説明

ヘッドレスト

【課題】トリムの差し込み用穴の縁がポールガイドのツバ部の下端部とホルダーの上端部との間に噛み込まれないように工夫して、ポールガイドの組み付け作業性を向上できるヘッドレストを提供する。
【解決手段】ヘッドレスト8のポール7を昇降自在にガイドするポールガイド16のツバ部16bの下端部16aと、シートバック1のフレーム2に固定されるホルダー13の上端部13aとの間の外周囲の少なくとも一部に、隙間t1が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車用に適したヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5(a)(b)のように、ヘッドレスト8には、シートバック1のフレーム2に溶接固定される左右の筒状ホルダー3と、シートバック1のフレーム2にクッションパッド4を介してトリム(表皮)5が被せられた状態で、このトリム5の差し込み用穴5aからホルダー3に差し込まれる左右のポールガイド6とが設けられている。そして、この各ポールガイド6でヘッドレスト8の左右のポール7が昇降自在にガイドされるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
各ポールガイド6は、そのツバ部6bの下端部6aが各ホルダー3の上端部3aに当接状態で、各ホルダー3に係止されるものである。
【0004】
ところで、図6(a)(b)のように、シートバック1のフレーム2のホルダー3に、ポールガイド6を矢印aの方向から差し込む前には、シートバック1のフレーム2にクッションパッド4を介してトリム5が被せられた状態である。
【0005】
このとき、トリム5の差し込み用穴5aは、ユーザーによってトリム5が引っ張られたときでも、ポールガイド6の大径頭部6cからはみ出して見えないようにするために、最小径に設定されている。具体的には、ホルダー3の外寸法と略同程度の穴径に設定されていて、差し込み時には、トリム5に隠れてホルダー3自体が見えないこともある。
【0006】
特に、シートバック1の前側からの見栄えを重視する観点から、ポールガイド6の組み付け作業時には、トリム5の差し込み用穴5aの前端縁をホルダー3の上端部3aに重なるようにセットした状態で、差し込み用穴5aからポールガイド6をホルダー3に差し込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3−60550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6(b)のように、トリム5の差し込み用穴5aからポールガイド6をホルダー3に差し込むときに、差し込み用穴5aの前端縁が実線fのようにポールガイド6のツバ部6bの下端部6aで引っ張り込まれて、この前端縁がホルダー3の上端部3aとの間に噛み込まれることがある。なお、同図の二点鎖線bは、差し込み用穴5aの前端縁がクッションパッド4の弾力で押し上げられて、ポールガイド6のツバ部6bの下端部6aとホルダー3の上端部3aとの間に噛み込まれていない正常な状態を示している。
【0009】
このように、トリム5の差し込み用穴5aの前端縁が噛み込まれた場合、作業者は、矢印cのようにトリム5を手前に引き戻して噛み込みを外そうとする。このとき、トリム5を補強している繊維の糸が差し込み用穴5aの変形でほつれて(糸引き現象)、差し込み用穴5aの周辺のトリム5に、波打つような変形のシワが発生することがある。なお、トリム5が皮革製であれば、糸引き現象はないが、差し込み用穴5aの周辺のトリム5が引き延ばされて、同様なシワが発生することがある。
【0010】
このようなシワの発生を抑制するためには、トリム5を少しずつゆっくりと引き戻して噛み込みを外さなければならないので、トリム5の引き戻し作業に時間がかかって、組み付けの作業性が悪くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、トリムの差し込み用穴の縁がポールガイドのツバ部の下端部とホルダーの上端部との間に噛み込まれないように工夫して、ポールガイドの組み付け作業性を向上できるヘッドレストを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、シートバックのフレームに固定されるホルダーと、前記シートバックのフレームにクッションパッドを介してトリムが被せられた状態で、このトリムの差し込み用穴から前記ホルダーに差し込まれるポールガイドとが設けられ、このポールガイドでポールが昇降自在にガイドされるヘッドレストにおいて、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の外周囲の少なくとも一部には、隙間が形成されていることを特徴とするヘッドレストを提供するものである。
【0013】
前記ポールガイドは、そのツバ部の下端部が前記ホルダーの上端部に当接する状態で、ホルダーに係止されるものであり、前記隙間は、前記ポールガイドのツバ部の下端部を切り欠くことで、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の外周囲の一部に形成されている構成とすることができる。
【0014】
前記ポールガイドは、そのツバ部の下端部が前記ホルダーの上端部に当接する状態で、ホルダーに係止されるものであり、前記隙間は、前記ホルダーの上端部を切り欠くことで、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の外周囲の一部に形成されている構成とすることができる。
【0015】
前記ポールガイドは、そのツバ部の下端部が前記ホルダーの上端部に当接しない状態で、ホルダーに係止されるものであり、前記隙間は、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の全外周囲に形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポールガイドの組み付け作業時に、トリムの差し込み用穴の縁をホルダーの上端部に重なるようにセットした状態で、差し込み用穴からポールガイドをホルダーに差し込むときに、差し込み用穴の縁がポールガイドのツバ部の下端部で引っ張り込まれたとする。しかし、ポールガイドのツバ部の下端部とホルダーの上端部との間の外周囲の少なくとも一部に、トリムの差し込み用穴の縁を噛み込まない隙間を形成しているから、差し込み用穴の縁が噛み込まれなくなる。したがって、トリムを手前に引き戻して噛み込みを外そうとする作業が不要になるので、ポールガイドの組み付け作業性が向上するようになる。仮に、差し込み用穴の縁が隙間に噛み込まれたとしても、隙間での噛み込み程度は緩いものであるから、トリムを手前に軽い力で引き戻すだけで簡単に噛み込みを外すことができ、差し込み用穴の周辺のトリムにシワが発生することがない。
【0017】
一方、ポールガイドのツバ部の下端部を切り欠くことで、ポールガイドのツバ部の下端部とホルダーの上端部との間の外周囲の一部に隙間を形成すれば、ポールガイドのツバ部の下端部を切り欠くだけで、簡単に隙間を形成することができる。
【0018】
また、ホルダーの上端部を切り欠くことで、ポールガイドのツバ部の下端部とホルダーの上端部との間の外周囲の一部に隙間を形成すれば、ホルダーの上端部を切り欠くだけで、簡単に隙間を形成することができる。
【0019】
さらに、ポールガイドは、そのツバ部の下端部がホルダーの上端部に当接しない状態で、ホルダーに係止されるようにして、ポールガイドのツバ部の下端部とホルダーの上端部との間の全外周囲に隙間を形成すれば、ポールガイドのツバ部の下端部がホルダーの上端部に当接しない状態で、ホルダーに係止するだけで、簡単に隙間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のホルダーとポールガイドであり、(a)は分解斜視図、(b)は図2(b)のI−I線拡大断面図である。
【図2】図1のホルダーとポールガイドであり、(a)は組み付け斜視図、(b)は(a)の正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のホルダーとポールガイドの組み付け斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態のホルダーとポールガイドであり、(a)は分解斜視図、(b)は組み付け斜視図である。
【図5】特許文献1のヘッドレストであり、(a)は斜視図、(b)は(a)の要部断面図である。
【図6】背景技術のホルダーとポールガイドであり、(a)は分解斜視図、(b)は組み付け断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
図1は第1実施形態のホルダー13とポールガイド16であり、(a)は分解斜視図、(b)は図2(b)のI−I線拡大断面図である。図2はホルダー13とポールガイド16であり、(a)は組み付け斜視図、(b)は(a)の正面図である。
【0023】
シートバック1のフレーム2には、筒状の金属製ホルダー13が溶接固定されている。なお、ホルダー13は、角筒状であっても円筒状であってもよい。
【0024】
シートバック1のフレーム2には、クッションパッド4を介してトリム(表皮)5が被せられた状態で、このトリム5の差し込み用穴5aからホルダー13に差し込まれる合成樹脂製ポールガイド16が設けられている。
【0025】
このポールガイド16でヘッドレスト8の左右のポール7が昇降自在にガイドされるようになっている。
【0026】
ポールガイド16は、そのツバ部16bの下端部16aがホルダー13の上端部13aに当接する状態で、下側部の下係止爪16dがホルダー13の下端部13bに係止されることで、ホルダー13に係止されるものである。
【0027】
そして、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aとホルダー13の上端部13aとの間の外周囲の少なくとも一部には、トリム5の差し込み用穴5aの縁を噛み込まない隙間(切欠き部)t1が形成されている。
【0028】
具体的には、第1実施形態の隙間t1は、ポールガイド16のツバ部16bの前側の下端部16aを幅方向に切り欠くことで、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aとホルダー13の上端部13aとの間の外周囲の前側(外周囲の一部)に形成されている。なお、隙間t1は、前側に限らず、後側でも、左右いずれかの側でも形成することができる。また、隙間t1は、前側と後側、両側のように、二側でも形成でき、さらに、前側と両側、後側と両側のように、三側でも形成することができる。
【0029】
第1実施形態によれば、ポールガイド16の組み付け作業時に、トリム5の差し込み用穴5aの縁をホルダー13の上端部13aに重なるようにセットした状態で、差し込み用穴5aからポールガイド16を矢印aの方向からホルダー13に差し込むときに、差し込み用穴5aの縁がポールガイド16のツバ部16bの下端部16aで引っ張り込まれたとする〔図1(b)の実線f参照〕。
【0030】
しかし、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aとホルダー13の上端部13aとの間の外周囲の少なくとも一部(第1実施形態では前側)に、トリム5の差し込み用穴5aの縁を噛み込まない隙間t1を形成しているから、差し込み用穴5aの縁が噛み込まれなくなる。
【0031】
したがって、矢印cのように、トリム5を手前に引き戻して噛み込みを外そうとする作業が不要になるので、ポールガイド16の組み付け作業性が向上するようになる。
【0032】
仮に、図1(b)の実線fのように、差し込み用穴5aの縁が隙間t1に噛み込まれたとしても、隙間t1での噛み込み程度は緩いものである。したがって、トリム5を手前に軽い力で引き戻すだけで簡単に噛み込みを外すことができ、差し込み用穴5aの縁は、二点鎖線bのように、クッションパッド4の弾力でポールガイド16の大径頭部16cの下端部16eまで押し上げられるので、差し込み用穴5aの周辺のトリムにシワが発生することがない。
【0033】
また、第1実施形態では、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aを切り欠くだけで、簡単に隙間t1を形成することができる。
【0034】
図3は、第2実施形態のホルダー13とポールガイド16の組み付け斜視図である。第1実施形態と相違するのは、ポールガイド16の前側の隙間t1に代えて、ホルダー13の前側の上端部13aを幅方向に切り欠くことで、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aとホルダー13の上端部13aとの間の外周囲の前側(外周囲の一部)に隙間t1を形成するものである。
【0035】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果の他に、ホルダー13の上端部13aを切り欠くだけで、簡単に隙間t1を形成することができる。
【0036】
図4は、第3実施形態のホルダー13とポールガイド16であり、(a)は分解斜視図、(b)は組み付け斜視図である。第1実施形態と相違するのは、ポールガイド16は、そのツバ部16bの下端部16aがホルダー13の上端部13aに当接しない状態で、ホルダー13に係止されるようになっている。
【0037】
具体的には、ホルダー13の側面に複数個の上係止穴13cを形成するとともに、ポールガイド16の上側部に、各上係止穴13cに対応する可撓性の上係止爪16fを形成する。そして、ポールガイド16をホルダー13に差し込んだときに、撓んでいた上係止爪16fが復元してホルダー13の上係止穴13cに係止されることで、ポールガイド16の下動が規制されるようになる。また、下側部の下係止爪16dがホルダー13の下端部13bに係止されることで、ポールガイド16の上動が規制されるようになる。
【0038】
これにより、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aとホルダー13の上端部13aとの間の全外周囲に、トリム5の差し込み用穴5aの全縁を噛み込まない隙間t1を形成するものである。
【0039】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果の他に、ポールガイド16のツバ部16bの下端部16aがホルダー13の上端部13aに当接しない状態で、ポールガイド16をホルダー13に係止するだけで、簡単に隙間t1を形成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 シートバック
2 フレーム
4 クッションパッド
5 トリム
5a 差し込み用穴
7 ポール
8 ヘッドレスト
13 ホルダー
13a 上端部
13b 下端部
13c 上係止穴
16 ポールガイド
16a 下端部
16b ツバ部
16d 下係止爪
16f 上係止爪
t1 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックのフレームに固定されるホルダーと、前記シートバックのフレームにクッションパッドを介してトリムが被せられた状態で、このトリムの差し込み用穴から前記ホルダーに差し込まれるポールガイドとが設けられ、このポールガイドでポールが昇降自在にガイドされるヘッドレストにおいて、
前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の外周囲の少なくとも一部には、隙間が形成されていることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記ポールガイドは、そのツバ部の下端部が前記ホルダーの上端部に当接する状態で、ホルダーに係止されるものであり、
前記隙間は、前記ポールガイドのツバ部の下端部を切り欠くことで、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の外周囲の一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記ポールガイドは、そのツバ部の下端部が前記ホルダーの上端部に当接する状態で、ホルダーに係止されるものであり、
前記隙間は、前記ホルダーの上端部を切り欠くことで、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の外周囲の一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記ポールガイドは、そのツバ部の下端部が前記ホルダーの上端部に当接しない状態で、ホルダーに係止されるものであり、
前記隙間は、前記ポールガイドのツバ部の下端部と前記ホルダーの上端部との間の全外周囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85677(P2013−85677A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228506(P2011−228506)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】