説明

ヘッド位置制御用補正テーブル作成方法、ヘッド位置制御方法およびディスク装置

【課題】ディスクの回転に同期した成分をヘッド制御量から補正して、ヘッドを位置制御するヘッド位置制御方法において、補正後の回転同期成分が最小となる加算ゲインを理論的に得る。
【解決手段】位置信号中のディスク(4)の回転に同期した成分と前記ディスク(4)の回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインを用いる。補正後のRROを求める式を用いて補正後のRROを最小にするゲインを理論的に求めることができる。実験に頼らずとも、ゲインを決めることができ、また、補正後のRROがいくらになるのかを保証でき、製造時間や装置仕様を定めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するディスクにヘッドを位置制御して、ディスクに情報を読み出し、書き込みの一方又は両方を行うディスク装置のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法、ヘッド位置制御方法およびディスク装置に関し、特に、位置信号の回転同期成分を補正するためのヘッド位置制御用補正テーブル作成方法、ヘッド位置制御方法およびディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転するディスク媒体に記録、再生を行うディスク記憶装置は、データ等の記憶装置として、広く利用されている。ディスク装置は、データを記憶するディスクと、ディスクを回転するスピンドルモータと、ディスク上の情報を記録再生するヘッドと、ヘッドを目標位置まで移動させるアクチュエータとからなる。代表的な装置としては、磁気ディスク装置(HDD:ハードディスクドライブ)や光ディスク装置(DVD−ROMやMO)がある。
【0003】
磁気ディスク装置において、ディスク上には、回転中心に対して円弧状に、ヘッドの位置を検出するための位置信号が複数記録され、トラックを構成する。位置信号は、サーボマークとトラック番号(グレイコード)とオフセット情報とからなる。トラック番号とオフセット情報を使い、ヘッドの現在位置を把握することができる。
【0004】
この位置情報と目標位置との差分を求めて、その位置ずれ量に応じて計算を行い、アクチュエータを駆動するための駆動信号、例えばVCM(ボイスコイルモータ)ならば電流、電歪アクチュエータならば電圧、などを供給する。
【0005】
ディスク上の位置信号(サーボ信号)は、ディスク装置自分自身で記録するSTW(サーボ・トラック・ライト)方法と,外部のSTW装置により記録する方法がある。自分自身で記録するSTW方法には、プッシュピンSTW、セルフ・サーボ・ライティング、リライトSTW、などがある。外部のSTW装置により記録する方法には、ディスク単体で記録する方法、磁気転写、ディスクリートメディア、などがある。
【0006】
データを正確に記録・再生するためには、位置信号から復調される位置にヘッドを正確に位置決めすることが必要になる。ところが位置信号にはノイズが含まれており、位置決め精度の劣化を引き起こしている。このノイズには、スピンドルモータの回転に同期した成分と、回転に同期しない成分がある。回転に同期した成分は、測定・補正が可能であり、測定時間が許せばゼロに抑えることが可能である。一方、回転に同期しない成分は、測定・補正が難しい。この回転に同期した成分を測定し、補正する方法が種々提案されている。
【0007】
外部から振動を受けない状態での位置信号なかのスピンドルモータの回転に同期した成分の発生原因には2つある。1つ目の原因は、STW時に、サーボ信号が同心円に正確に記録されないためである。サーボ信号を機械的に記録する限り、記録する際の機械的・電気的・磁気的なノイズは避けられない。それゆえ、STW時のサーボ信号が同心円に正確に記録することは、極めて困難である。
【0008】
2つ目の原因は、STW以降にディスクおよびスピンドルモータが歪みを生じるためである。いずれも微視的に見ると、位置信号が、スピンドルモータの回転中心から見て同心円に揃っていない。今日のディスク装置のトラック幅は、200nm前後であり、わずかな歪みといえども位置決め精度に与える影響は極めて大きい。
【0009】
この位置信号の揺れの回転同期成分は、偏心またはRRO(Repeatable RunOut)とも呼ばれ、回転周波数の1倍の成分を1次、2倍を2次,などと呼ぶ。このRROが生じていると、ヘッドの位置決め精度が悪くなり、データの記録・再生に支障が生じる。たとえば、位置決め精度が悪いと、あるトラックのデータを記録する際に、隣接したトラックに以前に記録したデータの一部にも上書きしてしまうことになる。このような事態を避けるために、位置決め制御においてRROを抑止しなければならない。
【0010】
このRROを抑止する方法としては、従来、図42に示すように、アクチュエータを、RROに追従せずに無視する制御方法と、図43に示すように、アクチュエータをRROに追従する制御方法とがある。
【0011】
図42及び図43は、ヘッド位置の制御系のブロック図を示し、制御系に加わる外乱として、スピンドルモータの回転に同期した成分と非同期の成分とを、RRO、NRRO、RPE、NRPEと表記している。RRO(Repeatable RunOut)は、回転に同期した位置外乱の成分である。NRRO(Non-Repeatable RunOut)は、回転とは非同期の位置外乱の成分である。RPE(Repeatable Position Error)は、位置決め制御を行ったときの位置誤差eに含まれる回転に同期した成分である。NRPE(Non-Repeatable Position Error)は、位置決め制御を行ったときの位置誤差eに含まれる回転に非同期の成分である。回転に同期した成分であるRROとRPEとは、サーボのサンプルごとに異なる値を示す。
【0012】
位置決め制御を行う際には、RRO、RPE、そしてRPE+RROの3つを把握し、いずれの値も小さく抑圧することが求められる。RROは、ディスク上のトラックの歪みを表す。ここで隣接トラックのRROとの差分が問題になる。この差分値はトラック幅の変動を意味する。差分値の変動幅が広いほど、トラック間隔の変動が広がる、すなわちトラック幅がより狭い個所が生じていることになる。また、外部から振動が加わり位置決め精度が劣化したときには、このRROが隣接トラックのデータの記録域を上書きしてしまう幅を決める。すなわち、RROを抑圧することは、外部振動に対する耐性を向上させるのに役立つ。
【0013】
RPEは、位置決め目標からのずれを表す。RROに追従する制御のみを行っている場合には、RROからのずれを表す。通常の位置決め制御では、このRPEを管理対象にしている。例えば、RPEが、トラック幅に対してプラス・マイナス15%の範囲に収まっていたら、またはその状態が規定サンプル数だけ連続していたら、データの記録を許可したり、シーク制御の完了(整定の完了)を判断したりする。すなわち、RPEを抑圧することは、シーク応答時間の改善に役立つ。
【0014】
RPE+RROは、外部から振動が加わらない状態におけるアクチュエータの軌跡を表す。つまり、外部から振動がゼロでの、データの記録位置を示す。すなわち、RPE+RROを抑圧することは、外部振動が小さい、通常使用状態での位置決め精度・データの記録再生のエラー率の改善に役立つ。
【0015】
図42及び図43において、目標位置r、RRO、NRRO、制御系の伝達関数C(z)、およびプラント(磁気ディスク装置では、アクチュエータ)の伝達関数P(z)を用いて、実位置yおよび位置誤差eは次の関係式(1)で表現できる。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、目標位置rが常に変わらず、外部から振動のない、トラック追従時の状態を考える。このとき式(1)のyの式の右辺の目標位置rの項は、一定値であり、入力(目標位置)rに等しい。そこで、トラック追従状態での位置誤差eの式(2)を得る。
【0018】
【数2】

【0019】
一方、この状態でのeは、RPEとNRPEの和でもある。したがって、RROとNRROと、RPEとNRPEとは、下記関係式(3)となる。この式中の、1/(1+C(z)P(z))は、感度関数と一般的に呼ばれている。
【0020】
【数3】

【0021】
このように、RPEとRROとの間には感度関数分の特性の差がある。つまり、周波数ごとの差がある。これは、RROを抑圧できても、同じ抑圧率が、RPEでも達成できるとは限らないことを示している。RROを50%抑圧できても、RPEは20%しか抑圧できないかもしれない。周波数特性の差を考えなければならない。
【0022】
RROを抑止する方法には、図42のように、アクチュエータが、RROに追従しない方法、および図43のように、アクチュエータが、RROに追従する方法の2種類がある。いずれの方法も実際にディスク装置に適用されている。また、その両者を混合する方法も利用されている。例えば、低周波数域ではRROに追従し、高周波数域ではRROに追従しない、というように使い分けている。
【0023】
図42は、RROに追従しない方法を示す。RroTableという値を格納する補正テーブル100を事前に作成しておく。そして、ディスク装置を位置決め制御する際に、位置誤差eから補正テーブル100のRroTableを除去し、コントローラC(z)で利用する。即ち、コントローラC(z)は、RROを除去された位置誤差から制御量を計算する。このRroTable値は、ヘッドごと、トラックごと、リード位置・ライト位置ごとに異なる値を持つ場合もあれば、複数のトラックを1まとめにしてゾーンを形成し、ヘッドごと、ゾーンごとに値を持つ場合もある。
【0024】
このRroTableの生成方法について、従来から提案されている方法の1つは、観測位置を演算してRROを求める方法がある。この演算の方法としては、離散フーリエ変換(DFT)を用いる方法(例えば、特許文献1参照)がある。図42に示すように、補正テーブル100のRroTableなる位置軌道を位置誤差eから生成し、eに含まれるRPEを除去する。このときの位置誤差eは、次の式(4)で表現される。この式(4)においては、アクチュエータは、RROに追従しないように動作する。
【0025】
【数4】

【0026】
したがって、位置誤差eからRPEを除去するには次の式(5)を満足するように、RroTableを生成する。
【0027】
【数5】

【0028】
すなわち、図42に示すように、位置誤差eからRPEを、取得ブロック110で取得し、RRO計算ブロック112で、取得したRPEに対して、感度関数の逆特性を通して、RroTable値を求める。ディスクの複数周分の平均値をとる場合には、加算ブロック114で、ディスクの各周のRroTable値を加算する。
【0029】
次に、RROに追従する方法は、図43に示すように、URroTableという値を格納する補正テーブル118を事前に作成しておく。そして、ディスク装置を位置決め制御する際に、制御系C(Z)からプラントP(Z)へ駆動信号を供給する際に、補正テーブル118のURroTable値を加える。このURroTable値も、ヘッドごと、トラックごと、リード位置・ライト位置ごとに異なる値を持つ場合もあれば、複数のトラックを1まとめにしてゾーンを形成し、ヘッドごと、ゾーンごとに値を持つ場合もある。また、トラックに無関係にヘッドごとに持つ場合もある。
【0030】
このURroTableの生成方法についても、従来からいくつかの方法が提案されており、位置誤差eを演算してRROに追従する信号を求める方法がある。この演算の方法としては、繰り返し制御を用いる方法、離散フーリエ変換を用いる方法(例えば、特許文献1参照)がある。
【0031】
図43に示すように、URroTable値を位置誤差eから生成し、eに含まれるRPEを除去する。さきほどと同じく、トラック追従状態で、外部振動がない場合には、アクチュエータは、RROに追従するように動作し、位置誤差eは次の関係式(6)を満足する。
【0032】
【数6】

【0033】
したがって、位置誤差eからRPEを除去するには、次の式(7)を満足するように、URroTable値を生成すればよい。式(7)は、RPEに対して、感度関数の逆特性とプラントの逆特性を持つ伝達関数を通して求めることを示す。
【0034】
【数7】

【0035】
即ち、図43に示すように、位置誤差eからRPEを、取得ブロック110で取得し、RRO計算ブロック112で、取得したRPEに対して、感度関数の逆特性とプラントの逆特性を通して、URroTable値を求める。ディスクの複数周分の平均値をとる場合には、加算ブロック114で、ディスクの各周のRroTable値を加算する。
【0036】
以上のように、観測したRPEから補正テーブル:RroTableまたはURroTableを求めるには、(1+C(z)P(z))や、−(1+C(z)P(z))/P(z)といった伝達関数を通して変換する方法がある。この変換方法には、RPEと、RroまたはURroとの間の周波数特性を事前に求めておき、離散フーリエ変換(DFT)を用いる方法が最も精度良く波形を求めることができる。
【0037】
このRroTable、URroTableの波形を生成する際に問題になるのは、ノイズであり、特に、位置外乱内の非同期の成分:NRROが問題になる。このNRROは、位置決め制御時には、NRPEとして観測される。RROに追従するにしても、追従しないにしても、位置信号を用いて波形を求めるが、RPEに比べてNRPEが無視でないくらいに大きい状態が問題になる。
【0038】
このNRPEが「0」の場合には、1周分の位置信号を観測するだけで、RPEを求めることができる。そのため、RROに完全に追従しない、または完全に追従する、ためのRroTableまたはURroTableを生成することは容易である。しかし、実際には、RPEとNRPEの大きさは同程度であり、このRPE測定時のNRPEの誤差を考慮した方法が必要になる。
【0039】
このNRPEの影響を低減する方法の1つが、位置誤差eを平均化する方法である。位置信号を連続して複数の回転周数分(例えば、100回転)測定し、サーボセクタごとに、測定値の平均値を求める。そして、その平均値をRPEとみなして、RROに追従しない,または追従するための補正信号:RroまたはUrroTable値を計算する。このRroやUrroTable値は、観測した波形にノイズが一切含まないものと仮定して計算する。そして、この値を、RroTableやURroTableの補正テーブル100、108に、サーボセクタごとに代入する。
【0040】
しかし、単純に平均化する方法は、NRPEの影響を低減することはできても、「0」にすることはできない。まして、NRPEがRPEに対してどの程度大きいか、測定するための回転周数をいくらにすべきかの基準もあいまいである。そこで、位置誤差信号を平均化したあと、1よりも小さいゲイン:KrroまたはKurroをかけて、テーブル100、118に代入することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0041】
この方法では、NRPEが大きい場合、または測定するための回転周数が少ない場合には、KrroまたはKurroを、実験にて調整して、補正後のRPEが小さくなる条件を決めていた。ゲインは、NRPEがRPEに対して大きい場合は,「0」に近く、逆に小さい場合には、「1」に近くなる。このゲインの不確実性を解除するため、更に、RPEの測定と補正を繰り返す(例えば、特許文献2参照)。例えば、2回繰り返す場合を考える。1回目の測定・計算により求めたRro[1]またはURro[1]を使い、下記式(8)により、補正テーブルを生成する。
【0042】
【数8】

【0043】
2回目には、さきほど生成した補正テーブル:RroTable[1]またはURroTable[1]を使って位置決め制御を行った状態で、RPEの測定を行う。そして、再びRro[2]またはURro[2]を計算して、下記式(9)により、先の補正テーブルに加算する。
【0044】
【数9】

【特許文献1】特開平11−126444号公報
【特許文献2】US 6,437,936 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
近年の記憶容量の増大の要求により、トラック密度が高くなっている。図44は、隣接する3つのトラックの揺れの様子を示し、トラック毎に、トラック中心の軌跡が異なる。図45は、図44の真中のトラックの軌跡から見た、上下のトラックの軌跡を示し、真中のトラックのトラック幅を示すものである。このように、トラックの高密度により、精度の高いRRO補正が要求される。
【0046】
従来のディスク装置のRRO補正テーブル:RroTableまたはURroTableの生成方法においては、補正テーブルへ補正値であるRroまたはUrroを加算する際のゲイン:KrroまたはKurroの最適値を理論的に求める方法が確立されていなかった。そのため、実験により経験的に決めるしかなかった。
【0047】
それゆえに、補正後のRPEの抑圧率も予想を立てることができず、実験により確認するしか方法がなかった。この事は、ディスク装置個々ごとに、抑圧率を調整する際に問題になり、新しい装置を設計する際に位置決め精度の値が予想できないことになる。
【0048】
又、補正値をディスク装置の製造工程にて測定する際に、位置決め精度の仕様を満足するために必要なRPEの測定時間、すなわち製造時間を、いくらにすればよいのか、基準を作ることが難しかった。例えば、従来技術では、位置決め精度の仕様を満足するには、測定時間が長いほど(例えば、数時間)、正確なRRO補正テーブルを作成できるが、測定時間が長いほど、製造工程に占める補正テーブル作成時間が長くなり、大量のディスク装置を製造するには、不向きである。
【0049】
更に、実験によりゲインを決定する際に、位置誤差の周波数特性を考慮していないため、補正後のRPEを効果的に抑圧することが困難であり、ディスク装置の追従精度低下をもたらすおそれがあった。
【0050】
従って、本発明の目的は、補正テーブルへ補正値の1つであるRroまたはUrroを加算する際のゲインを経験に頼らずに、理論的に求め、位置決め精度の仕様を満足する補正テーブルをより短時間で作成する方法、ヘッド位置決め制御方法及びディスク装置を提供することにある。
【0051】
又、本発明の他の目的は、補正テーブルへ補正値の1つであるRroまたはUrroを加算する際のゲインを最適化し、位置決め精度の仕様を満足する補正テーブルをより短時間で作成する方法、ヘッド位置決め制御方法及びディスク装置を提供することにある。
【0052】
更に、本発明の他の目的は、補正テーブルへ補正値の1つであるRroまたはUrroを加算する際のゲインを、周波数ごとに最適に設定し、補正後のRPEをより効果的に抑圧するための補正テーブル作成方法、ヘッド位置決め制御方法及びディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0053】
上記目的を達成するために、本発明の補正テーブル作成方法は、ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドを、前記ディスクの位置信号により位置制御するディスク装置の前記ディスクの回転に同期した成分を補正するための補正値を作成するヘッド位置制御用補正テーブル作成方法である。そして、その方法は、前記位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定するステップと、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップと、前記補正された位置誤差成分を補正テーブルに格納するステップとを有する。
【0054】
本発明のヘッド位置制御方法は、ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドを、前記ディスクの位置信号を前記ディスクの回転に同期した成分で補正した信号で、位置制御するヘッド位置制御方法である。そして、その方法は、目標位置と前記ヘッドからの位置信号による現在位置との誤差を算出するステップと、前記位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定し、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正信号を格納する補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップと、前記位置誤差及び前記補正信号とに基づき、前記ヘッド位置を制御するステップとを有する。
【0055】
本発明のディスク装置は、ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの所望位置に移動するアクチュエータと、前記ヘッドからの位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定し、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正信号を格納する補正テーブルと、目標位置と前記ヘッドからの位置信号による現在位置との誤差を算出し、前記位置誤差及び前記補正信号とに基づき、前記ヘッド位置を制御する制御部とを有する。
【0056】
又、本発明では、好ましくは、前記補正ステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなる。
【0057】
又、本発明では、好ましくは、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定するステップと、前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算するステップとを更に有する。
【0058】
又、本発明では、好ましくは、前記補正ステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整された各繰り返し毎のゲインで、前記各繰り返し毎に、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなる。
【0059】
又、本発明では、好ましくは、前記補正ステップは、前記ディスクの回転周波数の整数倍の周波数毎に、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比を求めて得た調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなる。
【0060】
又、本発明では、好ましくは、前記格納ステップは、前記補正テーブルに格納された補正値により補正されたディスクの回転に同期した成分の正規分布であるRRO残余のσが、前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布をσRRO,前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布をσNRRO,前記測定周数をN,前記繰り返し数をM,前記ゲインをKとした時に、下記式(18)に従う。
【0061】
【数10】

【発明の効果】
【0062】
本発明では、位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインを用いるので、補正後のRROを求める式を用いて補正後のRROを最小にするゲインを理論的に求めることができる。それゆえ、実験に頼らずとも、ゲインを決めることができる。また、補正後のRROがいくらになるのかを保証でき、製造時間や装置仕様を定めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の実施の形態を、ディスク装置、RRO補正テーブル作成のための最適ゲイン決定方法、RRO補正テーブル作成方法、他のRRO補正テーブル作成方法、URRO補正テーブル作成方法、周波数特性を考慮した別のRRO補正テーブル作成方法、相関を考慮した別のRRO補正テーブル作成方法、RRO補正テーブルを使用したサーボトラックライト方法、他の実施の形態で説明する。しかしながら、本発明は下記実施の形態に限定されない。
【0064】
[ディスク装置]
図1は、本発明の一実施形態を示すディスク記憶装置の構成図、図2は、図1の磁気ディスクの位置信号の配置図、図3は、図1および図2の磁気ディスクの位置信号の構成図、図4は、図3の位置信号の読み取り波形図、図5は、図1のヘッド位置制御の説明図、図6は、図1の構成のサーボ制御系の構成図である。
【0065】
図1乃至図6は、ディスク記憶装置として、磁気ディスク装置を示す。図1に示すように、磁気記憶媒体である磁気ディスク4が、スピンドルモータ5の回転軸2に設けられている。スピンドルモータ5は、磁気ディスク4を回転する。アクチュエータ(VCM:ボイスコイルモータ)1は、先端に磁気ヘッド3を備え、磁気ヘッド3を磁気ディスク4の半径方向に移動する。
【0066】
アクチュエータ1は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図では、磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク4が搭載され、4つの磁気ヘッド3が、同一のアクチュエータ1で同時に駆動される。磁気ヘッド3は、リード素子と、ライト素子とからなる。磁気ヘッド3は、スライダに、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0067】
位置検出回路7は、磁気ヘッド3が読み取った位置信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。リード/ライト(R/W)回路10は、磁気ヘッド3の読み取り及び書き込みを制御する。スピンドルモータ(SPM)駆動回路8は、スピンドルモータ5を駆動する。ボイスコイルモータ(VCM)駆動回路6は、ボイスコイルモータ(VCM)1に駆動電流を供給し、VCM1を駆動する。
【0068】
マイクロコントローラ(MCU)14は、位置検出回路7からのデジタル位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、VCM駆動指令値を演算する。即ち、位置復調とサーボ制御を行う。リードオンリーメモリ(ROM)13は、MCU14の制御プログラム等を格納する。ランダムアクセスメモリ(RAM)12は、MCU14の処理に必要なデータを格納する。
【0069】
ハードディスクコントローラ(HDC)11は、サーボ信号のセクタ番号を基準にして、1周内の位置を判断し、データを記録・再生する。ランダムアクセスメモリ(RAM)15は、バッファメモリとして利用され、リードデータやライトデータを一時格納する。HDC11は、更に、ATAやSCSI等のインターフェイスIFで、ホストと通信する。バス9は、これらを接続する。
【0070】
図2に示すように、磁気ディスク4には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)が、円周方向に等間隔に配置される。なお、各トラックは、複数のセクタで構成され、図2の実線16は、サーボ信号の記録位置を示す。図3に示すように、位置信号は、サーボマークServo Markと、トラック番号Gray Codeと、インデックスIndexと、オフセット情報(サーボバースト)PosA、PosB、PosC、PosDとからなる。なお、図3の点線は、トラックセンターを示す。
【0071】
図4は、図3の位置信号をヘッド3で読み取った信号波形図である。図4に示す信号波形のトラック番号Gray Codeとオフセット情報PosA、PosB、PosC、PosDを使い、磁気ヘッド3の半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして、磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0072】
例えば、インデックス信号を検出したときのセクタ番号を0番に設定し、サーボ信号を検出する毎に、カウントアップして、トラックの各セクタのセクタ番号を得る。このサーボ信号のセクタ番号は、データの記録再生を行うときの基準となる。なお、インデックス信号は、1周に1つである、又、インデックス信号の代わりに、またはそれとともに、セクタ番号を設けることもできる。
【0073】
図5は、図1のMCU14が行うアクチュエータのシーク制御例である。図1の位置検出回路7を通じて、MCU14が、アクチュエータ1の位置を確認して、サーボ演算し、適切な電流をVCM1に供給する。図5では、あるトラック位置から目標トラック位置へヘッド3を移動するシーク開始時からの制御の遷移と、アクチュエータ1の電流、アクチュエータ1(ヘッド3)の速度、アクチュエータ1(ヘッド3)の位置を示す。
【0074】
即ち、シーク制御は、コアース制御、整定制御及びフォローイング制御と遷移することで、目標位置まで移動させることができる。コアース制御は、基本的に速度制御であり、整定制御、フォローイング制御は、基本的に位置制御であり、いずれも、ヘッドの現在位置を検出する必要がある。この整定制御からフォローイング制御への移行、すなわちシーク制御の完了の判断は、RPEを基準に行われる。また、フォローイング制御中にデータを記録・再生することが可能か否かの判定も、RPEを基準に行われる。
【0075】
このような、位置を確認するためには、前述の図2乃至図4のように、磁気ディスク上にサーボ信号を事前に記録しておく。即ち、図3に示したように、サーボ信号の開始位置を示すサーボマーク、トラック番号を表すグレイコード、インデックス信号、オフセットを示すPosA〜PosDといった信号が記録されている。このサーボ信号を磁気ヘッド3で読み出し、このサーボ信号を、位置検出回路7が、デジタル値に変換する。
【0076】
MCU14は、図6に示すデジタル・サーボ制御系の演算を行う。即ち、演算ブロック22で、目標位置rと現在位置yとの誤差eを求め、コントローラ20で、制御演算し、制御量を計算し、プラント21であるVCM1を駆動する。プラント21の位置は、磁気ヘッド3からのサーボ信号を復調し、現在位置yを得る。この現在位置yと目標位置rとの差分値が、位置誤差eとなる。
【0077】
図6において、制御系に加わる外乱として、スピンドルモータ5の回転に同期した成分と、非同期の成分とを、RRO、NRRO、RPE、NRPEと表記している。RRO(Repeatable RunOut)は、回転に同期した位置外乱の成分である。NRRO(Non-Repeatable RunOut)は、回転とは非同期の位置外乱の成分である。本発明では、全ての外乱を位置の単位にまとめて検討する。例えば、アクチュエータ1に加わる風外乱は、加速度の単位で表現されるが、ここではそれを位置の単位に換算して検討する。RPE(Repeatable Position Error)は、位置決め制御を行ったときの位置誤差eに含まれる回転に同期した成分である。NRPE(Non-Repeatable Position Error)は、位置決め制御を行ったときの位置誤差eに含まれる回転に非同期の成分である。RROとRPEとは、サーボセクタごとに異なる値を示す。
【0078】
このRPEが誤差なく観測できれば、RroTableまたはURroTableは、正しく生成できる。ところが、実際には、RPEを観測位置yから求めることが必要になり、観測位置yには、RPEの他に、NRPEが含まれている。このNRPEが、RPEを観測する時の誤差となる。したがって、NRPEの影響を小さくするために、測定回数を増やす方法が一般的に行なわれている。
【0079】
即ち、複数回のサンプルで測定した観測位置yの平均値を求めて、RPEを求めるが、測定は有限時間で行わなければならず、それゆえNRPEの影響も0にはできない。特に1周や2周といった、極めて短い測定時間にて、RPEを測定するときに、誤差として含まれるNRPEの影響を低減する方法が求められていた。以下、Rrotableを生成する時に必要な誤差の影響を低減方法について説明する。
【0080】
[RRO補正テーブル作成のための最適ゲイン決定方法]
図7は、本発明のヘッド位置決め制御系の第1の実施の形態のブロック図、図8は、本発明のディスク装置の製造工程の説明図、図9は、RroTable作成のためのRRO残余の説明図、図10は、図9のRRO残余を用いたRROゲイン最適値計算処理フロー図、図11は、図10のRRO測定処理フロー図、図12は、図10のNRRO測定処理フロー図である。
【0081】
図7は、ディスク装置単体で最適値計算と、補正テーブル作成を行う場合のブロック図であり、図6で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。即ち、演算ブロック22で、目標位置rと現在(観測)位置yとの誤差eを求め、コントローラ20で、制御演算し、制御量を計算し、プラント21であるVCM1を駆動する。プラント21の位置は、磁気ヘッド3からのサーボ信号を復調し、現在位置yを得る。この現在位置yと目標位置rとの差分値が、位置誤差eとなる。この制御系に加わる外乱として、スピンドルモータ5の回転に同期した成分と、非同期の成分とを、RRO、NRRO、RPE、NRPEと示す。
【0082】
RPE取得ブロック26は、図13で後述するように、位置誤差eからRPEをセクタ毎に取得する。位置精度測定ブロック24は、図10乃至図12で後述するように、位置誤差eから位置精度を測定する。最適化計算ブロック25は、図10にて説明するように、繰り返し数Mでの最適ゲインを計算する。波形計算ブロック27は、図13で後述するように、RPE取得ブロック26で取得したRPEに最適ゲインを掛け、RRO波形を計算する。RROテーブル29は、RRO波形を格納する。加算ブロック28は、図13で後述するように、繰り返し数分RRO波形を加算し、テーブル29を更新する。
【0083】
尚、RROテーブル29の作成後は、磁気ディスク装置の運用状態(特に、フォローイング状態)において、演算ブロック22で、観測位置yから目標位置rと補正テーブル29のRroテーブル値とを差し引き、位置誤差eを生成する。これにより、コントローラ20への入力eは、RRO補正される。
【0084】
この最適値(ゲイン)計算と補正テーブル作成を説明する前に、図8により、磁気ディスク装置の製造工程を説明する。先ず、装置に、サーボ信号記録済みのディスク及び他の機構部品(例えば、図1のVCM,磁気ヘッド、スピンドルモータ等)を組み立てる。次に、各種回路(図1のMCU,HDC等)を搭載した電子基板を、ディスク装置に取り付ける。次に、磁気ヘッドの出力やVCMの電流値等のディイスク装置の固体差を校正する。
【0085】
更に、前述のRRO補正テーブルを、校正後の磁気ディスク装置を使用して、作成する。次に、RRO補正テーブルを使用して、VCM1を駆動し、磁気ヘッドの位置決め精度を、各トラックで測定し、確認する。ここで、所望の位置決め精度が得られないトラックは、不使用とし、交代トラックを設定する。更に、データ記録再生テストを行い、所望の記録再生が可能かを確認する。確認された磁気ディスク装置が、フィールドに出荷される。
【0086】
次に、ゲインの最適値計算のための評価関数を説明する。先ず、RroTable(補正テーブル)を生成し、位置決め制御に適用してRRO補正を行った後のRRO残余について、特定のセクタに着目して考える。即ち、図9に示すように、RROの残余は、実際のRROからRroTable29のRRO補正値を引いたものである。
【0087】
ここで、観測位置yに離散フーリエ変換(DFT)を適用し、RRO+NRROの和の値が観測できるものとする。このRRO+NRROの波形を、連続N周観測し、各セクタの平均値を測定する。このセクタのRROはROとする。また、測定の都度、NRROの値はn11、n12、…、n1Nと変化するものとする。このとき、N周平均後のRRO+NRROの波形、すなわちRRO推定値は、以下の式(10)となる。
【0088】
【数11】

【0089】
この値に、ゲインKをかけて、RRO補正テーブルRroTable29に代入する(初回なのでRRO補正テーブルは、零)。その上で、RRO補正テーブルを使用して、位置決め制御を行うと、RROの残余は、式(11)となる。
【0090】
【数12】

【0091】
同様に2回目の測定を行い、加算ゲインKをかけて、RRO補正テーブル29に加算し、RRO補正テーブルを使用して、位置決め制御を行うと、RROの残余:R2は、式(12)となる。
【0092】
【数13】

【0093】
以下、順に繰り返すと、M回補正後のRROの残余RMは,次式(13)となる。ただし、下記の式においては、NRROの添え字を、「i」から「j」に入れ替えている。
【0094】
【数14】

【0095】
次に、各セクタの元のRROであるR0は、多数のトラックで観測すると、正規分布を示すものと仮定する。また、NRROも、正規分布となることが一般的に知られている。さらに、RROとNRROとには相関はない。したがって、RROとNRROを独立に考えることができる。
【0096】
即ち、式(13)の右辺の第1項のRROに起因した成分と、第2項のNRROに起因した成分とを、別々に取り扱うことができる。このRRO残余を多数点で求めたときの分散は、式(13)の第1項に対応した標準偏差と、第2項に対応した標準偏差を、別々に求め、各々の2乗和となる。
【0097】
先ず、第1項のRROについて、多数のトラックで、それぞれのセクタにおけるRROをNm個観測し、その値が、R1,R2,……、RNmであった時、RROの標準偏差σRROは、次式(14)で求まる。
【0098】
【数15】

【0099】
補正後のRRO残余中のRRO起因の成分は、式(13)の右辺第1項に従うから、右辺第1項の、多数点でのRROを、R0の代わりに、R1,R2,……、RNmとし、式(14)に代入すると、RRO残余RMの中のRRO起因の成分の分散(標準偏差σRROの2乗)は、次式(15)で表現できる。
【0100】
【数16】

【0101】
次に、NRROについて、NRRO起因の標準偏差をσNRROとする。式(13)の右辺第2項中のnijの分布は、この標準偏差σNRROに従う。即ち、Nサンプル分のNRROの和の値を、和の値の期待値である標準偏差σNRROで表現すると、次式(16)となる。
【0102】
【数17】

【0103】
したがって、式(13)の右辺第2項のNRROに起因した成分の分散を、σNRROを用いて、表現すると、式(16)を、式(13)の右辺第2項に代入し、2乗して、下記式(17)と表現できる。
【0104】
【数18】

【0105】
従って、補正後のRROの残余の分散(σの2乗)は、式(15)と式(17)とから、式(18)と表現できる。これが、RRO補正の効果を計算する評価式となる。与えられた条件内で、この式(18)の値が最小になるように変数を調整すればよい。この式を用いればRRO、NRROのσ比に応じて、最適な変数:N(サンプル数)、M(測定、補正の繰り返し数)、K(加算ゲイン)の組み合わせを決めることができる。
【0106】
【数19】

【0107】
次に、式(18)からRRO残余を最小にする最適条件の代数解を求める。最初に繰り返し回数Mが「1」のときを考える。式(18)において、繰り返し回数Mの値を「1」とおくと、式(18)は、下記式(19)となる。
【0108】
【数20】

【0109】
補正前のRROとNRROの各々のσの比をrと表現して、式(19)に代入すると、この比rを使って、正規化したRRO残余の分散r[1]は、下記式(20)と表現できる。
【0110】
【数21】

【0111】
RRO残余が最小になる加算ゲインKを求めるためには、式(20)をKにて、偏微分した値が「0」になる条件を求めればよい。即ち、微分値が、「0」であれば、RRO残余は、極小値となる。従って、下記式(21)により、RRO残余が最小になる加算ゲインKが得られる。
【0112】
【数22】

【0113】
このとき、式(20)の正規化したRRO残余の分散r[1](1回補正後の正規化RRO残余)は、式(20)に、式(21)を代入して、下記式(22)で得られる。
【0114】
【数23】

【0115】
以上より、最適ゲインK,正規化RRO残余の分散、RRO残余の分散、位置決め精度を示すRRO残余の元のRROに対する比及びRRO低減率は、下記(23)式に示す関係式を導くことができる。これにより、N(サンプル数)、σRRO(RROの標準偏差)、σNRRO(NRROの標準偏差)が与えられていれば、RRO残余を最小にするゲインKは一意に定まる。
【0116】
【数24】

【0117】
前述の式記は、測定・補正の繰り返し回数Mが「1」のときであったが、繰り返し回数Mが、2以上の値での最適な加算ゲインK[k]と正規化RRO残余:r[M]を求める。式(21)と、式(22)により、下記式(24)が得られる。ここで、K[1]、K[2]…は、各々異なるゲインである。即ち、1回の測定・補正を繰り返すごとに、加算ゲインKを違えて、その時々で最適な加算ゲインを設定することができる。
【0118】
【数25】

【0119】
したがって、任意の繰り返し数Mのときには、式(23)と同様に、下記式(25)に示す関係式を得る。
【0120】
【数26】

【0121】
図11及び図12を参照して、図10により、最適ゲイン計算処理を説明する。
【0122】
(S10)図1の構成の磁気ディスク装置を使用し、磁気ディスク4を回転し、磁気ヘッド3を磁気ディスク4のサーボ情報に従い、図7の制御系で、トラックフォロー制御して、RRO,NRROを測定する。先ず、RROの測定は、図11に示すように、磁気ディスクを半径方向に複数のゾーンに分け、各対象ゾーンの代表トラックに位置決めする。そして、図7の位置精度測定ブロック24が、全ての対象ゾーンで、代表トラックの各セクタにおけるPES(位置誤差信号)(図7のエラーe)を測定する。測定ブロック24は、この複数トラックのセクタ毎の平均値を計算し、平均値をRPE(Repeatable Position Error)として得る。式(3)で示したように、この各セクタのRPEに、伝達関数(1+CP)を掛け、各セクタのRROを計算する。同様に、NRROの測定は、図12に示すように、1つの代表トラックについて、比較的長い時間、例えば、ディスクの512周分の各セクタのPESを測定し、その平均値をRPEとして計算する。次に、各セクタについて、測定したPESからRPEを差し引き、各セクタのNRPEを計算する。この計算したNRPEのパワースペクトラムを,FFT(Fast Fourier Transform)により計算し、周波数毎に分解する。周波数毎に分解されたNRPEに、式(3)で示したように、伝達関数(1+CP)を掛け、周波数毎のNRROのパワースペクトラムを計算する。
【0123】
(S12)次に、図7の最適値計算ブロック25が、求めた各セクタのRROから、式(14)に従い、RROの標準偏差σrroを計算する。同様に、求めた各セクタのNRROから、式(16)に従い、NRROの標準偏差σnrroを計算する。
【0124】
(S14)式(20)により、RROの標準偏差σrroと、NRROの標準偏差σnrroから、標準偏差σの比rを計算し、式(21)又は、式(24)により、最適ゲインK又は、K[M]を計算する。
【0125】
このように、補正後のRROの残余を評価対象として、評価関数を求め、評価関数から、RROの残余が最小となる、即ち、補正後のRROを最小にするゲインを理論的に求めることができる。それゆえ、実験に頼らずとも、補正テーブル作成ゲインを決めることができる。また、補正後のRROがいくらになるのかを保証でき、製造時間や装置仕様を定めることができる。
【0126】
[RRO補正テーブル作成方法]
図13は、M=1の場合のRRO補正テーブル作成処理フロー図である。尚、ここでは、図7の位置精度測定ブロック24と、最適値計算ブロック25とにより、図10の処理で、最適ゲインKが求まっているものとし、図7のRPE取得ブロック26及び波形計算ブロック27によるRRO補正テーブル29の作成処理を説明する。
【0127】
(S20)先ず、補正テーブル29の各セクタqのRRO補正値ProTable(q)を「0」に初期化する。尚、qは、0〜(Ns−1)の値を取る。即ち、1周内のサーボセクタ数は、Ns個である。
【0128】
(S22)磁気ディスク4のN周分の全ての各セクタkの位置誤差PES(k+i・Ns)を測定し、各セクタkの位置誤差PESの平均値RPE(k)を計算する。即ち、ここでは、セクタのポインタをkとし、1周分のサーボセクタ数をNs個とし、iを、回転周数(1周目、2周目、…、N周目)としている。従って、図13の式は、同一セクタkの各周の位置誤差PES(k+i・Ns)の和をとり、測定周数Nで割り、平均化している。
【0129】
(S24)次に、最初に観測したRPE波形を、DFTする。1周内のサーボセクタ数をNsとすると、このとき考えなければならないRRO次数は、サンプリング定理より、1〜(Ns/2−1)までである。m次のRRO周波数のDFTを行うには、cosおよびsinのそれぞれのm次の係数をC(m)、 S(m)と表現すれば、セクタ0番から(Ns−1)番までの1周分のRPE波形にm次のcos波形、sin波形を乗算して加算すればよい。即ち、式(26)を計算する。
【0130】
【数27】

【0131】
(S26)次に、Rro(またはUrro)を求めるために,RRO次数ごとに伝達関数を乗算する。乗算したい周波数特性(m次のRRO周波数の複素数値)を,a(m)+jb(m)として事前に求めておく。具体的には、式(5)または式(7)で示した伝達関数から、m次の周波数での複素数値を求める。この特性を乗算すると、m次の成分は複素数値で、式(27)と表現できる。つまり、C2(m)とS2(m)は、C(m)、S(m)、a(m)、b(m)から求まる。
【0132】
【数28】

【0133】
(S28)次に、逆DFTを行い、求めるべき波形を得る。m次の演算を1次から(Ns/2−1)次まで行えばよい。RroTableを生成するとき、セクタq番目のRRO波形:RRO(q)は、次式(28)で求まる。(尚、後述するURroTableを生成するときも同じ式となる)。
【0134】
【数29】

【0135】
(S30)最後に、求めたRRO(q)に、前述の最適ゲインKを乗算し、補正テーブル29のRroTable(q)に格納する。そして、終了する。
【0136】
次に、測定、補正(繰り返し)回数Mが、2以上の場合を説明する。図14は、Mが2以上の場合のRRO補正テーブル作成処理フロー図である。尚、ここでも、図7の位置精度測定ブロック24と、最適値計算ブロック25とにより、図10の処理で、最適ゲインK(M)が求まっているものとし、図7のRPE取得ブロック26及び波形計算ブロック27によるRRO補正テーブル29の作成処理を説明する。
【0137】
(S40)測定、補正回数カウント値CountMを、「0」に初期化する。
【0138】
(S42)先ず、図13と同様に、補正テーブル29の各セクタqのRRO補正値ProTable(q)を「0」に初期化する。尚、qは、0〜(Ns−1)の値を取る。即ち、1周内のサーボセクタ数は、Ns個である。
【0139】
(S44)磁気ディスク4のN周分の全ての各セクタkの位置誤差PES(k+i・Ns)を測定し、各セクタkの位置誤差PESの平均値RPE(k)を計算する。即ち、ここでは、セクタのポインタをkとし、1周分のサーボセクタ数をNs個とし、iを、回転周数(1周目、2周目、…、N周目)としている。従って、図14の式は、同一セクタkの各周の位置誤差PES(k+i・Ns)の和をとり、測定周数Nで割り、平均化している。
【0140】
(S46)次に、最初に観測したRPE波形を、DFTする。1周内のサーボセクタ数をNsとすると、RRO次数は、サンプリング定理より、1〜(Ns/2−1)までである。m次のRRO周波数のDFTを行うには、cosおよびsinのそれぞれのm次の係数をC(m)、 S(m)と表現すれば、セクタ0番から(Ns−1)番までの1周分のRPE波形にm次のcos波形、sin波形を乗算して加算すればよい。即ち、前述の式(26)を計算する。
【0141】
(S48)次に、Rro(またはUrro)を求めるために,RRO次数ごとに伝達関数を乗算する。乗算したい周波数特性(m次のRRO周波数の複素数値)を,a(m)+jb(m)として事前に求めておく。具体的には、式(5)または式(7)で示した伝達関数から、m次の周波数での複素数値を求める。この特性を乗算すると、m次の成分は複素数値で、前述の式(27)と表現できる。つまり、C2(m)とS2(m)は、C(m)、S(m)、a(m)、b(m)から求まる。
【0142】
(S50)次に、逆DFTを行い、求めるべき波形を得る。m次の演算を1次から(Ns/2−1)次まで行えばよい。RroTableを生成するとき、セクタq番目のRRO波形:RRO(q)は、前述の式(28)で求まる。(尚、後述するURroTableを生成するときも同じ式となる)。
【0143】
(S52)次に、求めたRRO(q)に、前述の最適ゲインK(CountM)を乗算し、補正テーブル29のRroTable(q)に加算し、加算値を格納する。そして、測定、補正カウント値CountMを、「1」インクリメントする。
【0144】
(S54)測定、補正カウント値CountMが、「M」以上かを判定する。カウント値CountMが、「M」を越えない場合には、ステップS44に戻る。一方、カウント値CountMが、「M」以上であれば、M回の測定、補正を終了しているため、補正テーブル作成処理を終了する。
【0145】
次に、実施例を説明する。図15及び図16は、横軸に加算ゲインKをとり、加算ゲインKを変えたときのRPE,RRO,RPE+RROの各残余率の実測結果と、RROの残余率のシミュレーションとの比較を示す。図15は、平均化周数N=1、繰り返し数M=1の場合の実験結果(丸)と、シミュレーション結果(点線)であり、上段が、RPEの残余率(RPEの残余/元のRPE)の実験結果、中段が、RROの残余率(RRO残余/元のRRO)の実験結果とシミュレーション結果,下段がRPE+RROの残余率の実験結果である。
【0146】
実験は、図1の実際のディスク装置を使用し、横軸にとった各加算ゲインKで、図7の制御系で、補正テーブル29を作成し、図7のように、この補正テーブル29で、位置誤差eを補正しながら、アクチュエータ1を制御し、観測位置yを観測して、RPE残余、RRO残余、RPE+RRO残余を求めた。一方、シミュレーションは、横軸にとった各加算ゲインKを使用し、式(23)により、RROの残余率を計算したものである。
【0147】
又、図16は、平均化周数N=8,繰り返し数M=1の場合の実験結果(丸)と、シミュレーション結果(点線)であり、上段が、RPEの残余率(RPEの残余/元のRPE)の実験結果、中段が、RROの残余率(RRO残余/元のRRO)の実験結果とシミュレーション結果,下段がRPE+RROの残余率の実験結果である。実験及びシミュレーションは、図15と同様である。
【0148】
図15と図16から、RRO残余率が最小の加算ゲインは、実験結果(丸印)とシミュレーション結果(点線)とほぼ同一であり、理論式(23)が正確であることを、実験により確認できた。
【0149】
更に、図17及び図18は、条件(平均化周数N×繰り返し数M)を違えたときの最適ゲインを設定したときのシミュレーション結果と実験結果とのRRO残余率の比較を示す図である。図17及び図18は、横軸に加算ゲインをとり、平均化周数N×繰り返し数Mが同じ条件でのRRO残余率の点を線で結んでいる。図18は、実測の最適ゲインにおけるRRO残余率の関係図であり、図15や図16と同様に、RRO残余率が最小となるゲインを実験により求めた。
【0150】
図17は、計算した最適ゲインにおけるRRO残余率のシミュレーション結果の関係図である。式(24)により、各平均化周数N×繰り返し数Nにおける最適加算ゲインKを計算し、式(25)によりRRO残余率を計算したシミュレーションした結果である。尚、図17では、σnrro/σrro=1.15の条件で計算した。
【0151】
図17のRRO残余率の特性と図18のRRO残余率の特性とは、極めて似通っている。すなわち、理論式(24)が正しいことが、実験により確認できた。このように、補正後のRROの残余を評価対象として、評価関数を求め、評価関数から、RROの残余が最小となる、即ち、補正後のRROを最小にするゲインK,K(CountM)を,図10により求め、そして、図13及び図14により、補正テーブルを作成することができる。それゆえ、実験に頼らずとも、作成時間や装置の仕様に最適な補正テーブル作成ゲインを決め、これにより、補正テーブルを作成することができる。また、補正後のRROがいくらになるのかを保証でき、製造時間や装置仕様を定めることができる。
【0152】
[他のRRO補正テーブル作成方法]
図19は、本発明の第2の実施の形態のRRO補正テーブル作成システムのブロック図である。図19において、図7で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、図7との相違は、最適ゲインの計算処理25(図10)を、ディスク装置に接続された外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)50で実行し、ディスク装置内のゲインテーブル30にセットする点である。
【0153】
このようにすると、外部装置50を使用して、加算ゲインを計算するため、ディスク装置のMCU14の負荷を軽減し、且つ高速に計算できる。
【0154】
図20は、本発明の第3の実施の形態のRRO補正テーブル作成システムのブロック図である。図20において、図7で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、図7との相違は、位置精度測定処理24、最適ゲインの計算処理25(図10〜図12)と、RPE取得処理26(図13)、波形計算処理27(図13)を、ディスク装置に接続された外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)50で実行し、ディスク装置内のRRO補正テーブル29にセットする点である。
【0155】
このようにすると、外部装置50を使用して、RRO補正テーブル29のテーブル値を計算するため、ディスク装置のMCU14の負荷をより軽減し、且つ高速に計算できる。又、補正テーブル作成処理プログラムは、ディスク装置の出荷後、ディスク装置内で不要のため、このプログラムをディスク装置にロードする手間も軽減できる。
【0156】
更に、同一ロットの複数台のディスク装置に対し、図19又は図20の構成で、代表的なディスク装置の補正テーブル29を作成し、この補正テーブル29を、他のディスク装置にコピーすることもできる。このようにすると、より製造時間を短縮できる。
【0157】
[URRO補正テーブル作成方法]
前記に示した各種の式は、RroTableに関するものであった。一方、ノイズに関する議論は電流波形:URroTableに関しても同じ議論ができる。即ち、後述する関係式にしたがいRroTableをURroTableに変換すればよい。アクチュエータの軌跡がRROと一致するように電流波形URroTableを生成する。
【0158】
図21は、ディスク装置単体で最適値計算と、URro補正テーブル作成を行う場合のブロック図であり、図6及び図7で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。即ち、演算ブロック22で、目標位置rと現在(観測)位置yとの誤差eを求め、コントローラ20で、制御演算し、制御量を計算し、加算ブロック30で、URro補正テーブル36のURro補正値を加算し、プラント21であるVCM1を駆動する。プラント21の位置は、磁気ヘッド3からのサーボ信号を復調し、現在位置yを得る。この現在位置yと目標位置rとの差分値が、位置誤差eとなる。この制御系に加わる外乱として、スピンドルモータ5の回転に同期した成分と、非同期の成分とを、RRO、NRRO、RPE、NRPEと示す。
【0159】
RPE取得ブロック26は、図13で前述したように、位置誤差eからRPEをセクタ毎に取得する。位置精度測定ブロック24は、図10乃至図12で前述したように、位置誤差eから位置精度を測定する。最適化計算ブロック25は、図10にて説明したように、繰り返し数Mでの最適ゲインを計算する。波形計算ブロック27は、図13で前述したように、RPE取得ブロック26で取得したRPEに最適ゲインを掛け、RRO波形を計算する。URROテーブル36は、URRO波形を格納する。加算ブロック28は、図13で前述したように、繰り返し数分URRO波形を加算し、テーブル36を更新する。
【0160】
尚、URROテーブル36の作成後は、磁気ディスク装置の運用状態(特に、フォローイング状態)において、演算ブロック33で、コントローラ20の制御量に、補正テーブル36のURroテーブル値を加算し、制御量uを生成する。これにより、コントローラ20の出力は、URRO補正される。
【0161】
図22は、URroTable値とRROの残余との説明図である。前述の式(7)から、URroTable値は、RPEに対して、感度関数の逆特性(1+C(Z)・P(Z))とプラントの逆特性(1/P(Z))を通して求める。従って、RRO残余は、実際のRROからUProTable36のURRO補正値に、ブロック34で、((1+C(Z)・P(Z))/P(Z))を通して得た値を引いたものである。
【0162】
又、式(5)から、RroTable値は、RPEに対して、感度関数の逆特性(1+C(Z)・P(Z))を通して求めることから、URroTable値は、下記式(29)により得られる。
【0163】
【数30】

【0164】
即ち、評価関数は、RROの場合の式(18)と同一であるが、式(29)の関係式に従い、波形計算ブロック27が、RroTable値を、URroTable値に変換することにより、URro補正Table36が得られる。
【0165】
図23は、本発明の第2の実施の形態のURRO補正テーブル作成システムのブロック図である。図23において、図7及び図21で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、図21との相違は、最適ゲインの計算処理25(図21)を、ディスク装置に接続された外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)50で実行し、ディスク装置内のゲインテーブル30にセットする点である。このようにすると、外部装置50を使用して、加算ゲインを計算するため、ディスク装置のMCU14の負荷を軽減し、且つ高速に計算できる。
【0166】
図24は、本発明の第3の実施の形態のURRO補正テーブル作成システムのブロック図である。図24において、図7及び図21で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、図21との相違は、位置精度測定処理24、最適ゲインの計算処理25(図10〜図12)と、RPE取得処理26(図13)、波形計算処理27(図13)を、ディスク装置に接続された外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)50で実行し、ディスク装置内のRRO補正テーブル29にセットする点である。
【0167】
このようにすると、外部装置50を使用して、URRO補正テーブル36のテーブル値を計算するため、ディスク装置のMCU14の負荷をより軽減し、且つ高速に計算できる。又、補正テーブル作成処理プログラムは、ディスク装置の出荷後、ディスク装置内で不要のため、このプログラムをディスク装置にロードする手間も軽減できる。
【0168】
更に、RROと同様に、同一ロットの複数台のディスク装置に対し、図23又は図24の構成で、代表的なディスク装置の補正テーブル36を作成し、この補正テーブル36を、他のディスク装置にコピーすることもできる。このようにすると、より製造時間を短縮できる。
【0169】
[周波数特性を考慮した別のRRO補正テーブル作成方法]
前述の実施の形態では、求めたRRO推定波形を、最適なゲインKをかけてRroTableに加算する方法であった。つまり、RROやNRROの周波数特性は考慮せず、すべての周波数領域にわたって一律のゲインKをかけていることに等しい。ところが実際のディスク装置においてはRROとNRROとは周波数特性が異なる。すなわち、周波数ごとにRROとNRROとの大きさの比が異なる。
【0170】
そこで、RRO次数ごとに、RROのσとNRROのσを求め、その比から、前述の式(21)または式(24)に従って、最適ゲインKを決めることができる。図25は、本発明の最適ゲイン計算の第2の実施の形態の処理フロー図である。尚、RRO次数をmとし、ナイキストの定理に従い、m=1〜Ns/2として、説明する。
【0171】
(S60)はじめに、図10のステップS10と同様に、RROのパワースペクトラムを求める。このRROのパワースペクトラムは、ゾーン内の複数のトラックを対象にする。「2」や「4」といった小さい数ではなく、数十、数百のトラックのRROを求める。RRO波形は、RPEに感度関数の逆特性をかけて求めても良い。または,各トラックにおいて、十分に時間をかけてRROに追従しない波形を生成してもよい。このようにして各トラックのRROを求めた後、すべてのRRO波形を1列に並べて、パワースペクトラムを求める。
【0172】
(S62)次に、NRROのパワースペクトラムを求める。図12と同様に、位置誤差eをFFTアナライザで観測してRPE+NRPEのパワースペクトラムを求め、RPEの分だけ差し引き、NRPEを取り出す。そして、感度関数の逆特性を掛ける。または、RROを無視する軌道RroTableを十分に時間をかけて生成して、位置誤差e内のRPEをほぼ0にした上で、NRPEのパワースペクトラムを求めても良い。
【0173】
(S64)次に、RRO次数mを、「1」に初期化する。
【0174】
(S66)次に、DFT演算の周波数特性を、RROおよびNRROのパワースペクトラムにかけあわせる。DFT演算は、式(26)に示したように、sinおよびcosを掛け合わせる。対象とする次数mを決めて、観測できる周波数領域、すなわち0Hzから(サンプル周波数/2)までの周波数領域において、一定の周波数刻み幅ごとに信号を与えたときの、DFTの出力特性であるRROのパワーPowerRro(m)、NRROのパワーPowerNrro(m)を求める。これが、DFT演算の検出特性の周波数特性になる。
【0175】
図26は、DFT演算の周波数特性の例を示す。図27は、この図26の周波数特性に従う、NRROのパワースペクトラムを実線で、RRO次数ごとのNRROのパワースペクトラムを丸印で示す。図28には、RROのパワースペクトラムを実線で、RRO次数ごとのRROのパワースペクトラムを丸印で示す。図29は、図27と図28とのRRO次数ごとのRROとNRROのパワーとを、同じグラフに重ねあわせたものである。なお、この例では1次〜4次のRROには、追従するものとしている。このようにして、RRO次数ごとの、NRROのパワースペクトラムと、RROのパワースペクトラムを求まる。
【0176】
(S68)この2つのスペクトラムを比較して、RRO次数ごとの、RROのσと、NRROのσとの比r(m)を求める。
【0177】
(S70)このσ比r(m)を先に示した最適条件式である式(21)または式(24)に適用して、各RRO次数の最適ゲインKrro(m)又はKrro(M,m)を計算する。図30は、各RRO次数に対する最適ゲイン特性の説明図である。この例では、平均化周数N=1,繰り返し回数M=1としている。また、図30の下段に示すように、RRO次数ごとのRRO補正後のRRO残余率も求まる。この残余率と元のRROのパワースペクトラムから、全ての周波数をまとめた、RROの補正前後の残余率をもとめることができる。
【0178】
(S72)前述のように、RRO次数mを、「1」インクリメントし、RRO次数mが、観測できるナイキスト周波数(Ns/2)以上かを判定する。RRO次数mが、(Ns/2)以上でない場合には、ステップS66に戻り、図27乃至図30を用いて説明した各RRO次数の最適ゲインKrro(m)又はKrro(M,m)を計算する。尚、RRO次数mが、観測できるナイキスト周波数(Ns/2)以上なら、終了する。
【0179】
以上説明したように、RRO次数ごとのゲインを定めることができた。このゲインは、従来のDFT・逆DFTを用いて、RroまたはURroを計算する方法に適用できる。例えば、図13の式(28)は、RRO次数を考慮して、次式(30)に変形する。
【0180】
【数31】

【0181】
尚、この場合、図13において、ステップS30のゲインKは「1」として、ProTable(q)を計算する。
【0182】
次に、実施例を説明する。図31は、図1のディスク装置におけるRRO補正前後のRPE波形図である。RRO補正方法は、前記の周波数ごとに加算ゲインKrro(m)を変える方法を用いている。図31において、上から順にインデックス信号、補正前のRPE波形,補正後のRPE波形である。ここでは平均化周数N=1,繰り返し数M=1とした。この例では、中央付近にRPE波形の跳びが観測されている。しかし、RRO補正後は、効果的に除去されている。
【0183】
図32は、全周波数で一律の加算ゲインを設定する方法と、加算ゲインをRRO次数ごとに違える方法との比較を示す説明図である。RPE,RRO,RPE+RROの3つの値で、補正後/補正前の割合(残余率)を求めた。条件としては、繰り返し数M=1とし、平均化周数Nを、「1」、「2」、「3」、「4」、「6」、「8」の6種類を用いた。
【0184】
全周波数で一律の加算ゲインを設定する方法は、図15及び図16に示したように、加算ゲインKを変化させながら,残余率が最小になるときの残余率を求めた。例えば、図15のN=1,M=1の場合では、RPEの残余率は、K=0.70で、最小値=0.570,RROの残余率は、K=0.45で、最小値=0.734,RPE+RROの残余率は、K=0.80で、最小値=0.488である。
【0185】
同様に、図16のN=8,M=1の場合では、RPEの残余率は、K=0.95で、最小値=0.247,RROの残余率は、K=0.85で、最小値=0.392,RPE+RROの残余率は、K=1.00で、最小値=0.208である。すなわち、RPE,RRO,RPE+RROで残余率が、最小になる最適ゲインは異なる。
【0186】
一方、加算ゲインをRRO次数ごとに違える方法の値は、RPE,RRO,RPE+RROの3つともに同一条件で測定している。図32の残余率の値から理解されるように、加算ゲインをRRO次数ごとに違える方法の方が、全周波数で一律の加算ゲイン設定よりも、残余率が小さい。
【0187】
次に、ディスク全面でのRRO補正の効果を求めた。図33は、RRO補正前の結果を、図34は、RRO補正後の結果を示す。この例では、RRO補正の条件として、RRO次数ごとに加算ゲインを最適化し、平均化周数N=3、繰り返し回数M=1とした。また、ディスク1面のうちの最外周で加算ゲインを最適化して、それをディスク全面に適用している。補正前、補正後の各トラックのRPEを、トラック数単位で、32周平均で求め、その絶対値の最大値を、そのトラックの代表値として、それを全トラック分もとめた。図33及び図34の上段は、各RPEのポイント数(トラック数)をヒストグラムで表示している。中段は、各RPEの確立値を示す確率分布、下段は、log10(1−中段の確率値)=エラーレートを示す。
【0188】
図34のRRO補正した場合には、図33のRRO補正前の状態に比し、全体的に、RPEの値やエラーレートが大幅に減少していることが理解される。このように、わずか3周という少ない測定周数でも、効果的にRRO補正が実現できる。
【0189】
[トラック間相関を考慮した別のRRO補正テーブル作成方法]
以上で説明した方法は、RROが、ディスクのトラック間で相関がないことを前提にしている。ところが、RROがトラック間で相関が高くなる場合がある。例えば、ディスクが機械的に歪んだ場合等は、前述のRro補正値を、ディスク面1点や各ゾーンで求める方法に加えて、更に、工夫が必要となる。そこで、このような状態でも対応できる実施の形態を説明する。即ち、各トラックで、RroTable値を作成する。
【0190】
図35は、本発明のトラック間相関を考慮したRRO補正テーブル作成処理フロー図、図36及び図37は、その説明図である。
【0191】
(S80)図36に示すように、同一ヘッドでのディスク4内を、複数のゾーンZ1,Z2,Z3に分割する。最初にゾーン内で共通のRRO補正値を作成する。即ち、対象ヘッドを、ディスク4の対象ゾーンに移動し、RroTable値を「0」に初期化する。ゾーン内のサンプル対象トラックの平均的なRPE波形を求め、周波数一様な加算ゲインを「1」として、ゾーン平均RRO補正波形RroZoneを計算する。
【0192】
(S82)次に、このRroZoneを初期値として、ゾーン内の測定点(例えば、各トラック)へ位置決めして、図37のように、RroTable29にRroZone値を格納する。
【0193】
(S84)移動後の現トラックの位置誤差eを、指定周数N分測定し、前述のように、RPEを計算する。図25で説明した周波数毎に、異なる加算ゲインを設定し、式(30)により、RRO補正波形Rro(q)を計算する。そして、図37のように、RroTable29に、現トラックのRro補正値を格納する。尚、磁気ヘッド3が、ライト素子の他に、MRヘッドをリード素子として有し、且つロータリアクチュエータを使用する例では、トラックに対するライト素子とリード素子の位置が異なる。このため、図37のRroTable29では、リード素子のRRO値をRRO(R)、ライト素子のRRO値をRRO(W)と個別に測定し、格納する。
【0194】
(S86)次に、そのゾーン内の全測定点を測定したかを判定する。そのゾーン内の全測定点を測定していない場合には、次の測定点にヘッドを移動し、ステップS84に戻る。一方、そのゾーン内の全測定点を測定している場合には、そのゾーンのProTableの作成を終了する。
【0195】
これを、図36に示した分割ゾーン分繰り返し、図37のProTable29を作成する。このように、同一ヘッド内を、複数のゾーンに分割し、最初にゾーン内で共通のRRO補正値を、周波数一様な加算ゲインを「1」として、ゾーン平均RRO補正波形RroZoneを計算する。次に、このRroZoneを初期値として、ゾーン内の測定点(例えば、各トラック)へ移動し、指定周数N分測定し、RPEを計算し、周波数毎に、異なる加算ゲインを設定し、式(30)により、RRO補正波形Rro(q)を測定する。
【0196】
このため、RROがトラック間で相関が高くなる場合、例えば、ディスクが機械的に歪んだ場合等でも、各トラック等の測定点のRro補正値を測定でき、このような状態でも、正確なRRO補正が可能となる。
【0197】
[RRO補正テーブルを使用したサーボトラックライト方法]
次に、以上のようにして作成した補正テーブルを利用する実施の形態を説明する。第1の実施の形態は、前述の図8で説明したディスク装置の製造時である。サーボ信号を外部で記録したディスクを、ディスク装置に搭載し、ReadおよびWrite位置ごとに、全トラックでの補正テーブルを生成する。または、複数のトラックを1まとめにして、ゾーンを構成して,そのゾーン内で共通の成分を補正するようにしてもよい。
【0198】
第2の実施の形態は、ディスク装置内で、サーボ信号を記録するときに利用する。図38は、その説明図である。サーボ信号の記録方法として,セルフ・サーボ・ライティング法がある。図38に示すように、ディスク4の端部(ここでは、外周)に数トラック分のサーボ信号SV1を所定の送り幅で記録する。次に、このサーボ信号SV1を基にして,ディスク4のサーボ信号が未記録の領域に、サーボ信号SV2を記録するものである。
【0199】
このディスク4の端部(ここでは、外周)に、サーボ信号SV1を記録する時に、RRO補正値を測定し、このRRO補正値を利用して、サーボ信号SV1を基にして,ディスク4のサーボ信号が未記録の領域に、サーボ信号SV2を記録する。そして、全トラックのRRO補正値を測定し、RroTable29を作成する。
【0200】
第3の実施の形態は、コピーSTWまたはリライトSTWと呼ばれるサーボ信号の記録方法に、利用する。図39は、このサーボトラックライト方法の説明図である。図39に示すように、外部で、ディスク4−1の少なくとも片面、全面にサーボ信号を記録しておき,そのサーボ信号を記録したディスク4−1と,サーボ信号を未記録のディスク4−2とを、ディスク装置に搭載する。
【0201】
そして,ディスク4−1の1面のサーボ信号で位置決め制御しながら,RRO補正値を測定し、このRRO補正値を使用して、サーボ信号が未記録な面(ディスク4−1の裏面や、ディスク4−2)にサーボ信号を記録する。そして、全トラックのRRO補正値を測定し、RroTable29を作成する。この場合に,ディスク4−1のサーボ信号を初めから記録している面にも、RRO補正値を使用して、サーボ信号をリライトし,後で元のサーボ信号を消去してもよい。
【0202】
第4の実施の形態は、ディスク装置を出荷後に利用するものである。サーボ信号が製造時とは異なる状態になったとき,例えば機械的な変形にともなう偏心の発生や、媒体傷によるサーボ信号の欠落,が発生したときに、RROに追従するまたは追従しない信号を生成するときに利用する。少ない周回数で精度の高い補正が可能になる。図40は、この補正テーブル書換え方法の処理フロー図である。
【0203】
(S90)ディスク装置のMCU14は、位置決め精度の異常が発生したかを判定する。例えば、前述のRRO補正テーブル29を使用して、位置決め制御しても、目標トラック中心に位置決めできない場合(位置誤差が、オフトラック基準値以上の場合)には、リトライを行う。リトライを複数回行っても、目標トラック中心に位置決めできない場合には、位置決め精度の異常と判定する。
【0204】
(S92)位置決め精度の異常と判定すると、RRO補正により救済できるか判定する。例えば、ヘッドの検出能力の低下等の場合には、RRO補正しても、救済できない。RRO補正により救済できると判定した場合には、MCU14は、前述のRRO補正値の測定を行う。
【0205】
(S94)次に、RRO補正値の測定結果と、現在のRRO補正テーブル29の補正値を比較して、RRO補正テーブル29の書換えが有効かを判定する。例えば、RRO補正値の測定結果と、現在のRRO補正テーブル29の補正値とが、それ程異ならない場合には、補正テーブル29を書き換えても、位置決め精度は向上しないため、終了する。一方、RRO補正値の測定結果と、現在のRRO補正テーブル29の補正値とが、異なる場合には、補正テーブル29を書き換えることにより、位置決め精度は向上するから、補正テーブル29を書き換え、終了する。
【0206】
このようにして、サーボ信号が製造時とは異なる状態になったとき,例えば機械的な変形にともなう偏心の発生や、媒体傷によるサーボ信号の欠落,が発生したときに、RROに追従するまたは追従しない信号に書き換えることができ、位置決め精度向上に寄与できる。
【0207】
[他の実施の形態]
以上のような補正データ(テーブル)の記録場所にはいくつか考えられる。図41に示すように,各セクタのサーボ信号の末尾に、補正データRroTable(q)を追記するものである。又、ディスク4媒体上のデータの記録・再生に利用しない専用領域に補正データを記録しても良い。更に、ディスク装置の電子回路上の不揮発性メモリに記録しておいても良い。
【0208】
この3つの記録場所の内、個々のトラック全ての補正を行う際には、1つ目または2つ目の方法が有効である。一方、位置揺れが大きいトラックのみを補正する場合,すなわち補正データ量が少ない場合は、3つ目の方法(不揮発性メモリ)でも実現が可能である。
【0209】
又、前述の方法が有効である装置は,ディスク装置のディスクが固定されている場合である。すなわち,可換媒体ではない場合である。同じように、磁気転写やパターンド・メディアのように、ディスクを固定する磁気ディスク装置で用いられる場合でも、共通の型を使って媒体上のサーボ信号が形成される場合には、型の形成精度で決まる媒体個体間で共通のRROを測定して利用することができる。
【0210】
更に、ディスク装置を、磁気ディスク装置で説明したが、光ディスク装置、光磁気ディスク装置等他のディスク媒体にも適用できる。同様に、図25乃至図41の実施の形態では、RROで説明したが、図21乃至図24で説明したURROにも適用できる。
以上、本発明を実施の形態により説明したが、本発明の趣旨の範囲内において、本発明は、種々の変形が可能であり、本発明の範囲からこれらを排除するものではない。
【0211】
(付記1)ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドを、前記ディスクの位置信号により位置制御するディスク装置の前記ディスクの回転に同期した成分を補正するための補正値を作成するヘッド位置制御用補正テーブル作成方法において、前記位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定するステップと、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップと、前記補正された位置誤差成分を補正テーブルに格納するステップとを有することを特徴とするヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【0212】
(付記2)前記補正ステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【0213】
(付記3)前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定するステップと、前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算するステップとを更に有することを特徴とする付記1のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【0214】
(付記4)前記補正ステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整された各繰り返し毎のゲインで、前記各繰り返し毎に、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【0215】
(付記5)前記補正ステップは、前記ディスクの回転周波数の整数倍の周波数毎に、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比を求めて得た調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【0216】
(付記6)前記格納ステップは、前記補正テーブルに格納された補正値により補正されたディスクの回転に同期した成分の正規分布であるRRO残余のσが、前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布をσRRO,前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布をσNRRO,前記測定周数をN,前記繰り返し数をM,前記ゲインをKとした時に、下記式(18)に従うことを特徴とする付記2のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【0217】
【数32】

【0218】
(付記7)ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドを、前記ディスクの位置信号を前記ディスクの回転に同期した成分で補正した信号で、位置制御するヘッド位置制御方法において、目標位置と前記ヘッドからの位置信号による現在位置との誤差を算出するステップと、前記位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定し、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正信号を格納する補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップと、前記位置誤差及び前記補正信号とに基づき、前記ヘッド位置を制御するステップとを有することを特徴とするヘッド位置制御方法。
【0219】
(付記8)前記読み出しステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップからなることを特徴とする付記7のヘッド位置制御方法。
【0220】
(付記9)前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定するステップと、前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算するステップとを更に有することを特徴とする付記7のヘッド位置制御方法。
【0221】
(付記10)前記読み出しステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整された各繰り返し毎のゲインで、前記各繰り返し毎に、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップからなることを特徴とする付記7のヘッド位置制御方法。
【0222】
(付記11)前記読み出しステップは、前記ディスクの回転周波数の整数倍の周波数毎に、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比を求めて得た調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップからなることを特徴とする付記7のヘッド位置制御方法。
【0223】
(付記12)前記読み出しステップは、前記補正テーブルに格納された補正値により補正されたディスクの回転に同期した成分の正規分布であるRRO残余のσが、前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布をσRRO,前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布をσNRRO,前記測定周数をN,前記繰り返し数をM,前記ゲインをKとした時に、下記式(18)に従うことを特徴とする付記8のヘッド位置制御方法。
【0224】
【数33】

【0225】
(付記13)前記位置制御ステップは、前記位置誤差から前記補正信号を差し引き、前記差し引いた位置誤差から前記ヘッド位置制御信号を生成するステップからなることを特徴とする付記7のヘッド位置制御方法。
【0226】
(付記14)前記位置制御ステップは、前記位置誤差から得た前記ヘッド位置制御信号から前記補正信号を差し引き、前記ヘッド位置を制御するステップからなることを特徴とする付記7のヘッド位置制御方法。
【0227】
(付記15)ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの所望位置に移動するアクチュエータと、前記ヘッドからの位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定し、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正信号を格納する補正テーブルと、目標位置と前記ヘッドからの位置信号による現在位置との誤差を算出し、前記位置誤差及び前記補正信号とに基づき、前記ヘッド位置を制御する制御部とを有することを特徴とするディスク装置。
【0228】
(付記16)前記補正テーブルは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して前記補正信号を格納することを特徴とする付記15のディスク装置。
【0229】
(付記17)前記制御部は、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定し、前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算することを特徴とする付記15のディスク装置。
【0230】
(付記18)前記補正テーブルは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整された各繰り返し毎のゲインで、前記各繰り返し毎に、前記測定された位置誤差成分を補正して得た前記補正信号を格納することを特徴とする付記15のディスク装置。
【0231】
(付記19)前記補正テーブルは、前記ディスクの回転周波数の整数倍の周波数毎に、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比を求めて得た調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た前記補正信号を格納することを特徴とする付記15のディスク装置。
【0232】
(付記20)前記補正テーブルに格納された補正値により補正されたディスクの回転に同期した成分の正規分布であるRRO残余のσが、前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布をσRRO,前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布をσNRRO,前記測定周数をN,前記繰り返し数をM,前記ゲインをKとした時に、下記式(18)に従うことを特徴とする付記16のディスク装置。
【0233】
【数34】

【0234】
(付記21)前記制御部は、前記位置誤差から前記補正信号を差し引き、前記差し引いた位置誤差から前記ヘッド位置制御信号を生成することを特徴とする付記15のディスク装置。
【0235】
(付記22)前記制御部は、前記位置誤差から得た前記ヘッド位置制御信号から前記補正信号を差し引き、前記ヘッド位置を制御することを特徴とする付記15のディスク装置。
【産業上の利用可能性】
【0236】
位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインを用いるので、補正後のRROを求める式を用いて補正後のRROを最小にするゲインを理論的に求めることができる。それゆえ、実験に頼らずとも、ゲインを決めることができ、また、補正後のRROがいくらになるのかを保証でき、製造時間や装置仕様を定めることができる。このため、回転同期補正するディスク装置を、より短時間で製造でき、コストの安い、大量生産に適したディスク装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】本発明のディスク装置の一実施の形態の構成図である。
【図2】図1のディスクのサーボ信号の配置図である。
【図3】図2のサーボ信号の構成図である。
【図4】図3のサーボ信号の読み取り波形図である。
【図5】図1のヘッド制御シーケンスの説明図である。
【図6】図1のサーボ制御系の構成図である。
【図7】本発明の一実施の形態のRRO補正機能を有するサーボ制御系の構成図である。
【図8】図1のディスク装置の製造工程の説明図である。
【図9】図7の評価関数の説明図である。
【図10】図7の加算ゲインの測定処理フロー図である。
【図11】図10のRRO測定処理フロー図である。
【図12】図10のNRRO測定処理フロー図である。
【図13】図7のRroTable作成処理フロー図である。
【図14】図7の他のRroTable作成処理フロー図である。
【図15】図7のRroTableによる第1の実施例の説明図である。
【図16】図7のRroTableによる第2の実施例の説明図である。
【図17】図7のRroTableによる第3の実施例の説明図である。
【図18】図7のRroTableによる第4の実施例の説明図である。
【図19】本発明の他の実施の形態のRRO補正機能を有するサーボ制御系の構成図である。
【図20】本発明の更に他の実施の形態のRRO補正機能を有するサーボ制御系の構成図である。
【図21】本発明の一実施の形態のURRO補正機能を有するサーボ制御系の構成図である。
【図22】図21のURRO補正の評価関数の説明図である。
【図23】本発明の他の実施の形態のURRO補正機能を有するサーボ制御系の構成図である。
【図24】本発明の更に他の実施の形態のURRO補正機能を有するサーボ制御系の構成図である。
【図25】図7のRRO次数毎の加算ゲインの測定処理フロー図である。
【図26】図25の加算ゲインの測定のためのFFTの周波数特性図である。
【図27】図25のNRROの測定処理の説明図である。
【図28】図25のRROの測定処理の説明図である。
【図29】図27及び図28のRROとNRROの説明図である。
【図30】図25の最適ゲインとRRO残余の説明図である。
【図31】図25の最適ゲインによるRPEの補正動作の説明図である。
【図32】図25のRRO次数毎の加算ゲインの実施例の説明図である。
【図33】図25のための補正前のRPEの説明図である。
【図34】図25の補正後のRPEの説明図である。
【図35】図7のトラック相関を持つ場合のRroTable作成処理フロー図である。
【図36】図35のゾーン分割の説明図である。
【図37】図35のRroTableの説明図である。
【図38】図7のRRO補正テーブルを使用したサーボトラックライト方法の説明図である。
【図39】図7のRRO補正テーブルを使用した他のサーボトラックライト方法の説明図である。
【図40】図7のRRO補正テーブルを使用したサーボトラックリライト方法の説明図である。
【図41】図7のRRO補正テーブルの格納場所の説明図である。
【図42】従来のRRO補正テーブルを使用したサーボ制御系の説明図である。
【図43】従来のURRO補正テーブルを使用したサーボ制御系の説明図である。
【図44】従来のRRO補正テーブルによるトラック揺れの説明図である。
【図45】図44の隣接トラックの拡大図である。
【符号の説明】
【0238】
1 アクチュエータ
2 スピンドル
3 磁気ヘッド
4 磁気ディスク
7 位置検出回路
14、20 コントローラ
22 誤差計算部
21 プラント
24 位置精度測定ブロック
25 最適ゲイン計算ブロック
26 RPE取得ブロック
27 波形計算ブロック
29 Rro補正テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドを、前記ディスクの位置信号により位置制御するディスク装置の前記ディスクの回転に同期した成分を補正するための補正値を作成するヘッド位置制御用補正テーブル作成方法において、
前記位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定するステップと、
前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップと、
前記補正された位置誤差成分を補正テーブルに格納するステップとを有する
ことを特徴とするヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【請求項2】
前記補正ステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正するステップからなる
ことを特徴とする請求項1のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【請求項3】
前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定するステップと、
前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算するステップとを更に有する
ことを特徴とする請求項1のヘッド位置制御用補正テーブル作成方法。
【請求項4】
ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドを、前記ディスクの位置信号を前記ディスクの回転に同期した成分で補正した信号で、位置制御するヘッド位置制御方法において、
目標位置と前記ヘッドからの位置信号による現在位置との誤差を算出するステップと、
前記位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定し、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正信号を格納する補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップと、
前記位置誤差及び前記補正信号とに基づき、前記ヘッド位置を制御するステップとを有する
ことを特徴とするヘッド位置制御方法。
【請求項5】
前記読み出しステップは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正テーブルから前記補正信号を読み出すステップから
なることを特徴とする請求項4のヘッド位置制御方法。
【請求項6】
前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定するステップと、
前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算するステップとを更に有する
ことを特徴とする請求項5のヘッド位置制御方法。
【請求項7】
ディスクの情報を少なくとも読み取るヘッドと、
前記ヘッドを前記ディスクの所望位置に移動するアクチュエータと、
前記ヘッドからの位置信号の平均波形から前記ディスクの回転に同期した位置誤差成分を測定し、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比に基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た補正信号を格納する補正テーブルと、
目標位置と前記ヘッドからの位置信号による現在位置との誤差を算出し、前記位置誤差及び前記補正信号とに基づき、前記ヘッド位置を制御する制御部とを有する
ことを特徴とするディスク装置。
【請求項8】
前記補正テーブルは、前記位置信号を平均化するための測定周数と、前記補正の繰り返し数と、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比とに基づいて調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して前記補正信号を格納する
ことを特徴とする請求項7のディスク装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分の正規分布と前記ディスクの回転に同期しない成分の正規分布とを測定し、前記同期した成分の正規分布と前記同期しない成分の正規分布との比とに基づいて前記調整ゲインを計算する
ことを特徴とする請求項7のディスク装置。
【請求項10】
前記補正テーブルは、前記ディスクの回転周波数の整数倍の周波数毎に、前記位置信号中の前記ディスクの回転に同期した成分と前記ディスクの回転に同期しない成分との大きさの比を求めて得た調整されたゲインで、前記測定された位置誤差成分を補正して得た前記補正信号を格納する
ことを特徴とする請求項7のディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate


【公開番号】特開2006−79754(P2006−79754A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263631(P2004−263631)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】