説明

ヘアトリートメント化粧料

【課題】スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れ、十分な量の油分を含有し、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果に優れたヘアトリートメント化粧料を提供する。
【解決手段】特定の第4級アンモニウム塩と特定の高級アルコールとを特定の重量比で含有し、又特定量の液状油を含有したチキソトロピー性を有するヘアトリートメント化粧料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪になめらかさやしっとり感を与えるヘアトリートメント化粧料に関するものであり、更にはスプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れたヘアトリートメント化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪になめらかさやしっとり感を与えるヘアトリートメント化粧料として、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー等があり市販されている。これらは通常、第4級アンモニウム塩が配合されており、これが毛髪に吸着することによりリンス効果を与え、更に滑らかさ、しっとり感等、乾燥後の官能面を向上させる目的で高級アルコール、エステル油、炭化水素油等の油分が可溶化、乳化、溶解された状態で配合されている。例えば、特許文献1には、毛髪をべたつかせずになめらかさを付与する目的で、特定の4級アンモニウム塩と高級アルコール、液状油を特定の比率で組み合わせて用いる毛髪化粧料が提案されている。しかし近年では、軽さ、ナチュラル感、動きのあるヘアスタイルを実現する為に、ヘアカラーやパーマなどを繰り返し行う事で、髪の傷みはかなり深刻化しているのが現状である。その様な髪の傷みに悩む消費者では、入浴中に用いる所謂インバスのヘアトリートメント化粧料のみでなく、ダメージが気になる時にいつでもどこでも使用できる手軽さという面からアウトバスタイプのヘアトリートメント剤を使用する場合が増えている。しかし乾いた髪にヘアトリートメント化粧料を使用すると、塗布した場所にのみ浸透してしまい毛髪全体に延ばしにくいと言う問題があった。そこで、毛髪全体に均一に付着させる事が出来るスプレータイプのヘアトリートメント化粧料が望まれていた。特許文献1に記載の毛髪化粧料は、25℃における粘性が高く、またチキソトロピー性も無い為、スプレーで噴霧して用いるスプレータイプのヘアトリートメント化粧料には不向きであった。具体的には、ノズルに詰まりが生じたり、霧状に噴霧できず直線的に吐出する事しかできなかった。また、特許文献2にはポリエーテル変性シリコーンと、特定の多価アルコールとを含有し、毛髪にしっとり感を付与するヘアローションが提案されている。しかし、これらのヘアローションは、スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れているが、粘性が低い為、油分を配合した場合には経時的に分離が生じ、安定性の悪いものとなる。従って、実質的に油分を配合する事が出来ず、毛髪に十分なしっとり感やなめらかさを与える事は出来なかった。
【0003】
以上の事から、スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れ、十分な量の油分を含有し、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果に優れたヘアトリートメント化粧料の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−286311号公報
【特許文献2】特開2003−63934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題点を解決したヘアトリートメント化粧料を提供するものである。即ち、スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れ、十分な量の油分を含有し、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果に優れたヘアトリートメント化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の第4級アンモニウム塩と特定の高級アルコールとを特定の重量比で含有し、更に特定量の液状油を含有したヘアトリートメント化粧料が、適度なチキソトロピー性を有する事でスプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れ、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果を発揮でき、経時的に分離する等の安定性上の不都合が無く、上記課題を解決し得る事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
次の成分(A)〜(C):
(A)一般式(1)
【化1】

(式中R1は炭素数14〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2、3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はベンジル基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。)で表される第4級アンモニウム塩の一種又は二種以上
(B)炭素数14〜22の直鎖のアルキル基を有する高級アルコール
(C)常温で液状の油性成分
を含有するヘアトリートメント化粧料であって、(A)の量がヘアトリートメント化粧料に対して0.2〜1.0重量%であり、(A)に対する(B)のモル比が0.5以上、4.0未満の範囲であり、且つ(C)の量が1.0〜5.0重量%であるヘアトリートメント化粧料を提供するものである。上記ヘアトリートメント化粧料は、25℃のBM型粘度計による回転数6rpmでの測定値が3000〜5000mPa・sであり、チキソトロピー指数(回転数6rpmにおける測定粘度/回転数60rpmにおける測定粘度)が2.5以上であり、スプレーでの使用性に優れたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヘアトリートメント化粧料は、25℃のBM型粘度計による回転数6rpmでの測定値が3000〜5000mPa・sであり、チキソトロピー指数(回転数6rpmにおける測定粘度/回転数60rpmにおける測定粘度)が2.5以上であることから、スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れ、十分な量の油分を含有し、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果に優れたヘアトリートメント化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明で使用する成分(A)である第4級アンモニウム塩は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化1】

(式中R1は炭素数14〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2、3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はベンジル基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。)上記一般式(1)において、R1は炭素数14〜22のアルキル基、例えばセチル基、ステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。また、R1の炭素数14〜22のヒドロキシアルキル基は、例えば12−ヒドロキシステアリル基が挙げられる。これらの中で、炭素数16〜22のアルキル基が好ましく、特にステアリル基、ベヘニル基が好ましい。R2、R3及びR4の炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、好ましい基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基等が挙げられる。R2、R3及びR4は同じものであっても、又は異なるものであっても良い。Xのハロゲン原子は、好ましくは塩素原子又は臭素原子である。
【0011】
上記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等を挙げることができる。その中でも特に、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム並びにこれらの混合物が好ましい。
【0012】
本発明において、上記成分(A)である第4級アンモニウム塩を、ヘアトリートメント化粧料に対して0.2〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.6重量%配合する。0.2%未満では、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果が不十分となる為好ましくない。逆に1.0重量%を超えて配合した場合には、ヘアトリートメント化粧料の粘度が高くなりすぎ、スプレーで噴霧して用いる使用方法が不可となる為好ましくない。
【0013】
本発明で使用する成分(B)である炭素数14〜22の直鎖のアルキル基を有する高級アルコールとしては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びその他の脂肪族アルコールが挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用する。
【0014】
本発明において、上記成分(B)は、上記成分(A)に対してモル比で0.5以上、4.0未満、好ましくは3.0〜3.9を配合する。成分(A)に対するモル比が0.5未満の場合は、得られるヘアトリートメント化粧料の粘度が低くなり、経時的に分離が生じる為好ましくない。逆に、4.0以上の場合は得られるヘアトリートメント化粧料の粘度が高くなりすぎ、又チキソトロピー性も損なわれる為、スプレーで噴霧して用いる使用方法が不可となる為好ましくない。
【0015】
本発明で使用する成分(C)である常温で液状の油性成分としては特に限定はなく、例えば流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル等のエステル類、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等のトリグリセライド類、オリブ油、ホホバ油、月見草油、ヤシ油等の植物油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状メチルポリシロキサン等のシリコーン類、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用する。
【0016】
本発明において、上記成分(C)は、ヘアトリートメント化粧料に対して1.0〜5.0重量%、好ましくは2.0〜4.0重量%配合する。1.0%未満では、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果が不十分となる為好ましくない。逆に5.0重量%を超えて配合した場合には、これを塗布した毛髪がべたつく等の官能上の不都合や、経時的に分離が生じる安定性上の問題が生じる為好ましくない。
【0017】
本発明のヘアトリートメント化粧料は、25℃のBM型粘度計による回転数6rpmでの測定値が3000〜5000mPa・sであり、チキソトロピー指数(回転数6rpmにおける測定粘度/回転数60rpmにおける測定粘度)が2.5以上であり、そのことにより、スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れるヘアトリートメント化粧料が得られる。25℃のBM型粘度計による測定値が3000mPa・s未満では、経時的に分離が生じ、安定性上好ましくなく、逆に5000mPa・sを超えると、スプレーでの吐出が困難となる。また、チキソトロピー指数が2.5未満の場合、つまりスプレーでの吐出による力が加わった場合でも粘度が低下しない場合は、ノズルに詰まりが生じたり、霧状に噴霧できず直線的に吐出する事しかできない等の問題が生じる。
【0018】
本発明のヘアトリートメント化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に配合される成分、例えばグリセリンやジグリセリン等のポリオール類、ヒアルロン酸、マルチトール等の糖類、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、クエン酸やコハク酸等の有機酸類及びその塩類、グリシンやアラニン等のアミノ酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、高重合メチルポリシロキサンやアミノ変性シリコーンのエマルジョン製品、加水分解コラーゲン誘導体、加水分解シルク誘導体、加水分解ケラチン誘導体、植物抽出液、生薬、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、消炎剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、色素、香料等を一種又は二種以上組合せて適宜配合することができる。中でもジグリセリンは毛髪にしっとり感を与える効果が更に向上できるため配合すると良い。
【0019】
本発明のヘアトリートメント化粧料は、常法に従って製造することができ、例えば水相と油相とをアンカーミキサー等の撹拌機を用いて、均一撹拌することにより得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0021】
<実施例1〜5、比較例1〜6>
表中記載の組成にて、ヘアトリートメント化粧料を調製し、以下の評価方法により評価した。その結果を表1及び2に示す。
【0022】
(評価方法)
1)粘度及びチキソトロピー指数
実施例、比較例で調製したヘアトリートメント化粧料の25℃の粘度をBM型粘度計(ローターNo.3)にて、回転数6rpmで測定した。また回転数6rpmでの測定粘度と回転数60rpmでの測定粘度からチキソトロピー指数(回転数6rpmにおける測定粘度/回転数60rpmにおける測定粘度)を算出した。
2)安定性
実施例、比較例で調製したヘアトリートメント化粧料を0℃、50℃の恒温槽に一ヵ月放置後の状態を目視にて観察し、以下の評価基準を基に評価した。
(評価基準)
○:状態変化なし
×:白濁、分離等の状態変化がある
3)使用性
健常女性パネラー20名に実施例、比較例で調製したヘアトリートメント化粧料を使用させ、「スプレーでの噴霧のし易さ」、「毛髪のなめらかさ及びしっとり感」、「ベタツキ感のなさ」について評価を行った。評価項目毎に、1:非常に悪い、2:悪い、3:やや悪い、4:良好、5:非常に良好、の評価基準で評価し、20名の平均点を算出した。その結果を、以下の基準に基づき表1及び2に示す。
(評点)
◎:4.5点以上
○:4.0点以上4.5点未満
△:3.0点以上4.0点未満
×:3.0点未満
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
実施例1〜5のヘアトリートメント化粧料は、全ての評価項目において満足するものであった。一方、比較例1〜6のヘアトリートメント化粧料は評価項目のいずれか又は全てにおいて満足できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のヘアトリートメント化粧料は、スプレーでの使用が可能であり毛髪全体に均一に付着させる事が出来、アウトバスでの使用性に優れ、十分な量の油分を含有し、毛髪になめらかさやしっとり感を与える効果に優れたヘアトリートメント化粧料に利用可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)一般式(1)
【化1】

(式中R1は炭素数14〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2、3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はベンジル基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜2のアルキル硫酸基を示す。)で表される第4級アンモニウム塩の一種又は二種以上
(B)炭素数14〜22の直鎖のアルキル基を有する高級アルコール
(C)常温で液状の油性成分
を含有するヘアトリートメント化粧料であって、(A)の量がヘアトリートメント化粧料に対して0.2〜1.0重量%であり、(A)に対する(B)のモル比が0.5以上、4.0未満の範囲であり、且つ(C)の量が1.0〜5.0重量%であるヘアトリートメント化粧料。


【公開番号】特開2010−126467(P2010−126467A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301436(P2008−301436)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】