説明

ヘッダープレートレス熱交換器

【課題】 一対の溝状プレートでエレメントを構成し、その内外面にディンプルを配置したものにおいて、ディンプル密度を高くして熱交換性能を向上させること。
【解決手段】 第1プレート3と第2プレート4とによりエレメント7を形成し、第1プレート3の底面1には多数のディンプル10をその内面側に突出させ、第2プレート4にはディンプル10を外面側に突設させる。それと共に、第1プレート3と第2プレート4の各ディンプル10は平面上互いに重ならないよう位置ずれさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コジェネ用途の燃料電池システムにおいて、その温水を利用するための液−液熱交換器に最適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、既に特許文献1のヘッダープレートレス熱交換器を提案している。
この熱交換器は、一対の溝型に形成されたプレートを互いに逆向きに嵌着すると共に、その両開口端を厚み方向に膨出し、内部にインナーフィンを介装して、エレメントを構成する。そして各エレメントを積層してコアとし、その外周をケーシングで被嵌したものである。この熱交換器は、固体高分子型燃料電池システムの一部として、1kW級のコジェネ用途とし、システム冷却水の排熱を水道水に回収させるものである。
このようなシステム冷却水は、1L/min程度で水道水が0.5L/min以下程度と、両流体が低流量である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−270982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、エレメント内にインナーフィンを設けて、その流路の伝熱面積を大きくし、熱交換を促進しようとするものである。そして各エレメントの外面側には、スペーサ用のディンプルが適宜間隔で配置されている。そのディンプルに変えて、アウターフィンを配置することも容易に考えられる。さらに熱交換性能を向上させるためには、各フィンのフィンピッチをより短くすることができる。
しかしながら、フィンのピッチを小さくし、細密化するとフィン表面にスケール等が付着し、流路を閉塞させるリスクが上昇する。フィンの代わりに多数のディンプルを配置した場合、そのディンプルの直後に澱みが生じ、熱交換性能を低下させるおそれがある。
【0005】
また、通常ディンプルはチューブの高さ方向に、上下両面から突出させ、その先端どうしを当接させ、そこをろう付けすることになる。しかしながら、ディンプルの先端は極めて狭い面積であり、その先端どうしを整合させることが難しい。
また、ディンプルの密度は比較的粗くせざるを得ない。そのため、ディンプルにより伝熱面積の増加は大きく期待できない欠点があった。
そこで本発明は、従来の欠点であるスケール等による流路の閉塞を防止するため、第1流体側及び第2流体側共にディンプルを高密度に且つ最適に配置して、高性能、低圧力損失の熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ平坦な底面(1)の両側に側壁部(2)が曲折された一対の溝型の第1プレート(3)と第2プレート(4)とを有し、その両プレート(3)(4)が互い逆向きに嵌着されて偏平なチューブ部(5)を形成し、その偏平なチューブ部(5)の両端部開口に、その厚み方向に膨出した膨出端部(6)を有してエレメント(7)を構成し、
前記膨出端部(6)で互いに接するように、同一の各エレメント(7)をその厚み方向に積層してコア(8) を構成し、そのコア(8) の外周がケーシング(9)で被嵌されて、各部品の接触部間が互いにろう付けされ、
各エレメント(7)内に第1流体(18)が流通すると共に、その外周に第2流体(17)が流通するヘッダープレートレス熱交換器において、
第1プレート(3)の底面(1)には、その内面側に多数の断面山形のディンプル(10)がプレス成形により突設され、第2プレート(4)の底面(1)には、その外面側に多数の断面山形のディンプル(10)がプレス成形により突設され、
第1プレート(3)のディンプル(10)と、第2プレート(4)のディンプル(10)とは、平面的に互いに位置ずれされ且つ、
第1プレート(3)のディンプル(10)の頂部(11) が第2プレート(4)の内側の底面(1)に接触すると共に、第2プレート(4)のディンプル(10)の頂部(11) が第1プレート(3)の外側の底面(1)に接触することを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
第1プレート(3)および第2プレート(4)上の多数の前記ディンプル(10)は、円錐台形に形成され、隣接する三つのディンプルの頂部(11) 間を結ぶ三本の仮想線(20)が平面正三角形になるように、各ディンプル(10)が配置され、
第1プレート(3)の前記正三角形の重心位置に、第2プレート(4)のディンプル(10)の頂部(11)が位置すると共に、
第2プレート(4)の前記正三角形の重心位置に、第1プレート(3)のディンプル(10)の頂部(11)が位置するヘッダープレートレス熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各仮想線(20)の長さが3.0mm〜4.8mmであるヘッダープレートレス熱交換器である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3に記載のいずれかのヘッダープレートレス熱交換器において、
前記ディンプル(10)は、各プレート(3)(4)の底面(1)の幅方向両側に位置する側部ディンプル(10a) とそれ以外の中間ディンプル(10b)とを有し、側部ディンプル(10a) は平面楕円形に形成され、その長軸が前記幅方向に位置し、中間ディンプル(10b)は平面円形に形成されたことを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器である。
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各エレメント(7)がステンレス鋼板よりなり、前記中間ディンプル(10b)の根元の直径が2.4mm〜5.0mm、その頂部(11)の直径が0.2mm以上、高さ1.0mm以上、でそのディンプル(10b)の横断面の外周長さを前記根元の直径で除した値が1.30以下となるようにされたヘッダープレートレス熱交換器である。
【0009】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各エレメント(7)は平面方形の偏平に形成され、その幅方向の側面に対向して、ケーシング(9)の長手方向の端部の一側面に前記第2流体(17)の入口パイプ(12)が接続され、
各エレメント(7)の両端部開口の膨出端部(6)と、その各プレート(3)(4)の底面(1)の多数のディンプル(10)との間に幅方向に帯状の小平坦部(1a)が設けられ、その幅が2.5mm〜5.0mmであるヘッダープレートレス熱交換器である。
請求項7に記載の本発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
前記第2流体(17)が水道水であり、各エレメント(7)は平面方形の偏平に形成され、その幅方向の側面に対向して、ケーシング(9)の長手方向の端部の一側面に水道水の入口パイプ(12)が接続され、その入口パイプ(12)の近傍で、各エレメント(7)の第2プレート(4)の平面の隅部の三角部分(13)は、前記ディンプル(10)の配置密度が他の部分に比べて疎に形成されたヘッダープレートレス熱交換器である。
請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各エレメント(7)の第2プレート(4)の平面の四隅部の各三角部分(13)は、前記ディンプル(10)の配置密度が他の部分に比べて疎に形成され、その四隅部に隣接して水道水のタンク部(14)がケーシングの側面に膨出したヘッダープレートレス熱交換器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第1プレート3と第2プレート4とで偏平なチューブ部5を有するエレメント7を構成する。そしてその第1プレート3は、内面側に多数のディンプル10が突設され、第2プレート4にはその外面側に多数のディンプル10が突設され、両プレート3,4の各ディンプル10は平面的に互いに位置ずれされる。そして、第1プレート3のディンプル10の頂部が第2プレート4の内部の底面1に接触すると共に、第2プレート4のディンプル10の頂部が第1プレート3の外面の底面1に接触するように構成されている。
そして、第1プレート3のディンプルと第2プレート4のディンプルとが互いに重なることがないので、各プレート3,4に高密度にディンプルを配置することができる。それによって、流体の伝熱面積を大きくし且つ、第1流体18と第2流体17との攪拌効果を促し、熱交換を促進し得る。
それと共に、各ディンプル10は断面山形であり、流路内にスラッジ等が付着することを防止し、寿命の長い熱交換器を提供できる。
【0011】
上記構成において、請求項2に記載のように、夫々のディンプル10を円錐台形状にし、その頂部11間を結ぶ三本の仮想線20を平面正三角形になるようにし、第1プレート3の正三角形の重心位置に、第2プレート4のディンプル10の頂部11が位置する。それと共に、第2プレート4の正三角形の重心位置に第1プレート3のディンプル10の頂部11を位置させた場合には、最も効果的に各ディンプル10を高密度で配置することができる。
また、それにより、各流体の攪拌効果を増大すると共に、第1プレート3,第2プレート4の各部で均一な熱交換を実現できる。
上記構成において、請求項3に記載のように、正三角形の各仮想線20の長さを3.0mm〜4.8mmとすることができる。このようにすると、プレス加工が容易で且つ攪拌効果を十分に確保できる。
【0012】
上記構成において、請求項4に記載のように、第1プレート3,第2プレート4の幅方向両側の側部ディンプル10aを平面楕円形に形成し、その長軸を幅方向に位置(図2(B),図3(B))し、それ以外の部分では中間ディンプル10bを平面円形とすることができる。その場合には、プレート各部に均一に流体を流通させて熱交換を促進させる効果がある。即ち、その側部ディンプル10aが第1プレート3,第2プレート4の幅方向両側に沿ってバイパスする流体の流れを阻止する。
上記構成において、請求項5に記載のように、エレメント7がステンレス鋼板よりなり、中間ディンプル10bの根元直径を2.4mm〜5.0mm、頂部11の直径を0.2mm以上、高さを1.0mm以上で、その横断面の長さを根元の直径で除した値が1.30以下になるようにした場合には、プレス加工に伴う材料劣化の影響を最小限に抑えることができる。
【0013】
上記構成において、請求項6に記載のように、各エレメント(7)は平面方形の偏平に形成され、その幅方向の側面に対向して、ケーシング(9)の長手方向の端部の一側面に前記第2流体の入口パイプ(12)が接続され、各エレメント(7)の両端部開口の膨出端部(6)と、その各プレート(3)(4)の底面(1)の多数のディンプル(10)との間に幅方向に帯状の小平坦部(1a)が設けられ、その幅が2.5mm〜5.0mmとした場合には、エレメント7外周の各部に均一に第2流体を供給できる。即ち、入口パイプから流入した第2流体は、エレメント7外周の先端部である小平坦部1aに幅方向へ流入し(図8)、そこからエレメント7の長手方向に流通して各ディンプル10に供給される。小平坦部1aが存在しないと、第2流体は、入口から出口の最短距離を通る。小平坦部の存在はそれを阻止する。その幅を2.5mm〜5.0mmとすることにより、効果的に均一流れを達成すると共に、ディンプルの数を可及的に多くして、熱交換を促進できる。
【0014】
上記構成において、請求項7に記載のように、入口パイプ12の近傍で第2プレート4の平面の隅部の三角部分13(図9)のディンプル10の配置密度を他の部分に比べて疎にした場合には、水道水の流通を円滑に行いプレート各部に均一に水道水を流通させることができる。
上記構成において請求項8に記載のように、第2プレート4の平面の四隅部の各三角部分13(図10)のディンプル10の配置密度を他の部分に比べて疎にした場合には、四隅部の何れかを任意に選択して、そこに入口パイプ12を接続することができる。
それにより、連結パイプの配置の自由度の高い熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の熱交換器の分解斜視図。
【図2】同熱交換器のエレメント7の一部を構成する第2プレート4の斜視図及びその部分拡大図。
【図3】同エレメント7の一部を構成する第1プレート3の斜視図及び部分拡大図。
【図4】同エレメント7の斜視図。
【図5】同熱交換器の横断面図。
【図6】同エレメント7の第1プレート3と第2プレート4との各ディンプル10の相対位置を表す説明図。
【図7】同ディンプル10の横断面説明図。
【図8】同熱交換器の各流体の流れを示す説明図。
【図9】本発明の熱交換器の他のエレメント7の分解斜視図。
【図10】さらに他のエレメント7の例を示す分解斜視図。
【図11】図8に比較される第2流体17のバイパス流19の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1〜図8は本発明の第1の実施の形態を示す。
この熱交換器は、図1に示す如く、複数のエレメント7を積層してコア8とし、コア8を一対のケーシング本体9a,上蓋9bからなるケーシング9で被嵌したものである。
各エレメント7は、図2〜図4に示す如く、一対の第1プレート3と第2プレート4とを有する。夫々は平坦な底面1の両側に側壁部2が直角に曲折された浅い溝型に形成され、両プレートが互いに逆向きに嵌着されてチューブ部5を形成し、その偏平なチューブ部5の両端開口部に厚み方向に膨出した膨出端部6を有する。そして、その膨出端部6で互いに接するように同一形状のエレメント7を厚み方向に積層してコア8を構成する。
【0017】
その第1プレート3の底面1には、図3に示す如く、その内面側に多数の小さな断面山形のディンプル10がプレス成形により突設されている。大多数のディンプル10の形状は、図3(B)および図7の如く、平面円形の中間ディンプル10bである。その中間ディンプル10bは頂部11に僅かな平坦面を有する。
そして底面1の幅方向両端位置には、側部ディンプル10aが設けられている。その側部ディンプル10aは、図3(B)の如く平面楕円形に形成され、その長軸が幅方向に平行に位置している。
次に、第2プレート4には、図2に示す如く、その外面側にディンプル10が突設されている。そして、その底面1の幅方向両側位置には、側部ディンプル10aが図2(B)の如く、側縁まで配置されている。そして、両側以外の部分には中間ディンプル10bが配置されている。側部ディンプル10aは、図3の例と同様に楕円形に形成され、その長軸が底面1の幅方向に平行に配置されている。
【0018】
各エレメント7の両端部開口の膨出端部6と、その各プレート3,4の底面1の多数のディンプル10との間に幅方向に帯状の幅wの小平坦部1aが設けられ、その幅が2.5mm〜5.0mmに形成されている。この小平坦部1aは、各エレメント7における冷却水のマニホールドの機能をさせるものである。即ち、図8に示す如く、入口パイプ12から流入する冷却水(第2流体17)を、一旦そこに導き、幅方向に流通させてから、そこからエレメント7の長手方向に導き、エレメント7の外面に均一に冷却水を分配するものである。その小平坦部1aの幅が2.5mm未満では抵抗が大きくなり過ぎ、5.0mmを超えても冷却水の分配効果は飽和すると共に、ディンプル10の数が減少して熱交換性能が低下する。
【0019】
なお、図3において、第1プレート3の側壁部2には、所定間隔に突縁2aが突設されている。その先端は膨出端部6の高さと同一である。そして、エレメント7を積層したとき、その突縁2aがそのチューブ部の側端を図1の如く閉塞するものである。その突縁2aには、後述するケーシング9の当接条21が当接する。
【0020】
ケーシング9は、図1に示す如く、箱状に形成されたケーシング本体9aと、その上端開口を閉塞する上蓋9bとからなる。ケーシング本体9a内にはコア8が図8の如く嵌着され、コア8の両端部に第1流体18のタンク部が形成され、そのタンクに一対の出入口パイプが設けられている。ケーシング本体9aの底面には、図1に示す如く大型ディンプル16が千鳥状に配置されている。大型ディンプル16の頂部は偏平に形成され、その頂部がエレメント7の第1プレート3の底面1に接触する。ケーシング本体9aの長手方向の両端部の四箇所には、タンク部14が突設され、そこに入口パイプ12と出口パイプ15が接続される。この例では、同一側に入口パイプ12と出口パイプ15が配置されているが、それらが対角位置に配置されることもある。さらにケーシング本体9aの両側壁には、定間隔に当接条21が設けられ、それがコア8の各エレメント7の突縁2aに当接する。上蓋9bの内面は平坦に形成され、そこにコア8の最上段のエレメント7のディンプル10の頂部11当接する。
【0021】
(ディンプル10の詳細)
第1プレート3と第2プレート4の各底面1に突設されるディンプル10は、図6の如く両プレートで、その頂部11が互いに重ならないように位置ずれされている。同図において、第2プレート4上の実線のディンプル10は外面側に突設され、その頂部11が平坦に形成されている。互いに隣接するディンプル10は、二次元に千鳥状に配置され、千鳥配置の隣接する三つのディンプル10の頂部11間を結ぶ仮想線20が正三角形に形成される。そしてその正三角形の重心位置に、第1プレート3のディンプル10の頂部11が配置される。第2プレート4上では、点線で示した頂部11が第1プレート3のものである。
また、第1プレート3上で各頂部11間を結ぶ仮想線20は正三角形に配置され、その重心に第2プレート4の頂部11が位置される。このように形成することにより、最も高密度に各ディンプル10を配置することができる。
第1プレート3及び第2プレート4は、この例ではステンレス鋼板からなり、その直径Dが2.4mm〜5.0mmである、その頂部11の直径dが0.2mm以上、高さHが1.0mm以上であり且つ、ディンプル10(10b)の横断面の外周長さ(図7)Lをその根元の直径Dで除した値が1.30以下となっている。さらに、仮想線20の長さは3.0mm〜4.8mmである。
【0022】
これらの各寸法は、次の理由により決定された。
先ず、ディンプル10の高さH(図7)を1.0mm以上としたのは、水道水に含まれるカルキ成分等が流路内で析出する場合、高さHが1.0mm未満であるとその流路を急速に閉塞するからである。
次に、ディンプル10の頂部11の直径dを0.2mm以上とし、好ましくは0.3mm以上とする。それにより、各プレート間のろう付けを安定的に行なえることが分かったからである。
ディンプル10の根元における直径Dを2.4mm〜5.0mmとすることが好ましい。より好ましくは、2.8mm〜3.0mmである。これは根元直径を2.4mmm以下にするとプレス加工の際、加工の際の伸び率が130%を超え、それに基づく材料劣化のリスクが高くなる。逆に、根元直径を5.0mm以上とすると、流体の上下方向の攪拌効果が低下すると共に、ディンプルの配置数が著しく減少し、性能が低下するからである。
さらに仮想線20のピッチを3.0mm〜4.8mmとしたのは、3.0mmより短くなるとピッチが狭すぎてプレス加工が困難になる。また、4.8mmより大きくなるとディンプル間のピッチが粗くなり性能が低下する。また、隣接する三つの仮想線20の頂部11間の仮想線20を正三角形にすることにより、ディンプルをより多く配置することが可能となる。
【0023】
(側部ディンプル10aの存在理由)
図2(B)及び図3(B)において、第2プレート4及び第1プレート3の両縁に位置するディンプル10を、楕円形の側部ディンプル10aとし、その長軸を幅方向に位置している。これは、第1プレート3及び第2プレート4の底面1の側縁に沿って流体がバイパスすることを防止するものである。逆に、この側部ディンプル10aの存在しないエレメントでは、図11の如く、第2流体17を入口パイプ12及びタンク部14を介して各エレメント7間に流通させたとき、その幅方向両縁に沿ってバイパス流19が形成される。その結果、第2流体17はエレメント外表面を均一に流れないことになる。すると、その分だけ熱交換性能が低下する。
【0024】
そこで本発明の如く、各エレメント7の両側部(縁部)に側部ディンプル10aを設け、図8の如く、それが邪魔して前記バイパス流を阻止する。これは、ケーシング9の当接条21の存在との相乗効果により行なわれる。即ち、ケーシング9には所定間隔に当接条21が内面側に突設し、それが図8における第1プレート3の突縁2aに当接し、コア8との隙間をなくす。それ故、コア8の各エレメント7外側面に沿って流通するバイパス流を当接条21と突縁2aとによって阻止するものである。この突縁2a及び当接条21を設けない場合には、折角側部ディンプル10aを設けても、その外側にバイパス流ができてしまう。よって、側部ディンプル10aと当接条21と突縁2aとは相乗的に働くものである。
【0025】
次に、図9は本発明の熱交換器に用いるエレメント7の他の分解斜視図である。
この例が、図2のそれと異なる点は、第2流体17の入口部において第2プレート4の三角部分13におけるディンプル10の密度が他の部分のそれに比べて疎に形成された点である。これは、第2流体17がその出口と入口との間で最短距離を取らないようにする配慮である。それによって、エレメント7の外側で、各部分に均一に第2流体17が流通する。
なお、第1プレート3の表面は、前記実施例の図3のそれと全く同一である。これは第1プレート3は、その内面側にディンプル10が突設し、そこには第2流体17(水道水)が流通しないからである。
【0026】
次に、図10はエレメント7の第2プレート4の外面側四隅の三角部分13にディンプル10の疎の部分を設けたものである。
これは図8において、コア8の四隅位置にタンク部14を四つ設け、そのどの位置にも入口パイプ12を配置できるようにしたものである。即ち、入口パイプ12が四隅の何れの位置にあっても、そこで生じる第2流体17の不均一な流れを防止するものである。
【符号の説明】
【0027】
1 底面
1a 小平坦部
2 側壁部
2a 突縁
3 第1プレート
4 第2プレート
5 チューブ部
6 膨出端部
7 エレメント
8 コア
【0028】
9 ケーシング
9a ケーシング本体
9b 上蓋
10 ディンプル
10a 側部ディンプル
10b 中間ディンプル
11 頂部
12 入口パイプ
13 三角部分
【0029】
14 タンク部
15 出口パイプ
16 大型ディンプル
17 第2流体
18 第1流体
19 バイパス流
20 仮想線
21 当接条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平坦な底面(1)の両側に側壁部(2)が曲折された一対の溝型の第1プレート(3)と第2プレート(4)とを有し、その両プレート(3)(4)が互い逆向きに嵌着されて偏平なチューブ部(5)を形成し、その偏平なチューブ部(5)の両端部開口に、その厚み方向に膨出した膨出端部(6)を有してエレメント(7)を構成し、
前記膨出端部(6)で互いに接するように、同一の各エレメント(7)をその厚み方向に積層してコア(8) を構成し、そのコア(8) の外周がケーシング(9)で被嵌されて、各部品の接触部間が互いにろう付けされ、
各エレメント(7)内に第1流体(18)が流通すると共に、その外周に第2流体(17)が流通するヘッダープレートレス熱交換器において、
第1プレート(3)の底面(1)には、その内面側に多数の断面山形のディンプル(10)がプレス成形により突設され、第2プレート(4)の底面(1)には、その外面側に多数の断面山形のディンプル(10)がプレス成形により突設され、
第1プレート(3)のディンプル(10)と、第2プレート(4)のディンプル(10)とは、平面的に互いに位置ずれされ且つ、
第1プレート(3)のディンプル(10)の頂部(11) が第2プレート(4)の内側の底面(1)に接触すると共に、第2プレート(4)のディンプル(10)の頂部(11) が第1プレート(3)の外側の底面(1)に接触することを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
第1プレート(3)および第2プレート(4)上の多数の前記ディンプル(10)は、円錐台形に形成され、隣接する三つのディンプルの頂部(11) 間を結ぶ三本の仮想線(20)が平面正三角形になるように、各ディンプル(10)が配置され、
第1プレート(3)の前記正三角形の重心位置に、第2プレート(4)のディンプル(10)の頂部(11)が位置すると共に、
第2プレート(4)の前記正三角形の重心位置に、第1プレート(3)のディンプル(10)の頂部(11)が位置するヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
前記各仮想線(20)の長さが3.0mm〜4.8mmであるヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載のいずれかのヘッダープレートレス熱交換器において、
前記ディンプル(10)は、各プレート(3)(4)の底面(1)の幅方向両側に位置する側部ディンプル(10a) と、それ以外の中間ディンプル(10b)とを有し、側部ディンプル(10a) は平面楕円形に形成され、その長軸が前記幅方向に位置し、中間ディンプル(10b)は平面円形に形成されたことを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各エレメント(7)がステンレス鋼板よりなり、前記中間ディンプル(10b)の根元の直径が2.4mm〜5.0mm、その頂部(11)の直径が0.2mm以上、高さ1.0mm以上で、そのディンプル(10b)の横断面の外周長さを前記根元の直径で除した値が1.30以下となるように構成されたヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各エレメント(7)は平面方形の偏平に形成され、その幅方向の側面に対向して、ケーシング(9)の長手方向の端部の一側面に前記第2流体(17)の入口パイプ(12)が接続され、
各エレメント(7)の両端部開口の膨出端部(6)と、その各プレート(3)(4)の底面(1)の多数のディンプル(10)との間に幅方向に帯状の小平坦部(1a)が設けられ、その幅が2.5mm〜5.0mmであるヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
前記第2流体(17)が水道水であり、各エレメント(7)は平面方形の偏平に形成され、その幅方向の側面に対向して、ケーシング(9)の長手方向の端部の一側面に水道水の入口パイプ(12)が接続され、その入口パイプ(12)の近傍で、各エレメント(7)の第2プレート(4)の平面の隅部の三角部分(13)は、前記ディンプル(10)の配置密度が他の部分に比べて疎に形成されたヘッダープレートレス熱交換器。
【請求項8】
請求項7に記載のヘッダープレートレス熱交換器において、
各エレメント(7)の第2プレート(4)の平面の四隅部の各三角部分(13)は、前記ディンプル(10)の配置密度が他の部分に比べて疎に形成され、その四隅部に隣接して水道水のタンク部(14)がケーシング(9)の側面に膨出したヘッダープレートレス熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−29296(P2013−29296A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167703(P2011−167703)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】