説明

ベルトクランプ

【課題】ベルトクランプによる結束後にベルトの余剰部分が切断された状態において、この切断部のエッジなどに作業者が触れるのを防止する。
【解決手段】ベルトをバックルに挿通して引き締めた後にバックルの出口から引き出されたベルトの余剰部分が切断されるタイプのベルトクランプであって、バックル12の出口14b側における少なくともベルト10の幅方向の両側に保護部18が設けられている。この保護部18は、ベルトにおいて、その余剰部分が切断されるときにバックル12の出口14bから引き出されている遊び代Sの長さと同じかそれ以上の張出し量に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両に配線されるワイヤーハーネスを結束するためのベルトクランプに関する。より詳しくは、ベルトとバックルとを備え、ベルトをバックルに挿通して引き締めることにより、その引き締め状態でベルトとバックルとがロックされるベルトクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のベルトクランプは、例えば特許文献1に開示されている技術が既に知られている。この技術からも明らかなように、ワイヤーハーネスを結束した状態のベルトクランプは、そのベルトをバックルに挿通して引き締めており、かつバックルの出口から引き出されたベルトの余剰部分が切断されている。そして、ベルトには余剰部分を切断するときにバックルの出口から引き出された遊び代が残っている。
なお、ベルトクランプの結束作業に専用の結束機を用いる場合は、その構造上の理由から一定長さの遊び代が生じ、結束作業を手作業で行う場合でも、余剰部分を切断するためには、どうしても遊び代が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトクランプによってワイヤーハーネスを結束し、ベルトの余剰部分が切断された状態では、この切断部のエッジなどにワイヤーハーネスを取り扱う作業者の指先が触れて痛みなどの不快な感触を受けることがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ベルトの余剰部分が切断された状態において、この切断部のエッジなどに作業者が触れるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
ベルトとバックルとを備え、ベルトをバックルに挿通して引き締めることにより、その引き締め状態でベルトとバックルとがロックされ、その後にバックルの出口から引き出されたベルトの余剰部分が切断されるタイプのベルトクランプであって、バックルの出口側における少なくともベルトの幅方向の両側に保護部が設けられている。この保護部は、ベルトにおいて、その余剰部分が切断されるときにバックルの出口から引き出されている遊び代の長さと同じかそれ以上の張出し量に設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、バックルの出口側に設けられた保護部により、ベルトの余剰部分が切断された後にバックルの出口から引き出されている遊び代がその両側から被われて切断部のエッジなどをカバーした状態となる。この結果、例えばワイヤーハーネスを結束するベルトクランプであれば、このワイヤーハーネスを取り扱う作業者がベルトの切断部に触れることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1におけるベルトクランプを表した斜視図。
【図2】図1を別方向から見た斜視図。
【図3】図1のバックル側を表した斜視図。
【図4】図1のバックル側を表した側面図。
【図5】ベルトクランプによる結束状態を表した断面図。
【図6】実施の形態2におけるベルトクランプのバックル側を表した斜視図。
【図7】図6のバックル側を表した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
図1〜図4で示すベルトクランプは樹脂材による一体成形品であって、その構成はベルト10、バックル12およびアンカー20に大別される。このベルトクランプは、ベルト10とバックル12とによって例えばワイヤーハーネスW(図5)を結束し、アンカー20によって車体パネルなどの配線箇所(図示省略)にワイヤーハーネスWを留めることができる。
【0010】
ベルト10は、一定の幅で真っ直ぐに延びる帯状をしており、その基端部10aはバックル12と一体に結合され、先端部10bは自由端になっている。ベルト10における一方の面(図1あるいは図2の上面)には、係合歯列10cがベルト10の長さ方向に沿って一定のピッチで成形されている。また、ベルト10における他方の面には、ベルトクランプで結束したワイヤーハーネスWが長さ方向へずれ動くのを防止するためのリブ10d(図5)が成形されている。
【0011】
バックル12は、その内部がベルト10を通すための挿通路14となった箱形状であって、挿通路14の両端は開放されている。このバックル12の一側面にベルト10の基端部10aが結合され、他側面にアンカー20が結合されている。バックル12において、アンカー20が結合されている側面には、樹脂材の弾性によってバックル12の内外方向へ撓む係合片16が成形されている。この係合片16は、ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16a(図5)を備えている。バックル12の挿通路14には、その入口14aから出口14bに向けてベルト10を通すことができる。
なお、バックル12とアンカー20との間には、皿形状のスタビライザ22が位置している。
【0012】
アンカー20は、スタビライザ22の中央から突出した支柱20aと、この支柱20aの先端部から両側に張り出した左右一対の弾性爪20bとを有する。アンカー20は、車体パネルなどの配線箇所に予め開けられている取付け孔(図示省略)に差し込まれる。それにより、両弾性爪20bが内方へ押し撓められながら取付け孔に挿入されて孔縁に係合し、ベルトクランプが配線箇所に取付けられる。このとき、スタビライザ22の外周部は弾性変形しながら車体パネルの表面に押付けられ、ベルトクランプの取付け姿勢を安定させ、あるいは取付け孔周囲のシール機能を果たす。
【0013】
バックル12における挿通路14の出口14b側には、図3および図4の左右両側に保護部18がそれぞれ設けられている。すなわち、これらの保護部18は、挿通路14に通されて出口14bから引き出されたベルト10の幅方向の両側に位置し、このベルト10を両側から被うようになっている。挿通路14の出口14b側におけるバックル12の端面からの両保護部18の張出し量は、後述のように結束後にベルト10の余剰部分が切断されたとき、出口14bから引き出されているベルト10の遊び代S(図4および図5)の長さ以上に設定されている。
また、両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ、作業者の指先が触れても不快感を与えないように配慮されている。
【0014】
ベルトクランプによる結束作業は、図5で示すようにベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付けるとともに、該ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締める。この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動しており、所定の引き締め状態において相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされる。挿通路14の出口14bから引き出されたベルト10は、余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断される。
この後、前述のように車体パネルなどの取付け孔にアンカー20を差し込むことで、ベルトクランプを通じてワイヤーハーネスWが配線箇所に留め付けられる。
【0015】
ベルト10の余剰部分が切断されるとき、このベルト10には図4の仮想線および図5で示すように挿通路14の出口14bから引き出されている遊び代Sが残っている。既に説明したように、この遊び代Sはベルトクランプによる結束において避けられないものである。
図4および図5で示すように遊び代Sになっているベルト10は、この遊び代Sよりも大きく張り出した保護部18によって両側から被われている。このため、ベルト10における切断部のエッジがカバーされ、ワイヤーハーネスWを取り扱う作業者の指先が切断部のエッジに触れて痛みなどの不快感を受けることが防止される。
【0016】
実施の形態2
図6および図7で示すベルトクランプにおいては、両側の保護部18がバックル12の一側面を延長した格好の壁17によってつながっている。この結果、保護部18によってベルト10の切断部を保護する範囲が拡張され、かつ保護部18の強度も高められる。
このように保護部18は、バックル12の両側で独立した構成、あるいは互いにつながった構成のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0017】
10 ベルト
12 バックル
14 挿通路
14a 入口
14b 出口
18 保護部
S 遊び代


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトと、ベルトの基端部が結合されたバックルとを備え、ベルトをバックルに挿通して引き締めることにより、その引き締め状態でベルトとバックルとがロックされ、その後にバックルの出口から引き出されたベルトの余剰部分が切断されるタイプのベルトクランプであって、
バックルの出口側における少なくともベルトの幅方向の両側に保護部が設けられ、この保護部は、ベルトにおいて、その余剰部分が切断されるときにバックルの出口から引き出されている遊び代の長さと同じかそれ以上の張出し量に設定されているベルトクランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−137145(P2012−137145A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290021(P2010−290021)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】