説明

ヘアライン調加飾シート

【課題】 絞り加工を行ってもヘアライン感が減少せず、高輝度なヘアライン感を備えるヘアライン調加飾シートを提供する。
【解決手段】 基体シート2上に、透明保護層3、透明ヘアライン層4、反射層5が少なくとも積層され、透明保護層3および透明ヘアライン層4の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層3のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層4のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層5が可視光反射率50%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品表面にヘアライン調の装飾を行うことができるヘアライン調加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有するヘアライン模様は、AV機器のパネルを始めとする様々な製品に好適に用いられる。なかでも、樹脂フィルムにヘアライン模様を施したヘアライン調加飾シートは、それを両面テープで融着によって貼り付けたり、また、樹脂射出成形用金型内に挿入してインサート成形したりするなど、さまざまな製品に応用されている。
【0003】
このようなヘアライン調加飾シートとして、ヘアライン形状の微細凹凸が形成されたアクリル系樹脂などからなる透明フィルムを透明層とし、その上にアルミニウムなどの金属を用いて蒸着加工を行って反射層を形成し、さらに必要に応じて裏面に接着層を形成したものがある。このような構成のヘアライン調加飾シートは、反射層の上にヘアライン形状の微細凹凸を有する透明層が積層されているため、光の反射する角度を変え、ヘアライン模様を表現することができる。
【0004】
また、平滑な表面を有するフィルムの上にアルミニウムなどの金属を用いて蒸着加工を行って反射層を形成し、その上に着色インキを用いてグラビア印刷法やスクリーン印刷法などの印刷法によってヘアライン模様を形成したものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平7−12032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、微細凹凸が形成された透明層によりヘアライン模様を表現したヘアライン調加飾シートは、ヘアライン調加飾シートに熱絞りなどの熱加工を施す際にヘアライン感が損なわれるという問題があった。すなわち、真空成形法などの熱絞り加工は、通常、フィルムを軟化する程度まで加熱した後に絞り加工を行う。この際、あらかじめ透明層に形成された微細凹凸も軟化し、その形状がなだらかになってヘアライン感が減衰することになる。また、フィルムを軟化させない程度の加熱で絞り加工を行っても、フィルムを絞ること自体が、もともとフィルム上に存在する微細凹凸を伸ばすことになるため、やはりヘアライン感が減衰することは免れない。
【0006】
また、印刷によりヘアライン模様を表現したヘアライン調加飾シートは、ヘアライン模様を形成する着色インキによって全体の輝度感が減少してしまうため、高輝度の外観を有するヘアライン模様を得るのが困難であるという問題があった。この対策として、着色インキとしてメタリック顔料を採用したものがある。しかし、メタリック顔料は光の乱反射を生じるため、直線状のパターンであるヘアライン模様の特徴を現実感があるように表現することはやはり困難であった。
【0007】
したがって、本発明は、上記のような問題点を解消し、絞り加工を行ってもヘアライン感が減少せず、高輝度なヘアライン感を備えるヘアライン調加飾シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヘアライン調加飾シートは、上記の目的を達成するために、つぎのように構成した。
【0009】
すなわち、本発明の第1態様のヘアライン調加飾シートは、基体シート上に、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であるように構成されている。
【0010】
また、上記発明の第2態様として、基体シート上に、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であるように構成することもできる。
【0011】
また、上記発明の第3態様として、基体シート上に、反射層、透明ヘアライン層、透明保護層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であるように構成することもできる。
【0012】
また、上記発明の第4態様として、第1〜3態様のヘアライン調加飾シートは、インサート材または転写材であるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヘアライン調加飾シートは、基体シート上に、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であるように構成したので、絞り加工を行ってもヘアライン感が減少せず、高輝度なヘアライン感を備えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0015】
図1〜10は、本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。図中、1はヘアライン調加飾シート、2は基体シート、3は透明保護層、4は透明ヘアライン層、5は反射層、6は接着層、7は離型層である。なお、各図において同じ構成部分については同じ符号を付している。
【0016】
本発明の実施態様にかかるヘアライン調加飾シート1は、基体シート2上に、透明保護層3、透明ヘアライン層4、反射層5が少なくとも積層され、透明保護層3および透明ヘアライン層4の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層3のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層4のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層5が可視光反射率50%以上であるように構成されている(図1〜10参照)。
【0017】
基体シート2の材質としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、あるいは以上の各シートの複合体などを使用することができる。
【0018】
透明保護層3は、透明ヘアライン層4とともにヘアライン模様を表現するための層である。また、反射層5の腐食や傷付きを防止する機能も有する。透明ヘアライン層4の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、必要に応じて顔料または染料を着色剤として含有するインキを用いるとよい。透明ヘアライン層4の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用い、全面ベタ状のパターンに形成する。
【0019】
透明ヘアライン層4の可視光透過率は60%以上となるようにする。可視光透過率が60%に満たないと、反射光が乏しくなりヘアライン模様が見えにくくなるという不都合が生じる。なお、本発明において、可視光透過率とは、日本工業規格(JIS)R3106:1998で規定される可視光透過率を指す。
【0020】
透明ヘアライン層4は、透明保護層3とともにヘアライン模様を表現するための層である。透明ヘアライン層4の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、必要に応じて顔料または染料を着色剤として含有するインキを用いるとよい。透明ヘアライン層4の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用い、線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成するとよい。
【0021】
透明ヘアライン層4の可視光透過率は60%以上となるようにする。可視光透過率が60%に満たないと、反射光が乏しくなりヘアライン模様が見えにくくなるという不都合が生じる。
【0022】
透明保護層3のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層4のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすように構成する。
【0023】
本発明では、屈折率の異なる2種類の透明層を用い、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすように構成することによって、実感的なヘアライン模様を現出させることができる。すなわち、透明層の中で屈折率の異なる部分があり、この境界で光が屈折するために、その下に存在する平滑である金属光沢層があたかもヘアライン状に凹凸が形成されているように見えるようにすることができる。
【0024】
なお、透明保護層3と透明ヘアライン層4とは、ヘアライン模様を見る場合において、透明保護層3が上側(表面側)になるように構成しても(図1、3、5、6、8、10参照)、透明ヘアライン層4が上側(表面側)になるように構成しても(図2、4、7、9参照)よい。
【0025】
反射層5は、ヘアライン調加飾シート1が表現しようとするヘアライン加工物の輝度に優れた金属光沢を表現するための層である。反射層5は、ヘアライン模様を見る場合において、透明保護層3と透明ヘアライン層4の下側(背面側)に位置するように構成する。したがって、反射層5は、透明保護層3と透明ヘアライン層4の基体シート2は反対側の面に積層する場合(図1〜4、6〜9)や、基体シート2に接するように積層する場合(図5、図10)がある。
【0026】
反射層5としては、金属薄膜層を用いるとよい。金属薄膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用する。
【0027】
ヘアライン調加飾シート1によって表現しようとする装飾デザインに応じて、反射層5を構成する金属薄膜層を部分的に形成してもよい。金属薄膜層を部分的に形成する場合の一例としては、金属薄膜層を必要としない部分に溶剤可溶性樹脂層を形成した後、その上に全面的に金属薄膜を形成し、溶剤洗浄を行って溶剤可溶性樹脂層と共に不要な金属薄膜を除去する方法がある。この場合によく用いる溶剤は、水または水溶液である。また、別の一例としては、全面的に金属薄膜を形成し、次に金属薄膜を残しておきたい部分にレジスト層を形成し、酸またはアルカリでエッチングを行う方法がある。
【0028】
本発明において、反射層5が可視光反射率50%以上であることが重要である。可視光反射率が50%に満たないと、ヘアライン模様として見える屈折光が減少するという不都合がある。なお、本発明において、可視光反射率とは、日本工業規格(JIS)R3106:1998で規定される可視光反射率を指す。
【0029】
また、金属薄膜層を設ける際に、他の転写層と金属薄膜層との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。前アンカー層および後アンカー層の材質としては、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用するとよい。前アンカー層および後アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0030】
また、ヘアライン模様以外の装飾を行うため、必要に応じて図柄層(図示せず)を形成してもよい。図柄層は、通常は図柄層として形成する。図柄層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。図柄層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。
【0031】
接着層6は、必要に応じて、被装飾物面に上記の各層を接着するために形成する(図3、4、8、9参照)。接着層6は、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面的である場合は接着層6を全面的に形成する。また、接着させたい部分が部分的である場合は接着層6を部分的に形成する。接着層6としては、被装飾物の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、被装飾物の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。また、被装飾物の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、被装飾物の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層6の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0032】
また、ヘアライン調加飾シート1が基体シート2を剥離して用いる転写材である場合、基体シート2から透明保護層3が剥離するように構成する必要がある。基体シート2からの透明保護層3の剥離性がよい場合には、基体シート2上に透明保護層3を直接設ければよい。基体シート2からの透明保護層3の剥離性を改善するためには、基体シート2上に透明保護層3を設ける前に、離型層7を全面的に形成してもよい(図6〜10参照)。離型層7は、転写後または成形同時転写後に基体シート2を剥離した際に、基体シート2とともに透明保護層3から離型することになる。離型層7の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層7の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0033】
また、ヘアライン調加飾シート1が転写材である場合、透明保護層3自身が基体シート2から剥離しやすい材質で構成してもよい。透明保護層3は、転写後または成形同時転写後に基体シート2を剥離した際に、基体シート2または離型層7から剥離して被転写物の最外面となる。透明保護層3の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。透明保護層3に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。透明保護層3は、着色したものでも、未着色のものでもよい。透明保護層3の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0034】
以上に説明した構成のヘアライン調加飾シート1を用いてヘアライン調の成形品を得る方法として、キャビティを有する金型内にヘアライン調加飾シート1を設置し、金型内に溶融樹脂を射出し、ヘアライン調加飾シート1と溶融樹脂とが一体化した成形品を得るインサート法がある。具体的には、次のようにして行うとよい。
【0035】
まず、金型内に、ヘアライン調加飾シート1を設置する。このとき、ヘアライン調加飾シート1の図柄と金型形状とが位置合わせされるように光電管センサなどを用いてヘアライン調加飾シート1の固定位置を位置合わせしてもよい。
【0036】
次いで、適宜加熱・吸引を行うことによりヘアライン調加飾シート1は金型内に固定される。また、ヘアライン調加飾シート1を加熱してキャビティ面に沿いやすくするために、赤外線ヒーターなどからなる加熱手段(図示せず)によってヘアライン調加飾シート1を加熱してもよい。また、キャビティ面に沿うようにヘアライン調加飾シート1を真空成形または圧空成形してもよい。
【0037】
次いで、金型を閉じ、金型内へ成形樹脂を射出し、ヘアライン調加飾シート1と成形樹脂とを一体化させる。
【0038】
成形樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などを用いるとよい。
【0039】
成形樹脂が固化した後、型開きしてヘアライン調加飾シート1が一体化して接着された樹脂成形品を取り出して、ヘアライン調の成形品を得ることができる。
【0040】
また、ヘアライン調加飾シート1が転写材である場合は、次のようにしてヘアライン調の成形品を得ることができる。
【0041】
まず、被転写物面に、転写材の接着層6側を密着させる。被転写物としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などからなるプラスチック成形品を用いるとよい。
【0042】
次に、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体を備えたロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用い、温度80〜260℃程度、圧力490〜1960Pa程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体を介して転写材の基体シート2側から熱と圧力とを加える。こうすることにより、接着層6が被転写物表面に接着する。最後に、冷却後に基体シート2を剥がすと、基体シート2と透明保護層3との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。また、基体シート2上に離型層7を設けた場合は、基体シート2を剥がすと、離型層7と透明保護層3との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。
【0043】
次に、前記した転写材を用い、射出成形による成形同時転写法を利用して被転写物である樹脂成形品の面に装飾を行う方法について説明する。
【0044】
まず、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写材を送り込む。その際、枚葉の転写材を1枚づつ送り込んでもよいし、長尺の転写材の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写材を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写材の図柄層4と成形用金型との見当が一致するようにするとよい。また、転写材を間欠的に送り込む際に、転写材の位置をセンサーで検出した後に転写材を可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写材を固定することができ、図柄層4の位置ずれが生じないので便利である。
【0045】
成形用金型を閉じた後、ゲートから溶融樹脂を金型内に射出充満させ、被転写物を形成するのと同時にその面に転写材を接着させる。溶融樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などを用いるとよい。
【0046】
被転写物である樹脂成形品を冷却した後、成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出す。最後に、基体シート2を剥がすことにより、ヘアライン調の成形品を得ることができる。
【実施例】
【0047】
厚さ125μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを基体シートとし、その上に可視光透過率が87%、d線(波長587.56nm)における屈折率n2が1.35のPTFE樹脂インキ用いて最大厚さが0.8μmになるようにヘアライン形状に塗布して透明ヘアライン層を形成した。
【0048】
次いで、その上に可視光透過率が89%、d線(波長587.56nm)における屈折率n1が1.49のPMMAインキを用いてグラビア印刷法によって厚さ5μmに全面的に塗布して透明保護層を形成した。
【0049】
次いで、180℃10秒間の熱処理をして溶剤分を除去した後、透明保護層の上に、厚さ700Åのアルミニウム蒸着処理を行って、可視光反射率が82%の反射層を形成した。
【0050】
次いで、その上に、塩化ビニル樹脂インキを用いグラビア印刷法によって厚さ2μmで全面的に塗布して接着層を形成し、ヘアライン調加飾シートを得た(図3参照)。
【0051】
このようにして得たヘアライン調加飾シートを、基体シートが雌型に接するように射出成形金型内に挿入し、ABS樹脂を射出成形してヘアライン調加飾シートと一体とした後、基体シートを成形品から剥がしてヘアライン模様を成形品表面に転写した。
【0052】
このようにして得た成形品表面のヘアライン調加飾シートは、射出成形時の絞り加工においてもヘアライン感が減少せず、高輝度なヘアライン感を備えるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、AV機器、携帯電話などの情報通信機器、自動車内部の情報機器、家電機器など、各種成形品の装飾等において好適に用いることができ、産業上有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図4】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図5】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図6】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図7】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図8】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図9】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図10】本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ヘアライン調加飾シート
2 基体シート
3 透明保護層
4 透明ヘアライン層
5 反射層
6 接着層
7 離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体シート上に、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であることを特徴とするヘアライン調加飾シート。
【請求項2】
基体シート上に、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であることを特徴とするヘアライン調加飾シート。
【請求項3】
基体シート上に、反射層、透明ヘアライン層、透明保護層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であることを特徴とするヘアライン調加飾シート。
【請求項4】
ヘアライン調加飾シートがインサート材または転写材である請求項1〜3のいずれかに記載のヘアライン調加飾シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−255894(P2006−255894A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72159(P2005−72159)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】