説明

ベシクル水分散液及びその製造方法

【課題】特別な減粘剤を使用していないのにも関わらず、低粘度である高濃度ベシクル水分散液を提供すること。
【解決手段】10〜50質量%のモノ長鎖型カチオン性界面活性剤と、30〜70質量%のジ長鎖型カチオン性界面活性剤と、0〜30質量%のトリ長鎖型カチオン性界面活性剤との混合物を膜形成成分とするベシクルを含むベシクル水分散液であって、該ベシクルは平均粒子径が0.3〜10μmのマルチラメラ構造を有し、ベシクル水分散液の全量を基準にして膜形成成分の総量の濃度が20〜40質量%であり、ベシクル水分散液の25℃における粘度が3000mPa・s以下であるベシクル水分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用の仕上げ剤や化粧料、洗浄剤などに用いることのできるベシクル水分散液及びその製造方法に関し、さらに詳しくは高濃度でかつ低粘度であり、ハンドリング性に優れた高濃度ベシクル水分散液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、カチオン性界面活性剤の液晶構造を利用して、かつカチオン性界面活性剤自身が分散質となってO/Wエマルジョンを生成する二段乳化法が提案されている。この特許ではカチオン性界面活性剤の高濃度化に関しては具体的に明記されていない。更に、膜形成成分を構成する成分にモノ長鎖型カチオン性界面活性剤を含んでいない。
特許文献2は、高濃度カチオン性界面活性剤分散液の大きな問題点である高粘度を解消するために糖アルコール類を添加することでカチオン性界面活性剤の高濃度化を達成している。しかしながら、これら添加物の添加量が多く、コスト面で高価になってしまう。
特許文献3は、攪拌翼の周速度と攪拌翼を通過する液体の線速度を制御することによりカチオン性界面活性剤の高濃度化を達成している。しかしながら、ホモミキサーやウルトラミキサーといった高剪断を付加する装置が必要である。これら装置は汎用装置と比較し高価であり、また高速で運転するため装置負荷が大きくメンテナンスにも負担がかかる。
【0003】
【特許文献1】特開平2-68137号公報
【特許文献2】特開平10-298149号公報
【特許文献3】特開2005-248406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低粘度である高濃度ベシクル水分散液及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、モノ長鎖型カチオン性界面活性剤を10〜50質量%含むモノ、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤の混合物またはモノ、ジおよびトリ長鎖型カチオン性界面活性剤の混合物を膜形成成分として用い、膜形成成分と水相の一部からなる系を、膜形成成分の相転移以上の温度下において低剪断を付加した状態で混練して、液晶を形成させた後、該液晶に水相の残量を添加・混合することで、簡便に高濃度、かつ低粘度のベシクル水分散液を調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、10〜50質量%のモノ長鎖型カチオン性界面活性剤と、30〜70質量%のジ長鎖型カチオン性界面活性剤と、0〜30質量%のトリ長鎖型カチオン性界面活性剤との混合物を膜形成成分とするベシクルを含むベシクル水分散液であって、該ベシクルは平均粒子径が0.3〜10μmのマルチラメラ構造を有し、ベシクル水分散液の全量を基準にして膜形成成分の総量の濃度が20〜40質量%であり、ベシクル水分散液の25℃における粘度が3000mPa・s以下であるベシクル水分散液を提供する。
本発明はまた、(1)膜形成成分に水相の一部を添加して膜形成成分の相転移温度以上の温度において液晶を形成させる工程と、(2)該液晶に水相の残量を添加し、該液晶と水相とを混合して液晶を分散させてベシクル水分散液を得る工程とを含む、前記ベシクル水分散液の製造方法を提供する。 ここで、ベシクルとは膜形成成分が形成する二分子膜からなる球殻状粒子のことであり、マルチラメラ構造とは二分子膜からなる多層構造のことである。
なお、ベシクル形成に使用する上記カチオン性界面活性剤の組成と、形成されたベシクルの膜組成とは、近似しているものの必ずしも一致するわけではない。
【発明の効果】
【0006】
モノ長鎖型カチオン性界面活性剤を10〜50質量%含むモノ、ジ長鎖型カチオン性界面活性剤の混合物またはモノ、ジおよびトリ長鎖型カチオン性界面活性剤の混合物を膜形成成分としたベシクル水分散液は、高濃度でかつ低粘度であり、低剪断力下において簡便に調製することが可能である。本発明のベシクル水分散液は、ハンドリング性及び保存安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明のベシクル水分散液、及びその製造方法について詳細に説明する。
<モノ長鎖型カチオン性界面活性剤>
モノ長鎖型カチオン性界面活性剤としては、特に制限なく使用することができるが、下記一般式(1)、一般式(2)で表されるモノ長鎖型カチオン性界面活性剤、または一般式(1)〜(3)で表されるモノ長鎖型アミンの中和物を含有することが好ましい。特に一般式(1)で表されるモノ長鎖型カチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(1)において、R1〜R3の基は同一でも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基を表す。R1〜R3の基の少なくとも1つが水素原子の場合は一般式(1)は、アミンの中和物を表す。このうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。特に、メチル基又はヒドロキシエチル基が好ましい。R4の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル硫酸基、エチル硫酸基、水酸基等が挙げられる。このうち、ハロゲン原子、メチル硫酸基が好ましく、特に、塩素原子又はメチル硫酸基が好ましい。
【0010】
一般式(2)において、R1〜R3の基は、一般式(1)と同一の意味を有する。R5、R6の基は、どちらか一方が炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。もう一方は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル又は−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基である。このうち、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。Xは、一般式(1)と同一の意味を有する。
一般式(3)において、R7、R8の基は、どちらか一方が炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。もう一方は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基である。このうち、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0011】
上記一般式(1)〜(3)中の長鎖炭素部位は一般的な油脂から誘導される脂肪酸の残基である。油脂としては例えば、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ脂、カポック油、白カラシ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、シナアット油、シナキリ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、木ロウ、落花生油、馬脂、牛脂、牛脚脂、牛酪脂、豚脂、山羊脂、羊脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。これらの油脂を硬化、変性、精製等を行ってもよく、2種以上の油脂を混合しても良い。
【0012】
上記一般式(1)及び一般式(2)のモノ長鎖型カチオン性界面活性剤の具体例としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、牛脂トリメチルアンモニウムクロリド、ヤシ油トリメチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オレオイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、N−ステアロイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−ステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、1−タローイルオキシ−2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパンクロリド、N−オレオイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−リノーレイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−パルミオイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−パ−ムオイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、N−ステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−リノーレイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−パルミオイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−パ−ムオイルオキシエチル−N−メチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートが好ましい。
【0013】
上記一般式(1)及び一般式(2)のモノ長鎖型カチオン性界面活性剤がアミンの中和物及び一般式(3)がモノ長鎖型イミダゾリン塩の場合、その中和は通常の酸を用いることができる。上記酸としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アクリル酸等の有機酸等が挙げられる。
上記一般式(1)及び一般式(2)のモノ長鎖型アミンの中和物としては、例えば、ステアリルジメチルアミン塩酸塩、オレイルジメチルアミン塩酸塩、ステアリルジメチルアミン硫酸塩、N−ステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン塩酸塩、N−オレオイルオキシエチル−N−,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミン硫酸塩、1−ココイルオキシ−2−ヒドロキシ−3−ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記一般式(3)のモノ長鎖型イミダゾリン塩の具体例としては、1−ステアロイルオキシエチル−2−メチルイミダゾリン塩酸塩、1−ステアロイルオキシエチル−2−エチルイミダゾリン塩酸塩、1−ステアロイルオキシエチル−2−プロピルイミダゾリン塩酸塩などが挙げられる。
モノ長鎖型カチオン性界面活性剤は、膜形成成分の全量を基準にして、10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%で使用するのが好ましい。膜形成成分の全量を基準にした質量が10質量%未満であると、増粘する場合がある。
モノ長鎖型カチオン性界面活性剤とジ長鎖型カチオン性活性剤との質量比は0.20〜0.95、好ましくは0.30〜0.85、より好ましくは0.40〜0.75の範囲で使用するのが好ましい。該質量比が0.20未満であると増粘する場合があり、0.95より大きいとベシクルを形成しないことがある。
【0014】
<ジ長鎖型カチオン性界面活性剤>
ジ長鎖型カチオン性界面活性剤としては、特に制限なく使用することができるが、下記一般式(4)、一般式(5)で表されるジ長鎖型カチオン性界面活性剤、または一般式(4)〜(6)で表されるジ長鎖型アミンの中和物を含有することが好ましい。特に一般式(4)で表されるジ長鎖型カチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。














【0015】
【化2】

【0016】
一般式(4)において、R9〜R10の基は同一でも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基を表す。R9〜R10の基の少なくとも1つが水素原子の場合、一般式(4)はアミンの中和物を表す。このうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。特に、メチル基又はヒドロキシエチル基が好ましい。R11〜R12の基は同一でも異なっていても良く、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル硫酸基、エチル硫酸基、水酸基等が挙げられる。このうち、ハロゲン原子、メチル硫酸基が好ましく、特に、塩素原子又はメチル硫酸基が好ましい。
【0017】
一般式(5)において、R13〜R15の基は、同一でも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基を表す。このうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。R16〜R17の基は同一でも異なっていても良く、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。Xは、一般式(4)と同一の意味を有する。
一般式(6)において、R18〜R19の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。
【0018】
上記一般式(4)〜(6)中の長鎖炭素部位は一般的な油脂から誘導される脂肪酸の残基である。油脂としては例えば、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ脂、カポック油、白カラシ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、シナアット油、シナキリ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、木ロウ、落花生油、馬脂、牛脂、牛脚脂、牛酪脂、豚脂、山羊脂、羊脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。これらの油脂を硬化、変性、精製等を行ってもよく、2種以上の油脂を混合しても良い。
【0019】
上記一般式(4)、一般式(5)で表されるジ長鎖型カチオン性界面活性剤の具体例としては、N−,N−ジオクチル−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジドデシル−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジヘキサデシル−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジ牛脂−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジヤシ油−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジオクタデシル−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジステアロイルオキシエチル−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジオレオイルオキシエチル−N−,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−パルミオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−パームオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、1−,2−ジタローイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパンクロリドなどを挙げることができる。このうち、N−,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−パルミオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−リノーレイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−パームオイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートが好ましい。
【0020】
上記一般式(4)及び一般式(5)のジ長鎖型カチオン性界面活性剤がアミンの中和物及び一般式(6)がジ長鎖型イミダゾリン塩の場合、その中和は通常の酸を用いることができる。上記酸としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アクリル酸等の有機酸等が挙げられる。
上記一般式(4)及び一般式(5)のジ長鎖型アミンの中和物としては、例えば、ジステアリルメチルアミン塩酸塩、ジオレイルメチルアミン塩酸塩、ジステアリルメチルアミン硫酸塩、N−,N−ジステアロイルオキシエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン塩酸塩、N−,N−ジオレオイルオキシエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン硫酸塩、1,2−ココイルオキシ-3-ジメチルアミン塩酸塩、N-(3-オクタデカノイルアミノプロピル)−N−(2−オクタデカノイルオキシエチル−N−メチルアミン塩酸塩などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記一般式(6)のジ長鎖型イミダゾリン塩の具体例としては、1,2−ステアロイルオキシエチルイミダゾリン塩酸塩、1,2−ステアロイルオキシエチルイミダゾリン塩酸塩、1,2−ステアロイルオキシエチルイミダゾリン塩酸塩などが挙げられる。
ジ長鎖型カチオン性界面活性剤は、膜形成成分の全量を基準にして、30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%、より好ましくは45〜55質量%で使用するのが好ましい。30質量%未満の場合、ベシクルを形成しないことがある。
【0021】
<トリ長鎖型カチオン性界面活性剤>
トリ長鎖型カチオン性界面活性剤としては、特に制限なく使用することができるが、下記一般式(7)で表されるトリ長鎖型カチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
一般式(7)において、R20の基が水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜3の数である)で表される基又はベンジル基を表す。R20の基が水素原子の場合、一般式(7)はアミンの中和物を表す。このうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。特に、メチル基又はヒドロキシエチル基が好ましい。R21〜R23の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていても良い。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル硫酸基、エチル硫酸基、水酸基等が挙げられる。このうち、ハロゲン原子、メチル硫酸基が好ましく、特に、塩素原子又はメチル硫酸基が好ましい。
【0024】
上記一般式(7)中の長鎖炭素部位は一般的な油脂から誘導される脂肪酸の残基である。油脂としては例えば、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ脂、カポック油、白カラシ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、シナアット油、シナキリ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、木ロウ、落花生油、馬脂、牛脂、牛脚脂、牛酪脂、豚脂、山羊脂、羊脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。これらの油脂を硬化、変性、精製等を行ってもよく、2種以上の油脂を混合しても良い。
【0025】
上記一般式(7)のトリ長鎖型カチオン性界面活性剤の具体例としては、N−,N−,N−トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリドデシル−N−メチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリヘキサデシル−N−メチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリ牛脂−N−メチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリヤシ油−N−メチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリデシル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリデシル−N−メチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリオレオイルオキシ−N−メチルアンモニウムクロリド、N−,N−,N−トリステアロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリステアロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリオレオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリオレオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリリノーレイルオキシエチル−N−メチル−アンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリパルミオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリパ−ムオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、N−,N−,N−トリステアロイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリオレオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリリノーレイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリパルミオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N−,N−,N−トリパ−ムオイルオキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートが好ましい。
【0026】
上記一般式(7)トリ長鎖型カチオン性界面活性剤がアミンの中和物の場合、その中和は通常の酸を用いることができる。上記酸としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アクリル酸等の有機酸等が挙げられる。
上記一般式(7)のトリ長鎖型アミンの中和物としては、例えば、トリステアリルアミン塩酸塩、トリオレイルアミン塩酸塩、トリステアリルアミン硫酸塩、N−,N−,N−トリステアロイルオキシエチルアミン塩酸塩、N−,N−,N−トリオレオイルオキシエチルアミン硫酸塩、などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
トリ長鎖型カチオン性界面活性剤は、膜形成成分の全量を基準にして、0〜30質量%、好ましくは10〜25質量%で使用する。
【0027】
<その他の成分>
本発明のベシクル水分散液では、上記カチオン性界面活性剤混合物による膜形成を容易にするため、膜形成成分と共にエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールやエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールなどの有機溶剤、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤等の各種乳化剤などの添加剤を通常の使用量で配合することも出来る。
本発明において使用できるノニオン性界面活性剤の具体例としては、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリル、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット、POE(20)ひまし油、POE(40)ひまし油、POE(20)硬化ひまし油、POE(40)硬化ひまし油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25EO)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO)、POE(20)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(20)イソデシルエーテル、POE(60)イソヘキサデシルエーテル、POE(45)イソトリデシルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(25)オクチルドデシルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(7.5)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ステアリルアミン、POE(15)ステアリン酸アミドなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、POE(45)イソトリデシルエーテル、POE(60)イソヘキサデシルエーテル、テトラオレイン酸POE(60)ソルビットが好ましい。
上記ノニオン性界面活性剤のベシクル水分散液中の配合量は、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜5重量%であるのが好ましい。
【0028】
膜形成成分を分散させる水相には水の他に乳化剤、分散安定剤、低温安定化剤、無機塩類、色素及びその他の各種水溶性有効成分の混合物を用いることができる。具体的には、乳化剤としてポリオキシエチレノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレアルキルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコール等のノニオン性界面活性剤など、分散安定剤としてポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマーなど、低温安定化剤としてエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど、無機塩類として塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの塩酸塩、硫酸ナトリウム塩等の硫酸塩など、色素としてアシッドレッド138、アシッドブルー9、アシッドイエロー141、リアクティブブルー、その他の水溶性有効成分としてイソチアゾロンなどの抗菌剤、ヒドロキシエタンジホスホン酸などの酸化防止剤などが挙げられる。なお、上記水相成分の使用量は通常量とすることが出来る。
本発明の中で、膜形成成分として加水分解基を有するカチオン性界面活性剤を使用する場合、ベシクル水分散液のpHによっては、膜形成成分が保存中に加水分解を起こすことがあるため、通常、ベシクル水分散液のpHを加水分解基の安定化領域であるpH2〜5に酸性化合物で調製することが行われており、本発明の製法により得られるベシクル水分散液も上記pHに調整することが望ましい。この場合、酸性化合物としては、例えば塩酸、硫酸、クエン酸、リン酸等の水溶液が好適に使用される。酸性化合物は水相に添加してもよく、乳化後に添加してもよく、分割して添加しても構わない。
【0029】
本発明のベシクル水分散液に使用するカチオン性界面活性剤混合物及び必要により使用するノニオン性界面活性剤は、界面活性剤製造時に使用する水や有機溶媒を除去することなく使用することができる。この場合、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤からの持ち込みの水、溶剤があっても構わない。但し、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤と精製水若しくは有機溶媒の比率は、質量比で好ましくは10:1〜1:1、より好ましくは8:1〜3:1である。水の量がこのような範囲であれば、膜形成成分がゲル化増粘することなく、容易に乳化できるので好ましい。溶剤の量がこのような範囲であれば、容易に乳化及び粒子化することができ、得られるベシクル水分散液の安定性も良好な範囲であるので好ましい。
カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤からの持ち込みの有機溶媒の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
【0030】
本発明のベシクル水分散液中の膜形成成分の濃度は、20〜40質量%、好ましくは25〜40質量%である。40質量%を超えると、粘度が高くハンドリング性が悪くなる場合があり、20質量%未満のとき高濃度化することで得られるメリットが失われる場合がある。
本発明のベシクル水分散液の良好なハンドリング性が得られる粘度は、25℃において3000mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは10mPa・s以上2000mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以上1000mPa・s以下である。
本発明のベシクル水分散液中のベシクルの平均粒子径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.4〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2μmである。平均粒子径がこのような範囲にあると、ベシクルの保存安定性の点で好ましい。
本発明のベシクル水分散液は、このベシクル水分散液のみで製品化することも可能であり、さらに他の製品にこのベシクル水分散液を原料として配合することもできる。したがって、これらのベシクル水分散液は、衣料用仕上げ剤や化粧料、洗浄剤などとしてそのまま使用することもでき、またこれらの原料として他の原料を混ぜて使用することもできる。
【0031】
本発明のベシクル水分散液を製造する手段は特に制限されないが、(1)上記膜形成成分に水相の一部を添加して膜形成成分の相転移温度以上の温度下において液晶を形成させる工程と、(2)該液晶に水相の残量を添加し、液晶と水相とを混合して液晶を分散させてベシクル水分散液を得る工程により製造する方法が好適である。
<工程(1)>
膜形成成分に添加する水相の量は特に限定されないが、マルチラメラ構造を有する液晶形成の観点から、膜形成成分の全量を基準にして、0.7〜3倍量であるのが好ましく、1〜2.3倍量であるのがより好ましい。
液晶を形成させる温度は、膜形成成分の相転移温度より2〜20℃高いのが好ましく、相転移温度より5〜15℃高いのが好ましい。相転移温度より2℃高い温度未満の温度では、膜形成成分が固化する恐れがあり、相転移温度より20℃高い温度より高い温度では、低級アルコール使用時に該低級アルコールが揮発することがある。膜形成成分の相転移温度は示差走査熱量計により測定することができる。
液晶中の膜形成成分濃度は、好ましくは25〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。25質量%未満のとき又は60質量%を超えると、マルチラメラ構造を有する液晶が形成されないことがある。
【0032】
液晶を形成させるには、膜形成成分と水相とを攪拌することにより行うことができる。<撹拌装置>
通常は乳化分散にホモミキサー、ウルトラミキサー、フィルミックス、マイルダー、クレアミックスなどの高剪断の乳化装置が使われるが、本発明においては、プロペラ羽根やパドル羽根などの一般的な低剪断の攪拌装置を用いることができる。低剪断とは、通常の攪拌操作で用いられるプロペラ羽根やパドル羽根による攪拌剪断下のレベルである。剪断力は通常固定された壁と移動していると壁との間に生ずるずり速度のことであるが、攪拌槽を考えると槽璧を固定壁、攪拌羽の先端を移動壁とみなして以下の数式によって定義される。
ずり速度γ=2π×n×d/(D-d) 単位[1/s]
(但し、nは羽根回転数[rps]、dは羽根径[m]、Dは攪拌槽径[m]である。)
【0033】
プロペラ羽根やパドル羽根を設置した攪拌層を用いる場合には、邪魔板を設置して混合力を高めても構わない。
ずり速度は、好ましくは10[1/s]〜80[1/s]、より好ましくは20[1/s]〜80[1/s]、さらに好ましくは30[1/s]〜80[1/s]である。80[1/s]を超えると、装置負荷が大きくなることがあるので好ましくない。10[1/s]未満であると、均一に混合できないことがある点で好ましくない。
本発明は、このような混練工程によって、膜形成成分と水相の一部とからなる混合液から液晶を形成するものであるが、液晶を形成したことの確認は、偏光顕微鏡によりマルチラメラ構造を有する液晶の存在を示す十字ニコル像の有無を観察することにより行うことができる。
【0034】
<工程(2)>
得られた液晶に残りの水相を添加する場合、該水相を、液晶形成時の水相の温度と同じ温度に設定するのが好ましい。
液晶と水相とを混合するには、工程(1)で使用した攪拌装置と同じものを使用することができる。ずり速度は、工程(1)におけるずり速度と同じでも異なっていても良いが、好ましくは10[1/s]〜300[1/s]、より好ましくは20[1/s]〜280[1/s]、さらに好ましくは30[1/s]〜250[1/s]である。300[1/s]を超えると、装置負荷が大きくなることがあるので好ましくない。10[1/s]未満であると、液晶を均一に分散できないことがある。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、表中の%は質量%を意味する。
<膜形成成分>
膜形成成分として表1に示すカチオン性界面活性剤の混合物を用意した。ジ長鎖型カチオン性界面活性剤に対するモノ長鎖型カチオン性界面活性剤の質量比は成分aが0.51、成分bが0.64、成分cが0.17である。
膜形成成分の相転移温度は成分a、bはエタノールで85%に希釈し、成分cはエタノールで75% に希釈した後、示差熱走査熱量計(TAS200、(株)リガク製)を用いて測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
[実施例1]
エタノールで85%に希釈した成分a (58.8g)と、水相(精製水(132.6g)と精製水で75%に希釈したノニオン性界面活性剤(2.7g)水溶液を混合) を予め50℃に加温した。膜形成成分全量を500mLビーカー(撹拌槽径D:85mm)に仕込み、水相の一部(87.9g)をバッチ式のパドルミキサーで撹拌しながら添加し、50℃で2分間混練して液晶を形成した。
ここで形成された液晶に、予め50℃に加熱しておいた残りの水相(47.4g)及び、17%塩化カルシウム水溶液(5.9g)を添加し均一になるまで3分間程度混合して、液晶を分散させ、ベシクルの水性分散液を得た。この時のパドルミキサーの撹拌条件は4枚傾斜羽根パドル2段組(羽根径d:60mm、d/D:0.71、羽根幅:10mm、傾斜角:45度)を羽根からの吐出流が撹拌槽底に向かうように回転させ、液晶形成時のずり速度を73[1/s]、液晶分散時のずり速度を160[1/s]とした。
【0038】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、膜形成成分を成分bに変更して、実施例2のベシクル水分散液を得た。
[実施例3]
実施例1と同様の方法で、液晶形成時の水相の重量を33.8g、液晶分散時の水相の重量を101.5gに、実施例3のベシクル水分散液を得た。
[実施例4]
実施例1と同様の方法で、膜形成成分の重量を70.6g、水相中の精製水の重量を120.8g、液晶形成時の水相の重量を98.8g、液晶分散時の水相の重量を24.7gに変更、撹拌装置をプロペラミキサーに、撹拌条件を3枚プロペラ羽根2段(羽根径d:57mm、d/D:0.67、羽根幅22mm、傾斜角45度) を羽根からの吐出流が撹拌槽底に向かうように回転させ、液晶形成時のずり速度を64[1/s]に変更して実施例3のベシクル水分散液を得た。
【0039】
[実施例5]
実施例1と同様の方法で、膜形成成分の重量を82.4g、水相中の精製水の重量を109.1g、液晶形成時の水相の重量を100.6g、液晶分散時の水相の重量を11.2gに、液晶形成時のずり速度を36[1/s]に変更して、実施例4のベシクル水分散液を得た。
[実施例6]
実施例5と同様の方法で、液晶形成時のずり速度を15[1/s]に変更して、実施例7のベシクル水分散液を得た。
【0040】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で、膜形成成分の重量を117.7g、水相中の精製水の重量を73.8g、液晶形成時の水相の重量を76.5g、液晶分散時の水相の重量を0gに変更して、比較例1のベシクル水分散液を得た。
[比較例2]
実施例6と同様の方法で、液晶形成時の撹拌装置としてホモミキサー(T.K.ホモミクサーMARK II2.5型、プライミクス(株)製)を用い、液晶形成時、液晶分散時のずり速度を15000[1/s]に変更して、比較例2のベシクル水分散液を得た。
[比較例3]
実施例1と同様の方法で、膜形成成分をエタノールで75%に希釈した成分cに、膜形成成分の重量を93.3g、水相中の精製水の重量を98.1g、液晶形成時の水相の重量を90.7g、液晶分散時の水相の重量を10.1gに、液晶形成時のずり速度を73[1/s]に変更して、比較例3のベシクル水分散液を得た。
【0041】
得られたベシクル水分散液につき、以下の評価を行った。結果を表2に併記する。
<ベシクルの確認方法>
分散液を偏光顕微鏡を用いて直交偏光条件下において600倍で観察し、マルチラメラ構造を持つベシクルの存在を示す十字ニコル像が現れたか否かを調べ、以下の判定基準によって判定した。
<判定基準>
偏光レンズの有無で十字ニコルの見える割合が
◎:70%以上100%以下
○:40%以上70%未満
△:10%以上40%未満
×:0%以上10%未満
【0042】
<ベシクル水分散液の粘度測定方法>
調整したベシクル水分散液の25℃で1週間保存後の粘度を、BL型回転粘度計((株)東京計器製)を使用し25℃において回転数30回転/分、測定時間20秒、ロータは粘度1000mPa・s以下の場合にはNo.2ロータ、1000mPa・sを超える場合はNo.3ロータを用い測定した。
<平均粒子径測定方法>
粒度分布計(レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920、(株)堀場製作所製)を用いて、調製したベシクル水分散液中のベシクルの体積平均粒子径を測定した。
【0043】
【表2】

【0044】
表2によれば、本発明(実施例1〜6)の場合、25℃保存1週間後の粘度は3000mPa・s以下でハンドリング性に優れた、マルチラメラからなるベシクル水分散液散が得られた。
それに対して、比較例1のようにベシクル水分散液中のカチオン性界面活性剤濃度を45%と高くした場合、比較例2のように、液晶形成時にホモミキサーを用い高剪断を付加した場合、比較例3のようにジ長鎖型カチオン性界面活性剤に対するモノ長鎖型カチオン性界面活性剤の質量比が0.17である膜形成成分を用いた場合には、粘度が3000mPa・sを超えハンドリング性が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜50質量%のモノ長鎖型カチオン性界面活性剤と、30〜70質量%のジ長鎖型カチオン性界面活性剤と、0〜30質量%のトリ長鎖型カチオン性界面活性剤との混合物を膜形成成分とするベシクルを含むベシクル水分散液であって、該ベシクルは平均粒子径が0.3〜10μmのマルチラメラ構造を有し、ベシクル水分散液の全量を基準にして膜形成成分の総量の濃度が20〜40質量%であり、ベシクル水分散液の25℃における粘度が3000mPa・s以下であるベシクル水分散液。
【請求項2】
モノ長鎖型カチオン性界面活性剤とジ長鎖型カチオン性界面活性剤との質量比が0.20〜0.95である請求項1記載のベシクル水分散液。
【請求項3】
(1)膜形成成分に水相の一部を添加して膜形成成分の相転移温度以上の温度において液晶を形成させる工程と、(2)該液晶に水相の残量を添加し、該液晶と水相とを混練して液晶を分散させてベシクル水分散液を得る工程とを含む、請求項1に記載のベシクル水分散液の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)で得られる液晶中の膜形成成分の濃度が25〜60質量%であることを特徴とする請求項3のベシクル水分散液の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、膜形成成分と水相の一部とを、5[1/s]〜80[1/s]のずり速度γで混練することにより液晶を形成させることを特徴とする請求項3又は4記載のベシクル水分散液の製造方法。

【公開番号】特開2007−268526(P2007−268526A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56642(P2007−56642)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】