説明

プロピレンポリマー触媒供与体成分



マグネシウム、チタン及びハロゲンを含み、さらに構造(I)(式中、D1及びD2は(II、III、IV)から独立に選択され、R、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は独立に1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基又は置換炭化水素基であり、R1、R2、R3、R4、R6及びR7は水素であってもよく;R4は−NR2であってもよく;基R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、R3及びR5、基R6及びR7は結合して環式構造を形成してもよい)を有する電子供与置換基を含有する化合物を含む内部電子供与体を含む、オレフィンを重合させるために有用な固体の炭化水素不溶性触媒成分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン重合触媒に有用な成分に関し、特にマグネシウム含有担持チタン含有触媒成分と組み合わせて用いられる電子供与体成分に関する。
【背景技術】
【0002】
固体のチタン金属系オレフィン重合触媒成分の使用は、当該分野において周知であり、広く記載されているマグネシウム含有チタンハライド系触媒成分などの金属酸化物、ハライド又は他の塩上に担持されたこのような固体成分を含む。このような触媒成分は、「担持されている」と称される。多くの重合及び共重合プロセス及び触媒系がα−オレフィンを重合又は共重合するために記載されているが、得られるポリマー又はコポリマー生成物の特定の特性を得るために、プロセス及び触媒系を誂えることが有利である。たとえば、いくつかの用途において、許容可能に高い活性、良好なモホロジー、所望の粒径分布、許容可能な嵩密度などの組み合わせが、立体特異性、分子量分布などのポリマー特性と共に要求される。
【0003】
典型的には、プロピレン及びより高級な−オレフィンを重合するために、並びにプロピレン及びより高級なオレフィンを少量のエチレン及び他のα−オレフィンと一緒に重合するために有用な担持触媒成分は、内部モディファーとして電子供与体成分を含有する。このような内部モディファーは、固体担持成分の一体部分であり、アルミニウムアルキル成分と一緒に触媒系を構成する外部電子供与体成分とは区別される。典型的には、外部モディファー及びアルミニウムアルキルは、オレフィンモノマーと接触する直前に、又はオレフィンモノマーの存在下で固体担持成分と配合される。
【0004】
内部モディファーの選択は、触媒性能及び触媒系から得られるポリマーに影響し得る。一般に、有機電子供与体は、酸素、窒素、硫黄及び/又はリンを含有する有機化合物を含む立体異性担持触媒成分の調製に有用であると記載されている。このような化合物としては、有機酸、無水有機酸、有機酸エステル、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、アミン、アミン酸化物、アミド、チオール、種々のリン酸エステル及びアミドなどを挙げることができる。有機電子供与体の混合物は、担持触媒成分に組み込む際に有用であると記載されている。有機電子供与体の例としては、アルキルフタレート及びコハク酸エステルなどのジカルボキシエステルを挙げることができる。
【0005】
現行の実施において、アルキルフタレートエステルは、市販のプロピレン重合触媒系における電子供与体内部モディファーとして商業的に用いられている。しかし、ヒトが接触する用途におけるフタレート誘導体の連続使用に関する環境上の問題が生じている。
【0006】
改良された担持マグネシウム含有チタン含有電子供与体−含有オレフィン重合もしくは共重合触媒を製造するために、多数の独立プロセス又はプロセス工程が開示されている。たとえば、Arzoumanidisらの米国特許U.S.Patent 4,866,022号明細書は、得られる触媒もしくは触媒成分が非常に良好なモホロジーと共に格別に高い活性及び立体特異性を有するように特別の個々のプロセス工程の特別のシーケンスを含む、有利なα−オレフィン重合もしくは共重合触媒もしくは触媒成分を形成する方法を開示する。優れた活性、立体特異性及びモホロジー特性を有する固体の炭化水素不溶性α−オレフィン重合もしくは共重合触媒もしくは触媒成分は、(1)マグネシウムヒドロカルビルカーボネート又はマグネシウムカルボキシレートからマグネシウム含有種溶液を形成し;(2)このようなマグネシウム含有溶液から、遷移金属ハライド及びオルガノシランによる処理によって固体粒子を沈殿させ;(3)このような固体粒子を環式エーテルを含有する混合物から再沈殿させ;(4)再沈殿した粒子を遷移金属化合物及び電子供与体で処理することによって形成される生成物を含むと開示されている。
【0007】
Arzoumanidisらの米国特許U.S.Patent 4,540,679号明細書は、アルコール中マグネシウムアルコラート懸濁物を二酸化炭素と反応させ、マグネシウムヒドロカルビルカーボネートを遷移金属成分と反応させることによるマグネシウムヒドロカルビルカーボネートの調製プロセスを開示する。
【0008】
Arzoumanidisらの米国特許U.S.Patent 4、612、299号明細書は、ヒドロカルビルマグネシウム化合物の溶液を二酸化炭素と反応させてマグネシウムカルボキシレートを沈殿させ、マグネシウムカルボキシレートを遷移金属成分と反応させることによるマグネシウムカルボキシレートの調製プロセスを開示する。
【0009】
プロピレンポリマーの特定の使用は、分子量、粘度、剛性、曲げ弾性率及び多分散性指数(分子量分布(M/M))などのポリマーの物理特性に依存する。加えて、ポリマー又はコポリマーのモホロジーは、しばしば重要であり、典型的には触媒モホロジーに依存する。良好なポリマーモホロジーは、一般に粒子サイズ及び形状の均一性、摩耗耐性及び許容可能に高い嵩密度を含む。非常に小さい粒子(微細)の最小化は、搬送又はリサイクルラインの栓塞を防止するために、典型的には特に気相重合もしくは共重合において重要である。
【0010】
本発明は、プロピレン重合触媒成分におけるフタレート誘導体を含有しない内部モディファーの使用に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
マグネシウム、チタン及びハロゲンを含み、構造:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、D及びD
【0014】
【化2】

【0015】
から独立に選択され、
R、R、R、R、R、R、R及びRは独立に、1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基又は置換炭化水素基であり、R、R、R、R、R及びRは水素であってもよく;Rは−NRであってもよく;
基RとR、RとR、RとR、RとR、及び基RとRは結合して環式構造を形成してもよい)
を有する電子供与置換基を含有する化合物を含む内部電子供与体をさらに含むオレフィン重合に有用な固体の炭化水素不溶性触媒成分。
【0016】
本発明の担持触媒成分は、構造:
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、D及びDは、
【0019】
【化4】

【0020】
から独立に選択され、
R、R、R、R、R、R、R及びRは独立に1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基又は置換炭化水素基であり、R、R、R、R、R及びRは水素であってもよく;Rは−NRであってもよく;
基RとR、RとR、RとR、RとR、及び基RとRは結合して環式構造を形成してもよい)
を有する電子供与置換基を含有するアミノ酸の誘導体を含む少なくとも1の内部電子供与体を含有する。
【0021】
本発明の一側面において、典型的な電子供与体化合物は、上記アミノ酸誘導体のアルキルエステルであり、供与体基Dはアルキルカルボン酸エステルである。本発明のために、アルキル基は、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基を含む。このようなアルキルは、典型的には少なくとも2の炭素原子及び好ましくは少なくとも3の炭素原子を含有する。適切なアルキルは、さらに、12個以下、典型的には8個以下の炭素原子を含んでいてもよい。他の適切なアルキルは、4〜6個の炭素原子を含む。本発明に有用な典型的なアルキルエステルの例としては、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル及びオクチルエステルを挙げることができる。特に適切なアルキルは、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルである。本発明のこの側面において、供与体基Dは、典型的には上述のアシル基、カルボン酸エステル基又はオキシ基である。典型的なアシル基(RCO−)としては、アルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基及びアリール−置換アシル基を挙げることができる。C−C20アルキル置換アシル基が好ましく、C−Cアルキル基が最も好ましい。適切なアリールアルキル基の典型的な例はベンジルである。典型的なオキシ基(RO−)としては、アルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基及びアリールオキシ基を挙げることができ、Rは1〜20個の炭素原子を含有し、2〜8個の炭素原子を含有することが好ましい。
【0022】
本発明の別の実施形態において、窒素上の置換基(R)としては、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基及びアリール−置換アシル基を挙げることができ、1〜8個の炭素原子を含有することが好ましい。また、ヒドロカルビル置換基(R及びR)としては、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基及びアリール−置換アシル基を挙げることができ、1〜8個の炭素原子を含有することが好ましい。アルキル基(R及びR)又はアルキル基(R及びR)は結合して環式構造を形成することができ、四員環〜七員環(好ましくは五員環〜六員環)の環式構造が好ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態において、置換基R及びRは1〜20個の炭素原子を含んでいてもよく、1〜8個の炭素原子を含有することが好ましく、アルキル置換基は結合して環式構造を形成してもよく、四員環〜七員環(好ましくは五員環〜六員環)の環式構造が好ましい。
【0024】
本発明の別の実施形態において、置換基R及びRは1〜20個の炭素原子を含んでいてもよく、1〜8個の炭素原子を含むことが好ましく、アルキル置換基は結合して環式構造を形成してもよく、四員環〜七員環(好ましくは五員環〜六員環)の環式構造が好ましい。
【0025】
環式構造はまた、窒素及び/又は酸素などのヘテロ原子を含んでいてもよく、内部不飽和を含んでいてもよい。
本発明のアルキルジカルボン酸エステルを形成するアルキル基は同じであってよいが、本発明は異なるアルキル基を有するアルキルジカルボン酸エステルも含む。
【0026】
より詳細には、好ましくは、R及びRは水素ではなく、典型的にはR及びRは水素ではなく、Rは−NRであってもよい。
本発明において用いられるアルキル基は、窒素、リン、ケイ素及びハロゲンを含むヘテロ原子を含有する互換性基で置換されていてもよい。よって、本発明において用いられる炭化水素基は、アミン基、アミド基、クロロ基、ブロモ基又はシリル基で置換されていてもよい。供与体化合物に組み込まれてもよい環式構造は、窒素、ケイ素及びリンなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0027】
本発明のアミノ酸誘導体供与体化合物の代表例としては、アルキルN−t−ブトキシカルボニルグリシンなどのグリシン誘導体(D=アルキルカルボン酸エステル基及びR=H)を挙げることができる。典型的には、アルキル基(R)は1〜8個の炭素原子を含み、好ましくはエチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びs−ブチルを挙げることができる。これらの構造中の供与体置換基Dとしては、「t−ブトキシカルボニル」すなわちカルボン酸基のt−ブチルエステル(R=t−ブチル)を挙げることができ、構造式において「Boc」又は「BOC」として表すこともある。同様の構造を有する本発明の他の供与体化合物としては、カルボン酸エステル誘導体が好ましくは1〜10個の炭素原子を含有するRを有し、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び典型的には少なくとも7個の炭素原子を含み、20個以下の炭素原子を含んでいてもよく、好ましくは15個以下の炭素原子を含むアリールアルキル基、たとえばベンジル(Bn)又は置換ベンジル基を含むD置換基を挙げることができる。
【0028】
がメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基であるグリシン誘導体もまた本発明に含まれる。Rがメチルである場合、構造はアルキルN−Boc−サルコシンをはじめとするアルキルサルコシンなどの「サルコシン」と称することができる。再び、アルキルは、好ましくは8個以下の炭素原子を含み、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びs−ブチルを挙げることができる。他の例としては、エチルN−プロピオニルサルコシンなどのアルキルN−アシルサルコシンを挙げることができる。上記一般構造を参照して、これらの化合物の好ましい例において、典型的にはD中R及びD中Rは、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルなどの低級(C−C)アルキルである。
【0029】
本発明の別の構造において、アルキル置換基RとRは結合して、置換ピペリジンとして記載されることもあるエチルN−Boc−ピペコリネート(pipecolinate)(DにおけるR=t−ブチル、DにおけるR=エチル)などの環式化合物を形成してもよい。別の例は、ピロリジン誘導体と記載されることもあるN−カルボベンジルオキシ−L−プロリンメチルエステル(DにおけるR=ベンジル、DにおけるR=メチル)である。
【0030】
多くの側面において、本発明の供与体化合物はアミノ酸誘導体として記載される。
本発明に含まれる構造(水素は示していない)の例としては、
【0031】
【化5】

【0032】
を挙げることができる。
本発明の別の側面において、供与体化合物は
【0033】
【化6】

【0034】
として記載されてもよい。ここで、R、R、R及びRは先に定義したとおりであり、R’はRとして定義したものであるが、このような構造内の異なる基であってもよい。ゆえに、Rはエチルであってもよく、R’はt−ブチルであってもよい。
【0035】
同様に、本発明の供与体化合物を定義する別の構造は
【0036】
【化7】

【0037】
である。ここで、R、R、R及びRは先に定義したとおりである。
本発明において記載する供与体化合物の混合物並びにこれらの供与体化合物と当該分野で公知の他の供与体化合物との混合物を用いてもよい。
【0038】
本発明に有用な高活性担持(HAC)チタン含有成分は、一般に、電子供与体化合物と共に炭化水素不溶性マグネシウム含有化合物上に担持されている。このような担持チタン含有オレフィン重合触媒成分は、典型的にはチタン(IV)ハライド、有機電子供与体化合物及びマグネシウム含有化合物を反応させることにより形成される。場合によっては、このような担持チタン含有反応生成物を追加の電子供与体又はルイス酸(Lewis acid)種によるさらなる化学処理によってさらに処理又は修飾してもよい。
【0039】
適切なマグネシウム含有化合物としては、マグネシウムハライド;マグネシウムクロライド又はマグネシウムブロミドなどのマグネシウムハライドとアルコール又は有機酸エステルなどの有機化合物との反応生成物、又はI〜III族の金属の有機金属化合物;マグネシウムアルコラート;又はマグネシウムアルキルを挙げることができる。
【0040】
担持触媒の例は、マグネシウムクロライド、アルコキシマグネシウムクロライド又はアリールオキシマグネシウムクロライドを四塩化チタンなどのチタンハライドと反応させ、さらに電子供与体化合物を組み込むことによって調製される。好ましい調製において、マグネシウム含有化合物は、炭化水素などの相溶性液体媒体中に溶解させるか又はスラリーとして、適切な触媒成分粒子を製造する。
【0041】
上記に掲げた潜在的な固体触媒成分は、本発明において有用であり従来知られている多くの潜在的な固体のマグネシウム含有チタンハライド系炭化水素不溶性触媒成分の説明のためである。本発明は特定担持触媒成分に限定されない。
【0042】
本発明の典型的な担持触媒において、チタンに対するマグネシウムの原子比(Mg:Ti)は、典型的には0.5:1より大きく20:1までの範囲でもよい。多量のマグネシウムを触媒成分性能に悪影響を与えずに用いることができるが、典型的にはマグネシウム:チタン比が20:1を超える必要性はない。より好ましくは、マグネシウム:チタン比は、2:1〜15:1の範囲であってよい。内部電子供与体成分は、典型的にはチタン化合物中チタンの原子グラム当たり1mol以下、好ましくはチタン化合物中チタンの原子グラム当たり0.001〜0.6molの総量で固体の担持触媒成分に組み込まれる。内部供与体の典型的な量は、チタン原子グラムあたり少なくとも0.01mol、好ましくはチタン原子グラムあたり0.05molよりも多く、典型的にはチタン原子グラムあたり0.1molよりも多い。さらに、典型的には、内部供与体の量は、チタン原子グラムあたり1mol未満であり、好ましくはチタン原子グラムあたり0.5mol以下、より好ましくはチタン原子グラムあたり0.3mol以下である。
【0043】
当該分野で公知の担持触媒成分を本発明の内部供与体と一緒に用いてもよい。典型的には、本発明の内部電子供与体物質は、このような成分の形成中に固体の担持触媒成分に組み込まれる。典型的には、このような電子供与体物質は、固体マグネシウム含有物質のチタン(IV)化合物による処理の間に一緒に添加されるか又は別個の工程で添加される。最も典型的には、四塩化チタン及び内部電子供与体モディファー物質の溶液は、マグネシウム含有物質と接触する。このようなマグネシウム含有物質は、典型的には離散粒子の形態であり、遷移金属及び有機化合物などの他の物質を含んでいてもよい。さらに、塩化マグネシウム、四塩化チタン及び内部供与体の混合物は、ボールミルによって活性触媒成分に形成されてもよい。
【0044】
α−オレフィンの立体規則性重合又は共重合のための本発明の好ましい固体の炭化水素不溶性触媒又は触媒成分は、液体中マグネシウム含有種溶液を形成する第1工程を含むプロセスによって形成された生成物を含む。ここで、マグネシウム含有種は、マグネシウム含有化合物を二酸化炭素又は二酸化硫黄と反応させることによって形成される。マグネシウム含有種を形成するマグネシウム含有化合物は、マグネシウムアルコラート、マグネシウムヒドロカルビルアルコラート、又はヒドロカルビルマグネシウム化合物である。二酸化炭素を用いる場合には、マグネシウム含有種はヒドロカルビルカーボネート又はカルボキシレートである。二酸化硫黄を用いる場合には、得られるマグネシウム含有種はヒドロカルビルサルファイト(ROSO)又はヒドロカルビルサルフィネート(RSO)である。好ましい触媒成分は、米国特許U.S.Patent 4,946,816号明細書に記載されているものと同じ態様で調製される。
【0045】
一般に、マグネシウムヒドロカルビルカーボネートは、二酸化炭素をマグネシウムアルコラートと反応させることによって調製される。たとえば、マグネシウムヒドロカルビルカーボネートは、マグネシウムエトキシドをエタノール中に懸濁させ、マグネシウムエトキシドが溶解するまで二酸化炭素を添加し、マグネシウムエチルカーボネートを形成することによって形成される。しかし、マグネシウムエトキシドを2−エチルヘキサノール中に懸濁させた場合には、マグネシウム2−エチルヘキシルカーボネート、マグネシウムエチルカーボネート及びマグネシウムエチル/2−エチルヘキシルカーボネートが形成され得る。アルコールを含まない液体炭化水素又はハロ炭化水素中にマグネシウムエトキシドを懸濁させた場合、二酸化炭素を添加することでマグネシウムエトキシド粒子の分裂を生じさせ、マグネシウムヒドロカルビルカーボネート反応生成物は溶解しない。マグネシウムアルコラートと二酸化炭素との反応は、
【0046】
【化8】

【0047】
(式中、nは2以下の整数又は分数であり、Rは1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である)
と表すことができる。加えて、上述のマグネシウムアルコラートを含有する2種の異なるヒドロカルビル基を用いてもよい。費用及び入手容易性の観点から、本発明に従って用いることが好ましいマグネシウムアルコラートは、式Mg(OR)(式中、Rは後述する)のものである。触媒活性及び立体特異性の観点から、最良の結果は、式Mg(OR’)(式中、R’は1〜8個の炭素原子のアルキル基、6〜12個の炭素原子のアリール基又は7〜12個の炭素原子のアルカリルもしくはアラルキル基である)のマグネシウムアルコラートの使用により達成される。マグネシウムエトキシドが最も好ましい。
【0048】
本発明に従って有用なマグネシウムアルコラートの特定の例としては、Mg(OCH、Mg(OC、Mg(OC、Mg(OC、Mg(OC13、Mg(OC19、Mg(OC10、Mg(OC12、Mg(OC1225、Mg(OC1633、Mg(OC1837、Mg(OC2041、Mg(OCH)(OC)、Mg(OCH)(OC13)、Mg(OC)(OC17)、Mg(OC13)(OC2041)、Mg(OC)(OC10)、Mg(OCCl)及びMg(OC1633)(OC1837)を挙げることができる。所望によりマグネシウムアルコラートの混合物もまた用いることができる。
【0049】
適切なマグネシウムヒドロカルビルアルコラートは、式MgR(OR’)(式中、R及びR’はマグネシウムアルコラートに関して上述したとおりである)を有する。アルコールをマグネシウムヒドロカルビルアルコラートと二酸化炭素又は二酸化硫黄との間の反応に対する懸濁媒体として用いる場合、マグネシウムヒドロカルビルアルコラートはアルコール中でマグネシウムアルコラートに転化されるから、マグネシウムヒドロカルビルアルコラートはマグネシウムアルコラートと均等の機能を奏する。しかし、懸濁媒体がアルコールを含まない場合、マグネシウムヒドロカルビルアルコラートは:
【0050】
【化9】

【0051】
(式中、y+x=n≧2且つx=n≦1.0の場合y=0)
のように二酸化炭素と反応する。
y+n=2の場合、
【0052】
【化10】

【0053】
が結果的に得られるマグネシウム含有種である。
マグネシウム含有種から形成されるマグネシウム化合物が式XMgR(式中、Xはハロゲンであり、Rは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)を有するヒドロカルビルマグネシウム化合物である場合、ヒドロカルビルマグネシウム化合物と二酸化炭素との反応はマグネシウムカルボキシレートを形成し、下記式:
【0054】
【化11】

【0055】
で表すことができる。
ヒドロカルビルマグネシウム化合物が2個のヒドロカルビル基を含む場合、反応は
【0056】
【化12】

【0057】
(式中、RはX−MgRについて定義したとおりである)
と表すことができる。
本発明に有用なヒドロカルビルマグネシウム化合物は、構造R−Mg−Q(式中、Qは水素、ハロゲン又はR’(各R’は独立に、1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である)である)を有する。本発明に有用なヒドロカルビルマグネシウム化合物の特定の例としては、Mg(CH、Mg(C、Mg(C、Mg(C、Mg(C13、Mg(C19、Mg(C10、Mg(C12、Mg(C1225、Mg(C1633、Mg(C2041、Mg(CH)(C)、Mg(CH)(C13)、Mg(C)(C17)、Mg(C13)(C2041)、Mg(C)(C10)、Mg(CCl)及びMg(C1633)(C1837)、Mg(C)(H)、Mg(C)(Cl)、Mg(C)(Br)などを挙げることができる。所望により、ヒドロカルビルマグネシウム化合物の混合物もまた用いることができる。費用及び入手容易性の観点から、本発明において使用することが好ましいジヒドロカルビルマグネシウム化合物は、式MgR(式中、Rは上述のとおりである)のものである。触媒活性及び立体特異性の観点から、最良の結果は、式MgR’Q’(式中、R’は1〜18個の炭素原子のアルキル基、6〜12個の炭素原子のアリール基又は7〜12個の炭素原子のアルカリル基もしくはアラルキル基であり、Q’はクロライド又はブロミドである)のヒドロカルビルマグネシウムハライド化合物の使用により達成される。
【0058】
最も好ましくは、マグネシウム含有化合物はマグネシウムアルコラートであり、得られるマグネシウム含有種はマグネシウムヒドロカルビルカーボネートである。
たとえば、ヨウ素又は四塩化炭素などの触媒と共に又は触媒なしで、マグネシウム金属屑をメタノール、エタノール又は1−プロパノールなどのより低分子量のアルコールと反応させることにより調製されるマグネシウムアルコラートを用いて固体マグネシウムアルコラートを形成することもできる。任意過剰のアルコールは、濾過、蒸発又はデカンデーションにより除かれる。この態様で製造されたマグネシウムアルコラートのマグネシウム含有化合物の使用は、大幅に減少した粘度を有するマグネシウム含有種の溶液に悪影響を与える。
【0059】
マグネシウム含有種を形成するためのマグネシウム化合物の炭酸化において用いることが適切な希釈剤又は溶媒としては、用いられる反応体に対して実質的に不活性であり、好ましくは使用温度において液体である1〜12個の炭素原子を有するアルコール、非極性炭化水素及びこれらのハロゲン化誘導体、エーテル及びこれらの混合物を挙げることができる。より高い温度でさえもより低沸点の溶媒及び希釈剤を用いることができるように、高められた圧力で反応を行うことも意図されている。有用な溶媒及び希釈剤の例としては、メタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アミルアルコール、2−エチルヘキサノール及び9〜10個の炭素原子を含む分枝アルコールなどのアルコール;ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンなどのアルカン;1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素などのハロアルカン;トルエン、キシレン及びエチルベンゼンなどの芳香族;及びクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロナフタレン及びデカヒドロナフタレンなどのハロゲン化芳香族及び水素化芳香族を挙げることができる。
【0060】
マグネシウム含有種の溶液は、典型的には2〜18個の炭素原子を含む少なくとも1のモノヒドロキシアルコールを含み、好ましくは少なくとも1のアルコールの総モル数:上述のマグネシウム含有化合物の総モル数の比率が1.45:1よりも大きく、より好ましくは1.6:1よりも大きく2.3:1まで、より好ましくは2.1:1までの範囲にある。本発明に有用なアルコールとしては、構造HOR(式中、Rは1〜18個の炭素原子のアルキル基、6〜12個の炭素原子のアリール基又は7〜12個の炭素原子のアルカリル基もしくはアラルキル基である)のアルコールを挙げることができる。典型的には、1〜12個の炭素原子を含む1以上のアルコール、たとえば、エタノール、1−又は2−プロパノール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、イソアミルアルコールを含むアミルアルコール、及び9〜12個の炭素原子を有する分枝アルコールを用いることができる。好ましくは、2−エチルヘキサノール又はエタノールが用いられる。
【0061】
いくらかより詳細には、マグネシウム含有化合物を液体中に溶解又は懸濁させることによって、マグネシウム含有種は調製される。液体100質量部あたり約10〜80質量部のマグネシウム含有化合物が用いられる。十分な量の二酸化炭素を液体懸濁物中にバブリングさせて、緩やかに撹拌して、マグネシウム化合物1モル当たり0.1〜4モルの二酸化炭素を提供する。典型的には、マグネシウム含有化合物の溶液又は懸濁物に、撹拌しながら、温度0〜100℃で、約10分間〜24時間の時間にわたり、約0.3〜4モルのCOを添加する。
【0062】
上述のマグネシウム含有化合物のいずれを用いてマグネシウム含有種を形成したかにかかわらず、遷移金属又はIV族ハライドで、好ましくは追加的にモホロジー調節剤で処理することにより、上述のマグネシウム含有種溶液から固体粒子が沈殿する。遷移金属又はIV族ハライドは、好ましくはハロゲン化チタン(IV)又はハロゲン化ケイ素であり、より好ましくは四塩化チタンである。任意の簡便な慣用のモホロジー調節剤を用いることができるが、オルガノシランがモホロジー調節剤として使用するに特に適切である。このために適切なオルガノシランとしては、式:RSiR’4−n(式中、n=0〜4、Rは水素又は1〜10個の炭素原子を含むアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基もしくはアリール基、又は1〜8個の炭素原子を含むハロシリル基もしくはハロアルキルシリル基であり、R’はOR又はハロゲンである)を有するものを挙げることができる。典型的には、Rは1〜8個の炭素原子及び1〜4個の塩素原子を含むアルキル基もしくはクロロアルキル基であり、R’は塩素もしくは1〜4個の炭素原子を含むOR基である。適切なオルガノシランは、異なるR’基を含んでいてもよい。オルガノシランの混合物を用いてもよい。好ましいオルガノシランとしては、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロシラン及びヘキサメチルジシロキサンを挙げることができる。典型的には、1〜12個の炭素原子を含む1以上のアルコール、たとえばエタノール、1−又は2−プロパノール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、イソアミルアルコールを含むアミルアルコール、及び9〜12個の炭素原子を有する分枝アルコールを添加してもよい。好ましくは、2−エチルヘキサノール又はエタノールが用いられる。
【0063】
広義には、本発明によれば、沈殿した粒子は遷移金属化合物及び電子供与体で処理される。このために用いることができる適切な遷移金属化合物としては、式Tc−b(式中、Tは元素周期表IV−B族、V−B族及びVl−B族から選択される遷移金属であり、Yは酸素、OR’又はNR’であり(式中、各R’は独立に、水素又は1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である);Xはハロゲン、好ましくは塩素又は臭素であり;cは遷移金属Tの原子価に対応する値を有し;bは0〜5の値であって、c−bの値は少なくとも1から遷移金属Tの原子価状態の値までである)により表される化合物を挙げることができる。適切な遷移金属化合物としては、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びクロムのハロゲン化化合物、たとえばクロミルクロライド、バナジウムオキシトリクロライド、ジルコニウムテトラクロライド、バナジウムテトラクロライドなどを挙げることができる。
【0064】
上述のマグネシウムアルコラート又はマグネシウムヒドロカルビルカーボネートから形成される担持触媒成分に加えて、チタンハライド含有化合物とマグネシウムクロライド、マグネシウムオキシハライド、マグネシウムアルコキシドなどのマグネシウムハライドとの反応により他のマグネシウム含有担持成分を製造してもよい。オレフィン重合に有用な適切な担持触媒の調製において、従来技術に記載されているようにマグネシウム化合物がチタンハライド含有化合物と反応するこのような成分の形成中に、電子供与体物質を添加する。形成方法にかかわらず、本発明の担持触媒成分は、本発明において記載されている内部電子供与体物質を含む。
【0065】
本発明の触媒又は触媒成分の調製に有用なチタン(IV)化合物は、チタンハライド及びメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキサオキシ、フェノキシ、デコキシ、ナフトキシ、ドデコキシ及びエイコキシなどのアルコラート基1個あたり1〜20個の炭素原子を有するハロアルコラートである。所望により、チタン化合物の混合物を用いることもできる。好ましいチタン化合物は、ハライド及びアルコラート基1個あたり1〜8個の炭素原子を有するハロアルコラートである。このような化合物の例としては、TiCl、TiBr、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OC13)Br、Ti(OC17)Cl、Ti(OCHBr、Ti(OCCl、Ti(OC13Cl、Ti(OC17Br、Ti(OCHBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(OC13Br及びTi(OC17Clを挙げることができる。最大活性及び立体特異性を付与する観点から、チタンテトラハライド、特にTiClが最も好ましい。
【0066】
上述のように形成された粒子、本発明において記載されているチタンハライド成分及び電子供与体成分は、−10℃〜170℃の範囲にある温度で、一般に数分間〜数時間にわたり、反応する。
【0067】
好ましくは、上述の電子供与体化合物及びチタン化合物は、不活性炭化水素又はハロゲン化希釈剤の存在下で沈殿した固体粒子と接触するが、他の適切な技術を用いてもよい。適切な希釈剤は、用いられる成分に対して実質的に不活性であり、用いられる温度及び圧力において液体である。
【0068】
好ましくは、任意であるが、沈殿した粒子は典型的には環式エーテルを含む溶液から再沈殿し、次いで、再沈殿した粒子は上述のように遷移金属化合物及び電子供与体で処理される。
【0069】
典型的な再沈殿手順において、沈殿した粒子を環式エーテル溶媒に全体的に溶解させ、次いで、粒子を再沈させて均一寸法の粒子を形成させる。好ましいエーテルはテトラヒドロフランであるが、粒子を溶解させることができる他の適切な環式エーテル、たとえばテトラヒドロピラン及び2−メチルテトラヒドロフランなども用いることができる。さらに、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテルも用いることができる。2,2,5,5−テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン−2−メタノールを使用するようないくつかの例において、55℃〜85℃に加熱する際に再沈殿が生じる。均等な態様で作用する他の化合物、すなわち工程Bで形成された粒子を溶解させることができ、固体均一粒子を再沈させることができる物質、たとえばシクロヘキセンオキシド、シクロヘキサノン、エチルアセテート及びフェニルアセテートなどを用いることができる。このような適切な物質の混合物もまた用いることができる。
【0070】
上述の工程のいずれかで用いることができる適切な希釈剤は用いられる反応体に対して実質的に不活性であるべきであり、好ましくは用いられる温度及び圧力において液体である。より高い温度でより低沸点の希釈剤を用いることができるように、特定の工程を高められた圧力にて行うことができる。典型的な適切な希釈剤は芳香族又は置換芳香族液体であるが、他の炭化水素系液体を用いてもよい。トルエンなどの芳香族炭化水素及び置換芳香族が有用である。特に適切な希釈剤は、クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族又はクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族とジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族との混合物である。ケロシンなどのより高沸点の脂肪族液体もまた有用である。希釈剤の混合物を用いてもよい。有用な希釈剤成分の一例は、156〜176℃で沸騰するC10−平均イソパラフィン性炭化水素であるlsopar G(登録商標)(ExxonMobil Chemical)である。有用な希釈剤の他の例としては、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンなどのアルカン;1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素などのハロアルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンなどの芳香族;及びクロロベンゼン及びo−ジ−クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族及び水素化芳香族を挙げることができる。
【0071】
上述の調製工程の各々は、水、酸素、一酸化炭素及び本発明の触媒又は触媒成分の性能に不利な影響を与えるかもしれない他の外来物質の実質的不在下で行われる。このような物質は、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの存在下で工程を行うことにより、又は他の適切な手段により、簡便に除かれる。任意であるが、気体状態で調製系に導入されると触媒毒を除く作用をすることができる1以上のα−オレフィンの存在下で、プロセスの全部又は一部を行うことができる。1以上のα−オレフィンの存在は、改良された立体特異性を与えることにもなる。有用なα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1及びこれらの混合物を挙げることができる。もちろん、用いることができるいずれのα−オレフィンも比較的高純度、たとえば重合グレード以上であるべきである。外来毒を除く補助となる他の予防策としては、使用前のモレキュラーシーブ及び/又はシリカゲルを通しての浸出、乾燥などによる用いられるべき任意の希釈剤の精製及び/又は他の試薬の浄化などが挙げられる。
【0072】
上述の調製工程の結果として、触媒又は触媒成分として使用するに適切な固体反応生成物が得られる。このような使用に先立ち、不完全に反応した出発物質を固体反応生成物から除くことが望ましい。これは、任意の調製希釈剤からの分離後、好ましくは調製反応の完了後短時間内に、液体炭化水素又はクロロカーボンなどの適切な溶媒で固体を洗浄することによって、簡便に達成される。触媒成分と未反応出発物質との接触時間が長くなると、触媒成分性能に不利な影響を与えるかもしれないからである。
【0073】
調製された最終的な固体反応生成物は、重合の前に、少なくとも1のルイス酸(Lewis acid)と1回以上、接触してもよい。本発明に有用なこのようなルイス酸(Lewis acid)は、処理温度において液体であるか又は液体希釈剤に可溶性であり、未反応出発物質及びあまり接着していない化合物などの不純物を固体反応生成物の表面から取り除くために十分高いルイス酸性度(Lewis acidity)を有する物質である。好ましいルイス酸(Lewis acid)としては、170℃以下の温度で液体状態であるIII−V族金属のハロゲン化物を挙げることができる。このような物質の特定の例としては、BCl、AlBr、TiCl、TiBr、SiCl、GeCl、SnCl、PCl及びSbClを挙げることができる。好ましいルイス酸(Lewis acid)は、TiCl及びSiClである。所望により、ルイス酸(Lewis acid)の混合物も用いることができる。このようなルイス酸(Lewis acid)は、相溶性希釈剤中で用いることができる。
【0074】
要求されるわけではないが、ルイス酸(Lewis acid)と接触する前に、最終的な固体反応生成物を不活性液体炭化水素又はハロゲン化炭化水素で洗浄してもよい。このような洗浄が行われる場合、洗浄された固体とルイス酸(Lewis acid)との接触前に、不活性液体を実質的に除くことが好ましい。
【0075】
有利な手順において、マグネシウムクロライド系粒子を四塩化チタンで処理し、次いで電子供与体の混合物の存在下で、1回以上、四塩化チタンで処理する。より好ましくは、1回以上、生成物をトルエンなどの液体芳香族炭化水素で処理し、最後に再び四塩化チタンで処理する。このような処理は、昇温された温度、典型的には75℃〜135℃で、通常の圧力又はわずかに高められた1〜3barの圧力で、3回〜6回、行われる。典型的な個々の処理時間は、数分間〜数時間で変動してもよく、通常は0.25〜3時間である。
【0076】
本発明の一実施形態において、電子供与体の混合物は、第1の電子供与体及び追加の電子供与体を含む担持触媒成分に組み込まれる。第1の電子供与体は、本発明の電子供与体の分類を表すものとして上述した電子供与体群から選択される。第2の電子供与体はジアルキルフタレート(ここで、各アルキル基は、同一でも異なっていてもよく、3〜5個の炭素原子を有する)である。追加の電子供与体は、好ましくはジブチルフタレートであり、より好ましくはジ−n−ブチルフタレート又はジ−i−ブチルフタレートである。追加の電子供与体:第1の電子供与体のモル比は、0.1:1〜20:1の範囲、好ましくは0.3:1〜1:1の範囲でよい。
【0077】
さらに、本発明に有用な内部電子供与体物質は、ポリヒドロカルビルホスホネート、ホスフィネート、ホスフェート又はホスフィンオキシド又はアルキルアラルキルフタレート(アルキル部位は2〜10個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有し、アラルキル部位は7〜10個、好ましくは8個までの炭素原子を有する)、又は芳香族モノカルボン酸のアルキルエステル(モノカルボン酸部位は6〜8個の炭素原子を有し、アルキル部位は1〜3個の炭素原子を有する)などの追加の電子供与体と組み合わせてもよい。
【0078】
有用なポリヒドロカルビルホスホネート、ホスフィネート、ホスフェート又はホスフィンオキシドとしては:
【0079】
【化13】

【0080】
(式中、各ヒドロカルビル基(R、R及びR)は、同一又は異なっていてもよく、1〜12個の炭素原子を含むアルキル又はアリールでもよい)を挙げることができる。
好ましくは各ヒドロカルビル基(R、R及びR)はアルキル基である。好ましくはホスホネートが用いられる。上述の好ましい成分として用いるに適切な特定のホスホネートとしては、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルエチルホスホネート、ジイソプロピルメチルホスホネート、ジブチルブチルホスホネート及びジ(2−エチルヘキシル)2−エチルヘキシルホスホネートを挙げることができる。
【0081】
追加の成分はジアルキルフタレート(各アルキル部位は、同一又は異なっていてもよく、少なくとも6個の炭素原子、好ましくは10個以下の炭素原子を含む)であってもよい。追加の電子供与体として使用するに適切な特定のジアルキルフタレートとしては、ジヘキシルフタレート及びジオクチルフタレートを挙げることができる。
【0082】
さらに、追加の成分は、脂肪族モノカルボン酸のアルキルエステル(カルボン酸部位は2〜20個、好ましくは3〜6個の炭素原子を含み、アルキル部位は1〜3個の炭素原子を含む)であってもよい。上述の第1の電子供与体として使用するに適切な特定のアルキルエステルとしては、吉草酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸メチル、絡酸メチル及びプロピオン酸エチルを挙げることができる。
【0083】
別の代替例において、追加の成分は、芳香族ジカルボン酸のジシクロ脂肪族エステル(各シクロ脂肪族部位は同一又は異なっていてもよく、5〜7個の炭素原子、好ましくは6個の炭素原子を含む)であってもよい。好ましくは、エステルは、オルソ芳香族ジカルボン酸のジシクロ脂肪族ジエステルである。上述の第1の電子供与体として使用するに適切な特定のジシクロ脂肪族エステルとしては、ジシクロペンチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート及びジ−(メチルシクロペンチル)−フタレートを挙げることができる。
【0084】
追加の成分は、アルキルアラルキルフタレート(アルキル部位は2〜10個、好ましくは3〜6個の炭素原子を含み、アラルキル部位は7個〜10個以下の炭素原子、好ましくは8個以下の炭素原子を含む)であってもよい。特に、追加の成分として使用するに適切なアルキルアラルキルフタレートとしては、ベンジル−n−ブチルフタレート及びベンジル−i−ブチルフタレートを挙げることができる。別の代替例において、このような追加の成分は、芳香族モノカルボン酸のアルキルエステル(モノカルボン酸部位は6〜8個の炭素原子を含み、アルキル部位は1〜3個の炭素原子を含む)であってもよい。追加の成分として使用するに適切な特定のアルキルエステルとしては、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート及びプロピルベンゾエートを挙げることができる。
【0085】
本発明に記載されている第1の電子供与体成分:追加の成分のモル比は、0.5:1から、好ましくは1:1から、3:1まで、好ましくは2.5:1までの範囲にある。上述の第2の電子供与体:第1の電子供与体と追加の電子供与体の組み合わせのモル比は、4:1から、好ましくは7:1から、15:1まで、好ましくは9:1までの範囲にある。
【0086】
本発明の触媒又は触媒成分の化学構造は正確に知られていないが、成分は一般に1〜6wt%のチタン、10〜25wt%のマグネシウム及び45〜65wt%のハロゲンを含む。好ましくは、本発明の触媒成分は2.0〜4wt%のチタン、15〜21wt%のマグネシウム及び55〜65wt%の塩素を含む。
【0087】
本発明の方法により製造される本発明の固体触媒成分において、マグネシウム:チタンの原子比は少なくとも0.3:1であり、好ましくは0.4:1〜20:1であり、より好ましくは3:1〜9:1である。
【0088】
αオレフィンの重合又は共重合で用いられる前に、本発明の触媒又は触媒成分の予備重合又はカプセル化を行うこともできる。特に有用な予備重合手順は米国特許U.S.Patent 4,579,836号明細書に記載されている。
【0089】
典型的には、本発明の触媒又は触媒成分は、II族又はIII族金属アルキル及び典型的には1以上のモディファー化合物を含む助触媒成分と一緒に用いられる。有用なII族及びIIIA族金属アルキルは、式MR(式中、MはII族又はIIIA族金属であり、各Rは独立に1〜20個の炭素原子のアルキル基であり、mはMの原子価に対応する)の化合物である。有用な金属Mの例としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム及びガリウムを挙げることができる。適切なアルキル基Rの例としては、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、デシル、テトラデシル及びエイコシルを挙げることができる。触媒成分性能の観点から、好ましいII族及びIIIA族金属アルキルは、マグネシウム、亜鉛及びアルミニウムのアルキル(アルキル基は1〜12個の炭素原子を含む)である。このような化合物の特定の例としては、Mg(CH、Mg(C、Mg(C)(C)、Mg(C、Mg(C13、Mg(C1225、Zn(CH、Zn(C、Zn(C、Zn(C)(C17)、Zn(C13、Zn(C13及びAl(C1225を挙げることができる。アルキル基1個あたり1〜6個の炭素原子を含むマグネシウム、亜鉛又はアルミニウムアルキルを用いてもよい。アルミニウムアルキルが好ましく、最も好ましくはアルキル基1個あたり1〜6個の炭素原子を含むトリアルキルアルミニウムであり、特にトリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウム又はこれらの組み合わせを用いる。
【0090】
所望により、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどの1以上のハロゲン又はヒドリド基を有する金属アルキルを用いることができる。
典型的なαオレフィンの重合又は共重合用触媒系は、本発明の担持チタン含有触媒又は触媒成分を助触媒としてのアルキルアルミニウム化合物と、典型的には電子供与体であり、好ましくはシランである少なくとも1の外部モディファーと一緒に組み合わせることにより形成される。典型的には、このような触媒系における有用なアルミニウム:チタンの原子比は10:500であり、好ましくは30:300である。このような触媒系における典型的なアルミニウム:電子供与体のモル比は2:60である。このような触媒系における典型的なアルミニウム:シラン化合物のモル比は3:50である。
【0091】
この助触媒系の活性及び立体特異性を最適化するために、典型的には電子供与体であり、シラン、鉱酸、硫化水素の有機金属カルコゲニド誘導体、有機酸、有機酸エステル及びこれらの混合物などの化合物を含む1以上の外部モディファーを用いることが好ましい。
【0092】
上述の助触媒系に対する外部モディファーとして有用な有機電子供与体は、酸素、ケイ素、窒素、硫黄及び/又はリンを含む有機化合物である。このような化合物としては、有機酸、有機酸無水物、有機酸エステル、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、シラン、アミン、アミンオキシド、アミド、チオール、種々のリン酸エステル及びアミドなどを挙げることができる。有機電子供与体の混合物もまた用いることができる。
【0093】
特定の有機酸及びエステルは、安息香酸、ハロ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらのアルキルエステル(アルキル基は1〜6個の炭素原子を含む)であり、たとえばメチルクロロベンゾエート、ブチルベンゾエート、イソブチルベンゾエート、メチルアニサーテ、エチルアニサーテ、メチルp−トルエート、ヘキシルベンゾエート及びシクロヘキシル−ベンゾエート、及びジイソブチルフタレートを挙げることができ、これらは活性及び立体特異性の観点から良好な結果をもたらし、簡便に使用できる。
【0094】
上述の助触媒系は、有利に且つ好ましくは脂肪族又は芳香族シラン外部モディファーを含む。上述の助触媒系として有用な好ましいシランとしては、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素部位を含むアルキル−、アリール−及び/又はアルコキシ−置換シランを挙げることができる。式:SiY(式中、各Y基は同一又は異なっていて、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基又はアルコキシ基である)を有するシランが特に好ましい。好ましいシランとしては、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、テトラエチルオルソシリケート、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン及びt−ブチルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0095】
本発明の一側面において、触媒成分内部供与体として上記に識別された置換シクロアルカンジカルボキシレートは、単独又は上述のシラン化合物を含む適切な他の外部供与体と一緒に外部供与体として使用することもできる。
【0096】
本発明の触媒又は触媒成分は、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1及びヘキセン−1などの3以上の炭素原子を含むα−オレフィン並びにこれらの混合物及びこれらとエチレンとの混合物との立体異性重合又は共重合に有用である。本発明の触媒又は触媒成分は、プロピレン又はこれらと30mol%以下のエチレン又はより高級のα−オレフィンとの混合物の立体異性重合又は共重合に特に効果的である。本発明によれば、より高度に結晶性のポリα−オレフィンホモポリマー又はコポリマーは、重合又は共重合条件下で少なくとも1のα−オレフィンを上述の本発明の触媒又は触媒成分と接触させることにより調製される。このような条件としては、重合又は共重合温度及び時間、モノマーの圧力、触媒の汚染の回避、スラリープロセスにおける重合又は共重合媒体の選択、ホモポリマー又はコポリマー分子量を制御するための添加剤の使用、及び当業者に周知の他の条件を挙げることができる。スラリー重合、バルク重合及び気相重合又は共重合プロセスも含まれる。
【0097】
本発明の触媒又は触媒成分の使用量は、重合又は共重合技術、反応器寸法、重合又は共重合されるべきモノマー及び当業者に公知の他のファクターの選択に依存して変動し、後述の実施例に基づいて決定することができる。典型的には、本発明の触媒又は触媒成分は、製造されるポリマー又はコポリマー1gあたり0.2〜0.02mgの範囲の触媒量で用いられる。
【0098】
用いられる重合又は共重合プロセスにかかわらず、重合又は共重合は、合理的な重合又は共重合速度を保証し、過度に長すぎる反応器滞留時間を回避するに十分高い温度であるが、早すぎる重合又は共重合速度に起因する不合理に高いレベルのステレオランダム生成物の製造を招くほど高くはない温度で行われるべきである。一般に、0℃〜120℃の範囲の温度であり、良好な触媒性能及び高い生産率の観点から20℃〜95℃の範囲が好ましい。より好ましくは、本発明による重合は、50℃〜80℃の範囲の温度で行われる。
【0099】
本発明によるオレフィン重合又は共重合は、大気圧以上のモノマー圧力で行われる。一般に、モノマー圧力は140〜4100kPaの範囲であるが、気相重合又は共重合の場合には、モノマー圧力は、重合又は共重合されるべきα−オレフィンの重合又は共重合温度での蒸気圧よりも低くすべきではない。
【0100】
重合又は共重合時間は、一般に、連続プロセスにおける平均滞留時間に対応して、バッチプロセスにおいて1/2時間〜数時間の範囲である。1〜4時間の範囲の重合又は共重合時間がオートクレーブ型反応において典型的である。スラリープロセスにおいて、重合又は共重合時間は、所望により調節してよい。1/2時間〜数時間の範囲である重合又は共重合時間が一般に連続スラリープロセスにおいて十分な時間である。
【0101】
スラリー重合又は共重合プロセスにおいて用いるに適切な希釈剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンなどのアルカン及びシクロアルカン;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルトルエン、n−プロピル−ベンゼン、ジエチルベンゼン、モノ−及びジ−アルキルナフタレンなどのアルキル芳香族;クロロベンゼン、クロロナフタレン、オルソ−ジクロロベンゼン、テトラヒドロ−ナフタレン、デカヒドロナフタレンなどのハロゲン化及び水素化芳香族;高分子量液体パラフィン又はこれらの混合物及び他の周知の希釈剤を挙げることができる。蒸留、モレキュラーシーブを通しての浸出、痕跡量の不純物を除去することができるアルキルアルミニウム化合物などの化合物との接触又は他の適切な手段によるなどして、使用前に重合又は共重合媒体を浄化することが望ましいことが多い。
【0102】
本発明の触媒又は触媒成分が有用である気相重合又は共重合プロセスの例は、撹拌床反応器及び流動床反応器システムの両者を含み、米国特許U.S.Patent3,957,448号明細書;3,965,083号明細書;3,971,786号明細書;3,970,611号明細書;4,129,701号明細書;4,101,289号明細書;3,652,527号明細書;及び4,003,712号明細書に記載されている。典型的な気相オレフィン重合又は共重合反応器システムは、オレフィンモノマー及び触媒成分を添加することができ、ポリマー粒子を形成する撹拌床を含む少なくとも1の反応容器を具備する。典型的には、触媒成分は一緒に又は別個に1以上の弁制御口を通して単独又は第1反応容器に添加される。オレフィンモノマーは、典型的には、リサイクルガスシステムを通して反応器に提供され、ここで未反応モノマーはオフガスとして除去され、新鮮な供給モノマーが混合され、反応容器に注入される。インパクトコポリマーの製造のために、第1反応器内で 第1モノマーから形成されたホモポリマーは、第2反応器内で第2モノマーと反応する。温度を制御するために、液体モノマーであってもよい急冷液体がリサイクルガスシステムを通して重合中又は共重合中のオレフィンに添加されてもよい。
【0103】
重合又は共重合技術にかかわらず、酸素、水及び触媒毒として作用する他の物質を除いた条件下で、重合又は共重合は行われる。さらに、本発明によれば、重合又は共重合は、ポリマー又はコポリマー分子量を制御するための添加剤の存在下で行われてもよい。このために、当業者に周知の態様で、水素が典型的に用いられる。通常は必要ではないが、重合又は共重合の完了時、又は重合又は共重合を終了させるか又は発明の触媒又は触媒成分を少なくとも一時的に失活させることが望ましい場合に、当業者に公知の態様で、触媒を水、アルコール、アセトン、又は他の適切な触媒失活剤と接触させてもよい。
【0104】
本発明の方法に従って製造される生成物は、通常固体の主としてイソタクチックポリα−オレフィンである。ホモポリマー又はコポリマー收率は、用いられる触媒の量に対して十分に高く、有用な生成物を触媒残渣の分離なしに得ることができる。さらに、ステレオランダム副産物のレベルは十分に低く、有用な生成物を分離なしに得ることができる。本発明の触媒の存在下で製造される重合又は共重合生成物は、押出、射出成形及び他の一般的な技術によって、有用な成形品に加工することができる。
【0105】
本発明の組成物のポリマー成分は、主としてプロピレンの高結晶性ポリマーを含む。実質的なポリプロピレン結晶化度含有率を有するプロピレンのポリマーは、今や当該分野で周知である。「イソタクチック」ポリプロピレンとして記載されている結晶性プロピレンポリマーがいくらかの非結晶性領域が散在する結晶性領域を含むことは長いこと認識されている。非結晶性は、完全なポリマー結晶形成を阻害する規則的なイソタクチックポリマー鎖内の欠陥に起因し得る。ポリマー内のポリプロピレン立体規則性の程度は、イソタクチックインデックス、結晶性融点、曲げ弾性率などの周知の技術により、及び最近では炭素−13核磁気共鳴(13C NMR)によるメソペンタド(%m4)の相対パーセントを決定することにより、測定することができる。
【0106】
本発明に特に有用なプロピレンポリマーは、高いnmr立体規則性及び数平均分子量に対する質量平均分子量の比(M/M)により測定される広い分子量分布(MWD)の両者を有する。このような分子量は、典型的には当該分野で公知のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)技術により測定される。加えて、本発明の好ましいポリマーは、1800MPaを超える曲げ弾性率、典型的には2100MPaを超える曲げ弾性率を有する。加えて、nmrペンタド立体規則性は、典型的には90%を超え、好ましくは95%を超え、97%を超えてもよい。典型的なポリマーのメルトフローレートは1〜20g/10minである。
【0107】
プロピレンポリマーの立体規則性を決定する方法は、13C NMRを用い、ポリプロピレンポリマー骨格上の隣接するメチル基の相対位置を識別する能力に基づく。2個の隣接するプロピレンモノマー単位(−CH(CH)−CH−)のメチル基がポリマー鎖の同じ側にある場合、このような2個のメチル基はメソ(m)ダイアドを形成する。これらのメソダイアドの相対パーセンテージは、%mで表される。隣接するモノマー単位の2個のメチル基がポリマー鎖の反対側にある場合、このような2個のメチル基はラセミ(r)ダイアドを形成し、これらのラセミダイアドの相対パーセンテージは%rとして表される。13C NMR技術における進歩は、それぞれトライアド、テトラド及びペンタドと呼ばれる3個、4個及び5個の連続するメチル基の相対位置の測定を可能とする。
【0108】
現行のNMR機器は、ポリマーサンプル中のペンタドの特定の分布を定量化することができる。プロピレンポリマー中で可能な10個の特異なペンタドがある:
【0109】
【化14】

【0110】
mmmmペンタドの球棒表示は:
【0111】
【化15】

【0112】
となる。
可能なペンタドのうち2個(mmrm及びrmmr)は、NMRでは分離できずに一緒に報告される。10個のペンタドのうち2個(mmrr及びmrrm)は、イソタクチックシーケンスにおけるポリマー鎖の反対側上の単一のメチル基の置換から得られる。mmmm(m4)ペンタドは完全なイソタクチック立体規則性構造を表すから、このペンタドの測定値(%m4として)はイソタクティシティ及び潜在的な結晶化度を反映する。本明細書において用いられているように、用語「NMR立体規則性インデックス」は、13C NMRにより測定したままのm4ペンタドのパーセント(%m4)である。よって、プロピレンポリマー中で13C NMRにより測定された96%のペンタドがm4であるならば、NMR立体規則性インデックスは96である。
【0113】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0114】
一連の担持触媒成分を種々の内部電子供与体を用いて調製した。以下、本発明の電子供与体を用いる例及びこのような内部電子供与体を用いない比較例を一緒に説明する。
【0115】
[供与体化合物の調製]
供与体モディファー化合物の調製は、下記及びTable 1に示す。
エチルN−BOC−サルコシン(エチルN−ブトキシカルボニル−サルコシン)(M1)
添加漏斗を装備する500ml丸底フラスコにサルコシンヒドロクロライドエチルエステル(25g)及び無水エタノール(80ml)を仕込んだ。窒素流下、炭酸ナトリウム(9.5g)を添加し、混合物を30分間撹拌した。添加漏斗にジ−t−ブチルジカーボネート(35.5g)及びテトラヒドロフラン(THF)(無水物、30ml)を仕込んだ。この溶液をエタノールスラリーに1時間かけて滴下し、次いで得られた混合物を一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除き、残渣を水(200ml)及びエチルアセテート(200ml)で抽出した。有機相を0.1N HCl、0.1N 重炭酸ナトリウム、次いで塩水で洗浄し、次いでロータリーエバポレーター上でストリップして淡黄色液体(10.2g)を生成させた。GC/MS:>99%純度、m/z=217。
【0116】
エチルN−BOC−ピペコリネート(M2)
250ml丸底フラスコにエチルピペコリネート(25.1g、159mmol)及び無水エタノール( ml)を仕込んだ。窒素下、ジ−t−ブチルジカーボネート(34.8g、160mmol)を複数回にわけて1時間かけて添加した。COガスの発生が最後の部分で終わったようであった。混合物をさらに4時間撹拌し、M1についての上記手順で作業を終了した。24.8gの清浄な液体が得られた。H NMR(CDCl、500MHz)δ4.86〜4.68(m、1H)、4.18(m、2H)、4.20〜3.90(m、1H)、2.97〜2.85(m、1H)、2.20(br.m、1H)、1.67〜1.61(m、3H)、1.44(br.s、18H)、1.4(m、部分的に不明瞭、〜1H)、1.27(t、J=15Hz、3H)、1.24(m、部分的に不明瞭、〜1H)。GC/MSにより化合物は純粋であるようだった。
【0117】
エチルN−BOC−グリシン(M4)
250ml丸底フラスコに、窒素流下、無水エタノール(50ml)及びグリシンエチルエステルヒドロクロライド(20g)を仕込んだ。炭酸ナトリウム(7.9g)を数回に分けて0.5時間かけて添加した。ジ−t−ブチルジカーボネート(31.4g)を複数回に分けて1時間かけて添加し、混合物を1時間撹拌した。混合物をロータリーエバポレーターでストリップして、水(100ml)及びエチルアセテート(100ml)で洗浄した。有機抽出物を0.1N HCl、0.1N 重炭酸ナトリウム、次いで塩水で洗浄し、ロータリーエバポレーターでストリップして、真空下で乾燥し、淡黄色液体(16.3g)を得た。H NMR((CDCl)、500MHz)δ5.12(br s、1H)、4.21(q、J=7Hz、2H)、3.84(br d、J=2.5Hz、2H)、1.45(s、9H)、1.28(t、J=7Hz、3H)。GC/MS:>98%純度。
【0118】
エチルN−プロピオニルサルコシン(M5)
250ml丸底フラスコに窒素流下、ピリジン(50ml)及びサルコシンエチルエステルヒドロクロライド(25g)を仕込み、次いで氷浴中に置いた。プロピオニルクロライド(14.5ml)をシリンジで15分間かけて添加した。さらに20分間撹拌した後、氷浴を除いて、混合物を1時間撹拌した。混合物を冷たい水(175ml)に注いで、ジエチルエーテル(2×100ml)次いでエチルアセテート(3×100ml)で抽出した。一緒にした抽出物をロータリーエバポレーターでストリップし、真空下で乾燥し、淡黄色液体(23.5g)を得た。H NMR(CDCl、500MHz)δ4.19(q、J=7Hz、2H)、4.13(s、2H)、3.08(s、3H)、2.82(q、J=7Hz、2H)、1.29(t、J=7Hz、3H)、1.15(t、J=7Hz、3H)。GC/MS:>99%純度、m/z=173。
【0119】
【表1】

【0120】
[触媒調製]
マグネシウムクロライド−THF触媒担体の合成
米国特許U.S.Patent 4,946,816号明細書に記載されていると同じ態様で、2−エチル−1−ヘキサノールを含むトルエン溶液中1当量のマグネシウムエトキシドの溶液を93℃、二酸化炭素300kPa下、乾燥窒素のブランケット下、3時間にわたり迅速に撹拌して反応させることにより、マグネシウムクロライド−THF付加化合物触媒担体を調製したところ、1ミリリットル当たり約0.1グラム当量のマグネシウムエトキシドを含んでいた。得られたマグネシウムヒドロカルビルカーボネート溶液を単離して、トルエン中四塩化チタン(TiCl)(0.9当量)と反応させて、固体粒子を沈殿させた。沈殿物を含む混合物を25℃で15分間、迅速に撹拌した後、マグネシウムヒドロカルビルカーボネート溶液をボンベを通して反応器に添加し、その後、固体粒子が沈殿した。
【0121】
沈殿物を含む混合物をさらに5分間撹拌した後、0.25当量のテトラヒドロフラン(THF)を迅速に添加した。迅速な撹拌を続けて、温度を15分以内で60℃まで昇温させた。最初に形成された固体は、THF溶液内に溶解した。THF添加後5分以内に、固体は溶液から再沈殿し始めた。60℃で1時間、撹拌を続けた後、撹拌を停止して、得られた固体を沈殿させた。上澄み液を傾瀉し、固体をトルエンで複数回洗浄した。
【0122】
[触媒の合成]
触媒調製手順A:
触媒A1:上述のマグネシウムクロライド−THF付加化合物触媒担体(22.5g)を200mlヘプタン中に懸濁させ、窒素下で、塔頂撹拌機を装備する1リットルジャケット付きガラス反応器に移した。ヘプタンをデカンテーションにより除いて、固体をトルエンで洗浄し、次いで傾瀉した。いっそう多くのトルエンを添加して、四塩化チタン(TiCl)(105ml、Akzo)を撹拌しながら添加した。反応器内容物を90℃まで暖めて、さらに1時間混合した。アミノ酸誘導体供与体モディファーエチルN−Boc−サルコシン(M1)(2ml)をシリンジで混合物に添加し、得られた混合物を90℃で1時間撹拌し、固体を沈殿させて上澄み液を傾瀉した。トルエン及び四塩化チタン(105ml)を添加し、100℃で撹拌した。追加の1mlの同じモディファーをシリンジで添加し、得られた混合物を100℃で1時間撹拌した。撹拌を停止して、固体を沈殿させ、上澄み液を濾過により除いた。トルエンを添加して、スラリーを90℃で0.5時間撹拌した。固体を沈殿させて、濾過し、トルエン(125ml)及びTiCl(105ml)を添加し、混合物を90℃で0.5時間撹拌した。次いで、得られた固体を5回、100mlのヘプタンで洗浄した。固体をヘプタン(100ml)中でスラリー化して、グローブボックスに移し、焼結ガラスフリットで濾過し、窒素流で乾燥させ、微小淡緑色粉末(約12g)を得た。固体は、誘導結合プラズマ(ICP)により4.09wt%Ti、20.2wt%Mgを含んでいた。粉末は、顕微鏡観察により均一な粒子形状を有しており、Malvern Mastersizer(登録商標)レーザ回折粒径分析器により測定したところ、均一な分布d10=6.43ミクロン、d50=24.26ミクロン、d90=37.92ミクロン及びスパン=1.30を有していた。
【0123】
実施例2、3、9及び10並びに比較例Aで用いた触媒は、同様の手順で調製し、さらにTable 2に記載する。
【0124】
触媒A2:上記手順Aを用いたが、モディファーM1の代わりにモディファーM2を用いた。固体は、3.63%Ti、17.1%Mgを含んでいた。
触媒A3:手順Aを用いたが、モディファー21675−4の代わりにN−カルボベンジルオキシ−L−プロリンメチルエステル(M3)(Aldrich)を用いた。固体は、3.63%Ti、15.5%Mgを含んでいた。
【0125】
触媒A4:手順Aを用いたが、モディファーM1の代わりにモディファーM4を用いた。固体は、3.65%Ti、16.9%Mgを含んでいた。
触媒A5:手順Aを用いたが、モディファーM1の代わりにモディファーM5を用いた。固体は、4.7%Ti、15.4%Mgを含んでいた。
【0126】
触媒A6:手順Aを用いたが、モディファーM1の代わりにN−Boc−L−プロリンベンジルエステルを用いた。固体は、5.2%Ti、16.2%Mgを含んでいた。
比較触媒X1:手順Aを用いたが、モディファーを使用しなかった。固体は、3.98%Ti、15.6%Mgを含んでいた。
【0127】
触媒調製手順B:
ストリップされた担体の調製
上述のマグネシウムクロライド−THF付加化合物触媒担体(22.5g)をヘプタン中に懸濁させ、窒素下で塔頂撹拌機を装備する1リットルジャケット付きガラス反応器に移した。ヘプタンを傾瀉により除いて、撹拌しながら1分間、トルエンで洗浄し、デカンテーションによって固体を回収し、よりいっそう多いトルエン(125ml)及び四塩化チタン(105ml、Akzo)を撹拌しながら添加した。反応器内容物95℃まで暖めて、さらに1.25時間混合し、撹拌を停止し、固体を沈殿させた。上澄み液を傾瀉し、残りの固体をトルエン(125ml)中でスラリー化した。撹拌を停止して、固体を沈殿させ、上澄み液を濾過により除いた。固体をヘプタン(100ml)中でスラリー化し、グローブボックスに移し、焼結ガラスフリットで濾過し、窒素流で乾燥させた。明るいピンクの固体(12.0g)を単離した。固体は、3.2wt%Ti、18.0wt%Mg、及び5.35wt%THFを含んでいた。
【0128】
ストリップされた担体の活性化
触媒B1:使い捨て30mlバイアル瓶に上記で調製したストリップされた担体(0.10g、0.74mmol Mg)、トルエン(2ml)、供与体モディファーエチルN−Boc−ピペルコリネート(pipercolinate)(M2)(15mg)及びTiCl(1ml)を仕込んだ。バイアル瓶をラック内に置いて、加熱ブロックの頂部にセットして、断続的に撹拌しながら、15分間で95℃まで加熱した。固体を沈殿させて、上澄み液を除いた。トルエン(2ml)及びTiCl(0.5ml)を添加し、混合物を再び10分間で95℃まで加熱した。固体を沈殿させた後、上澄み液を除き、残留物をまだ暖かいうちにトルエン(2ml)で洗浄し、続いて3回ヘキサン(各2ml)で洗浄した。乾燥ボックス雰囲気中で一定の質量まで乾燥させるためにバイアル瓶をセットして、重合のために用いるまでキャップしておいた。
【0129】
触媒B2:上記手順Bを用いたが、モディファーM1に代えて、モディファーM5(15mg)を用いた。
触媒B6:手順Bを用いたが、モディファーM1に代えてN−カルボベンジルオキシ−L−プロリンメチルエステル(M3)(Aldrich、15mg)を用いた。
【0130】
触媒B4:手順Bを用いたが、モディファーM1に代えてモディファーM4(15mg)を用いた。
触媒B5:手順Bを用いたが、モディファーM1の代わりにモディファーM5(20mg)を用い、トルエン2.0mlの代わりに1.0mlを用い、両方のTiCl処理を0.5時間で105℃まで加熱し、第2のTiCl処理で0.5mlの代わりに1.0mlのTiClを用い、暖かいトルエンでの洗浄を省略した。
【0131】
比較触媒Y1:上記手順Bを用いたが、調製にモディファーを用いなかった。
比較触媒Y2:上記手順Bを用いたが、モディファージ−n−ブチルフタレート(M6)(15mg)をTiCl処理に用いた。
【0132】
実施例5〜8及び比較例B及びCで用いた触媒は、同様の手順で調製し、さらにTable 1に示す。
【0133】
[プロピレン重合]
条件A:
重合実施例1:標準2リットル、ヘプタンスラリー:
塔頂撹拌機、フラッシュ底部ダンプバルブ及び温度コントロールを装備する窒素パージしたジャケット付き2リットルステンレススチールParr反応器内で、触媒A1を用いて標準プロピレン重合を行った。反応器に、トリエチルアルミニウムの1.25Mヘプタン溶液2.0ml、ジイソブチルジメトキシシランの0.125Mヘプタン溶液2.0ml、触媒20mg、及びヘプタン850mlを添加した。スラリーを500rpm、38℃で撹拌した。水素(9mmol)を添加し、続いてすぐに液体プロピレン30gを添加した。反応器を暖めて、温度が71℃に達した時(約15分後)に圧力をプロピレンで560kPaまで高めた。反応器を71℃、560kPa、500rpmに60分間維持した。次いで、プロピレンスラリーを取り出して、圧力が約85kPaになるまで反応器を5分間排気した。反応器を窒素で305kPaまで加圧して、次いで2回排気して、残留プロピレンを除いた。反応器を再び、窒素で305kPaまで加圧して、反応器スラリーを底部ダンプバルブを通して濾過ソックに移した。濾過ソック内で得られたヘプタン湿潤固体をガラス皿に移して、82℃、1時間、0.15bar、窒素のわずかなパージで固体を真空炉内で乾燥させ、54.3gの白色ポリプロピレン粉末を得た。
【0134】
実施例2:上記条件Aを用いたが、触媒A1の代わりに触媒A2を用いて、60gのポリプロピレン粉末を得た。
実施例3:条件Aを用いたが、触媒A1の代わりに触媒A3を用いて、30gのポリプロピレン粉末を得た。
比較例A:条件Aを用いたが、触媒A1の代わりに比較触媒X1を用い、70gの粘着性のあるポリプロピレン粉末を得た。
【0135】
条件B:300cc Parr、バルクプロピレン
重合実施例4:窒素パージした塔頂撹拌機及び温度コントロールを装備するジャケット付き300mlステンレススチールParr反応器内でプロピレン重合を行った。反応器を55℃にして、トリエチルアルミニウムの0.75Mヘプタン溶液1.0ml、ジイソブチルジメトキシシランの0.1Mヘプタン溶液1.0ml、触媒B2(7.3mg)、液体プロピレン(約200ml)及び水素(5.7mmol)を仕込んだ。反応器を500rpmで撹拌しながら71℃にした。60分後、温度コントロールを遮断して、プロピレンをゆっくりと排気し、反応器を窒素で2回充填戻しした。ポリマーを反応器から除いて、一晩、空気乾燥させた。白色ポリプロピレン粉末(51g)が得られた。
【0136】
実施例5:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに触媒B2(6.2mg)を用いて、3gのポリプロピレン粉末を得た。
実施例6:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに触媒B6(7mg)を用い、37gのポリプロピレン粉末を得た。
【0137】
実施例7:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに触媒B4(8.5mg)を用い、47gのポリプロピレン粉末を得た。
実施例8:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに触媒B5(7.7mg)を用い、8.4gのポリプロピレン粉末を得た。
【0138】
実施例9:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに触媒A1(6.5mg)を用い、6.5mmolの水素を用い、9.2gのポリプロピレン粉末を得た。
実施例10:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに触媒A1(9.5mg)を用い、34gのポリプロピレン粉末を得た。
【0139】
比較例B:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに比較触媒Y1(3mg)を用い、わずかに0.25mlのジイソブチルジメトキシシラン溶液を用いて、74gの非常に粘着性のあるポリプロピレンを得た。
【0140】
比較例C:条件Bを用いたが、触媒B1の代わりに比較触媒Y2(3mg)を用い;0.25mlのジイソブチルジメトキシシラン溶液、11mmolの水素を用いて;重合時間は72分間として、65gのポリプロピレン粉末を得た。
【0141】
Table 2は、重合及びポリマー特性をまとめた。
【0142】
【表2】

【0143】
「收率」(固体触媒成分1グラム当たり製造されたポリマーのグラム数)は、ポリマーを製造するために用いた固体触媒の質量に基づく。「可溶分」は、製造された可溶性ポリマーの量を回収するために濾液のアリコートから溶媒を蒸発させることによって測定し、濾過により単離された固体ポリマーと可溶性ポリマーとの総量を基準とするこのような可溶性ポリマーのwt%(%Sol.)として表す。「キシレン可溶分」(XS)は、溶媒として沸騰キシレンを用いた可溶分である。「抽出物」は、3〜6時間で沸騰n−ヘプタン内に抽出された後、粉砕されたポリマーの乾燥サンプルの質量損失を測定することによって決定され、抽出により除去された固体ポリマーのwt%(%Ext.)として報告される。嵩密度(BD)は、1立方センチメートル当たりのグラム単位(g/cc)で報告される。固体ポリマーの粘度は、ASTM D1238 条件L(2.16kg@230℃)に準拠して測定され、メルトフローレート(MFR):10分間当たりのポリマーのグラム数として報告される。
【0144】
デカリン可溶分(DS)は、プロピレンポリマー中に含まれるアタクチック成分、非結晶性成分、及びオリゴマー性成分などの炭化水素可溶性及び抽出可能物質の測定であり、加工窓などの所望の樹脂特性と特定の樹脂との相関に有用である。DSは、2.0gのポリマーサンプルを100mlのIrganox 1076−安定化(0.020g/l)デカリン(デカヒドロナフタレン)中に完全に溶解させ、スラリーを165℃まで暖め、スラリーを2時間、撹拌することによって測定する。一度ポリマーを溶解させると、溶液を一晩(少なくとも16時間)かけて冷却させる。冷却期間後、溶液を沈殿したポリマーから濾去する。溶液の測定部分を取り出し、デカリン溶媒を除いた後、得られたサンプルを120℃、真空下で完全に乾燥させる。最終的に乾燥させたサンプルを秤量して、デカリン可溶性ポリマーの量を決定した。結果をデカリン中に可溶性のまま残るポリマーのwt%として報告する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム、チタン及びハロゲンを含み、構造:
【化1】

(式中、D及びD
【化2】

から独立に選択され、R、R、R、R、R、R、R及びRは独立に1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基又は置換炭化水素基であり、R、R、R、R、R及びRは水素であってもよく;Rは−NRであってもよく;
基RとR、RとR、RとR、RとR、及び基RとRは結合して環式構造を形成してもよい)
を有する電子供与置換基を含有する化合物を含む少なくとも1の内部電子供与体を含む内部電子供与体をさらに含む、オレフィン重合に有用な固体の炭化水素不溶性触媒成分。
【請求項2】
Rは1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項3】
は1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基であり、Rは水素である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項4】
はメチルである、請求項3に記載の触媒成分。
【請求項5】
は1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項6】
はメチルである、請求項5に記載の触媒成分。
【請求項7】
及びRは結合して五員環又は六員環を形成する、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項8】
及びRは結合して五員環又は六員環を形成する、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項9】
及びRは結合して少なくとも1の窒素又は酸素ヘテロ原子を含有する五員環又は六員環を形成する、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項10】
少なくとも1の内部電子供与体は、構造:
【化3】

(式中、R、R’、R、R及びRは独立に1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基又は置換炭化水素基であり、R、R、R、R、R及びRは水素であってもよく;及び
基RとR及び/又は基RとRは結合して環式構造を形成してもよい)
を有する電子供与置換基を含有する化合物を含む、請求項1に記載の固体の炭化水素不溶性触媒成分。
【請求項11】
R及びR’は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項12】
R及びR’は異なるアルキル基である、請求項11に記載の触媒成分。
【請求項13】
Rは7〜20個の炭素原子を含有するアリールアルキル基である、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項14】
Rはベンジル基である、請求項13に記載の触媒成分。
【請求項15】
少なくとも1の内部電子供与体は、構造:
【化4】

(式中、R、R、R、R及びRは独立に1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基又は置換炭化水素基であり、R、R、R、R、R及びRは水素であってもよく;
基RとR及び/又は基RとRは結合して環式構造を形成してもよい)
を有する電子供与置換基を含有する化合物を含む、請求項1に記載の固体の炭化水素不溶性触媒成分。
【請求項16】
は−NRであり、Rは1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基である、請求項15に記載の触媒成分。
【請求項17】
Rはエチル基である、請求項16に記載の触媒成分。
【請求項18】
電子供与体含有化合物はエチルN−Boc−サルコシンである、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項19】
電子供与体含有化合物はエチルN−プロピオニルサルコシンである、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項20】
電子供与体含有化合物はエチルN−Boc−ピペルコリネート(pipercolinate)である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項21】
電子供与体含有化合物はN−カルボベンジルオキシ−L−プロリンメチルエステルである、 請求項1に記載の触媒成分。
【請求項22】
及びRは水素ではない、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の触媒成分を含有する触媒系を用いて、プロピレン又はプロピレンとエチレンもしくはC−Cα−オレフィンとの混合物を重合するプロセス。

【公表番号】特表2008−533243(P2008−533243A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500830(P2008−500830)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/008021
【国際公開番号】WO2006/110234
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507303398)イネオス・ユーエスエイ・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】