説明

ヘテロ原子を含有するケイ酸塩の製造方法

本発明は、少なくともGaおよび/またはZnを含む層状ケイ酸塩およびそれらをベースとするテクトケイ酸塩、好ましくはRRO構造を有するテクトケイ酸塩を製造する方法、当該層状ケイ酸塩およびテクトケイ酸塩、並びにケイ酸塩、特にテクトケイ酸塩の、好ましくは触媒としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩を製造する方法であって、当該ケイ酸塩がRUB−39またはRRO(RUB−41)ゼオライト構造を有しかつ当該ケイ酸塩格子中にヘテロ原子として少なくともGaおよび/またはZnを含む、方法に関する。本発明による方法は、さらに、ヘテロ原子含有ケイ酸塩の熱水合成における結晶化助剤としての、Si−RUB−39構造のケイ酸塩の好ましい使用を特徴とする。本発明はさらに、本発明による方法によって製造可能なケイ酸塩、それらケイ酸塩自体、並びにそれらケイ酸塩の使用に関する。
【0002】
化学製品の製造工程または精製工程において頻繁に発生する作業は、少なくとも1つの物質を物質混合物から分離すること、またはごく一般的には、物質混合物の分離である。原則として、この分離は、蒸留法によって達成することができる。しかしながら、特に沸点が非常に近い混合物の場合、この蒸留法は、仮に実施可能であるとしても、補助剤を使用してのみ、経済的に実施可能な方法において実施することができる。沸点が近い混合物の分離の一例としては、アルカンまたはアルケンの分離、例えば異性体アルカンまたはアルケンの分離が挙げられる。化学製品の製造工程において、さらに頻繁に発生する作業は、実験室規模、パイロットプラント規模、または工業的規模にかかわらず、特定の反応に好適な触媒を提供することである。
【0003】
国際公開第2005/100242(A1)号には、微孔性テクトケイ酸塩およびその製造方法について開示されている。この方法は、反応剤を混合し、その反応剤から、結晶化助剤を添加せずにテクトケイ酸塩の前駆体を結晶化させる工程とそれに続いて熱水処理する工程とを含む。このことが、特定の使用分野において長すぎると考えられ得る結晶化時間の原因となる。
【0004】
国際公開第2005/100242(A1)号に記載のテクトケイ酸塩は、Y.X.Wang et al.,Chem.Mater.17,2005,p.43−49にも記載されており、この化学論文に記載されている合成方法も、結晶化助剤を使用せずに実施されており、結晶化時間は15〜45日と記載されている。
【0005】
したがって、本発明の目的の1つは、分子ふるい、吸着剤、および/または触媒として使用可能な新規化合物を提供することであった。
【0006】
本発明のさらなる目的は、これらの化合物を製造する方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、第一に、上記の最終用途のために有利に用いることができ、しかし同様に、考えられる任意のさらなる目的のためにも、あるいは他の技術分野においても、有利に使用可能な新規ケイ酸塩、特にゼオライトを提供することであった。
【0008】
したがって、本発明は、少なくともケイ素、酸素、並びにGaおよびZnから成る群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含むケイ酸塩を製造する方法であって、
(1)少なくとも1種の二酸化ケイ素源、R1234+[式中、R1およびR2は、それぞれメチルであり、R3およびR4の両方はn−プロピルである]を含む少なくとも1種のテトラアルキルアンモニウム化合物、少なくとも1種の塩基、少なくとも1種の結晶化助剤、並びに少なくとも1種のGa源およびZn源から成る群から選択されるヘテロ原子源からコロイド性水溶液を製造する工程と、
(2)ケイ素、酸素、並びに少なくともGaおよびZnから成る群から選択されるヘテロ原子を含む少なくとも1種のケイ酸塩を含む懸濁液を得るために、(1)で得られたコロイド性水溶液を、選択された圧力下におけるコロイド性水溶液の沸点を超える温度から標準気圧における180℃までの範囲の温度に加熱することによって熱水的に結晶化させる工程と
を含み、
(1)において使用される結晶化助剤が、(2)において得られるケイ酸塩の構造を有するケイ酸塩である、
方法に関する。
【0009】
(1)においてコロイド性水溶液を製造する温度は、好ましくは10〜40℃の範囲、より好ましくは15〜35℃の範囲、特に好ましくは20〜30℃の範囲であり、とりわけ好ましいのは室温である。
【0010】
テトラアルキルアンモニウム化合物/塩基
本発明によれば、R1234+を含む少なくとも1種のテトラアルキルアンモニウム化合物に加えて、この化合物以外の塩基を使用することもできる。これらの例としては、例えば、水酸化アンモニウムNH4OH、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、またはこれらの化合物の2種以上の混合物が挙げられる。この場合、少なくとも1種のR1234+を含むテトラアルキルアンモニウム化合物は、1種以上の好適なアニオン、例えば、ハロゲンアニオン、例えば、フッ素または塩素または臭素またはヨウ素を含む。
【0011】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のR1234+を含むテトラアルキルアンモニウム化合物は、アニオンとして(1)で使用される塩基も含む。これに関して、塩基性アニオンとしては、水酸化物イオンまたはアルミネートが挙げられる。特に好ましい塩基性アニオンは水酸化物イオンである。
【0012】
したがって、本発明はさらに、R1234+を含む少なくとも1種のテトラアルキルアンモニウム化合物が、塩基性アニオン、好ましくはヒドロキシドイオン、を含む、上記方法に関する。
【0013】
したがって、同様に、本発明はさらに、(1)において使用される水溶液が、ジメチルジ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)を含む、上記方法にも関する。
【0014】
DMDPAHは、考えられる任意の方法によって製造することができる。製造のための1つの手段としては、例えば、薄膜による電気化学透析法が挙げられる。本発明による方法の一実施形態において、DMDPAHは、ジプロピルアミンとヨウ化メチルとの反応、およびそれに続くアニオン交換によって得られる。さらなる実施形態において、ジプロピルアミンおよびヨウ化メチルは、好適な溶媒中または溶媒混合物中において、好ましくはエタノール中において、互いに反応する。この反応が生じる温度は、好ましくは20〜75℃の範囲内、より好ましくは30〜60℃の範囲内、特に好ましくは40〜50℃の範囲内である。本発明による方法のさらなる実施形態において、DMDPAHは、好適な溶媒、例えば、好ましくはエタノール中において、好適な温度、例えば、好ましくは40〜50℃において、ジメチルアミンおよび臭化プロピルを出発原料として製造することができる。本発明のアニオン交換は、好ましくは、例えば、濾過、遠心分離、または他の固液分離法、例えば、好ましくは濾過による分離後に、例えば、好ましくは好適なアルコールによる、例えばエタノールによる特に水酸化アンモニウムの洗浄後に、好適なイオン交換樹脂、例えば、Amberlyst(商標)樹脂またはAG1−X8タイプの樹脂(BioRad社)により実施される。さらに、Ag2Oを使用したイオン交換も可能である。同様に、本発明による方法において、市販のDMDPAH、例えばSachem社のDMDPAH水溶液を使用することもできる。DMDPAHは、好ましくは溶液として、特に好ましくは水溶液として(1)において使用され、DMDPAHをベースとする水溶液の濃度は、例えば10〜20質量%の範囲、好ましくは15〜20質量%の範囲である。
【0015】
二酸化ケイ素:テトラアルキルアンモニウム化合物:水
二酸化ケイ素および/または(2)における熱水合成によって前駆体化合物から結果として生じる二酸化ケイ素と、テトラアルキルアンモニウム化合物、特に水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物、特にDMDPAHと、水とのモル比は、結晶化により(2)において少なくとも1種のケイ酸塩が確実に得られる条件下であれば、実質的に所望するように設定できる。好ましい実施形態において、使用される二酸化ケイ素および/または前駆体から得られる二酸化ケイ素、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド化合物、および水の量は、(1)において得られるコロイド溶液が、二酸化ケイ素、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド化合物、および水を1:(0.4〜10):(4〜12)の範囲の質量比で含むように選択される。さらに、前述の範囲に関して、水の含有量は15以下まで可能であり、下限の例としては3である。したがって、(1)において得られるコロイド溶液は、二酸化ケイ素、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド化合物、および水を1:(0.4〜10):(3〜15)の範囲の質量比で含む。その上、本発明によれば、水分含有量は、4〜15、または5〜15、または6〜15、または7〜15、または8〜15、または9〜15、または10〜15、または11〜15、または12〜15、または13〜15、または14〜15、または3〜14、または3〜13、または3〜12、または3〜11、または3〜10、または3〜9、または3〜8、または3〜7、または3〜6、または3〜5、または3〜4の範囲であってもよい。さらに好ましい範囲は、例えば、4〜14.5、または5〜14、または6〜13.5、または7〜13、または7.5〜12.5である。本発明によれば、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド化合物の含有量は、例えば、0.5〜9、または0.6〜8、または0.7〜7、または0.8〜6、または0.9〜5、または1.0〜4、または1.1〜3、または1.2〜2の範囲であってもよい。
【0016】
本発明の特に好ましい実施形態において、(1)において得られるコロイド溶液は、SiO2、DMDPAH、および水を1:(0.4〜10):(4〜12)、より好ましくは1:(0.5〜8):(4〜12)、より好ましくは1:(0.6〜6):(4〜12)、より好ましくは1:(0.8〜4):(4〜12)、より好ましくは1:(1〜2):(4〜12)、より好ましくは1:(1.1〜1.5):(4〜12)の質量比で含み、この場合、各場合における水の割合は、より好ましくは(5〜12)の範囲内、より好ましくは(6〜12)の範囲内、より好ましくは(7〜12)の範囲内、より好ましくは(8〜12)の範囲内、より好ましくは(9〜12)の範囲内、並びにより好ましくは(10〜12)の範囲内である。
【0017】
したがって、(1)において得られ、(2)において加熱される当該コロイド溶液は、SiO2、DMDPAH、および水を、好ましくはSiO2:DMDPAH:水が1:(1〜2):(10〜12)の範囲において含む。
【0018】
二酸化ケイ素源
本発明に関して、(1)において使用される二酸化ケイ素源は、原則として、任意の好適な化合物であってもよく、特に、二酸化ケイ素を含んでいるまたは二酸化ケイ素を形成することができる(二酸化ケイ素前駆体)、いずれかの任意の好適な化合物であってもよい。これに関連して、その例として、コロイド状二酸化ケイ素、好適なケイ素樹脂、「湿式法」二酸化ケイ素、「乾式法」二酸化ケイ素が挙げられる。これらの場合、当該二酸化ケイ素は、最も好ましくは非晶質二酸化ケイ素であり、当該二酸化ケイ素粒子の粒径は、例えば、5〜100nmの範囲であり、当該二酸化ケイ素粒子の表面積は、50〜500m2/gの範囲である。コロイド状二酸化ケイ素としては、Ludox(登録商標)、Syton(登録商標)、Nalco(登録商標)、またはSnowtex(登録商標)等の名前で市販されているものが挙げられる。「湿式法」二酸化ケイ素としては、Hi−Sil(登録商標)、Ultrasil(登録商標)、Vulcasil(登録商標)、Santocel(登録商標)、Valron−Estersil(登録商標)、Tokusil(登録商標)、またはNipsil(登録商標)等の名前で市販されているものが挙げられる。「乾式法」二酸化ケイ素としては、Aerosil(登録商標)、Reolosil(登録商標)、Cab−O−Sil(登録商標)、Fransil(登録商標)、またはArcSilica(登録商標)等の名前で市販されているものが挙げられる。前駆体化合物の一例は、テトラアルキルオルトケイ酸塩である。本発明に関して、二酸化ケイ素源として、非晶質二酸化ケイ素を用いることが好ましい。
【0019】
したがって、本発明はさらに、(1)において使用される二酸化ケイ素源が非晶質二酸化ケイ素である、上記方法に関する。
【0020】
原則として、任意の好適な非晶質二酸化ケイ素を用いることができる。好ましいのは、10〜400m2/gの範囲、好ましくは10〜100m2/gの範囲、より好ましくは10〜50m2/gの範囲の比表面積(BET:Brunauer−Emmett−Teller;DIN66131に従い、77Kにおいて窒素吸着により測定した)を有する非晶質二酸化ケイ素である。さらなる好ましい範囲は、50〜100m2/g、または100〜300m2/g、または300〜400m2/gである。
【0021】
ヘテロ原子源
一実施形態に関して、ガリウム源が(1)においてヘテロ原子源として使用される場合、したがって、ケイ酸塩の本発明の製造中に、ガリウムがヘテロ原子としてケイ酸塩格子中に取り込まれる場合、一般的には、(1)におけるコロイド溶液中でのそれらの化学的性質から(2)において水熱結晶化中に加熱された場合にケイ酸塩格子中へのGaの取り込みを可能にするガリウム源を使用することができる。原則として、本発明により、2種以上の好適なガリウム源を(1)において使用することができる。特に好ましくは、本発明に関して、硝酸ガリウムをガリウム源として使用する。
【0022】
一実施形態に関して、亜鉛源が(1)においてヘテロ原子源として使用される場合、したがって、ケイ酸塩の本発明の製造中に、亜鉛がヘテロ原子としてケイ酸塩格子中に取り込まれる場合、一般的には、(1)におけるコロイド溶液中での化学的性質から(2)において水熱結晶化中に加熱された場合にケイ酸塩格子中へのZnの取り込みを可能にする亜鉛源を使用することが可能である。原則として、本発明により、2種以上の好適な亜鉛源を(1)において使用することができる。特に好ましくは、本発明に関して、硝酸亜鉛を亜鉛源として使用する。
【0023】
原則として、本発明はさらに、ケイ酸塩格子中にガリウムおよび亜鉛の両方を有するケイ酸塩が製造される実施形態を含む。この場合、少なくとも1種の好適なガリウム源および少なくとも1種の好適な亜鉛源の両方を(1)において使用することが可能であり、とくに好ましいのは、硝酸ガリウムおよび硝酸亜鉛の使用である。
【0024】
したがって、本発明はさらに、使用されるヘテロ原子源が硝酸ガリウムおよび/または硝酸亜鉛である、上記方法に関する。
【0025】
結晶化助剤
使用される結晶化助剤は、原則として、本発明に従って(2)から得られる好ましいRUB−39構造の、ケイ酸塩格子中にGaまたはZnあるいはGaおよびZnを含む層状ケイ酸塩であるか、あるいは下記のように本発明に従って得られる好ましいRRO構造の、ケイ酸塩格子中にGaまたはZnあるいはGaおよびZnを含むテクトケイ酸塩であるか、あるいは当該層状ケイ酸塩および当該テクトケイ酸塩の混合物である。
【0026】
同様に、(2)から得られる層状ケイ酸塩に対応する構造を有するが、ヘテロ原子を含まないかまたはGaおよび/またはZn以外のヘテロ原子を含む層状ケイ酸塩を、(1)の結晶化助剤として使用することができる。その上、下記のように、本発明に従って得られるテクトケイ酸塩とは異なる構造を有するが、ヘテロ原子を含まないかまたはGaおよび/またはZn以外のヘテロ原子を含むテクトケイ酸塩を、(1)の結晶化助剤として使用することができる。同様に、これらの層状ケイ酸塩の少なくとも1種とこれらテクトケイ酸塩の少なくとも1種との好適な混合物を使用することもできる。
【0027】
好ましくは本発明に関して、(1)において使用される結晶化助剤は、ヘテロ原子を含まないかあるいはヘテロ原子としてGaおよび/またはZnを含む、あるいはGaおよび/またはZn以外のヘテロ原子、例えば、Al、B、Fe、Ti、Sn、Ge、Zr、V、またはNbを含む、あるいはヘテロ原子としてGaおよび/またはZnを含む、あるいは追加的に少なくとも1種のヘテロ原子、例えば、Al、B、Fe、Ti、Sn、Ge、Zr、V、またはNbを含む、RUB−39構造の層状ケイ酸塩である。
【0028】
本発明に関して、(1)において結晶化助剤としてヘテロ原子を含まない、RUB−39構造の層状ケイ酸塩を使用することが特に好ましい。ヘテロ原子を含まない、RUB−39構造のそのような層状ケイ酸塩を、本発明に関して、Si−RUB−39と呼ぶ。
【0029】
したがって、本発明はさらに、(1)で使用される結晶化助剤がSi−RUB−39構造の層状ケイ酸塩である、上記方法に関する。
【0030】
特に、例えば、国際公開第2005/100242(A1)号またはWang他の文献に記載の、結晶化助剤としてRUB−39構造のケイ酸塩を加えず、結晶化時間が、通常約15〜45日間である方法と比較して、驚いたことに、Ga含有ケイ酸塩および/またはZn含有ケイ酸塩の製造において、水熱結晶化時間を15日間未満に、さらに10日間未満に、例えば7〜9日間に、相当の短縮を達成することが、本発明による方法によって可能であった。
【0031】
したがって、本発明はさらに、RUB−39構造のGa含有ケイ酸塩および/またはZn含有ケイ酸塩の製造における熱水合成の結晶化時間を短くするための、好ましくは、水熱合成の結晶化時間を10日間未満まで短くするための、特に好ましくは7〜9日間の範囲の期間まで短くするための、結晶化助剤としてのSi−RUB−39構造の層状ケイ酸塩の使用に関する。
【0032】
ケイ酸塩の本発明の製造と、特に熱水合成の結晶化時間の短縮化が確実に達成されるのであれば、結晶化助剤の量に関する限り、いかなる制限も原則として存在しない。
【0033】
例えば、好ましいのは、(1)において結晶化助剤として使用されるケイ酸塩を、二酸化ケイ素に基づいておよび/または二酸化ケイ素前駆体中に存在する二酸化ケイ素に基づいて、5質量%以下、より好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜1質量%、より好ましくは0.005〜0.1質量%、特に好ましくは0.01〜0.05質量%の量において加えることである。
【0034】
したがって、本発明はさらに、結晶化助剤が(1)において、二酸化ケイ素に基づいておよび/または二酸化ケイ素前駆体中に存在する二酸化ケイ素に基づいて、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜0.05質量%の量において加えられる、上記方法に関する。
【0035】
Si−RUB−39構造の層状ケイ酸塩の製造
原則として、Si−RUB−39構造の層状ケイ酸塩の調整に関しては、いかなる制限も存在しない。例えば、好ましくは、既に上記において挙げたWang et al.,Chem.Mater.17,2005p.43−49に記載のようにSi−RUB−39を製造することができる。より詳細には、これに関連して、本発明のSi−RUB−39に対応する「as−synthesized RUB−39」の製造について表題「Experimental」の右側の欄の副題「Synthesis」の最初の二段落に記載されている、この科学論文の第44頁を参照するべきである。Wang他の論文に従って製造されたSi−RUB−39の特徴に関しては、この論文の図1〜4とそれに対応する記載を特に参照のこと。
【0036】
同様に、好ましい製造手段として、既に上記において挙げた国際公開第2005/100242(A1)号の一般条項に開示の方法、並びに特にその実施例1および2を参照のこと。
【0037】
(1)で得られたコロイド性水溶液
(2)において加熱され水熱結晶化に供される、本発明による方法の工程(1)で得られる溶液は、ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを有する本発明のケイ酸塩が(2)において確実に得られるのであれば、原則として任意の組成を有していてもよい。
【0038】
二酸化ケイ素:テトラアルキルアンモニウム化合物:水の質量比に関して、本発明による好ましい組成物については、既に上記に記載されている。
【0039】
ヘテロ原子としてガリウムを含むケイ酸塩、特にGa−RUB−39が、本発明に従い(2)において製造される場合、(1)で得られる溶液は、(2)で加熱される前に、ケイ素(SiO2として計算)、ガリウム(Ga23として計算)、テトラアルキルアンモニウム化合物としてのDMDPAH、水、および結晶化助剤を、SiO2:Ga23:DMDPAH:水:結晶化助剤が好ましくは1:(0.001〜0.05):(0.4〜10):(4〜12):(0.001〜5)の質量比で、より好ましくは1:(0.002〜0.04):(0.6〜5):(6〜12):(0.002〜1)の質量比で、より好ましくは1:(0.003〜0.03):(0.8〜3):(8〜12):(0.005〜0.1)の質量比で、特に好ましくは1:(0.005〜0.02):(1〜2):(10〜12):(0.01〜0.05)の質量比で含む。
【0040】
ヘテロ原子として亜鉛を含むケイ酸塩、特にZn−RUB−39が、本発明に従って(2)において製造される場合、(1)で得られる溶液は、(2)で加熱される前に、ケイ素(SiO2として計算)、亜鉛(Zn23として計算)、テトラアルキルアンモニウム化合物としてのDMDPAH、水、および結晶化助剤を、SiO2:Zn23:DMDPAH:水:結晶化助剤が好ましくは1:(0.001〜0.05):(0.4〜10):(4〜12):(0.001〜5)の質量比で、より好ましくは1:(0.002〜0.05):(0.6〜5):(6〜12):(0.002〜1)の質量比で、より好ましくは1:(0.005〜0.05):(0.8〜3):(8〜12):(0.005〜0.1)の質量比で、特に好ましくは1:(0.01〜0.05):(1〜2):(10〜12):(0.01〜0.05)の質量比で含む。
【0041】
必要であれば、(1)において得られた二酸化ケイ素源、ヘテロ原子源、テトラアルキルアンモニウム化合物、塩基、および結晶化助剤を含む溶液を、工程(2)の前に、上記の組成を得るために好適に濃縮することもできる。本発明に関して、当該濃縮工程は、一般的に、すべての好適な方法、例えば、好適な減圧の適用により、または特定の好適な温度に加熱することにより、あるいはこれらの方法の組み合わせにより、達成することができる。本発明による濃縮に対しては、上記において言及した組成を達成するように、(1)において得られた混合物を、好ましくは雰囲気圧力において、混合物中に存在する所望量の水が除去される好適な温度に加熱することが好ましい。濃縮のための少なくとも1種の好適な装置としては、ロータリーエバポレーターまたはオーブンが挙げられる。特に好ましいのはオーブンである。この点に関して、減圧下において、したがって低温で水の除去を可能にするもの、例えば、減圧下で操作されるロータリーエバポレーター等を含む装置が好ましい。(1)で得られた混合物を、好ましくは50〜90℃、より好ましくは55〜85℃、より好ましくは60〜80℃、特に好ましくは65〜75℃の範囲の温度に加熱し、所望量の水が除去されるまで、適切に選択された温度に維持してもよい。本発明による方法の好適な実施例において、当該混合物を、0.1〜12℃/時、より好ましくは1〜11℃/時、特に好ましくは5〜10℃/時の範囲の加熱速度で、好ましくは室温から濃縮のために選択された温度へと加熱する。
【0042】
本発明のさらなる実施形態において、格子中にGaおよび/またはZnを有する本発明のケイ酸塩が、少なくとも1種のさらなるヘテロ原子を有することも可能である。当該ヘテロ原子の例としては、アルミニウム、ホウ素、鉄、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、バナジウム、またはニオブが挙げられる。
【0043】
例えば、アルミニウムが取り込まれる場合、(1)において製造した溶液は、さらに、アルミニウム源、例えば、金属アルミニウム、例えばアルミニウム粉末等、または好適なアルミネート、例えばアルカリ金属アルミネート等、および/またはアルミニウムアルコキシド、例えばアルミニウムトリイソプロポキシド等を含んでいてもよい。アルミニウムが取り込まれる場合に使用される好ましいアルミニウム源は、アルミン酸ナトリウムである。
【0044】
例えば、ホウ素が取り込まれる場合、(1)において製造した溶液は、さらに、ホウ素源、例えば遊離ホウ酸等、および/またはホウ酸塩、および/またはホウ酸エステル、例えばホウ酸トリエチルもしくはホウ酸トリメチル等を含んでいてもよい。ホウ素が取り込まれる場合、例えば、ホウ素源としてホウ酸が好ましい。
【0045】
例えば、スズが取り込まれる場合、(1)において製造した溶液は、さらに、スズ源、例えば塩化スズ等、および/または有機金属スズ化合物、例えばスズアルコキシド等、またはキレート化合物、例えばスズアセチルアセトネート等を含んでいてもよい。
【0046】
例えば、ジルコニウムが取り込まれる場合、(1)において製造した溶液は、さらに、ジルコニウム源、例えば、塩化ジルコニウムおよび/またはジルコニウムアルコキシド等を含んでいてもよい。
【0047】
例えば、バナジウム、またはゲルマニウム、もしくはニオブが取り込まれる場合、(1)において製造した溶液は、さらに、バナジウム源、ゲルマニウム源、またはニオブ源、例えば、塩化バナジウムもしくは塩化ゲルマニウムもしくは塩化ニオブ等を含んでいてもよい。
【0048】
したがって、本発明はさらに、(1)において追加的に使用されるさらなるヘテロ原子源が、アルミニウム源、ホウ素源、鉄源、チタン源、スズ源、ゲルマニウム源、ジルコニウム源、バナジウム源、ニオブ源、およびこれらのヘテロ原子源の2種以上の混合物、から成る群から選択されるヘテロ原子源である、上記方法およびこの方法によって入手可能なケイ酸塩に関する。
【0049】
本発明のケイ酸塩の格子中に取り込まれる原子の種類に従って、フレームワークは負に帯電し得、それによって、例えば、ケイ酸塩によるカチオンの取り込みが可能になる。言及されるべきカチオンとしては、テンプレート化合物のアンモニウムイオンR1234+、白金カチオン、パラジウムカチオン、ロジウムカチオンもしくはルテニウムカチオン、金カチオン、アルカリ金属カチオン、例えば、ナトリウムイオンもしくはカリウムイオン等、またはアルカリ土類金属カチオン、例えば、マグネシウムイオンもしくはカルシウムイオン等が挙げられる。これに関連して、同様に、モリブデン、タングステン、レニウム、または銀も言及されるべきである。例えば、最初に、本発明に従って製造されたRUB−39構造のケイ酸塩および/または下記RRO構造(RUB−41)のケイ酸塩が充填可能である。
【0050】
工程(2)における水熱結晶化
(1)において得られる混合物は、場合により、濃縮後に本発明に従って(2)の水熱結晶化に供される。これにより、ケイ酸塩格子中にヘテロ原子としてGaおよび/またはZnを含みかつ母液中に懸濁した初晶の形態で得られるケイ酸塩、特に、Ga−RUB−39構造、Zn−RUB−39構造、またはGa/Zn−RUB−39構造の層状ケイ酸塩が得られる。
【0051】
原則として、ケイ酸塩、特にRUB−39構造のケイ酸塩が、確実にコロイド溶液中で結晶化するのであれば、(1)において得られる溶液を、(2)において、任意の好適な圧力で、任意の好適な温度において加熱することができる。ここで、選択された圧力下で(1)において得られる混合物の沸点より高い温度が好ましい。標準圧力で180℃までの温度がより好ましい。本発明による方法の特に好ましい実施形態において、(2)における結晶化は、オートクレーブ中で実施される。
【0052】
本発明に関して使用される場合、用語「標準圧力」は、理想的には101325Paの圧力を意味するが、当業者に公知の範囲内における変化が含まれる。例えば、当該圧力は、95000〜106000、または96000〜105000、または97000〜104000、または98000〜103000,または99000〜102000Paの範囲であってもよい。
【0053】
(2)においてオートクレーブ中で用いられる温度は、好ましくは100〜180℃の範囲、より好ましくは110〜175℃の範囲、より好ましくは120〜170℃の範囲、より好ましくは130〜165℃の範囲、特に好ましくは140〜160℃の範囲である。
【0054】
(1)において得られたコロイド溶液を、(2)において加熱するこの温度は、原則として、結晶化が所望の程度に進行するまで維持され得る。ここで、好ましいのは、360時間以下、より好ましくは300時間以下、より好ましくは240時間以下、より好ましくは12時間〜240時間、より好ましくは24時間〜240時間、より好ましくは120時間〜240時間、より好ましくは144時間〜240時間、より好ましくは168時間〜216時間である。
【0055】
特に好ましいのは、例えば、140〜160℃の範囲の温度において168時間〜216時間の範囲の水熱結晶化である。
【0056】
(2)における結晶化のために、当該溶液は、好ましくは好適に攪拌される。同様に、結晶化を実施する反応容器を好適に回転させることもできる。
【0057】
結晶化助剤としてRUB−39構造のケイ酸塩を加えず、結晶化時間が通常約15〜45日間である方法と比較して、新規のGa含有ケイ酸塩および/またはZn含有ケイ酸塩が得られる本発明による方法は、結晶化時間を15日間より著しく短く、さらには10日未満に、例えば7〜9日への短縮を達成した。
【0058】
従って、また、本発明は、(1)において得られる溶液が、7〜9日の範囲の期間で、(2)において水熱結晶化される、上記方法に関する。
【0059】
後処理
本発明による方法の一実施形態において、(2)における結晶化は、好適な急冷により停止することができる。これに関連して、当該懸濁液を、結晶化を停止するために好適な温度の水と混合することが特に好ましい。
【0060】
本発明による方法の一実施形態において、好適な方法により、少なくとも一段階で、(2)から得られる懸濁液から少なくとも1種のケイ酸塩を分離する。この分離は、例えば、濾過、限外濾過、透析濾過、遠心分離法、または、例えば噴霧乾燥法もしくは噴霧造粒法により、実施することができる。好ましいのは、噴霧乾燥または濾過による分離である。例えば噴霧法による当該分離は、(2)において得られた懸濁液自体から実施してもよく、あるいは(2)において得られた懸濁液の濃縮により得られた懸濁液から実施してもよい。この濃度は、例えば、蒸発濃縮により、例えば減圧下での蒸発濃縮により、または直交流濾過により、実施することができる。同様に、(2)で得られた懸濁液を分割し、その一方に存在する固体を、例えば、濾過、限外濾過、透析濾過、または遠心分離法により分離し、可能な洗浄工程および/または乾燥工程の後に、それを、懸濁液のもう一方に懸濁させることによって、(2)で得られた懸濁液を濃縮することもできる。当該分離工程並びに噴霧乾燥および噴霧造粒乾燥による乾燥工程、例えば、流動床噴霧造粒乾燥により得られた噴霧材料は、固体および/または中空の球体を含み得るか、あるいは、例えば、5〜500μmまたは5〜300μmの範囲の粒径を有し得るそのような球体のみから実質的に成り得る。噴霧法において用いられる噴霧ノズルは、例えば、単一部材ノズルまたは複数部材ノズルであってもよい。さらに、回転噴霧器の使用も考えられる。使用したキャリアーガスの可能な吸気口温度は、例えば、200〜600℃の範囲、好ましくは225〜550℃の範囲、より好ましくは300〜500℃の範囲である。キャリアーガスの排気口温度は、例えば50〜200℃の範囲である。キャリアーガスの例としては、空気、希薄空気、あるいは酸素含有量が、10容量%以下、好ましくは5容量%以下、より好ましくは5容量%未満、例えば2容量%までの酸素−窒素混合物が挙げられる。噴霧法は、向流または並流において実行できる。
【0061】
したがって、本発明はさらに、上記方法であって、
(3)(2)において得られた懸濁液から、ケイ素、酸素、および少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1種のケイ酸塩を分離する工程
を含む方法に関する。
【0062】
本発明による方法の好ましい実施形態において、上記のように分離された少なくとも1種のケイ酸塩は、洗浄、および/または乾燥される。
【0063】
したがって、本発明はさらに、上記方法であって、(3)で得られたケイ酸塩を、
(4)洗浄する工程、
および/または
(5)乾燥する工程
をさらに含む方法に関する。
【0064】
分離後に、少なくとも1回の洗浄工程および/または少なくとも1回の乾燥工程があってもよく、少なくとも2回の洗浄工程がある場合、同一または異なる洗浄剤または洗浄剤混合物を用いることが可能であり、少なくとも2回の乾燥工程がある場合、同一または異なる乾燥温度を用いることが可能である。
【0065】
ここで、当該乾燥温度は、好ましくは室温〜150℃の範囲であり、より好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜130℃、より好ましくは100〜120℃の範囲である。
【0066】
当該乾燥時間は、好ましくは6〜48時間、より好ましくは12〜36時間の範囲である。
【0067】
したがって、本発明は、上記方法であって、ケイ酸塩を(4)において水で洗浄し、および/または(5)において室温〜150℃の範囲の温度で乾燥する方法に関する。
【0068】
使用される洗浄用組成物は、例えば、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノール等、あるいはそれらの2種以上の混合物であってもよい。混合物の例としては、2種以上のアルコールの混合物、例えば、メタノールとエタノールの混合物、またはメタノールとプロパノールの混合物、またはエタノールとプロパノールの混合物、またはメタノールとエタノールとプロパノールの混合物等、あるいは水と少なくとも1種のアルコールとの混合物、例えば、水とメタノールの混合物、または水とエタノールの混合物、または水とプロパノールの混合物、または水とメタノールとエタノールの混合物、または水とメタノールとプロパノールの混合物、または水とエタノールとプロパノールの混合物、または水とメタノールとエタノールとプロパノールの混合物等が挙げられる。好ましいのは、水、または水と少なくとも1種のアルコールの混合物、好ましくは水とエタノールの混合物、非常に好ましいのは、単独の洗浄剤としての水である。
【0069】
本発明による方法の一実施形態では、(3)における少なくとも1種のケイ酸塩の分離から得られた、未反応の反応剤を含む母液を、本方法の工程(1)において再利用する。
【0070】
前分離を、例えば噴霧乾燥法または噴霧造粒法により行う場合、(2)において得られる懸濁液からのケイ酸塩の分離および当該ケイ酸塩の乾燥が、単一の工程で実施できるという利点がある。
【0071】
したがって、本発明はさらに、上記方法であって、
(3)(2)において得られた懸濁液から、ケイ素、酸素、および少なくとも1種のヘテロ原子を含む少なくとも1種のケイ酸塩を分離する工程、
(4)場合により、(3)において分離されたケイ酸塩を洗浄する工程、好ましくは水で洗浄する工程、
(5)(3)または(4)において得られたケイ酸塩を、好ましくは室温〜150℃の範囲の温度で、乾燥する工程、
をさらに含む方法に関する。
【0072】
RUB−39構造の層状ケイ酸塩
本発明による方法において、ケイ酸塩、特にRUB−39構造の層状ケイ酸塩が得られる。
【0073】
本発明に従って特に得られる、Gaおよび/またはZnを含むRUB−39構造の当該層状ケイ酸塩は、Cu Kα1放射線による、対応するX線回折パターンにおいて少なくとも以下の反射が生じるという点において注目に値する。
【0074】
【表1】

【0075】
表中、値100%は、X線回折図における最も高いピークの強度に関連する。
【0076】
したがって、本発明はさらに、層状ケイ酸塩、特にRUB−39構造の層状ケイ酸塩、特にケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含み、Cu Kα1放射線によるX線回折パターンにおいて少なくとも以下の反射を有するRUB−39構造の層状ケイ酸塩に関する。
【0077】
【表2】

【0078】
表中、値100%は、X線回折図における最も高いピークの強度に関連し、当該層状ケイ酸塩は、本発明による前記方法により得られる。
【0079】
より好ましくは、本発明はさらに、ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含み、Cu Kα1放射線によるX線回折パターンにおいて少なくとも以下の反射を有するRUB−39構造の層状ケイ酸塩に関する。
【0080】
【表3】

【0081】
表中、値100%は、X線回折図における最も高いピークの強度に関連する。
【0082】
RRO構造のテクトケイ酸塩
本発明のさらなる実施形態において、(6)において結果として得られた、ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含むRUB−39構造の層状ケイ酸塩は、少なくともさらなる1段階において焼成される。
【0083】
原則として、少なくとも1種のケイ酸塩を含む懸濁液を、焼成に直接供給することが可能である。好ましくは、焼成前に、ケイ酸塩を、上記のように(3)において懸濁液から分離する。
【0084】
焼成前に、懸濁液から分離したケイ酸塩を、上記のような少なくとも1回の洗浄工程(4)、および/または上記のような少なくとも1回の乾燥工程(5)に供してもよい。懸濁液から分離したケイ酸塩は、好ましくは乾燥し、洗浄工程を用いずに焼成に送る。
【0085】
(2)および/または(3)および/または(4)および/または(5)において得られたケイ酸塩の(6)における焼成は、テクトケイ酸塩を得るために、好ましくは600℃以下の範囲の温度で実施される。
【0086】
本発明による方法の好ましい実施形態において、ケイ酸塩を、室温〜600℃以下の温度に加熱し、より好ましくは加熱速度は0.1〜12℃/時の範囲、より好ましくは1〜11℃/時、特に好ましくは5〜10℃/時の範囲である。
【0087】
例えば、好ましくは、この温度は、200〜600℃の範囲である。特に好ましいのは、300〜600℃の範囲の焼成温度である。さらに好ましいのは、400〜575℃の範囲、特に好ましいのは450〜550℃の範囲の焼成温度である。
【0088】
本発明による方法の可能な一構成において、焼成は、温度段階で実行される。本発明に関して使用される場合、用語「温度段階」は、焼成されるケイ酸塩が、特定の温度まで加熱され、特定の時間この温度に維持され、この温度から少なくとも1つのさらなる温度に加熱され、再び特定の時間その温度に維持される焼成を意味する。
【0089】
焼成されるケイ酸塩は、好ましくは、4種までの温度、より好ましくは3種までの温度、特に好ましくは2種の温度に維持される。
【0090】
これに関連して、第一の温度は、好ましくは500〜540℃の範囲であり、より好ましくは505〜535℃の範囲であり、より好ましくは510〜530℃の範囲であり、特に好ましくは515〜525℃の範囲である。この温度は、好ましくは8〜24時間の範囲の期間、より好ましくは9〜18時間、特に10〜14時間の範囲の期間維持される。
【0091】
第二の温度は、好ましくは540℃超〜600℃の範囲、より好ましくは550〜580℃の範囲、特に好ましくは555〜570℃の範囲である。この温度は、好ましくは0.5〜6時間の範囲の期間、より好ましくは1〜4時間、特に1〜3時間の範囲の期間維持される。
【0092】
したがって、本発明はさらに、焼成が、600℃以下の範囲、好ましくは300〜600℃の範囲の温度段階で実施される、上記方法に関する。
【0093】
当該焼成は、任意の好適な雰囲気において、例えば、空気、希薄空気、窒素、水蒸気、合成空気、二酸化炭素中において実施することができる。好ましくは、焼成は空気下で実施される。
【0094】
当該焼成は、このために好適な任意の装置において実施することができる。好ましくは、焼成は、回転式管状炉、ベルト式焼結炉、マッフル焼結炉、続いてケイ酸塩が例えば分子ふるいとして、触媒として、または下記他の用途のために、意図されるように用いられる装置内in situで実施される。ここで特に好ましいのは、回転式管状炉およびベルト式焼結炉である。
【0095】
(2)において得られるケイ酸塩が、好ましくは、噴霧乾燥法または噴霧造粒法により懸濁液から分離される、本発明のさらに可能な実施形態において、分離が実施される条件は、分離中、層状ケイ酸塩の少なくとも一部が、テクトケイ酸塩に変化するように選択される。分離中に少なくとも225℃である温度が選択されるのが好ましい。この方法の変形には、分離、乾燥、および少なくとも部分的な焼成の工程を1つの工程に組み合わせることができるという利点がある。
【0096】
本発明による方法において、焼成後に、ケイ酸塩、特にRRO構造(RUB−41)のテクトケイ酸塩が得られる。
【0097】
したがって、本発明はさらに、上記方法であって、
(6)テクトケイ酸塩、好ましくは、X線結晶学においてRRO型に分類されるテクトケイ酸塩、を得るために、好ましくは300〜600℃の範囲の温度で、ケイ素、酸素、および少なくとも1種のヘテロ原子を含みかつ(5)において得られる少なくとも1種のケイ酸塩を焼成する工程
を追加的に含む方法に関する。
【0098】
したがって、本発明はさらに、ケイ酸塩、特にRRO構造のテクトケイ酸塩であって、当該ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含み、(6)において焼成を含む前記方法により得られるケイ酸塩に関する。
【0099】
本発明は同様に、RRO構造のテクトケイ酸塩であって、当該ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含み、特に、Cu Kα1放射線によるX線回折パターンにおいて少なくとも以下の反射を有するケイ酸塩に関する。
【0100】
【表4】

【0101】
表中、値100%は、X線回折図における最も高いピークの強度に関連する。
【0102】
より詳細には、本発明は、RRO構造のテクトケイ酸塩であって、当該ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含み、特に、Cu Kα1放射線によるX線回折パターンにおいて少なくとも以下の反射を有するケイ酸塩に関する。
【0103】
【表5】

【0104】
表中、値100%は、X線回折図における最も高いピークの強度に関連する。
【0105】
本発明のテクトケイ酸塩または本発明に従って製造されたものは、好ましくは、P2/c空間群に存在する。上記のように、使用される反応剤が水酸化テトラアルキルアンモニウムおよび二酸化ケイ素および/または二酸化ケイ素前駆体の場合、本発明に従って製造されたテクトケイ酸塩は、好ましくは、リートフェルト分析によって決定された以下の格子パラメータを有する。
【0106】
− a=7.34(1)Å
− b=8.72(1)Å
− c=17.17(1)Å
− β=114.2(1)°
【0107】
29−Si MAS NMR分光法によれば、層状ケイ酸塩に典型的なシラノール基の特徴であって本発明の前記層状ケイ酸塩の場合には見られた約104ppmにおける低磁場信号は、本発明のテクトケイ酸塩の場合には存在しない。
【0108】
本発明のテクトケイ酸塩は、好ましくは、8−MRおよび10−MRチャンネルを有し、当該8−MRは、特に好ましくは上記のように、単位格子のcと平行し、10−MRチャンネルは、特に好ましくは、上記のように、単位格子のaと平行している。8−MRおよび10−MRチャンネルの定義に関しては、Ch.Baerlocher,W.M. Meier,D.H.Olson,Atlas of Zeolite Framework Types,5th edition,2001,Elsevier,pages 10−15を参照のこと。
【0109】
より詳細には、本発明のテクトケイ酸塩は二次元8−MRおよび10−MRチャンネル細孔構造に関して、本質的に一モード分配において注目に値する。8−MRチャンネルおよび10−MRチャンネルの細孔の大きさは、これに関して、好ましくは、それぞれ(5.70〜6.00)×(4.00〜4.20)Å2の範囲、特に好ましくは(5.80〜5.90)×(4.05〜4.15)Å2の範囲を有する。
【0110】
本発明のテクトケイ酸塩は、好ましくは、各場合において、DIN 66135(Langmuir)に従って測定された、200m2/g超の範囲の、より好ましくは200超〜800m2/g、より好ましくは300〜700m2/g、特に好ましくは400〜600m2/gの範囲の比表面積の微小孔を有する。
【0111】
本発明のテクトケイ酸塩は、好ましくは、各場合において、DIN 66134に従って測定された、0.15〜0.21ml/gの範囲の、より好ましくは0.16〜0.20ml/gの範囲の、特に好ましくは0.17〜0.19ml/gの範囲の細孔容積の細孔を有する。
【0112】
したがって、本発明のテクトケイ酸塩は、微小孔性ゼオライトタイプのケイ酸塩である。
【0113】
本発明のテクトケイ酸塩の熱安定性は、好ましくは少なくとも600℃、より好ましくは600℃を超える。
【0114】
本発明に関して使用される場合、用語「熱安定性」は、テクトケイ酸塩の特異的格子構造が標準圧力下で維持される温度を意味する。
【0115】
成形体
多くの工業用途において、一部の使用者においては、結晶性材料、例えば、層状ケイ酸塩またはテクトケイ酸塩等自体の使用でなく、代わりに成形体を得るために処理済みの結晶性材料の使用がしばしば望まれる。このような成形体は、例えば、管状反応炉内において物質混合物からの物質の分離の実施を可能にするために、多くの工業規模の方法において特に必要とされている。
【0116】
したがって、本発明はさらに、前述の結晶性テクトケイ酸塩を含む成形体に関する。さらに本発明は、前記層状ケイ酸塩を含む成形体も包含する。
【0117】
一般的に、結果として得られる成形体が、所望の用途に対して好適であることが確実である限り、成形体は、本発明のテクトケイ酸塩と同様に、全ての考え得るさらなる化合物を含んでいてもよい。
【0118】
一実施形態において、本発明の成形体は、下記成形工程の1つによってバインダーを用いずに製造される。本発明に関して使用される場合、用語「バインダー」は、下記のように成形体の焼成後、元の形態のままあるいは変換された形態で、成形体中に残存するバインダーを意味する。
【0119】
本発明に関して、成形体の製造において、少なくとも1種の好適なバインダーを用いることが好ましい。この好ましい実施形態において、より好ましくは、テクトケイ酸塩と少なくとも1種のバインダーとの混合物が製造される。
【0120】
したがって、本発明はさらに、上記テクトケイ酸塩を含む成形体を製造する方法であって、前記方法および
(i)上記テクトケイ酸塩または上記方法によって得られるテクトケイ酸塩と、少なくとも1種のバインダーとを含む混合物を製造する工程
によるテクトケイ酸塩の製造を含む方法に関する。
【0121】
好適なバインダーは、一般的に、バインダーを用いない場合の物理吸着を超える接着力および/または粘着力を、結合すべきテクトケイ酸塩粒子間に付与する全ての化合物である。そのようなバインダーの例としては、例えば、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、もしくはMgO等の金属酸化物、または粘土、またはこれらの化合物の2種以上の混合物が挙げられる。
【0122】
好ましいAl23バインダーは、特に粘土鉱物および天然の酸化アルミニウムまたは合成された酸化アルミニウム、例えば、α−、β−、γ−、δ−、η−、κ−、χ−、またはθ−酸化アルミニウム、およびそれらの無機もしくは有機金属前駆体化合物、例えば、ギブサイト、バイエライト、ベーマイト、疑似ベーマイト、またはトリアルコキシアルミネート、例えば、アルミニウムトリイソプロポキシド等である。さらに好ましいバインダーは、極性および非極性部位を有する両親媒性化合物、並びにグラファイトである。さらなるバインダーは、例えば、モンモリロナイト、カオリン、メタカオリン、ヘクトライト、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナキサイトである。
【0123】
これらのバインダーは、それ自体使用することができる。同様に、本発明に関して、成形体の製造中の少なくとも1つのさらなる工程においてバインダーを形成する化合物を用いることもできる。そのようなバインダー前駆体の例としては、例えば、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、テトラアルコキシジルコネート、または2種以上の異なるテトラアルコキシシランの混合物、または2種以上の異なるテトラアルコキシチタネートの混合物、または2種以上の異なるテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも1種のテトラアルコキシシランと少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートとの混合物、または少なくとも1種のテトラアルコキシシランと少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートとの混合物、または少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートとの混合物、または少なくとも1種のテトラアルコキシシランと少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートとの混合物が挙げられる。
【0124】
本発明に関して、完全にまたは部分的にSiO2またはSiO2前駆体から成り、成形体の製造中の少なくとも1つのさらなる工程においてSiO2を形成するバインダーが非常に特に好ましい。これに関連して、コロイド状二酸化ケイ素または「湿式法」二酸化ケイ素もしくは「乾式法」二酸化ケイ素を使用することが可能である。これらの場合、二酸化ケイ素は、最も好ましくは非晶質二酸化ケイ素であり、当該二酸化ケイ素粒子の粒径は、例えば5〜100nmの範囲であり、当該二酸化ケイ素粒子の表面積は50〜500m2/gの範囲である。
【0125】
好ましくはアルカリ性および/またはアンモニア性溶液としてのコロイド状二酸化ケイ素、より好ましくはアンモニア性溶液としてのコロイド状二酸化ケイ素は、例えば、Ludox(登録商標)、Syton(登録商標)、Nalco(登録商標)、またはSnowtex(登録商標)等の名前で市販されている。
【0126】
「湿式法」二酸化ケイ素は、例えば、Hi−Sil(登録商標)、Ultrasil(登録商標)、Vulcasil(登録商標)、Santocel(登録商標)、Valron−Estersil(登録商標)、Tokusil(登録商標)、またはNipsil(登録商標)等の名前で市販されている。
【0127】
「乾式法」二酸化ケイ素は、Aerosil(登録商標)、Reolosil(登録商標)、Cab−O−Sil(登録商標)、Fransil(登録商標)、またはArcSilica(登録商標)等の名前で市販されている。
【0128】
本発明に関して、1種の好ましい物質は、コロイド状二酸化ケイ素のアンモニア性溶液である。
【0129】
したがって、本発明はさらに、バインダーとしてSiO2をさらに含む、上記成形体に関する。
【0130】
同様に、本発明はさらに、(I)において使用されるバインダーが、SiO2含有バインダーまたはSiO2形成バインダーである、上記方法に関する。
【0131】
したがって、本発明はさらに、バインダーがコロイド状二酸化ケイ素である、上記方法に関する。
【0132】
当該バインダーは、好ましくは、それぞれ、最終的に得られる成形体の全質量に対して、バインダー含有量が、80質量%までの範囲、より好ましくは5〜80質量%の範囲、より好ましくは10〜70質量%の範囲、より好ましくは10〜60質量%の範囲、より好ましくは15〜50質量%の範囲、より好ましくは15〜45質量%の範囲、特に好ましくは15〜40質量%の範囲である成形体が最終的に得られる量で使用される。
【0133】
本発明に関して使用される場合、用語「最終的に得られる成形体」は、後述の、乾燥および焼成工程(IV)および/または(V)、好ましくは(IV)および(V)、特に好ましくは(V)から得られる成形体を意味する。
【0134】
バインダーもしくはバインダー前駆体とゼオライト材料との混合物は、さらなる処理とプラスチック材料の形成のために、さらなる少なくとも1種の化合物と混合することができる。ここで、好ましい化合物としては、ポア形成剤が挙げられる。
【0135】
本発明による方法において用いることのできるポア形成剤は、最終的な成形体に関して、特定の孔サイズおよび/または特定の孔サイズ分布および/または特定の細孔容積を提供する、すべての化合物である。
【0136】
本発明による方法におけるポア形成剤として、水または水性溶媒混合液中において、分散性、懸濁性、または乳化性を有するポリマーを用いるのが好ましい。ここで、好ましいポリマーは、ポリマー性ビニル化合物、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド、およびポリエステル等のポリアルキレンオキシド、セルロースまたはメチルセルロース等のセルロース誘導体等の炭水化物、または糖もしくは天然繊維である。さらに好適なポア形成剤は、例えば、パルプまたはグラファイトである。
【0137】
(I)における混合物の製造中にポア形成剤が用いられる場合、(I)における混合物中のポア形成剤含有量、好ましくは、ポリマー含有量は、それぞれの場合において、(I)における混合物中の本発明のテクトケイ酸塩の量に対して、好ましくは5〜90質量%の範囲、好ましくは15〜75質量%の範囲、より好ましくは25〜55質量%の範囲である。
【0138】
所望のポアサイズ分布が実現されるのであれば、2種以上のポア形成剤の混合物を用いることもできる。
【0139】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、後述するように、ポア形成剤は工程(V)において焼成により除去され、多孔性の成形体が得られる。本発明による方法の好ましい実施形態において、DIN66134に従って測定した場合に、少なくとも0.6ml/gの範囲、好ましくは0.6〜0.8ml/gの範囲、特に好ましくは0.6ml/g超〜0.8ml/gの範囲の細孔を有する成形体が得られる。
【0140】
DIN66131に従って測定した場合の本発明の成形体の比表面積は、一般的に、少なくとも350m2/gであり、好ましくは少なくとも400m2/gであり、特に好ましくは少なくとも425m2/gである。例えば、当該比表面積は、350〜500m2/gの範囲、または400〜500m2/gの範囲、または425〜500m2/gの範囲であってもよい。
【0141】
したがって、本発明はさらに、少なくとも350m2/gの比表面積を有し、少なくとも0.6ml/gの細孔容積を有する孔を含む、上記成形体に関する。
【0142】
本発明による方法の同様に好ましい実施形態において、(I)における混合物の製造中に少なくとも1種のペースト剤が加えられる。
【0143】
使用されるペースト剤は、そのために好適なすべての化合物である。これらは、好ましくは有機化合物、特に親水性ポリマー、例えば、セルロース、セルロース誘導体、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ジャガイモデンプン等のデンプン、壁紙ペースト、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテン、またはポリテトラヒドロフランである。
【0144】
したがって、より詳細には、使用されるペースト剤は、ポア形成剤としても機能する化合物であってもよい。
【0145】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、後述するように、これらのペースト剤は、工程(V)において焼成により除去され、多孔性の成形体が得られる。
【0146】
本発明のさらなる実施形態において、(I)における混合物の製造中に少なくとも1種の酸性添加剤が加えられる。後述のように、好ましい工程(V)において焼成により除去され得る有機酸性化合物が非常に特に好ましい。カルボン酸、例えば、ギ酸、シュウ酸、および/またはクエン酸が特に好ましい。同様に、これらの酸性化合物の2種以上を用いることもできる。
【0147】
(I)においてテクトケイ酸塩を含む混合物の成分を添加する順番は重要でない。最初に少なくとも1種のバインダー、次いで少なくとも1種のポア形成剤、少なくとも1種の酸性化合物、最後に少なくとも1種のペースト剤を加えても、あるいは少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種のポア形成剤、少なくとも1種の酸性化合物、および少なくとも1種のペースト剤の添加順序を入れ替えてもよい。
【0148】
場合により、上記の少なくとも1種の化合物を既に加えてあるテクトケイ酸塩固体にバインダーを加えた後、当該混合物を(I)において、一般的には10〜180分間かけて均一化する。均一化において、ニーダ、パン・グラインダ、または押出機をはじめとする装置が特に好ましい。当該混合物を混練するのが好ましい。工業規模では、均一化のためにパン・グラインダに供することが好ましい。
【0149】
したがって、本発明はさらに、上記テクトケイ酸塩を含む成形体を製造する方法であって、前記方法によりテクトケイ酸塩を製造する工程と、
(I)上記テクトケイ酸塩または上記方法によって得られるテクトケイ酸塩と、少なくとも1種のバインダー材料とを含む混合物を製造する工程と、
(II)当該混合物を混練する工程と
を含む方法に関する。
【0150】
均一化は、一般的に、約10℃〜ペースト剤沸点の範囲の温度で、標準圧力もしくは大気圧よりわずかに高い圧力において実施する。その後、場合により、前述の化合物の少なくとも1種を加えることもできる。このようにして得られた混合物を、押出し可能なプラスチック材料が形成されるまで均一化、好ましくは混練する。
【0151】
本発明のさらに好ましい実施形態において、当該均一化された混合物を成形する。
【0152】
本発明に関して、成形工程における方法に対して、当該成形が、例えば、好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜5mmの直径を有する押出物が得られる、通常の押出機における押出しによって実施されることが好ましい。そのような押出機は、例えば、Ullmann’s Enzyklopaedie der Technishen Chemie、4th edition,vol.2,p.295ff.,1972に記載されている。押出機の使用に加えて、成形にストランドプレスを使用することも同様に好ましい。
【0153】
しかしながら、原則として、成形のためには、すべての公知のおよび/または好適な混練および成形装置または方法を用いることができる。そのようなものとしては、
(a)ブリケッティング、すなわち、さらなるバインダー材料を加えてまたは加えずに行う機械プレス
(b)ペレッティング、すなわち、円運動および/または回転運動による圧縮
(c)焼結、すなわち、成形される材料を熱処理に供すること、
(d)熱間等静圧圧縮成形
が挙げられる。
【0154】
例えば、当該成形は、以下の群、すなわち、プランジャープレスによるブリケッティング、ローラープレス、輪状ローラープレス、バインダーを用いないブリケッティング、ペレッティング、溶融、紡績技術、析出、発泡成形、噴霧乾燥、焼成高炉、対流炉、移動炉、回転炉、パン・グラインダ、からなる群であって、これらの方法の少なくとも2種の組み合わせを明らかに含む群から選択することができる。
【0155】
圧縮は、周囲圧力、または周囲圧力より高い圧力、例えば、1bar〜数百barの範囲の圧力で実施することができる。その上、圧縮は、周囲温度または周囲温度より高い温度、例えば、20〜300℃の範囲の温度で実施することができる。乾燥および/または焼成が成形工程の一部である場合、600℃までの温度が考えられる。最後に、圧縮は、周囲雰囲気または調整された雰囲気にて実施することができる。調整された雰囲気は、例えば、保護ガス雰囲気、減圧された雰囲気、および/または酸化雰囲気である。
【0156】
したがって、本発明はさらに、上記テクトケイ酸塩を含む成形体を製造する方法であって、前記方法によりテクトケイ酸塩を製造する工程と、
(I)上記テクトケイ酸塩または上記方法によって得られるテクトケイ酸塩と、少なくとも1種のバインダー材料とを含む混合物を製造する工程と、
(II)当該混合物を混練する工程と、
(III)当該混練された混合物を成形し、少なくとも1種の成形体を得る工程と
を含む方法に関する。
【0157】
本発明により製造された成形体の形状は、所望のように選択することができる。特に、球体形、卵形、円柱形、またはタブレット形が可能である。同様に、中空構造、例えば、中空シリンダまたは蜂の巣構造、あるいは星形幾何学形状も挙げられる。
【0158】
本発明に関して、押出物として、より好ましくは、1〜20mmの範囲、好ましくは1〜10mmの範囲、より好ましくは2〜10mmの範囲、より好ましくは2〜5nmの範囲内の直径を有する実質的に円柱状の押出物を得るために、(II)において得られた混練混合物の押出により成形を実施するのが特に好ましい。
【0159】
本発明に関して、好ましくは、工程(III)の後に少なくとも1回の乾燥工程が実施される。この少なくとも1回の乾燥工程は、一般的に80〜160℃の範囲、好ましくは90〜145℃、より好ましくは100℃〜130℃の範囲の温度で実施され、その場合、乾燥時間は、一般的に6時間以上、例えば6〜24時間の範囲である。しかしながら、乾燥される材料の水分含有量に応じて、より短い乾燥時間、例えば、約1、2、3、4、または5時間も可能である。
【0160】
乾燥工程前および/または乾燥工程後に、好ましくは得られた押出物を、例えば、粉砕してもよい。これにより、好ましくは、0.1〜5mm、特には0.5〜2mmの粒径を有する顆粒またはチップが得られる。
【0161】
したがって、本発明はさらに、上記テクトケイ酸塩を含む成形体を製造する方法であって、前記方法によりテクトケイ酸塩を製造する工程と、
(I)上記テクトケイ酸塩または上記方法によって得られるテクトケイ酸塩と、少なくとも1種のバインダー材料とを含む混合物を製造する工程と
(II)当該混合物を混練する工程と、
(III)当該混練された混合物を成形し、少なくとも1種の成形体を得る工程と、
(IV)少なくとも1種の成形体を乾燥する工程と
を含む方法に関する。
【0162】
本発明に関して、工程(IV)は、好ましくはその後に少なくとも1回の焼成工程が実施される。焼成は、一般的に350〜750℃の範囲、好ましくは450〜600℃の範囲の温度で実施される。
【0163】
焼成は、任意の好適なガス雰囲気下で実施可能であり、空気および/または希薄空気が好ましい。その上、焼成は、好ましくは、マッフル炉、回転管状炉、および/またはベルト焼成炉において実施され、焼成の時間は、一般的に、1時間以上、例えば1〜24時間の範囲または3〜12時間の範囲である。したがって、本発明による方法に関して、例えば、各場合において少なくとも1時間、例えば、各場合において3〜12時間の範囲で、成形体を1回、2回、またはそれ以上の回数焼成することも可能であり、焼成工程中において、温度は、一定に維持するか、または連続的もしくは不連続的に変化させてもよい。焼成を2回以上実施する場合、個々の工程における焼成温度は、異なっていてもまたは同一であってもよい。
【0164】
したがって、本発明はさらに、上記テクトケイ酸塩を含む成形体を製造する方法であって、前記方法によりテクトケイ酸塩を製造する工程と、
(I)上記テクトケイ酸塩または上記方法によって得られるテクトケイ酸塩と、少なくとも1種のバインダー材料とを含む混合物を製造する工程と、
(II)当該混合物を混練する工程と、
(III)当該混練された混合物を成形し、少なくとも1種の成形体を得る工程と、
(IV)少なくとも1種の成形体を乾燥する工程と、
(V)少なくとも1種の乾燥した成形体を焼成する工程と
を含む方法に関する。
【0165】
焼成工程の後、焼成された材料を、例えば粉砕してもよい。これにより、好ましくは、0.1〜5mm、特に0.5〜2mmの粒径を有する顆粒またはチップが得られる。
【0166】
乾燥前および/または乾燥後、および/または焼成前および/または焼成後に、少なくとも一種の成形体を、場合により、濃縮ブレンステッド酸もしくは希釈ブレンステッド酸、または2種以上のブレンステッド酸の混合物で処理してもよい。好適な酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸もしくはカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、もしくはポリカルボン酸、例えば、ニトリロ三酢酸、スルホサリチル酸、エチレンジアミン四酢酸、が挙げられる。
【0167】
場合により、この少なくとも1種のブレンステッド酸による少なくとも1回の処理に続いて、少なくとも1回の乾燥工程および/または少なくとも1回の焼成工程が、上記条件下で実施される。
【0168】
本発明による方法のさらなる実施形態において、本発明により得られた成形体に対し、良好な硬化のために水蒸気処理を行ってもよく、好ましくはその後に、再び少なくとも1回の乾燥および/または少なくとも1回の焼成工程を実施する。例えば、少なくとも1回の乾燥工程および/または少なくとも1回の焼成工程に続いて、焼成された成形体を水蒸気処理し、次いで再び少なくとも1回の乾燥および/または少なくとも1回の焼成工程を実施する。
【0169】
本発明により得られた成形体は、1〜20Nの範囲、例えば2〜15N、好ましくは5〜15Nの範囲、より好ましくは10〜15Nの範囲の硬度を有し得る。
【0170】
本発明に関して、上記硬度は、Zwick BZ2.5/TS1S装置において、初期荷重0.5N、初期荷重前進速度10mm/分、およびそれに続く試験速度1.6mm/分で測定した結果を意味すると理解される。当該装置は、固定式ターンテーブルおよび厚さ0.3mmの組み込み式ブレードを有する自由可動式ダイを備えていた。ブレードを有する可動式ダイは、荷重を記録するためのロードセルに接続されており、測定の際、分析される触媒成形体が置かれた固定式ターンテーブルの方へ移動させた。試験機は、測定結果を記録し評価するコンピュータによって制御した。得られた値は、各場合において、10個の触媒成形体についての測定の平均値である。触媒成形体は、円柱形幾何学形状を有し、その平均長さは、直径の約2〜3倍に相当し、厚さ0.3mmのブレードにより成形体が切断されるまで力を増大させて試験を行った。ブレードは、成形物品の長手方向軸に対して直角に使用された。切断に要する力が、切断硬度(単位N)である。
【0171】
本発明に関して、本発明の成形体は、本発明により得られた層状ケイ酸塩を出発材料として製造することも考えられる。この層状ケイ酸塩は、テクトケイ酸塩の使用との関連で、上記工程(I)で、テクトケイ酸塩の代わり、またはテクトケイ酸塩と一緒に使用することができる。
−第一に、当該層状ケイ酸塩が、上記のように(I)において使用する前に、熱水合成の結果として得られた懸濁液から(3)において分離され、その場合、(I)において使用する前に、(3)に続いて(4)/(5)において洗浄および/または乾燥することも考えられる。
−第二に、(I)において使用される前に、当該層状ケイ酸塩が分離されず、むしろ、(2)において得られた、層状ケイ酸塩を含む懸濁液をそのまま、もしくは濃縮した形態において使用することも考えられる。この処理計画は、例えば、成形可能な材料を製造するために使用されるペースト剤、例えば好ましくは水、を加えなくてもよい、またはより少なくて済むという利点を有する。本発明に関して、そのような濃縮懸濁液が使用されるなら、この懸濁液の固形分は、例えば、10〜50質量%の範囲内であってよい。当該濃縮は、例えば、(2)において得られた懸濁液を、蒸発除去により、例えば減圧下で直交流ろ過することにより、または(2)において得られた懸濁液を分割し、その一部から層状ケイ酸塩を分離し、場合により乾燥および/または洗浄し、残りの部分の懸濁液に分離した層状ケイ酸塩を懸濁させることにより、実施することができる。
【0172】
2つの代替手段において考えられる利点は、層状ケイ酸塩を用いて製造された成形体を好適な温度において乾燥および焼成することにより、成形体中でテクトケイ酸塩が形成され、その結果、上記方法と比較して、エネルギー集約的焼成工程、特に(I)においてケイ酸塩を使用する前にテクトケイ酸塩を製造するための焼成工程を省略できることである。
【0173】
使用
本発明は、さらに、分子ふるい、触媒、触媒担体、またはそのバインダーとして、洗浄組成物における吸着剤、顔料、添加剤として、建材の添加剤として、塗料ペーストおよびコーティング剤におけるチキソトロピーのため、流動促進剤および滑沢剤としての用途、紙製品における難燃化剤、補助剤、および充填材として、殺菌組成物、殺真菌性組成物、および/または除草剤組成物中において、イオン交換のため、セラミックの製造のため、ポリマー中における、電気部品、光学部品、または電気光学部品、並びにスイッチ素子またはセンサーにおける、本発明のケイ酸塩、特に、本発明のテクトケイ酸塩の使用および/または本発明の成形体の使用に関する。
【0174】
原則として、本発明のケイ酸塩により触媒作用され得る反応としては、例えば、水素化、脱水素化、オキシ脱水素化、酸化、エポキシ化、重合反応、アミノ化、水和および脱水、求核置換反応および求電子置換反応、付加および脱離反応、二重結合および骨格異性化、脱水素環化、複素環式芳香族の水酸化、エポキシド−アルデヒド転位、メタセシス反応、メタノールからのオレフィン製造、ディールス・アルダー反応、炭素−炭素結合の形成、例えば、オレフィン二量化またはオレフィン三量化、およびアルドール縮合タイプの縮合反応が挙げられる。変換される分子に応じて、触媒反応は、気相中または液相中、あるいは超臨界相中で実施することができる。
【0175】
原則として、本発明のケイ酸塩はさらに、分子ふるいとしても好適である。この場合、本発明の材料における高い内部表面積を利用して、分子サイズにおけるそれらの違いにより分子を分離することは有利に可能である。分離作業に従って、特定の吸着を、気相中または液相中、あるいは超臨界相中において実施することができる。一例として、構造異性体の分離、例えば小分子のn異性体とイソ異性体の分離が挙げられる。本発明に関して、「小分子」は、3.5〜5.5Åの動力学的直径を有する分子を意味する。動力学的直径の定義については、D.W.Breck,Zeolite Molecular Sieves,1974,J.Wiley,pages 634−641を参照のこと。その一例として、n−ブタンとi−ブタンの分離が挙げられる。さらに一例として、例えば、立体配置異性体の分離、例えばシス−ブテンとトランス−ブテンの分離が挙げられる。最後に、これに関連して、液相中におけるオレフィンの分離も一例として挙げられる。そのような分離は、諸条件の中でも特に、使用される溶媒が、ケイ酸塩の細孔直径と等しいかもしくはより大きい動力学的直径を有する化合物の場合、首尾よく実施することができる。これに関連して、一例として、t−ブタノールが挙げられる。さらなる溶媒としては、アルカンまたはアルカン混合物、特にシクロヘキサンが挙げられる。例に挙げた液相中におけるオレフィンの分離に対しては、例えば、ペンテンの分離およびブテンの分離ための溶媒として、シクロヘキサンの使用が挙げられ、その場合、ブテンの分離は、溶媒としてシクロヘキサンを用いた液相におけるペンテンの分離より好ましい。特に、一例として、トランス−2−ブテン/1−ブテンの分離、およびトランス−2−ブテン/イソブテンの分離、および同様に1−ペンテンからのトランス−2−ペンテンの分離が挙げられる。
【0176】
本発明に従って製造されたケイ酸塩、特に、本発明に従って製造されたテクトケイ酸塩のさらなる可能な使用は、例えば、クラッキングプロセス、特に液相におけるクラッキングプロセスにおいて用いられるUSYゼオライト等触媒への添加剤としての使用である。クラッキングプロセスとの関連における一例としては、触媒クラッキングによる低級オレフィン、例えばプロペン、の製造が挙げられる。
【0177】
本発明に従って製造されたケイ酸塩、特に本発明に従って製造されたテクトケイ酸塩のさらなる可能な使用は、触媒として使用されるウォッシュコートとしての使用であり、当該ウォッシュコートはモノリスに適用され、さらに場合により少なくとも1種の貴金属を充填し、特に好ましい例は、窒素酸化物NOX、一酸化炭素、および/または炭化水素を減少させるために使用される自動車触媒である。さらに、一例として、三元触媒、すなわちディーゼルエンジンからの排出ガスのレベルを低下させるために使用される触媒、が挙げられる。
【0178】
その上、本発明および本発明のケイ酸塩に関して、一例として挙げられるのは、少なくとも2種のアルカン、または少なくとも2種のアルケン、または少なくとも2種のアルキン、または少なくとも1種のアルカンおよび少なくとも1種のアルケン、または少なくとも1種のアルケンおよび少なくとも1種のアルキン、または少なくとも1種のアルケンおよび少なくとも1種のアルキン、または少なくとも1種のアルカンおよび少なくとも1種のアルケンおよび少なくとも1種のアルキンを含む物質の混合物からの、少なくとも1種のアルカンおよび/または少なくとも1種のアルケンおよび/または少なくとも1種のアルキンの分離のための使用、特に、構造異性体および/または立体配置異性体の分離のための使用であり、この場合、少なくとも1種のアルカンおよび/または少なくとも1種のアルケンおよび/または少なくとも1種のアルキンは、10個以下の炭素原子、例えば、メタンの場合は1個の炭素原子、または2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有する。
【0179】
同様に、本発明のケイ酸塩、または本発明に従って製造されたケイ酸塩、特にテクトケイ酸塩、またはこのケイ酸塩を含む成形体は、原則として、例えば、
− オレフィンもしくはポリオレフィンと二酸化炭素との分離のため、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンの精製のため、
− またはアミン化のための触媒として、例えば、メタノールおよびアンモニアから、または合成ガスおよびアンモニアから、好ましくはトリエチルアミンの割合が少ない、メチルアミンおよび/またはジメチルアミンを製造するためのアミン化のための触媒として、
− または、例えば、テトラヒドロフランからポリテトラヒドロフランを製造する重合のため、
− または、例えば、ベンゼンからフェノールを調整するためのヒドロキシル化触媒として、
− または、一般的に、6員環の環芳香族環による転化反応のため、
− またはシクロヘキサノンをシクロヘキサノンオキシムへ変換するため、
−または、例えば、シクロヘキサノンオキシムをカプロラクタムへ変換するベックマン転位のため、
− またはC−C三重結合の活性化のため、
− または脱水素環化反応(芳香族化)のため、
に使用することができる。
【0180】
したがって、本発明は、脱水素環化反応のための、Ga−RRO構造のテクトケイ酸塩の使用またはGa−RROを含む成形体の使用に関する。
【0181】
本発明は同様に、C−C三重結合を活性化するための、Zn−RRO構造のテクトケイ酸塩の使用またはZn−RROを含む成形体の使用に関する。
【0182】
驚くべきことに、新規材料、特にRUB−41構造の新規なテクトケイ酸塩が、6員環芳香族環またはヘテロ芳香族環、特にベンゼン、に対して非常に高い吸収能力を有することがわかった。したがって、ベンゼンを含む混合物からのベンゼンの分離に対する当該新規材料の使用が意図される。
【0183】
本発明のテクトケイ酸塩またはこのテクトケイ酸塩を含む成形品は、吸着剤として、例えば物質の分離のための吸着剤として用いる場合、吸着された化合物の脱着は、好適な圧力の低下および/または好適な温度変化、例えば、より好ましくは好適な温度上昇、により実施することができ、および/またはテクトケイ酸塩またはテクトケイ酸塩を含む成形体を、脱着される化合物よりもより強く吸着する少なくとも1種の化合物と接触させることにより実施することができる。
【0184】
再生
本発明による方法のさらなる実施形態において、テクトケイ酸塩および/または成形体は、対象となる技術分野での使用後、性能低下の原因である堆積物を、制御された燃焼により実施される方法において再生される。好ましくは、正確に規定された量の酸素供給物質を含む不活性ガス雰囲気において実施される。このような再生方法の一つは、国際公開第98/55228号および独国特許出願公開第19723949(A1)号、特に独国特許出願公開第19723949(A1)号の第2欄第33行目〜54行目に記載されている。なお、これにより、この文献は、その開示内容全体が参考として本明細書の主題に援用される。
【0185】
再生されるテクトケイ酸塩および/または成形体は、装置、例えば、管状反応器等、または外部オーブンのいずれかにおいて、0.1〜約20体積部の酸素供与物質、より好ましくは0.1〜20体積部の酸素、を含む雰囲気において、250℃〜600℃の範囲の温度、好ましくは400℃〜550℃、特に450℃〜500℃の温度に加熱される。加熱は、好ましくは0.1℃/分〜20℃/分、好ましくは,0.3℃/分〜15℃/分、特に0.5℃/分〜10℃/分の加熱速度で実施される。
【0186】
この加熱段階の間、加熱はほとんどの有機堆積物が分解する温度以下で実施され、同時に、温度は酸素含有量により調整され、それによって、テクトケイ酸塩および/または成形体の構造が損傷する程の温度には上昇しない。適切な酸素含有量および適切な加熱力を確立することによって温度の上昇を遅くし低温度に留めさせることは、多量の有機物が堆積している場合、テクトケイ酸塩および/または成形体の局所的な過熱を防ぐために重要な工程である。
【0187】
ガス流における酸素供与物質の量を増加させても反応器出口での排ガス流の温度が低下する場合は、有機堆積物の燃焼は終了している。処理時間は、一般的に各場合において、1〜30時間、好ましくは約2〜約20時間、特に約3〜約10時間である。
【0188】
それに続いて、このように得られたテクトケイ酸塩および/または成形体を冷却する工程は、好ましくは急激に冷却されない方法で実施される。これは、急激に冷却すると、例えば成形体の機械的安定性が悪影響を受ける可能性があるためである。
【0189】
上記のように、焼成により実施される再生に続いて、反応剤の不純物の結果として残留している無機堆積物(微量位のアルカリ等)を除去するために、水およびまたは希釈酸、例えば塩酸等による浄化を必要とする場合がある。それに続いて、別の乾燥およびまたは別の焼成を実行してもよい。
【0190】
本発明による方法のさらなる実施形態において、使用される特定の技術分野のために少なくとも一部失活させたテクトケイ酸塩およびまたは成形体は、再生手順において加熱する前に、変換反応器または外部反応器中において溶媒で洗浄して、未だに付着している価値ある生成物を分離してもよい。当該洗浄は、特定の価値ある付着生成物を分離できるように実施されるが、有機堆積物も一般的に分離されてしまうような高い温度および圧力は選択しない。好適な溶媒による単なる洗浄が好ましい。したがって、この洗浄作業のためには、特定の価値ある生成物が良好な溶解性を有するすべての溶媒が好適である。使用される溶媒の量および洗浄工程の時間は重要でない。洗浄作業は、二回以上繰り返してもよく、昇温状態で実施してもよい。溶媒としてCO2を使用する場合、超臨界圧力が好ましく、溶媒としてCO2を使用するのでなければ、洗浄作業は、標準圧力下または高圧下または超臨界圧力下で実施することができる。洗浄作業終了後、一般的には乾燥が行われる。乾燥作業は、一般的に重要ではないが、溶媒の急激な蒸発は格子構造を損傷する可能性があるため、細孔、特に微小孔の中の溶媒の急激な蒸発を回避するために、乾燥温度は、洗浄に使用された溶媒の沸点温度を著しくは超えるべきでない。
【0191】
処理の最適化のため、それぞれが本発明のテクトケイ酸塩および/または成形体を含む少なくとも2つの装置を使用することが可能であり、その場合、再生の場合は、常に処理が中断される必要がないように、少なくとも1つの装置は操作が停止され、少なくとも1つの装置が操作中とする。
【0192】
本発明を、下記実施例および図面を参照し詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】実施例2によって得られた、Ga−RUB−41構造のテクトケイ酸塩の粉末X線回折図を示す。粉末X線回折図は、単色Cu Kα1放射線によって記録した。回折データは、位置敏感検出器により5〜65°(2θ)の範囲において収集した。図中、°(度)における角度(2θ)は横座標に示されており、強度は縦座標にプロットされている。
【図2】実施例2によって得られた、Ga−RUB−41構造のテクトケイ酸塩の71Ga NMRを示す。
【図3】実施例2によって得られた、Ga−RUB−41構造のテクトケイ酸塩のFE−SEM画像を示す。
【図4】実施例4によって得られた、Zn−RUB−41構造のテクトケイ酸塩の粉末X線回折図を示す。粉末X線回折図は、単色Cu Kα1放射線によって記録した。回折データは、位置敏感検出器により5〜65°(2θ)の範囲において収集した。図中、°(度)における角度(2θ)は横座標に示されており、強度は縦座標にプロットされている。
【図5】実施例6によって得られた、Zn−RUB−41構造のテクトケイ酸塩のFE−SEM画像を示す。
【0194】
実施例
実施例1:Ga−RUB−39の製造
硝酸ガリウム0.042gを溶解させた脱イオン水1.0g、水のテンプレート溶液(ジメチルジ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)溶液16質量%)11.5g、フュームド・シリカ(Cab−O−Sil M7D)1.48g、および結晶化助剤として0.02gのSi−RUB−39を、コロイド溶液を製造するために使用し、攪拌した。テフロンで裏打ちされたオートクレーブに混合物を移した。7日間150℃でオートクレーブを回転させ、水熱結晶化を行った。Ga−RUB−39が得られ、当該Ga−RUB−39結晶を濾別し、蒸留水で洗浄し、70℃で24時間乾燥させた。
【0195】
実施例2:Ga−RUB−41の製造
実施例1により得られたGa−RUB−39を、540℃で12時間焼成した。収率は約60%であった。得られたGa−RUB−41の相純度は、得られた物質のXRD分析によって示された(図1参照)。SiおよびGaに対するICPによる元素分析は、生成物中におけるSi:Ga比が、約95:1であることを示した。71Ga NMR解析により、得られたGa−RUB−41中におけるGaが、四面体環境におけるケイ酸塩格子中に存在していることを示す可能性があった(図2参照)。得られたGa−RUB−41物質の形態は、FE−SEMによって分析した(図3参照)。
【0196】
実施例3:Zn−RUB−39の製造
硝酸亜鉛0.07gが溶解された脱イオン水1.0g、水のテンプレート溶液(ジメチルジ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)溶液16質量%)11.5g、フュームド・シリカ(Cab−O−Sil M7D)1.48g、および結晶化助剤として0.02gのSi−RUB−39を、コロイド溶液を製造するために使用し攪拌した。テフロンで裏打ちされたオートクレーブに混合物を移した。150℃で8.5日間、オートクレーブを回転させて水熱結晶化を行った。Zn−RUB−39が得られ、当該Zn−RUB−39結晶を濾別し、蒸留水で洗浄し、70℃で24時間乾燥させた。
【0197】
実施例4:Zn−RUB−41の製造
実施例3において得られたZn−RUB−39を、540℃で12時間焼成した。収率は約75%であった。得られたGa−RUB−41の相純度は、得られた物質のXRD分析によって示した(図4参照)。SiおよびZnに対するICPによる元素分析は、生成物中におけるSi:Zn比が、約176:1であることを示した。得られたGa−RUB−41物質の形態は、FE−SEMによって分析した(図5参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともケイ素と、酸素と、GaおよびZnから成る群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子とを含むケイ酸塩を製造する方法であって、
(1)少なくとも1種の二酸化ケイ素源と、R1234+[式中、R1およびR2は、それぞれメチルであり、R3およびR4の両方はn−プロピルである]を含む少なくとも1種のテトラアルキルアンモニウム化合物と、少なくとも1種の塩基と、少なくとも1種の結晶化助剤と、並びにGa源およびZn源から成る群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子源とからコロイド性水溶液を製造する工程と、
(2)工程(1)で得られたコロイド性水溶液を、選択された圧力下におけるコロイド性水溶液の沸点より高い温度から標準気圧における180℃までの範囲の温度に加熱することによって熱水結晶化させて、ケイ素、酸素、並びにGaおよびZnから成る群から選択される少なくともヘテロ原子を含む少なくとも1種のケイ酸塩を含む懸濁液を得る工程と、
を含み、
(1)において使用される該結晶化助剤が、(2)において得られる該ケイ酸塩の構造を有するケイ酸塩である製造方法。
【請求項2】
前記結晶化助剤が、(1)において、二酸化ケイ素に基づいておよび/または二酸化ケイ素前駆体中に存在する二酸化ケイ素に基づいて、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜0.05質量%の量において加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1)で使用される前記結晶化助剤がSi−RUB−39構造の層状ケイ酸塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(1)において使用される前記水溶液が、テトラアルキルアンモニウム化合物としてジメチルジ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド(DMDPAH)を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(1)において得られた前記コロイド性水溶液を場合により濃縮した後、(2)において12〜240時間の範囲、オートクレーブ中で100〜180℃の温度に加熱する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
非晶質二酸化ケイ素が(1)において使用される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記ヘテロ原子源が、硝酸ガリウムおよび/または硝酸亜鉛である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(1)において得られる、場合により濃縮された溶液が、(2)において加熱される前に、SiO2として計算されたケイ素、Ga23として計算されたガリウム、テトラアルキルアンモニウム化合物としてのDMDPAH、水、および結晶化助剤を、
SiO2:Ga23:DMDPAH:水:結晶化助剤が
1:(0.001〜0.05):(0.4〜10):(4〜12):(0.001〜5)
の質量比で、好ましくは、
1:(0.005〜0.02):(1〜2):(10〜12):(0.01〜0.05)
の質量比で含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(1)において得られる、場合により濃縮された溶液が、(2)において加熱される前に、SiO2として計算されたケイ素、ZnOとして計算された亜鉛、テトラアルキルアンモニウム化合物としてのDMDPAH、水、および結晶化助剤を
SiO2:ZnO:DMDPAH:水:結晶化助剤が
1:(0.001〜0.05):(0.4〜10):(4〜12):(0.001〜5)
の質量比で、好ましくは、
1:(0.01〜0.05):(1〜2):(10〜12):(0.01〜0.05)
の質量比で含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(1)において追加的に使用されるさらなる前記ヘテロ原子源が、アルミニウム源、ホウ素源、鉄源、チタン源、スズ源、ゲルマニウム源、ジルコニウム源、バナジウム源、ニオブ源、およびこれらのヘテロ原子源の2種以上の混合物、から成る群から選択されるヘテロ原子源である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法であって、
(3)(2)において得られた前記懸濁液から、ケイ素、酸素、および少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1種の前記ケイ酸塩を分離する工程と、
(4)場合により、(3)において分離された該ケイ酸塩を洗浄する工程、好ましくは水で洗浄する工程と、
(5)(3)または(4)において得られた該ケイ酸塩を、好ましくは室温〜150℃の範囲の温度で乾燥する工程と
をさらに含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、さらに
(6)好ましくは300〜600℃の範囲の温度で、ケイ素、酸素、および少なくとも1種のヘテロ原子を含みかつ(5)において得られる少なくとも1種の前記ケイ酸塩を焼成して、テクトケイ酸塩、好ましくは、X線結晶学においてRRO型に分類されるテクトケイ酸塩を得る工程
を含む方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法によって得られる層状ケイ酸塩。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって得られるテクトケイ酸塩。
【請求項15】
RUB−39構造の層状ケイ酸塩であって、該ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含むケイ酸塩。
【請求項16】
RRO構造のテクトケイ酸塩であって、該ケイ酸塩格子中にGaおよび/またはZnを含むケイ酸塩。
【請求項17】
請求項16に記載の少なくとも1種のテクトケイ酸塩を含む成形体。
【請求項18】
請求項12に記載の方法によるテクトケイ酸塩の製造または請求項16に記載のテクトケイ酸塩の準備、ならびに
(I)前記テクトケイ酸塩と少なくとも1種のバインダー材料とを含む混合物を製造する工程と、
(II)当該混合物を混練する工程と、
(III)当該混練された混合物を成形し、少なくとも1種の成形体を得る工程と、
(IV)少なくとも1種の成形体を乾燥する工程と、
(V)少なくとも1種の乾燥した成形体を焼成する工程と、
を含む、成形体の製造方法。
【請求項19】
脱水素環化反応のための触媒としての、請求項14もしくは16に記載のGa−RRO構造のテクトケイ酸塩の使用、またはGa−RROを含む請求項17に記載の成形体の使用。
【請求項20】
C−C三重結合を活性化するための触媒としての、請求項14もしくは16に記載の、Zn−RRO構造のテクトケイ酸塩の使用またはZn−RROを有する請求項17に記載の成形体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523448(P2010−523448A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501518(P2010−501518)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054046
【国際公開番号】WO2008/122579
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(501253981)ルビテック ゲゼルシャフト フュール イノヴァツィオン ウント テヒノロギー デア ルール−ウニヴェルジテート ボーフム ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】RUBITEC Gesellschaft fuer Innovation und Technologie der Ruhr−Universitaet Bochum mbH
【住所又は居所原語表記】Universitaetsstrasse 150, D−44743 Bochum, Germany
【Fターム(参考)】