説明

ベアリング温度過昇表示器

構成要素の表面に塗られた熱剥離型接着剤と、熱剥離型接着剤によって構成要素の表面に接着された少なくとも1つの鉄金属ワイヤーとを有する非鉄構成要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出器を使用し、非鉄部品の故障の熱的兆候を検出する方法に関する。特に、本発明は熱活性接着剤を用いて鉄金属ワイヤーをギアボックス構成要素に接着する方法、およびこのように構成され、限界温度に達したときにワイヤーが剥離して検出可能となる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギアボックス構成要素の今にも起こりそうな故障の検出は航空機の安全運航に不可欠である。故障を検出する最も一般的な方法は磁性チップ検出器を使用することである。この検出器は、トランスミッションシステムのような単一のモジュールにおける部品の劣化によって発生する磁性粒子を収集し、警告灯やモジュール内で起こり得る故障を示す他の信号を生じさせる。この方法の1つの難点は、部品の故障が(チップを生じさせる)物理的損傷が発生する時点まで進行しないと検出されないことである。これは、時には安全に緊急着陸を行うための十分な時間をパイロットに与えない。
【0003】
チップ検出器の動作の鍵は磁性材料の存在である。1つの磁性チップ、もしくはより小さいチップの集合体が磁性チップ検出器内の隙間を埋めるのに十分な大きさの場合、チップやチップの集合体の存在を検出するための電流路が形成される。ベアリング技術における最近の進歩は非鉄ローラーケージを用いたベアリングに帰する。いくつかの用途において、これらのケージは青銅、ナイロン、複合材料、あるいはPEEKプラスチックから製造される。これらの材料は非鉄なので、これらの材料から製造されたケージの故障は、既知の故障モードでも、検出されない。すなわち、ベアリングの鉄金属(回転要素)部分が劣化する時点まで進行しないと故障が検出されない。さらに、磁性チップ検出器の動作はモジュール内の部品の故障を示すが、モジュール内のどのギアボックス構成要素が故障しているのかを示すことはできない。
【0004】
したがって、非鉄ギアボックス構成要素の故障検出のための方法が必要とされている。好ましくは、そのような検出はその部品の完全な機械故障の前に行われる。さらには、モジュールを構成している複数の部品の中から故障している1つの部品を識別できるような方法であることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、熱活性接着剤を用いて構成要素に鉄金属ワイヤーを接着することによって構成したギアボックス構成要素を提供することである。
【0006】
さらに本発明の目的は、磁気検出器を使用して、非鉄構成要素の故障の熱的兆候を検出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、非鉄構成要素は、構成要素の表面に塗られた熱剥離型接着剤と、熱剥離型接着剤によって構成要素の表面に接着された少なくとも1つの鉄金属ワイヤーとを有する。
【0008】
本発明によると、構成要素の熱劣化を磁気的に検出する方法は、限界温度において分解する熱剥離型接着剤を構成要素の表面に塗るステップと、熱剥離型接着剤を使って複数の鉄金属ワイヤーを構成要素に接着するステップと、構成要素から剥離した複数の鉄金属ワイヤーの少なくとも1つの剥離を検出するステップと、からなる。
【0009】
本発明によると、少なくとも1つのギアボックス構成要素を含む少なくとも1つのモジュールを有するヘリコプターは、ギアボックス構成要素の表面に塗られた熱剥離型接着剤と、熱剥離型接着剤によってギアボックスの表面に接着された少なくとも1つの鉄金属ワイヤーとを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ベアリングケージのような非鉄ギアボックス構成要素の故障に対する早期の警告が、熱活性鉄金属片発生器を用いて行われる方法を提供する。多くのベアリング故障の前兆は運転温度の上昇である。温度上昇の多くは、ケージの故障の際に起こる要素同士の接触、摺動、すべりなどの金属同士の接触によるものである。したがって、本発明は、今にも起こりそうな故障を示す部品温度の上昇を故障の前に識別してこれに対処することができるギアボックス構成要素の構成方法を提供する。
【0011】
図1を参照すると、ヘリコプターのパワートランスミッションシステム17に配置された複数の異なったタイプのベアリング要素の位置づけが示されている。そのようなパワートランスミッションシステム17は単一のモジュールからなる。様々なタイプのローラーベアリングが図示されていて、それらは単一のモジュールに組み込まれていてもよい。特に、円すいローラーベアリング13、ボールベアリング15そして円筒ローラーベアリング11が図示されている。本実施例では、潤滑剤の連続的な流れがそれぞれのベアリングアセンブリ11,13,15を経由して循環する。運転中は潤滑剤がその回路を繰り返し通過するときに、潤滑剤は磁性チップ検出器(図示せず)を通過する。
【0012】
本発明の中心的な特徴は、所望の温度に到達したときにワイヤー片を放す熱剥離型接着剤(thermally−affected adhesive)を使って、細い鉄金属ワイヤー片をベアリング構成要素の外表面に接着することである。図2を参照すると、本発明のローラーベアリングアセンブリ21が詳細に図示されている。円筒ローラーベアリングアセンブリについて図示されているが、本発明にはいかなるベアリングアセンブリもベアリングアセンブリ構成要素も幅広く含まれている。ベアリングアセンブリ21は、ローラー要素24、ケージまたはリテーナ23そしてアウターリング25を含む。インナーリングは図示されていない。
【0013】
本実施例では、複数の鉄金属ワイヤー27が、熱活性接着剤を用いてアウターリング25の外縁に分散して接着される。運転中、鉄金属ワイヤー27は、あらゆる所望の方法で、ベアリングの故障の前に温度上昇が予測されるベアリングアセンブリ21のいかなる構成要素に接着されてもよい。同様に、鉄金属ワイヤー27は、ベアリングが故障する前に温度上昇が予想される、いかなるギアボックス構成要素、部品、または部品アセンブリの表面に接着されてもよい。理想的には、鉄金属ワイヤー27は、磁性チップ検出器によって通常は劣化が検出されない非鉄材料からなる部品に接着される。そのような非鉄材料は、チタン、青銅、アルミニウム、ナイロン、複合材料、PEEKプラスチック、黄銅、マグネシウム、そしてこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0014】
熱活性接着剤は、切迫した故障を示す限界温度に到達した時、1つまたは複数の鉄金属ワイヤー27を放すくらいに接着力が落ちるように選択されている。鉄金属ワイヤー27が接着された構成要素が熱活性接着剤の限界温度を超えると、鉄金属ワイヤー27が放され、潤滑システムを通過し、ベアリングの故障が差し迫っているという早期信号を生成する磁性チップ検出器によって収集される。
【0015】
鉄金属ワイヤー27は、検出器まで容易に運ばれるように十分に小さく、かつチップ検出器のファズバーン(fuzz burn)機能を用いて「焼いて除去する」ことができるほど小さくはない寸法でなければならない。鉄金属ワイヤー27の好ましい直径は0.003インチ〜0.020インチであり、最も好ましい直径は0.010インチ〜0.015インチである。同様に、個々の鉄金属ワイヤー27の好ましい長さは0.005インチ〜0.150インチであり、最も好ましい長さは0.070インチ〜0.130インチである。
【0016】
単一のベアリングアセンブリ27に接着する鉄金属ワイヤー27の均一性を保ちながら、単一のモジュールを構成する複数のベアリングアセンブリ21にそれぞれ接着する鉄金属ワイヤーの長さ、直径、化学組成、および色を変えることは有用である。この方法によれば、磁性チップ検出器によって収集された鉄金属ワイヤー27を調べることによって、どのベアリングアセンブリ21が限界温度を超えているかを特定することができる。
【0017】
ベアリング故障を検出するこの方法は、PEEKを含むいかなる材料で製造されたケージを持つベアリングにも適用されうる。さらに、鉄金属ワイヤー27の用途は、故障や不調の指示器として温度上昇が予想されるいかなる構成要素にも拡大されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】複数のベアリングアセンブリを示すヘリコプタートランスミッションシステムの概略図である。
【図2】本発明の鉄金属ワイヤーを示すベアリングアセンブリの説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素の表面に塗られた熱剥離型接着剤と、
前記熱剥離型接着剤によって前記構成要素の表面に接着された少なくとも1つの鉄金属ワイヤーと、を有することを特徴とする、構成要素。
【請求項2】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、磁気検出器によって検出される十分な長さであることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項3】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、前記磁気検出器のファズバーン機能によって焼いて除去されないくらい十分な長さであることを特徴とする、請求項2記載の構成要素。
【請求項4】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、0.05〜0.15インチの長さであることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項5】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、0.07〜0.13インチの長さであることを特徴とする、請求項2記載の構成要素。
【請求項6】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーの直径は、0.003〜0.020インチであることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項7】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーの直径は、0.010〜0.015インチであることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項8】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の長さであることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項9】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の直径であることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項10】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の色であることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項11】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の化学組成であることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項12】
前記構成要素は、ギアとベアリングからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項13】
前記構成要素は、チタン、青銅、アルミニウム、ナイロン、複合材料、PEEKプラスチック、黄銅、マグネシウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非鉄物質を含むことを特徴とする、請求項1記載の構成要素。
【請求項14】
構成要素の熱劣化を磁気的に検出する方法であって、
限界温度において分解する、熱剥離型接着剤を前記構成要素の表面に塗るステップと、
前記熱剥離型接着剤によって複数の鉄金属ワイヤーを前記構成要素に接着するステップと、
前記構成要素から剥離した前記複数の鉄金属ワイヤーの少なくとも1つの剥離を磁気検出器で検出するステップと、を含み、
前記複数の鉄金属ワイヤーは、前記磁気検出器のファズバーン機能によって焼いて除去されない十分な長さを有することを特徴とする、構成要素の熱劣化を磁気的に検出する方法。
【請求項15】
前記複数の鉄金属ワイヤーの少なくとも1つは、前記熱剥離型接着剤の分解により、前記構成要素から剥離することを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記構成要素を、チタン、青銅、アルミニウム、ナイロン、複合材料、PEEKプラスチック、黄銅、マグネシウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された非鉄物質で構成する付加的なステップを有することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのギアボックス構成要素を含む少なくとも1つのモジュールを有するヘリコプターであって、
前記ギアボックス構成要素の表面に塗られた熱剥離型接着剤と、
前記熱剥離型接着剤によって前記ギアボックスの表面に接着された少なくとも1つの鉄金属ワイヤーと、を有することを特徴とする、ヘリコプター。
【請求項18】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、磁気検出器によって検出される十分な長さであることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項19】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、前記磁気検出器のファズバーン機能によって焼いて除去されないくらい十分な長さであることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター
【請求項20】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、0.05〜0.15インチの長さであることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項21】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、0.07〜0.13インチの長さであることを特徴とする請求項18記載のヘリコプター。
【請求項22】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーの直径は、0.003〜0.020インチであることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項23】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーの直径は、0.010〜0.015インチであることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項24】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の長さであることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項25】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の直径であることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項26】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の色であることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項27】
前記少なくとも1つの鉄金属ワイヤーは、それぞれ同一の化学組成であることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項28】
前記ギアボックス構成要素は、ギアとベアリングからなる群から選択されることを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。
【請求項29】
前記非鉄ギアボックス構成要素は、チタン、青銅、アルミニウム、ナイロン、複合材料、PEEKプラスチック、黄銅、マグネシウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される非鉄物質を含むことを特徴とする、請求項17記載のヘリコプター。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−500529(P2006−500529A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538515(P2004−538515)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/030799
【国際公開番号】WO2004/027362
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(597102912)シコルスキー エアクラフト コーポレイション (24)
【氏名又は名称原語表記】SIKORSKY AIRCRAFT CORPORATION
【Fターム(参考)】