組成物に添加してもよい。
【0021】
本発明の組成物は組成物の成分を別々に包装した容器を含むキットとして提供され得る。例えば、キットは液体のバイアル、及び腸溶性微粒子、増粘剤及び酸性賦形剤のような組成物の乾燥成分を含有する錠剤を含み得る。錠剤を液体中に溶解させると完全に液体の組成物が形成される。勿論、組成物は別々の成分として存在させ得るが、これらの別々の成分は投与前に上記したようなpH及び粘度を有する液体ビヒクル中に微粒子を含む液体組成物を形成するように混合されなければならない。キットの場合、このキットは乾燥成分及び液体成分を適切に混合するための使用説明書及び注射器のような投与器具を添付し得る。また、キットの場合5分未満以内、好ましくは2分未満以内、最も好ましくは1分未満以内に乾燥成分が液体成分中に完全に分散することが好ましい。
【0022】
好ましくは、本発明のPPIを含む組成物は、胃酸逆流症、胃食道逆流症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、または胃腸疾患を緩解するためにPPIが適用される他の胃腸疾患を患っている患者に対して投与される。よって、PPIを含む本発明の組成物を胃腸疾患を患っているような治療を要する患者に対して投与することを含む胃腸疾患の治療方法が提供される。
【0023】
本発明を更に説明するために下記実施例を提示する。これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
各種液体懸濁ビヒクル中の微粒子の懸濁
本実施例では、ランソプラゾール(登録商標)(aPPI)を含有する微粒子を各種液体懸濁ビヒクル中に懸濁して、均一用量がバルク懸濁液から分配され得るかを調べた。
【0025】
特に、Lansoprazole Fast Dissolving Tablets(イリノイ州レークフォレストに所在のTAP Pharmaceutical Products Inc.)を異なる増粘剤を含む様々な容量の水中に溶解した。Lansoprazole Fast Dissolving Tablets(LFDT)はランソプラゾール、マンニトール、甘味剤及び酸性化剤の腸溶性微粒子からなる。LFDT中の酸性賦形剤のために、溶解させると生じた溶液は6.0未満のpHを有する。通常、LFDT錠を水(30ml)中に溶解するとpHは5.0未満となる。本実験で使用した増粘剤はスマッカーのイチゴシロップ、シトラセル(市販品)及びランソプラゾールサッシェ(TAP)からの不活性成分であった。ランソプラゾールサッシェ不活性成分は増粘剤として約2.0gのキサンタンガムを含んでいる。
【0026】
上記した各種成分とランソプラゾール(30mg)を含有するLFDT錠を用いて各種懸濁液を調製した。前記懸濁液は、蒸留水及びLFDT錠(1個)を25ml容量ボトルに入れ、錠剤が崩壊するまで混合することにより調製した。次いで、増粘剤を懸濁させたLFDT錠を収容している25ml容量ボトルに添加し、激しく混合した。次いで、懸濁液のサンプルを採取し、HPLC分析にかけてサンプル中のランソプラゾール濃度を測定した。このデータを、下表に示す“理論の%”に達するために理論的にサンプル中に存在させなければならない濃度(すなわち、30mg/懸濁液容量)と比較した。サンプルは少なくとも2回、多くの場合3回分析し、理論測定値の%の平均値を報告する。理論値の報告%についての相対標準偏差(RSD)も報告する。上記手順に従って試験した成分の実際量及び理論値の平均%を下表2に示す。
【0027】
【表1】


【0028】
表2のデータに示すように、懸濁液からの所与のサンプル中のランソプラゾールの濃度はサンプル中に存在させなければならないランソプラゾールの理論量の90%以上であった。
【0029】
[実施例2]
懸濁液中の薬物量の再現性
本実施例では、実施例1と同様にして懸濁液を調製し、各懸濁液の単一サンプルを分析した。各サンプルは、蒸留水(10ml)、LFDT錠(1個)及びサッシェ不活性成分(2g)を用いて調製した。10懸濁液の各々の理論の%を下表3に示す。また、1つの懸濁液からの複数のアリコートの理論の%が再現性であるかを調べるためにサンプル10から2個の追加サンプルを採取した。これらの結果を下表4に示す。
【0030】
【表2】


【0031】
上記した10懸濁液についての理論の平均%は104.5(RSD 1.90)であった。懸濁液No.10からの複数のサンプルについての理論の平均%は101.3(RSD 2.8)であった。複数の異なる懸濁液からのサンプルは常に類似の理論の%を生じた、また、1個の懸濁液からの複数のサンプルの理論の%も一定であった。
【0032】
[実施例3]
液体懸濁ビヒクル中の微粒子の酸耐性
本実施例では、組成物中の活性成分の安定性を評価した。具体的には、組成物中の酸不安定性薬物ランソプラゾールの安定性を調べた。
【0033】
LFDT錠(1個)を蒸留水(10ml)中に分散した後、分散LFDT錠にサッシェ不活性成分(2g)を添加した。懸濁液を1分間混合した。懸濁液を、予め37±0.5℃に加温した0.1N HCl(500ml)を収容した溶解容器に注いだ。LFDT懸濁液を酸溶液に入れる前に、0.1N HCl(10ml)を抜き取り、LFDT懸濁液が収容されている容器を2回濯ぐために使用した(濯ぎ1回あたり5ml)。濯ぎ溶液を添加したら、溶解容器中の櫂を75rpmに設定し、60分間混合した。混合後、溶解容器から10mlアリコートを採取し、0.45umフィルターを用いて濾過した。濾液について306nm(この波長で、ランソプラゾールの分解の副産物が吸光度を示す)での吸光度を分光光度的に試験し、蒸留水中に溶解したLFDTの吸光度スペクトルと比較した。表5は、サッシェ不活性成分を含む組成物の4つのサンプル、水及びサッシェ不活性成分中のLFDT錠と同様に処理した蒸留水のみに懸濁させたLFDT錠の2つのサンプルについてのランソプラゾールの遊離%を示す。
【0034】
【表3】

【0035】
表5に示すように、サッシェ不活性成分は腸溶性微粒子からのランソプラゾールの遊離に有意な影響を示さなかった。
【0036】
[実施例4]
組成物の粘度
本実施例では、異なる量の増粘剤(サッシェ不活性成分)を蒸留水に添加し、生じた溶液の粘度を測定した。粘度は標準#3スピンドル及び温度プローブを備えたブルックフィールド粘度計を用いて測定した。各サンプル(150ml)を200ml容量トールビーカーに入れ、粘度を5ppmで回転するスピンドルを用いて測定した。
【0037】
各サンプル(150ml)中の成分の比率(水1mlに対するサッシェ不活性成分のグラム数)、測定時間、温度、%スケール及び粘度測定値を下表6に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
実施例1の結果と上記した粘度の結果を分析すると、(上記した粘度計パラメーターを用いて)959以上の粘度が用量滴定可能な組成物を得るのに十分であることが分かった。具体的には、水(10ml)中にサッシェ不活性成分(0.5g)を用いて実施例1で作成した組成物から採取したサンプルはランソプラゾールの理論濃度の90%以上を含んでいた。また、表6に示す粘度の結果から、多量(すなわち、0.75g:10ml)の増粘剤を用いて作成した組成物は959の粘度を有していたことが分かる。よって、粘度が900以上であれば、予想活性成分の少なくとも90%を有する懸濁液の用量を分配するのに十分な時間微粒子を懸濁状態に維持し得る。上記から推定して、バルク溶液を用量滴定するのに十分に微粒子を懸濁させるためには(上記した粘度計パラメーターを用いた)粘度は500以上でなければならないことが示唆される。
【0040】
本発明を特定の実施態様を参照して詳細に説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく前記実施態様に各種の変化や修飾を加えることができることは当業者に自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)腸溶コーティングを被したプロトンポンプ阻害剤を含む微粒子及び
(b)6.0未満のpHと前記微粒子を懸濁させるのに十分な粘度とを有する液体懸濁ビヒクル
を含む組成物。
【請求項2】
微粒子が100〜900μmの大きさである請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が500cP以上の粘度を有する請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項4】
活性成分がランソプラゾールである請求の範囲第3項に記載の組成物。
【請求項5】
腸溶性プロトンポンプ阻害剤の微粒子及び6.0未満のpHと前記微粒子を懸濁させるのに十分な粘度とを有する液体懸濁ビヒクルを含む組成物を患者に投与することを含む胃腸疾患患者の治療方法。
【請求項6】
a)腸溶コーティングを被したプロトンポンプ阻害剤を含む微粒子を収容した第1容器及びb)液体を収容した第2容器を含み、前記第1または第2容器が更に酸性賦形剤を含み、第1及び第2容器の内容物を混合して生ずる液体が前記微粒子を懸濁させるのに十分な粘度を有するように前記第1または第2容器が更に増粘剤を含むキット。
【請求項7】
プロトンポンプ阻害剤がランソプラゾールである請求の範囲第6項に記載のキット。
【請求項8】
液体の粘度が500cP以上の粘度を有する請求の範囲第7項に記載のキット。
【請求項9】
微粒子が100〜900μmの大きさである請求の範囲第6項に記載のキット。

【公開番号】特開2013−28603(P2013−28603A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165900(P2012−165900)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2004−519828(P2004−519828)の分割
【原出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願人】(509022185)タケダ ファーマシューティカルズ ユー.エス.エー. インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】