説明

プロピレン系樹脂多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体

【課題】透明性、柔軟性、極低温化での耐衝撃性等に優れ、かつ、積層時の厚み変動の低下、界面荒れなどの外観悪化を抑え、二次加工時の薄肉化を改良したプロピレン系樹脂多層シートおよび加熱処理用包装体を提供する。
【解決手段】内層(1)および外層(2)の少なくとも2層からなるプロピレン系樹脂多層シートであって、内層(1)は、特定のプロピレン系樹脂組成物(A)40〜89wt%、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)10〜40wt%、および特定のプロピレン系樹脂(C)1〜20wt%を含有する樹脂組成物からなり、外層(2)は特定のプロピレン系樹脂組成物からなるプロピレン系樹脂多層シートによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体に関し、詳しくは、加圧蒸気処理もしくは加圧熱水処理などの加圧下での加熱処理を行なっても、変形を起こし難い、優れた耐熱性を有しながらも、良好な透明性、柔軟性を有し、さらに、耐衝撃性、特に極低温下(例えば−25℃)での耐衝撃性に優れたプロピレン系樹脂多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト用包装体や薬液等の輸液バッグなど加圧処理を行って殺菌、滅菌が必要な包装袋に求められる性能として、内容物を確認可能なための透明性、空気孔を開けずとも排液可能にするための柔軟性、極寒地(例えば−25℃といった環境)での運搬時に乱雑に取り扱っても破袋しないための耐低温衝撃性、121℃の滅菌、殺菌処理でも変形、融着しないための耐熱性、易製袋性のためのヒートシール特性等の二次加工適性等が挙げられる。
とりわけ輸液バッグに関しては、かつては上述の性能を満たす材料として塩化ビニル樹脂が使用されていたが、可塑剤の溶出、廃棄処理に難があること、近年の地球環境への配慮等の問題があることから、ポリオレフィン系樹脂に代替されてきている。
【0003】
ポリエチレンを主構成とする輸液バッグは柔軟性、耐衝撃性に優れるが耐熱性に乏しく、オーバーキル条件である121℃の滅菌温度では変形等の外観不良が発生し、輸液バッグとしての性能を満たすことはできない(例えば文献1)。一方、ポリプロピレンを主構成とする輸液バッグは良好な耐熱性を有しているが、輸液バッグ材料としては硬く、低温での耐衝撃性が不足しているため、こちらも上述の性能を満たすことはできない(例えば文献2)。
【0004】
そこで、ポリプロピレンにエラストマー成分を添加し、柔軟性・耐衝撃性を付与した技術が開示されている(例えば文献3)。しかし、ポリプロピレンの耐熱性が犠牲となり、また滅菌後の低分子量成分がブリードアウトし、透明性も悪化する問題がある。エラストマー成分としてスチレン系エラストマーを添加する技術の開示もあるが(例えば文献4)、ブロッキングが起こりやすくなり、生産性に優れているとは言い難い。またスチレン系エラストマーはオレフィン系エラストマーに比較して高価であり、コスト的にも課題が残る。
【0005】
それとは別に、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて連続重合によりエラストマー成分を添加するポリプロピレンブロック共重合体が開発されている(例えば文献5)が、やはり滅菌後のブリードアウトが発生し、透明性は良くない。一方で、メタロセン系触媒を用いて連続重合によりエラストマー成分を添加するプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる水冷インフレーションフィルムが提案されており、40℃条件下でのブリードアウト改良が見られている(例えば文献6)が、低温での耐衝撃性が未だ不十分なものであった。また、異質ブレンドを含む医療用フィルムが提案されている(例えば文献7)が、低温での耐衝撃性が不十分なものであった。
即ち、耐熱性・透明性・柔軟性・耐衝撃性を十分バランスよく備えた、尚かつ、低コストの輸液バッグ材料が求められているが、満足する材料が見つかっていないのが現状であった。
【0006】
また、輸液バッグ製袋工程にはスパウト、排出ポート・注入ポートなどの射出部品などとの融着させる工程があり、十分な融着のためにはフィルムを溶融させることが必要である。そのために非常に過酷(高温、高圧、長時間等)なヒートシールがされる。十分な溶融状態ではシールバーに溶融樹脂がくっついてしまい、生産性の悪化は否めない。そこで積層により外層、内層の融点差をつけることにより外層を固体のまま、内層を溶融させる技術が開示されている(例えば文献7)。しかし、内層がポリエチエレン系の樹脂であるため滅菌温度115℃には耐えられるが、121℃滅菌ではフィルム内面同士が融着してしまい、耐熱性は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−308682
【特許文献2】特開平9−99036
【特許文献3】特開平9−75444
【特許文献4】特開平9−324022
【特許文献5】特開2006−307072
【特許文献6】特表2008−524391
【特許文献7】特開2007−245490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
加熱処理用包装袋に必要な性能である透明性、耐熱性、柔軟性などをバランスよく兼ね備えるには、耐熱性を発現するプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体と、透明性を損なわずに柔軟化可能な特定のα−オレフィン量を添加したプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の組み合わせを用いることが効果的である。一方で、そのままでは過酷なヒートシール条件に耐えられず、ヒートシール部の肉厚が薄くなり、内容物を入れた状態で加熱処理包装体を落下させた時にヒートシール際(ぎわ)から亀裂が入り破袋してしまう可能性がある。
したがって、本発明は、柔軟性、透明性、耐熱性に優れ、且つ、製袋時の過酷なヒートシール条件に耐えられる上に、耐衝撃性、特に極低温下(例えば−25℃)での耐衝撃性に優れた多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点の解決のために多様な検討、解析を実施し、外層に特定の融解ピーク温度を有するプロピレン系樹脂を配し、内層には、特定のプロピレン−α−オレフィン共重合体の混合物と、特定の密度とメルトフローレートを有するエチレン−α−オレフィン共重合体成分と、特定の融解ピーク温度とメルトフローレートを有するプロピレン系樹脂を特定量配合することにより、上記問題点をバランス良く解決できることを見出し、以上の樹脂組成、層構成により上記課題を解決する多層シートが得られるとの知見を得て、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、内層および外層の少なくとも2層からなる多層シートであり、各層が下記の条件を満たすことを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
(1)内層
内層を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)は、下記条件(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)40〜89wt%、下記条件(B−i)〜(B−ii)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(B)10〜40wt%、および下記条件(C−i)〜(C−ii)を満たすプロピレン系樹脂(C)1〜20wt%を含有する。
・プロピレン系樹脂組成物(A):
(A−i)プロピレン系樹脂組成物(A)は、融解ピーク温度(Tm(A1))が120〜150℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)30〜70wt%、炭素数2及び又は4〜8のα−オレフィン含有量(α[A2])が10wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)70〜30wt%を含有する。
(A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
・エチレン−α−オレフィン共重合体(B):
(B−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
(B−ii)メルトフローレート(MFR(B):190℃、2.16kg)が0.1〜20g/10分の範囲である。
・プロピレン系樹脂(C):
(C−i)融解ピーク温度(Tm(C))が、150℃を超え、170℃以下である。
(C−ii)メルトフローレート(MFR(C):230℃、2.16kg)が0.5〜30g/10分の範囲である。
(2)外層
外層を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、融解ピーク温度(Tm(D))が150〜170℃の範囲であるプロピレン系樹脂(D)を含有する。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)が、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて得られたものであることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)が、逐次重合することで得られるものであって、
第1工程で前記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を30〜70wt%、第2工程でα−オレフィン含有量(α[A2])が10wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を70〜30wt%逐次重合したものであることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1または第2の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)が、逐次重合することで得られるものであって、
第1工程で前記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を30〜70wt%、第2工程でα−オレフィン含有量(α[A2])が14wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を70〜30wt%逐次重合したものであることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4の発明において、さらに最内層を、外層、内層、最内層の順で有する少なくとも3層からなることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)におけるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)がプロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)におけるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A1)がプロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とするプロピレン系樹脂多層シートが提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7の発明のプロピレン系樹脂多層シートを用いることを特徴とする加熱処理用包装体が提供される。
【0017】
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、加熱処理用包装体が輸液バックであることを特徴とする加熱処理用包装体が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多層シートおよびそれを用いた加熱処理用包装体における基本的な要件は、内層(1)に特定のプロピレン系樹脂組成物(A)、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)および特定融解ピーク温度のプロピレン系樹脂(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物(X)を用い、外層(2)には特定のプロピレン系樹脂(D)を主材として用いたプロピレン系樹脂組成物(Y)を用いることにある。
【0019】
内層(1)に用いるプロピレン系樹脂組成物(A)は、特定の範囲に融解ピーク温度を示すプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)と、特定のα−オレフィン含有量を持つプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を含有することで、耐熱性、透明性、柔軟性が高く、耐低温衝撃性に優れ、得られる多層シートに柔軟性および耐低温衝撃性をバランスよく付与させることができる。
【0020】
また、内層(1)に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、密度およびメルトフローレートにより特定されるものであり、得られる多層シートに、透明性、耐低温衝撃性を損なわず柔軟性を付与させることができる。
さらに、内層(1)に用いるプロピレン系樹脂(C)は、融解ピーク温度およびメルトフローレートにより特定されるものであり、得られる多層シートに、二次加工時の薄肉化を抑制することにより好適な製袋適性を付与させることができる。
なお、本願発明においては内層(1)に上記成分が含まれていればよく、例えば、特定の範囲に融解ピーク温度を示すプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)と、特定のα−オレフィン含有量を持つプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)は必ずしもプロピレン系樹脂組成物(A)という一つの組成物を形成する必要はない。このような例としては、連続重合法によって第1工程でプロピレン系樹脂(C)を重合した後、引き続き第2工程で特定のα−オレフィン含有量を持つプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を重合して得られた樹脂に、別途特定の範囲に融解ピーク温度を示すプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を混合して製造される場合が挙げられ、このような場合も本願発明の範囲に含まれる。
【0021】
外層(2)に用いるプロピレン系樹脂組成物(Y)には、融解ピーク温度により特定されるプロピレン系樹脂(D)が用いられており、ヒートシール時にシールバーに本多層シートがくっつくのを防ぎ、製袋適性を付与させることができる。
【0022】
したがって、本発明のプロピレン系樹脂多層シートおよび該多層シートを用いた加熱処理用包装体は、透明性、柔軟性及び極低温化での耐衝撃性などに優れ、かつ、積層時の厚み変動の低下、界面荒れなどの外観悪化を抑え、加えて、二次加工時の薄肉化を改良したものであるため、レトルト用包装体、輸液バッグ用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、内層(1)にプロピレン系樹脂組成物(X)、外層(2)にプロピレン系樹脂組成物(Y)を用いた、少なくとも2層からなる多層シート、およびそれから得られる加熱処理用包装体である。
以下、本発明のプロピレン系樹脂多層シートの各層構成成分、各層構成成分の製造、加熱処理用包装体について詳細に説明する。
【0024】
[I]プロピレン系樹脂多層シートの各層構成成分
1.内層(1)
内層(1)は、内層(1)は、成分(A1)、成分(A2)および成分(C)からなるプロピレン系樹脂組成物とエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を含有したプロピレン系樹脂組成物(X)から形成される。好ましい形態としては、下記の成分(A1)、(A2)からなるプロピレン系樹脂組成物(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)およびプロピレン系樹脂(C)を含有したプロピレン系樹脂組成物(X)から形成される。
【0025】
(1)プロピレン系樹脂組成物(A)
(1−1)プロピレン系樹脂組成物(A)の特性
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの内層(1)のプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)(以下、成分(A)ということもある。)は、透明性や、柔軟性、及び、耐衝撃性が高いことが必要である。これらの要求を高い水準で満たすために、成分(A)は、以下の(A−i)〜(A−ii)の条件を満たすことが必要である。
【0026】
(A−i)融解ピーク温度(Tm(A1))が120〜150℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)30〜70wt%、α−オレフィン含有量(α[A2])が10wt%を超え30wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)70〜30wt%を含有する。
(A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
上記条件を以下の(i)〜(v)で詳細に説明する。
【0027】
(i)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)の融解ピーク温度(Tm(A1))
成分(A1)は、プロピレン系樹脂組成物(成分(A))において結晶性を決定する成分である。成分(A)の耐熱性を向上させるためには、成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A1)(以下、Tm(A1)ということもある。)が高いことが必要である反面、Tm(A1)が高すぎると柔軟性や透明性が阻害される。また、Tm(A1)が低すぎると耐熱性が悪化し、ヒートシール時に薄肉化が進んでしまう。Tm(A1)は、120〜150℃の範囲にあることが必要であり、好ましくは125〜150℃、より好ましくは130〜145℃である。120℃未満では耐熱性が不足し、加熱処理時に多層シートの形状保持が困難となる。また150℃を超えると柔軟性が低下してしまう。
【0028】
ここで、融解ピーク温度Tmは、示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)で求める値であり、具体的には、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度として求める値である。
【0029】
(ii)成分(A)中に占める成分(A1)の割合
成分(A)中に占める成分(A1)の割合W(A1)は、成分(A)に耐熱性を付与する成分であるが、W(A1)が多過ぎると柔軟性や耐衝撃性及び透明性を充分に発揮することができない。そこで成分(A1)の割合は、70wt%以下である必要がある。70w%より多いと柔軟性及び耐低温衝撃性が悪化してしまう。
一方、成分(A1)の割合が少なくなり過ぎると、Tm(A1)が十分であっても耐熱性が不足し、滅菌、殺菌工程において変形してしまう恐れがあるため、成分(A1)の割合は30wt%以上でなければならない。W(A1)の好ましい範囲は、35〜65wt%である。
【0030】
(iii)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)中のα−オレフィン含有量α[A2]
成分(A2)は、成分(A)の柔軟性と耐衝撃性及び透明性を向上させるのに必要な成分であり、α[A2]は10wt%より多いことが必要である。α[A2]が10wt以下の場合には耐低温衝撃性が悪化してしまう。一方、成分(A2)の結晶性を下げるためにα[A2]を増加させ過ぎると、透明性と柔軟性が悪化してしまう。
そこで本発明に用いられる成分(A)中の成分(A2)のα[A2]は10wt%を超えて30wt%以下であることが必要であり、好ましくは14wt%を超えて25wt%以下、更に好ましくは17wt%を超えて25w%以下である。
【0031】
(iv)成分(A)中に占める成分(A2)の割合
成分(A)中に占める成分(A2)の割合W(A2)は、多過ぎると耐熱性が不足するため、W(A2)は、70wt%以下に抑えることが必要である。一方、W(A2)が少なくなり過ぎると柔軟性及び耐低温衝撃性が悪化し、W(A2)は、30wt%以上であることが必要である。W(A2)の好ましい範囲は、35〜65wt%である。
【0032】
(v)成分(A)の製造方法
成分(A)は、上記融解ピーク温度Tm(A1)を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(A1)と、α−オレフィン含有量α[A2]を満たすプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)のブレンド物であっても良く、また、以下の逐次重合によって製造してもよい。
逐次重合による成分(A)の好ましい製造方法は、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて、第1工程で融解ピーク温度Tm(A1)が120〜150℃の範囲にあるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を30〜70wt%、第2工程でα−オレフィン含有量α[A2]が10wt%超〜30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を70〜30wt%、逐次重合する方法である。
【0033】
逐次重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合方法、重合条件の中から適宜に選択でき、例えば以下の方法が挙げられる。
重合触媒としては、通常、高立体規則性触媒が用いられる。例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせた触媒(特開昭56―100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照。)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させた担持型触媒(特開昭57−63310号、同63−43915号、同63−83116号の各公報参照。)等を例示することができる。
【0034】
このような触媒の存在下、スラリー法、気相流動床法にて、多段重合することが好ましく、例えば以下のような工程(1)でプロピレンとα−オレフィンをランダム共重合し、続いて工程(2)でプロピレンとα−オレフィンをランダム共重合することにより得られる。
工程(1):プロピレンとα−オレフィンを、分子量調節剤としての水素の存在下、で重合する。重合温度は通常40〜90℃、圧力は通常2×10〜35×10Paの範囲から選択される。
工程(2):水素雰囲気下もしくは実質上水素の存在しない状態で、プロピレンとα−オレフィンを重合する。重合は、工程(1)で生成した重合体及び触媒の存在下、引き続いて行われる。重合温度は通常、40〜90℃、圧力は通常2×10〜35×10Pa程度である。この工程(2)で得られる重合体の量は、通常、全重合量の70〜30重量%となるように、調整される。
工程(1)及び工程(2)を結合して、結果として得られる重合体全体のメルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲に調整できればいかなる組み合わせを採用してもよい。
【0035】
成分(A1)および成分(A2)に使用するコモノマーとしてのα−オレフィンは、好ましくは炭素数2〜20のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物等からなる選択される。これらのコモノマーは、二種以上共重合されていてもよい。コモノマーは、エチレン及び/又は1−ブテンであるのが望ましく、最も望ましいのはエチレンである。
【0036】
(A−ii)成分(A)のメルトフローレートMFR(A)
成分(A)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)(以下、MFR(A)ということもある。)は、0.5〜20g/10分の範囲であることが必要である。
MFR(A)は、成分(A1)および成分(A2)に対応する各々のMFR(以下、MFR(A1)およびMFR(A2)ということもある。)の比率によって決定付けられるが、本発明においては、MFR(A)が0.5〜20g/10分の範囲にあれば、MFR(A1)およびMFR(A2)は、本発明の目的を損ねない範囲で任意である。ただし、両者のMFR差が大きく異なる場合には、外観不良等が生じる恐れがあるため、MFR(A1)およびMFR(A2)の比MFR(A1)/MFR(A2)は1/5〜5/1であることが好ましく、より好ましくは1/3〜3/1、更に好ましくは1/2〜2/1である。また、MFR(A1)は、2〜10g/10分の範囲にあることが望ましい。
MFR(A)が、0.5より低いと、多層シート成形時に、外観荒れが発生する。MFR(A)が20を超えると、成形安定性が悪化し、膜厚変動などが発生し、良品が得られない。
MFR(A)は、好ましくは2〜10g/10分である。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
【0037】
(1−2)内層(1)における成分(A)の割合
プロピレン系樹脂組成物(成分(A))の内層構成に占める割合は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量100wt%に対して、40〜89wt%の範囲であることが必要であり、好ましくは50〜80wt%である。
成分(A)の含有量が少なすぎると、良好な柔軟性、透明性、耐低温衝撃性が得られない。一方で、成分(A)の含有量が多くなりすぎると、ヒートシール等の二次加工時の薄肉化がより顕著に発生する恐れがある。
【0038】
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
(2−1)成分(B)の特性
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの内層(1)のプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)(以下、成分(B)ということもある。)は、エチレンと、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20、のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。成分(B)は、プロピレン系樹脂組成物(X)の透明性、柔軟性を向上させる働きをする成分であって、以下の(B−i)〜(B−ii)の条件を満たすことが必要である。
【0039】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートには、柔軟性、透明性、耐低温衝撃性が要求される。透明性については、成分(B)の屈折率が成分(A)と大きく異なる場合には、得られるシートの透明性が悪化するため、屈折率を合わせることも重要である。屈折率は、密度によって制御可能であり、本発明において要求される透明性を得るには、密度を特定の範囲にすることが重要となる。
また、成分(A)の更なる耐低温衝撃性を強化するために成分(B)の添加が必要である。
【0040】
(B−i)密度
本発明に用いられる成分(B)は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲にあることが必要である。
密度が低くなりすぎると、屈折率差が大きくなり透明性が悪化するため、0.860g/cm未満の場合には、本発明に必要な透明性を確保することが出来ない。
一方、密度が高くなりすぎると、耐低温衝撃性、柔軟性、透明性が悪化する。このため密度は、0.910g/cm以下であることが必要であり、好ましくは0.905g/cm以下、より好ましくは0.900g/cm以下である。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
【0041】
(B−ii)成分(B)のメルトフローレートMFR(B)
本発明の内層(1)は、成形性を確保するために適度な流動性を持っていることが必要である。
したがって、成分(B)のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)(以下、MFR(B)ということもある。)が低くすぎると、流動性が不足し、分散不良が生じたりすることで透明性の低下を生じる。そこで、MFR(B)は、0.1g/10分以上であることが必要であり、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上である。
一方で、MFR(B)が高すぎると成形が不安定で膜厚変動が生じる。そこで、MFR(B)は、20g/10分以下であることが必要であり、また10g/10分以下が好ましい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
【0042】
(2−2)成分(B)の製造方法
本発明に用いられる成分(B)は、成分(A)との屈折率差を小さくするために、密度を低くすることが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量の分布が狭いことが望ましい。そこで、成分(B)の製造には結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒を用いることが望ましい。
以下にメタロセン触媒およびそれを用いた重合方法について説明する。
【0043】
(i)メタロセン系触媒
メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることが出来る。具体的には、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35006号、特開平3−163088号の各公報などに記載されているメタロセン系触媒を例示できる。
【0044】
(ii)重合方法
具体的な重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
なお、成分(B)は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティ(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。
これらの使用において、成分(B)の要件である密度とMFRを満足するグレードを適宜選択すればよい。
【0045】
(2−3)内層構成における成分(B)の割合
成分(B)の内層構成中に占める割合は、成分(A)〜(C)の合計量100wt%に対して、10〜40wt%の範囲であることが必要である。成分(B)の含有量が10wt%より少ないと、耐低温衝撃性の付与が不十分である。一方で、成分(B)の含有量が多くなりすぎると、耐熱性が悪化し、またシートの厚みムラを生じ、良好な外観のシートを得ることができない。
成分(B)の好ましい含有量は、成分(A)〜(C)の合計量100wt%に対して、15〜35wt%である。
【0046】
(3)プロピレン系樹脂(C)
(3−1)成分(C)の特性
本発明の内層のプロピレン系樹脂組成物(X)の一成分として用いられるプロピレン系樹脂(C)は、成形性、薄肉化抑制成分として用いられる。
内層のプロピレン系樹脂組成物(X)の主成分として用いられる成分(A)は、積層シートに高い柔軟性と透明性を付与させるのに極めて有効であるが、成分(A1)は比較的低融点成分であるため、高結晶成分が少なく、ヒートシール時の薄肉化等の問題を有している。
そこで、成分(A)の結晶性分布を拡げ、相対的に高結晶成分を増やすそうとすると、必然的に低結晶成分も増し、結果として、それが積層シート表面へのブリードアウトによるべたつき、外観不良といった問題が生じさせるため、透明性が要求される用途には不向きとなる。
高結晶成分の少ない成分(A)に対し、成分(C)を特定量添加することにより、低結晶成分および低分子量成分の増加なしで、高結晶成分を増加させることができ、その結果として、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動や界面荒れなどの外観不良、ヒートシール時の薄肉化を抑制する事が可能となる。
【0047】
成分(C)は、以下の(C−i)〜(C−ii)の条件を満たすプロピレン系樹脂であり、例えばプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。
【0048】
(C−i)融解ピーク温度Tm(C)
成分(C)として好ましいのは、融解ピーク温度(Tm(C))が、前記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)の前記融解ピーク温度(Tm(A1))より高温であるプロピレン系樹脂である。融解ピーク温度を高くすることにより、得られる多層シートに、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、ヒートシール時の薄肉化を抑制する機能を付与させることができる。
成分(C)の具体的な融解ピーク温度Tm(C)は、150℃を超え170℃以下の範囲にあることが必要であり、好ましくは155〜170℃である。Tm(C)が150℃以下であると高結晶成分が不足し、十分な流動性低下できず、ヒートシール時の薄肉化が悪化する。Tm(C)が170℃を超えるものは工業的に製造することは難しい。より好ましいTm(C)は、155〜170℃、より好ましくは158〜167℃である。
【0049】
(C−ii)メルトフローレートMFR(C)
また、成分(C)は、成形性を確保するために適度な流動性を有することが重要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(C)ということもある。)が、0.5〜30g/10分の範囲にあることが必要である。MFR(C)が0.5g/10分未満の場合には、分散が悪化し、ゲルやフィッシュアイと呼ばれる外観不良を引き起こしやすい。一方、30g/10分を超える場合には、フィルム成形性が悪化し易くなる。MFR(C)の好ましい上限は15g/10分、より好ましくは12g/10分、特に好ましいMFRの範囲としては2.5〜12g/10分である。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
【0050】
(3−2)成分(C)の製造方法
プロピレン系樹脂成分(C)は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよい。プロピレン系(共)重合体成分(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)からなる組成物を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン系(共)重合体(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)を混合装置を用いてプロピレン系樹脂(C)を製造してもよく、また、第1工程でプロピレン系(共)重合体(C1)を製造し、引き続き第2工程でプロピレン系(共)重合体(C1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)を製造して、プロピレン系樹脂(C)を連続的に製造してもよい。
また、プロピレン系樹脂成分(C)はプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であってもよい。
また、第1工程で条件(C−i)〜(C−ii)を満たすプロピレン系(共)重合体(C)を製造し、引き続き第2工程でプロピレン系(共)重合体(C)の存在下にプロピレンと炭素数2及び又は4〜8のα−オレフィンのプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分を製造して、プロピレン系樹脂を連続的に製造してもよい。この場合、第2工程で製造される成分は、炭素数2及び又は4〜8のα−オレフィン含有量が10wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分である場合、成分(A2)であると見なすことが出来る。
具体的な製造方法としては、特開2006−35516号公報、特開2001−172454号公報に記載されている製造方法を好ましく例示でき、ここでこれらを言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
【0051】
なお、成分(C)は市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名ノバテックPP(NOVATECPP)、日本ポリプロ社製商品名ニューコン(NEWCON)、三菱化学社製商品名ゼラス(ZELAS)などが挙げられる。これらの使用において本発明での条件である融解ピーク温度、MFRを満足するグレードを適宜選択すればよい。
【0052】
(3−3)内層成分における成分(C)の割合
成分(C)が内層(1)中に占める割合は、前記した成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計100wt%に対して、1〜20wt%の範囲である必要がある。
このとき、成分(C)の量が少なすぎると、高結晶性成分が不足し、十分な薄肉化抑制効果を得ることが出来にくいため、1wt%以上であることが必要であり、好ましくは2wt%以上、より好ましくは5wt%以上である。逆に、成分(C)の量が多くなりすぎると、柔軟性や透明性等の物性低下が顕著になりやすく、本発明の樹脂組成物に要求される品質を満たすことが出来にくいため、20wt%以下であることが必要であり、好ましくは15wt%以下である。
【0053】
2.外層(2)
本発明の多層シートの外層(2)は、プロピレン系樹脂組成物(Y)から形成される。
(1)プロピレン系樹脂組成物(Y)の特性
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの外層(2)として用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)(以下、成分(Y)ということもある。)は、透明性及び、耐熱性が優れていることが必要である。多層シートとしての透明性、柔軟性を得るには内層(1)だけではなく、外層(2)も透明化しなければならない。加えて、外層(2)は、耐熱性も有していなければならず、殺菌、滅菌などの加熱処理でも変形しないこと、二次加工であるヒートシールにおいてヒートシールバーにくっつかないことが必要である。
【0054】
これらの要求を高い水準で満たすために、プロピレン系樹脂組成物(Y)は、融解ピーク温度Tm(D)が150〜170℃の範囲にあるプロピレン系樹脂(D)(以下、成分(D)ということもある。)を含有する。
【0055】
(D−i)融解ピーク温度Tm(D)
成分(D)の融解ピーク温度Tm(D)は、150〜170℃の範囲にあることが必要であり、好ましくは155〜170℃、より好ましくは158〜168℃である。
Tm(D)が150℃未満であると、耐熱性が不十分であり、ヒートシール時にヒートシールバーにくっついてしまう問題がある。Tm(D)が170℃を超えるものは工業的に製造することは難しい。
【0056】
(D−ii)メルトフローレートMFR(D)
成分(D)は、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが必要であり、流動性の尺度であるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)(以下、MFR(D)ということもある。)は、2〜20g/10分の範囲にあることが好ましく、2〜15g/10分の範囲にあることがより好ましく、さらに好ましくは4〜15g/10分である。
MFR(D)が2g/10分未満の場合には界面荒れ、表面荒れを発生しやすく、外観良好なシートが得られない恐れがある。一方、MFR(D)が20g/10分を超える場合には厚み変動が起こりやすく、成形性に難がある場合が多い。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
【0057】
(2)成分(D)の製造方法
本発明で用いるプロピレン系樹脂(D)は、上記の融点範囲を満足すればプロピレンホモポリマーであってもよく、他のα−オレフィンとのランダム共重合体、あるいは他のα−オレフィンとのブロック共重合体であってもよい。
このような成分(D)はいかなる方法で製造しても良い。プロピレン系(共)重合体成分(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)からなる組成物(いわゆるブロック重合体)を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン系(共)重合体(D1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)を混合装置を用いてプロピレン系樹脂(D)を製造しても、プロピレン系(共)重合体(D1)を製造し、引き続きプロピレン系(共)重合体(D1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体(D2)を製造して、プロピレン系樹脂(D)を連続的に製造しても良い。
【0058】
なお、成分(D)は、市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名ノバテックPP(NOVATECPP)、日本ポリプロ社製商品名ニューコン(NEWCON)、三菱化学社製商品名ゼラス(ZELAS)などが挙げられる。これらの使用において本発明の条件である融解ピーク温度、MFRを満足するグレードを適宜選択すればよい。
【0059】
(3)エチレン−α−オレフィン共重合体(D3)
プロピレン系樹脂(D)には、さらに低温での耐衝撃性を付与するために、下記のエラストマー成分(D3)を添加してもよい。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートの外層(2)に用いることのできるエラストマー成分としては、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。
本発明に好適に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体としては、成分(D)との屈折率差を小さくするために、密度を合わせるが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量分布が狭いことが望ましい。そこで、結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒により重合されたものを用いることが望ましい。
【0060】
なお、成分(D3)としてのエチレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティ(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。これらの使用においては、透明性、ベタツキ、ブリードアウト等の問題をおこさいよう適宜密度とMFRを選定すればよい。
また、他のエラストマー成分としては、スチレン系エラストマーを挙げることが出来る。スチレン系エラストマーとしては、市販されているものの中から適宜選択して使用することが出来る。例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としてクレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」として、また、旭化成工業(株)より「タフテック」の商品名で、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「セプトン」の商品名で、スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物としてJSR(株)より「ダイナロン」の商品名で販売されており、これらの商品群より適宜選択して用いてもよい。
【0061】
(4)外層における成分(Y)中の成分割合
本発明に好適に用いることのできる成分(D3)を用いる場合、成分(D)の外層(2)構成中に占める割合は、80〜99wt%の範囲であることが好ましく、成分(D3)の外層(2)構成中に占める割合は1〜20wt%の範囲であることが好ましい。より好ましくは成分(D)の含有量が85〜95wt%、成分(D3)の含有量が5〜15wt%である。
成分(D)の含有量が80wt%未満、即ち成分(D3)の含有量が20wt%以上であると、耐熱性が不十分であり加熱処理工程において変形が生じる恐れがある。成分(D)の含有量が99wt%以上、即ち成分(D3)の含有量が1wt%未満であると、低温耐衝撃性付与効果が不十分である。
【0062】
3.最内層(3)
本発明の多層シートは、最内層(3)を、外層(1)、内層(2)、最内層(3)の順で有する少なくとも3層からなる多層シートであることも好ましい。この最内層(3)は、多層シートのヒートシール性を制御するために、また、あるいは低温シール性や易剥離性の付与のため等に設けられるが、その目的は問わない。
最内層に使用する樹脂組成物(Z)には、特に制限はなく、その目的に応じて各種の樹脂を使用することができるが、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが好ましく、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重)が、2〜15g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2.5〜10g/10分である。
MFR(Z)が2g/10分未満の場合には、界面荒れ、表面荒れを発生しやすく、外観良好なシートが得られない恐れがある。一方、MFR(Z)が15g/10分を超える場合には、厚み変動が起こりやすく、成形性に難がある。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
【0063】
最内層に使用する好ましい成分として、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体(E)と、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体(F)からなるプロピレン系樹脂組成物を好ましく例示することができる。
かかる共重合体(E)の市販品としては、日本ポリプロ社製商品名「ウィンテック(WINTEC)」等を挙げることができ、共重合体(F)の市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティ(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。
【0064】
4.付加的成分(添加剤)
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける内層(1)、外層(2)、最内層(3)に用いられる各プロピレン系樹脂組成物(X)、(Y)および(Z)は、多層シートとして好適に用いられるため、ブリードアウトなど本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意の添加剤を配合する事が出来る。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等を挙げることが出来る。各種添加剤について以下に詳しく述べる。さらに本発明の効果を著しく損なわない範囲で、柔軟性を付与する成分としてエラストマーを配合することができる。
【0065】
(1)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
【0066】
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
酸化防止剤の配合量は、各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部、配合量が上記範囲未満では、熱安定性の効果が得られず、樹脂を製造する際に劣化が起こり、ヤケとなってフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えるとそれ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0068】
(2)アンチブロッキング剤
アンチブロッキング剤としては、平均粒子径1〜7μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは、1〜4μmである。平均粒子径が1μm未満では、得られるシートの滑り性、開口性が劣り好ましくない。一方、7μmを超えると、透明性、傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値である。
【0069】
アンチブロッキング剤の具体例としては、たとえば無機系としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
また、有機系としては、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等を用いることができる。
特に合成シリカ、ポリメチルメタクリレートが分散性、透明性、耐ブロッキング性、傷つき性のバランスから好適である。
また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッソ樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩等を用いることができ、特に有機酸処理なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
アンチブロッキング剤はいかなる形状であってもよく球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができる。
これらアンチブロッキング剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0070】
アンチブロッキング剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。配合量が上記範囲未満では、シートのアンチブロッキング性、滑り性、開口性が劣りやすくなる。上記範囲を超えるとシートの透明性を損ない、また、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0071】
(3)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類等が挙げられ、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
芳香族系ビスアマイドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドのうち、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが好適に使用される。
【0072】
スリップ剤を配合する場合の配合量としては、樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。上記範囲未満では開口性や滑り性が劣り易くなる。上記範囲を超えると、スリップ剤の浮き出しが過剰となり、シート表面にブリードし透明性が悪化する。
【0073】
(4)核剤
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物((株)ADEKA製、商品名NA21)等が挙げられる。
上記核剤を配合する場合の配合量としては、各々の樹脂100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部である。上記範囲未満では核剤としての効果が得られない。上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0074】
また、上記以外の核剤として高密度ポリエチレン樹脂を挙げることができる。高密度ポリエチレン樹脂としては、密度が、0.94〜0.98g/cm、好ましくは、0.95〜0.97g/cmである。密度がこの範囲を外れると透明性改良効果が得られない。高密度ポリエチレン樹脂の190℃メルトフローレイト(MFR)は、5g/10分以上、好ましくは7〜500g/10分、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。MFRが5g/10分より小さいときは高密度ポリエチレン樹脂の分散径が充分に小さくならず、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。また、高密度ポリエチレン樹脂が微分散するためには好ましくは高密度ポリエチレン樹脂のMFRが本発明のプロピレン系樹脂のMFRより大きい方がよい。
【0075】
核剤として使用される高密度ポリエチレン樹脂の製造は、目的の物性を有する重合体を製造し得る限りその重合方法や触媒について特に制限はない。触媒については、チーグラー型触媒(すなわち、担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、カミンスキー型触媒(すなわち、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。高密度ポリエチレン系樹脂の形状については制限がなく、ペレット状であってもよく、また、粉末状であってもよい。
【0076】
核剤として使用する場合、高密度ポリエチレンの配合量としては樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。上記範囲未満では核剤としての効果が得られない。上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0077】
(5)中和剤
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学工業(株)製)などを挙げることができる。
中和剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。配合量が上記範囲未満では、中和剤としての効果が得られず、押出機内部の劣化樹脂を掻き出してフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えるとそれ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0078】
(6)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合している全ての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられるが、具体的には以下のような化合物が用いられる。
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0079】
ヒンダードアミン系安定剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量が、0.005重量部未満であると、耐熱性、耐老化性等の安定性の向上効果がなく、2重量部より多いとそれ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0080】
(7)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として使用されている公知のものであれば特に限定されることなく使用でき、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0081】
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等のアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩等の第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
【0082】
上記非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステル等のエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミン等の含窒素形などが挙げられる。
【0083】
上記両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸等のアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等のN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0084】
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミド等のエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
【0085】
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
【0086】
帯電防止剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、もっとも好ましくは0.2〜0.5重量部である。これら帯電防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量が、0.01重量部未満では、表面固有抵抗を減らして帯電による障害を防止することができない。2重量部より多いとブリードによるシート表面に粉吹きが発生しやすくなる。
【0087】
本発明におけるエラストマーとしては、スチレン系エラストマー等が挙げられ、市販品としては、クレイトンポリマージャパン社製商品名クレイトン、クラレ社製商品名ハイブラー、JSR社製商品名ダイナロンなどがある。
【0088】
[II]プロピレン系樹脂多層シート各層構成樹脂組成物の製造
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける内層(1)を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)は、上述したプロピレン系樹脂組成物(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)、プロピレン系樹脂(C)、および必要に応じて他の付加的成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
【0089】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける外層(2)を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、上述したプロピレン系樹脂(D)、および必要に応じて他の付加的成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
【0090】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートにおける最内層(3)を構成するプロピレン系樹脂組成物(Z)は、所望の樹脂成分に、必要に応じて他の付加的成分をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
また、上記各成分は同時に混合してもよいし、一部をマスターバッチとした上で、混合混練してもよい。
【0091】
[III]プロピレン系樹脂多層シート
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、上記プロピレン系樹脂組成物を用い公知の方法で製造することができる。例えば、Tダイ、サーキュラーダイを用いた押出成形等の公知の技術によって製造する。
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性、クリーン性に優れ、厚みムラ、界面荒れなどの外観不良による透明性悪化を抑制でき、かつ、ヒートシールなどの二次加工において薄肉化を抑制できるために力学的強度の保持や、低温ヒートシール性に優れるため生産性の向上が図れるため、殺菌や滅菌などの加熱処理工程が必要な加熱処理用包装袋、特に輸液バッグ等に好適である。
【0092】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、加熱処理後も優れた柔軟性を有していることを特徴としており、柔軟性の尺度である引張弾性率が、400MPa以下であることが望ましい。引張弾性率が400MPa以下、好ましくは380MPa以下、更に好ましくは350MPaであると、ごわごわ感がなくなるため、触感が良く、高級感を醸し出すことが出来るという点で非常に優れている。
【0093】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、透明性の尺度である内部ヘイズ(Haze)が加熱処理後で15%以下、好ましくは13%以下、更に好ましくは10%以下であると内容物を明瞭に見せることができ、内容物に異物が入っていないかどうか確認可能であるという点で非常に優れている。
【0094】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、耐衝撃性、とりわけ、例えば−25℃等の極低温での耐衝撃性が優れており、低温衝撃性の尺度である−25℃における衝撃強度試験において5kJ/m以上という優れた耐衝撃性を有し、運搬工程、保存工程などで万が一落としても破袋せず、製品として使用可能であるという点で優れている。
【0095】
また、本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、優れた耐熱性を有しており、121℃前後の加熱処理を行っても変形を起こさないという優れた耐熱性を有している。変形したものは外観が悪く、製品価値が下がってしまい、製品として用いることはできない。
【0096】
また、本発明のプロピレン系樹脂多層シートは優れたクリーン性を有しており、内容物と接する最内層(3)において内容物を汚染する可能性がある低分子量成分、低規則性成分が極めて少ないメタロセン触媒を用いて得られるプロピレン系樹脂組成物を使用することが望ましい。
【実施例】
【0097】
以下において、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例との対照において説明し、本発明の構成の要件の合理性と有意性を実証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性測定法、特性評価法、樹脂材料は以下の通りである。
【0098】
1.樹脂物性の測定方法
(1)MFR:
プロピレン系樹脂組成物(A)、プロピレン系樹脂(C)、プロピレン系樹脂(D)は、JIS K7210 A法 条件Mに従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mmで測定した。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、JIS K7210 A法 条件Dに従い、試験温度:190℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mmで測定した。
(2)密度:
JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定した。
(3)融解ピーク温度:
セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(4)A2のα−オレフィン含量(α[A2]):
赤外吸収スペクトル法により測定した。A2中のα−オレフィン含量は直接得られないので、プロピレン樹脂組成物およびA1のα−オレフィン含量と誘電結合プラズマ発光分光分析(ICP法)によって得られたA2成分の含有量より計算にて求めた。
【0099】
2.多層シートの評価方法
(1)耐熱性:
円筒状になっているプロピレン系樹脂多層シートを流れ方向に210mmの大きさに切り出し、切り出した一方をヒートシール(ヒートシール条件:圧力3.4kgf/cm、時間1.5秒、温度150℃、テスター産業社製ヒートシーラー)して袋状にした。ついで、その中に純水を500ml充填し、もう一辺をインパルスシーラーを用いてヒートシールして密封した。ヒートシールとヒートシールの間の距離は200mmとなるようにシールした。このようにして得られたサンプル袋を、高温高圧調理殺菌試験機(日阪製作所製、RCS−40RTGN型)の中に入れた後、加圧し、121℃まで雰囲気温度を上昇させて、その温度を30分間保持した。その後、約40℃まで冷却し、該サンプル袋を試験機から取り出した。(以下、この殺菌処理をした多層シート(サンプル袋)を加熱処理後多層シートということもある。)
加熱処理後多層シートの耐熱性評価は以下の基準で行った。
×:変形、しわ、内面融着を起こしており、使用不可
○:変形、しわ、内面融着を起こしていないか、ごく僅かであり使用可能なレベル
【0100】
(2)透明性(内部ヘイズ):
加熱処理後積層シートの両面を流動パラフィンによりスライドグラスで密着させ、JIS−K7136−2000に準拠し、ヘイズメータで測定した。得られた値が小さいほど透明性がよいことを意味し、この値が15%以下であると内容物確認しやすく、ディスプレイ効果を得る点で優れており、13%以下が好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0101】
(3)柔軟性(引張弾性率):
JIS K−7127−1989に準拠し、下記の条件にて、加熱処理後積層シートの流れ方向(MD)についての引張弾性率を測定した。得られた値が小さいほど柔軟性に優れていることを意味し、この値が400MPa以下であると触感のよい手触りで高級感を得る点で優れており、380MPa以下が好ましく、350MPa以下が特に好ましい。
サンプル長さ:150mm
サンプル幅:15mm
チャック間距離:100mm
クロスヘッド速度:1mm/min
【0102】
(4)衝撃強度(単位:KJ/m):
東洋精機製フィルムインパクトテスターを用い、単位フィルム厚み当たりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、加熱処理後の積層シートを−25℃の雰囲気下に24時間以上放置し、状態調整を行った後、−25℃にて試験フィルムを直径50mmのホルダーに固定し、25.4mmφの半球型の金属貫通部を打撃させ、貫通破壊に要した仕事量(KJ)から、そのフィルムの衝撃に対する脆さを測定した。
【0103】
(5)累積落体試験(単位:cm):
二次加工適性の指標として累積落体試験を実施した。二次加工(ヒートシール)時に、積層シートのシール部の厚みが薄くなると、シールぎわの部分の強度が特に低下するため、水を詰めた状態の積層シートを落としたとき、シールぎわの部分から破袋しやすくなる。
前述の耐熱性評価と同様にヒートシール温度150℃でヒートシールしたヒートシール成形体について、以下の耐衝撃性試験(累積落袋試験)を行った。
水を詰めたままの加熱処理後多層シートを4℃で48時間状態調整後、その温度で50cmから鉄板の上に2回落とし、破袋しなければ100cmから2回落とし、それでも破袋しなければ150cmから2回、それでも破袋しなければ200cmから2回落下させ評価した。100cmから落としても破袋しないことが望ましく、好ましくは150cmから落としても破袋せず、より好ましくは200cmから落としても破袋しないものである。破袋を起こさない最高の高さを二次加工適性の指標とした。
【0104】
3.使用樹脂
(1)内層用プロピレン系樹脂組成物(A)
下記の製造例(A−1)〜(A−12)により逐次重合で得られたプロピレン系樹脂組成物(A−1)〜(A−12)を用いた。
【0105】
(製造例A−1)
1)オレフィン重合触媒の調整
窒素置換したガラスフラスコ中に四塩化チタン60mlおよびトルエン40mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、平均粒径42μmのジエトキシマグネシウム20g、トルエン100mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル7.2mlを用いて別途調製した懸濁液を、10℃の液温に保持した前記混合溶液中に添加した。その後、10℃から90℃まで80分かけて昇温し、攪拌しながら2時間反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン200mlで4回洗浄して、新たに四塩化チタン60mlおよびトルエン140mlを加え、112℃に昇温し、攪拌しながら更に2時間反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を40℃のn−ヘプタン200mlで10回洗浄して、オレフィン重合触媒(A−1)を得た。得られたオレフィン重合触媒の平均粒径は42μmであり、その組成は、Mg;18.9重量%、Ti;2.2重量%、Cl;61.6重量%であった。
【0106】
2)ポリオレフィン重合触媒成分の予備活性化処理
内容積20リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換した後、ヘキサン17.7リットル、トリエチルアルミニウム100.6mmol、ジイソプロピルジメトキシシラン15.1mmol、前項で調整したポリオレフィン重合触媒(A−1)120.4gを室温で加えた後、30℃まで加温した。次いで、攪拌しながらプロピレン240.8gを3時間かけて供給し、予備活性化処理を行った。分析の結果、オレフィン重合触媒1g当たりプロピレン1.9gが反応していた。
3)第1重合工程
攪拌羽根を有する横形重合器(L/D=6、内容積100リットル)に上記予備活性化処理したオレフィン重合触媒を0.4g/hr、有機アルミ化合物としてトリエチルアルミニウムおよび有機ケイ素化合物としてジイソプロピルジメトキシシランを、Al/Mgモル比が6、Al/Siモル比が3となるよう重合器上流部へ連続的に供給した。反応温度60℃、反応圧力2.1MPa、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、エチレン−プロピレンの混合ガスおよび分子量調節剤として水素を連続供給した。得られた生成ポリマー(A1)のエチレン含量およびMFRを表1に示す。
【0107】
生成したプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A1)は、重合体の保有レベルが反応容積の45容量%となる様に重合器下流部より連続的に抜き出し、第2重合工程の反応器に供給した。この時、配管プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A1)の一部を間欠的に採取して、エチレン含有量、MFRおよび触媒単位重量当たりの重合体収量を測定する試料とした。触媒単位重量当たりの重合体収量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP法)により測定した重合体中のMg含有量から算出した。
【0108】
4)第2重合工程
攪拌羽根を有する横形重合器(L/D=6、内容積100リットル)に第1重合工程からのプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A1)、およびエチレン−プロピレン混合ガスを連続的に供給し、エチレンとプロピレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度25rpm、温度55℃、圧力1.9MPaで行った。プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)の重合量を調節するための重合活性抑制剤として一酸化炭素、およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)の分子量を調節するための水素ガスをそれぞれ供給した。
【0109】
第2重合工程で生成したプロピレン系樹脂は、重合体の保有レベルが反応容積の60容量%となる様に重合器下流部から連続的に抜き出した。
プロピレン系樹脂の生産速度は10〜16kg/hrであった。
【0110】
抜き出されたプロピレン系樹脂は未反応モノマーを除去し、一部はMFRの測定、融点の測定、および赤外線吸収スペクトル分析によるエチレン含有量の測定、ならびにICP法による重合体中のMg含量の測定による共重合体(A2)の生成量の測定に供した。
こうして得られたプロピレン系樹脂(A−1)の各種分析結果を、表1に示す。
【0111】
5)造粒
更に得られたプロピレン系樹脂(A−1)100重量部に対し、下記酸化防止剤1を0.05重量部、下記酸化防止剤2を0.05重量部および中和剤を0.02重量部添加し、充分に撹拌混合し、スクリュ口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュ回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでプロピレン系樹脂組成物(A−1)を得た。
酸化防止剤1:
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 イルガノックス1010)
酸化防止剤2:
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 イルガホス168)
中和剤:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製 DHT−4A)
【0112】
[製造例(A−2)〜(A−7)]
重合条件を適宜変更した以外は製造例(A−1)と同様の製法で触媒調整、重合、分析および造粒を行った。
得られたプロピレン系樹脂組成物(A−2)〜(A−7)の各種分析結果を表1に示す。これらは成分(A)として本発明の要件を全て満たすものである。
【0113】
[製造例(A−8)〜(A−12)]
重合条件を適宜変更した以外は製造例(A−1)と同様の製法で触媒調整、重合、分析および造粒を行った。
得られたプロピレン系樹脂組成物(A−8)〜(A−12)の各種分析結果を表1に示す。これらは成分(A)として本発明の要件を満たさないものである。
【0114】
【表1】

【0115】
(2)内層用エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
下記の製造例(B−1)により得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(B−1)、下記の市販品(B−2)および(B−3)を用いた。
【0116】
[製造例(B−1)]
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造した。触媒の調製は、特表平7−508545号公報(触媒系の調製)に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように供給し、反応器内の圧力を130MPaに保ち、127℃で反応を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.5kgであった。
【0117】
得られたポリマー100重量部に対し、下記酸化防止剤1を0.05重量部、下記酸化防止剤2を0.05重量部添加し、充分に撹拌混合し、スクリュ口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュ回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度180℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでエチレン−ヘキセン共重合体(B−1)組成物を得た。
酸化防止剤1:
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 イルガノックス1010)
酸化防止剤2:
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 イルガホス168)
得られたエチレン−ヘキセン共重合体(B−1)組成物のMFRは、2.2、密度は、0.898であった。
【0118】
(B−2):メタロセン触媒によるエチレン−1−オクテン共重合体
「アフィニティEG8200G」(商品名、ダウケミカルジャパン(株)製)
(B−3):メタロセン触媒によるエチレン−1−ヘキセン共重合体
「カーネルKF380」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)
これら樹脂のMFRおよびTm(B)を表2に示す。このうち(B−3)は、成分(B)としての本発明の要件を満たさないものである。
【0119】
【表2】

【0120】
(3)内層用プロピレン系樹脂(C)
以下の市販品のポリプロピレン樹脂(チーグラー触媒による)を使用した。
(C−1)日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3」
(プロピレン単独重合体)
(C−2)日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP FY6H」
(プロピレン単独重合体)
(C−3)日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP F203T」
(プロピレン単独重合体)
(C−4)日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MG3F」
(プロピレン−エチレンランダム共重合体)
(C−5)日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP SA06A」
(プロピレン単独重合体)
これら樹脂のMFRおよびTm(C)を表3に示す。このうち(C−4)および(C−5)は、成分(C)としての本発明の要件を満たさないものである。
【0121】
【表3】

【0122】
(4)外層用プロピレン系樹脂(D)
下記の市販のプロピレン系樹脂を用いた。
(D−1):日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3」
(チーグラー触媒によって製造されたプロピレン単独重合体)
(D−2):日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3U」
(チーグラー触媒によって製造されたプロピレン単独重合体)
(D−3):日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP FY6」
(チーグラー触媒によって製造されたプロピレン単独重合体)
(D−4):日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA1B」
(チーグラー触媒によって製造されたプロピレン単独重合体)
(D−5):日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP F203T」
(チーグラー触媒によって製造されたプロピレン単独重合体)
(D−6):日本ポリプロ社製商品名「WINTEC WFW4」
(メタロセン触媒によって製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体
これら樹脂のMFRおよびTm(D)を表4に示す。このうち(D−6)は、成分(D)としての本発明の要件を満たさないものである。
【0123】
【表4】

【0124】
(5)最内層用プロピレン系樹脂組成物(Z)
市販のプロピレン系樹脂等を用い、以下のプロピレン系樹脂組成物(Z−1)〜(Z−3)を使用した。
(Z−1):
上記(D−6)のプロピレン−エチレンランダム共重合体「WINTEC WFW4」80wt%と、前記(B−1)のエチレン−ヘキセン共重合体20wt%からなる組成物。
(Z−2):
前記(A−3)のプロピレン系樹脂組成物75wt%、前記(B−1)のエチレン−ヘキセン共重合体20wt%および前記(C−1)のポリプロピレン樹脂「ノバテックPP MA3」5wt%からなる組成物。
(Z−3):
上記(D−6)のプロピレン−エチレンランダム共重合体「WINTEC WFW4」80wt%と、クレイトンポリマージャパン社製商品名「クレイトンG1657」(SEBS系エラストマー)20wt%からなる組成物。
【0125】
(実施例1〜11)
以下の表5および表6に記載された各層用の原料ペレットを、表に記載の比率にて、内層用押出機として、口径50mmの単軸押出機、外層用および最内層用押出機として、口径40mmの単軸押出機を用い、マンドレル口径100mm、Lip幅3.0mmのサーキュラーダイから設定温度200℃にて押出し、水冷して、10m/minの速度で、折り幅200mmとなるように、水冷インフレーション成形を行い、表に記載の層構成の総厚み200μmの筒状成形体を得た。
次に、得られた積層シートからなる筒状成形体を上述の方法で加熱処理を行った後に23℃、50%RHの雰囲気下において24時間以上状態調整した後、積層シートの物性を評価した。評価結果を以下の表5および表6に示す。
本発明の構成を満たす積層シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性、外観および二次加工適正に優れるものであった。
【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
(比較例1〜5)
以下の表7に記載の成分を用いた以外は、上記実施例と同様にして、積層シートを得た。
評価結果を以下の表7に示す。
比較例1は、成分(A)における融解ピーク温度(Tm(A1))が高すぎ、積層体の柔軟性が悪かった。比較例2は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)量が多すぎ、積層体の柔軟性と耐衝撃性が悪かった。
比較例3は、成分(A)のα−オレフィン含有量(α[A2])が高すぎ、剛性と透明性が悪かった。比較例4は、成分(A)のMFRが低すぎ、外観不良を起こした。さらに、比較例5は、成分(A)のMFRが高すぎ、安定な成形ができなかった。
【0129】
【表7】

【0130】
(実施例12〜14、比較例6〜9)
以下の表8に記載の成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
評価結果を以下の表8に示す。
【0131】
【表8】

【0132】
各実施例の積層シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性、外観および二次加工適正に優れるものであった。
一方、比較例6では、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度が高すぎ、耐衝撃性が悪かった。比較例7は、成分(B)の添加がないので耐衝撃性が不足する。比較例8では、成分(B)の配合量が少なすぎ、耐衝撃性が不足している。さらに、比較例9では、成分(B)の配合量が多すぎ、加熱処理(滅菌)時に変形が生じている。
【0133】
(実施例15〜18、比較例10〜13)
以下の表9に記載の成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
評価結果を以下の表9に示す。
【0134】
【表9】

【0135】
各実施例の積層シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性、外観および二次加工適正に優れるものであった。
一方、比較例10では、プロピレン系樹脂(C)の融解ピーク温度(Tm(C))が低すぎ、薄肉化抑制が困難であった。比較例11は、成分(C)のMFRが高すぎ成形が不安定であった。比較例12では、成分(C)の配合量が多すぎ、柔軟性と透明性が悪い。さらに、比較例13では、成分(C)を配合しなかったので薄肉化抑制が困難である。
【0136】
(実施例19〜23、比較例14〜15)
以下の表10に記載の成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
評価結果を以下の表10に示す。
【0137】
【表10】

【0138】
各実施例の積層シートは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐衝撃性、外観および二次加工適正に優れるものであった。
一方、比較例14では、外層用のプロピレン系樹脂組成物(Y)の融解ピーク温度Tm(D)が低すぎ、ヒートシールバーに張り付いてしまったため、二次加工適性に劣るものであった。また、比較例15は、成分(D)として、内層と同じ樹脂組成物(融解ピーク温度は142℃)を用い、Tm(D)が低すぎてヒートシールバーに張り付いてしまったため、二次加工適性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のプロピレン系樹脂多層シートは、柔軟性、透明性、耐熱性、低温耐衝撃性、低温ヒートシール性に優れ、多層成形時に界面荒れ等の外観不良、厚み変動が発生しにくいといった二次加工適正に富み、過酷なヒートシール条件においても、溶融樹脂が流れ、薄肉化する現象が生じにくいために、破袋強度に優れるプロピレン系樹脂多層シートであり、それを用いた加熱処理用包装袋は、輸液バッグやレトルト包装袋用途に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層および外層の少なくとも2層からなる多層シートであり、各層が下記の条件を満たすことを特徴とするプロピレン系樹脂多層シート。
(1)内層
内層を構成するプロピレン系樹脂組成物(X)は、下記条件(A−i)〜(A−ii)を満たすプロピレン系樹脂組成物(A)40〜89wt%、下記条件(B−i)〜(B−ii)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(B)10〜40wt%、および下記条件(C−i)〜(C−ii)を満たすプロピレン系樹脂(C)1〜20wt%を含有する。
・プロピレン系樹脂組成物(A):
(A−i)プロピレン系樹脂組成物(A)は、融解ピーク温度(Tm(A1))が120〜150℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)30〜70wt%、炭素数2及び又は4〜8のα−オレフィン含有量(α[A2])が10wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)70〜30wt%を含有する。
(A−ii)メルトフローレート(MFR(A):230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
・エチレン−α−オレフィン共重合体(B):
(B−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
(B−ii)メルトフローレート(MFR(B):190℃、2.16kg)が0.1〜20g/10分の範囲である。
・プロピレン系樹脂(C):
(C−i)融解ピーク温度(Tm(C))が、150℃を超え、170℃以下である。
(C−ii)メルトフローレート(MFR(C):230℃、2.16kg)が0.5〜30g/10分の範囲である。
(2)外層
外層を構成するプロピレン系樹脂組成物(Y)は、融解ピーク温度(Tm(D))が150〜170℃の範囲であるプロピレン系樹脂(D)を含有する。
【請求項2】
プロピレン系樹脂組成物(A)が、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂多層シート。
【請求項3】
プロピレン系樹脂組成物(A)のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)が、逐次重合することで得られるものであって、
第1工程でプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を30〜70wt%、第2工程でα−オレフィン含有量(α[A2])が10wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を70〜30wt%逐次重合したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂多層シート。
【請求項4】
プロピレン系樹脂組成物(A)のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)が、逐次重合することで得られるものであって、
第1工程でプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A1)を30〜70wt%、第2工程でα−オレフィン含有量(α[A2])が14wt%を超え、30wt%以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)を70〜30wt%逐次重合したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂多層シート。
【請求項5】
さらに最内層を、外層、内層、最内層の順で有する少なくとも3層からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン系樹脂多層シート。
【請求項6】
プロピレン系樹脂組成物(A)におけるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)がプロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプロピレン系樹脂多層シート。
【請求項7】
プロピレン系樹脂組成物(A)におけるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A1)がプロピレン−エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプロピレン系樹脂多層シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂多層シートを用いることを特徴とする加熱処理用包装体。
【請求項9】
加熱処理用包装体が輸液バックであることを特徴とする請求項8に記載の加熱処理用包装体。

【公開番号】特開2012−81745(P2012−81745A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195752(P2011−195752)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】