説明

ベルトを操縦するための装置及び方法

【課題】従来技術の不利点を解決する。
【解決手段】本発明は、ベルトを支持する操縦ローラと、回転可能素子と、伝達手段とを含む、ベルトを操縦するための装置に関する。操縦ローラは、第一軸について回転可能であり、第二軸について旋回可能であり、第二軸は、第一軸に対して実質的に垂直である。回転可能素子は、第三軸について回転可能であり、第三軸は、第一軸と平行である。伝達手段は、第三軸についての回転可能素子の回転運動を第二軸についての操縦ローラの旋回運動に変換するために配置される。回転可能素子は、ベルトの側部と回転可能素子との間の摩擦力によって回転可能である。本発明の他の特徴は、そのような装置を含む操縦機構においてベルトを操縦するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを支持する操縦ローラと、回転可能素子と、伝達手段とを含む、ベルトを操縦するための装置に関する。操縦ローラは、第一軸について回転可能であり、且つ、第二軸について旋回可能であり、第二軸は、第一軸に対して実質的に垂直である。回転可能素子は、第三軸について回転可能であり、第三軸は、第一軸と平行である。伝達手段は、第三軸についての回転可能素子の回転運動を、第二軸についての操縦ローラの旋回運動に変換するために配置される。回転可能素子は、ベルトの側部と回転可能素子との間の摩擦力によって回転可能である。
【背景技術】
【0002】
この種類の装置は、EP0458260号から既知である。この特許では、複数のローラ内のクリープを調節するための少なくとも1つのローラを有するベルト駆動システムが開示されている。EP0458260号中に開示されているベルト駆動システムは、クリープ調節ローラの一端部に設けられるクリープ検出手段を含み、クリープ調節ローラは、クリープ検出手段と接触する平面ベルトのトルクによって回転され;平面ベルトをクリープ検出手段の方向に付勢するための付勢手段を含み;平面ベルトが付勢手段によって引き起こされるクリープと反対の方向に移動されるよう、クリープ検出手段のトルクを所定方向に向かってクリープ調節ローラの端部の変位に変換するためのローラ端部変位手段を含む。平面ベルトがクリープすると、元のクリープと反対のクリープが、ローラ端部変位手段によって引き起こされ、よって、元のクリープは補償される。結果的に、平面ベルトの安定走行が得られる。
【0003】
引用文献から既知の装置は、ベルトの操縦がその所望の経路にあることを可能にするが、それは、操縦機構を動作するために、比較的大きな操縦力、故に、回転可能素子と走行ベルトの側部との間の大きな摩擦力が必要とされるという不利点を有する。EP0458260号に開示される操縦機構は、ベルトの安定走行を得る操縦力を提供するために、引用文献中ではクリープ検出手段である回転可能素子とベルトの表面地域との間の比較的大きな接触面積が必要とされるような構造である。回転可能素子とベルトとの間の大きな接触面積は、動作中にベルトを損傷する危険性を増大する。
【0004】
実施が示したことは、比較的長いベルトと異なり、比較的短いベルトの走行経路は、ベルトを支持するローラを保持するフレームの捩れに対して極めて敏感であることである。長いベルトは、受動操縦フランジ(ベルトの横方向変位を制限する固定的な回転不能な素子)によって容易に操縦され得る。従って、短いベルトは、このようには操縦され得ない。短いベルトはローラから外れ、修復できないほどに損傷される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伝達手段が、回転可能素子に動作的に接続され且つ操縦ローラの直径よりも短い直径を有する回転可能部分を含むことによって特徴付けられる、前文に従った装置を提供することによって上述の不利点を除去することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った装置中の伝達手段は、操縦ローラの半径(R)と伝達手段の回転可能部分の半径(R)との間の比であるギア比(gr)をもたらす。伝達手段の回転可能部分は、その径方向寸法が操縦ローラの半径よりも小さい限り、如何なる形状でもよく、例えば、円筒形状のシャフト又は歯車であり得る。
【0007】
操縦力Fは、下記の通り、回転可能素子とベルトの側部との間の摩擦力Fに比例し、比例係数は、ギア比(gr)である。
【0008】
【数1】

【0009】
所要の摩擦力はギア比を増大することによって減少され得ることが理解されよう。回転可能素子とベルトの表面との間の所要の接触面積は、ベルトの横方向端側部だけで十分でさえあるよう、かなりの程度まで減少され得る。回転可能素子とベルトの内表面地域との間の接触は、ベルトを操縦するために、もはや必要とされない。
【0010】
本発明の他の利点は、回転可能素子と操縦ローラとの間の横方向距離が最小限化され且つ一定であるので、ベルトが動作中に常に十分に支持され、それがベルトの湾曲(buckling)の危険性を制限することである。回転可能素子の回転は、ベルトの側部との接触直後の摩擦力によって引き起こされる。ベルトの所望経路からの小さな横方向偏りは矯正され、ベルトの経路は、回転可能素子上にベルトによって及ぼされる極めて小さな力で、横方向位置の狭い範囲内で正確に制御される。本発明の追加的な利点は、機構が簡単であり且つコンパクトなことである。
【0011】
実施態様において、回転可能素子は、自由に回転可能な素子である。自由に回転可能な素子は、第一軸についての操縦ローラの回転と無関係に、第三軸について回転可能である。自由に回転可能な素子の回転は、もしベルトが回転可能素子に触れるならば、ベルトの側部と自由に回転可能な素子との間の摩擦力によって引き起こされる。
【0012】
実施態様において、第一軸及び第三軸は、回転可能素子及び操縦ローラが軸方向に整列されるよう一致する。この構造は、それが回転可能素子の回転運動を操縦ローラの旋回運動に移転するための比較的簡単でコンパクトな伝達機構を可能にするという利点を有する。
【0013】
実施態様において、第三軸から第三軸に対して垂直な回転可能素子の周囲まで延びる回転可能素子の少なくとも一部の寸法は、操縦ローラの半径を越える。この構成は、ベルトの側部と回転可能素子との間の接触を可能にする。上記の回転可能素子の簡単な代表は、操縦ローラの直径よりも大きい直径を有し且つ一致する第一軸及び第三軸を有する円形フランジであることが理解されよう。
【0014】
実施態様において、回転可能素子は、操縦ローラの第一軸方向端部に配置される。回転可能素子及び操縦ローラは、軸方向に整列される。この構成は、自由に回転可能な素子との接触直後に、ベルトの湾曲の危険性なしに、小さな摩擦力で比較的大きなトルクを引き起こし得る(操縦ローラによって支持されて)十分に支持されたベルトをもたらす。
【0015】
さらなる実施態様において、伝達手段は、伝達手段及び回転可能素子が操縦ローラの同一側に配置されるよう、操縦ローラの第一軸方向端部に配置される。この構成は、伝達手段をコンパクト且つ簡単なままにする。
【0016】
他の実施態様において、伝達手段は、操縦ローラの第二の反対の軸方向端部に配置される。この実施態様において、ベルトの側部との接触直後に引き起こされる回転可能素子の回転運動は、操縦ローラの中心を通じて延びるシャフトを介して、伝達手段に伝達される。回転可能素子が提供される端部と反対のシャフトの端部に提供される伝達手段は、ベルトがその好適な横方向位置に操縦されるよう、回転可能素子の回転運動を第二軸についての操縦ローラの旋回運動へ伝達することを可能にする。幾分より複雑な伝達手段をもたらすが、この構成は、操縦作用が、ベルトの側部と自由に回転可能な素子との間の摩擦力における小さな変動に対して余り感応的でないという利点を有する。この理由は、操縦作用が、自由に回転可能な素子と反対の端部で及ぼされ、その結果、自由に回転可能な素子の小さな運動がもたらされる。何故ならば、それは旋回点に近接して配置されるからである。
【0017】
実施態様において、ベルトの側部と回転可能素子との間の摩擦力によって引き起こされて操縦ローラが旋回可能である方向と反対の方向に第二軸について操縦ローラの旋回運動を引き起こす予張力を適用するための手段が存在する。
【0018】
予張力は、バネによって、操縦ローラの重量によって引き起こされる重力によって、或いは、ベルト自体の内部の張力によって加えられ得る。しかしながら、予張力を加えるための手段の実施態様は、上記の実施例に限定されないことが付記されなければならない。予張力を加えるための手段は、回転可能素子に向かってベルトを操縦する目的を有する。
【0019】
実施態様において、伝達手段は、回転可能素子に接続される歯車と、ラック歯車とを含み、ラック歯車は、場合によっては、ラック歯車を第二軸に対して角度(α)に配置することによって、操縦ローラが第二軸について旋回可能であるよう配置され、その角度は、0°以上90°以下であり、好ましくは、0°以上45°以下であり、最も好ましくは、0°以上10°以下である。
【0020】
歯車は、シャフトを通じて、回転可能素子と接続される。もし回転可能素子に最も近いベルトの側部が回転可能素子に触れるならば、ベルトの側部と回転可能素子との間の摩擦力が、回転可能素子、故に、歯車の回転運動を引き起こす。ラック歯車をしっかり掴む歯車は、ラック歯車上を走行し、故に、操縦ローラを第二軸について傾斜する。所要の摩擦力は、操縦ローラの半径(R)と歯車の半径(R)との間の比であるギア比(gr)に依存する。所要の摩擦力は、ギア比を増大することによって減少され得ることが理解されよう。
【0021】
実施態様において、伝達手段は、操縦ローラが第二軸について旋回可能であるよう配置される巻取手段を含む。回転可能素子が前述の摩擦力によって回転されると、巻取手段の一端部は、回転可能素子の心棒の周りに巻き付くのに対し、他端部は固定される。巻取手段が巻き付く端部は、傾斜摺動平面上を走行し、操縦ローラを第二軸について傾斜する。さらなる実施態様において、巻取手段は、細長い可撓部材を含む。さらなる実施態様において、細長い可撓部材は、リボン、チェーン、撚糸(thread)、及び、細ひも(string)を含む群から選択される。これらの実施態様は、より大きなギア比が可能であるという利点を有する。何故ならば、歯車が必要とされず、Rは、より一層小さく選択され得るシャフトの半径だからである。さらに、実施は、これらの構成が極めて滑らかに動作することを示した。
【0022】
本発明の他の特徴は、前の実施態様のいずれか1つに従ったベルトを操縦するための装置を含む画像化システムに関する。本発明の装置は、輸送ベルトが明確に定められる経路内に正確に制御されることが必要な全ての種類の画像化システムにその用途を見いだす。画像化システムは、ファックス、プリンタ、コピー機、又は、スキャナを含み得るが、それらに限定されない。
【0023】
本発明の他の特徴は、上述のような装置を含む操縦機構においてベルトを操縦するための方法に関する。その方法は、操縦ローラの上でベルトを前進させるステップと、回転可能素子の回転運動を引き起こすステップと、ベルトが均衡横方向位置に操縦されるよう、伝達手段を介して、操縦ローラを第二軸について旋回するステップとを含む。
【0024】
支持ローラの整列における小さな偏りは、ベルトを側方に逸脱(横方向運動)させ得る。本発明の装置は、ベルトが予め定められた側、回転阻止が配置される側に向かって横方向に常に逸脱するように配置される。ベルトの側部が自由に回転可能な素子に触れると、ベルトの側部と自由に回転可能な素子との間の摩擦力が、自由に回転可能な素子を回転させる。第三軸についてのこの回転運動は、伝達手段を用いて、第二軸についての操縦ローラの旋回運動に変換される。操縦ローラは、ベルトが横方向に反対方向に操縦されるよう傾斜される。次いで、これはベルトの側部と自由に回転可能な素子との間の摩擦力を引き起こし、故に、操縦力は減少させる。ベルトは、操縦力と反力(例えば、ベルト張力、重力、予張力)とが等しい均衡横方向位置に操縦される。
【0025】
本発明は、以下の図面を使用することによって、より詳細に今や説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(図1)
図1は、本発明に従ったベルトを操縦するための1つ又はそれよりも多くの装置が存在するプリンタを概略的に示している。プリンタは、トナー画像を形成するためのユニットを備え、前記ユニットは、無端光伝導性ベルト1を含む。このベルトは、駆動及び案内ローラ2,3,4を使用して、均一速度で表示方向に回転される。例証される実施態様において、プリンタは、フラッシュライト6及び7、レンズ8、並びに、鏡9を使用して、イーゼル5上に配置された元の画像(図示せず)を光伝導体1の上に投射するために、アナログ手段を含む。この画像化の前に、光伝導体は、コロナユニット10を用いて静電的に荷電される。従来技術から十分に既知であるように、荷電光伝導体上の原画の光学的画像化は、前記導体上の潜在性荷電画像の形成をもたらす。この荷電画像は、磁性ブラシを含む現像ユニット11の使用で光伝導体に移転されるトナー粉末で現像される。この結果、前記光伝導体上にトナー画像の形成がもたらされる。第一移転ゾーンにおいて、この画像は、加圧下で、緊張下でローラ14及び15の周りで操作される無端中間ベルト12と接触させられる。典型的には、40℃〜70℃の温度で起こる、第一移転ゾーン内での接触の結果、トナー画像は、光伝導体1から中間ベルト12に移転される。この移転後、如何なる残余トナー粒子も、洗浄ローラ13を使用して、光伝導体1から取り除かれる。よって、光伝導体は再使用の準備が出来ている。中間ベルト12は、緊張下で、ローラ14及び15の上で操作され、画像は、第一移転ゾーンから第二移転ゾーンへ移され、中間ベルト12は、第二移転ゾーンで、圧力適用ベルト22と接触する。ベルト22は、ローラ23及び24の上で操作される。ローラ24は、加圧下で、ベルト12の方向に配置される。この移転ゾーンにおいて、トレイ18から由来し且つローラ19及び20によって案内される受容材料(図示せず)は、中間ベルト12と接触させられ、受容材料は、中間ベルト12上のトナー画像と位置合わせされて位置付けられるよう案内される。第二移転ゾーンで、中間ベルトは、加熱素子17の使用によって、トナー粒子がある程度粘着性があり容易に変形可能であるような温度とされる。この結果、トナー粒子は中間ベルト12から受容材料にも移転し、前記材料とも剛的に結合される。画像が移転された後、印刷済み受容材料は、意図された目的のために、出力トレイ25内に堆積される。
【0027】
中間ベルト12上のトナー粒子の如何なる残余も、トナー粒子を取り上げる表面31を有する洗浄ローラ30の使用によって取り除かれる。この種類のローラは、例えば、US4,607,947号から既知である。この実施例のプリンタは、原画を光伝導体上に画像化するためにアナログ手段を備える。例証されるもの以外の他の手段、例えば、発光ダイオード(LED)を備えるページ幅のプリントヘッドを使用し得るデジタル手段が、光伝導体上に荷電画像を創成するのに適し得ることが明らかであるべきである。また、光伝導体を使用する画像形成ユニットが省略され得る。重要な機能は、画像が形成されること、並びに、この画像が、どのようにしてでも、中間ベルトに移転されることである。例証される実施例には、1つの中間ベルト12があるだけである。画像を最終的に受容材料に移転するために画像を移転するよう、中間ベルトに加えて、複数の中間ベルト又は他の手段が使用され得ることが明らかである。接触移転を用いた例証されるような画像の移転の形態は、多くの可能性の1つである。他の技法、例えば、粒子が電界の使用によって移転される無接触技法も可能である。
【0028】
本発明の装置は、全てのベルトの種類、例えば、無機光伝導体ベルト1、中間ベルト12、圧力適用ベルト22、及び、媒体輸送ベルトにおいて使用され得る。
【0029】
(図2)
図2は、本発明の実施態様を概略的に示している。可撓ベルト101が、3つの支持ローラ102,103,104、及び、1つの操縦ローラ105の上で操作される。操縦ローラの第一軸方向端部に、自由に回転可能な円形フランジ106が取り付けられる。歯車107とラック歯車108とを含む伝達手段も、操縦ローラ105の第一軸方向端部に取り付けられる。
【0030】
第一に、ベルト張力は、操縦ローラの第一軸方向端部をQ方向(ラック歯車と平行な図2中の二重矢印)に押し、ベルトを円形フランジに向かって走行させる。この効果は、予張力(例えば、バネ)及び/又は重力(装置の向きに依存する)によって強化され得る。操縦ローラの第一軸方向端部をQ方向に向かわせる総力は、さらにFで表示される上述の力の組み合わせであり得るが、それに限定されない。ベルト101の側部がフランジ106に触れるとき、ベルトの側部とフランジとの間の摩擦力がフランジの回転運動を引き起こす。
【0031】
瞬間的に、歯車は動かされ、それはラック歯車の傾斜摺動平面に沿ってQ方向に走行し、操縦ローラを第二軸について傾斜し、ベルトが操縦されて、その所望の経路に戻る。故に、摩擦力が減少し、Fの影響を減少させる。特定のFで、操縦ローラの第一軸方向部分を再びQ方向に押す。最終的に、摩擦力が反力(例えば、ベルト張力、重力、適用される予張力)によって釣り合わされる均衡状況に達する。実際には、摩擦力はベルトに著しい損傷を加えない。
【0032】
(図3)
図3は、自由に回転可能なフランジ106、歯車107、及び、ラック歯車108の配置を概略的に示している。第一軸について回転可能であり且つ第二軸について旋回可能である操縦ローラの能力も明瞭に示している(操縦された後の操縦ローラの位置は点線画像で表示されている)。後者のために、可動接合部が設けられる。
【0033】
矢印110によって表示されるように、ベルトが正のy方向に前進すると、ベルトは、正のx方向に、自由に回転可能なフランジ106に向かって横方向に移動しがちである。この横方向移動のための幾つかの原因がある。例えば、もしベルトを支持するローラが不完全に軸方向に整列されるならば、捻れがベルトを横方向に「立ち去ら(walk off)」せる。ベルト内の不均一な張力分布も、ベルトの横方向移動の原因となり得る。
【0034】
本発明の装置のローラ(102,103,104,105)は、ベルト101が自由に回転可能なフランジ106に向かって操縦されることを確実にするために、意図的に誤整列され得る。
【0035】
もし移動するベルト101の側部が自由に回転可能なフランジ106に触れるならば、フランジは、ベルトの側部とフランジとの間の摩擦力によって誘起されて回転し出す。歯車107は、正のy方向及び正のz方向(平面から出る方向、図3中に示されていない、図2を参照)にラック歯車108の上で走行し始め、操縦ローラ105を第二軸について旋回する。ベルトは、フランジから離れて、負のx方向に操縦される。最終的に、ベルトをフランジに向かって進める力(例えば、ベルト中の張力、操縦ローラの重量によって引き起こされる重力、提供される予張力等)と、ベルトの側部と自由に回転可能なフランジとの間の摩擦力によって誘起される操縦力との間の均衡によって決定される、均衡経路に達する。
【0036】
(図4)
図4は、自由に回転可能なフランジ106、歯車107、及び、ラック歯車108の他の配置を概略的に示している。自由に回転可能なフランジ106及び歯車は、操縦ローラの中心を通じる第一軸と平行な方向に延びるシャフト113の両端部に配置されている。可動接合部109は、第二軸についての操縦ローラ105の旋回運動を可能にするために、自由に回転可能なフランジと同一の側に配置されている。操縦された後の操縦ローラの位置は、点線画像によって表示されている。
【0037】
操縦機構は、基本的には、図3に示される機構と同一の方法で動作する。しかしながら、自由に回転可能なフランジの回転は、シャフト113を介して操縦ローラ105の中心を通じて、操縦ローラ105の他端部に配置される歯車107に伝達される。ラック歯車108は、ベルトが操縦されて所望の横方向位置に戻るよう配置される。この実施例では、歯車は、負の傾斜が正のy方向にあり、且つ、逆さま、即ち、歯付き側が歯車に向かって下向きに方向付けられる状態で、歯車の上に配置される。これは、歯車107が、負のy方向及び正のz方向、即ち、紙の平面に対して外向き方向でラック歯車108と係合し、操縦ローラ105を第二軸について旋回することを意味する。ベルトは、フランジから離れて、負のx方向に進められる。最終的に、均衡経路に到達する。
【0038】
(図5)
図5は、コイル手段である本発明の他の実施態様の表示を概略的に示している。本発明の装置のこの実施態様の基本的な動作は、図2及び3に基づいて以前に説明されたものと同一である。しかしながら、この実施態様では、伝達手段は、歯車の代わりの心棒107’と、ラック歯車の代わりに滑らかな摺動傾斜108’とを含み、巻取(coiling)手段111を追加的に含む。巻取手段の一端部は心棒107’に取り付けられ、他端部は固定壁112(例えば、操縦機構を保持するフレーム、図2を参照)に取り付けられる。
【0039】
もしベルト101の側部が自由に回転可能なフランジ106に触れるならば、ベルト101の側部と自由に回転可能なフランジとの間の摩擦力が、フランジの回転を引き起こす。この回転運動は、心棒107’の周りでの巻取手段111の巻取りを引き起こす。最終的に、操縦ローラは、ベルトをその所望の横方向に操縦するために、第二軸について旋回される。
【0040】
この実施態様は、操縦作用中のギア比を減少するという可能な追加的な機能を有する。もし、例えば、巻取手段が、細長い可撓部材として厚さdribbonを備えるリボンを含むならば、心棒107’の半径は、心棒の完全回転後にdribbonで減少する。これは心棒のあらゆる回転の直後にギア比を減少させ、次いで、それは操縦機構の感度を減少させる。
【0041】
(図6)
図6は、本発明に従った操縦機構の実施態様の側面図を概略的に示している。図6は、ベルトの側部からフランジへの力の伝達、摩擦力Fから操縦力Fも示している。下記の通り、操縦力Fは摩擦力に比例し、比例係数はギア比(gr)である。
【0042】
【数2】

【0043】
もし操縦力Fが、総合反力F、この場合には、ベルト張力Fbelt//(図示せず、Fz//と平行である)、バネ113によって適用される付勢力Fbias、及び、重力の平行成分Fz//の結果力の平行成分(摺動平面と平行)を超えるならば、操縦ローラは操縦される。
【0044】
均衡状態において、以下の通り、操縦力は総合反力と等しい。
【0045】
【数3】

【0046】
均衡状態で操縦機構を動作するのに必要とされる摩擦力を最小限化することは、以下によって得られる。
− 予張力(Fbias)を最小限化すること、及び/又は、
− 摺動平面(α)の傾斜を減少すること、及び/又は、
− 操縦装置の向きを変更すること(例えば、逆さまにすること)によって、重力の向きを変更すること、及び/又は、
− β−β≧2αであり、Fに対してゼロ又は負の(反作用する)寄与をもたらすように、多数のローラの上にベルトを操作すること、及び/又は、
− ギア比を増大すること。
【0047】
しかしながら、ギア比の増大は最大値に制限されることが付記されるべきである。この最大値を超えると、過感度の操縦機構を招き得るし、場合によっては、操縦機構の過剰な摩耗さえも招き得る。
【0048】
従って、ギア比は、1以上10以下の間、好ましくは1以上5以下の間、最も好ましくは2以上3以下の間である。
【0049】
摩擦緊張の減少は、ベルトの側部と回転可能なフランジとの間の接触面積を増大することによって得ることができる。そうすることの1つの方法は、角度β及びβを減少することによって接触弧を増大することである。
【0050】
(図7A及び7B)
図7Aは、本発明の他の実施態様の側面図を概略的に示している。図7Bは、同一の実施態様の操縦ローラ(105)の正面図を示している。
【0051】
図7Aに示される実施態様の装置は、4つの支持ローラ(102,103,104,104’)及び操縦ローラ(105)を有する。装置は、さらに、付勢バネ(113)を含み、付勢バネは、その一方の側で回転可能素子(113’)に取り付けられ、その他の側で固定本体、例えば、装置のフレームに取り付けられる。
【0052】
本発明の装置のこの実施態様の基本的な動作は、図2及び3に基づいて以前に説明されたものと同一である。
【0053】
ベルト(101)がフランジ(106)に向かってクリープすると、フランジは、ベルトの横方向端側部との摩擦接触直後に回転し始める。フランジの回転運動は、歯車(107)及び湾曲ラック歯車(108”)を通じて、第一旋回点114”についての操縦ローラの傾斜運動に伝達される。ベルトが操縦されて、その所望の経路に戻る。
【0054】
ラック歯車(108”)は、回転可能素子が配置される操縦ローラの端側部が二重矢印114によって表示されるように、第二旋回点(114”)について湾曲状に移動する曲率とされる。
【0055】
ベルトがフランジに触れると、操縦ローラの前記端側部は下向きに移動し、付勢バネ113’は伸張される。ベルトが操縦され、その所望経路に戻り、ベルトの横方向端側部とフランジとの間の摩擦力が減少し、その直後、付勢バネは操縦ローラをその元の位置に引っ張り戻す。
【0056】
上述のような第二旋回点についての操縦ローラの端側部の湾曲運動の故に、この構造は、操縦動作がベルトの張力と無関係であり、故に、ベルトの老化と無関係であるという利点を有する。
【0057】
この実施態様における装置の構造のさらなる利点は、旋回地点114’及び114”並びにそれらの場所の故に、操縦ローラの重量が、操縦作用にもはや影響を及ぼさず、コンパクトな装置が構成され得ることである。
【0058】
(図8A及び8B)
図8Aは、本発明の他の実施態様の側面図を概略的に示している。図8Bは、同一の実施態様の操縦ローラ(105)の正面図を示している。
【0059】
図8Aに示される実施態様の装置は、4つの支持ローラ(102,103,104,104’)及び操縦ローラ(105)を有する。装置は、さらに、操縦ローラの両側に2つの操縦構造を含み、双方とも、フランジ(106,106’)、歯車(107,107’)、及び、湾曲ラック歯車(108”,108”’)を含む。
【0060】
装置は、第一及び第二の操縦構造を動作的に接続するケーブルシステム115も含む。
【0061】
本発明の装置のこの実施態様の基本的な動作は、図2、3、及び、7に基づいて以前に説明されたものと同一である。
【0062】
ベルト(101)が第一フランジ(106)に向かってクリープすると、第一フランジは、ベルトの横方向端側部との摩擦接触直後に回転し始める。フランジの回転運動は、第一歯車(107)及び第一湾曲ラック歯車(108”)を通じて、第一旋回点114”についての操縦ローラの傾斜運動に伝達される。ベルトは操縦されて、その所望経路に戻る。
【0063】
ラック歯車(108”)は、回転可能素子が配置される操縦ローラの端側部が、二重矢印114によって表示されるように、第二旋回点(114’)について湾曲状に移動するような曲率とされる。
【0064】
ベルトが第一フランジに触れると、操縦ローラの前記端側部は、下向きに移動し、ケーブルシステムは、操縦ローラが仮想旋回点114”について回転されるよう、操縦ローラの反対の端側部を上向きに引っ張る。ベルトの反対端部と第二回転可能素子(106)との間の小さな摩擦力が、操縦力と反対に作用し且つケーブルシステム(115)を通じて伝達される付勢力をもたらし得る。ベルトは操縦されて、その所望経路に戻り、ベルトの横方向端側部と第一フランジとの間の摩擦力は減少し、然る後、ベルトの均衡走行経路に達するまで、第二フランジ(106’)とベルトの反対端部との間の摩擦力は増大する。この構成を用いることで、ベルトは操縦ローラの両方の端側部で操縦され得る。
【0065】
上述のような第二旋回点についての操縦ローラの端側部の湾曲運動の故に、この構造は、操縦動作が、ベルトの張力と無関係であり、故に、ベルトの老化と無関係であるという利点を有する。
【0066】
この実施態様における装置の構造のさらなる利点は、旋回点114’及び114”並びにそれらの場所の故に、操縦ローラの重量は操縦作用にもはや影響を及ぼさず、コンパクトな装置が構成され得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の装置が動作するプリンタを示す概略図である。
【図2】本発明の実施態様を示す概略図である。
【図3】図2中の実施態様を概略的に示す上面図である。
【図4】本発明の他の実施態様を示す概略図である。
【図5】本発明の他の実施態様を示す概略図である。
【図6】操縦機構における力均衡を示す概略図である。
【図7A】本発明の他の実施態様を概略的に示す側面図である。
【図7B】図7Aの実施態様の操縦ローラを示す正面図である。
【図8A】本発明の他の実施態様を概略的に示す側面図である。
【図8B】図8Bの実施態様の操縦ローラを示す正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 無端光伝導性ベルト
2 駆動及び案内ローラ
3 駆動及び案内ローラ
4 駆動及び案内ローラ
5 イーゼル
6 フラッシュライト
7 フラッシュライト
8 レンズ
9 鏡
10 コロナユニット
11 現像ユニット
12 無端中間ベルト
13 洗浄ローラ
14 ローラ
15 ローラ
17 加熱素子
18 トレイ
19 ローラ
20 ローラ
22 圧力適用ベルト
23 ローラ
24 ローラ
25 出力トレイ
30 洗浄ローラ
31 表面
101 可撓ベルト
102 支持ローラ
103 支持ローラ
104 支持ローラ
104’ 支持ローラ
105 操縦ローラ
106 フランジ
107 歯車
107’ 心棒
108 ラック歯車
108’ 摺動傾斜
108” 湾曲ラック歯車
109 可動接合部
110 矢印
111 巻取手段
112 固定壁
113 シャフト
113 付勢バネ
113’ 回転可能素子
114 二重矢印
114’ 旋回点
114” 第一旋回点
115 ケーブルシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトを支持する操縦ローラを含み、該操縦ローラは、第一軸について回転可能であり、且つ、第二軸について旋回可能であり、前記第二軸は、前記第一軸に対して実質的に垂直であり、
第三軸について回転可能な回転可能素子を含み、前記第三軸は、前記第一軸と実質的に平行であり、
前記第三軸についての前記回転可能素子の回転運動を前記第二軸についての前記操縦ローラの旋回運動に変換するために配置される伝達手段を含み、
前記回転可能素子は、前記ベルトの側部と前記回転可能素子との間の摩擦力によって回転可能である、
ベルトを操縦するための装置であって、
前記伝達手段は、前記回転可能素子に動作的に接続され且つ1よりも大きいギア比を有する回転可能な部分を含むことを特徴とする、
ベルトを操縦するための装置。
【請求項2】
前記回転可能素子は、前記第三軸について自由に回転可能である、請求項1に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項3】
前記第一軸と前記第二軸とは一致する、上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項4】
前記第三軸から前記第三軸に対して垂直な前記回転可能素子の周囲に延びる前記回転可能素子の少なくとも一部の寸法が、前記操縦ローラの半径を越える、請求項3に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項5】
前記回転可能素子は、フランジを含む、上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項6】
前記回転可能素子は、前記操縦ローラの第一軸方向端部に配置される、上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項7】
前記伝達手段は、前記操縦ローラの前記第一軸方向端部に配置される、請求項6に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項8】
前記伝達手段は、前記操縦ローラの第二の反対側の軸方向端部に配置される、請求項6に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項9】
前記ベルトの前記側部と前記回転可能素子との間の摩擦力によって引き起こされて前記操縦ローラが旋回可能である方向と反対の方向に前記第二軸について前記操縦ローラの旋回運動を引き起こす予張力を適用するための手段が存在する、上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項10】
前記伝達手段は、前記回転可能素子に接続される歯車と、ラック歯車とを含み、該ラック歯車は、前記操縦ローラが前記第二軸について旋回可能であるよう配置される、上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項11】
前記伝達手段は、前記操縦ローラが前記第二軸について旋回可能であるよう配置される巻取手段を含む、上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項12】
前記巻取手段は、細長い可撓部材を含む、請求項11に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項13】
前記細長い可撓部材は、リボン、チェーン、撚糸、及び、細ひもを含む群から選択される、請求項12に記載のベルトを操縦するための装置。
【請求項14】
上記請求項のうちのいずれか1項に記載のベルトを操縦するための装置を含む画像化装置。
【請求項15】
操縦機構においてベルトを操縦するための方法であって、
前記操縦機構は、
前記ベルトを支持する操縦ローラを含み、該操縦ローラは、第一軸について回転可能であり、且つ、第二軸について旋回可能であり、前記第二軸は、前記第一軸に対して実質的に垂直であり、
第三軸について回転可能な回転可能素子を含み、前記第三軸は、前記第一軸と実質的に平行であり、
前記第三軸についての前記回転可能素子の回転運動を前記第二軸についての前記操縦ローラの旋回運動に変換するために配置される伝達手段を含み、
当該方法は、
前記操縦ローラの上で前記ベルトを前進させるステップと、
前記ベルトの側部と前記回転可能素子との間の摩擦力によって、前記回転可能素子の回転運動を引き起こすステップと、
前記ベルトが均衡横方向位置に操縦されるよう、前記伝達手段を介して、前記操縦ローラを前記第二軸について旋回するステップとを含む、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2009−86670(P2009−86670A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255993(P2008−255993)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(593016732)オセ−テクノロジーズ ビーブイ (103)
【Fターム(参考)】