説明

プーリおよび駆動ベルトを持つ変速機

本発明は、駆動ベルト(3)と、一次プーリ(1)および二次プーリ(2)とを備え、それぞれ2個の、それぞれのプーリ軸(6,7)に設置された円錐形状のプーリ滑車(4,5)からなり、その間には、駆動ベルト(3)が可変半径位置(R;Rmin;Rmax)に保持される無段変速機に関する。駆動ベルト(3)は、駆動ベルト(3)の円形張力要素(31)に沿って可動な横断要素(32)を備え、横断要素(32)は、プーリ滑車(4,5)の同様に凸の曲線を描く、軸方向を向いて外側滑車面(10)と摩擦接触する凸の曲線を描くプーリ接触面(40)を備える。この変速機において、少なくとも一方のプーリ(1、2)の外側滑車面(10)の環状半径方向内部(10f)が、接線断面に見える直線または凹輪郭のいずれかを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1前文に記載する、本質的に円錐形の滑車を持つ2個のプーリと駆動ベルトとを備える無段変速機に関する。この種の変速機の設計および動作は、例えば特許文献1から周知とされ、これはまた、駆動ベルトおよびチェーン等の周知タイプの駆動要素の1つを示す。特許文献1に示す駆動ベルトは一般にファン・ドーン・プッシュベルトとして知られ、例えば、特許文献2により詳細に述べられる。
【背景技術】
【0002】
このプッシュベルトは、特に下部体、中間体、上部体からそれぞれなる一連の横断要素に特徴付けられる。下部体の横側面またはプーリ接触面はこの場合、変速機の駆動または一次プーリの滑車、および従動または二次プーリの滑車と接触するようにされる。上部体に面する下部体の上部側の一部、すなわち、その半径方向外向きの縁は、連続張力要素の支持面を形成するが、これは一般に、金属製の、入れ子で、平坦で、比較的薄い多数のリングの1以上の群によって形成される。横断要素の上部体は張力要素の半径方向外側に位置するが、中間体は下部体と上部体を張力要素の高さで互いに接続する。横断要素は、張力要素の周方向に対して移動可能に駆動ベルトに収納される。
一般に、横断要素の下部体は、傾斜縁、すなわち、実質的に一定の厚みの横断要素の上側と、プーリ接触面の間の前面または後面に延びる先細の下側との間に全体としてやや丸みを帯びた過渡部として知られるものを備える。傾斜縁によって、隣接する横断要素間の傾斜または回転運動が可能になり、駆動ベルトがその周方向上の、プーリの位置で必要な曲線経路を通る。
ファン・ドーン・プッシュベルトは、張力要素の全周が実質的に連続する一連の横断要素に実質的に満たされ、摩擦力がその間に伝達されるようプーリの滑車間にクランプされる多数の前記横断要素を含む。その結果もあり、互いに前進する横断要素によって、張力要素の支持と案内により駆動力は変速機のプーリの間で伝達される。
【特許文献1】国際PCT公開第WO−A−2004/111500号
【特許文献2】特許公開第EP−A−1221563号
【発明の開示】
【0003】
本発明は特に、横断要素のプーリ接触面と、動作中に相互接触するプーリの滑車外面の両方が、半径方向に凸の曲線を描くタイプの変速機に関する。幾何学的に、すなわち、何の力も付加されていない場合、点接触は、より従来型の変速機設計で適用される非連続の可能性のある線接触ではなく、この変速機タイプで実現される。この点接触の結果、滑車と横断要素の間の接触圧が、中に通常の力が加わっている時、特にベルトが一次プーリの滑車の間の最小限の半径を走行する場合(「ロー比」)に比較的高くなる。かかる接触圧およびそれに関連する応力は、本変速機タイプの設計および/または応用の限定要因となる場合がある。
【0004】
本発明の目的は、前記点接触のこのような不利な結果を緩和することである。本発明によると、この目的は、請求項1の特徴部分の手段によって達成される。この手段により、接触圧が最高となるようなベルトの最小限走行半径において、クランプ力が付加された時、横断要素とプーリ滑車との間に実現される集中接触が小さくなり、関連する接触圧と応力が有利に低下するため、前記接触圧は有利に減少される。 望ましくは、本発明のより詳細な実施例では、プーリ滑車の半径方向輪郭の半径方向内部の凹輪郭は、横断要素のプーリ接触面の凸輪郭と実質的に一致する。
【0005】
本発明を、添付の図面を例として参照し、以下により詳細に説明する。
(図面の簡単な説明)
斜視図として示す図1は、従来技術による2個のプーリと駆動ベルトとを持つ無断変速機の概略図である。
図2は、変速機の一部の断面において、プーリのベルトの走行半径に対するプーリ滑車とベルトの間の相互作用を略図として示す。
図3は、変速機の一部の断面において、プーリのベルトの走行半径に対するプーリ滑車とベルトの間の相互作用を略図として示す。
図4は、ベルトが最小限の走行半径でプーリ滑車と相互作用する位置における図3の断面の詳細の拡大である。
図5は、図4の変速機詳細であるが、プーリ滑車は本発明に従って設計される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、従来技術による無段変速機の中央部を略図として示す。周知の変速機は、一次トルクTpでエンジン(図示せず)によって駆動可能な変速機の入力軸6の一次プーリ1と、二次トルクTsで負荷(図示せず)を駆動可能な変速機の出力軸7の二次プーリ2とからなる。両プーリ1,2は、それぞれのプーリ軸6、7に固定される実質的に円錐形のプーリ滑車5と、前記軸6,7に対して軸方向に変位可能な同様に実質的に円錐形のプーリ滑車4とを備える。駆動ベルト3は、それぞれの付勢手段(図示せず)によってそれぞれの固定滑車5に向かって付勢されるそれぞれの可動滑車4により、2個のプーリ1、2のそれぞれのプーリ滑車4、5の間にクランプされる。各プーリの滑車4、5の間で駆動ベルト3は曲線経路を描き、すなわち、いわゆる走行半径Rに位置する。駆動ベルト3とプーリ1、2の間の摩擦の助けで2個のプーリ軸6、7の間に機械的力を伝達することができる。ここで、変速比は駆動ベルト3の半径Rを走行する一次プーリおよび二次プーリの間の商で限定される。
駆動ベルト3を、図1の変速機の接線向き断面でより詳しく示すが、これはいわゆるプッシュベルトタイプで、一連の横断要素32からなり、それぞれが下部体33と、上部体35と、下部体33および上部体35を互いに接続する中間体34とからなる。上部体35を向く、下部体33の上側の一部、すなわち、中間体34のいずれかの側でその半径方向外側を向く縁36は、連続的張力要素31の2個の支持面36を形成し、これは、入れ子で、平坦で比較的薄い多数の金属製リングのうち、2個以上の群31a、31bによって形成される。横断要素32の実質的にやじり形の上部体35は、張力要素31の半径方向外に位置し、高さ方向に後者を取り囲む一方、中間体34は、張力要素31のリング群31a、31bの間に位置する。この場合、中間体の軸方向横向きの縁37はそれぞれ、リング群31a、31bの軸方向に停止面37を形成する。
横断要素32は、張力要素31の周方向に対して移動可能にプッシュベルト3に保持される。この配置において、各横断要素の1つの主要面、例えば後面42は凹部(図示せず)を備え、それぞれの他方の主要面、例えば前面43は突起44を備え、それぞれの横断要素32の突起44は、隣接する横断要素32の凹部に受けられる。横断要素32の下部体33は、傾斜縁45として知られるものを備えるが、これはすなわち、実質的に一定の厚みの横断要素32の上側と、その有効に先細にされた下側との間の全体としてやや丸みを帯びた過渡部で、この傾斜縁45は横断要素32の前面43で横断方向に延びる。この傾斜縁45により、隣接する横断要素32間の傾斜または回転運動が可能になる結果、周方向に示すプッシュベルト3が、プーリ1、2の滑車4,5の間の曲線経路を辿ることができる。
【0007】
図2にも誇張した描き方で示すように、プーリ滑車4、5の外側滑車面10と横断要素32の下部体33の横向きプーリ接触面40とはいずれも半径方向に凸の曲線形状で、各曲線をそれぞれの半径、すなわち、Rr10とRr40として記載する。しかしながら、実際にはこれら2つの半径Rr10とRr40は、図2(およびそれ以降の図)に示すものよりはるかに大きく、わかりやすさのために図では誇張している。さらに、実際は、上述の一定の曲率半径Rr10、Rr40に対して、円滑な曲面が限定される限り、半径または高さ方向に変化する曲率半径も採用される。
上述の変速機において、それぞれのプーリ1、2のそれぞれの滑車4,5の外側滑車面10と、駆動ベルト3の横断要素32のそれぞれのプーリ接触面40との間の摩擦接触は、ヘルツ楕円点状接触として知られるものが発生し、ここでは、それぞれの摩擦面10、40の磨耗および/または損傷をできる限り限定するため液体潤滑材も利用される。図3にも示すように、要素32のプーリ接触面40上のかかる摩擦接触の幾何学的に決定される半径方向位置は、ベルト3の走行半径Rとともに変化することは明白であろう。走行半径Rが最大の時、すなわち、Rmaxでは、それぞれの接触点CP1は、プーリ接触面40の底側に近い位置にあり(すなわち、半径方向内側)、それぞれの接触点CP2は、走行半径Rが最小の時、すなわち、Rminでは、プーリ接触面40か、その上側(すなわち、半径方向外側)近くに位置する。
【0008】
後者の状況を、図3のS部を拡大した図4に略図として示すが、ここにおいてベルト3は、最小限走行半径Rminにある。プーリ滑車4,5の間にクランプされるベルト部分の長さ(ひいては要素32の数)が小さい走行半径によって限定されるため、個々の横断要素32が最大の負荷にさらされるのがこの状況である。また、一般的に、トルクコンバータと組み合わされ、エンジンによって生成される一次トルクTpは、変速機がロー比である時、すなわち、ベルト3がその最小走行半径Rminにおいて一次プーリ1上を回転する時に最大となる。
本発明は、滑車面10の環状半径方向内部10f、すなわち、点状ヘルツ接触CP2下を利用して、前記最高負荷を有利に提げることを提案する。上記従来の変速機においては、滑車面10のかかる内部10fは横断要素32と接触しない。しかしながら、本発明によると、この面部10fの形状は半径方向に凸の曲線、すなわち、接線断面図に見えるものから、直線やさらには凹の曲線に変化することで、前記ヘルツ接触の表面積を増加させ、関連する接触圧および応力を有利に低下させる。
【0009】
図5に示す本発明の好適な実施例では、滑車面10の半径方向内部10fは、プーリ接触面40の局所的曲率半径Rr40よりわずかのみ大きい曲率半径Rr10bで凹の曲線である。ここで、滑車4,5と要素32との間に認識可能な接触領域CZ2が実現され、接触圧と関連するヘルツ接触応力を有利かつ相当に低減する。
変速機の適切な動作を確保するため、前記半径方向内部10fを含む外側滑車面10は、連続した平滑な面として形成することが望ましい。これは、滑車面の前記半径方向内部10fとその凸曲線の半径方向外部が斜めに交差してはならず、対応する方向の係数で平滑に合流しなければならないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】斜視図として示す図1は、従来技術による2個のプーリと駆動ベルトとを持つ無断変速機の概略図である。
【図2】変速機の一部の断面において、プーリのベルトの走行半径に対するプーリ滑車飛ベルトの間の相互作用を略図として示す。
【図3】変速機の一部の断面において、プーリのベルトの走行半径に対するプーリ滑車飛ベルトの間の相互作用を略図として示す。
【図4】ベルトが最小限の走行半径でプーリ滑車と相互作用する位置における図3の断面の詳細の拡大である。
【図5】図4の変速機詳細であるが、プーリ滑車は本発明に従って設計される。
【符号の説明】
【0011】
1 一次プーリ、2 二次プーリ、3 駆動ベルト、4,5 プーリ滑車、6,7 プーリ軸、10 滑車面、31 張力要素、32 横断要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ベルト(3)と、一次プーリ(1)および二次プーリ(2)とを備え、それぞれ2個の、それぞれのプーリ軸(6,7)に設置された円錐形状のプーリ滑車(4,5)からなり、その間には、駆動ベルト(3)が可変半径位置(R;Rmin;Rmax)に保持され、駆動ベルト(3)は、駆動ベルト(3)の円形張力要素(31)に沿って可動な横断要素(32)を備え、横断要素(32)は、プーリ滑車(4,5)の同様に凸の曲線を描く、軸方向を向いて外側滑車面(10)と摩擦接触する凸の曲線を描くプーリ接触面(40)を備え、少なくとも一方のプーリ(1、2)のプーリ滑車(4,5)の外側滑車面(10)の環状半径方向内部(10f)が、接線断面に見える直線または凹輪郭のいずれかを備えることを特徴とする車両用無段変速機。
【請求項2】
外側滑車面(10)の前記内部(10f)が、プーリ接触面(40)の曲率半径(Rr40)に実質的に沿うがわずかに大きい曲率半径(Rr10b)で凹の曲線を描くことを特徴とする請求項1記載の変速機。
【請求項3】
半径方向において、外側滑車面(10)の凹の曲線を描く部分(CZ2)は、それぞれのプーリ軸(6,7)と、それぞれのプーリ滑車(4,5)と駆動ベルト(3)の最小限半径位置(Rmin)における横断要素(32)との間で幾何学的に決定される接触点(CP2)との間で限定されることを特徴とする請求項2記載の変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−515108(P2009−515108A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538832(P2008−538832)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000782
【国際公開番号】WO2007/055560
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(504226423)ロベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング (40)
【Fターム(参考)】