説明

プロトン伝導性電極、膜−電極接合体、及び電気化学装置

【課題】 プロトン伝導性に優れ、また電気化学装置の使用条件下で化学的及び熱的に安定であり、更には湿度や温度に対する依存性の小さいプロトン伝導性電極、これを用いた膜−電極接合体(MEA)、及び燃料電池などの電気化学装置を提供すること。
【解決手段】 集電体と、集電体に接して形成され、プロトン伝導性高分子と電子伝導性触媒とを含有する、多孔性の混合物層とからなるプロトン伝導性電極を形成する。プロトン伝導性高分子は、複数のプロトン解離性分子が連結基によって連結された構造を有するものとし、プロトン解離性分子は、プロトン解離性の基が、少なくとも一部分がフッ素化されたスペーサー基を介してフラーレン核に結合している分子とする。プロトン伝導性高分子電解質膜の両側に、混合物層が電解質膜に密着するように2つのプロトン伝導性電極を対向配置し、膜−電極接合体を形成し、燃料電池などの電気化学装置に組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導性電極、これを用いた膜−電極接合体(MEA)、及び燃料電池などの電気化学装置に関するものであり、詳しくは、フラーレン系プロトン伝導性高分子の応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素ガスが電極上で酸化され、水素イオンと電子を生じる下記の反応(1)
2 → 2H++2e-・・・・・(1)
、あるいは水素イオンと電子と酸素ガスが反応して水を生成する下記の反応(2)
2 +4H++4e- → 2H2O・・・・・(2)
などの電極反応に基づいて構成される各種電気化学装置、例えば、燃料電池や化学センサなどが提案されている。
【0003】
これらの反応には水素イオンと電子と気体分子とが関与するため、反応が起こる場所として、これら全ての粒子が一堂に会することのできる場所が必要である。このような場所は三相界面と呼ばれている。
【0004】
図5は、後述の特許文献1に示されている三相界面の例を示す断面図である。図5に示すように、プロトン(水素イオン)伝導体1の表面に、電子伝導性を有する触媒粒子2を分散させて配置し、触媒粒子2に接するようにガス透過性集電体7を設けた場合には、プロトン伝導体1と触媒粒子2の接点付近が、水素イオンと電子と気体分子とが同時に出会い得る場所、すなわち三相界面6になる。この場合、三相界面6で起こる反応(1)や反応(2)に応じて触媒粒子2の表面で電子の授受が行われ、この電子の授受はガス透過性集電体7を介して回路を流れる電流として伝えられ、電気化学装置が動作する。しかし、この例のようにプロトン伝導体1の表面に触媒粒子2を分散させるだけでは、三相界面6が形成される領域はプロトン伝導体1の表面上に限られ、触媒粒子2とガス透過性集電体7とからなる電極の電極性能は高くなり得ない。
【0005】
図6は、特許文献1に示されているプロトン伝導性電極の構造を示す概略断面図である。燃料電池などでは、触媒粒子2とプロトン伝導体粒子3とを混ぜ合わせた混合物からなる多孔性の混合物層5を、プロトン伝導体1の表面に密着するように適度な厚さで形成し、三相界面6となり得る領域を増やす方法が、一般的に用いられている。この混合物層5では、プロトン伝導体粒子3によってプロトン伝導パスが3次元的に形成され、触媒粒子2によって電子伝導パスが3次元的に形成され、混合物層5内部の空孔4によって気体分子が拡散移動する通路が形成される。この結果、混合物層5の内部の、触媒粒子2とプロトン伝導体粒子3との接点付近にも、三相界面6となる領域が形成される。このように混合物層5が3次元的に機能するため、混合物層5とガス透過性集電体7とからなる電極の電極性能は高くなる。なお、図6(a)は混合物層5が単層である場合を示し、図6(b)は混合物層5が複数層の積層構造からなる場合を示している。
【0006】
混合物層5中の三相界面6で電極反応が効率よく起こるためには、混合物層5中でプロトン伝導、電子伝導、および気体分子の拡散移動が滞りなく行われることが必要である。特にプロトン伝導体粒子3の材料として、プロトン伝導性の高い材料を用いることが重要になる。
【0007】
プロトン伝導性高分子膜を電解質とする固体高分子型燃料電池(PEFC)は、装置を固体化および小型化できるため、応用的効果が高い。このため、近年、低温動作が可能な燃料電池として広く用いられようとしている。PEFCに用いられるプロトン伝導性電極では、触媒粒子2として、白金などの触媒粒子がカーボン粉末などに担持された担持触媒や、白金が非常に細かな海綿状になった白金黒などが用いられる。また、プロトン伝導体粒子3の材料として、従来、ナフィオン(デュポン社の登録商標)に代表されるプロトン伝導性高分子樹脂が用いられてきた。
【0008】
ナフィオンは、パーフルオロ化された1本鎖の炭素骨格主鎖からなる疎水性の分子骨格と、親水性のスルホン酸基を含む、パーフルオロ化された側鎖とからなる。ナフィオンなどのパーフルオロスルホン酸系樹脂では、スルホン酸基から解離したプロトンが、高分子マトリックス中に取込まれている水をチャネルとして拡散移動することにより、高いプロトン伝導性が発現する。このため、水分を十分に吸収した湿潤状態でないと高いプロトン伝導性能が発揮されず、湿度が低い状態ではプロトン伝導率が急激に低下する。
【0009】
また、発電中、プロトン(水素イオン)は、水和したオキソニウムイオン(H3+)として燃料電極側から酸素電極側へ移動する。このため、プロトンの移動に伴って水分子が燃料電極側から酸素電極側へ運ばれ、燃料電極側から水分が徐々に失われる。従って、発電中に燃料電極側に継続的に水分を補給することが必要になる。
【0010】
また、ナフィオンなどのプロトン伝導性高分子樹脂に取り込まれた水は、疎水性の高分子骨格から相分離した状態で保持されているため、高温での蒸発や低温での凍結が避けられず、水分の沸騰や凍結を防ぐために、燃料電池の動作温度範囲が制限される。更に、含水した状態が温度などに大きく依存するので、プロトン伝導性能が温度などの環境条件に大きく影響される。
【0011】
以上のような理由から、プロトン伝導体粒子3の材料として、ナフィオンなどのパーフルオロスルホン酸系樹脂を用いた場合、乾燥した雰囲気下や高温下でプロトン伝導性電極を継続的に使用することは難しい。
【0012】
そこで、特許文献1には、プロトン伝導体粒子3の材料として、フラーレン分子にプロトン解離性の基を導入して形成されたプロトン解離性分子を、ナフィオンの代わりに用いることが提案されている。図7(a)および(b)は、特許文献1に例示されているプロトン解離性分子の構造を示す構造式である。図7(a)は、n個のフェノール性ヒドロキシ基−OHを有するフラーレン誘導体を示し、図7(b)は、その硫酸水素エステルを示している。nの数は最大で12程度であり、各官能基がフラーレン核に結合する位置は不定である。
【0013】
これらのプロトン解離性分子は、凝集状態でプロトン伝導性を示す。これは、フラーレン1分子中に多数のプロトン解離性の基が存在するので、単位体積当たりに含まれるプロトン解離性の基の個数が非常に多くなるからであると考えられている。このため、フラーレン誘導体からなるプロトン伝導体は、プロトンの移動媒体として水を必ずしも必要とせず、乾燥状態でもプロトン伝導性を発揮する。また、内部に取り込まれた水分は強固に保持されており、常温を含む広い温度範囲で相分離せず、安定したプロトン伝導性を発揮する。
【0014】
なお、特許文献1において、「プロトン(H+)解離性の基」とは、プロトン(H+)が電離により離脱し得る官能基を意味するとされている。この定義は本明細書でも同様とする。
【0015】
【特許文献1】WO 02/013295号公報(第10−13頁、図4−6及び12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
さて、WO 01/06519号公報の表1には、ヒドロキシ基を有するフラーレン誘導体に比して、強酸性の硫酸水素エステル基を有するフラーレン誘導体の方が、プロトン伝導度が100倍以上大きいことが示されている。従って、プロトン伝導性電極のプロトン伝導体粒子の構成材料としては、ヒドロキシ基を有するフラーレン誘導体よりも硫酸水素エステル基を有するフラーレン誘導体の方が好ましいと考えられる。
【0017】
しかしながら、特開2003-123793号公報には、硫酸水素エステル基を有するフラーレン誘導体は、水が存在する条件の下では、高温、特に85℃以上においてエステル結合が加水分解しやすく、水の存在下、高温で使用すると、プロトン伝導性が低下しやすいことが判明したと記載されている。従って、硫酸水素エステル誘導体をプロトン伝導体粒子の構成材料として用いた場合には、プロトン伝導性電極の長期的信頼性や工業的に有用な寿命が得られないおそれがある。プロトン伝導性電極を電気化学装置に適用するには、その電気化学装置に求められる動作条件の下で、プロトン伝導体粒子が化学的にも熱的にも安定であることが求められ、硫酸水素エステル誘導体はこの条件を十分に満たしているとは言えない。
【0018】
一方、特許文献1が出願された後に、様々なフラーレン誘導体が合成され、それらのうちには、特許文献1に例示されているフラーレン誘導体に比べ化学的および熱的安定性に優り、プロトン伝導性電解質膜の構成材料として好適であると述べられているフラーレン誘導体が存在する(例えば、特開2003-123793号公報、特開2003-187636号公報、特開2003-303513号公報、特開2004-55562号公報、および特開2005-68124号公報参照。)。
【0019】
しかし、電解質膜と電極とでは使用形態が異なるので、プロトン伝導性電解質膜の構成材料として優れた材料が、つねにプロトン伝導性電極の構成材料として優れた材料であるとは言えない。例えば、プロトン伝導性電解質膜として用いるためには、燃料分子や酸素分子が電解質膜を通過するのを阻止する高いガス遮断性能が求められる。これに対し、プロトン伝導性電極の構成材料にはガス遮断性能は必要なく、むしろ適度にガスを通す材料であることが望ましい。
【0020】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、プロトン伝導性に優れ、また電気化学装置の使用条件下で化学的及び熱的に安定であり、更には湿度や温度に対する依存性の小さいプロトン伝導性電極、これを用いた膜−電極接合体(MEA)、及び燃料電池などの電気化学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
即ち、本発明は、
集電体と、
前記集電体に接して形成され、プロトン伝導性高分子と電子伝導性触媒とを含有する 、多孔性の混合物と
からなり、
前記プロトン伝導性高分子は、複数のプロトン解離性分子が連結基によって連結され た構造を有し、
前記プロトン解離性分子は、プロトン解離性の基が、少なくとも一部分がフッ素化さ れたスペーサー基を介してフラーレン分子に結合することによって形成されている、
プロトン伝導性電極に係るものである。
【0022】
また、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持されたプロトン伝導性電解質膜と
からなり、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が、請求項1〜22のいずれか 1項に記載したプロトン伝導性電極からなる、
膜−電極接合体(MEA)に係り、また、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持されたプロトン伝導体と
からなり、
前記プロトン伝導体が前記第1の電極から前記第2の電極へプロトンを伝導するよう に構成され、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が、請求項1〜22のいずれか 1項に記載したプロトン伝導性電極からなる、
電気化学装置に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のプロトン伝導性電極は、集電体と、その集電体に接して形成され、プロトン伝導性高分子と電子伝導性触媒とを含有する、多孔性の混合物とからなるプロトン伝導性電極である。前記混合物中では、前記プロトン伝導性高分子によるプロトン伝導パス、前記電子伝導性触媒による電子伝導パス、及び前記混合物中の空孔が連結することによって形成された気体分子の拡散移動通路が、それぞれ3次元的に形成され、前記混合物の表面ばかりではなく、前記混合物の内部にも三相界面が効果的に形成される。この結果、高い電流密度や低い内部抵抗などの、優れた電極性能が得られる。
【0024】
また、前記プロトン伝導性高分子を構成する前記プロトン解離性分子として、フラーレン分子にプロトン解離性の基が導入されたフラーレン誘導体分子が用いられている。フラーレン分子では、1分子に多数のプロトン解離性の基を導入することができるので、前記プロトン解離性分子からなる前記プロトン伝導性高分子は、優れたプロトン伝導性を発揮する。また、プロトン伝導度の湿度や温度に対する依存性が小さく、乾燥雰囲気下においても継続的な使用が可能である。
【0025】
更に、前記プロトン伝導性高分子は、複数の前記プロトン解離性分子が連結基によって連結された構造を有し、高分子化によって溶媒に対する溶解性が抑えられている。従って、前記プロトン解離性分子に多数のプロトン解離性の基を導入しても、水などに溶け込んで流失してしまうおそれが小さい。また、前記プロトン解離性分子において、前記プロトン解離性の基は、少なくとも一部分がフッ素化されたスペーサー基を介してフラーレン核に結合しているので、化学的及び熱的安定性に優れている。これらの結果、本発明のプロトン伝導性電極は、電気化学装置の使用条件下で化学的及び熱的に安定である。本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、プロトン伝導性電極を構成する材料として、これらの特徴を備えた前記プロトン伝導性高分子が最適であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0026】
本発明の膜−電極接合体(MEA)は、第1の電極と第2の電極との間にプロトン伝導性電解質膜が挟持され、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が、本発明のプロトン伝導性電極からなり、また、本発明の電気化学装置は、第1の電極と第2の電極との間にプロトン伝導体が挟持され、前記プロトン伝導体が前記第1の電極から前記第2の電極へプロトンを伝導するように構成され、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が、本発明のプロトン伝導性電極からなるので、本発明のプロトン伝導性電極と同様の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のプロトン伝導性電極において、前記フラーレン分子がCf(fはフラーレン分子を形成し得る自然数で、f=36、60、70、76、78、80、82、84等である。)であるのがよい。前記フラーレン分子としていずれの周知のフラーレン分子も用いることができ、C36のように球状炭素分子の一部が欠けた分子であってもよい。
【0028】
なお、前記フラーレン分子がC60又はC70であるのが特によい。現在用いられているフラーレンの製造方法では、C60及びC70の生成比率が圧倒的に大きく、製造コスト的にもC60及び/又はC70を用いるメリットが大きい。また、フラーレン分子は、一般的に、そのサイズが増すにつれて反応性が低下するので、前記プロトン伝導性高分子を合成する上で、C60及び/又はC70又はこれらの混合物を用いるのが好ましい。
【0029】
また、前記スペーサー基が、少なくとも一部分の水素原子がフッ素原子によって置換された炭化水素骨格を有しているのがよい。この際、前記スペーサー基がパーフルオロメチレン基−CF2−を有しているのがよく、例えば、一般式:−Cn2n−(但し、nは自然数である。)で表される骨格を有しているのがよい。また、前記スペーサー基が骨格−CF2−CF2−O−CF2−CF2−を有しているのでもよい。水素原子がフッ素原子によって置換されることによって、熱的にも化学的にも安定性が向上する。
【0030】
また、前記プロトン解離性の基の少なくとも1個が、スルホ基−SO3H、ホスホノ基−PO(OH)2、カルボキシル基−COOH、スルホンアミド基−SO2-NH2、スルホンイミド基−SO2-NH-SO2−、カルボキサミド基−CO-NH2、及びカルボキシミド基−CO-NH-CO−からなる群の中から選ばれた基であるのがよい。これらの官能基に含まれる水素は、プロトンとして放出されやすく、これらの官能基は優れたプロトン解離性の官能基である。また、電気化学装置に求められる動作条件の下で熱的にも化学的にも安定である。
【0031】
また、前記連結基が、少なくとも一部分の水素原子がフッ素原子によって置換された炭化水素骨格を有しているのがよい。この際、前記連結基がパーフルオロメチレン基−CF2−を有しているのがよく、例えば、一般式:−Cn2n−(但し、nは自然数である。)で表される骨格を有しているのがよい。水素原子がフッ素原子によって置換されることによって、熱的にも化学的にも安定性が向上する。
【0032】
また、前記連結基の長さが前記スペーサー基の長さより長いのがよい。この場合、前記連結基は前記スペーサー基に妨害されること少なく、前記プロトン解離性分子間を連結することができる。
【0033】
また、前記連結基がプロトン解離性の基を有するのがよい。この場合、前記連結基が有するプロトン解離性の基もプロトン伝導に寄与するので、前記プロトン伝導性高分子のプロトン伝導性が向上する。
【0034】
この際、前記の連結基が有するプロトン解離性の基の少なくとも1個が、スルホ基−SO3H、ホスホノ基−PO(OH)2、カルボキシル基−COOH、スルホンアミド基−SO2-NH2、スルホンイミド基−SO2-NH-SO2−、カルボキサミド基−CO-NH2、及びカルボキシミド基−CO-NH-CO−からなる群の中から選ばれた基であるのがよい。これらの官能基に含まれる水素は、プロトンとして放出されやすく、これらの官能基は優れたプロトン解離性の官能基である。
【0035】
また、前記多孔性の混合物の気孔率が1〜90%であるのがよい。これによって、気体分子が拡散移動する通路が前記多孔性の混合物全体にわたって3次元的に形成される。この結果、前記多孔性の混合物の内部に三相界面が3次元的に効果的に形成され、気体分子の拡散移動が速やかに行われるので、前記プロトン伝導性電極の電極性能が向上する。気孔率が1%未満では、気体分子の拡散移動が不十分になり、気孔率が90%をこえると、プロトン伝導性を担うプロトン伝導性高分子、または触媒作用を担う電子伝導性触媒が不足するので、不都合である。
【0036】
また、前記多孔性の混合物が、前記集電体上或いはプロトン伝導性高分子電解質膜上に層状に形成されているのがよい。この際、前記多孔性の混合物が、単層、又は複数層の積層構造からなるのがよい。層状の前記多孔性の混合物は、前記フラーレン誘導体と前記電子伝導性の触媒とを含有する塗液を塗布した後、溶媒を蒸発させることによって簡易に形成することができる。この際、塗布する塗液の濃度を調節することによって、前記フラーレン誘導体、前記電子伝導性の触媒、および空孔の分布密度を調節することができ、塗布工程を繰り返し、重ね塗りをすることで、前記多孔性の混合物を所定の厚さに形成することができる。
【0037】
また、前記集電体がガス透過性であるのがよく、具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、ポリテトラフルオロエチレンを付着させたカーボン粒子を有する撥水多孔層、孔あき金属板、金属網、又は発泡金属多孔体であるのがよい。
【0038】
また、前記触媒が、触媒金属微粒子が多孔質炭素材料に担持されている担持触媒であるか、又は担持されていない触媒金属微粒子であるのがよい。
【0039】
この場合、前記担持触媒において、前記担持されている触媒金属微粒子が、白金、金、銀、銅、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、及びこれらを含む合金からなる群から選ばれた少なくとも1種を含み、前記多孔質炭素材料が、活性炭、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラファイトナノファイバー、フラーレン、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノファイバー、及びこれらから構成される炭素複合材料からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのがよい。そして前記担持触媒における前記担持されている触媒金属微粒子の分率が10〜90質量%であるのがよい。
【0040】
或いは、前記担持されていない触媒金属微粒子が白金黒であるのがよい。
【0041】
そして、前記担持されている触媒金属微粒子、又は前記担持されていない触媒金属微粒子が、0.1〜35mg/cm2の面密度で配置されているのがよい。
【0042】
本発明の電気化学装置は、燃料電池として構成されているのがよい。この燃料電池は、高い電流密度や低い内部抵抗など、優れた出力特性が得られる。また、負極(燃料極)に水分を供給することを必ずしも必要とせず、乾燥雰囲気下においても優れた性能を発揮して継続的に発電することができる。湿度や温度の影響を受けにくく、加湿装置などの、水分を管理する手段を簡略化または省略することができるので、発電システムを小型化、軽量化、及び低コスト化することができる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0044】
実施の形態1
本発明に基づくプロトン伝導性電極は、基本的には、特許文献1に示されているプロトン伝導性電極の構造と同じである。すなわち、図6に示されているように、前記電子伝導性触媒からなる触媒粒子2と、前記プロトン伝導性高分子からなるプロトン伝導体粒子3との混合物からなる多孔性の混合物層5が、プロトン伝導体1の表面およびガス透過性集電体7に密着するように形成されている。この混合物層5では、プロトン伝導体粒子3によるプロトン伝導パス、触媒粒子2による電子伝導パス、および混合物層5中の空孔4が連結することによって形成された気体分子の拡散移動通路が、それぞれ、混合物層5全体にわたって3次元的に形成される。この結果、混合物層5の内部の、触媒粒子2とプロトン伝導体粒子3との接点付近にも、三相界面6となる領域が形成される。このように混合物層5が3次元的に機能するため、混合物層5とガス透過性集電体7とからなる電極の電極性能は高くなる。
【0045】
多孔性の混合物層5は、必要に応じて、図6(a)に示した単層構造からなるものでもよいし、図6(b)に示した複数層の積層構造からなるものでもよい。多孔性の混合物層5は、フラーレン誘導体と電子伝導性の触媒とを含有する塗液を塗布した後、溶媒を蒸発させることによって簡易に形成することができる。この際、塗布する塗液の濃度を調節することによって、フラーレン誘導体、電子伝導性の触媒、および空孔の分布密度を調節することができ、塗布工程を繰り返し、重ね塗りをすることで、混合物層5を所定の厚さに形成することができる。
【0046】
混合物層5中の気体分子の拡散移動が滞りなく行われるために、混合物層5の気孔率は、1〜90%であるのがよい。このようであると、気体分子の拡散移動通路が混合物層5全体にわたって十分に形成される。この結果、混合物層5の内部にも三相界面6が効果的に形成され、かつ、気体分子の拡散移動が速やかに行われるので、プロトン伝導性電極の電極性能が高くなる。気孔率が1%未満では、気体分子の拡散移動が不十分になり、気孔率が90%をこえると、プロトン伝導性を担うプロトン伝導体粒子3、または、触媒作用および電子伝導性を担う触媒粒子2が不足するので、電極性能は低くなる。
【0047】
また、混合物層5中のプロトン伝導体粒子3と触媒粒子2との混合比が、質量比で5:95〜90:10であるのがよく、15:85〜40:60であるのがさらによい。
【0048】
混合物層5中の三相界面6で反応が効率よく起こるためには、混合物層5中でのプロトン伝導が滞りなく行われるように、プロトン伝導体粒子3の材料としてプロトン伝導性の高い材料を用いることが特に重要である。本実施の形態では、前記プロトン伝導性高分子を構成する前記プロトン解離性分子として、フラーレン分子にプロトン解離性の基が導入されたフラーレン誘導体分子が用いられている。フラーレン分子では、1分子に多数のプロトン解離性の基を導入することができるので、前記プロトン解離性分子からなる前記プロトン伝導性高分子は、優れたプロトン伝導性を発揮する。また、プロトン伝導度の湿度や温度に対する依存性が小さく、乾燥雰囲気下においても継続的な使用が可能である。
【0049】
図1は、本実施の形態で用いられる前記プロトン伝導性高分子を構成する前記プロトン解離性分子の例を示す構造式である(特開2003-303513号公報参照。)。これらのプロトン解離性機能分子では、プロトン解離性の基がスペーサー基を介してフラーレン核に結合しており、フラーレン核に直結していないため、フラーレン核を形成している不飽和結合の影響がプロトン解離性の基に及ぶことがない。また、スペーサー基は、水素原子の少なくとも一部分がフッ素原子で置換されたアルキレン基などからなり、化学的に不活性化され、耐熱性が強化された基である。このため、図1に例示するプロトン解離性機能分子は、優れた化学的安定性や耐熱性を示す。
【0050】
例えば、図1(a)に示すように、スペーサー基が−CF2-CF2-O-CF2-CF2−であるのがよい。このスペーサー基はすべての水素原子がフッ素原子で置換されているので、極めて安定で、プロトン解離性分子の化学的又は熱的安定性が向上する。このスペーサー基は、フラーレン核1個につき6〜10個程度導入することができる。
【0051】
一般的に、より多くの水素原子がフッ素原子で置換されているほどスペーサー基は安定になるが、主としてコスト的な要請から、要求される化学的又は熱的安定性に応じて、適宜、一部分がフッ素化されたスペーサー基、例えば、図1(b)〜(d)に示すスペーサー基を選択することもできる。
【0052】
図2(a)は、本実施の形態で用いられる前記プロトン伝導性高分子を構成する前記プロトン解離性分子の別の例を示す構造式である(特開2005-68124号公報参照。)。このプロトン解離性分子Aはポリ(ジフルオロスルホメチル)フラーレンC60に相当し、8〜12個程度のスルホ基−SO3Hが、それぞれ、ジフルオロメチレン基−CF2−を介してフラーレン核C60に結合している。ジフルオロメチレン基は化学的に不活性で耐熱性が高いため、このプロトン解離性機能分子は熱的にも化学的にも安定である。しかも、ジフルオロメチレン基はスペーサー基としての最小限の大きさを有し、1個のフラーレン核に多数のプロトン解離性の基を導入することができる。従って、プロトン解離性の基の密度を高め、比較的低い湿度条件下でも高いプロトン伝導性を実現することができる。
【0053】
図2(b)は、本実施の形態で用いられる前記プロトン伝導性高分子の例を示す概略図である。このプロトン伝導性高分子Bは、プロトン解離性分子Aが連結基−CF2-SO2-NH-SO2-CF2−によって連結された構造を有し、高分子化によって溶媒に対する溶解性が抑えられている。従って、プロトン解離性分子Aに多数のプロトン解離性の基を導入しても、水などに溶け込んで流失してしまうおそれが小さい。
【0054】
上記のように、連結基が少なくとも一部分の水素原子がフッ素原子によって置換された炭化水素骨格を有しているのがよく、連結基がパーフルオロメチレン基−CF2−を有しているのがさらによい。水素原子がフッ素原子によって置換されることによって、熱的にも化学的にも連結基の安定性が向上する。
【0055】
また、連結基の長さがスペーサー基の長さより長いのがよい。この場合、前記連結基は前記スペーサー基に妨害されること少なく、前記プロトン解離性分子間を連結することができる。
【0056】
また、連結基が、上記スルホンイミド基−SO2-NH-SO2−のように、プロトン解離性の基を有するのがよい。この場合、前記連結基が有するプロトン解離性の基もプロトン伝導に寄与するので、前記プロトン伝導性高分子のプロトン伝導性が向上する。連結基が有するプロトン解離性の基としては、スルホ基−SO3H、ホスホノ基−PO(OH)2、カルボキシル基−COOH、スルホンアミド基−SO2NH2、スルホンイミド基−SO2-NH-SO2−、カルボキサミド基−CO-NH2、及びカルボキシミド基−CO-NH-CO−がよい。これらの官能基に含まれる水素は、プロトンとして放出されやすく、これらの官能基は優れたプロトン解離性の官能基である。
【0057】
図7(c)は、特開2003-123793号公報に例示されているプロトン解離性分子Cの構造を示す構造式である。プロトン解離性分子Cでは、プロトン解離性の基であるスルホ基は、スペーサー基−CH2-CH2-CH2-CH2−を介してフラーレン核に結合されている。プロトン解離性分子Cは、固体構造内に含まれる水の量を最適化することにより、10-2S/cmを超えるプロトン伝導率を発現する。しかしながら、スペーサー基がフッ素原子で置換されていないアルキレン基であるため耐熱性が劣り、約110℃で分解し始める。
【0058】
表1および表2は、図2(a)に示したプロトン解離性分子A、図2(b)に示したプロトン伝導性高分子B、および図7(c)に示したプロトン解離性分子Cについて、耐熱性およびプロトン伝導度を評価したデータである(特開2005-68124号公報参照。)。
【0059】
各試料の耐熱性は、加熱昇温時に発生するガスの分析によって調べられた。具体的には、試料約20mgを開放容器に入れ、加熱制御可能な減圧容器に導入した。減圧容器には、発生するガスを検出し分析できるRGA(Residual Gas Analyzer)装置(分子量1〜300が検出可能)が取り付けてある。この減圧容器内を10-7torrまで減圧した後、昇温速度4℃/分で500℃まで昇温しながら、加熱時に発生するガスを分析した。この際、スルホ基の分解によって生成するSO2またはSO3ガスに着目し、それらが発生し始める温度を表1の分解開始温度とし、最大量のガスが発生する温度を表1の分解ピーク温度とした。
【0060】
各試料のプロトン伝導度は、粉末試料を室温下で12時間真空乾燥後、厚さ約30μmのペレットに成形し、金電極間に挟み込んだ状態でインピーダンスアナライザーを用いて測定した。表2中の乾燥状態の伝導度とは、ロータリーポンプでペレット状試料を排気した真空中での値である。70%のRH下での伝導度とは、乾燥状態での測定が終了した後、相対湿度(RH)70%の雰囲気中に一日置いて測定した値である。水中に浸漬した後の伝導度とは、その後、試料を水中に3日間浸漬した後に測定した値である。この際、電極間が短絡した状態になった場合に、試料が溶解したものと判断した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表1から、プロトン解離性分子Aおよびプロトン伝導性高分子Bは、プロトン解離性分子Cに比べて著しく耐熱性が優れていることがわかる。固体高分子型燃料電池(PEFC)では、熱利用や触媒被毒の防止の観点から、水の沸点である100℃に近い温度、より望ましくはそれ以上の温度で運転することが望まれており、それに用いられるプロトン伝導性電極ついても、100℃またはそれ以上の温度で工業的に有用な寿命を有することが求められている。この点から、プロトン解離性分子Cでは分解開始温度が110℃であるのに対し、プロトン解離性分子Aおよびプロトン伝導性高分子Bでは、分解開始温度が100℃をはるかに超える温度、175℃および190℃であることは極めて重要である。
【0064】
また、表2から、プロトン伝導性高分子Bでは、高分子化によってプロトン解離性分子Aに比べて著しく耐水性が向上したことがわかる。この際、高分子化によってプロトン伝導度は低下するが、その度合いは比較的小さく、許容できる範囲である。
【0065】
以上のように、図1または図2(a)に示したプロトン解離性分子が連結基によって連結された構造を有するプロトン伝導性高分子は、高いプロトン伝導性を有し、電気化学装置で求められる条件の下で熱的にも化学的にも安定であり、耐水性も十分である。従って、プロトン伝導性電極を構成するプロトン伝導体粒子3の材料として最も好ましい。
【0066】
これらに比して、特開2003-123793号公報、および特開2004-55562号公報の実施例1に示されているプロトン伝導性高分子は、スペーサー基の水素原子がフッ素置換されていないため、耐熱性が劣る。特開2004-55562号公報の他の実施例に示されているプロトン伝導性高分子は、構造が複雑で合成が困難であるばかりでなく、高分子中でフラーレンが占める割合が小さいので、プロトン伝導性が低い。また、特開2003-187636号公報に挙げられているプロトン解離性分子は、高分子化されていないため、耐水性が不十分である。
【0067】
図3は、本実施の形態で用いられるプロトン伝導性高分子の合成工程を示すフロー図である(特開2003-303513号公報および特開2005-68124号公報、並びに特開2006-13157号公報および特開2006-315970号公報参照。)。図3は、フラーレン分子がC60であり、フラーレン分子にプロトン解離性の基を導入するためのスペーサー基前駆体分子がI−CF2-CF2-O-CF2-CF2−SO2Fであり、フラーレン分子を連結して高分子化する連結基前駆体分子がI−CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2−Iである例を示している。
【0068】
図3に示した合成フローでは、まず、第1工程で、フラーレン分子とスペーサー基前駆体分子とを反応させることによって、スペーサー基−CF2-CF2-O-CF2-CF2−がフラーレン核に結合した第1反応生成物を合成する。このスペーサー基には、プロトン解離性の基であるスルホ基−SO3Hの前駆体基であるスルホニルフルオリド基−SO2Fが結合している。スルホニルフルオリド基は、容易に加水分解されて、スルホ基またはその塩を生成する。
【0069】
次に、第2工程で、フラーレン核同士を連結基−(CF2)6−によって連結し、第1反応生成物を高分子化した第2反応生成物を得る。このとき、連結基前駆体分子I−(CF2)n−Iの代わりに、下記の構造式1で示される化合物を用いれば、図2(b)に示したように、スペーサー基がスルホンイミド基−SO2-NH-SO2−によって連結された高分子が得られる。
【0070】
構造式1:
【化1】

【0071】
次に、第3工程で、第2反応生成物中の前駆体基−SO2Fを水酸化ナトリウム水溶液を用いて加水分解し、スルホ基のナトリウム塩−SO3Naに変換する。続いて、第4工程で、スルホ基のナトリウム塩−SO3Na中のナトリウムイオンを水素イオンで置換して、スペーサー基−CF2-CF2-O-CF2-CF2−を介して、スルホ基−SO3Hがフラーレン核C60に結合しているプロトン解離性分子が、連結基−CF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2−によって連結されているプロトン伝導性高分子を得る。
【0072】
本発明に基づくプロトン伝導性電極は、電子伝導性触媒からなる触媒粒子2と、プロトン伝導性高分子からなるプロトン伝導体粒子3とを混合し、適当な溶媒に分散させたペースト状の塗液を、ガス透過性集電体7あるいはプロトン伝導体膜1に塗布した後、溶媒を蒸発させ、多孔性の混合物層5を形成することによって製造される。あるいは、フッ素系樹脂シートなどの転写用基材上に多孔性の混合物層5を形成した後、この混合物層5をガス透過性集電体7上あるいはプロトン伝導体膜1上に転写し、接合させる方法によって製造してもよい。
【0073】
実施の形態2
実施の形態2では、請求項23〜25に対応して、燃料電池として構成された電気化学装置の例を、図面を参照しながら説明する。
【0074】
図4は、燃料電池20として構成された電気化学装置の構造を示す概略構成図である。燃料電池20では、ナフィオンなどのプロトン伝導性高分子電解質膜11の両側の面のそれぞれに、負極(アノード;燃料極)12および正極(カソ−ド;酸素極)13が対向して接合され、膜−電極接合体(MEA)10が形成されている。負極12では、カーボンシートやカーボンクロスなどのガス透過性集電体12aの表面に、前記プロトン伝導性高分子と前記電子伝導性触媒とを含有する多孔性混合物層12bが形成され、プロトン伝導性電極が形成されている。また、正極13では、カーボンシートやカーボンクロスなどのガス透過性集電体13aの表面に、プロトン伝導性高分子と電子伝導性触媒とを含有する多孔性混合物層13bが形成され、プロトン伝導性電極が形成されている。なお、負極12および正極13の一方にのみ、本発明を適用したプロトン伝導性電極を用いてもよい。
【0075】
膜−電極接合体(MEA)10は燃料ガス流路21と酸素(空気)流路24との間に挟持され、燃料電池20に組み込まれる。発電時には、負極12側では水素などの燃料ガスが燃料ガス導入口22から供給され、燃料ガス排出口23から排出される。また、正極13側では酸素または空気が酸素(空気)導入口25から供給され、酸素(空気)排出口26から排出される。
【0076】
例えば、燃料が水素である場合、負極12に供給された水素は、下記の反応(1)
2H2 → 4H+ +4e-・・・・・(1)
により酸化され、負極12に電子を与える。生じた水素イオンH+(プロトン)はプロトン伝導性高分子電解質膜11を通って正極13へ移動する。
【0077】
正極13へ移動した水素イオンは、正極13に供給される酸素と下記の反応(2)
2 +4H++4e- → 2H2O・・・・・(2)
のように反応し、水を生成するとともに、正極13から電子を取り込む。
【0078】
燃料電池20全体で起こる反応は、(1)式と(2)式を合わせた、下記の反応式(3)で表される。
燃料電池全体:2H2+O2 → 2H2O・・・・・(3)
【0079】
上記の反応によって、水素と酸素との反応(3)による起電力が負極12と正極13との間に発生する。多孔性混合物層12bおよび13b中の三相界面で起こる反応(1)や反応(2)に応じて、混合物層12bおよび13b中の触媒粒子の表面で電子の授受が行われ、この電子の授受はガス透過性集電体12bおよび13b中を介して負極端子14および正極端子15から回路を流れる電流として伝えられ、電気化学装置としての燃料電池20が動作する。
【0080】
燃料電池20は、本発明に基づくプロトン伝導性電極が負極12及び/又は正極13として用いられているので、高い電流密度や低い内部抵抗など、優れた出力特性が得られる。また、負極(燃料極)12に水分を供給することを必ずしも必要とせず、乾燥雰囲気下においても優れた性能を発揮して継続的に発電することができる。湿度や温度の影響を受けにくく、加湿装置などの、水分を管理する手段を簡略化または省略することができるので、発電システムを小型化、軽量化、及び低コスト化することができる。
【0081】
なお、燃料電池20などの電気化学装置において、プロトン伝導性電極に接して配置されるプロトン伝導性高分子電解質膜11(図6ではプロトン伝導体1)の材料は特に制限されるべきものではなく、プロトン伝導性を有するものならば用いることができる。プロトン交換性の基として、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などが挙げられるがこれらに特に限定されるものではない。具体的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロスルホン酸樹脂や、これらにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる補強層を導入した複合体でもよい。また、スルホン化ポリエーテルケトン樹脂、スルホン化ポリエーテルサルホン樹脂、スルホン化ポリフェニレンスルフィド樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、スルホン化ポリアミド樹脂、スルホン化エポキシ樹脂、スルホン化ポリオレフィン樹脂などの炭化水素系電解質膜であってもよい。また、ポリベンズイミダゾール/リン酸複合体に代表される高分子/強酸複合体であってもよい。また、前記プロトン解離性分子や前記プロトン伝導性高分子であってもよい。この場合、プロトン伝導性高分子電解質膜11とプロトン伝導性電極12および13とが同種のプロトン伝導性材料からなるため、膜−電極接合体(MEA)10において、電解質膜11と電極12および13との界面抵抗が低く抑えられる利点もある。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。本実施例では、プロトン伝導体粒子3の材料として、実施の形態1で図3を用いて説明した方法によって製造されたフラーレン系プロトン伝導性高分子[−C60(CF2CF2OCF2CF2SO3H)n-(CF2)6−]m(下記の構造式2参照。)を用いて、図6に示した構造を有するプロトン伝導性電極を作製した。そして、この電極を用いて、図4を用いて説明した膜−電極接合体(MEA)10を有する燃料電池20を作製し、その発電特性を測定した。
【0083】
構造式2:
【化2】

【0084】
実施例1
<フラーレン系プロトン伝導性高分子を用いたプロトン伝導性電極からなる負極(アノード)の作製>
上記のフラーレン系プロトン伝導性高分子からなるプロトン伝導体粒子3とイオン交換水とを1:9の質量比で混合し、ボールミルを用いて均一に分散させ、10質量%のプロトン伝導性高分子分散水溶液を調製した。次に、触媒粒子2である、白金PtとルテニウムRuからなるPtRu合金触媒(E−TEK社製、モル比 Pt:Ru=2:1)と、上記分散液とを質量比1:4で混合し、適量のイオン交換水を加えて粘度を調整し、ペースト状の塗液を調製した。次に、ガス透過性集電体12aであるカーボンペーパー(東レ(株)社製、商品名:TPG-H-090)上に、白金担持量が1mg/cm2となるように塗液を塗布した後、乾燥させて、多孔性混合物層12bを形成し、本発明に基づくプロトン伝導性電極からなる負極(アノード)12を作製した。
【0085】
なお、上記の塗液を形成するための溶媒としては、上述した水の他に、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類や、プロピレンカーボネート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類や、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンや、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒が挙げられ、単独あるいは混合溶媒として用いることができる。
【0086】
また、プロトン伝導体粒子3および触媒粒子2を上記溶媒に均一に分散させる手段としては、上述したボールミルの他に、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を、適宜、単独で、または組み合わせて用いることができる。この際、プロトン伝導体が被覆した凝集体の触媒粒子は粉砕されるが、その粉砕粒度を制御することが非常に重要である。粉砕が十分でない場合、触媒金属が三相界面を形成できない割合が高くなる一方、粉砕し過ぎると触媒金属が導電性担体から剥離したり、または微細なためにプロトン伝導体による触媒粒子表面の被覆が不十分になったりして、三相界面を形成できない割合が高くなるためである。粉砕の目安は、凝集体の粒径が0.1〜10μmの間に分布することである。
【0087】
また、塗液を配置する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ロッドコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ビードコーター、ダイコーター、ファウンテンコーター、カーテンコーター、スライドコーター、スプレーコーター、スピンコーター、ディップコーター、ロールコーター等のコーターを用いる塗布法や、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリ−ン印刷、転写印刷等の印刷法を用いることができる。
【0088】
<プロトン伝導性高分子を用いたプロトン伝導性電極からなる正極(カソード)の作製>
負極の作製と同様、フラーレン系プロトン伝導性高分子からなるプロトン伝導体粒子3と、イオン交換水とを1:10の質量比で混合し、ボールミルを用いて均一に分散させ、10質量%のプロトン伝導性高分子分散水溶液を調製した。次に、触媒粒子2であるPt担持カーボン触媒(田中貴金属工業(株)社製、白金担持量70%)と、上記分散液とを質量比1:4で混合し、適量のイオン交換水を加えて粘度を調整し、ペースト状の塗液を調製した。次に、ガス透過性集電体13aであるカーボンペーパー(東レ(株)社製、商品名:TPG-H-090)上に、白金担持量が1mg/cm2となるように塗液を塗布した後、乾燥させて、多孔性混合物層13bを形成し、本発明に基づくプロトン伝導性電極からなる正極(カソード)13を作製した。
【0089】
<燃料電池の作製>
プロトン伝導性高分子電解質膜11としてNafion112(商品名;デュポン社製)膜を用い、これを対向配置した上記の負極(アノード)12と正極(カソード)13との間に挟持し、温度150℃の下で熱圧着(ホットプレス)することにより、膜−電極接合体(MEA)10を作製した。この膜−電極接合体(MEA)10に負極端子14および正極端子15を取り付けた後、燃料ガス流路21と酸素(空気)流路24との間に挟み込み、燃料電池20を作製した。
【0090】
<燃料電池の発電試験>
燃料ガス流路21から負極(アノード)12に乾燥水素ガスを供給し、酸素(空気)流路24から正極(カソード)13に乾燥水素ガスを供給し、120℃で単セルとしての発電試験を行った。ただし、本実施例の燃料電池の使用法はこれに限られるものではなく、複数個の燃料電池を直列及び/又は並列に接続して用いたり、直接型メタノール燃料電池(DMFC)などの他の燃料を用いる燃料電池に応用したりすることも可能である。
【0091】
実施例2
<ナフィオンを用いたプロトン伝導性電極からなる負極(アノード)の作製>
触媒粒子2である、白金PtとルテニウムRuからなるPtRu合金触媒(E−TEK社製、Pt:Ru=2:1)と、10質量%ナフィオン分散水溶液(デュポン社製、商品名:DE-1021)とを質量比1:4で混合し、適量のイオン交換水を加えて粘度を調整し、ペースト状の塗液を調製した。次に、ガス透過性集電体12aであるカーボンペーパー(東レ(株)社製、商品名:TPG-H-090)上に、白金担持量が1mg/cm2となるように塗液を塗布した後、乾燥させて、多孔性混合物層を形成し、ナフィオンを用いたプロトン伝導性電極からなる負極(アノード)を作製した。
【0092】
<燃料電池の作製および発電試験>
実施例1の負極(アノード)12の代わりに、ナフィオンを用いて作製した上記負極(アノード)を用い、それ以外は実施例1と同様にして燃料電池20を作製し、その発電試験を行った。
【0093】
実施例3
<ナフィオンを用いたプロトン伝導性電極からなる正極(カソード)の作製>
触媒粒子2であるPt担持カーボン触媒(田中貴金属工業(株)社製、白金担持量70%)と、10質量%ナフィオン分散水溶液(デュポン社製、商品名:DE-1021)とを質量比1:4で混合し、適量のイオン交換水を加えて粘度を調整し、ペースト状の塗液を調製した。次に、ガス透過性集電体13aであるカーボンペーパー(東レ(株)社製、商品名:TPG-H-090)上に、白金担持量が1mg/cm2となるように塗液を塗布した後、乾燥させて、多孔性混合物層を形成し、ナフィオンを用いたプロトン伝導性電極からなる正極(カソード)を作製した。
【0094】
<燃料電池の作製および発電試験>
実施例1の正極(カソード)13の代わりに、ナフィオンを用いて作製した上記正極(カソード)を用い、それ以外は実施例1と同様にして燃料電池20を作製し、その発電試験を行った。
【0095】
比較例1
<膜−電極接合体(MEA)および燃料電池の作製>
実施例1の負極(アノード)12および正極(カソード)13の代わりに、ナフィオンを用いて実施例2で作製した負極(アノード)および実施例3で作製した正極(カソード)を用い、それ以外は実施例1と同様にして燃料電池を作製し、その発電試験を行った。
【0096】
表3に、実施例1〜3および比較例1でプロトン伝導性電極を作製するのに用いたプロトン伝導体の種類をまとめて示す。
【0097】
【表3】

【0098】
実施例1〜3および比較例1において、開放電圧は約1.2Vで同じである。しかし、電流を取り出した場合、比較例1では出力電流の増加とともに出力電圧が急速に低下するのに対し、実施例1〜3では出力電圧の低下が小さく、内部抵抗の小さい、良好な電流−電圧特性を示した。また、取り出せる最大出力電流も、比較例1に比べて実施例1〜3では向上している。また、フラーレン系プロトン伝導性高分子からなるプロトン伝導性電極を負極と正極の両方に用いた実施例1は、負極と正極の片方のみに用いた実施例2および3に比べ、より良好な電流−電圧特性を示し、内部抵抗が小さく、最大出力電流が大きい。
【0099】
以上のことから、乾燥雰囲気下、120℃の高温において、フラーレン系プロトン伝導性高分子からなるプロトン伝導性電極は、ナフィオンを用いて作製したプロトン伝導性電極に比して、優秀な電極性能を示すことが明らかである。
【0100】
実施例4および5
実施例4および5では、プロトン伝導性電極を作製するのに、フラーレン系プロトン伝導性高分子分散水溶液とナフィオン分散水溶液とを混合して用いた。それ以外は実施例1と同様にしてプロトン伝導性電極および燃料電池を作製し、その発電試験を行った。
【0101】
表4に、実施例4および5でプロトン伝導性電極を作製するのに用いた分散水溶液の割合を示す。
【0102】
【表4】

【0103】
実施例4および5においても、開放電圧は、実施例1および比較例1と同じく約1.2Vである。しかし、電流を取り出した場合には、実施例4および5の電流−電圧曲線は、実施例1の電流−電圧曲線と、比較例1の電流−電圧曲線との中間になる。しかも、フラーレン系プロトン伝導性高分子の割合が大きい実施例4の電流−電圧曲線は実施例1の電流−電圧曲線に近く、フラーレン系プロトン伝導性高分子の割合が小さい実施例5の電流−電圧曲線は比較例1の電流−電圧曲線に近い。
【0104】
以上のことから、フラーレン系プロトン伝導性高分子とナフィオンとを併用して作製したプロトン伝導性電極では、それぞれの割合に応じて電極性能が定まり、これに基づいて、燃料電池の電流−電圧特性や最大出力電流が定まることが明らかになった。
【0105】
実施例4および5によって示したように、多孔性混合物層12bおよび13b中のプロトン伝導体は、すべてがフラーレン系プロトン伝導性高分子であることが望ましいが、プロトン伝導性を示す他の材料と混合しても、混合割合に応じて本発明の効果が得られる。プロトン伝導性を示す他の材料としては、ナフィオンに代表されるパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン樹脂、スルホン化ポリエーテルサルホン樹脂、スルホン化ポリフェニレンスルフィド樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、スルホン化ポリアミド樹脂、スルホン化エポキシ樹脂、スルホン化ポリオレフィン樹脂などの炭化水素系プロトン伝導性樹脂でもよい。また、ポリベンズイミダゾール/リン酸複合体に代表される高分子/強酸複合体であってもよい。また、これらプロトン伝導性樹脂溶液の市販品を用いてもよい。
【0106】
多孔性混合物層12bおよび13b中には、必要に応じて、種々の添加物を加えることもできる。例えば、電子伝導性向上のための炭素などの導電剤や、結着性向上のための高分子バインダーや繊維状物質、撥水性向上のための撥水性付与剤、ガス拡散性向上のための造孔剤、粘度を調整するための増粘剤や希釈剤等の添加物などがあるが、特に限定されることなく用いることができる。撥水性付与剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の含フッ素樹脂が挙げられる。
【0107】
以上、本発明を実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づき発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、プロトン伝導体膜が対向電極間に挟持され、電気化学反応部を構成する、燃料電池や化学センサなどの電気化学装置に適用でき、特に固体高分子型燃料電池(PEFC)の運転温度を引き上げ、膜の水分管理のためのシステムを簡素化する等により、燃料電池の性能やコストを改善することができ、その普及に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1で用いられるプロトン伝導性高分子を構成するプロトン解離性分子の例を示す構造式である。
【図2】同、プロトン伝導性高分子を構成するプロトン解離性分子の別の例を示す構造式(a)、および、それらが連結された構造を有するプロトン伝導性高分子の例を示す概略図(b)である。
【図3】同、プロトン伝導性高分子の合成工程を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施の形態2に基づく燃料電池の構造を示す概略構成図である。
【図5】特許文献1に示されている三相界面の例を示す断面図である。
【図6】特許文献1に示されているプロトン伝導性電極の構造を示す概略断面図である。
【図7】特許文献1および特開2003-123793号公報に例示されているプロトン解離性分子の構造を示す構造式である。
【符号の説明】
【0110】
1…プロトン伝導体、2…触媒粒子、3…プロトン伝導体粒子、4…空孔、
5…多孔性の混合物層、6…三相界面、7…ガス透過性集電体、
10…膜−電極接合体(MEA)、11…プロトン伝導性高分子電解質膜、
12…負極(アノード)、12a…ガス透過性集電体、12b…多孔性混合物層、
13…正極(カソ−ド)、13a…ガス透過性集電体、13b…多孔性混合物層、
14…負極端子、15…正極端子、20…燃料電池、21…燃料流路、
22…燃料導入口、23…燃料排出口、24…酸素(空気)流路、
25…酸素(空気)導入口、26…酸素(空気)排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体に接して形成され、プロトン伝導性高分子と電子伝導性触媒とを含有する 、多孔性の混合物と
からなり、
前記プロトン伝導性高分子は、複数のプロトン解離性分子が連結基によって連結され た構造を有し、
前記プロトン解離性分子は、プロトン解離性の基が、少なくとも一部分がフッ素化さ れたスペーサー基を介してフラーレン分子に結合することによって形成されている、
プロトン伝導性電極。
【請求項2】
前記フラーレン分子がC(fはフラーレン分子を形成し得る自然数で、f=36、60、70、76、78、80、82、84等である。)である、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項3】
前記フラーレン分子がC60又はC70である、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項4】
前記スペーサー基が、少なくとも一部分の水素原子がフッ素原子によって置換された炭化水素骨格を有している、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項5】
前記スペーサー基がパーフルオロメチレン基−CF2−を有している、請求項4に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項6】
前記スペーサー基が骨格−CF2-CF2-O-CF2-CF2−を有している、請求項5に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項7】
前記プロトン解離性の基の少なくとも1個が、スルホ基−SO3H、ホスホノ基−PO(OH)2、カルボキシル基−COOH、スルホンアミド基−SO2-NH2、スルホンイミド基−SO2-NH-SO2−、カルボキサミド基−CO-NH2、及びカルボキシミド基−CO-NH-CO−からなる群の中から選ばれた基である、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項8】
前記連結基が、少なくとも一部分の水素原子がフッ素原子によって置換された炭化水素骨格を有している、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項9】
前記連結基がパーフルオロメチレン基−CF2−を有している、請求項8に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項10】
前記連結基の長さが前記スペーサー基の長さより長い、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項11】
前記連結基がプロトン解離性の基を有する、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項12】
前記の連結基が有するプロトン解離性の基の少なくとも1個が、スルホ基−SO3H、ホスホノ基−PO(OH)2、カルボキシル基−COOH、スルホンアミド基−SO2-NH2、スルホンイミド基−SO2-NH-SO2−、カルボキサミド基−CO-NH2、及びカルボキシミド基−CO-NH-CO−からなる群の中から選ばれた基である、請求項11に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項13】
前記多孔性の混合物の気孔率が1〜90%である、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項14】
前記多孔性の混合物が、前記集電体上或いはプロトン伝導性高分子電解質膜上に層状に形成されている、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項15】
前記多孔性の混合物が単層又は複数層の積層構造からなる、請求項14に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項16】
前記集電体がガス透過性である、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項17】
前記のガス透過性の集電体が、カーボンペーパー、カーボンクロス、ポリテトラフルオロエチレンを付着させたカーボン粒子を有する撥水多孔層、孔あき金属板、金属網、又は発泡金属多孔体である、請求項16に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項18】
前記触媒が、触媒金属微粒子が多孔質炭素材料に担持されている担持触媒であるか、又は担持されていない触媒金属微粒子である、請求項1に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項19】
前記担持触媒において、前記担持されている触媒金属微粒子が、白金、金、銀、銅、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、及びこれらを含む合金からなる群から選ばれた少なくとも1種を含み、前記多孔質炭素材料が、活性炭、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラファイトナノファイバー、フラーレン、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノファイバー、及びこれらから構成される炭素複合材料からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項18に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項20】
前記担持されている触媒金属微粒子の、前記担持触媒における分率が、10〜90質量%である、請求項19に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項21】
前記担持されていない触媒金属微粒子が白金黒である、請求項18に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項22】
前記担持されている触媒金属微粒子、又は前記担持されていない触媒金属微粒子が、0.1〜35mg/cm2の面密度で配置されている、請求項18に記載したプロトン伝導性電極。
【請求項23】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持されたプロトン伝導性電解質膜と
からなり、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が、請求項1〜22のいずれか 1項に記載したプロトン伝導性電極からなる、
膜−電極接合体(MEA)。
【請求項24】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持されたプロトン伝導体と
からなり、
前記プロトン伝導体が前記第1の電極から前記第2の電極へプロトンを伝導するよう に構成され、
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方が、請求項1〜22のいずれか 1項に記載したプロトン伝導性電極からなる、
電気化学装置。
【請求項25】
燃料電池として構成されている、請求項24に記載した電気化学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−33741(P2010−33741A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191879(P2008−191879)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】