説明

プローブの完全性を検証するための方法、装置、およびコンピュータプログラム

【課題】プローブのシグナル値を閾値と比較することによってプローブの完全性を検証するための方法、装置、およびコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】核酸配列を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験する方法であって、(a)核酸に結合することのできる少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;(b)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および(c)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階を含む方法。プローブのシグナル値を標準化し、試料中の標的核酸を検出するための方法、装置、およびコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
核酸を増幅する方法は、ヒト病原体の検出、ヒト遺伝的多型の検出、RNAおよびDNA配列の検出、分子クローニング、核酸の塩基配列決定等のために有用なツールを提供する。特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA配列のクローニング、法医学、親子鑑定、病原体同定、疾患診断および核酸配列の増幅が望ましいその他の有用な方法における重要なツールとなってきた。例えば、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification(Erlich編、1992)(非特許文献1);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)(非特許文献2)を参照。
【0002】
PCRは、標的核酸のコピー、およびその結果生じる増幅を可能にする。手短かには、標的核酸、例えばDNAが、センスおよびアンチセンスプライマー、dNTP、DNAポリメラーゼおよびその他の反応成分と混合される。Innisらを参照。センスプライマーは、関心対象のDNA配列のアンチセンス鎖へアニールすることができる。アンチセンスプライマーは、センスプライマーがDNA標的へアニールする場所の下流で、DNA配列のセンス鎖へアニールすることができる。第1回の増幅で、DNAポリメラーゼは標的核酸へアニールしたアンチセンスおよびセンスプライマーを伸長させる。第1鎖は、識別できない長さの長鎖として合成される。第2回の増幅では、アンチセンスおよびセンスプライマーは親標的核酸および長鎖上の相補的配列へアニールする。その後、DNAポリメラーゼはアニールされたプライマーを伸長させ、相互に相補的である別個の長さの鎖を形成する。それに続く増幅は、主として別個の長さのDNA分子を増幅させる働きをする。
【0003】
ハイブリダイゼーションプローブは現在、核酸を検出および定量するために使用されている。このようなプローブは、インサイチュー・ハイブリダイゼーションアッセイ法を含むハイブリダイゼーションアッセイ法のために有用である。これらのプローブの別の用途は、増幅反応からのポリヌクレオチド産物を検出および定量することである。核酸ハイブリダイゼーションプローブを使用するアッセイ法には多数の様々なタイプがある。これらのプローブの一部は、他の分子もしくは成分との相互作用における変化に起因する、蛍光体の蛍光における変化に伴ってシグナルを発生する。典型的には、この相互作用は蛍光体と、相互作用する分子もしくは成分との間の距離を変化させることによって引き起こされる。これらのアッセイ法は、蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer)すなわち「FRET」上のシグナル発生に依拠している。FRETは、別の蛍光体もしくは消光体のいずれかである、相互作用する共鳴エネルギー受容体から、第1の蛍光体を分離している距離における変化によって引き起こされる蛍光の変化を利用する。蛍光体と、消光分子もしくは成分を含む相互作用する分子もしくは成分との組み合わせは、「FRET対」として知られている。FRET対の相互作用の機構には、対の一方のメンバーの吸光スペクトルが第1の蛍光体である他方のメンバーの発光スペクトルにオーバーラップすることが必要である。相互作用する分子もしくは成分が消光体である場合、その吸光スペクトルは蛍光体の発光スペクトルにオーバーラップしなければならない。Stryer, L.、Ann. Rev. Biochem. 1978、47:819-846(非特許文献3);BIOPHYSICAL CHEMISTRY part II, Techniques for the Study of Biological Structure and Function、(C.R.CantorおよびP.R.Schimmel編、1980)、448-455頁(非特許文献4)、およびSelvin, P.R.、Methods in Enzymology 246:300-335(1995)(非特許文献5)を参照。効率的、または実質的な程度のFRET相互作用には、対の吸光スペクトルおよび発光スペクトルが、高度のオーバーラップを有することが必要とされる。FRET相互作用の効率は、そのオーバーラップへ線形比例する。Haugland, R.P.、Yguerabide, Jr.、およびStryer, L.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63:24-30 (1969)(非特許文献6)。非FRETプローブについても記載されている。例えば米国特許第6,150,097号(特許文献1)を参照。
【0004】
増幅産物を検出するための1つの方法は、5'ヌクレアーゼPCRアッセイ法である(TaqMan(登録商標)アッセイ法とも呼ばれる)(Hollandら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280(1991)(非特許文献7);Leeら、Nucleic Acids Res. 21:3761-3766(1993)(非特許文献8))。このアッセイ法は、増幅反応中における、二重標識された蛍光原プローブ(「TaqMan(登録商標)」プローブ)のハイブリダイゼーションおよび切断によって、特異的PCR産物の集積を検出する。蛍光原プローブは、蛍光レポーター色素および消光体色素の両方を用いて標識されたオリゴヌクレオチドからなる。PCR中、このプローブは、増幅されるセグメントにハイブリダイズする場合に、かつその場合にのみ、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によって切断される。プローブの切断は、レポーター色素の蛍光強度の上昇を生じる。
【0005】
エネルギー転移の使用に依存する、増幅産物を検出する別の方法は、TyagiおよびKramer(Nature Biotech. 14:303-309(1996)(非特許文献9))によって記載された「ビーコンプローブ」法であり、これはまた米国特許第5,119,801号(特許文献2)および第5,312,728号(特許文献3)の対象でもある。この方法は、ヘアピン構造を形成できるオリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーションプローブを使用する。ハイブリダイゼーションプローブの一方の末端(5'または3'末端のいずれか)上には供与蛍光体があり、そして他方の末端には受容体成分がある。TyagiおよびKramerによる方法の場合には、この受容体成分は消光剤であり、すなわち受容体は供与体によって放出されたエネルギーを吸収するが、蛍光自体は吸収しない。そこでビーコンが開放構造にあるときは、供与蛍光体の蛍光は検出可能であるが、ビーコンがヘアピン(閉鎖)構造にあるときは、供与蛍光体の蛍光は消光される。PCRに使用された場合、PCR産物の鎖の1つにハイブリダイズする分子ビーコンプローブは「オープン構造」にあって蛍光が検出されるが、ハイブリダイズしないままの分子ビーコンプローブは蛍光を発しないと考えられる(TyagiおよびKramer、Nature Biotechnol. 14:303-306(1996)(非特許文献10)。結果として、蛍光の量はPCR産物の量が増加するにつれて増加するので、従ってPCRの進行の尺度として使用できる可能性がある。
【0006】
例えば上記に記載したようなハイブリダイゼーションプローブからのシグナル、またはその欠失について確信するためには、使用者はプローブの完全性について制御しなければならない。例えば、蛍光体がプローブから切断されている場合、またはプローブのポリヌクレオチド体が切断されている場合、蛍光は標的に結合しているプローブの量を正確には反映しない。プローブの完全性についての典型的な制御には、既知量の標的を含有する別個の反応混合物を必要とする。したがって、プローブが既知の対照試料について適切なシグナルを産生する場合は、プローブが無傷であると想定される。この技術には、少なくとも2つの欠点がある。第一に、この技術は、被験試料が、対照とは異なり、試料中のプローブを分解しうる酵素を有する可能性を反映しない。第二に、この技術は追加の反応槽の使用を必要とする。そこで、被験試料自体におけるハイブリダイゼーションプローブの完全性を直接決定する、迅速かつ効率的な方法が依然として必要とされている。本発明は、この問題およびその他の問題に取り組む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,150,097号
【特許文献2】米国特許第5,119,801号
【特許文献3】米国特許第5,312,728号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification(Erlich編、1992)
【非特許文献2】PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)
【非特許文献3】Stryer, L.、Ann. Rev. Biochem. 1978、47:819-846
【非特許文献4】BIOPHYSICAL CHEMISTRY part II, Techniques for the Study of Biological Structure and Function、(C.R.CantorおよびP.R.Schimmel編、1980)、448-455頁
【非特許文献5】Selvin, P.R.、Methods in Enzymology 246:300-335(1995)
【非特許文献6】Haugland, R.P.、Yguerabide, Jr.、およびStryer, L.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63:24-30 (1969)
【非特許文献7】Hollandら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280(1991)
【非特許文献8】Leeら、Nucleic Acids Res. 21:3761-3766(1993)
【非特許文献9】Nature Biotech. 14:303-309(1996)
【非特許文献10】TyagiおよびKramer、Nature Biotechnol. 14:303-306(1996)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、核酸配列を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験する方法を提供する。一部の局面では、本方法は、
(a)核酸に結合することのできる、少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
(c)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階、を含む。
【0010】
一部の局面では、本方法は、
(a)核酸に結合することのできる、少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)2つまたはそれ以上の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
(c)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブのシグナルの差を、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階、を含む。一部の態様では、混合物の温度は2つまたはそれ以上の時点で異なる。
【0011】
一部の態様では、シグナルは蛍光である。一部の態様では、プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、プローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が。第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0012】
一部の態様では、プローブのシグナルは、プローブが標的核酸分子に結合していないときに測定される。一部の態様では、プローブの蛍光はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度で測定される。一部の態様では、プローブの蛍光はプローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定される。
【0013】
一部の態様では、測定する段階は第1、第2および第3の時点からなる群より選択される2つまたはそれ以上の時点で、プローブの蛍光を測定する段階を含み、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、そして第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり;かつ本方法は、混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度からプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度からプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満へ低下させる段階を含む。
【0014】
一部の態様では、決定する段階は、第1および第3の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較する段階を含む。一部の態様では、決定する段階は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較する段階を含む。一部の態様では、決定する段階は、第1および第2の時点におけるプローブの蛍光の差を、閾値と比較する段階を含む。一部の態様では、決定する段階は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光の差を閾値と比較する段階を含む。
【0015】
一部の態様では、本方法は、混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度からプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度からプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満へ低下させる段階を含み;かつ測定する段階は、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階の後に、プローブの蛍光を測定する段階を含む。
【0016】
一部の態様では、本方法は、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度からプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階を含み;かつ測定する段階は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階の後に、プローブの蛍光を測定する段階を含む。
【0017】
一部の態様では、測定する段階は、上昇させる段階の前に、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブの蛍光を測定する段階をさらに含む。一部の態様では、プローブのシグナルが2つまたはそれ以上の時点で測定され、ここで決定する段階は、2つまたはそれ以上の時点におけるシグナルを、2つまたはそれ以上の閾値と比較する段階を含む。一部の態様では、プローブは、プローブが増幅された核酸にハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によって切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0018】
一部の態様では、閾値は無傷プローブのシグナルに基づいている。一部の態様では、プローブは分子ビーコンである。
【0019】
一部の態様では、本方法の少なくとも一部は増幅反応中に実施され、増幅反応は以下の段階を含む:
(a)水性混合物中において、
(i)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブ;
(ii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、ならびに第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および標的プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む標的テンプレート;
(iii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および第1の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第1の対照テンプレート;ならびに
(iv)第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、ならびに第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、標的プローブ、および第2の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第2の対照テンプレート
を混合する段階;
(b)増幅産物を作製するために増幅反応を実施する段階;ならびに
(c)標的プローブ、第1の対照プローブおよび第2の対照プローブの、増幅産物への結合を定量する段階。
【0020】
一部の態様では、本方法は混合物中の少なくとも2つのプローブに対して実施され、ここでプローブは、異なる核酸配列へハイブリダイズするように設計される。一部の態様では、混合物は色素をさらに含み、方法は、色素からのシグナルを測定する段階、およびプローブからのシグナルを色素からのシグナルへ標準化する段階をさらに含む。
【0021】
本発明はまた、核酸を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験する装置も提供する(このプローブは、混合物中の核酸に結合することが可能である)。一部の局面では、本装置は以下を含む:
a)混合物の温度を変化させるための温度制御システム;
b)少なくとも1つのプローブのシグナルを測定するための、少なくとも1つの検出機構;ならびに
c)温度制御システムおよび検出機構と連絡している制御装置であって、
i)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
ii)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【0022】
一部の局面では、本装置は以下を含む:
a)混合物の温度を変化させるための温度制御システム;
b)少なくとも1つのプローブのシグナルを測定するための、少なくとも1つの検出機構;ならびに
c)温度制御システムおよび検出機構と連絡している制御装置であって、
i)2つまたはそれ以上の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
ii)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブのシグナルの差を、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【0023】
一部の態様では、制御装置は、
a)混合物の温度を変化させ;かつ
b)2つの異なる温度でプローブのシグナルを測定するように、さらにプログラムされる。
【0024】
一部の態様では、シグナルは蛍光である。一部の態様では、プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤を用いて標識されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0025】
一部の態様では、プローブは蛍光体および消光剤を含み、かつプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0026】
一部の態様では、制御装置は、
第1、第2および第3の時点からなる群より選択される、2つまたはそれ以上の時点でプローブの蛍光を測定し、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、そして第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり;
2つまたはそれ以上の時点の間で混合物の温度を変化させ;かつ
2つまたはそれ以上の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較するようにプログラムされる。
【0027】
一部の態様では、プローブのシグナルは、プローブが標的に結合していないときに測定される。一部の態様では、制御装置は、プローブの蛍光をプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度で測定するようにプログラムされる。一部の態様では、制御装置は、プローブの蛍光をプローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定するようにプログラムされる。
【0028】
一部の態様では、制御装置は、第1および第2の時点の間に、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ第2および第3の時点の間に、混合物の温度を自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させるようにプログラムされる。
【0029】
一部の態様では、制御装置は、第1および第3の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較するようにプログラムされる。一部の態様では、制御装置は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較するようにプログラムされる。一部の態様では、制御装置は、第1および第2の時点におけるプローブの蛍光の差を、閾値と比較するようにプログラムされる。一部の態様では、制御装置は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光の差を、閾値と比較するようにプログラムされる。
【0030】
一部の態様では、制御装置は、
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度からプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ;
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度からプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させ;かつ
プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階の後に、プローブの蛍光を測定するようにプログラムされる。
【0031】
一部の態様では、制御装置は、
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度からプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ;かつ
プローブの蛍光をプローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定するようにプログラムされる。
【0032】
一部の態様では、制御装置は、温度を上昇させる段階の前に、プローブの蛍光をプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度で測定するようにさらにプログラムされる。
【0033】
一部の態様では、閾値は無傷対照プローブのシグナルに基づく。一部の態様では、制御装置は、混合物中の少なくとも2つの異なるプローブのシグナルを測定するようにさらにプログラミングされ、ここでプローブは、異なる核酸配列へハイブリダイズするように設計される。一部の態様では、制御装置は色素からのシグナルを測定し、プローブからのシグナルを色素からのシグナルへ標準化するように、さらにプログラムされる。
【0034】
本発明はまた、試料中の標的核酸を検出する方法も提供する。一部の態様では、本方法は、
(a)蛍光体および消光剤を含み、標的核酸分子とハイブリダイズすることのできる少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)第1の温度でプローブの第1の蛍光値を測定する段階;
(c)第2の温度でプローブの第2の蛍光値を測定する段階;
(d)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的蛍光値を測定する段階;および
(e)標的蛍光値を、第2の蛍光値と第1の蛍光値との差へ標準化する段階であって、それにより標準化された蛍光値が、試料中の標的核酸の存在または量を示す段階
を含む。
【0035】
一部の態様では、プローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0036】
一部の態様では、第1の温度はプローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度であり、ここで第2の温度はプローブの自己アニーリング温度を超える温度である。
【0037】
一部の態様では、プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によって切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0038】
一部の態様では、標的蛍光は、標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって標準化される。一部の態様では、プローブは分子ビーコンである。
【0039】
一部の態様では、標的核酸は増幅反応の産物であり、増幅反応は以下の段階を含む:
(a)水性混合物中において、
(i)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブ;
(ii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、ならびに第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および標的プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む標的テンプレート;
(iii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および第1の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第1の対照テンプレート;ならびに
(iv)第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、ならびに第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、標的プローブ、および第2の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第2の対照テンプレート
を混合する段階;
(b)増幅産物を作製するために増幅反応を実施する段階;ならびに
(c)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブの、増幅産物への結合を定量する段階。
【0040】
52.標準化された蛍光値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量する段階をさらに含む、請求項45記載の方法。
【0041】
本発明はまた、混合物中のポリヌクレオチドを定量するために少なくとも1つのプローブの蛍光を標準化するための装置を提供し、ここでプローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることが可能であり、かつプローブは蛍光体および消光剤を含む。一部の態様では、本装置は以下を含む:
a)プローブの蛍光を測定するための少なくとも1つの検出機構;および
b)検出機構と連絡している制御装置であって、
(i)1)第1の温度におけるプローブの第1の蛍光値;
2)第1の温度とは異なる第2の温度におけるプローブの第2の蛍光値;および
3)プローブが標的核酸に結合しているときの、プローブの標的蛍光値
を測定する段階;ならびに
(ii)標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差へ標準化する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【0042】
一部の態様では、プローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0043】
一部の態様では、第1の温度はプローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度であり、そして第2の温度はプローブの自己アニーリング温度を超える温度である。
【0044】
一部の態様では、制御装置は、標準化された蛍光値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量するようにプログラムされる。一部の態様では、標的蛍光は標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって標準化される。一部の態様では、本装置は混合物の温度を上昇および冷却するための温度制御システムをさらに含む。
【0045】
一部の態様では、プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0046】
本発明はまた、試料中の標的核酸を検出する方法も提供する。一部の態様では、本方法は、
(a)核酸に結合することのできる少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)プローブの少なくとも1つの試験シグナル値を測定する段階;
(c)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的シグナル値を測定する段階;および
(d)標的シグナル値を、プローブの少なくとも1つの試験シグナル値へ標準化する段階であって、それにより標準化されたシグナル値が、試料中の標的核酸の存在または量を示す段階
を含む。
【0047】
一部の態様では、標的シグナル値は、標的シグナル値を少なくとも1つの試験シグナル値で割ることによって標準化される。一部の態様では、シグナルは蛍光である。
【0048】
一部の態様では、少なくとも1つの試験シグナル値は、プローブが標的核酸に結合していないときに測定される。一部の態様では、少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度にあるときに測定される。一部の態様では、少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度にあるときに測定される。
【0049】
一部の態様では、プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることが可能であり、プローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0050】
一部の態様では、プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0051】
一部の態様では、本方法は、各々が1つの試料中の異なる標的ポリヌクレオチドへハイブリダイズするように設計される、少なくとも2つの異なるプローブの、標準化された標的蛍光値を比較する段階を含む。
【0052】
一部の態様では、プローブは分子ビーコンである。
【0053】
一部の態様では、標的ポリヌクレオチドは増幅反応の産物であり、増幅反応は以下の段階を含む:
(a)水性混合物中において、
(i)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブ;
(ii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、ならびに第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および標的プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む標的テンプレート;
(iii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および第1の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第1の対照テンプレート;ならびに
(iv)第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、ならびに第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、標的プローブ、および第2の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第2の対照テンプレート
を混合する段階;
(b)増幅産物を作製するために増幅反応を実施する段階;ならびに
(c)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブの、増幅産物への結合を定量する段階。
【0054】
一部の態様では、方法は、標準化された蛍光値を使用して混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量する段階をさらに含む。
【0055】
本発明はまた、混合物中の核酸に結合することができる、少なくとも1つのプローブのシグナルを標準化するための装置も提供する。一部の態様では、本装置は以下を含む:
a)プローブのシグナルを測定するための少なくとも1つの検出機構;ならびに
b)検出機構と連絡している制御装置であって、
(i)プローブの少なくとも1つの試験シグナル値を測定する段階;
(ii)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的シグナル値を測定する段階;および
(iii)標的シグナル値を、プローブの少なくとも1つの試験シグナル値へ標準化する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【0056】
一部の態様では、標的シグナル値は、標的蛍光値をプローブの少なくとも1つの試験シグナル値で割ることによって標準化される。
【0057】
一部の態様では、制御装置は、標準化された蛍光値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量するようにさらにプログラムされる。
【0058】
一部の態様では、シグナルは蛍光である。
【0059】
一部の態様では、プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、かつプローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化し;かつ
装置は、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させるための、温度制御システムを含む。
【0060】
一部の態様では、少なくとも1つの試験シグナル値は、プローブが標的核酸に結合していないときに測定される。一部の態様では、少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度にあるときに測定される。一部の態様では、少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しいの温度にあるときに測定される。一部の態様では、制御装置は、各々が1つの試料中の異なる標的ポリヌクレオチドへハイブリダイズするように設計される、少なくとも2つの異なるプローブの、標準化された標的シグナル値を比較するようにさらにプログラムされる。
【0061】
本発明はまた、機械によって読取り可能なコンピュータプログラム製品も提供する。一部の態様では、機械は、核酸配列を検出するための少なくとも1つのプローブのシグナルを、1つまたは複数の時点で測定するための少なくとも1つの検出機構を含み、かつ機械は、核酸に結合することができるプローブを含有する混合物の温度を変化させるための温度制御システムを含む。
【0062】
一部の局面では、コンピュータプログラム製品は、
(a)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
(b)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を実施するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化する。
【0063】
一部の局面では、コンピュータプログラム製品は、
(a)2つまたはそれ以上の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
(b)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブのシグナルの差を少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を実施するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化する。
【0064】
一部の局面では、シグナルは蛍光である。一部の局面では、プローブのシグナルは、プローブが標的に結合していないときに測定される。
【0065】
一部の局面では、プローブは蛍光体および消光剤を含み、かつプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0066】
一部の局面では、プローブのシグナルは、プローブが標的に結合していないときに測定される。
【0067】
一部の局面では、測定する段階は、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブの蛍光を測定する段階を含む。一部の局面では、測定する段階は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度でプローブの蛍光を測定する段階を含む。
【0068】
一部の局面では、命令のプログラムは、
(a)第1、第2、および第3の時点からなる群より選択される、2つまたはそれ以上の時点でプローブの蛍光を測定する段階であって、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、そして第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり;ならびに
(b)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
をさらに含む。
【0069】
一部の局面では、命令のプログラムは、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超えて上昇させる段階、および引き続いて混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させる段階をさらに含む。
【0070】
一部の局面では、決定する段階は、第1および第3の時点におけるプローブの蛍光を少なくとも1つの閾値と比較する段階を含む。一部の局面では、決定する段階は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光を少なくとも1つの閾値と比較する段階を含む。一部の局面では、決定する段階は、第1および第2の時点におけるプローブの蛍光の差を閾値と比較する段階を含む。一部の局面では、決定する段階は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光の差を閾値と比較する段階を含む。
【0071】
一部の局面では、命令のプログラムは、
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階;
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度から、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階;および
プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階の後に、プローブの蛍光を測定する段階
をさらに含む。
【0072】
一部の局面では、命令のプログラムは、
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階;および
プローブの蛍光を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定する段階
をさらに含む。
【0073】
一部の局面では、命令のプログラムは、上昇させる段階の前に、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブの蛍光を測定する段階をさらに含む。
【0074】
一部の局面では、閾値は無傷プローブのシグナルに基づく。一部の局面では、命令のプログラムは、混合物中の少なくとも2つの異なるプローブの完全性を決定する段階を含み、ここでプローブは、異なる核酸配列へ結合することが可能である。
【0075】
一部の局面では、命令のプログラムは、
色素からのシグナルを測定する段階;および
プローブからのシグナルを色素からのシグナルへ標準化する段階
をさらに含む。
【0076】
本発明はまた、混合物中の少なくとも1つのプローブの蛍光を測定するための、少なくとも1つの検出機構を有する機械によって読み取ることのできる、コンピュータプログラム製品を提供し、ここでプローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることが可能であり、プローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。一部の局面では、コンピュータプログラム製品は、
(a)プローブの第1の蛍光値を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度で測定する段階と;
(b)プローブの第2の蛍光値を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定する段階と;
(c)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的蛍光値を測定する段階と;および
(d)標的蛍光値を、第2の蛍光値と第1の蛍光値との差へ標準化する段階
を実施するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化する。
【0077】
一部の局面では、命令のプログラムは、標的蛍光値を、第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって、標的蛍光値を標準化する段階をさらに含む。一部の局面では、命令のプログラムは、標準化された蛍光値を使用して混合物中の標的核酸の初期出発量もしくは濃度を定量する段階をさらに含む。一部の局面では、命令のプログラムは、各々が1つの試料中の異なる標的ポリヌクレオチドへハイブリダイズするように設計される、少なくとも2つの異なるプローブの標的蛍光値を比較する段階をさらに含む。
【0078】
一部の局面では、機械は、プローブを含有する混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超えて上昇させ、そして混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させるための温度制御システムをさらに含み、かつ命令のプログラムは、プローブを含有する混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させる段階をさらに含む。
【0079】
本発明はまた、混合物中の少なくとも1つのプローブのシグナルを測定するための、少なくとも1つの検出機構を有する機械によって読み取ることのできるコンピュータプログラム製品を提供する(ここでプローブは、核酸に結合することが可能である)。例えば、一部の局面では、コンピュータプログラム製品は、
(a)プローブの1つの試験シグナル値を測定する段階;
(b)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的シグナル値を測定する段階;および
(c)標的シグナル値を、プローブの試験シグナル値へ標準化する段階
を含む段階を実施するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化する。
【0080】
一部の局面では、命令のプログラムは、標的シグナル値をプローブの試験シグナル値で割ることによって、標的シグナル値を標準化する段階をさらに含む。一部の局面では、命令のプログラムは、標準化された蛍光値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量する段階をさらに含む。一部の局面では、シグナルは蛍光である。一部の局面では、命令のプログラムは、少なくとも2つの異なるプローブの標準化された標的シグナル値を比較する段階をさらに含み、ここで各プローブは、1つの試料中の異なる標的ポリヌクレオチドへハイブリダイズするように設計される。
【0081】
一部の局面では、プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることが可能であり、かつプローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化し;ここで機械は、プローブを含有する混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ冷却するための温度制御システムをさらに含み、ここで命令のプログラムは、プローブを含有する混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させる段階をさらに含む。
【0082】
一部の局面では、試験シグナル値は、プローブが標的核酸に結合していないときに測定される。一部の局面では、試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度にあるときに測定される。一部の局面では、試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度にあるときに測定される。一部の局面では、試験シグナル値は、プローブが標的核酸に結合しておらず、かつ混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度にあるときに測定される。
【0083】
定義
「増幅反応」とは、テンプレート核酸配列のコピーの増加を生じさせる、酵素反応を含むあらゆる化学反応を意味する。増幅反応には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990))、鎖置換型増幅(SDA)(Walkerら、Nucleic Acids Res. 20(7):1691-6(1992);Walker PCR Methods Appl 3(1)1-6(1993))、転写媒介型増幅(Phyfferら、J. Clin. Microbiol. 34:834-841(1996);Vuorinenら,J. Clin. Microbiol. 33:1856-1859(1995))、核酸配列ベース増幅(NASBA)(Compton、Nature 350(6313):91-2(1991)、ローリングサークル型増幅(RCA)(Lisby、Mol. Biotechnol. 12(l):75-99(1999));Hatchら、Genet. Anal. 15(2)35-40(1999))、および分岐DNAシグナル増幅(bDNA)(例えば、Iqbalら、Mol Cell Probes 13(4)315-320(1999)を参照)が含まれる。
【0084】
「コンピュータプログラム製品」は、特定の一連の段階を実行するための、例えばコンピュータもしくはプロセッサのような機械によって実行可能な命令のプログラムを意味する。制御装置によって読み取り可能なコンピュータプログラム製品(例えばソフトウエア)は、プログラム命令を具現化する記憶媒体(例えばディスク)を含むことができる。または、コンピュータプログラム製品は、制御装置のメモリ内に保存されるか、制御装置へダウンロードすることのできる電子ファイルであってもよい。
【0085】
「制御装置」は、コンピュータ(例えばパーソナルもしくはネットワークコンピュータ)、プロセッサまたはマイクロプロセッサを意味する。
【0086】
「検出機構」は、強度が混合物中の核酸配列の量または濃度に関連する、少なくとも1つのシグナルを測定するための機構を意味する。好ましい検出機構は、蛍光、放射能、比色法、X線回折もしくはX線吸収、磁気または酵素活性によって検出可能なシグナルを測定する。本発明において使用するためのまた別の適切な検出機構は、核酸配列の量または濃度を示す1つまたは複数の電気信号(例えば導電率、インダクタンス、抵抗、またはキャパシタンス)を検出して測定する。
【0087】
「蛍光体」という用語は、特定波長の光線への曝露によって励起されたときに、異なる波長で光線(すなわち、蛍光)を発する化合物を意味する。蛍光体の励起状態のエネルギーが非蛍光体受容体へ移されると、蛍光体の蛍光は、受容体によるその後の蛍光の発光を伴わずに消光される。この場合、受容体は「消光剤」として機能する。
【0088】
「プローブの完全性」という表現は、プローブがいかに無傷であるかを意味する。プローブの完全性が崩壊すると、例えば標的核酸の存在下でシグナルを発生する能力が崩壊されるので、プローブ同じ様には機能しない。この完全性は、例えばプローブの本体の切断によって、または例えば蛍光体もしくは消光剤のようなシグナル生成剤の切断によって崩壊する可能性がある。
【0089】
「分子ビーコン」という表現は、例えばTyagiおよびKramer(Nature Biotech. 14:303−309(1996))および米国特許第5,119,801号、および第5,312,728号に記載されたプローブを意味する。例えば、分子ビーコンは典型的には1つの蛍光体と1つの消光剤を含む。プローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。
【0090】
「標準化」とは、量を再スケーリング(rescaling)する工程を意味する。例えば、混合物中または混合物間の示度間の変動を低下させるために、プローブのシグナル出力が標準化される。シグナルは、典型的には特定標準値または標準示度へ標準化される。
【0091】
「核酸」という表現は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖形もしくは二本鎖形のいずれかであるそれらのポリマーを意味する。この用語は、合成型、天然型、および非天然型であって、基準核酸に類似する結合特性を有し、かつ基準ヌクレオチドに類似する方法で代謝される、公知のヌクレオチド類似体または改変バックボーン残基もしくは結合を含有する核酸を包含する。このようなアナログの例には、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が含まれるが、これらに制限されない。
【0092】
「プローブ」は、関心対象の核酸配列にハイブリダイズし、それを検出することのできるポリヌクレオチド配列を含む組成物を意味する。このようなプローブは、例えば蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)(例えばSokolら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95. 11538-11543(1998)およびMatsuo、Biochimica Biophysica Acta 1379:178-184(1998)を参照)を含むハイブリダイゼーションアッセイ法、ならびに増幅反応において有用である。例えば、「プローブ」は蛍光もしくは放射活性試薬に結合されたポリヌクレオチドを含むことができ、それによってこれらの試薬の検出を可能にする。本発明のプローブの実施例には、例えば分子ビーコン(例えば、米国特許第5,925,517号およびTyagi, SおよびKramer, F. R. 、Nature Biotechnology 14:303-308(1996)を参照),「スコーピオンプローブ」(例えばWhitcombeら,Nature Biotechnology 17:804−807(1999)を参照)ならびにTaqman(登録商標)プローブ(例えばLivak, K. J. ら、PCR Methods Appl. 4(6):357-362(1995)を参照)、ペプチド核酸プローブ(PNA)(例えば、Ortiz, E. 、G. EstradaおよびP. M. Lizardi、Molecular and Cellular Probes 12、219-226(1998)を参照)、ならびにFRET技術を利用するその他のプローブが含まれる。「無傷プローブ」は、切断も劣化もしていないプローブを意味する。
【0093】
プローブの「自己アニーリング温度」は、その温度またはそれ未満において、プローブが、二次構造を形成しない場合のプローブの蛍光に比較して、プローブの蛍光を消光するために十分な二次構造を形成する温度を意味する。プローブの自己アニーリング温度は、一般に蛍光体および消光剤を含むプローブに関して使用され、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。自己アニールすることのできるプローブの例には、分子ビーコンおよびスコーピオンプローブが含まれる。
【0094】
「標的」または「標的核酸」は、増幅反応において増幅しようとする一本鎖もしくは二本鎖ポリヌクレオチド配列を意味する。
【0095】
「標的蛍光値」または「標的シグナル値」は、プローブが標的配列に結合したときにプローブによって生成されるシグナルを意味する。
【0096】
「テンプレート」は、増幅されるポリヌクレオチドを含む一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド配列を意味する。
【0097】
「試験シグナル値」とは、プローブがその標的核酸に結合していないか、またはハイブリダイズしていないときに、プローブによって発せされるシグナルを意味する。例えば、分子プローブは、典型的にはそれが標的にハイブリダイズすると考えられる温度を超える温度で試験されると考えられる。Taqman(登録商標)プローブは、Taqman(登録商標)プローブがポリメラーゼの5'エキソヌクレアーゼ活性によって活性化されない限り、標的配列の存在下で試験できる。
【0098】
特定の態様の説明
I. はじめに
本発明は、プローブのシグナルを閾値と比較することによってプローブの完全性を検証するための方法、装置およびコンピュータプログラムを提供する。本明細書において一般に「プローブチェックアッセイ法」と呼ばれる本発明の方法は、それによって、プローブの完全性を確証するための外部陽性対照を使用する必要性を排除する。本発明の方法は、1つまたは複数の温度での蛍光プローブの蛍光を、無傷プローブの蛍光または所定の値もしくは範囲と比較する段階を伴う。例えば、図1は本発明の一般的なプローブチェック法を示す流れ図である。比較値からのプローブ蛍光の変動は、プローブが機能しなくなった可能性を示す。当然ながら、当業者であれば複数のプローブが混合物中に存在する場合に、このプローブチェックアッセイ法が各プローブの完全性を検出するために有用であることを認識すると考えられる。
【0099】
II. 温度変化に反応して構造を変化させるプローブ
多数のタイプの分子プローブは、プローブがその核酸標的に結合すると、典型的には蛍光の形状でシグナルを生成するが、結合しない場合はシグナルを生成しない。これらのプローブは、標的に結合しないときに蛍光体および消光剤を互いの近傍へ運び、それによって蛍光体からのシグナルを消光するために、ヘアピンループ、またはいくつかの他の構造の形成に依存する。
【0100】
例えば分子ビーコンのような、異なる温度で蛍光を変化させたプローブについては、1つまたは複数の温度における蛍光を使用してプローブの完全性を決定することができる。このようなプローブは、反応混合物中に配置し、その後で反応混合物の温度を調節させることができる。少なくとも1つの温度においてプローブによって生成されたシグナルを、閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定することができる。例えば、プローブによって生成されるシグナルを1つまたは複数の以下の時点、および温度で測定することができる:プローブを含有する混合物が、プローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満の温度T1である、第1の時点;混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度T2へ上昇させられた第2の時点;または、混合物が、プローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満の温度T3へ冷却させられた第3の時点。本明細書を通して使用されるように、温度T1はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度を表し、温度T2はプローブの自己アニーリング温度を超える温度を表し、そして温度T3はプローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満の温度を表す。温度T3は温度T1と等しくてよく、または、温度T1およびT3の両方がプローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満である限り、温度T3は温度T1と異なっていてもよい。
【0101】
ハイブリダイゼーションを開始する前(例えば、標的の増幅を開始する前)に、反応混合物中のプローブのシグナル(例えば蛍光)は以下の時点の少なくとも1つで読み取られる:混合物が温度T1である第1の時点;混合物が温度T2へ上昇させられた第2の時点;または、混合物が温度T3へ低下させられた第3の時点。十分に機能的な無傷のプローブの所定の限度外である温度T1、温度T2、または温度T3でのプローブのシグナルの示度は、プローブの完全性が、十分に機能的な無傷のプローブとは異なることを示唆し、PCRアッセイ法、またはプローブによってモニターされるその他の増幅反応が機能しないと考えられることを示す。例えば、図7は、プローブを含有する混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超えて上昇させる段階170、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満へ低下させる段階172、自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブのシグナルを測定する段階174、およびプローブのシグナルを少なくとも1つの閾値と比較する段階176を示す流れ図である。
【0102】
一部の態様では、プローブの初期シグナルが決定され、無傷プローブからのシグナル、または無傷プローブとの公知の関係を有する所定の値または範囲と比較される。無傷プローブからのシグナル、または規定値からの、初期蛍光の変動は、プローブの劣化を示している。許容の上限および下限を含みうる所定の閾値は、多数の試薬に特異的であるか、またはすべての多数の試薬に適用可能でありうる。
【0103】
一部の態様では、プローブのシグナルは、プローブの完全性を決定するために複数の時点で測定される。例えば、図3はプローブシグナルが2つの時点で測定される態様を示している。段階120では、プローブのシグナルは、プローブの自己アニーリング温度未満の温度T1で測定される。段階122では、プローブを含有する混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度T2へ上昇させられる。段階124では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満の温度T3へ低下させられる。段階126では、プローブシグナルが温度T3で測定される。段階128では、プローブの完全性を決定するために、様々な時点で測定されたシグナルが少なくとも1つの閾値と比較される。例えば、各測定されたシグナルを単一の閾値と比較してもよく、またはシグナルの許容可能範囲を規定する上方および下方閾値と比較してもよい。
【0104】
図5は、プローブの完全性を決定するために、プローブのシグナルが2つの異なる温度で測定される、本発明の1つの態様を示している。段階152では、プローブのシグナルは、プローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満の温度T1で測定される。段階154では、プローブを含有する混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度T2へ上昇させられる。段階156では、プローブシグナルが温度T2で測定される。段階158では、プローブの完全性を決定するために、異なる温度で測定されたシグナルが少なくとも1つの閾値と比較される。例えば、温度T1で測定されたシグナルを第1閾値と比較し、温度T2で測定されたシグナルを第2閾値と比較してもよい。または、温度T1で測定されたシグナルを、シグナルについての許容可能範囲を規定する第1および第2閾値と比較してもよく、かつ温度T2で測定されたシグナルを、シグナルについての許容可能範囲を規定する第3および第4閾値と比較してもよい。
【0105】
図6は、プローブの完全性を決定するために、プローブのシグナルが2つの異なる温度で測定される、本発明の別の態様を示す。段階160では、プローブを含有する混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度T2へ上昇させられる。段階162では、プローブシグナルが温度T2で測定される。段階164では、混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度に等しいかまたはそれ未満の温度T3へ低下させられる。段階166では、プローブシグナルが温度T3で測定される。段階168では、プローブの完全性を決定するために、異なる温度で測定されたシグナルが少なくとも1つの閾値と比較される。例えば、温度T2で測定されたシグナルを第1閾値と比較し、温度T3で測定されたシグナルを第2閾値と比較してもよい。または、温度T2で測定されたシグナルを、シグナルについての許容可能範囲を規定する第1および第2閾値と比較してもよく、かつ温度T3で測定されたシグナルを、シグナルについての許容可能範囲を規定する第3および第4閾値と比較してもよい。
【0106】
他の態様では、異なる時点または温度で測定されたシグナルの差が計算され、少なくとも1つの閾値と比較される。例えば、図2は、温度T1およびT2で測定されたプローブシグナルの差を使用して、プローブの完全性を決定する態様を示している。段階110では、プローブのシグナルは、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度T1で測定される。段階112では、プローブを含有する混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度T2へ上昇させられる。段階114では、プローブのシグナルが温度T2で測定される。段階116では、2つの測定値の差が計算される。段階118では、測定値の差が少なくとも1つの閾値と比較される。例えば、測定値における差は単一の閾値と比較されるか、または測定値における差についての許容可能範囲を規定する上方および下方閾値と比較されうる。
【0107】
図4は、異なる温度で測定されたシグナルの差が計算され、少なくとも1つの閾値と比較される、本発明の別の態様を示している。段階130では、プローブを含有する混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度T2へ上昇させられる。段階132では、プローブのシグナルが温度T2で測定される。段階134では、混合物の温度は、プローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度T3へ低下させられる。段階136では、プローブのシグナルが温度T3で測定される。段階138では、温度T2およびT3で取得した2つの測定値の差が計算される。段階140では、測定値の差が少なくとも1つの閾値と比較される。例えば、測定値における差は単一の閾値と比較されるか、または測定値における差についての許容可能範囲を規定する上方および下方閾値と比較されうる。
【0108】
下記に、プローブ不具合に関するいくつかの考えられるシナリオの概要を提供する。例えば、プローブ構造が切断している場合は、プローブは温度T3で適切に自己アニールせず、このため温度T1で測定されたシグナルとは異なる、典型的により高いシグナルを生成すると考えられる。異なる態様では、プローブの消光剤が切断される。その状況では、温度T1および温度T3の両方で測定されたシグナルは、閾値(すなわち、無傷プローブシグナルに基づく)に比較して高いと考えられる。さらに、いかなる温度でも消光剤が蛍光体を消光しないと考えられるので、温度T1と温度T2との間のシグナルにおける差、または温度T3とT2との間のシグナルにおける差は、有意には異ならないと考えられる。
【0109】
様々な時点および温度(温度T1での第1測定時点、温度T2での第2測定時点、および温度T3での第3測定時点)における、可能性のあるプローブ改変の一部、ならびにプローブシグナル(例えば蛍光)に及ぼす作用の一覧を表1に記載する。潜在的に、プローブ改変の組み合わせが同時に発生する可能性があるが、表には単一の改変の結果だけを示した。上述の通り、プローブの完全性が破壊されうる多数の可能性のある手段がある。しかし、当業者であれば、プローブはさらなる手段で機能しなくなる可能性があることを認識すると考えられ、したがって下記の表は決して本発明の範囲を限定すると解釈されてはならない。
【0110】
(表1)プローブ改変がプローブのシグナル強度に及ぼす作用

【0111】
このアプローチによるプローブ完全性の評価は、プローブが緩衝液中で希釈されているときに適用可能であるが、プローブが、例えば患者試料を含む被験試料を含有するリアルタイムPCR反応混合物のような、他の基質中にある場合にも適用することができる。典型的な反応混合液は、例えば被験試料、200nM分子ビーコンプローブ、Taqポリメラーゼ、50mM Tris(pH8.3)、8mM MgCl2、200μM dATP、200μM dTTP、200μM dCTP、200μM dGTP、50mM KCl、200nM フォワードプライマーおよび200nMのリバースプライマーを含有する。
【0112】
III. 線形プローブ
このプローブチェックアッセイ法は、さらに線形プローブの完全性を評価するためにも使用できる。付着した消光体によって消光される線形蛍光プローブは、固有の「バックグラウンド」蛍光を有している。例示的な線形プローブには、例えば増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発したときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によって切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含むプローブが含まれる(例えばTaqmanプローブ)。バックグラウンド蛍光はプローブの完全性の指標として使用することができ、かつ相関によって、リアルタイムPCRアッセイ法におけるプローブの性能についての指標として使用できる。プローブへの改変の例および結果として生じる蛍光への作用は以下の表2に示した。
【0113】
(表2)プローブ改変がプローブのシグナル強度に及ぼす作用

【0114】
さらに、Taqmanプローブのような線形プローブは、加熱したときに蛍光における変化を示す。そこで、分子ビーコンに関連して上記で記載したように、異なる2つの温度における線形プローブのシグナルを測定して、プローブの完全性を決定するために使用できる。一部の態様では、異なる温度で2つまたはそれ以上の示度が取得され、各温度でのシグナル値がそのそれぞれの閾値と比較される。または、2つまたはそれ以上の示度が異なる温度で取得され、2つまたはそれ以上のシグナル値間の差が1つの閾値と比較される。
【0115】
本発明の方法において有用な他のプローブには、消光剤を含んではいないが、プローブ配列自体によってある程度消光されるプローブが含まれる。このようなプローブは、例えば線形である可能性があり、または何らかの二次構造を含む可能性がある。このようなプローブの1つの例は、ペプチド核酸プローブである「ライトアップ(Light−up)」プローブである。例えば、Svanvik, N. ら、Anal Biochem. 281:26-35(2000);Svanvik, Nら、Anal. Biochem. 287:179−182(2000)を参照。
【0116】
IV. プローブシグナルと比較するための閾値
上述のように、無傷プローブを試料プローブと一緒に試験(run)し、試料プローブのシグナルと比較することができる。しかし、便宜性および経済性のために、一部の好ましい態様では、閾値は所定の値または範囲である。所定の値または値の範囲は、無傷プローブの典型的なシグナルを規定するための一連の対照実験から決定される。このような解析に引き続いて、標準値の範囲を決定することができる。その後、これらの数値を使用して、プローブチェックアッセイ法において試料プローブシグナルと比較することができる。
【0117】
一部の態様では、閾値は、許容可能なPCR結果と相関する1組のプローブチェック値を決定することによって計算される。様々な比率の十分に機能的なプローブおよび劣化したプローブから構成されるプローブの混合物は、標的量を正確に測定するプローブ混合物の能力を測定するために、プローブチェックおよびPCRアッセイ法の両方によって評価されうる。好ましい態様では、閾値は、最高比率の劣化したプローブを含有し、かつ許容可能なPCR性能を維持するプローブ混合物のプローブチェック値(すなわち、シグナル)として決定される。当業者であれば、閾値が単一の閾値、または上限および下限でありうることを認識すると考えられる。
【0118】
プローブチェック測定値にはいくらかの不正確さがある可能性があるので、相関関係および閾値へ統計的信頼性を付け加えるために、複数のアッセイ法を実行することができる。さらに、プローブチェック示度間の変動を排除するために、生プローブチェック値を標準化することができる。当業者であれば、検出機器のシグナル検出に関連するあらゆる数値はプローブチェック値を標準化するために使用されうることを認識すると考えられる。好ましい態様では、受動色素(passive dye)がプローブチェック試料中で試験され、プローブチェック値が色素のシグナルへ標準化される。好ましい色素は、核酸、特に二本鎖DNAの存在、またはそれとの関連によって実質的に影響を受けない。このような色素には、この基準を満たし、同様にスペクトル的に分解可能でもある実質的にあらゆる蛍光色素が含まれてよい。好ましい色素には、ローダミン色素およびフルオレセイン色素が含まれる。受動標準は、プローブと同一基質中、または例えば別個の反応槽のような別個の基質中にあってよい。受動標準は、溶液中に遊離しているか、または例えばオリゴヌクレオチドもしくはタンパク質のような高分子へ結合されてもよい。または、検出機器の校正に関連する保存された数値もまた、標準化値として使用することができる。
【0119】
温度変化に反応して構造およびシグナルを変化させるプローブについては、様々な温度で閾値を決定することができる(例えば、プローブが標的核酸へ結合していないときは、プローブの自己アニーリング温度未満およびそれを超える温度で)。さらに、異なる温度間のプローブのシグナルの差もまた有用である。例えば、プローブの自己アニーリング温度未満およびそれを超える温度でのシグナルの差は、増加する劣化プローブ量を含むプローブの混合物を使用してモニターすることができる。例えば、実施例2を参照。その後、許容可能な結果を生じる混合物のシグナルが、閾値として使用される。
【0120】
プローブチェックアッセイ法の結果を所定の限度値と関連付けるのではなく、プローブの蛍光示度を、無傷プローブのシグナルと相関する受動標準分子と比較することができる。この相関は、その後プローブの完全性および機能的性能を評価するための手段として使用される。1例として、標準分子の蛍光示度は、プローブの蛍光を決定する前か、またはそれに引き続いて特定の温度で読み取られる。プローブと受動標準の蛍光間の関係が決定され、それを使用して、以前の研究に基づき、十分に機能的なプローブと、アッセイ法において適切に機能しないと考えられるプローブとが弁別される。
【0121】
所定の閾値または範囲を、コンピュータのメモリ内に保存して、必要に応じて制御装置によってアクセスすることができる。
【0122】
V. 外部対照の代替物
本明細書に記載したプローブチェックアッセイ法は、共通プライマーを有するPCR内部対照と組み合わせて、アッセイ法の外部陽性対照に取って代わることができる。増幅に基づくアッセイ法を含むほとんどのアッセイ法は、アッセイ法の妥当性を確認するために対照反応を使用する。典型的には、試験反応とともに別個の陽性対照および陰性対照が試験される。陰性対照は、アッセイ法の汚染の可能性についての試験である一方、陽性対照は反応成分の完全性および機能的性能についての試験である。
【0123】
内部対照は、被験試料と同一反応において試験される対照であり、試薬の完全性に加え、試料基質による干渉の可能性についての試験である(Rosenstrausら、J. Clin. Microbiology、36:191-197(1998))。一部のPCR反応では、内部対照標的およびアッセイ特異的標的は同一プライマー、すなわち共通プライマーを用いて増幅される。これらの反応では、アッセイ特異的標的および内部対照を検出するための蛍光プローブは異なる。
【0124】
これらのアッセイ法については、プローブチェックアッセイ法および内部対照の結果を外部陽性対照の代わりに使用することができる。内部対照は、プライマーを含むすべての試薬成分の完全性を確証するが、プローブの完全性は確証しない。プローブの完全性および機能的性能は、プローブチェックアッセイ法を実施することによって、例えば温度T1、温度T2または温度T3の少なくとも1つにおける蛍光値を、所定の値と比較することによって確証される。したがって、総合すれば、プローブチェックアッセイ法の結果および内部対照に関するPCRの結果は、すべてのPCR試薬成分の完全性を規定でき、それによって外部陽性対照の必要を排除する。
【0125】
一部の態様では、本発明の方法は全対照の完全な内部化を提供する。例えば、一部の態様では、本明細書に記載したプローブチェックアッセイ法は、アッセイ成分、酵素活性等の質および量を制御するために、増幅反応において追加の対照テンプレートと組み合わせて使用される。特に、増幅反応は少なくとも3つのポリヌクレオチド配列:1つの標的テンプレート(T)および2つの対照テンプレート(IC1およびIC2)を含むことができる。2つの対照テンプレートは、増幅反応の完全性を制御するように機能する。標的および対照テンプレートの増幅産物は、反応産物に結合しているプローブを定量することによって測定することができる。したがって、各増幅産物は、増幅産物を検出かつ定量するために有用である、少なくとも1つの対応するプローブに対する標的を提供する。
【0126】
本発明は、5'および3'標的プライマーに対するハイブリダイゼーション部位(各々、P1およびP2)を有する核酸配列を含む標的テンプレート(T)を提供する。標的テンプレート(T)は、増幅しようとするポリヌクレオチド配列(「標的配列」)を含む。この配列、またはこの配列の部分配列は、標的プローブに対するハイブリダイゼーション配列(HP1)を提供する。
【0127】
第1の対照テンプレート(IC1)は、標的テンプレート(T)と同一の標的プライマー・ハイブリダイゼーション配列(すなわちP1およびP2に対する)、および標的テンプレートとは異なるプローブ・ハイブリダイゼーション配列を含む。そのため、このテンプレートの増幅は、例えば酵素の機能、試薬、標的プライマー等のような一般反応の完全性について制御する。例えば、標的産物は生成しないが、第1の対照テンプレート(IC1)が反応において増幅される場合、これは増幅条件(緩衝液、温度、プライマー、酵素等)がテンプレートを増幅させることができたことを示している。第1の対照テンプレート(IC1)が増幅されない場合、反応混合物に欠陥があった可能性が高く、このためテンプレートからの陰性産物はテンプレートの欠如に起因しない可能性がある。
【0128】
第2の対照テンプレート(IC2)は、標的プローブ(HP1)および第2の対照プローブ(HP3)に対するハイブリダイゼーション配列を含む。これらの2つの配列には、1対の第2の対照プライマー(P3およびP4)に対するハイブリダイゼーション配列が隣接している。このテンプレートの増幅は、標的配列への標的プローブ(HP1)の結合に関する対照を提供する。例えば、第2の対照プローブ(HP3)がシグナルを生成しない場合は、第2の対照テンプレート(IC2)の増幅が生じなかった可能性が高い。しかし、第2の対照プローブ(HP3)はシグナルを生成するが標的プローブ(HP1)はシグナルを生成しない場合、標的プローブ(HP1)が機能できなかった可能性が高い。
【0129】
第2の対照テンプレート(IC2)は、標的プローブ・ハイブリダイゼーション配列および第2の対照・ハイブリダイゼーション配列の各々1つのコピーを有するので、標的テンプレート(T)が存在しない場合は、標的プローブ(HP1)および第2の対照プローブ(HP3)からのシグナルは実質的に等しいはずである。標的テンプレート(T)が存在する場合は、第2の対照プローブ(HP3)ハイブリダイゼーション配列と比較して、より多くの標的プローブ(HP1)ハイブリダイゼーション配列(すなわち、標的増幅産物)が利用可能であるはずである。したがって、適切に機能する反応は、第2の対照プローブ(HP3)よりも標的プローブ(HP1)からのより高いシグナルを有しなければならない。これは特に、より早期の増幅サイクルにおいて当てはまる。このため、一部の態様では、プローブ結合のリアルタイム測定値が、例えば定量的PCRのために有用な可能性がある。
【0130】
これまでの研究により、初期のコピー数を、閾値サイクル(Ct)に基づいたリアルタイムPCR解析中に定量できることが証明されている。Higuchi, R.ら、Biotechnology 11:1026-1030(1993)を参照。Ctは、そのサイクルにおいて蛍光がバックグラウンドを超えて統計的に有意であると決定されるサイクルとして定義される。サイクル閾値は、初期コピー数の対数と反比例している。最初に存在するテンプレート数が多いほど、蛍光シグナルをバックグラウンドを超えて検出できる時点に到達するサイクル数が少ない。閾値サイクルに基づく定量的情報は、制限試薬、反応成分中の小さな差、またはサイクル条件によって、PCR効率がいまだ影響を受けざるを得ない時点である、PCR増幅の対数期中に取得した測定値に基づくため、それは終末点決定に基づく情報より正確な可能性がある。
【0131】
表3は、特定の反応の完全性を決定するためにサイクル閾値がどのように有用であるかを証明している。この表は、様々な反応シナリオに依存する仮説的Ct値を提供する。
【0132】
(表3)ハイブリダイゼーションプローブ1、2、および3のサイクル閾値に基づくリアルタイムPCR結果の解釈

【0133】
VI. 増幅反応および熱処理機器
反応を使用したRNAまたはDNAテンプレートの増幅については周知である(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)を参照)。熱安定性酵素を使用したPCRにより核酸を増幅および検出するための方法は、米国特許第4,965,188号に開示され、参照として本明細書に組み入れられる。DNAのPCR増幅は、DNAを熱変性させる段階、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、増幅されるDNAセグメントに隣接する配列へアニールする段階、およびアニールしたプライマーをDNAポリメラーゼで伸長する段階の反復サイクルを伴う。これらのプライマーは、標的配列の対向鎖へハイブリダイズし、かつポリメラーゼによるDNA合成がプライマー間の領域にわたって進行し、DNAセグメントの量を効果的に2倍にするように、方向付けられる。さらに、伸長産物はプライマーにとって相補的であり、それらに結合することができるので、各連続サイクルは、前サイクルにおいて合成されたDNAの量を本質的に2倍にする。これは1サイクル当たり約2nの速度で、特定の標的フラグメントの対数的集積を生じる(このときnはサイクル数である)。
【0134】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)のような方法を使用して、mRNA、cDNA、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーから、標的DNA配列の核酸配列を直接増幅することができる。この反応は、好ましくは所望の温度におけるインキュベーション時間を促進する熱処理機器中で実施される。熱処理機器はまた、関心対象の核酸配列を検出するための少なくとも1つの検出機構を選択的に含むことができる。好ましい熱処理機器には、Smart Cycler(登録商標)(Cepheid、Sunnyvale、CA)、ならびに、例えば国際公開公報第99/60380号に記載されている機器が含まれる。その他の適切な機器は、例えば米国特許第5,958,349号;第5,656,493号;第5,333,675号;第5,455,175号;第5,589,136号および第5,935,522号に記載されている。
【0135】
等温増幅反応もまた公知であり、本発明の方法によって使用することができる。等温増幅反応の例には、鎖置換型増幅法(SDA)(Walkerら、Nucleic Acids Res. 20(7):1691-6(1992);Walker PCR Methods Appl. 3(1):1-6(1993))、転写媒介増幅法(Phyfferら、J. Clin. Microbiol 34:834-841(1996);Vuorinenら、J. Clin. Microbiol. 33:1856-1859(1995))、核酸配列ベース増幅法(NASBA)(Compton、Nature 350(6313):91-2(1991);ローリングサークル型増幅法(RCA)(Lisby、Mol. Biotechnol. 12(l)75-99(1999));Hatchら、Genet. Anal. 15(2):35-40(1999))、および分枝DNAシグナル増幅(bDNA)(例えば、Iqbalら、Mol. Cell Probes 13(4)315-320(1999)を参照)が含まれる。当業者に公知のその他の増幅方法には、CPR(サイクリングプローブ反応)、SSR(自己持続型配列複製)、SDA(鎖置換型増幅法)、QBR(Q-βレプリカーゼ)、Re-AMP(以前のRAMP)、RCR(修復鎖反応),TAS(転写ベース増幅システム)、およびHCSが含まれる。
【0136】
プローブの完全性を決定する方法は、定量的PCRおよび/またはリアルタイム増幅反応を含む、増幅反応の産物を解析するために特に有用である。核酸配列の定量的解析のための数種の方法が記載されている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および逆転写酵素PCR(RT-PCR)は、核酸の少量の出発量(例えば、1細胞相当量と同等の少量)の解析を可能にする。
【0137】
別の方法である定量的競合PCR(QC-PCR)が開発され、PCR定量のために広く使用されてきた。QC-PCRは、核反応混合物中に既知量の内部対照競合物を含むことに依存する。相対的定量を得るために、未知の標的PCR産物が既知の競合PCR産物と比較される。標的特異的DNAと競合DNAの相対量が測定され、この比率を使用して標的テンプレートの出発数が計算される。競合物特異的産物に対する標的特異的産物の比率が大きいほど、出発時DNA濃度が高い。QC-PCRアッセイ法の成功は、標的分子と同一効率で増幅する内部対照の開発に依存する。RNA定量のQC-PCR法では、関心対象の標的配列に適合するが、内部欠失の導入によって標的配列とは異なる、競合RNAテンプレートが、逆転写およびPCR段階の競合的滴定に使用され、ストリンジェントな内部対照を提供する。既知のコピー数の競合的テンプレートの量を増加させて試験試料の複製部分へ追加し、定量は、野生型および競合テンプレートに由来する異なるサイズの増幅産物の、相対量(絶対量ではない)の決定に基づく。
【0138】
本発明の方法は、伝統的な多重反応において使用できる。多重PCRは同一反応において多数のポリヌクレオチド断片の増幅を生じる。例えば、PCR PRIMER, A LABORATORY MANUAL(Dieffenbach編、1995)、Cold Spring Harbor Press、157-171頁を参照。例えば、異なる標的テンプレートを添加して、同一反応槽内で平行して増幅させることができる。
【0139】
VII. プローブ
本発明のプローブは、特定のポリヌクレオチド配列へハイブリダイズすることができる。したがって、本発明のプローブは検出される配列に相補的であるポリヌクレオチドを含むことができる。一部の態様では、プローブは下記に記載するように蛍光体または酵素をさらに含み、これによりプローブのその相補物への結合の検出を可能にする。
【0140】
プローブの濃度は、増幅した配列の量の正確な評価を提供するように、増幅される標的配列または対照配列の量へ結合するのに十分でなければならない。当業者であれば、プローブの濃度の量が、結合される配列の量と同様にプローブの結合親和性にしたがって変動することを認識すると考えられる。典型的なプローブの濃度は0.01μM〜0.5μMの範囲に及ぶと考えられる。
【0141】
本発明は、多数の様々な核酸ハイブリダイゼーションプローブを使用できる。典型的に、シグナル発生のためには、プローブは、蛍光体と相互作用する分子もしくは成分との距離を変化させることによって発生する、他の分子もしくは成分との相互作用の変化に起因する、蛍光体の蛍光の変化を利用する。
【0142】
これらのアッセイ法は、シグナルの発生を蛍光共鳴エネルギー転移すなわち「FRET」に依存し、それに従い、蛍光の変化が、別の蛍光体もしくは消光体のいずれかである、相互作用する共鳴エネルギー受容体から第1の蛍光体を分離している距離の変化によって引き起こされる。蛍光体と、消光分子または成分を含む、相互作用する分子または成分との組み合わせは、「FRET対」として公知である。FRET対の相互作用の機構は、対の一方のメンバーの吸光スペクトルが、第1の蛍光体である他方のメンバーの発光スペクトルにオーバーラップすることを必要とする。相互作用する分子または成分が消光体である場合、その吸光スペクトルは蛍光体の発光スペクトルにオーバーラップしなければならない。Stryer, L. 、Ann. Rev. Biochem. 47:819-846(1978);BIOPHYSICAL CHEMISTRY part II, Techniques for the Study of Biological Structure and Function、C. R. CantorおよびP. R. Schimmel、448-455頁、(W.H.Freeman and Co., San Francisco, U.S.A., 1980);およびSelvin, P. R. 、Methods in Enzymology 246:300-335(1995)を参照。効率的なFRET相互作用には、対の吸光スペクトルおよび発光スペクトルが程度の大きなオーバーラップを有することが必要とされる。FRET相互作用の効率は、そのオーバーラップへ線形比例している。Haugland, R. P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63:24-30(1969)を参照。典型的に、大規模なシグナル(すなわち、高度のオーバーラップ)が必要とされる。このため蛍光体-消光体対を含むFRET対は、典型的にはそのような基準で選択される。
【0143】
Matayoshiら、1990、Science 247:954-958において開示された適切なFRET対には、消光成分(または消光標識)としてDABCYL、および蛍光体(または蛍光標識)としてのEDANSが含まれる。DABCYLの吸光スペクトルはEDANSの発光スペクトルと高度にオーバーラップし、これら2つを優れたFRET対にする。
【0144】
様々な標識核酸ハイブリダイゼーションプローブならびにFRETおよびFRET対を利用する検出アッセイ法が公知である。そのようなスキームの一つは、Cardulloら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8790-8794(1988)およびHellerらの欧州特許第0070685号に記載されている。これは、標的DNA鎖の隣接領域に相補的であるオリゴデオキシヌクレオチドの対を含むプローブを使用する。一方のプローブ分子は、その5'末端上に蛍光体である蛍光標識を含有しており、他方のプローブ分子は、その3'末端上に同様に蛍光体である異なる蛍光標識を含有する。プローブが標的配列へハイブリダイズすると、2つの標識は相互に極めて近くへ運ばれる。試料が適切な周波数の光線で刺激されると、1つの標識から他方の標識への蛍光共鳴エネルギー転移が発生する。FRETはこれらの標識からのスペクトル反応における測定可能な変化を生成し、標的の存在のシグナルを出す。標識の1つは「消光体」であってよく、これは本適用において受容したエネルギーを熱として放出する相互作用成分(または分子)を意味する。
【0145】
別の液相スキームは、オリゴデオキシヌクレオチドとFRET対の対を含むプローブを利用する。しかしながら、ここでは2つのプローブ分子は互いに対して、かつ標的DNAの相補鎖に対して、どちらにも完全に相補的である(MorrisonおよびStols、Biochemistry 32:309-3104(1993)ならびにMorrisonの欧州特許出願第0 232 967 A2号を参照)。各プローブ分子には、その3'末端へ結合された蛍光体、およびその5'末端へ結合された消光成分が含まれる。2つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が相互にアニールすると、各々の蛍光体は他方の消光成分の極めて近傍に保持される。プローブがこの構造にあると、その時蛍光体が適切な波長の光線によって刺激される場合、蛍光は消光成分によって消光される。しかし、いずれかのプローブ分子が標的に結合すると、相補的プローブ分子の消光作用は欠失する。この構造において、シグナルが発生する。プローブ分子はあまりに長いので、標的に結合した構造にあるときにFRETによって自己消光することができない。
【0146】
FRET対および鎖置換として公知の現象を利用する液相スキームは、Diamondらの米国特許第4,766,062号;Collinsらの米国特許第4,752,566号;Fritschらの米国特許第4,725,536号および第4,725,537号によって記載されている。典型的には、これらのアッセイ法は二分子核酸複合体を含むプローブを伴う。標的配列のサブセットを含む短い単一鎖が、プローブの標的結合領域全体を含む、長い単一鎖へアニールされる。したがってこの形状にあるプローブは、一本鎖部分および二本鎖部分の両方を含む。これらのプローブは、短い鎖へ付着した32P標識、またはプローブ構造がその複合体であるときに相互の近傍に保持することのできる蛍光体および消光成分の、いずれかをさらに含んでよい。FRET対を利用する他のタイプの分子プローブアッセイ法は、欧州特許出願第0 601 889 A3号に記載されている。
【0147】
FRET対を利用する別のタイプの核酸ハイブリダイゼーションプローブアッセイ法は、Gelfandらの米国特許第5,210,015号、およびLivakらの米国特許第5,538,848号に記載されている「TaqMan(登録商標)」アッセイ法である。このプローブは、FRET対を用いて標識された一本鎖オリゴヌクレオチドである。TaqMan(登録商標)アッセイ法では、DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドプローブが標的鎖にハイブリダイズすると、オリゴヌクレオチドプローブを切断することによって単一または複数ヌクレオチドを放出する。その放出は、FRET対の消光体標識および蛍光体標識を分離する手段を提供する。
【0148】
FRET対を利用するさらに別の核酸ハイブリダイゼーションプローブアッセイ法は、Tyagiらの米国特許第5,925,517号に記載され、これは、「分子ビーコン」と呼ばれる標識オリゴヌクレオチドプローブを利用する。Tyagi, S.およびKramer, F. R.、Nature Biotechnology 14:303-308(1996)を参照。分子ビーコンプローブは、標的の不在下ではその末端領域が相互にハイブリダイズするが、プローブの中心部分がその標的配列へハイブリダイズした場合には分離されるオリゴヌクレオチドである。プローブ-標的ハイブリッドの剛性は、プローブ-標的ハイブリッドおよび末端領域によって形成された分子内ハイブリッドの両方が同時に存在することを排除する。その結果、プローブは構造的変化を受け、ここで末端領域によって形成された小さいハイブリッドが解離し、そして剛性のプローブ-標的ハイブリッドによって、末端領域が相互から分離される。分子ビーコンプローブに関して、中心標的認識配列には、プローブが標的鎖にハイブリダイズしないときに相互にハイブリダイズし「ヘアピン」構造を形成する、アームが隣接し、ここで標的認識配列(一般には「プローブ配列」と呼ばれる)はヘアピン構造の一本鎖ループ内にあり、アーム配列は二本鎖ステムハイブリッドを形成する。プローブが標的にハイブリダイズすると、すなわち標的認識配列が相補的な標的配列へハイブリダイズすると、比較的剛性のらせん構造が形成され、ステムハイブリッドが巻き戻され、アームが強制的に分離される。
【0149】
消光分子、および他の蛍光体であっても、蛍光成分と消光成分が接触するように核酸ハイブリダイゼーションプローブへ付着されるときには、FRETの法則に反する場合であっても、蛍光体のための効率的な消光成分として機能することができる。さらに、そのように構成されたプローブ中の1対の発色団(蛍光性または非蛍光性)の吸光スペクトルは、それが同一の発色団であっても、検出可能な様式で変化する。
【0150】
FRETでは、第1の蛍光体は第1の波長で吸光し、第2のより長い波長で発光する。第1の発色団に近く(FRET範囲は報告によれば10〜100Åである)、かつその吸光スペクトルが発光スペクトルに一定の度合いでオーバーラップする第2の発色団(すなわち、蛍光体または消光体のいずれか)は、発せされたエネルギーの一部または大部分を吸収する。第2の発色団が蛍光体である場合は、発色団は第3の、さらに長い波長で再発光する。または、発色団が消光体である場合は、発色団は熱としてエネルギーを放出する。FRETは波長が上昇する方向に進行する。
【0151】
非FRET蛍光プローブもまた本発明に含まれている。例えばTyagiらの米国特許第6,150,097号(「‘097号特許」)を参照。例えば、‘097号特許は、標識対の吸光スペクトルの変化を、蛍光の変化の代替物としての、検出可能なシグナルとしてどのように使用できるのかを記載している。吸光における変化を利用するときは、標識対はいずれか2つの発色団、つまり蛍光体、消光体およびその他の発色団を含んでよい。標識対は、たとえ同一発色団であってもよい。
【0152】
VIII. プローブ結合の定量
プローブのその相補的ハイブリダイゼーション配列への結合により、使用者は反応槽から内容物を必ずしも除去する必要なく、特定配列の集積を定量することができる。一般に、異なるプローブの検出および弁別を可能にする、あらゆるタイプの標識が、本発明の方法によって使用できる。
【0153】
増幅産物の集積は、当業者に公知のあらゆる方法によって定量できる。例えば、プローブからの蛍光は、特定の周波数での光線の測定によって検出できる。同様に、プローブに連結した酵素反応によって作製される様々な化学的産物の集積を、例えば特定波長での光線の吸光度を測定することによって測定することができる。他の態様では、増幅反応は、増幅産物をを固体支持体上へブロッティングし、そして放射性核酸プローブを用いてハイブリダイズすることによって直接的に定量できる。結合していないプローブを洗い流すと、当業者には公知のように、放射能を測定することによってプローブの量を定量できる。この方法のその他の変形は、ハイブリダイゼーション事象を検出するために化学発光を使用する。
【0154】
増幅産物の測定は、反応が完了した後に実施でき、または「リアルタイム」で(すなわち、反応が生じながら)測定できる。集積した増幅産物の測定が増幅が完了した後に実施される場合は、増幅反応後に検出試薬(例えばプローブ)を添加することができる。または、プローブは増幅反応前または増幅反応中に反応物へ添加でき、したがって増幅の完了後またはリアルタイムのいずれかで増幅産物の測定が可能である。リアルタイム測定は、反応の任意の所与のサイクルでの測定が可能であり、したがって反応全体を通じた産物の集積についてのより多くの情報を提供するので、好ましい。リアルタイムで増幅産物を測定するためには、蛍光プローブの使用が好ましい。
【0155】
当業者であれば、極めて多数の異なる蛍光体を使用できることを認識すると考えられる。本発明の方法および組成物において有用な蛍光体の一部には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシテトラクロロフルオレセイン(TET)、NHS-フルオレセイン、5および/または6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(または6-)ヨードアセトアミドフルオレセイン、5-{[2(および3)-5-(アセチルメルカプト)-スクシニル]アミノ}フルオレセイン(SAMSA-フルオレセイン)、およびその他のフルオレセイン誘導体、ローダミン、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、テキサスレッドスルホニルクロリド、5および/または6カルボキシローダミン(ROX)およびその他のローダミン誘導体、クマリン、7-アミノ-メチル-クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、およびその他のクマリン誘導体、BODIPY(商標)蛍光体、8-メトキシピレン-l,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩のようなCascade Blue(商標)蛍光体、3,6-ジスルホネート-4-アミノ-ナフタルイミドのようなルシファーイエロー(Lucifer yellow)蛍光体、フィコビリタンパク質誘導体、アレクサフルオロ(Alexa fluor)色素(Molecular Probes、Eugene、ORから入手可能)およびその他の当業者に知られている蛍光体が含まれる。有用な蛍光体の一般的一覧については、Hermanson, G. T.、BlOCONJUGATE TECHNIQUES(Academic Press、San Diego、1996)を参照。したがって、各プローブは異なる波長で蛍光を発し、他のプローブからの干渉を受けずに個別に検出できる。
【0156】
IX. プローブシグナルの標準化
本発明はまた、例えばリアルタイム増幅中の示度を含むハイブリダイゼーションシグナルを標準化するための、プローブチェックアッセイ法の使用も提供する。混合物中または混合物間の示度間の変動を減少させるために、プローブのシグナル出力が標準化される。例えば、リアルタイムPCRシステムを含むすべての光学システムは、部位間の結果の比較を複雑にする反応部位毎の変動を有する。以前に記載されたこれらの差を補正するために使用する方法には、反応混合物中に受動標準色素を含めることによって各部位について示度を「標準化する」段階が含まれる。例えば米国特許第5,736,333号を参照。
【0157】
しかしながら、プローブシグナルを標準化するために別個の色素を使用する代わりに、増幅成長曲線を標準化するためにプローブ固有の「バックグラウンド」シグナルを使用することができる。PCRまたは他の増幅反応を開始する前に、プローブの初期シグナル(例えば蛍光)を測定する。この初期シグナル値を使用して、増幅中に得たプローブの標的シグナル値を標準化する(すなわち、プローブが標的核酸に結合していないときに測定されるシグナル値を標準化する)。例えば、図8を参照。プローブの各標的シグナル値は、プローブの標的シグナル値に初期シグナル値を表す尺度係数(scaling factor)を掛ける段階、または初期シグナル値に基づく線形変換を使用する段階を含む多数の方法で、プローブの初期シグナル値へ標準化することができる。一部の好ましい態様では、標的シグナル値は各標的シグナル値を初期シグナル値で割ることによって標準化される。標準化は、例えば線形蛍光プローブ(例えばTaqMan(登録商標))および自己アニーリングしたときに消光される蛍光プローブを含む、プローブシグナルを利用する反応に適用できる。
【0158】
さらに、温度変化に反応して構造を変化させるプローブ(例えば分子ビーコン)に関しては、プローブの初期シグナル値は、プローブの自己アニーリング温度以下の温度T1、またはプローブの自己アニーリング温度を超える温度T2、またはプローブの自己アニーリング温度以下の温度T3、のいずれかで測定することができる。その後、プローブが標的核酸へハイブリダイズしたときに測定されたプローブのその後の標的シグナル値を標準化するために、温度T1、温度T2、または温度T3のいずれかで測定したプローブの初期シグナル値が使用される。本発明の別の好ましい態様では、異なる温度で測定された2つの初期シグナル値間の差が標準化係数として使用される。例えば、図9および10を参照。例えば、温度T2と温度T1での初期プローブシグナル間の差または温度T2と温度T3での初期プローブシグナル間の差は、標的シグナル値を標準化するための標準化係数として使用できる。例えば、実施例3を参照。
【0159】
上記に記載した標準化したシグナル値は定量解析のために有用である。本発明の一部の局面では、標的核酸の初期出発量または濃度が、標準化シグナル値を使用して決定される。図8〜10は、標的核酸の初期量または濃度を定量するために、標準化標的シグナルが選択的に使用される本発明の態様を示している。出発量の決定には、典型的には2つまたはそれ以上の標準を使用して最初に検量線を展開させることを伴う(例えば、校正用核酸配列の少なくとも2つの異なる既知の出発量)。検量線は、閾値サイクル数を出発量または濃度の対数へ関連付ける。例えば、欧州特許第0640828号、Orlandoら、Clin. Chem. Lab Med. 36(5):255-69(1998);Gililand, G. ら、Proc. Natl Acad. Sci. USA、87:2725-2729(1990)を参照。本発明の1つの局面によると、標的核酸配列の初期出発量もしくは濃度は、上記のように標的配列についての標準化シグナル値を計算する段階、標準化シグナル値を使用して標的核酸配列についての閾値サイクル数を決定する段階、および初期出発量を得るために閾値サイクル数を検量線の方程式に挿入する段階によって決定される。
【0160】
これまでの研究は、初期のコピー数は閾値サイクルに基づきリアルタイムPCR解析中に定量できることを証明してきた。Higuchi,Rら,Biotechnology 11:1026-1030(1993)を参照。閾値サイクルは、そのサイクルにおいて蛍光がバックグラウンドを超えて統計的に有意であると決定されるサイクルであると定義される。閾値サイクルは、初期コピー数の対数と反比例している。最初に存在するテンプレート数が多いほど、蛍光シグナルをバックグラウンドを超えて検出できる時点に到達するサイクル数が少ない。本発明の別の局面によると、閾値サイクル数を初期コピー数の対数へ関連付ける検量線は、少なくとも2つの標準での標準化シグナル値を使用して導いてもよい。例えば、初期シグナル値(または2つの異なる温度で測定した初期シグナル値間の差)は、検量線を導くために使用された2つまたはそれ以上の標準の各々について測定される。増幅中にこれらの標準の各々について測定されるその後のシグナルは、その標準について測定された各初期シグナル値(または初期シグナル値間の差)へ標準化される。その後、各標準についての標準化閾値を使用して、その標準についての閾値サイクル数を決定することができる。閾値サイクル数が各標準について決定されると、閾値サイクル数および標準の既知の出発量から検量線が導かれる。この検量線を使用して、上記のように試料中の標的核酸の出発量もしくは濃度を決定することができる。検量線を導くために使用される標準は、標的核酸配列と同一反応槽中で(内部標準)、または別個の増幅反応中で(外部標準)増幅させることができる。現在は閾値サイクル数を使用する定量技法が好ましいが、標準化シグナル値の終末点解析を使用して、標的核酸の初期出発量または濃度を定量することも可能である。
【0161】
X. 本発明の装置
本発明は、本発明の方法を実施するために有用である装置を提供する。一部の態様によると、本発明は核酸を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験する装置を提供し、ここでプローブは、増幅反応に導入されたときに、シグナルを発することによって核酸の集積を検出する。本装置は、少なくとも(a)反応混合物の温度を変化させるための温度制御システム;(b)少なくとも1つのプローブの蛍光を測定するための少なくとも1つの検出機構;ならびに(c)温度制御システムおよび検出機構と連絡している制御装置を備えている。一部の態様では、制御装置は、(i)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および(ii)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを少なくとも1つの閾値と比較することによってプローブの完全性を決定する段階を実施するようにプログラムされる。
【0162】
一部の態様では、検出機構は蛍光を検出する。検出機構は、一般に光増倍管、CCD、光ダイオード、または他の公知の検出器を備えている。一部の態様では、各検出器はPIN光ダイオードである。例えばPCT国際公開公報第99/60380号を参照。本発明の装置および方法において使用するための適切な検出機構には、蛍光、放射能、比色法、X線回折もしくはX線吸収、磁気、または酵素活性によって検出可能なシグナルを測定する検出機構が含まれる。核酸配列を標識するための適切な標識には、例えば蛍光体、発色団、放射性同位体、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンド(例えばビオチン-アビジン)が含まれる。本発明において使用するための別の適切な検出機構は、核酸配列の量または濃度を示す、1つまたは2つ以上の電気信号(例えば導電率、インダクタンス、抵抗、またはキャパシタンス)を検出かつ測定する。
【0163】
さらに、一部の態様では、制御装置は測定段階は、第1、第2、および第3の時点からなる群より選択される2つまたはそれ以上の時点でプローブの蛍光を測定するようにプログラムされ、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、そして第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満である。同様に、検出する段階は、2つまたはそれ以上の時点におけるプローブの蛍光を、2つまたはそれ以上の閾値と比較する段階を含んでよい。一部の態様では、制御装置は反応混合物の温度を変化させるために温度制御システムへシグナルを送信する。
【0164】
一部の態様では、制御装置は反応混合物の温度を変化させるようにプログラムされる。例えば、制御装置は、第1の時点の前および第2と第3の時点との間に、反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ冷却し、かつ第1の時点と第2の時点との間に、反応混合物の温度を自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させるように、温度制御システムへシグナルを送信することができる。
【0165】
別の態様では、試料中のポリヌクレオチドを定量するために、少なくとも1つのプローブの蛍光を標準化するための装置が提供される。一部の態様では、プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、プローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する。装置は、例えば(a)プローブの蛍光を測定するための少なくとも1つの検出機構;および(b)検出機構と連絡している制御装置を含む。制御装置は、例えば(i)プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満におけるプローブの第1の蛍光値、プローブの自己アニーリング温度を超える温度でのプローブの第2の蛍光値、および標的ポリヌクレオチドへ結合したプローブの標的蛍光値を測定する段階を含む段階を実行するようにプログラムされる。制御装置は、上記の標準化技法のいずれかを使用して、例えば標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって、標的蛍光値を標準化するようにさらにプログラムされうる。
【0166】
上記のように、本発明の方法において有用な一部のプローブは、温度に反応して構造を変化させる一方、本発明の方法において有用な他のプローブは温度に反応して構造を変化させない。例えば、本発明の方法において有用なプローブには、分子ビーコンならびにTaqman(登録商標)プローブが含まれる。このようなプローブに関しては、制御装置は、プローブの1つのシグナルを測定するように検出器へシグナルを送信するようにプログラムされうる。これらの態様では、検出機構と連絡している制御装置は、プローブの試験シグナル値を測定する段階、標的ポリヌクレオチドへ結合したプローブの標的シグナル値を測定する段階、および標的蛍光値をプローブの試験シグナル値で割ることによって標的シグナル値を標準化する段階を含む段階を実行するように、プログラムされうる。
【0167】
上記に列挙した態様の一部では、装置は反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度以下の温度へ冷却するための温度制御システムをさらに含む。
【0168】
XI. 本発明のコンピュータプログラム製品
本発明は、本発明の方法を実施するために有用であるコンピュータプログラム製品を提供する。一部の態様では、本発明は、核酸配列を検出するための少なくとも1つのプローブのシグナルを、1つまたは複数の時点で測定するための少なくとも1つの検出機構を含み、かつプローブを含有する反応混合物の温度を変化させるための温度制御システムを含む機械によって読み取ることのできるコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階、および1つまたは複数の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較することによってプローブの完全性を決定する段階を含む段階を実行するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化する。一部の態様では、プローブによって生成されるシグナルは蛍光である。
【0169】
一部の態様では、コンピュータで読み取り可能な製品は、検出機構を介してプローブのシグナルに対応するデータを受け入れる。その後、検出機構から、またはメモリから閾値を取り出すことによってのいずれかで、少なくとも1つの閾値が得られる。
【0170】
一部の態様では、本命令のプログラムは、(a)第1、第2、および第3の時点からなる群より選択される2つまたはそれ以上の時点で、プローブの蛍光を測定する段階であって、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、そして第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満である段階;および(b)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも2つまたはそれ以上の閾値と比較することによってプローブの完全性を決定する段階を含む。これらの態様の一部では、命令のプログラムは、反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超えて上昇させる段階、および引き続いて反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させる段階をさらに含む。
【0171】
一部の態様では、決定する段階は、(a)第1および第2の時点におけるプローブの蛍光の差、または(b)第2および第3の時点におけるプローブの蛍光の差のいずれかを閾値と比較する段階を含む。
【0172】
本明細書に記載したように、閾値は典型的には無傷プローブのシグナルに基づく。さらに、命令のプログラムは、反応混合物中の少なくとも2つの異なるプローブの完全性を決定する段階を含んでよく、ここでプローブは異なる核酸配列へ結合することが可能である。
【0173】
本発明のまた別の局面では、(a)プローブの第1の蛍光値をプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度で測定する段階;(b)プローブの第2の蛍光値をプローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定する段階;(c)標的ポリヌクレオチドに結合しているプローブの標的蛍光値を測定する段階;および(d)第2の蛍光値と第1の蛍光値との差によって標的蛍光値を標的蛍光値へ標準化する段階を実行するコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラム製品は、上記の標準化方法のいずれかを使用して、例えば標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって、標的蛍光値を標準化することができる。典型的には、機械は、プローブを含有する反応混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ冷却するための温度制御システムをさらに含む。さらに、一部の態様では、命令のプログラムは、プローブを含有する反応混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および反応混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ冷却する段階を含む。
【0174】
さらに、コンピュータプログラムは、(a)プローブの1つの試験シグナル値を測定する段階;(b)標的ポリヌクレオチドに結合したプローブの標的シグナル値を測定する段階;および(c)標的シグナル値をプローブの試験シグナル値で割ることによって標的シグナル値を標準化する段階を含む段階を実施するために、機械によって実行可能な命令のプログラムを具現化できる。例えば、コンピュータプログラム製品は、上記のような標準化方法のいずれかを使用して、例えば標的シグナル値を試験シグナル値で割ることによって、標的シグナル値を標準化することができる。
【0175】
以下の実施例は、主張された本発明を例示するために提示するが、本発明を限定するものではない。
【0176】
実施例1
本実施例は、プローブの蛍光強度を所定の値と比較することによって、自己アニーリングしたときに消光される蛍光プローブの完全性を評価するための方法を例示する。
【0177】
分子ビーコンプローブは、レポーターとしてFAMを用いて5'末端で標識され、非蛍光消光体のDABCYLを用いて3'末端で標識される。5'末端から内側の6ヌクレオチドは、3'末端の6ヌクレオチドと相同である。十分な低温および十分な塩の存在下では、これらの配列はハイブリダイズして「ステム」構造を形成し、ビーコンは蛍光レポーターおよび消光体を近接させるヘアピン構造を形成する(図11)。これは、蛍光レポーターの消光をもたらす。
【0178】
プローブの完全性は、1つまたは複数の温度でプローブの蛍光強度を読み取ることによって決定することができる。ステム配列の融点(Tm)未満の温度および適正な塩濃度の存在下では、レポーターが消光されるので蛍光は低いと考えられる。温度に依存して、温度を上昇させることにより、ステム配列を部分的または完全に変性させ、蛍光の増加をもたらすと考えられる。
【0179】
無傷の完全に機能的なプローブについての結果と比較すると、試験プローブの蛍光示度はプローブの完全性についての洞察を提供することができる。PCRアッセイ法におけるプローブの蛍光示度と機能的性能との間に相関関係を確立することができる。そこで「プローブチェックアッセイ法」からの結果は、アッセイ法におけるプローブの機能的性能の尺度として使用できる。
【0180】
図12および13は、無傷プローブ、ならびに無傷プローブおよび切断プローブの混合物についてのプローブチェックアッセイ法の結果およびPCR結果を示している。いずれの場合も、プローブの最終濃度は200nMであった。PCR反応混合物の蛍光は、50℃(温度T1)および63℃(温度T2)および再び50℃(温度T3)で測定した。表4を参照。100%無傷および60%無傷のプローブ(図13)を含有するPCR反応混合物のプローブチェック蛍光示度においては有意差があり、この差は不良なPCR性能と関連付けることができる。
【0181】
(表4)無傷および部分的に無傷の分子ビーコンプローブについてのプローブチェックの結果

【0182】
実施例2
本実施例は、変性プローブと無傷プローブの混合物からの結果に基づく閾値の決定を例示する。
【0183】
無傷の完全に機能的なプローブおよび切断プローブの混合物を調製し、プローブチェックおよびリアルタイムPCRアッセイ法の両方によって評価した。プローブ混合物は、100%から0%までの無傷プローブを、10%間隔(例えば90%、80%、70%等)で変化させた。本実施例における非機能的プローブは、ループ配列において切断したプローブであった。切断は、ステム配列の不安定性をもたらし、ステム配列のアニーリング温度未満の温度における、その後のプローブ蛍光の増加を引き起こす。
【0184】
リアルタイム定量結果を、無傷プローブおよび切断プローブの混合物を使用して標的テンプレートについて入手した。さらに、各プローブ混合物についてプローブチェックアッセイ法を実施した。プローブチェックのために、PCR反応混合物の蛍光を、T1(プローブの自己アニーリング温度未満の温度)およびT2(プローブの自己アニーリング温度を超える温度)の2つの温度で読み取った。これらの蛍光示度における差(T2-T1)をその後プローブチェック値として使用した。
【0185】
100%〜80%間の無傷プローブを含有するプローブ混合物は、許容可能なPCR性能を有し、およそ35サイクルにおいて、増加する蛍光示度を有していた。混合物中の劣化したプローブの比率が高くなるにつれて、不良なPCR結果を引き起こす。例えば、70%無傷プローブ混合物は、これより後のサイクル数においては蛍光の有意な増加を示さなかった。いっそう低い無傷プローブを含む混合物については、蛍光示度はサイクル数の関数として低下した。これらの結果に基づき、100蛍光単位のプローブチェック閾値(T2-T1)(図14)を使用して、切断プローブと無傷プローブの混合物のPCR性能を予測できる。
【0186】
実施例3
本実施例は、蛍光示度の精度を向上させるためのプローブチェック法の有益性を例示する。
【0187】
蛍光機器、および特に、各反応部位について異なる蛍光光度計を含有するSmart Cycler(登録商標)(Cepheid、Sunnyvale、CA)のような機器についての、光学的示度の精度を向上させるプローブチェック機能性の能力を証明するために、2種の異なる機器を使用したPCRアッセイ法を実施し、その後プローブチェック標準化を行った、および行っていない曲線ファミリー間の終末点値の精度を比較した。試験のために、50mM Tris緩衝液、8mM MgCl2、450μg/mLのBSA、400nMのフォワードプライマー、400nMのリバースプライマー、200nMのFAMプローブSagB1、200μMのdNTP混合物、1.25ユニットのTaqポリメラーゼ、および9000コピーのGBSゲノムDNAから構成される、B群溶連菌(Group B streptococcus)を検出するためのPCRを調製した。25μLのSmart Cycler反応槽16個を充填し、Smart Cycler(登録商標)内に配置した。プローブチェックは、蛍光バックグラウンド減算をせずに、PCRの直前に行い、50℃(温度T1)で初めに読み取り、その後63℃(温度T2)、および再び50℃(温度T3)で読み取った。その後PCRを開始し、最初は95℃で180秒間保持し、その後45サイクルのPCR(95℃で5秒間;光学読取りとともに56℃で14秒間;および72℃で5秒間)を実施した。2つの異なる機器の各々で8個の反応を実施し、データは解析およびグラフ表示のためにエクセル・スプレッドシート上へエクスポートされた。
【0188】
1つはプローブチェック標準化を行わずに、そして1つはプローブチェック標準化を行う2つの方法でデータを解析することによって、2つのグラフを作製した。図15は標準化を行わなかった16個の反応を示しており、バックグラウンドを減算した蛍光値対サイクル数のプロット図である。このデータは、プローブチェックアッセイ法を使用して標準化した、すなわちバックグラウンドを減算した各蛍光値を、その各反応部位からのプローブチェック温度T2値で割るか、または温度T2におけるプローブチェックシグナル値と温度T3におけるプローブチェックシグナル値との差で割った。図16および17は、プローブチェック標準化を行った16個の反応を示している。
【0189】
各データセットについての%CV(標準偏差/平均値×100)および%最大−最小値(最大値−最小値/平均値×100)を計算し、下記の表に示した。
【0190】

【0191】
これらのデータは明らかに、プローブチェック測定値を使用して蛍光示度の精度を統計的有意に向上させることができることを証明している。これは、光学システム構成要素において生じうる浮動(drift)に対する補正手段を提供することによって機能する。終末点蛍光示度に依存する定量方法については、定量の正確度および精度は少なくとも約3倍向上する。
【0192】
本明細書で引用したすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願の各々が、具体的かつ個別に参照として組み入れられると示されたかのように、参照として本明細書に組み入れられる。
【0193】
上記の発明は、明確な理解を目的として例示および実施例によっていくらか詳細に記載してきたが、当業者には、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、それに対する一定の変更および改変を成しうることは、容易に明白であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】プローブの完全性を決定する一般的方法を示す流れ図である。
【図2】プローブの完全性を決定する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図3】プローブの完全性を決定する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図4】プローブの完全性を決定する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図5】プローブの完全性を決定する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図6】プローブの完全性を決定する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図7】プローブの完全性を決定する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図8】プローブの標的シグナルをプローブの試験シグナルへ標準化する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図9】プローブの標的シグナルを標準化する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図10】プローブの標的シグナルを標準化する方法の一部の態様を示す流れ図である。
【図11】分子ビーコンプローブの例を示す。
【図12】特定の増幅配列に対して特異的である2つの異なるプローブの蛍光を示す。蛍光は、増幅サイクル数に比較して測定される。
【図13】異なる温度における100%無傷分子ビーコンプローブおよび60%無傷分子ビーコンプローブの差を示す。
【図14】反応混合物中の無傷分子ビーコンプローブの画分と、T2における蛍光引くT1における蛍光として計算したプローブチェック示度との間の関係を示した図である。
【図15】シグナルが標準化されない場合の、多数の異なる反応からの増幅産物の集積を示す。
【図16】各増幅産物についてのシグナル値が各プローブチェック値へ標準化されている場合の、多数の異なる反応からの増幅産物の集積を示す。
【図17】シグナル値が、異なる温度で測定された2つのプローブチェック値間の差へ標準化されている場合の、多数の異なる反応からの増幅産物の集積を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験する方法であって、
(a)核酸に結合することのできる少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
(c)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つのプローブの完全性を試験する方法であって、
(a)核酸に結合することのできる少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)2つまたはそれ以上の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
(c)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブのシグナルの差を、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を含む方法。
【請求項3】
混合物の温度が、2つまたはそれ以上の時点で異なる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
シグナルが蛍光である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、プローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
プローブのシグナルは、プローブが標的核酸分子に結合していないときに測定される、請求項1または5記載の方法。
【請求項7】
プローブの蛍光は、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度で測定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
プローブの蛍光は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
測定する段階は、第1、第2および第3の時点からなる群より選択される、2つまたはそれ以上の時点でプローブの蛍光を測定する段階を含み、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、かつ第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満である、請求項5記載の方法であって;
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度から、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満へ低下させる段階をさらに含む方法。
【請求項10】
決定する段階は、第1および第3の時点におけるプローブの蛍光を少なくとも1つの閾値と比較する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
決定する段階は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光を少なくとも1つの閾値と比較する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
決定する段階は、第1および第2の時点におけるプローブの蛍光の差を閾値と比較する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
決定する段階は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光の差を閾値と比較する段階を含む、請求項9記載記載の方法。
【請求項14】
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階、および混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度からプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階を含み;かつ
測定する段階は、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階の後に、プローブの蛍光を測定する段階を含む、請求項5記載の方法。
【請求項15】
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階を含み;かつ
測定する段階は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させる段階の後に、プローブの蛍光を測定する段階を含む、請求項5記載の方法。
【請求項16】
測定する段階は、温度を上昇させる段階の前に、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブの蛍光を測定する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
プローブのシグナルは2つまたはそれ以上の時点で測定され、決定する段階は、2つまたはそれ以上の時点におけるシグナルを2つまたはそれ以上の閾値と比較する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項4記載の方法。
【請求項19】
閾値は無傷プローブのシグナルに基づく、請求項1または2記載の方法。
【請求項20】
プローブは分子ビーコンである、請求項5記載の方法。
【請求項21】
方法の少なくとも一部は増幅反応中に実施され、増幅反応は、
(a)水性混合物中において、
(i)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブ;
(ii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、ならびに第1の5'プライマー、第1の3'プライマーおよび標的プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む標的テンプレート;
(iii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および第1の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第1の対照テンプレート;ならびに
(iv)第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、ならびに第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、標的プローブ、および第2の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第2の対照テンプレート
を混合する段階;
(b)増幅産物を作製するために増幅反応を実施する段階;ならびに
(c)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブの、増幅産物への結合を定量する段階
を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項22】
混合物中の少なくとも2つの異なるプローブに対して実施され、ここでプローブは異なる核酸配列へハイブリダイズするように設計される、請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
混合物が色素をさらに含む、請求項1または2記載の方法であって、色素からのシグナルを測定する段階、およびプローブからのシグナルを色素からのシグナルへ標準化する段階をさらに含む方法。
【請求項24】
プローブが混合物中の核酸に結合することができる、核酸を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験するための装置であって、以下を含む装置:
a)混合物の温度を変化させるための温度制御システム;
b)少なくとも1つのプローブのシグナルを測定するための、少なくとも1つの検出機構;ならびに
c)温度制御システムおよび検出機構と連絡している制御装置であって、
i)1つまたは複数の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
ii)1つまたは複数の時点におけるプローブのシグナルを、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【請求項25】
プローブが混合物中の核酸に結合することができる、核酸を検出するための少なくとも1つのプローブの完全性を試験する装置であって、以下を含む装置:
a)混合物の温度を変化させるための温度制御システム;
b)少なくとも1つのプローブのシグナルを測定するための、少なくとも1つの検出機構;ならびに
c)温度制御システムおよび検出機構と連絡している制御装置であって、
i)2つまたはそれ以上の時点でプローブのシグナルを測定する段階;および
ii)2つまたはそれ以上の時点におけるプローブのシグナルの差を、少なくとも1つの閾値と比較することによって、プローブの完全性を決定する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【請求項26】
制御装置は、
a)混合物の温度を変化させるように;かつ
b)2つの異なる温度でプローブのシグナルを測定するように、さらにプログラムされる、請求項25記載の装置。
【請求項27】
シグナルが蛍光である、請求項24または25記載の装置。
【請求項28】
プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によって切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項24または25記載の装置。
【請求項29】
プローブは蛍光体および消光剤を含み、プローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する、請求項27記載の装置。
【請求項30】
制御装置が以下の段階を実施するようにプログラムされる、請求項29記載の装置:
第1、第2および第3の時点からなる群より選択される、2つまたはそれ以上の時点でプローブの蛍光を測定する段階であって、ここで第1の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満であり、第2の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度を超えており、かつ第3の時点では、混合物の温度はプローブの自己アニーリング温度またはそれ未満である段階;
2つまたはそれ以上の時点の間で混合物の温度を変化させる段階;および
2つまたはそれ以上の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較する段階。
【請求項31】
プローブのシグナルは、プローブが標的に結合していないときに測定される、請求項24または29記載の装置。
【請求項32】
制御装置は、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブの蛍光を測定するようにプログラムされる、請求項31記載の装置。
【請求項33】
制御装置は、プローブの自己アニーリング温度を超える温度でプローブの蛍光を測定するようにプログラムされる、請求項31記載の装置。
【請求項34】
制御装置は、第1の時点と第2の時点との間に、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ第2の時点と第3の時点との間に、混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ低下させるようにプログラムされる、請求項30記載の装置。
【請求項35】
制御装置は、第1および第3の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較するようにプログラムされる、請求項34記載の装置。
【請求項36】
制御装置は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光を、少なくとも1つの閾値と比較するようにプログラムされる、請求項34記載の装置。
【請求項37】
制御装置は、第1および第2の時点におけるプローブの蛍光の差を、閾値と比較するようにプログラムされる、請求項34記載の装置。
【請求項38】
制御装置は、第2および第3の時点におけるプローブの蛍光の差を、閾値と比較するようにプログラムされる、請求項34記載の装置。
【請求項39】
制御装置は、
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ;
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度から、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させ;かつ
プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度へ低下させる段階の後に、プローブの蛍光を測定するようにプログラムされる、請求項29記載の装置。
【請求項40】
制御装置は、
混合物の温度を、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度から、プローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ;かつ
プローブの蛍光を、プローブの自己アニーリング温度を超える温度で測定するようにプログラムされる、請求項29記載の装置。
【請求項41】
制御装置は、上昇させる段階の前に、プローブの自己アニーリング温度またはそれ未満の温度でプローブの蛍光を測定するようにさらにプログラムされる、請求項40記載の装置。
【請求項42】
閾値は無傷対照プローブのシグナルに基づく、請求項24または25記載の装置。
【請求項43】
制御装置は、混合物中の少なくとも2つの異なるプローブのシグナルを測定するようにさらにプログラムされ、ここでプローブは異なる核酸配列へハイブリダイズするように設計される、請求項24または25記載の装置。
【請求項44】
制御装置は、色素からのシグナルを測定し、かつプローブからのシグナルを色素からのシグナルへ標準化するようにさらにプログラムされる、請求項24または25記載の装置。
【請求項45】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、
(a)蛍光体および消光剤を含み、標的核酸分子とハイブリダイズすることのできる、少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)第1の温度でプローブの第1の蛍光値を測定する段階;
(c)第2の温度でプローブの第2の蛍光値を測定する段階;
(d)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的蛍光値を測定する段階;ならびに
(e)標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差へ標準化する段階であって、それにより標準化された蛍光値が、試料中の標的核酸の存在または量を示す段階
を含む方法。
【請求項46】
プローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
第1の温度はプローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度であり、かつ第2の温度はプローブの自己アニーリング温度を超える温度である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項45記載の方法。
【請求項49】
標的蛍光は、標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって標準化される、請求項45記載の方法。
【請求項50】
プローブは分子ビーコンである、請求項45記載の方法。
【請求項51】
標的核酸が、以下の段階を含む増幅反応の産物である、請求項45記載の方法:
(a)水性混合物中において、
(i)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブ;
(ii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、ならびに第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および標的プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む標的テンプレートと;
(iii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および第1の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第1の対照テンプレート;ならびに
(iv)第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、ならびに第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、標的プローブ、および第2の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第2の対照テンプレート
を混合する段階;
(b)増幅産物を作製するために増幅反応を実施する段階;ならびに
(c)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブの、増幅産物への結合を定量する段階。
【請求項52】
標準化された蛍光値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量する段階をさらに含む、請求項45記載の方法。
【請求項53】
標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、かつ蛍光体および消光剤を含む少なくとも1つのプローブの蛍光を、混合物中のポリヌクレオチドを定量するために標準化するための装置であって、以下を含む装置:
a)プローブの蛍光を測定するための少なくとも1つの検出機構;ならびに
b)検出機構と連絡している制御装置であって、
(i)1)第1の温度におけるプローブの第1の蛍光値;
2)第1の温度とは異なる第2の温度におけるプローブの第2の蛍光値;および
3)プローブが標的核酸に結合しているときの、プローブの標的蛍光値
を測定する段階;ならびに
(ii)標的蛍光値を、第2の蛍光値と第1の蛍光値との差へ標準化する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【請求項54】
プローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する、請求項53記載の装置。
【請求項55】
第1の温度はプローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度であり、かつ第2の温度はプローブの自己アニーリング温度を超える温度である、請求項53記載の装置。
【請求項56】
制御装置は、標準化された蛍光値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量もしくは濃度を定量するようにプログラムされる、請求項53記載の装置。
【請求項57】
標的蛍光は、標的蛍光値を第2の蛍光値と第1の蛍光値との差で割ることによって標準化される、請求項53記載の装置。
【請求項58】
混合物の温度を上昇および冷却させるための温度制御システムをさらに含む、請求項53記載の装置。
【請求項59】
プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項53記載の装置。
【請求項60】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、
(a)核酸に結合することのできる少なくとも1つのプローブを含む混合物を提供する段階;
(b)プローブの少なくとも1つの試験シグナル値を測定する段階;
(c)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的シグナル値を測定する段階;および
(d)標的シグナル値をプローブの少なくとも1つの試験シグナル値へ標準化する段階であって、それにより標準化されたシグナル値が試料中の標的核酸の存在もしくは量の指標である段階
を含む方法。
【請求項61】
標的シグナル値は、標的シグナル値を少なくとも1つの試験シグナル値で割ることによって標準化される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
シグナルが蛍光である、請求項60記載の方法。
【請求項63】
少なくとも1つの試験シグナル値は、プローブが標的核酸に結合していないときに測定される、請求項60記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度にあるときに測定される、請求項60または63記載の方法。
【請求項65】
少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度に等しいか、またはそれ未満の温度にあるときに測定される、請求項60記載の方法。
【請求項66】
プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、プローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する、請求項60記載の方法。
【請求項67】
プローブは、増幅された核酸にプローブがハイブリダイズし、それにより蛍光を発するときに、DNAポリメラーゼの5'-エキソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断されるように、蛍光体および消光剤で標識されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項60記載の方法。
【請求項68】
少なくとも2つの異なるプローブの標準化された標的シグナル値を比較する段階をさらに含み、各プローブは1つの試料中の異なる標的ポリヌクレオチドへハイブリダイズするように設計される、請求項60記載の方法。
【請求項69】
プローブは分子ビーコンである、請求項66記載の方法。
【請求項70】
標的ポリヌクレオチドが、以下の段階を含む増幅反応の産物である、請求項60記載の方法:
(a)水性混合物中において、
(i)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブ;
(ii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、ならびに第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および標的プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む標的テンプレート;
(iii)第1の5'プライマー、第1の3'プライマー、および第1の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第1の対照テンプレート;ならびに
(iv)第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、ならびに第2の5'プライマー、第2の3'プライマー、標的プローブ、および第2の対照プローブに対するハイブリダイゼーション部位を含む第2の対照テンプレート
を混合させる段階;
(b)増幅産物を作製するために増幅反応を実施する段階;ならびに
(c)標的プローブ、第1の対照プローブ、および第2の対照プローブの、増幅産物への結合を定量する段階。
【請求項71】
標準化されたシグナル値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量する段階を含む、請求項60記載の方法。
【請求項72】
プローブが混合物中の核酸に結合することができる、少なくとも1つのプローブのシグナルを標準化するための装置であって、以下を含む装置:
a)プローブのシグナルを測定するための少なくとも1つの検出機構;ならびに
b)検出機構と連絡している制御装置であって、
(i)プローブの少なくとも1つの試験シグナル値を測定する段階;
(ii)プローブが標的核酸に結合しているときに、プローブの標的シグナル値を測定する段階;および
(iii)標的シグナル値を、プローブの少なくとも1つの試験シグナル値へ標準化する段階
を実施するようにプログラムされる制御装置。
【請求項73】
標的シグナル値は、標的シグナル値をプローブの少なくとも1つの試験シグナル値で割ることによって標準化される、請求項72記載の装置。
【請求項74】
制御装置は、標準化されたシグナル値を使用して、混合物中の標的核酸の初期出発量または濃度を定量するようにさらにプログラムされる、請求項72記載の装置。
【請求項75】
シグナルが蛍光である、請求項72記載の装置。
【請求項76】
プローブは標的核酸分子とハイブリダイズすることができ、かつプローブは蛍光体および消光剤を含み、ここでプローブを加熱する段階により、プローブは第1の構造から第2の構造へと構造を変化させ、それによって蛍光体の蛍光が、第2の構造における蛍光体の蛍光と比較して、第1の構造において消光または変化するように、蛍光体と消光剤との間の距離が変化する、請求項75記載の装置であって;
混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度を超える温度へ上昇させ、かつ混合物の温度をプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度へ冷却するための温度制御システムを含む装置。
【請求項77】
少なくとも1つの試験シグナル値は、プローブが標的核酸に結合していないときに測定される、請求項76記載の装置。
【請求項78】
少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度を超える温度にあるときに測定される、請求項76または77記載の装置。
【請求項79】
少なくとも1つの試験シグナル値は、混合物がプローブの自己アニーリング温度未満またはそれに等しい温度にあるときに測定される、請求項76記載の装置。
【請求項80】
制御装置は、少なくとも2つの異なるプローブの標準化された標的シグナル値を比較するようにプログラムされ、ここで各プローブは、1つの試料中の異なる標的ポリヌクレオチドへハイブリダイズするように設計される、請求項72記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−165475(P2009−165475A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40061(P2009−40061)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【分割の表示】特願2003−514378(P2003−514378)の分割
【原出願日】平成14年7月16日(2002.7.16)
【出願人】(504019928)
【Fターム(参考)】