説明

プロポフォールの水溶性プロドラッグの水ベースの薬学的製剤

【課題】プロポフォールの水溶性プロドラッグの水ベースの薬学的製剤の提供。
【解決手段】水性媒体中に、プロポフォールの有効量の水溶性プロドラッグ及び有効量の抗酸化剤を含む、薬学的製剤。本製剤はまた、張性調節剤、緩衝剤を含む。本製剤は特に、静脈注射剤として有用である。好ましくは本製剤は、貯蔵中にプロドラッグの分解を最小限にするのに適したpHまで緩衝される。本製剤は、有害な共溶媒または界面活性剤の使用なしに調製され得るので、長期間室温で安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)条の下で、全体にわたってその開示が参照として組み入れられる、2001年12月18日に出願された米国特許仮出願第60/342,755号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、プロポフォールの水溶性プロドラッグの水ベースの製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
患者への医薬送達に成功することは、病気の治療に非常に重要である。しかし、周知の生理活性をもつ多くの臨床薬物の水溶性が非常に低いため、それらの使用は制限されている。低い水溶性の結果として、多くの薬物が、界面活性剤を含む共溶媒性(co-solvent)薬学的媒体中で製剤化されることが多い。そのような界面活性剤により、これら薬物の臨床的安全性を制限し、かつしたがっていくつかの病気の治療を制限するような深刻な副作用がヒトにおいて導かれることが示されてきた。
【0004】
プロポフォール(2,6-ジイソプロピルフェノールまたはDIP)は低分子量のフェノール誘導体であり、ヒト及び動物における麻酔または鎮静の導入及び維持において、静脈内投与用の催眠薬または鎮静剤として広く使用されている。麻酔剤としてのその有用な特徴の中には、静脈経路を通じた投与、麻酔作用の迅速な開始及び終了、迅速なクリアランス、ならびに、(バルビツール剤のような他の注射可能麻酔剤よりも好ましい)副作用的側面がある。
【0005】
全身麻酔の導入と維持における、一般的な注射可能麻酔剤の使用及び特にプロポフォールの使用は、過去15年間にわたって麻酔医療において広く受け入れられてきた。プロポフォールによる静脈内麻酔は、マスク、窒息、または揮発性麻酔剤の強烈な臭いの恐怖を患者が感じる必要がないので導入がより容易に許容されること、迅速かつ予測可能に回復すること、プロポフォールのIV用量を調節することにより麻酔の深さを容易に調節できること、吸入麻酔と比べて有害反応の発生が少ないこと、ならびに、麻酔から回復する際の不快な気分、吐き気及び嘔吐が少ないなどの、既存の方法よりも有利な点をいくつか有すると述べられてきた(Padfield NL編、Total Intravenous Anesthesia、Butterworth Heinemann、Oxford 2000内、Padfield N.L.、Introduction、History and Development:非特許文献1)。
【0006】
その鎮静作用及び麻酔作用に加えて、プロポフォールは、他の生物学的及び医学的な用途範囲を有する。例えば、制吐剤である(McCollum JSCら、Anesthesia 43(1988) 239:非特許文献2)、抗てんかん薬である(Chilvers C.R.、Laurie P.S.、Anesthesia 45(1990) 995:非特許文献3)、および止痒剤である(Borgeatら、Anesthesiology 76(1992)510:非特許文献4)と報告されている。制吐作用及び止痒作用は、亜催眠性(sub-hypnotic)用量において、すなわち鎮静または麻酔のために必要な濃度よりも低いプロポフォール血漿濃度を達成するような用量において、典型的に観察される。一方、抗てんかん活性はより広い範囲の血漿濃度において観察される(Borgeatら、Anesthesiology 80(1994) 642:非特許文献5)。さらに、生物系における抗酸化特性を有するので、プロポフォールは、炎症性状態、特に呼吸系成分を有する炎症性状態の治療において、及び、神経変性または心的外傷に関連した神経損傷の治療において有用でありうることが考察されてきた。そのような状態は、反応性の酸素種の発生と関連しており、かつそれゆえ抗酸化剤による治療の影響を受けやすいと考えられている(例えば、Hendlerらに付与された、米国特許第6,254,853号:特許文献1参照)。
【0007】
プロポフォールは一般的に、水中油型エマルジョンとして臨床用途のために製剤化されている。製剤の貯蔵寿命は限られておりかつ細菌または菌類の混入に感受性であることが示されているが、これは、手術後の感染例をもたらす(Bennett S.N.ら、N Eng. J Med 333(1995) 147:非特許文献6)。製剤が濃白色であるために、バイアルの視覚的観察によってまず細菌または菌類の混入を検出することができない。
【0008】
プロポフォールは水溶性が低いのみならず、注射位置において痛みを生じるが、これは局所麻酔剤を使用することにより軽減されることが多い(N. Padfield編、Total Intravenous Anesthesia、Butterworth Heinemann、Oxford 2000内、Dolin S.J.、Drugs and Pharmacology:非特許文献7)。脂質エマルジョン中での製剤化のため、その静脈内投与はまた、患者、特に長期注入を受けている患者において、望ましくない高トリグリセリド血症(hypertriglyceridemia)と関連する(Fulton B.及びSorkin E.M.、Drugs 50(1995) 636:非特許文献8)。脂質エマルジョンとしての製剤化によりさらに、他のIV薬物との共投与が難しくなる。油滴の大きさの変更のような製剤への物理的変化のいずれも、薬物の薬理学的性質の変化を生じ、かつ肺塞栓症などの副作用を生じうる。
【0009】
さらに、これまで麻酔の導入におけるプロポフォールの使用は無呼吸の有意な発生率に関連すると報告されてきており、これは、用量、注射速度、および前投薬に依存すると考えられている(R.D.Millerら編、Anesthesia. 第5版、Churchill Livingstone、Philadelphia、2000内、Reves, J.G.、Glass P.S.A.、Lubarsky D.A.、Nonbarbiturate Intravenous Anesthetics:非特許文献9)。麻酔導入量のプロポフォールの投与による、一回呼吸量の減少及び無呼吸を含む呼吸的結果は、患者の最大83%において起こる(Brysonら、Drugs 50(1995) の520:非特許文献10)。導入用量のプロポフォールはまた、用量及び血漿濃度に依存する顕著な血圧降下作用を示すことが知られてきた(Revesら、前記:非特許文献9)。プロポフォールの急速な大量注射後の血漿レベルのピークと関連した血圧降下には、制御された注入ポンプの使用が、または、大量導入用量をいくつかのより少ない漸増的用量に分けることが必要な場合がある。さらに、大量導入用量により起こる無意識期間の短さのために、プロポフォールは、短い医療処置のみに適したものとなる。上記のすべての理由のために、麻酔の導入及び/または維持のためのプロポフォールは、通常、麻酔医の監督下に置かれた入院患者に投与されなければならず、かつ、移動性のまたは日常の環境における非麻酔医による使用には不適当であると考えられることが多い。
【0010】
麻酔の導入及び維持における使用に加えて、意識ある患者の局所麻酔または部分麻酔に付随して、鎮静剤としてのプロポフォールの使用が成功している。その鎮静効果は、また、結腸内視術または画像化処置のような、意識ある患者に対する動揺効果を持つ診断処置において活用されてきた。プロポフォールは、また、診断画像化処置または放射線療法を受ける子供において、鎮静剤として使用されてきた。プロポフォールを用いた、患者の制御による(patient-controlled)鎮静が、最近の開発された。この技術は患者により好まれ、麻酔医の投与による鎮静と同じくらい効果的である。
【0011】
広く使われている、鎮静作用を持つミダゾラムまたは他のそのような薬剤と比較して、プロポフォールは、鎮静の質及び/または患者が十分な鎮静レベルにある期間を計ったところ、類似したまたはより優れた鎮静効果を提供した(Fulton B.及びSorkin E.M.、 Drugs 50(1995) 636:非特許文献8参照)。プロポフォールに付随する回復がより速いこと及び健忘が同程度またはより少ないことにより、特にほんの短期間の鎮静を必要としている患者にとっては、プロポフォールは他の鎮静剤の魅力的な代替物となる。しかしながら、現在のプロポフォール製剤に付随する高脂血症の可能性、及び鎮静効果に対する耐性の発生のために、より長期間の鎮静を必要とする患者にとってのプロポフォールの有用性はまだ十分確立されていない。上記に述べたすべての理由により、安全な、注射可能な、または不溶解性の、鎮静剤または催眠剤の、安定な水性製剤の臨床的必要性が存在する。
【0012】
Stellaらによる米国特許第6,204,257号:特許文献2に述べられた、プロポフォールの安定な水溶性プロドラッグの開発によって、今までまだ検討されていないこれらの必要性に取り組むこと、ならびに、患者の鎮静及び麻酔の導入及び維持における水性プロポフォールプロドラッグの薬学的長所を探求することが可能になる。本発明のプロドラッグは、プロポフォールの1-ヒドロキシ基をホスホノオキシメチルエーテル基で置き換えた点で、プロポフォールと異なっている。

理論に束縛されるわけではないが、プロドラッグは、内皮細胞表面のアルカリホスファターゼにより加水分解を受けて、プロポフォールを放出すると考えられる。
【0013】
現在、プロポフォールは、水中油型エマルジョンとして製剤化されている。例えば、Georgeらによる米国特許第6,177,477号:特許文献3は、プロポフォールを水不混和性の溶媒に溶かし、保存剤としてトロメタミンを含む水で乳状化した、水中油型エマルジョンを含む、非経口投与のためのプロポフォールの無菌薬学的組成物を説明している。保存剤は、外因性汚染において少なくとも24時間、微生物の任意の有意な成長を妨げるのに十分な量存在させるべきと言われている。プロポフォールはエマルジョンとして製剤化されているため、油滴サイズの増大などの製剤への物理的変化は肺塞栓症や他の合併症を導く可能性があるので、他の薬物を製剤に加えることは困難でありかつ問題がある。
【0014】
プロポフォールの水溶性プロドラッグ用の室温で安定な水ベースの製剤、特に、潜在的に有害な共溶媒をまたは界面活性剤の使用を必要としない製剤の開発が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,254,853号
【特許文献2】米国特許第6,204,257号
【特許文献3】米国特許第6,177,477号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Padfield NL編、Total Intravenous Anesthesia、Butterworth Heinemann、Oxford 2000内、Padfield N.L.、Introduction、History and Development
【非特許文献2】McCollum JSCら、Anesthesia 43(1988) 239
【非特許文献3】Chilvers C.R.、Laurie P.S.、Anesthesia 45(1990) 995
【非特許文献4】Borgeatら、Anesthesiology 76(1992) 510
【非特許文献5】Borgeatら、Anesthesiology 80(1994) 642
【非特許文献6】Bennett S.N.ら、N Eng. J Med 333(1995) 147
【非特許文献7】N. Padfield編、Total Intravenous Anesthesia、Butterworth Heinemann、Oxford 2000内、Dolin S.J.、Drugs and Pharmacology
【非特許文献8】Fulton B.及びSorkin E.M.、Drugs 50(1995) 636
【非特許文献9】R.D.Millerら編、Anesthesia. 第5版、Churchill Livingstone、Philadelphia、2000内、Reves, J.G.、Glass P.S.A.、Lubarsky D.A.、Nonbarbiturate Intravenous Anesthetics
【非特許文献10】Brysonら、Drugs 50(1995) の520
【発明の概要】
【0017】
本発明は、プロポフォールの水溶性プロドラッグの水ベースの薬学的製剤を目的としたものである。本薬学的製剤は、水性媒体中に、治療的有効量の、式I

(式中、Zはそれぞれ独立して、水素、アルカリ金属イオン、及びアミンからなる群より選択される)で表される化合物及び有効量の抗酸化剤を含む。本薬学的製剤は、また、張性調節剤及び/または緩衝剤のような他の成分を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の別の態様によれば、水ベースの製剤は、式Iの化合物、抗酸化剤、及び任意で緩衝剤を、有効量含む。本製剤中に存在する式Iの化合物の量は、その張性、すなわち重量オスモル濃度が通常の生理学的体液と本質的に同じになるような量である。
【0019】
本発明の好ましい製剤は、特に静脈注射剤として有用である。本製剤は、好ましくは、貯蔵中のプロドラッグの分解を最小限にするのに適したpHまで緩衝剤される。本製剤は、有害な共溶媒または界面活性剤を使用することなく調製されうり、長期間室温で安定である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の薬学的製剤は、式I

(式中、Zはそれぞれ独立して、水素、アルカリ金属イオン、及びアミンからなる群より選択される)で表される治療的有効量の水溶性プロドラッグ、及び有効量の抗酸化剤を水性媒体に含む。水ベースの製剤は、また、張性調節剤及び/または緩衝剤のような他の成分を含んでいてもよい。
【0021】
式Iの誘導体を合成する方法は、米国特許第6,204,257号B1に述べられており、その開示は本明細書においてその全体が参照として組み入れられる。式Iの化合物の代表例は、O-ホスホノオキシメチルプロポフォールであり、その構造を下記に示す。

【0022】
本製剤におけるプロドラッグの相対量は、プロドラッグが何であるか、治療される特定の疾患に対する親薬の生体活性、及び、意図される投与様式を含むがこれに限定されない、さまざまな因子に依存して、広い範囲で変化しうる。本製剤におけるプロドラッグの相対量は、約0.5%(w/v)〜約20%(w/v)で変化することが最も多く、より通常は約1%〜約10%で変化する。
【0023】
十分高純度の水のような、薬学的に許容される任意の水性媒体が、本発明の製剤に用いられうる。
【0024】
抗酸化剤は、プロドラッグが非常に水に溶けにくい(poor water-soluble)化合物に酸化分解されるのを妨げる、または軽減する。プロドラッグは、水性の加水分解によって、または血液中での酵素的過程によって、DIPに変換されると考えられている。DIPは順番に、酸化過程により、関連物質であるキノン及びヒドロキノンに変換される。DIP、キノン、及びヒドロキノンの三つはすべて、非常に水に溶けにくい。低い濃度であっても、これらの化合物は溶液に黄色い色を与えるので、水ベースの製剤中の非常に水に溶けにくい化合物の形成または存在を最小限にすることが望ましい。時間がたつと、溶液がにごり、最終的に粒子が形成する。
【0025】
抗酸化剤は、水溶性プロドラッグの酸化分解をある程度減らすような最少量で少なくとも存在すべきである。特定の最大濃度が意図されるわけではない。水性製剤における抗酸化剤の濃度は、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の範囲内であることが最も多い。製造中、溶液は、製剤に溶解している酸素レベルを下げるために、窒素でスパージされ(spage)うり、これはまた、酸化分解に対して保護を提供する。
【0026】
本発明の製剤中で、さまざまな抗酸化剤が使用されうる。使用される特定の抗酸化剤は、製剤中に存在する特定のプロドラッグのような因子に応じて、適切に選択されうる。非限定的抗酸化剤の例は、モノチオグリセロール、グルタチオン、クエン酸、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウムを含む。EDTA、金属キレート化剤は、フェノールの触媒酸化からの保護を提供する。
【0027】
好ましい製剤は非経口投与用に意図されているので、組成物と生理学的体液の間の差次的イオン濃度による投与後の膨張または組成物の急速な吸収を避けるために、張性すなわち重量オスモル濃度が通常の生理学的体液と本質的に同じになるように溶液を形成することが好ましい。もし必要ならば、張性調節剤を、通常の実験法以上の助けを借りずに、当業者により確かめられうる適切な量で存在させる。使用する場合には、使用される張性調節剤の量は、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の範囲であることが最も多い。使用される特定の張性調節剤は、本発明の実施に不可欠ではない。適切な張性調節剤の非限定的な例は、塩化ナトリウム、グリセリン、ホウ酸、塩化カルシウム、デキストロース、及び塩化カリウムを含む。
【0028】
本製剤のpHは、好ましくは、室温での製剤の長期安定性を提供するように維持される。ほとんどの場合、適切なpHは、約7〜約10であり、好ましくは少なくとも約8.5である。溶液は、pH7-10の範囲で有効的な任意の標準的緩衝剤、例えばカルボネート、ホスフェート、ボレート、またはグリシンを用いて緩衝されうる。一つの好ましい緩衝剤はトロメタミン(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)であり、通常TRISと呼ばれる。この目的に必要な緩衝剤の量は、約10mmol〜約25mmolの範囲内であることが最も多い。
【0029】
本製剤中には他の成分が存在しうる。例えば、多用量(multi-dose)バイアルの場合、ベンジルアルコールのような保存剤が含まれうる。本製剤はまた、ポリエチレングリコール(PEG 200、PEG 400)、プロピレングリコール、及び/またはエタノールのような共溶媒を含みうる。共溶媒の濃度は広い範囲で変化することができ、0%〜約20%であることが最も多い。
【0030】
本発明の製剤は、任意の適切な投与経路を介して投与されうる。静脈注射のための製剤は、例えばガラスバイアル中、あらかじめ充填された注射器中、またはアンプル中などに封入することができる。本製剤は、標準IV希釈溶液、たとえばD5W、標準生理食塩水、または乳酸リンゲル液と共に投与されうる。
【0031】
適切な用量は、プロドラッグが何であるか、および治療されている疾患の種類などの因子に依存して決められる。用量は、例えば、約0.1mg/kg〜約100mg/kg体重、または約5mg/ml〜500mg/mlの範囲でありうる。当業者には明らかなように、用量の決定において、年齢、性別、食事、及び患者の体の状態を含む、薬物作用を変更する多くの因子が考慮される。
【0032】
プロポフォールプロドラッグを投与するために、麻酔の当業者である麻酔医は、過度の試行なしに、本発明の製剤の投与のための適切な治療プロトコールを確実にすることができると考えられる。用量、投与の方法、及びスケジュールは特に制限されす、かつ特定の適用により変化されうる。本製剤は、非経口で投与されうる。用量は、例えば、全身麻酔の導入方法または全身麻酔の維持方法に従って、0.5mg/kg〜10mg/kgの範囲で投与されうる。または、製剤は、非経口注入により投与されうり、用量は、例えば、全身麻酔の維持、MAC鎮静の開始及び維持、またはICU鎮静の開始及び維持の方法に従って投与される、2μg/kg/分〜800μg/kg/分の範囲でありうる。
【実施例】
【0033】
下記の実施例は、本発明を説明するために提供されるものであり、本明細書中の他の箇所で述べられた本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。
【0034】
実施例1
本実施例は、プロポフォールの水溶性プロドラッグであるO-ホスホノオキシメチルプロポフォールの2%溶液の調製を説明する。水ベースの製剤は、下記の表1に示された組成を有する。
【0035】
【表1】

【0036】
塩化ナトリウム(28g)を水7lに加え、溶けるまで攪拌した。次に、TRIS(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)(20mmol)を攪拌しながら加えた。その後、溶液を窒素ガスでスパージした。その後、モノチオグリセロール(35g)を攪拌しながら加えた。O-ホスホノオキシメチルプロポフォール(140g)を加え、溶けるまで溶液を攪拌した。溶液をろ過してバイアルに注いだ。
【0037】
実施例2
本実施例は、O-ホスホノオキシメチルプロポフォールの4%溶液の調製を説明する。水ベースの製剤は、下記の表2に示された組成を有する。
【0038】
【表2】

【0039】
TRIS(20mmol)を7lの水に攪拌しながら加えた。その後、溶液を窒素ガスでスパージした。その後、モノチオグリセロール(17.5g)を攪拌しながら加えた。O-ホスホノオキシメチルプロポフォール(280g)を加え、溶けるまで溶液を攪拌した。溶液をろ過してバイアルに注いだ。
【0040】
実施例3
本実施例は、下記の表3に示された組成を有する、O-ホスホノオキシメチルプロポフォールの2%溶液の調製を説明する。
【0041】
【表3】

【0042】
塩化ナトリウム(28g)を水7lに加え、溶けるまで攪拌した。次に、カルボネート緩衝液(20mmol)を攪拌しながら加えた。その後、溶液を窒素ガスでスパージした。その後、モノチオグリセロール(35g)を攪拌しながら加えた。O-ホスホノオキシメチルプロポフォール(140g)を加え、溶けるまで溶液を攪拌した。溶液をろ過してバイアルに注いだ。
【0043】
実施例4
本実施例は、下記の表4に示された組成を有する、O-ホスホノオキシメチルプロポフォールの非緩衝2%溶液の調製を説明する。
【0044】
【表4】

【0045】
塩化ナトリウム(28g)を水7lに加え、溶けるまで攪拌した。その後、溶液を窒素ガスでスパージした。その後、モノチオグリセロール(35g)を攪拌しながら加えた。O-ホスホノオキシメチルプロポフォール(140g)を加え、溶けるまで溶液を攪拌した。溶液をろ過してバイアルに注いだ。
【0046】
実施例5
本実施例は、抗酸化剤としての0.1%亜硫酸ナトリウムを用いて、O-ホスホノオキシメチルプロポフォールの2%溶液を調製できることを説明する。水ベースの製剤は、下記の表5に示された組成を有する。
【0047】
【表5】

【0048】
塩化ナトリウム(28g)を水7lに加え、溶けるまで攪拌した。次に、TRIS(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)(20mmol)を攪拌しながら加えた。その後、溶液を窒素ガスでスパージした。その後、亜硫酸ナトリウム(7g)を攪拌しながら加えた。O-ホスホノオキシメチルプロポフォール(140g)を加え、溶けるまで溶液を攪拌した。溶液をろ過してバイアルに注いだ。
【0049】
本発明の特定の態様が述べられ、説明されたが、当業者による修正が加えられうるので、本発明はそれに限定されないことが理解されるべきである。本出願は、本明細書中で開示されかつ主張される根底の発明の精神及び範囲内における、任意の及びすべての修正を意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記式

(式中、Zはそれぞれ独立して、水素、アルカリ金属イオン、及びアミンからなる群より選択される)
で表される、治療的有効量の化合物;及び
(ii)有効量の抗酸化剤
を水性媒体中に含む、薬学的製剤。
【請求項2】
抗酸化剤が、モノチオグリセロール、グルタチオン、クエン酸、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及びEDTAからなる群より選択される、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
抗酸化剤の濃度が、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)である、請求項2記載の製剤。
【請求項4】
張性調節剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
張性調節剤が、塩化ナトリウム、グリセリン、ホウ酸、塩化カルシウム、デキストロース、及び塩化カリウムからなる群より選択される、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
張性調節剤の濃度が、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)である、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
緩衝剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項8】
緩衝剤が2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールである、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
(i) 治療的有効量のO-ホスホノオキシメチルプロポフォール;
(ii) モノチオグリセロール、グルタチオン、クエン酸、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及びEDTAからなる群より選択される、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の抗酸化剤;ならびに
(iii) 塩化ナトリウム、グリセリン、ホウ酸、塩化カルシウム、デキストロース、及び塩化カリウムからなる群より選択される、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の張性調節剤
を水性媒体中に含む、薬学的製剤。

【公開番号】特開2010−235622(P2010−235622A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142118(P2010−142118)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【分割の表示】特願2003−557512(P2003−557512)の分割
【原出願日】平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願人】(509282066)エーザイ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】