説明

ヘッドライニング

【課題】この発明は、設計の自由度が高く、見栄えが良く、取り付けが容易なヘッドライニングを提供することを課題とする。
【解決手段】車両の天井1aに沿って配置されるヘッドライニングは車両の進行方向に分割された複数のライニング部材201、202を有する。進行方向前方のライニング部材201の後端辺201aには、天井1aに向けて凹んだ段部62が形成されており、進行方向後方のライニング部材20の前端辺202bには、段部62に重ねる折り曲げ部64が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バスなどの車両の天井に取り付けるヘッドライニングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の天井内側に取り付けるヘッドライニングとして、前部ヘッドライニングと後部ヘッドライニングとの間の継ぎ目を帯状のジョイント部材で目隠しした構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。ジョイント部材は、継ぎ目の目隠し部材として機能するとともに、天井の梁部に形成されたクリップ係合穴を介してクリップ留めされることで、ヘッドライニング端部の垂れ下がりを防止するための固定部材としても機能する。
【0003】
しかし、この公報に開示されたジョイント部材は、天井の梁部がある位置にしか取り付けできないので、ジョイント部材の取り付け位置のみならずヘッドライニングの形状に関しても設計の自由度が低い。また、ジョイント部材の幅は、継ぎ目の隙間を確実に隠すことのできる十分な幅である必要があるため、天井内側の見栄えが悪くなる。言い換えると、前部ヘッドライニングと後部ヘッドライニングとの間の隙間は、ジョイント部材の幅に納まる程度に小さくする必要があり、ヘッドライニングの取り付け時に慎重な作業が必要となり、取り付け誤差のマージンも狭く、作業性が悪い。
【特許文献1】実開昭62−195557号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、設計の自由度が高く、見栄えが良く、取り付けが容易なヘッドライニングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、車両の天井内側に取り付けられる本発明のヘッドライニングは、天井に向けて凹んだ段部を有する第1の端辺、およびこの第1の端辺から離間した第2の端辺を有する複数のライニング部材を、上記第1の端辺の段部に他のライニング部材の上記第2の端辺を重ねるように順に繋げたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明のヘッドライニングは、上記のような構成および作用を有しているので、設計の自由度を高くでき、見栄えを良くでき、取り付けを容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。図1には、この発明の実施の形態に係るヘッドライニング(後述する)を天井の内側に取り付けた観光バス1の外観斜視図を示してある。
【0008】
観光バス1(以下、車両1と称する場合もある)は、その進行方向前方の左側の側面にスイングドア2を備え、車両前方右側に運転席3を有する。乗客は、スイングドア2を通って図示しないステップを上がり、運転席3の横を通って、車内略中央を延びた図示しない通路を通って座席に座る。通路の上方で車両1の天井内側には以下に説明する照明装置10やヘッドライニングが取り付けられている。
【0009】
図2には、車両1の天井1a近くの車幅方向断面を車両前方から見た概略図を示してある。特に、この図では、車両1の右辺側の構造を代表して図示してある。図2に示すように、車両1の天井内側には、車幅方向中央に照明装置10が取り付けられており、車幅方向両側、すなわち図示しない座席の上方には、クーラーダクト12、および荷物棚14が取り付けられている。また、照明装置10の車幅方向両側には、天井1aの車室側内面1bに沿って、それぞれ荷物棚14の内側まで延びた複数のライニング部材20が取り付けられている。これら複数のライニング部材20が、照明装置10の車幅方向両側で車両1の進行方向に繋げられてヘッドライニング60を構成している。
【0010】
図3には、車両1の天井を車内から見上げた底面図を示してある。この図では、特に、ヘッドライニング60の1つのライニング部材20に斜線を付けて図示してある。図3に示すように、ヘッドライニング60は、照明装置10の車幅方向両側で車両1の進行方向に沿って複数のライニング部材20に分割されており、照明装置10の後述するルームランプカバー32も車両1の進行方向に沿って複数に分割されている。このように、ヘッドライニング60を複数(本実施の形態では10個)のライニング部材20に分割することで、車内への搬送を容易にでき、取り付け作業も容易にできる。
【0011】
図2に戻って、ライニング部材20は、照明装置10の車幅方向外側で天井1aに沿って配置され、荷物棚14の内面に沿って延びている。より詳細には、ライニング部材20は、車両1の天井1aの車内側の内面1bより車室内側に離れた位置に延設されている。各ライニング部材20の車幅方向外側端辺20aは、荷物棚14の奥側の壁部14aに差し込まれて固定されており、車幅方向内側端辺20bは、照明装置10の後述するルームランプカバー32によって押さえられている。また、各ライニング部材20の中途部の数箇所には、ライニング部材20を車両1の進行方向にスライド可能な状態で車両1の天井内面1bに固定するためのフック22が取り付けられている。つまり、全てのライニング部材20は、車両1の進行方向に沿って移動可能となっており、進行方向に関する取り付け位置の規制は無い状態となっている。
【0012】
図4には、照明装置10およびその周辺構造を部分的に拡大した車幅方向断面図を示してある。また、図5には、図4の領域V内の要部の構造を部分的に拡大して示してある。
照明装置10は、車両1の進行方向に沿って長い2本の蛍光灯31を収容配置した略矩形のケース33、ケース33の開口縁部33aにスクリュー34によってネジ留めされたランプフレーム35、および、蛍光灯31を覆うようにランプフレーム35に取り付けられたルームランプカバー32を有する。ランプフレーム35の車幅方向内側の端縁部35aは、ケース33の開口縁部33aより車幅方向内側に延在し、この端縁部35aにルームランプカバー32が嵌め合わされて固定されている。
【0013】
また、ランプフレーム35は、車幅方向外側から上述した端縁部35aに向けて上方に湾曲した進行方向に長い帯状の湾曲面35bを有する。この湾曲面35bに沿ったライニング部材20の湾曲した部位がこの発明のドーム状凹部24として機能する。このドーム状凹部24は、ヘッドライニング60の車内側の内面より上方に凹んでいる。
【0014】
言い換えると、本実施の形態では、ヘッドライニング60は、照明装置10を取り付けるため天井1aに向けて凹んだドーム状凹部24を有する。つまり、このドーム状凹部24を設けることで、照明装置10の後述する底面部42とヘッドライニング60とを略同一面に配置することができ、後述する間接照明としての機能を高めることができるとともに、見栄えを良くすることができる。このように、各ライニング部材20にドーム状凹部24を設けた結果、天井1aの内面1bとライニング部材20との間に隙間ができている。
【0015】
ところで、照明装置10を車両1の天井に取り付ける場合、スクリュー34によってケース33の開口縁部33aにランプフレーム35を取り付け、この組立体のランプフレーム35をボルト・ナット36によって天井に固設した支持片37に固定する。この場合、支持片37には、ナットが溶接で固着されている。この後、各ライニング部材20の内側端辺20b近くをランプフレーム35の湾曲面35bに両面テープ38で接着する。そして、2本の蛍光灯31をケース33内に取り付けて、ルームランプカバー32をランプフレーム35の車幅方向内側の端縁部35aに取り付ける。ルームランプカバー32をランプフレーム35に取り付けたとき、ルームランプカバー32の後述する舌片部39によって各ライニング部材20の内側端辺20bが押さえられる。
【0016】
ルームランプカバー32は、図5に拡大して示すように、ランプフレーム35の車幅方向内側の端縁部35aに係合する係合部41、およびライニング部材20の車幅方向内側の端辺を押さえる舌片部39を有する。係合部41は、ランプフレーム35の端縁部35aに対する十分な強さのクランプ力を発生させるため、端縁部35aに沿って車幅方向外側に向けて折り返すように湾曲した略U字状の断面を有する。また、舌片部39は、係合部41からランプフレーム35に沿って車幅方向外側に延び、ルームランプカバー32をランプフレーム35に取り付けた状態で、ライニング部材20の内側端辺20bをしっかり押さえることのできる形状に形成されている。言い換えると、ライニング部材20の端部20bは、この舌片部39とランプフレームの湾曲面35bによってしっかりと挟持される。
【0017】
なお、上述した係合部41および端縁部35aの作用によってルームランプカバー32の脱落は確実に防止することができるが、ルームランプカバー32に硬いものが勢い良く当たった場合など、ルームランプカバー32が大きく変形するような状況下では、脱落の可能性が全く無いとは言えない。このため、本実施の形態では、図3に示すように、車両1の進行方向に分割された各ルームランプカバー32の進行方向両端をランプフレーム35にネジ留めした。そして、ルームランプカバー32の分割した端部を目隠しすると同時に、ネジを目隠しするため、カバーの分割位置にガーニッシュ50を取り付けた。
【0018】
ルームランプカバー32は、車両1の室内を照明するため蛍光灯31から下方に向かう照明光を透過させる半透明な底面部42、上述したドーム状凹部24を照明するため蛍光灯31から車幅方向外側に向かう照明光を透過させる半透明な側面部44、および、側面部44と底面部42との間にある車両1の進行方向に延びた帯状の不透明な遮光部46を有する。側面部44を透過した光はドーム状凹部24で反射されて間接照明を提供する。ルームランプカバー32は、この間接照明効果を高めるため、ドーム状凹部24の開口縁部、すなわちライニング部材20の内面とルームランプカバー32の底面部42とが略同じ高さに配置されるような形状を有する。
【0019】
以下、図6および図7を参照して、上述したライニング部材20の車両進行方向に沿った端部の接続構造について説明する。図6には、ヘッドライニング60を図3の線VI-VIに沿って切断した部分拡大断面図を示してあり、図7には、図6の領域VIIをさらに部分的に拡大した部分拡大断面図を示してある。
【0020】
ヘッドライニング60は、図3を用いて説明したように、照明装置10の車幅方向両側で車両1の進行方向に沿って複数のライニング部材20を繋げて構成されている。特に、各ライニング部材20の進行方向に沿った端部は、順に重ねられている。
【0021】
例えば、図6および図7に示すように、進行方向に隣接した2つのライニング部材201、202に着目すると、進行方向前方のライニング部材201の進行方向に沿った後端辺201a(第1の端辺)には、天井1aの内面1bに向けて凹んだ段部62が形成されており、進行方向後方のライニング部材202の進行方向前端辺202b(第2の端辺)には、段部62の底面62aに向けて天井1aの方向に略直角に折り曲げられた折り曲げ部64が形成されている。そして、進行方向前方のライニング部材201の後端辺201aにある段部62に進行方向後方のライニング部材202の折り曲げ部64を有する前端辺202bが車両1の内側から重ねられている。全てのライニング部材20の後端辺および前端辺には、このような段部62や折り曲げ部64が形成されており、複数のライニング部材20が車両1の前方から順に端部を重ねるようにして取り付けられる。なお、段部62や折り曲げ部64は、図2に示すライニング部材20の形状に沿って車幅方向の全長にわたって形成されている。
【0022】
より詳細に説明すると、各ライニング部材20(201、202)は、例えば、ポリプロピレン(PP)にガラス繊維を約45%混ぜたケープラシート(商品名)などの基材66の車室側内面にポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)シート68(以下、PVCシート66と称する)を重ねて一体形成した立体構造を有する。基材66は、比較的剛性の高い材料によって形成されているため、ライニング部材20の3次元的な形状は維持される。つまり、図2に示すように、ライニング部材20は、荷物棚14の内側で湾曲した形状を有し、上述したドーム状凹部24を有し、且つ、図6を用いて説明したように、進行方向後端辺に段部62を有するとともに前端辺に折り曲げ部64を有する立体構造に形成されている。
【0023】
また、進行方向後方のライニング部材202の前端辺202bにある折り曲げ部64の先端には、見栄えを良くするとともにスペーサとしての機能を持たせたモール72が取り付けられている。本実施の形態のモール72は、ポリ塩化ビニルにより形成されており、前端辺202bに沿って車幅方向に連続した構造を有する。そして、モール72は、前方のライニング部材201の段部62の底面62aと後方のライニング部材202の後端辺202b折り曲げ部64の先端との間の隙間を埋めるように、底面62aに面接触する。なお、折り曲げ部64の幅およびモール72の厚さは、前方のライニング部材201と後方のライニング部材202の内面が略面一となる値に設計されている。
【0024】
上述したように、ライニング部材20は、比較的剛性の高い立体構造を有するとともに、図2で説明したように車幅方向両端および中途部が固定されているため、折り曲げ部64の先端をモール72を介して段部62の底面62aに接触させるだけでも、天井から剥れ落ちることはない。しかし、両者をより確実に接合するため、本実施の形態では、段部62の底面62aと折り曲げ部64の内側に両者を貼り合せるための面ファスナー74を取り付けた。この面ファスナー74として、例えば、デュアルタイプの住友スリーエム社製のデュアルロックファスナー(商品名)を用いることができる。
【0025】
以上のように、本実施の形態によると、車両1の進行方向に分割した複数のライニング部材20の進行方向端部を順に重ねるように繋げたため、両者の間の隙間を目隠しするためのモールが不用となり、天井の見栄えを良くすることができる。また、本実施の形態のライニング部材20は、車両1の進行方向に関して取り付け位置の規制が無く、ライニング部材20の後端辺にある段部62の進行方向に沿った長さを十分に確保しているため、ライニング部材20の進行方向に関する位置合わせ精度を低くでき、進行方向に関する寸法誤差をも吸収でき、取り付け作業を容易にできる。また、段部62に重なる折り曲げ部64の先端に車幅方向に長いモール72を取り付けたため、継ぎ目の高さを一定にでき、且つ段部62と折り曲げ部64との間に隙間が空いてもその隙間を目隠しでき、見栄えを損なうことはない。
【0026】
また、本実施の形態の継ぎ目構造を採用すると、車両1の天井にある梁部の位置に関係なく継ぎ目を設計できる。つまり、図6に示すように、本実施の形態では、天井1aにある梁部1cの位置からずれた自由な位置に段部62および折り曲げ部64があり、中空な位置でも継ぎ目を形成できることが分かる。本実施の形態のヘッドライニング60は、照明装置10を収容配置するためのドーム状凹部24を有するため、天井1aの内面1bとの間に必然的に隙間が形成されるため、この継ぎ目構造が有効となる。つまり、本実施の形態によると、ライニング部材20の車両進行方向に関する長さを自由に設計でき、その取り付け位置も任意に変更でき、設計の自由度を高めることができる。
【0027】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0028】
例えば、上述した実施の形態では、段部62に重ねる他方のライニング部材の前端辺に折り曲げ部64を形成した場合について説明したが、この折り曲げ部64は発明に必須の構成ではなく、段部62に全端部をただ単に重ねるだけでも良く、モールを取り付けても良い。
【0029】
また、上述した実施の形態では、折り曲げ部64の先端にモール72を取り付けた場合について説明したが、モール72も発明に必須の構成ではない。さらに、ライニング部材の進行方向端辺同士を確実に接合するため、面ファスナー74を取り付けたが、ライニング部材20の剛性が十分に高ければ、この面ファスナー74も必須の構成ではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態に係るヘッドライニングを備えた観光バスの外観斜視図。
【図2】図1のバスの天井近くの断面を車両前方から見た概略断面図。
【図3】バスの天井を車内から見た底面図。
【図4】照明装置の車幅方向に沿った断面図。
【図5】図4の領域V内の要部の構成を部分的に拡大して示す部分拡大断面図。
【図6】図3のヘッドライニングを線VI-VIに沿って切断した部分拡大断面図。
【図7】図6の領域VIIをさらに部分的に拡大した部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0031】
1…観光バス、1a…天井、1b…内面、2…スイングドア、3…運転席、10…照明装置、12…クーラーダクト、14…荷物棚、20、201、202…ライニング部材、22…フック、31…蛍光灯、32…ルームランプカバー、60…ヘッドライニング、62…段部、62a…底面、64…折り曲げ部、72…モール、74…面ファスナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井内側に取り付けられるヘッドライニングであって、
天井に向けて凹んだ段部を有する第1の端辺、およびこの第1の端辺から離間した第2の端辺を有する複数のライニング部材を、上記第1の端辺の段部に他のライニング部材の上記第2の端辺を重ねるように順に繋げたことを特徴とするヘッドライニング。
【請求項2】
上記第2の端辺は、上記複数のライニング部材の天井から離間した内面が略面一となるように、対応する第1の端辺の段部の底面に向けて略直角に折り曲げられており、その先端に取り付けられたモールが上記段部の底面に接触されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドライニング。
【請求項3】
上記モールは、上記第1の端辺の段部と上記第2の端辺との間の隙間を埋めるように、上記第2の端辺に沿って車幅方向に連続した構造を有することを特徴とする請求項2に記載のヘッドライニング。
【請求項4】
上記第2の端辺の折り曲げ部の内側と上記段部の底面とを貼り合せる面ファスナーをさらに有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のヘッドライニング。
【請求項5】
上記複数のライニング部材は、ガラス繊維を含む基材の車室側内面に樹脂シートを重ねて一体成形した立体構造を有することを特徴とする請求項1に記載のヘッドライニング。
【請求項6】
上記複数のライニング部材は、車両の天井に照明装置を取り付けるため天井に向けて凹んだドーム状凹部を有することを特徴とする請求項5に記載のヘッドライニング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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