説明

ベルトの製造方法

【課題】 人間工学に基づき、着用感及び外観に優れたベルトを長尺物として製造し、使用の際に適当な長さに切断してスラックス、スカート、下着等の腰部に取り付け可能で、保管にも便利なベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】 直線帯状の織物又は編物の一方の縁を拡開するように機械的負荷を加えながら、直線帯状の織物又は編物の表面に高周波振動を付加する。予め曲線帯状に形成された織物又は編物に高周波振動を付加してもよく、予め曲線帯状に形成された織物又は編物の凸側の縁を拡開するように機械的負荷を加えながら、曲線帯状の織物又は編物の表面に高周波振動を付加してもよい。高周波振動を超音波を使用して付与することができる。織物又は編物に高周波振動を付加する前に、一表面に、粉状又はドットプリント状の接着剤を塗布してもよい。接着剤によりアイロン等で熱を加えるだけで下着等の腰部に貼着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラックス、スカート等の腰部に装着されるインサイドベルト、下着の腰部の外側に装着されるベルト、並びに、ジーンズパンツ、スポーツパンツ等のスラックス及びスカートの腰部の外側に装着されるベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の体の腰部は曲面状であるため、スラックス、スカート、下着等に用いるものとして、図7に示すように、上部が凹状になるような円弧状にインサイドベルト30を形成すると、図8に示すように、インサイドベルト30が腰部に密着し、反り返りもなく、インサイドベルト30の上部と腰との間に隙間ができることもなく、起居・座位状態、食後等においても腰部の伸度に追従し、着用感が良好で、外観にも優れる。
【0003】
そこで、本出願人は、人間工学に基づき、着用感及び外観に優れたインサイドベルトを提供するとともに、安価にインサイドベルトを製造する方法として、特許文献1に記載のインサイドベルトの製造方法について特許を取得した。
【0004】
この方法は、織組織によって上部が凹状になるような円弧状に形成されたことを特徴とするインサイドベルトを製造するにあたって、伸縮性の経糸と、伸縮性を有しない経糸及び緯糸とによって織り組織を構成する際に、隣接する伸縮性経糸の間に配置された非伸縮性経糸の本数を、インサイドベルトの下部から上部に向かうに従って減少させたことを特徴とする。
【0005】
【特許文献1】特許第3361508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のインサイドベルトの製造方法においては、図7に示すような短尺物しか製造することができず、生産性に劣り、製造コストが上昇するとともに、保管に不便であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、人間工学に基づき、着用感及び外観に優れたベルトを長尺物として製造し、使用の際に適当な長さに切断してスラックス、スカート、下着等に取り付けることができ、保管にも便利なベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ベルトの製造方法であって、直線帯状の織物又は編物の一方の縁を拡開するように機械的負荷を加えながら、該直線帯状の織物又は編物の表面に高周波振動を付加することを特徴とする。
【0009】
そして、本発明によれば、長尺物の直線帯状の織物又は編物に機械的負荷及び高周波振動付加するだけで、直線帯状の織物又は編物に円弧状のカーブを付けることができ、できあがった長尺物のベルトを適当な長さに切断して使用することができる。これによって、生産性に優れるとともに、保管にも便利なベルトを提供することができる。
【0010】
また、本発明は、ベルトの製造方法であって、予め曲線帯状に形成された織物又は編物に高周波振動を付加することを特徴とする。予め曲線帯状に形成された長尺物の織物又は編物に高周波振動を加えることにより、織組織又は編組織を安定させることができ、ベルトの円弧状のカーブを長期にわたって維持することができる。
【0011】
さらに、本発明は、ベルトの製造方法であって、予め曲線帯状に形成された織物又は編物の凸側の縁を拡開するように機械的負荷を加えながら、該曲線帯状の織物又は編物の表面に高周波振動を付加することを特徴とする。予め曲線帯状に形成された長尺物の織物又は編物にさらに機械的負荷及び高周波振動を付加することにより、円弧状のカーブをさらに大きくするとともに、織組織又は編組織を安定させることができ、曲線帯状を長期にわたって維持することができる。
【0012】
前記高周波振動を超音波を使用して付与することができる。これによって、簡易な装置で生産性よくベルトを製造することができる。
【0013】
前記ベルトの製造方法において、前記予め曲線帯状に形成された織物は、伸縮性の経糸と、伸縮性を有しない経糸及び緯糸とによって織り組織を構成する際に、凹側となる縁に近接する部分に他の伸縮性の経糸よりも大径の伸縮性の経糸を配置するようにしてもよい。これによって、円弧状のカーブを形成した長尺の曲線帯状の織物を提供することができ、ベルトの製造に用いることができる。
【0014】
前記ベルトの製造方法において、前記織物又は編物に高周波振動を付加する前に、前記織物又は編物の一表面に、粉状又はドットプリント状の接着剤を塗布することができる。これによって、アイロンや、接着プレス機等で熱を加えるだけでベルトを簡単にスラックス、スカート等のインサイドベルトとして使用することができる。これにより、見栄えが向上するとともに、ユニバーサルデザインに寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、着用感及び外観に優れたベルトを長尺物として製造し、使用の際に適当な長さに切断してスラックス、スカート、下着等に取り付けることができ、保管にも便利なベルトの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明にかかるベルトの製造方法を実施するための装置の一例を示す概略図である。このベルト製造装置1は、直線帯状又は曲線帯状の30m程度の長尺織物を巻回した巻回装置2と、本体3と、織物20を案内するための案内ピン4、リール5、案内板6、及び、矢印方向に織物20を押圧して織物20の動きを規制する付勢部材7と、織物20を超音波振動子9の方に押圧しながら回転するローラ8と、先端部9aから超音波を発する超音波振動子9と、織物20を搬送するための搬送ローラ10、11とで構成される。
【0017】
ローラ8は、図2に示すように、下方から上方に向かって径が大きくなるようなテーパー状に形成され、超音波振動子9の先端部9aの表面がローラ8の回転軸8aに対して垂直な方向に延設されている。これによって、織物20には、ローラ8の表面と先端部9aとで挟まれた織物20の上方の縁の近傍が拡開する方向に力を加えられながら、先端部9aから発せられる超音波によって高周波振動が付与される。
【0018】
次に、上記ベルト製造装置1を用いた本発明にかかるベルトの製造方法について説明する。
【0019】
本発明では、直線帯状の織物を利用する場合と、予め円弧状のカーブを備えた曲線帯状の織物を利用する場合があるので、まず、直線帯状の織物を利用する場合について説明する。
【0020】
直線帯状の織物は、例えば、伸縮性を有する経糸と、伸縮性を有しない経糸とを織物の幅方向に所定の割合で均一に配置し、伸縮性を有しない緯糸とで織組織を形成する。例えば、伸縮性を有する経糸としてポリウレタンを用い、非伸縮性の経糸としてポリエステルを用い、図3に示すように、非伸縮性の経糸を3本おきに伸縮性を有する経糸を配置する。尚、両縁については、伸縮性緯糸を2本連続で配置している。緯糸には、300dの非伸縮性のポリエステルを用いる。
【0021】
上記のようにして得られた直線帯状の織物を、図1の巻回装置2に巻回し(以下、この直線帯状の織物を「織物20」という)、案内ピン4、リール5、案内板6及び付勢部材7を経由して、ローラ8と超音波振動子9との間に供給し、搬送ローラ10、11によって織物20を搬送しながら、図2に示すように、織物20の上方の縁の近傍が拡開する方向に力を与えながら、ローラ8と先端部9aの表面によって把持し、先端部9aから、19kHz〜23kHz程度の超音波を発する。
【0022】
このようにして製造されたベルトは、図4に示すように、弦の長さ100cmに対して、弦の中心から外側の円弧を部分まで3〜15cmのカーブを有するものとなる。
【0023】
次に、予め円弧状のカーブを備えた曲線帯状の織物を利用する場合のベルトの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示した織物20を予め曲線帯状に形成する場合には、伸縮性の経糸と、伸縮性を有しない経糸及び緯糸とによって織り組織を構成する際に、凹側となる縁に近接する部分に他の伸縮性の経糸よりも大径の伸縮性の経糸を配置する。
【0025】
例えば、伸縮性を有する経糸としてポリウレタンを用い、非伸縮性の経糸としてポリエステルを用い、図5に示すように、非伸縮性の経糸を3本おきに伸縮性を有する経糸を配置するとともに、カーブの内側、すなわち、凹側となる縁に近い部分により大径の糸を配置する。図示の例では、ほとんどの伸縮性経糸を1680dとし、凹側となる縁に近い部分に2240dの伸縮性経糸を配置している。尚、両縁については、伸縮性緯糸を2本連続で配置している。緯糸には、300dの非伸縮性のポリエステルを用いる。
【0026】
上記のようにして得られた直線帯状の織物を、図1の巻回装置2に巻回し(以下、この直線帯状の織物を「織物20」という)、案内ピン4、リール5、案内板6及び付勢部材7を経由して、ローラ8と超音波振動子9との間に供給し、搬送ローラ10、11によって織物20を搬送しながら、図2に示すように、織物20の上方の縁の近傍が拡開する方向に力を与えながら、ローラ8と先端部9aの表面によって把持し、先端部9aから、19kHz〜23kHz程度の超音波を発する。
【0027】
このようにして製造されたベルトは、図6に示すように、弦の長さ100cmに対して、弦の中心から円弧を部分まで10〜20cmのカーブを有するものとなる。
【0028】
また、図1に示した織物20に高周波振動を付加する前に、織物20の一表面に、粉状、又は半練り状の糊を点状に塗布して乾燥させたドットプリント状の接着剤を塗布することができる。これによって、アイロン等で熱を加えるだけでベルトを簡単にスラックス、スカート、下着等の腰部に装着することができる。
【0029】
尚、上記実施の形態においては、織物のベルトを製造する場合について説明したが、編物のベルトについても同様の方法で製造することができる。
【0030】
以上のようにして製造されたベルトは、スラックス、スカート等の腰部に装着されるインサイドベルトとして使用したり、下着の腰部の外側に装着したり、ジーンズパンツ、スポーツパンツ等のスラックス及びスカートの腰部の外側に装着することができる。特に、ジーンズパンツ、スポーツパンツ等の腰部の外側に用いた場合には、別途ベルトを用いる必要がなく、脚長、美脚、美尻効果を発揮することができる。また、腰部にロゴを入れることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかるベルトの製造方法を実施するための装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1のベルトの製造装置の超音波振動子の先端部と、ローラとの位置関係を説明するための概略図である。
【図3】直線状織物の経糸の配置例を示す図である。
【図4】本発明にかかるベルトの製造方法によって製造されたベルトの一例を示す平面図である。
【図5】曲線状織物の経糸の配置例を示す図である。
【図6】本発明にかかるベルトの製造方法によって製造されたベルトの一例を示す平面図である。
【図7】従来のカーブベルトの一例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】図7のベルトを人体の腰部に装着した状態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のY部拡大図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ベルト製造装置
2 巻回装置
3 本体
4 案内ピン
5 リール
6 案内板
7 付勢部材
8 ローラ
8a 回転軸
9 超音波振動子
9a 先端部
10 搬送ローラ
11 搬送ローラ
20 織物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線帯状の織物又は編物の一方の縁を拡開するように機械的負荷を加えながら、該直線帯状の織物又は編物の表面に高周波振動を付加することを特徴とするベルトの製造方法。
【請求項2】
予め曲線帯状に形成された織物又は編物に高周波振動を付加することを特徴とするベルトの製造方法。
【請求項3】
予め曲線帯状に形成された織物又は編物の凸側の縁を拡開するように機械的負荷を加えながら、該曲線帯状の織物又は編物の表面に高周波振動を付加することを特徴とするベルトの製造方法。
【請求項4】
前記高周波振動を超音波を使用して付与することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のベルトの製造方法。
【請求項5】
前記予め曲線帯状に形成された織物は、伸縮性の経糸と、伸縮性を有しない経糸及び緯糸とによって織り組織を構成する際に、凹側となる縁に近接する部分に他の伸縮性の経糸よりも大径の伸縮性の経糸を配置したことを特徴とする請求項2、3又は4に記載のベルトの製造方法。
【請求項6】
前記織物又は編物に高周波振動を付加する前に、前記織物又は編物の一表面に、粉状又はドットプリント状の接着剤を塗布したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−299427(P2006−299427A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118002(P2005−118002)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(399119088)
【Fターム(参考)】